【実施例】
【0034】
次に、実施例、比較例、及び、追加例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
下記のセメントと、粉状の混和材としての分離低減材とを表1の配合割合で混合してセメント組成物を作製し、該セメント組成物の85%粒径、60%粒径、30%粒径、及び、10%粒径を求めた。なお、セメント組成物の85%粒径、60%粒径、30%粒径、及び10%粒径は、上述した方法で測定し求めた。また、以下に示す他の実施例、比較例、及び、追加例についても同様にセメント組成物の85%粒径、60%粒径、30%粒径、及び10%粒径を求めた。
セメント:高炉セメント(住友大阪セメント社製、高炉セメントB種)(以下、「BB」ともいう。)
分離低減材:乾燥粘土(住友大阪セメント社製、スミクレー)(以下、「スミクレー」ともいう。)
次に、該セメント組成物と、下記の減水剤及び水とを下記表1の配合割合で混合して注入材を作製した。
減水剤:ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王社製、マイティー150)
水:水道水
【0036】
(実施例2)
スミクレーの量を下記表1のように変えたこと以外は、実施例1と同様に、セメント組成物を得、そして、注入材を作製した。
【0037】
(比較例1)
セメント組成物として、下記のセメントのみを用いた。
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)(以下、「NC」ともいう。)
次に、該セメント組成物と、上記の減水剤及び水とを下記表1の配合割合で混合して注入材を作製した。
【0038】
(比較例2)
減水剤の量を下記表1のように変えたこと以外は、比較例1と同様にして、注入材を作製した。
【0039】
(比較例3)
セメントとしての上記のNCと、粉状の混和剤として下記の水中不分離性コンクリート用混和剤とを混合して、セメント組成物を得た。
水中不分離性コンクリート用混和剤:太平洋エルコン、太平洋マテリアル社製
次に、該セメント組成物と、水とを下記表1の配合割合で混合して注入材を作製した。
【0040】
実施例及び比較例の注入材の性状を確認するために、実施例及び比較例の注入材を以下の試験に供した。
【0041】
(Pロート流下時間の測定)
作製直後の注入材のPロート流下時間は、JSCE−F521のプレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法に準じて測定した。
【0042】
(ブリーディングの有無の確認)
JSCE−F522のプレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋法)に準じ、作製した注入材をすぐにポリエチレン袋に入れ、該注入材を袋内に静置して、袋に入れてから3時間後に、該注入材にブリーディングが生じているか否かを目視で確認した。
【0043】
(材齢28日の圧縮強度の測定)
内寸φ5×10cmの型枠に作製した注入材をすぐに打設して、供試体を作製した。そして、材齢28日の供試体の圧縮強さを測定した。圧縮強さは、JIS A 1216:2009の土の一軸圧縮試験方法に準じて測定した。
【0044】
実施例及び比較例の注入材の地盤への浸透性を確認するため、下記の試験に供した。
【0045】
(浸透性の確認試験:模擬地盤(15%粒径D
15:627.4μm))
まず、浸透性の確認試験に用いる模擬地盤を構成する土壌としての日瓢製4号珪砂の15%粒径D
15を上述した方法で測定し求めた。該15%粒径D
15は、627.4μmだった。
そして、
図1に示すように、注入材Aを円筒状の注入材用容器1(直径:106mm、高さ:300mm)に高さ250mmまで入れた。なお、該注入材用容器1としては、コンプレッサ2からの圧縮空気が第1ホース3を介して移送される開口が上面に形成され、且つ、該注入材用容器1内の空気圧を測定する第1圧力ゲージ4が接続される開口が上面に形成され、且つ、前記圧縮空気により圧力がかけられた注入材Aを注入材用容器1外に排出するための開口が底面に形成されているアクリル製容器を用いた。
また、模擬地盤Bを構成する土壌としての日瓢製4号珪砂(15%粒径D
15:627.4μm)を円筒状の地盤用容器5(直径:106mm、高さ:300mm)に高さ170mmまで入れた。なお、該地盤用容器5としては、前記注入材用容器1から排出された注入材Aが第2ホース6を介して移送される開口が上面に形成され、且つ、該地盤用容器5内の空気圧を測定する第2圧力ゲージ7が接続される開口が上面に形成され、且つ、模擬地盤Bを浸透した水を地盤用容器5外に排出するための開口が底面に形成されているアクリル製容器を用いた。地盤用容器5の底面の上部には、注入材Aが外部に排出されやすいように底面の中央部に設置した排出孔から幅3mm・深さ3mmの溝が放射状に8本形成されている。
なお、地盤用容器5に模擬地盤Bを入れる前に、地盤用容器5の底面上にフィルター8(孔径:75μm)(材質:ステンレス)を敷き、該フィルター8上に濾紙9(2種)を敷いた。
次に、前記注入材用容器1の空気圧(ゲージ圧)が0.01〜0.1MPaとなるようにコンプレッサ2で圧縮空気を注入材用容器1に移送した。これにより、注入材用容器1の注入材Aが第2ホース6を介して地盤用容器5に移送された。地盤用容器5に注入材Aが模擬地盤B上に約1cmまで入った後、注入材用容器1の空気圧を1分間に0.1MPaの割合で1.6MPaまで増加させ、そして、注入材用容器1の空気圧が1.6MPaに到達してから15分間注入材用容器1の空気圧を1.6MPaに保持した。なお、注入材用容器1の空気圧が1.6MPaに到達する前に、注入材用容器1に入っていた注入材Aの略全量が模擬地盤Bを浸透し、地盤用容器5外に排出された時には、その時点で圧縮空気の移送を停止した。
注入材用容器1の空気圧を1.6MPaで15分間保持できた場合は、模擬地盤B上に注入材Aが残存しているか否か、すなわち、模擬地盤B上に注入材Aからなる不透水層が形成されているか否かを目視で確認した。
また、注入材Aが模擬地盤B中を浸透した深さ(浸透深さ)を、模擬地盤Bの表面からの距離で計測した(0〜17cmを0.5cm単位で計測した。注入材Aが模擬地盤Bの全層通過し、地盤用容器5外に排出された場合は「浸透深さ>17.0cm」とした。)。
さらに、コンプレッサ2による圧縮空気の移送を開始してから前記地盤用容器5内の空気圧(ゲージ圧)を第2ゲージ7で測定した。前記地盤用容器5内の空気圧の測定値が1.6MPaまで到達した場合は1.6MPaを最大圧力とし、注入材Aの略全量が模擬地盤B中を浸透して地盤用容器5外に排出され、前記地盤用容器5内の空気圧が1.6MPaまで達しなかったときは、測定値の最大値を最大圧力とした。
【0046】
実施例及び比較例の試験結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、本発明の範囲内である実施例1、2のセメント組成物を有する注入材は、セメント組成物のG
85が45.1μm以下であり且つG
60/G
10が5.4以下である比較例1〜3に比して、最大圧力が高い値を示し、また、浸透深さが低い値を示し、さらに、不透水層が形成されていた。
以上のことから、本発明のセメント組成物は、地盤に浸透し難い注入材を提供しうることがわかる。
【0049】
<模擬地盤の土壌として、日瓢製3号珪砂(15%粒径D
15:935.4μm)を用いた実験例>
模擬地盤の土壌として、日瓢製4号珪砂(15%粒径D
15:627.4μm)の代わりに、日瓢製3号珪砂(15%粒径D
15:935.4μm)を用いて、下記の追加例1−1〜1−10の注入材について、実施例及び比較例と同様な試験を行った。
【0050】
(追加例1−1)
セメント組成物の一部として下記の細骨材を用いたこと、及び、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
細骨材:珪砂(日瓢製、7号珪砂)
【0051】
(追加例1−2)
減水剤の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0052】
(追加例1−3、追加例1−5〜追加例1−7)
減水剤の量を表2に示すようにしたこと、及び、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0053】
(追加例1−4)
細骨材として、日瓢製7号珪砂及び日瓢製6号珪砂を用いたこと、並びに、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0054】
(追加例1−8)
細骨材として、日瓢製7号珪砂の代わりに日瓢製6号珪砂を用いたこと、及び、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0055】
(追加例1−9)
細骨材として、日瓢製7号珪砂の代わりに日瓢製5号珪砂を用いたこと、及び、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0056】
(追加例1−10)
細骨材として、日瓢製7号珪砂の代わりに日瓢製5号珪砂及び日瓢製6号珪砂を用いたこと、並びに、細骨材の量を表2に示すようにしたこと以外は、追加例1−1と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0057】
追加例1−1〜1−10の試験結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、追加例1−1〜1−10のセメント組成物を有する注入材は、最大圧力が高い値を示し、また、不透水層が形成されていた。
また、追加例1−1〜1−4、1−8、1−10のセメント組成物を有する注入材は、D
15/G
85が10.4を越える追加例1−5〜1−7、D
15/G
85が1.7以下の追加例1−9に比して、浸透深さが低い値を示した。このことから、D
15/G
85が9.1以下で2.0以上であることが好ましいことがわかる。
【0060】
<模擬地盤の土壌として、日瓢製2号珪砂(15%粒径D
15:1028.1μm)を用いた実験例>
模擬地盤の土壌として、日瓢製4号珪砂(15%粒径D
15:627.4μm)の代わりに、日瓢製2号珪砂(15%粒径D
15:1028.1μm)を用いて、下記の追加例2−1〜2−14の注入材について、実施例及び比較例と同様な試験を行った。
【0061】
(追加例2−1)
比較例3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0062】
(追加例2−2)
細骨材として、日瓢製7号珪砂及び日瓢製6号珪砂を用いたこと、並びに、細骨材の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0063】
(追加例2−3)
細骨材の量、及び、減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0064】
(追加例2−4)
追加例1−3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0065】
(追加例2−5)
細骨材として、日瓢製7号珪砂及び日瓢製6号珪砂を用いたこと、並びに、細骨材の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−3と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0066】
(追加例2−6、2−7)
細骨材の量、及び、減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0067】
(追加例2−8、2−9)
細骨材の量、水の量、及び、減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0068】
(追加例2−10)
スミクレーの量、及び、減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−6と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0069】
(追加例2−11)
減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−6と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0070】
(追加例2−12)
スミクレーの量、及び、減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−6と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0071】
(追加例2−13)
減水剤の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例1−7と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0072】
(追加例2−14)
細骨材として、日瓢製7号珪砂の代わりに日瓢製5号珪砂を用いたこと、及び、細骨材の量を表3に示すようにしたこと以外は、追加例2−13と同様にして、セメント組成物及び注入材を作製した。
【0073】
追加例2−1〜2−14の試験結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、追加例2−2〜2−14のセメント組成物を有する注入材は、セメント組成物のG
85が45.1μm以下であり且つG
60/G
10が5.4以下である追加例2−1と異なり、不透水層が形成されていた。
以上のことから、85%粒径が45.1μmを超え且つG
60/G
10が5.4を越えるセメント組成物は、地盤の土壌の粒径が大きく注入材が透過しやすい条件下において、地盤に浸透し難い注入材を提供しうることがわかる。
また、追加例2−2〜2−9のセメント組成物を有する注入材は、D
15/G
85が11.5以上の追加例2−10〜2−13、D
15/G
85が1.5以下の追加例2−14に比して、浸透深さが低い値を示した。このことから、D
15/G
85が9.1以下で2.0以上であることが好ましいことがわかる。