(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
<
可視用着色インク組成物>
本発明の
可視用着色インク組成物は、水と、有機顔料と、一般式(I)で表される近赤外線吸収色素とを含有する。
以下、一般式(I)で表される近赤外線吸収色素を、特定IR色素ともいう。
インク組成物を上記構成とすることで、画像形成をした場合に、紙のカックルを抑制すると共に、画像の色味を損ね難くすることができる。
なお、カックルとは、「コックリング(cockling)」または「波うち」とも称され、記録媒体への印字において、記録媒体表面が細かく皺になる現象をいう。
かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
【0026】
記録媒体上に形成された画像を乾燥するために記録媒体全体を加熱すると、インク組成物が付与された画像部は、インク組成物中の水を記録媒体が吸収することで、記録媒体が膨潤し、水素結合が切れて紙の繊維の並びが乱れた状態となる。また、画像部を乾燥することで、繊維の並びが乱れたままの状態で水素結合が再結合する。
一方、記録媒体全体を加熱すると、インク組成物が付与されていない非画像部は収縮する。
【0027】
そのため、画像部と非画像部の繊維の収縮差が大きくなり、記録媒体がカールしたり、カックルを発生する問題が生じ易くなる。
かかる問題を抑制するために、非画像部は加熱せず、画像部のみを選択的に加熱することが考えられる。つまり、インク組成物に、赤外線照射により発熱する近赤外線吸収色素を添加することで、画像形成された記録媒体に赤外線を照射したときに、画像部のみを選択的に加熱することができる。
これにより、非画像部の収縮がほとんど起こらないため、画像部と非画像部の繊維の収縮差が小さくなり、カックルの発生を抑制することができる。
【0028】
しかし、近赤外線吸収色素は、一般に緑味を帯びており、赤外線を吸収しても分解し難いために、画像中に残存する近赤外線吸収色素に起因する緑味が画像の色味に重なり、画像の色味を損ね易かった。
例えば、既述の特許文献1および特許文献2に示される近赤外線吸収色素は、赤外線吸収による分解性が十分ではない。また、特許文献2に示されるインクは、不可視用途に用いられるインクであり、有機顔料をほとんど含まないため、そもそも画像の色味は考慮されていない。
【0029】
これに対して、本発明の
可視用着色インク組成物が含有する特定IR色素は、赤外線を吸収することで、容易に分解し、近赤外線吸収色素に起因する緑味を残し難いため、画像の色味を損ね難いと考えられる。また、特定IR色素の分解性が高いため、色素の分解による発熱が大きく、インク組成物を迅速に加熱し、乾燥することができると考えられる。そのため、記録媒体として、紙を含む記録媒体を用いた場合に、画像形成後の残水量を速やかに減少させ、紙のカックルを抑制するものと考えられる。
【0030】
以下、本発明の
可視用着色インク組成物、および、画像形成方法について、詳細に説明する。
なお、「
可視用着色インク組成物」を単に
「インク組成物」又は「インク」ということがある。また、インク(組成物)中の成分の凝集を、「インク(組成物)の凝集」ということがある。
【0031】
〔一般式(I)で表される近赤外線吸収色素−特定IR色素−〕
本発明の
可視用着色インク組成物は、一般式(I)で表される近赤外線吸収色素(特定IR色素)の少なくとも1種を含有する。
【0033】
一般式(I)中、A
1及びA
2は各々独立して下記一般式(1)〜(5)のいずれか1つで表される官能基を表し、n
1及びn
2は0以上の整数を表す。Ar
1及びAr
2は各々独立してアリール基を表し、B
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、及びC
3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、任意の二つで環を形成しても良い。D
1及びD
2は各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、X
−は対アニオンを表し、Y
1、Y
2、Z
1、及びZ
2は各々独立して非金属原子からなる2価の連結基を表す。
【0035】
一般式(1)〜(5)中、Lは非金属原子からなる多価の連結基を表し、R
1はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基又は環状イミド基を表し、R
2、R
3はアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
4はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基又は−SO
2−R
11を表し、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
8及びR
9の内の一方は水素原子、他方は水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
10はアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
11はアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R
5、R
6及びR
7の内の任意の2つもしくは3つで環を形成しても良く、R
8とR
10またはR
9とR
10で環を形成しても良い。XはO又はSを表す。
【0036】
R
1〜R
11がアルキル基を表すとき、アルキル基としては、炭素原子数が1〜20までの直鎖状、分岐状及び環状のアルキル基を挙げることができる。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。アルキル基はさらに置換基を有していてもよい。
これらの中では、炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状および炭素原子数5〜10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0037】
R
1〜R
11がアリール基を表すとき、アリール基としては、1個〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基等を挙げることができる。アリール基はさらに置換基を有していてもよい。
これらの中では、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。また、アリール基には上記炭素環式アリール基の他、複素環式(ヘテロ)アリール基が含まれる。複素環式アリール基としては、ピリジル基、フリル基、その他ベンゼン環が縮環したキノリル基、ベンゾフリル基、チオキサントン基、カルバゾール基等の炭素数3〜20、ヘテロ原子数1〜5を含むものが用いられる。
【0038】
R
1〜R
11がアルケニル基を表すとき、アルケニル基としては、炭素数2〜30のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基などを挙げることができる。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の炭素数は2〜8が好ましい。
【0039】
R
1〜R
11がアルキニル基を表すとき、アルキニル基としては、炭素数2〜20のアルキニル基を挙げることができる。また、アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキニル基がより好ましい。その具体例としては、エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0040】
置換基としては、特許3627903の段落番号[0025]〜[0029]に示される置換基が挙げられ、中でも、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が好ましい。
【0041】
一般式(1)〜(5)中、Lで表される非金属原子からなる多価の連結基としては、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つ連結基が挙げられる。
【0042】
一般式(1)〜(5)で表される官能基は、より具体的には、下記官能基が挙げられる。ただし、これらは本発明の内容を限定するものではない。
【0044】
上記官能基中、R
21、R
22、及びR
23は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基を表し、任意の2つの基で環を形成してもよい。E
−は対アニオンを表す。
【0045】
R
21、R
22、及びR
23で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基は、R
1〜R
11で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基と同義である。
より具体的には、置換基としては、特許3627903の段落番号[0024]〜[0037]に示されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。中でも、R
21、及びR
23として好ましいものは、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基であり、R
22として好ましいものは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基である。
【0046】
E
−で表される対アニオンとは、負電荷を有するアニオンであり、親水性官能基であるアンモニウム基(−N
+R
41R
42R
43)中の正電荷とイオンペアを形成する。故に、E
−で表される対アニオンは、アンモニウム基中に存在する正電荷と等電荷となるモル数だけ存在する。
具体的な対アニオンとしてはF−、Cl−、Br−、I−、HO−、CN
−、SO
42−、HSO
4−、SO
32−、HSO
3−、NO
3−、CO
32−、HCO
3−、PF
6−、BF
4−、ClO
4−、ClO
3−、ClO
2−、ClO
−、BrO
4−、BrO
3−、BrO
2−、BrO
−、IO
4−、IO
3−、IO
2−、IO
−、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、リン酸アニオン等が挙げられる。
また、特許3627903の段落番号[0039]〜[0048]に具体的に示されるアニオンも好ましい。
以上の中でも、Cl
−、Br
−、I
−、CN
−、SO
42−、PF
6−、BF
4−、ClO
4−、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、リン酸アニオン、及び一般式(III)で表されるスルホン酸エステル基が好ましい。
【0048】
一般式(III)式中、L
1 はアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、又は環状イミド基を表す。
【0049】
L
1 がアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基を表すとき、これら官能基の具体例としては前述のような官能基が挙げられる。
L
1 が環状イミド基を表すとき、環状イミドとしては、琥珀酸イミド、フタル酸イミド、シクロヘキサンジカルボン酸イミド、ノルボルネンジカルボン酸イミド等の炭素原子4〜20までのものを用いることができる。
上記のうちL
1 として好ましいものは、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、環状イミド基である。
以下に熱分解性スルホン酸エステル基の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
一般式(I)中、n
1及びn
2は、各々独立に、0以上の整数を表す。n
1及びn
2は、同じであっても異なっていてもよい。n
1及びn
2は、ともに0であることが好ましい。
引き続き、一般式(I)におけるAr
1、Ar
2、B
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、C
3、D
1、D
2、X
−、Y
1、Y
2、Z
1、及びZ
2について説明する。
【0053】
一般式(I)においてAr
1及びAr
2で表されるアリール基としては、R
1〜R
11の説明で挙げたアリール基が挙げられる。アリール基はさらに置換基を有していてもよい。このうち特に好ましいのはフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基、アントラセニル基、置換アントラセニル基である。
【0054】
一般式(I)においてB
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、及びC
3がハロゲン原子を表す場合、ハロゲン原子としてはF、Cl、Br、及びIを用いることができる。
一般式(I)においてB
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、及びC
3で表されるアルキル基、アリール基、アルキニル基、及びアルケニル基としては、R
1〜R
11の説明で挙げたアルキル基、アリール基、アルキニル基、及びアルケニル基を用いることができる。B
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、及びC
3で表されるアルキル基、アリール基、アルキニル基、及びアルケニル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0055】
上記のうち、B
1、B
2、B
3、B
4、C
1、C
2、及びC
3として好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基であり、特に好ましいのは更に任意の二つの基で環を形成している場合である。
一般式(I)においてD
1及びD
2で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基としては、R
1〜R
11の説明で挙げたアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基を用いることができる。D
1及びD
2で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。このうち特に好ましいのはアルキル基、置換アルキル基である。
【0056】
一般式(I)においてX
−で表される対アニオンとは、負電荷を有するアニオンであり、化合物中の正電荷とイオンペアを形成する。故に、X
−で表される対アニオンは、化合物中に存在する正電荷と等電荷となるモル数だけ存在する。
より具体的な対アニオンとしてはE
−で表される対アニオンとして説明したアニオンが挙げられる。これらのアニオンのうち、本発明に好適に使用されるアニオンは、Cl
−、Br
−、I
−、CN
−、SO
42−、PF
6−、BF
4−、ClO
4−、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、リン酸アニオンである。
【0057】
一般式(I)においてY
1及びY
2で表される非金属原子からなる2価の連結基とは、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
【0059】
2価の連結基が置換基を有する場合、置換基としてはメチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基のような炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のような炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基のような炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネートのような炭酸エステル基等を用いることができる。
Z
1、Z
2で表される非金属原子からなる2価の連結基とは、0から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
【0061】
2価の連結基が置換基を有する場合、置換基としてはメチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基のような炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のような炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基のような炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネートのような炭酸エステル基等を用いることができる。
以下、一般式(I)で表される特定IR色素の具体例〔IR−1〜IR−12〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
上記具体例の中でも、特定IRとしては、インク組成物への赤外線照射により発熱すると共に速やかに分解して画像の色味に影響を与えにくい観点から、IR−1、IR−7、IR−2、IR−4、及びIR−5が好ましく、IR−1、IR−7、及びIR−5がより好ましい。
【0066】
既述の特定IR色素は、いずれも、従来から知られている合成方法を参照して合成することができる。
【0067】
本発明の
可視用着色インク組成物中の特定IR色素の含有量は、特に制限されないが、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.3質量%であることが好ましい。特定IR色素の含有量が0.05質量%以上であることで、インク組成物の乾燥を迅速に行うことがで、0.3質量%であることで、特定IR色素に起因するインク組成物の着色を抑制することができる。
インク組成物中の特定IR色素の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.06質量%〜0.28質量%であることがより好ましく、0.07質量%〜0.25質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
〔有機顔料〕
本発明の
可視用着色インク組成物は、有機顔料を含有する。
有機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
例えば、アゾ系顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ系顔料、多環式顔料などがより好ましい。
アゾ系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。
多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ぺリレン系顔料、ぺリノン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、などが挙げられる。
染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0070】
キナクリドン系顔料を構成するキナクリドン系化合物としては、無置換のキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジクロルキナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、3,10−ジクロルキナクリドン、3,10−ジメトキシキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、4,11−ジクロルキナクリドン、4,11−ジメトキシキナクリドン、キナクリドンキノン等が挙げられる。
【0071】
キナクリドン系顔料としては、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド202、C.I.ピグメント・レッド206、C.I.ピグメント・レッド207、C.I.ピグメント・レッド209、及びC.I.ピグメント・バイオレット19を挙げることができる。
【0072】
インク組成物は、有機顔料を1種のみ含んでいてもよいし2種以上を含んでいてもよい。
【0073】
(無機顔料)
本発明の
可視用着色インク組成物は、さらに、無機顔料を含有していてもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0074】
また、例えば、特開2007−100071号公報の段落0142〜0145に記載の顔料を用いてもよい。
【0075】
−水不溶性樹脂によって被覆された顔料(樹脂被覆顔料)−
有機顔料(インク組成物が無機顔料を含む場合は、有機顔料および無機顔料)は、表面の全部または一部が水不溶性樹脂によって被覆されている樹脂被覆顔料であることが好ましい。これにより、インク組成物の分散安定性と吐出信頼性に優れ、形成される画像の耐擦性、耐光性が向上する。
【0076】
[水不溶性樹脂]
水不溶性樹脂は、酸性基を有する構造単位の少なくとも1種を含むことが好ましく、必要に応じてその他の構造単位を含んで構成されることが好ましい。水不溶性樹脂は、インク組成物中で安定的に存在することができ、凝集物の付着または堆積を緩和し、付着した凝集物の除去の容易化の観点から、親水性構造単位(A)の少なくとも1種と疎水性構造単位(B)の少なくとも1種とを含むことが好ましく、酸性基が親水性構造単位(A)の少なくとも1種に含まれることがより好ましい。
なお、水不溶性樹脂とは、25℃の水100gに対する溶解量が5g以下である樹脂を意味する。「溶解量」は、水不溶性樹脂の酸性基を水酸化ナトリウムで100%中和したときの溶解量である
【0077】
水不溶性樹脂における親水性構造単位としては、親水性官能基の少なくとも1種を含んでいれば特に制限はなく、イオン性の親水性基を含んでいても非イオン性の親水性基を含んでいてもよい。本発明においては酸性基を有する親水性構造単位であることが好ましい。また、酸性基を有する親水性構造単位は、酸性基含有モノマーに由来する構造単位であっても、酸性基を有さない構造単位(重合後のポリマー鎖)に高分子反応で酸性基を導入したものであってもよい。
【0078】
酸性基としては特に制限無いが、乳化又は分散状態の安定性の観点からカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の分散安定性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0079】
水不溶性樹脂は酸性基を有する構造単位を含むが、疎水性構造単位(B)の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。疎水性構造単位としては疎水性の官能基を含む構造単位であれば特に制限はないが、芳香環を有する構造単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0080】
本発明の
可視用着色インク組成物は、高分子分散剤を用いて特定IR色素を十分に分散して、効率よく、迅速にインク組成物を乾燥するため、有機顔料が記録媒体に吸収される前に記録媒体上に残って画像が記録媒体に固定化し易くなると考えられる。従って、高い光学濃度の画像を形成することができ、色が褪せ易いマゼンタインクおよびイエローインクでも、顔料が記録媒体上により多く載っている分、色褪せにくい。
従って、可視用の着色インク組成物である場合に、本発明の効果を発現しやすく、インク組成物が、例えば、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク等であるときに好適であり、中でも、特に褪色し易いイエローインクであるときに、好適である。
【0081】
本発明の
可視用着色インク組成物中における有機顔料の含有量(有機顔料が2種以上である場合には総含有量)は、インク組成物の全質量に対し、1.0質量%以上が好ましい。さらには、インク組成物中における有機顔料の含有量は、インク組成物の全質量に対し、2.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上が特に好ましい。
有機顔料の含有量が1.0質量%以上であると、画像の光学濃度がより向上する。有機顔料の含有量の上限については特に限定はないが、20.0質量%が好ましく、15.0質量%がより好ましく、10.0質量%が更に好ましく、9.0質量%が更に好ましく、8.0質量%が特に好ましい。
【0082】
顔料を樹脂被覆顔料とする場合は、顔料(p)と水不溶性樹脂(r)との比率(p:r)は、質量比で100:25〜100:140が好ましく、より好ましくは100:25〜100:50である。比率(p:r)は、特定ポリマーが100:25の割合以上であると分散安定性と耐擦性が良化する傾向にあり、特定ポリマーが100:140の割合以下であると分散安定性が良化する傾向がある。
【0083】
樹脂被覆顔料は、水不溶性樹脂及び顔料等を用いて従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相乳化法が好ましい。
【0084】
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有するポリマーと顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。
「転相乳化法」による具体的な方法は、特開平10−140065号公報、特開2009−221251号公報(特に段落0074〜0082)、特開2011−195684号公報(特に段落0042〜0052)に記載されている方法を参照できる。
【0085】
インク組成物中におけるポリマー被覆顔料の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、インク組成物の分散安定性、濃度の観点から、インク組成物の全量に対し、1.0〜15.0質量%が好ましく、2.0〜10.0質量%がより好ましい。
【0086】
また、有機顔料と、近赤外線吸収色素〔特定IR色素〕との比(有機顔料:近赤外線吸収色素)は、質量基準で、14:1〜75:1であることが好ましく、15:1〜70:1がより好ましく、16:1〜55:1がさらに好ましい。
【0087】
〔水〕
本発明の
可視用着色インク組成物は水を含有する。
水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
インク組成物中における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、安定性および吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全量に対し、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
【0088】
(高分子分散剤)
本発明の
可視用着色インク組成物は、高分子分散剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
インク組成物が高分子分散剤を含有することで、特定IR色素および有機顔料、特に特定IR色素を、インク組成物中で十分に分散し易く、インク組成物を迅速かつ均一に乾燥し易い。
ここで、高分子分散剤において、高分子とは、具体的には、重量平均分子量(Mw)が、3,000以上であることをいう。
高分子分散剤としては、水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)が好ましい。水不溶性のポリマーは、特定IR色素および有機顔料の分散が可能であれば特に制限はなく、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
【0089】
疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。
親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
【0090】
高分子分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0091】
高分子分散剤としては、特定IR色素の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
【0092】
また高分子分散剤の重量平均分子量としては、特定IR色素の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0093】
本発明の
可視用着色インク組成物中における高分子分散剤の含有量は、特定IR色素および有機顔料の分散性、ひいてはインク組成物の迅速かつ均一な乾燥の観点から、特定IR色素の全質量に対し、高分子分散剤が10質量%〜100質量%であることが好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、20質量%〜60質量%であることが特に好ましい。
また、有機顔料の全質量に対し、高分子分散剤が5質量%〜200質量%であることが好ましく、10質量%〜100質量%であることがより好ましく、20質量%〜80質量%であることが特に好ましい。
【0094】
(ポリマー粒子)
本発明の
可視用着色インク組成物は、定着性、耐擦性、凝集性の観点から、ポリマー粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。
ここでいうポリマー粒子は、インク組成物中に分散される粒子状のポリマーである。
インク組成物がポリマー粒子を含むと、ポリマー粒子が、後述する処理液又は処理液を乾燥させた領域と接触した際に、インク組成物が分散不安定化して凝集し、インク組成物が増粘して、画像が記録媒体に固定化される。これにより、画像の定着性、耐擦性、凝集性がより向上する。
【0095】
ポリマー粒子としては自己分散性ポリマー粒子が好適である。
自己分散性ポリマー粒子は、界面活性剤の不存在下、分散状態(特に転相乳化法による分散状態)としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
自己分散性ポリマー粒子としては、特開2010−64480号公報の段落0090〜0121や、特開2011−068085号公報の段落0130〜0167に記載されている自己分散性ポリマー粒子を用いることができる。
自己分散性ポリマー粒子は転相乳化法により好適に作製できる。
【0096】
ポリマー粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)を構成するポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで、水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0097】
ポリマー粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましい。また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0098】
ポリマーの親疎水性制御の観点からみたポリマー粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)の好ましい態様は、ポリマーの親疎水性制御の観点からみて、脂環式(メタ)アクリレート(好ましくは2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレート)に由来する構造単位を20質量%〜90質量%(好ましくは40質量%〜80質量%)と、解離性基(好ましくはアニオン性の解離性基、より好ましくはカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボキシル基)含有モノマーに由来する構造単位を25質量%以下と、炭素数1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも1種と、を含み、酸価が20mgKOH/g〜120mgKOH/g(より好ましくは25mgKOH/g〜100mgKOH/g)であって、重量平均分子量が3000〜20万(好ましくは10000〜20万)であるビニルポリマーである態様である。
この態様において、さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造単位を40質量%〜80質量%と、少なくともメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を20質量%〜60質量%と、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造単位を25質量%以下と、を含み、酸価が30mgKOH/g〜80mgKOH/gであって、重量平均分子量が30000〜15万であるビニルポリマーであることが好ましい。
【0099】
また、ポリマーの親疎水性制御の観点からみたポリマー粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)の別の好ましい態様は、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15質量%〜80質量%を含む態様である。この態様において、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15質量%〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15質量%〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25mgKOH/g〜100mgKOH/gであって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25mgKOH/g〜95mgKOH/gであって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
【0100】
(コロイダルシリカ、ケイ酸アルカリ塩)
インク組成物は、コロイダルシリカ及びケイ酸アルカリ塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
これにより、インク組成物の吐出を繰り返し行ったときのノズル吐出面(例えば、ノズルの吐出側に設けられることがある撥液膜の表面)の劣化をより効果的に抑制できる。この効果は、ノズル(例えばノズルプレート)として、シリコンを含むノズル(例えばシリコンノズルプレート)を用いた場合により顕著である。
ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、特開2011−57754号公報の段落0015〜0019に記載されている公知のケイ酸アルカリ金属塩を用いることができる。
【0101】
−コロイダルシリカ−
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩を含んでいてもよい。少量成分として含まれることがあるアルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが挙げられる。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカの分散媒としては特に制限はなく、水、有機溶剤、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。有機溶剤は水溶性有機溶剤であっても非水溶性有機溶剤であってもよいが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール等を挙げることができる。
コロイダルシリカとしては、例えば特開2011−195684号公報の段落0014〜0022に記載されている公知のコロイダルシリカを用いることができる。
【0102】
コロイダルシリカは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
インク組成物がコロイダルシリカを含む場合、コロイダルシリカの含有量(2種以上の場合には総含有量)には特に制限はないが、例えば、インク組成物全量に対し、0.0001質量%〜10質量%とすることができ、0.01質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.03質量%〜0.2質量%である。インク組成物中の含有量が上限値以下であることで、インク組成物の吐出性がより向上し、またシリカ粒子の研磨剤効果によるインクジェットヘッドへの影響をより効果的に抑制できる。また下限値以上であることで、ノズル吐出面の撥液性の低下(例えば、撥液膜の劣化)をより効果的に抑制できる。
【0103】
(尿素)
インク組成物は尿素を含んでいてもよい。
尿素は、保湿機能が高いため、固体湿潤剤としてインクの乾燥、凝固をより効果的に抑制することができる。
さらに本発明の
可視用着色インク組成物は、前述のコロイダルシリカと尿素とを含むことでインクジェットヘッド等のメンテナンス性(洗浄除去性又は拭き取り性)がより効果的に向上する。
【0104】
インク組成物における尿素の含有量は、メンテナンス性(拭き取り性)を向上させる観点等からは、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0105】
インク組成物が、尿素及びコロイダルシリカを含有する場合、尿素の含有量と、コロイダルシリカの含有量の比率としては特に制限はないが、コロイダルシリカに対する尿素の含有比率(尿素/コロイダルシリカ)が5〜1000であることが好ましく、10〜700であることがより好ましい。
【0106】
インク組成物は尿素以外の固体湿潤剤を含んでいてもよい。
尿素以外の固体湿潤剤や、インク組成物が尿素及びコロイダルシリカを含有する場合の特に好ましい形態については、例えば、特開2011−195684号公報の段落0026〜0030を参照することができる。
【0107】
(界面活性剤)
本発明の
可視用着色インク組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0108】
界面活性剤としては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体(アセチレングリコール系界面活性剤)がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
【0109】
インク組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の具体的な量には特に限定はないが、インク組成物の全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、更に好ましくは0.2質量%〜3質量%である。
【0110】
(その他の添加剤)
本発明の
可視用着色インク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インクジェット用インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インクジェット用インク組成物の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落0153〜0162に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
【0111】
また、インク組成物は、重合性化合物を少なくとも1種含むことにより、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型のインク組成物として構成されていてもよい。この場合、インク組成物(画像形成において後述する処理液を用いる場合は、インク組成物及び処理液の少なくとも一方)は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、例えば、2011−184628号公報の段落0128〜0144に記載されている公知の水溶性の重合性化合物や、特開2011−178896号公報の段落0019〜0034に記載されている公知の(メタ)アクリルアミド化合物(好ましくは2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0186〜0190や特開2011−178896号公報の段落0126〜0130に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
【0112】
インク組成物の粘度としては、インクの付与をインクジェット方式で行う場合、打滴安定性と凝集速度の観点から、1mPa・s〜30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2mPa・s〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2mPa・s〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定することができる。
【0113】
インク組成物は、アルカリ性であることが好ましい。
本発明の画像形成方法の詳細は後述するが、処理液を用いた画像形成における特に好ましい形態は、インクの凝集性の観点から、インク組成物がアルカリ性であり、処理液が酸性である形態である。
インク組成物のpHとしては、インク安定性と凝集速度の観点から、pH7.5〜pH10であることが好ましく、pH8〜pH9であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で、通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
インク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調製することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
【0114】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、本発明の
可視用着色インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成する画像形成工程と、形成された画像に赤外線を照射する赤外線照射工程とを有する。
本発明の画像形成方法は、さらに、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
画像形成方法を上記構成とすることで、紙を含む記録媒体を用いて画像形成をしたとき、紙のカックルを抑制すると共に、画像形成により得られる画像の色味を損ね難くすることができる。
【0115】
〔画像形成工程〕
画像形成工程においては、本発明の
可視用着色インク組成物を記録媒体に付与して画像を形成する。
【0116】
(記録媒体)
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体としては特に制限されない。
例えば、印刷用紙の如き紙を含む記録媒体のほか、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等であってもよい。
中でも、本発明の
可視用着色インク組成物は、紙を含む記録媒体に画像形成したときに、紙のカックルを抑制することができることから、記録媒体は、紙を含むことが好ましい。
【0117】
紙を含む記録媒体としては、例えば、普通紙、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。また、特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙を用いてもよい。
セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0118】
紙を含む記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0119】
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05mL/m
2・ms
1/2〜0.5mL/m
2・ms
1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1mL/m
2・ms
1/2〜0.4mL/m
2・ms
1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2mL/m
2・ms
1/2〜0.3mL/m
2・ms
1/2の記録媒体である。
【0120】
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
【0121】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0122】
(インク付与方法)
本発明の
可視用着色インク組成物の記録媒体への付与方法は、特に制限されず、スプレー塗布、塗布ローラ等の塗布、インクジェット法による付与、浸漬などの方法が挙げられるが、インクジェット法が好ましい。インクジェット法によるインク組成物の吐出は、例えば、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクの吐出方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0123】
インクジェット法には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0124】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、インクジェット法に用いられるノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0125】
インクジェット法によるインク組成物の吐出としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺(幅方向の一辺)の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。上記ラインヘッドの吐出面側にはノズルプレートが設けられ、ノズルプレートには、記録素子に対応する位置に吐出孔が設けられる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度(ノズル吐出面(例えば後述の撥液膜)からのインクの切れ性)の向上効果が大きい。
特に、ライン方式の中でも、記録媒体の1回の走査で画像を形成する、シングルパス方式においては、吐出精度(ノズル吐出面(例えば後述の撥液膜)からのインクの切れ性)の向上効果が特に顕著となる。
【0126】
更には、画像形成工程では、ライン方式による場合に、2種以上のインク組成物を用い、先に吐出するインク組成物(第n色目(n≧1)、例えば第2色目)とそれに続いて吐出するインク組成物(第n+1色目、例えば第3色目)との間の吐出(打滴)間隔を1秒以下にして好適に記録を行なうことができる。本発明においては、ライン方式で1秒以下の吐出間隔として、インク滴間の干渉で生じる滲みや色間混色を防止しつつ、従来以上の高速記録下で耐擦過性に優れ、ブロッキングの発生が抑えられた画像を得ることができる。また、色相及び描画性(画像中の細線や微細部分の再現性)に優れた画像を得ることができる。
【0127】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5pl(ピコリットル)〜6plが好ましく、1pl〜5plがより好ましく、更に好ましくは2pl〜4plである。
【0128】
本工程において、本発明の
可視用着色インク組成物は、複数の吐出孔が二次元に配列され吐出孔形成面(吐出面)にフッ素化合物を含む撥液膜が設けられたノズルプレートから吐出して付与することが好ましい。
以下、ノズルプレート、フッ素化合物を含む撥液膜、及び、本発明の画像形成方法に好適に用いられるノズルプレートを備えたインクジェットヘッドについて説明する。
【0129】
(ノズルプレート)
ノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成となっている。
複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
【0130】
ノズルプレートとしては、シリコンを含むノズルプレート(以下、「シリコンノズルプレート」ともいう)が好適である。
シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa
2O
5)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO
2膜であってもよい。
また、シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えて構成されたものであってもよい。
上記のうち、特に、五酸化タンタル等をはじめとする酸化タンタルからなる膜は、インクに対して非常に優れた耐インク性を有し、特にアルカリ性のインクに対して良好な耐侵食性が得られる。
【0131】
酸化シリコンからなる膜(SiO
2膜)を形成する方法の一態様を述べる。
例えば、化学蒸着法(CVD)リアクタにシリコン基板を収容し、SiCl
4及び水蒸気を導入することによって、シリコン基板上にSiO
2膜を形成できる。
このとき、SiCl
4の分圧は、0.05〜40torr(6.67〜5.3×10
3Pa)の間(例えば0.1〜5torr(13.3〜666.5Pa))とすることができ、H
2Oの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.2〜10torr)とすることができる。堆積温度は、一般には室温と摂氏100度との間である。
また、他の態様として、シリコン基板上にスパッタリングすることによりSiO
2膜を形成することができる。
いずれの態様においても、SiO
2膜が形成されるべきシリコン基板表面は、SiO
2膜を形成する前に(例えば、酸素プラズマを当てることによって)洗浄されることが好ましい。
【0132】
(フッ素化合物を含む撥液膜)
ノズルプレートの吐出孔形成面(吐出面)には、フッ素化合物を含む撥液膜が設けられている。
フッ素化合物を含む撥液膜のSP値としては特に限定はないが、インクの切れ性をより向上させる観点から、沖津法によって計算された撥液膜のSP値は、16.00MPa
1/2以下が好ましく、15.00MPa
1/2以下がより好ましく、13.00MPa
1/2以下が特に好ましい。
【0133】
撥液膜に含まれるフッ素化合物としては、例えば、フッ化アルキル基を有する化合物を好適に用いることができる。
本発明における撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
C
nF
2n+1−C
mH
2m−Si−X
3 … 一般式(F)
一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
【0134】
フッ化アルキルシラン化合物の例としては、C
8F
17C
2H
4SiCl
3(「1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン」や「FDTS」とも呼ばれている)、CF
3(CF
2)
8C
2H
4SiCl
3などのフルオロアルキルトリクロロシラン、CF
3(CF
2)
8C
2H
4Si(OCH
3)
3や、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルアルコキシシラン、等を挙げることができる。
【0135】
一般式(F)の中では、撥液性および撥液膜の耐久性の点で、nが1〜14の整数であって、mが0又は1〜5の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましく、更には、nが1〜12の整数であって、mが0〜3の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましい。
中でも、C
8F
17C
2H
4SiCl
3が最も好ましい。
【0136】
フッ素化合物を含む撥液膜の厚みとしては、特に制限はないが、0.2〜30nmの範囲が好ましく、0.4〜20nmの範囲がより好ましい。撥液膜の厚みは、30nmを超える範囲でも特に問題はないが、30nm以下であると膜の均一性の点で有利であり、0.2nm以上であるとインクへの撥水性が良好である。
【0137】
フッ素化合物を含む撥液膜としては、例えば、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)や、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜を用いることができる。ここで、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜には、フッ化アルキルシラン化合物が重合せずに積まれている膜のほか、フッ化アルキルシラン化合物の重合膜も含まれる。
【0138】
フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、特開2011−111527号公報の段落0114〜0124に記載された方法によって形成することができる。
【0139】
(ノズルプレートを備えたインクジェットヘッド)
図1は、本発明の画像形成方法に好適に用いられる、ノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、インクジェットヘッド100は、吐出孔(ノズル)を有するノズルプレート11と、ノズルプレートの吐出方向と反対側に設けられたインク供給ユニット20とを備えている。ノズルプレート11には、インクを吐出する複数の吐出孔12が設けられている。ノズルプレート11の吐出面側には、フッ素化合物を含む撥液膜13が設けられている。
【0140】
図2は、ノズルプレート11の吐出面(撥液膜13形成面)を概念的に示す斜視図である。
ノズルプレート11は、
図2に示すように、複数の吐出孔(ノズル)が2次元配列されて設けられている。吐出孔の数には限定はなく、画像形成の高速化等を考慮して適宜選択でき、例えば、32×60個とすることができる。
このノズルプレート11は、前述のシリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いることができ、例えば、少なくともノズル口内壁及びインク吐出方向側のプレート面にシリコンが露出した構造のシリコンノズルプレートが好ましい。
なお、図示しないが、ノズルプレート11は、シリコン基板とシリコン基板上に設けられた酸化シリコン膜とからなるシリコンノズルプレートであってもよい。この場合、酸化シリコン膜は、シリコン基板とフッ素化合物を含む撥液膜13との間に配置される。
【0141】
インク供給ユニット20は、ノズルプレート11の複数の吐出孔12のそれぞれとノズル連通路22を介して連通する複数の圧力室21と、複数の圧力室21のそれぞれにインクを供給する複数のインク供給流路23と、複数のインク供給流路23にインクを供給する共通液室25と、複数の圧力室21のそれぞれを変形する圧力発生手段30とを備えている。
【0142】
インク供給流路23は、ノズルプレート11と圧力発生手段30の間に形成されており、共通液室25に供給されたインクが送液されるようになっている。このインク供給流路23には、圧力室21との間を繋ぐ供給調整路24の一端が接続されており、インク供給流路23から供給されるインク量を所要量に絞って圧力室21に送液することができる。供給調整路24は、インク供給流路23に複数設けられ、このインク供給流路23を介して圧力発生手段30に隣接して設けられた圧力室21にインクが供給される。
このように、複数の吐出孔にインクを多量に供給することが可能である
【0143】
圧力発生手段30は、圧力室21側から振動板31、接着層32、下部電極33、圧電体層34、上部電極35を順に積み重ねて構成されており、外部から駆動信号を供給する電気配線が接続されている。画像信号に応じて圧電素子が変形することで、インクがノズル連通路22を介してノズル12から吐出される。
【0144】
また、吐出孔12の近傍には、循環絞り41が設けられており、常時インクが循環路42へ回収されるようになっている。これにより、非吐出時の吐出孔近傍のインクの増粘を防止することができる。
【0145】
〔赤外線照射工程〕
本発明の画像形成方法は、画像形成工程の後、形成された画像に赤外線を照射する赤外線照射工程を有する。
本発明の
可視用着色インク組成物が含有する特定IR色素は、赤外線を吸収することで発熱すると共に、速やかに分解すると考えら得る。そのため、近赤外線吸収色素の残存に起因する画像の色味の変化が生じにくい。
【0146】
画像への赤外線の照射方法は特に制限されないが、赤外線源の例としては、例えば通常の赤外線ランプの他に、キセノンフラッシュランプ、キセノンランプ、キセノンショートアークランプ、近赤外線ハロゲンヒーター、赤外LED、赤外線レーザ等を挙げることができる。好ましくはキセノンフラッシュランプ、キセノンランプ、近赤外線ハロゲンヒーター、赤外LED、波長700nm〜1500nmの赤外線を放射する固体レーザ又は半導体レーザが挙げられる。
【0147】
(画像定着工程)
本発明の画像形成方法は、本発明の効果(特に紙のカックル抑制)を損なわない限度において、さらに画像定着工程を有していてもよい。
画像定着工程としては、例えば、赤外線照射以外の非接触加熱方法により画像を加熱する工程、熱板または加熱加圧ローラを画像に押当てて加熱する接触加熱方法により画像を加熱する工程が挙げられる。
画像定着工程は、記録媒体上に形成された画像の、記録媒体への固定化をより向上する工程であり、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
【0148】
画像の非接触加熱方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法が挙げられる。また、接触加熱方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
【0149】
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、200mm/秒〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300mm/秒〜650mm/秒であり、更に好ましくは400mm/秒〜600mm/秒である。
【0150】
〔処理液付与工程〕
本発明の画像形成方法は、さらに、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
処理液付与工程は、画像形成工程の前であってもよいし、画像形成工程の後であってもよい。
記録媒体に付与された処理液は、インク組成物と接触して画像を形成する。これにより、インク組成物中の成分(有機顔料、特定IR色素等)が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。
本発明の画像形成方法が本工程を有することにより、インクジェット画像形成を高速化でき、更に、高速化しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
なお、処理液における各成分の詳細及び好ましい態様については後述する。
【0151】
処理液の記録媒体への付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0152】
処理液の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分の付与量が0.1g/m
2以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.1g/m
2〜1.0g/m
2となる量が好ましく、より好ましくは0.2g/m
2〜0.8g/m
2である。凝集成分の付与量は、0.1g/m
2以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m
2以下であると光沢度が高くなり過ぎず好ましい。
【0153】
また、本発明においては、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。画像形成工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0154】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0155】
(処理液)
本発明における処理液は、インク組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分の少なくとも1種を含む。すなわち、処理液が含む凝集成分は、インク組成物と処理液とが接触することで、インク組成物中の成分(有機顔料、特定IR色素など)を凝集させる。
インク組成物と共に処理液を用いることで、画像形成(特に、インクジェット記録)を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0156】
処理液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体組成物が挙げられる。
処理液は、酸性であることが好ましい。
具体的には、処理液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましく、1.5〜4であることが更に好ましい。この場合、画像形成工程で用いるインク組成物のpH(25℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット画像形成の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25℃)が3〜5である場合が好ましい。
凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0157】
−凝集成分−
処理液は、インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集成分の少なくとも1種を含有する。画像形成に用いたインク組成物(例えば、インクジェット法で吐出されたインク組成物)に処理液が混合することにより、例えば、インク組成物中で安定的に分散している有機顔料、特定IR色素等の凝集が促進される。
【0158】
凝集成分としては、酸性化合物の少なくとも1種が挙げられる。
酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
【0159】
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0160】
処理液は、酸性化合物に加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
処理液が酸性化合物を含む場合、処理液中における酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対し、5質量%〜95質量%であることが好ましく、10質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0161】
また、凝集成分としては、特開2011−042150号公報の段落0155〜0156に記載されている多価金属塩やカチオン性ポリマーを用いてもよい。
【0162】
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1mPa・s〜30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2mPa・s〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2mPa・s〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20mN/m〜60mN/mであることが好ましく、20mN/m〜45mN/mであることがより好ましく、25mN/m〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0163】
〔その他の工程〕
本発明の画像形成方法は、必要に応じ、メンテナンス工程、硬化工程等のその他の工程を有していてもよい。
【0164】
(メンテナンス工程)
本発明の画像形成方法において、画像をインクジェット法により画像形成を行うとき、インク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物(以下、「インク組成物等」ともいう)を、ノズル吐出面(例えば、ノズルに設けられた撥液膜)から除去するメンテナンス工程を有していてもよい。
【0165】
メンテナンス工程においては、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等によって、インク組成物またはインク組成物に由来する固着物を除去する。
またメンテナンス工程は、メンテナンス液をインクジェットヘッド周辺(例:インク流路等;以下、ヘッド等ともいう。)に付与することを含んでいてもよい。メンテナンス液をヘッド等に付与することにより、ノズル面のインク由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等してさらに除去しやすくなる。
メンテナンス液の付与は、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等の前であっても後であってもよい。好ましくは、メンテナンス液を付与後にワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク固着物を掻き落とす方法、風圧やメンテナンス液等の液圧等により取り除く方法、及び布・紙類で払拭する方法が挙げられる。中でも、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭が好ましい。
ワイパブレードの材質は弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
【0166】
(硬化工程)
本発明の画像形成方法は、インク組成物が重合性化合物を更に含有する場合には、更に、画像形成工程により形成された画像に対して活性エネルギー線を照射して画像を硬化する硬化工程を有していてもよい。
これにより、形成される画像の耐擦性や記録媒体との密着性がより向上する。
活性エネルギー線としては、重合性化合物を重合可能なものであれば、特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。また、活性エネルギー線の発生源として、例えば、紫外線照射ランプ(ハロゲンランプ、高圧水銀灯など)、レーザ、LED、電子線照射装置などが挙げられる。
【0167】
紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500mW/cm
2〜5000mW/cm
2であることが好ましい。
紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いてもよく、特に紫外線照射ランプが好適である。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、UV-LED光源等が好適である。水銀灯、UV−LEDの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色されたインク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できる点で適している。水銀灯には、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザ等が実用されている。発光波長領域として上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択される。
【実施例】
【0168】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0169】
<実施例1Y〜13Y、実施例1M〜2M及び実施例1C〜2Cのインク調製>
(近赤外線吸収色素分散物A1の調製)
下記組成A1の各成分を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて3時間分散した。50mL遠心菅を使用し、5000rpmで5分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、70nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、色素濃度7.6質量%の分散物として、近赤外線吸収色素分散物A1を得た。
【0170】
−組成A1−
・近赤外線吸収色素(IR−1)〔下記構造、特定IR色素〕 ・・・・10%
・SOLSPERSE44000 ・・・・・8.4%
〔Lubrizol社製、水溶性高分子分散剤〕
・イオン交換水 ・・・ 全体で100%となる量
【0171】
【化15】
【0172】
(近赤外線吸収色素分散物A2の調製)
下記組成A2の各成分を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて4時間分散した。50mL遠心菅を使用し、5000rpmで5分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、83nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、色素濃度7.2質量%の分散物として、近赤外線吸収色素分散物A2を得た。
【0173】
−組成A2−
・近赤外線吸収色素(IR−7)〔下記構造、特定IR色素〕 ・・・・10%
・SOLSPERSE44000 ・・・・・8.4%
〔Lubrizol社製、水溶性高分子分散剤〕
・イオン交換水 ・・・ 全体で100%となる量
【0174】
【化16】
【0175】
(水不溶性樹脂P−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸13g、及びメチルメタクリレート37gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=50/37/13)共重合体(水不溶性樹脂P−1)96.5gを得た。
得られた水不溶性樹脂P−1の組成は、
1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は49400であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)に規定される方法によりこの水不溶性樹脂P−1の酸価を求めたところ、84.8mgKOH/gであった。
【0176】
(イエロー顔料水性分散物B1の調製)
C.I.ピグメント・イエロー74を10部と、水不溶性樹脂P−1を4.6部と、メチルエチルケトン18部と、1mol/L NaOH水溶液8.0部とを加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した後、混練物をイオン交換水60部に分散した。得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した。
室温まで冷却し、高速遠心冷却機7550(久保田製作所社製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、10000rpmで30分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、91nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、顔料濃度14質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物として、イエロー顔料水性分散物B1を得た。
【0177】
(自己分散性ポリマー粒子C−1の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で87℃まで昇温した。反応容器内は還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート232.0g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸46.4g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」〔和光純薬(株)製〕2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
【0178】
滴下完了後、1時間攪拌後、(1)「V−601」1.16g、メチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63000、酸価は65.1(mgKOH/g)であった。
【0179】
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0%)を秤量し、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3%相当)、2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内温度を70℃に昇温した。次に蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化させた。
【0180】
その後、減圧下、反応容器内温度70℃で1.5時間保って、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で287.0g留去し(溶剤除去工程)、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。その後1μmのフィルターでろ過を実施し、ろ過液を回収し、固形分濃度26.5%の自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物を得た。得られた自己分散性ポリマー粒子C−1をイオン交換水で希釈し25.0%の液の物性を測定した結果、pH7.8、電気伝導度461mS/m、粘度14.8mPa・s、体積平均粒径2.8nmであった。
【0181】
(インクY1の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y1に示す他の成分とを用い、組成Y1となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY1を得た。
【0182】
〜インクY1の組成Y1〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1.6%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤)・・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0183】
(マゼンタ顔料水性分散物B2の調製)
C.I.ピグメント・レッド122を10部と、水不溶性樹脂P−1を4部と、メチルエチルケトン20部と、1mol/L NaOH水溶液7.8部とを加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した後、混練物をイオン交換水60部に分散した。得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、固形分成分を得た。
次いで、固形分成分を室温まで冷却し、高速遠心冷却機7550(久保田製作所社製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、10000rpmで30分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、85nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、顔料濃度14質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物として、マゼンタ顔料水性分散物B2を得た。
【0184】
(インクM1の調製)
マゼンタ顔料分散物B2と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成M1に示す他の成分とを用い、組成M1となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインクM1を得た。
【0185】
〜インクM1の組成M1〜
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) ・・・・6%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・2%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1.3%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0186】
(シアン顔料水性分散物B3の調製)
C.I.ピグメント・ブルー15:3を10部と、水不溶性樹脂P−1を4.5部と、メチルエチルケトン20部と、1mol/L NaOH水溶液8.3部とを加え、ロールミルで必要に応じて2〜8時間混練した後、混練物をイオン交換水60部に分散した。得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、固形分成分を得た。
次いで、固形分成分を室温まで冷却し、高速遠心冷却機7550(久保田製作所社製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、10000rpmで30分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、76nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、顔料濃度14質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物として、シアン顔料水性分散物B3を得た。
【0187】
(インクC1の調製)
シアン顔料分散物B3と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成C1に示す他の成分とを用い、組成C1となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、シアン色のインク組成物であるインクC1を得た。
【0188】
〜インクC1の組成C1〜
・シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3) ・・・・3%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.3%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1.3%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・8.2%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤)・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0189】
(インクY2の調製)
イエロー顔料分散物B1と、組成Y2中に示す他の成分とを用い、組成Y2となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY2を得た。
【0190】
〜インクY2の組成Y2〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1%
・2−ピロリドン〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・6.0%
・ジエチレングリコール(DEG)〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕・・14.0%
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・18.0%
・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.3%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0191】
(インクM2の調製)
マゼンタ顔料分散物B2と、組成M2に示す他の成分とを用い、組成M2となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインクM2を得た。
【0192】
〜インクM2の組成M2〜
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) ・・・・6%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・2%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1%
・2−ピロリドン〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・6.0%
・ジエチレングリコール(DEG)〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕・・14.0%
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・・・18.0%
・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.3%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0193】
(インクC2の調製)
シアン顔料分散物B3と、組成C2に示す他の成分とを用い、組成C2となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、シアン色のインク組成物であるインクC2を得た。
【0194】
〜インクC2の組成C2〜
・シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3) ・・・・3%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.3%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・1%
・2−ピロリドン〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・6.0%
・ジエチレングリコール(DEG)〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕・・14.0%
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・・・18.0%
・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.3%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0195】
(インクY3の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y3に示す他の成分とを用い、組成Y3となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY3を得た。
【0196】
〜インクY3の組成Y3〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・0.7%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0197】
(インクY4の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y4に示す他の成分とを用い、組成Y4となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY4を得た。
【0198】
〜インクY4の組成Y4〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・4%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0199】
(インクY5の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y5に示す他の成分とを用い、組成Y5となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY5を得た。
【0200】
〜インクY5の組成Y5〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・3.7%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0201】
(インクY6の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y6に示す他の成分とを用い、組成Y6となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY6を得た。
【0202】
〜インクY6の組成Y6〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・3.3%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0203】
(インクY7の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y7に示す他の成分とを用い、組成Y7となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY7を得た。
【0204】
〜インクY7の組成Y7〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・0.8%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0205】
(インクY8の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y7に示す他の成分とを用い、組成Y7となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY8を得た。
【0206】
〜インクY8の組成Y8〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A1 ・・・・3.2%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0207】
(近赤外線吸収色素溶液D1の調製)
近赤外線吸収色素(IR−1)8gをジメチルスルホキシド(和光純薬社製)92gに溶解させ、近赤外線吸収色素溶液D1とした。
【0208】
(インクY9の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y9に示す他の成分とを用い、組成Y9となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY9を得た。
【0209】
〜インクY9の組成Y9〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素溶液D1 ・・・・1.2%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0210】
(近赤外線吸収色素溶液D2の調製)
近赤外線吸収色素(IR−1)4gを2−ピロリドン(和光純薬社製)96gに溶解させ、近赤外線吸収色素溶液D2とした。
【0211】
(インクY10の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y10に示す他の成分とを用い、組成Y10となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY10を得た。
【0212】
〜インクY10の組成Y10〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素溶液D2 ・・・・2.5%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0213】
(インクY11の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y11に示す他の成分とを用い、組成Y11となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY11を得た。
【0214】
〜インクY11の組成Y11〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A2 ・・・・1.4%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0215】
(近赤外線吸収色素分散物A3の調製)
下記組成A3の各成分を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて5時間分散した。50mL遠心菅を使用し、5000rpmで5分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。 ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、86nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、色素濃度6.7質量%の分散物として、近赤外線吸収色素分散物A3を得た。
【0216】
−組成A3−
・近赤外線吸収色素(IR−2)〔下記構造、特定IR色素〕 ・・・・10%
・SOLSPERSE44000 ・・・・・8.4%
〔Lubrizol社製、水溶性高分子分散剤〕
・イオン交換水 ・・・ 全体で100%となる量
【0217】
【化17】
【0218】
(インクY12の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y12に示す他の成分とを用い、組成Y12となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY12を得た。
【0219】
〜インクY12の組成Y12〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A3 ・・・・1.6%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250(三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤)・・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0220】
<比較例1Y〜2Y、比較例1M、および比較例1Cのインク調製>
(インクY13の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y12に示す他の成分とを用い、組成Y13となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY13を得た。
【0221】
〜インクY13の組成Y13〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0222】
(近赤外線吸収色素分散物A4の調製)
下記組成A4の各成分を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて6時間分散した。50mL遠心菅を使用し、5000rpmで5分間遠心処理を行ない、沈殿物以外の上澄み液を回収した。ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、155nmであった。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、イオン交換水を加えて、色素濃度6.1質量%の分散物として、近赤外線吸収色素分散物A4を得た。
【0223】
−組成A4−
・近赤外線吸収色素(IR−101)〔下記構造〕 ・・・・10%
・オレイン酸ナトリウム(10%水溶液)〔界面活性剤〕・・・・30%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0224】
【化18】
【0225】
(インクY14の調製)
イエロー顔料分散物B1と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成Y14に示す他の成分とを用い、組成Y14となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、イエロー色のインク組成物であるインクY14を得た。
【0226】
〜インクY14の組成Y14〜
・イエロー顔料(C.I.ピグメント・イエロー74) ・・・・4%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.8%
・近赤外線吸収色素分散物A4 ・・・・2.8%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・6.5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕 ・・・・2.0%
・ジプロピレングリコール(DPG)
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・全体で100%となる量
【0227】
(インクM3の調製)
マゼンタ顔料分散物B2と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成M3に示す他の成分とを用い、組成M3となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、マゼンタ色のインク組成物であるインクM3を得た。
【0228】
〜インクM3の組成M3〜
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメント・レッド122) ・・・・6%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・2%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・5%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕 ・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0229】
(インクC3の調製)
シアン顔料分散物B3と、自己分散性ポリマー粒子C−1の水性分散物と、組成C3に示す他の成分とを用い、組成C3となるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、シアン色のインク組成物であるインクC3を得た。
【0230】
〜インクC3の組成C3〜
・シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3) ・・・・3%
・水不溶性樹脂P−1 ・・・・1.3%
・自己分散性ポリマー粒子C−1 ・・・・8.2%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・ジプロピレングリコール(DPG) ・・・・2.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・サンニックスGP250〔三洋化成工業社製、水溶性有機溶剤〕・・10.0%
・尿素 ・・・・5.0%
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・0.01%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、体積平均粒子径5nm、日産化学工業社製〕・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製、界面活性剤〕・・・・1.2%
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0231】
<処理液の調製>
組成S1に示す成分を混合し、処理液1を調製した。
【0232】
〜処理液1の組成S1〜
・マロン酸 ・・・・11.25%
・DL−リンゴ酸 ・・・・14.5%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)・・・・4.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・4.0%
〔和光純薬社製、水溶性有機溶剤〕
・イオン交換水 ・・・・全体で100%となる量
【0233】
得られた処理液1について、東亜DDK(株)製pHメーターWM−50EGにて、pHを測定したところ、pH値は、1.10であった。また、協和界面科学(株)製 FASE Automatic Surface Tensionmeter CBVP−Zにて、表面張力を測定したところ、41.3mN/mであった。
【0234】
<画像形成1>〜処理液ありの場合〜
シリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクを、実施例または比較例のインク組成物に順次詰め替えた。なお、シリコンノズルプレートの表面には、フッ化アルキルシラン化合物を用いて形成された撥液膜が予め設けられている。
また、記録媒体には、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」(坪量104.7g/m
2)をA5サイズにカットした紙片を用いた。
【0235】
(画像形成工程1)
150mm四方にカットした紙片(記録用紙)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃に保持した。これに、上記で得た処理液1をバーコーターで約1.2μmの厚み(1.5g/m
2)となるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。その後、インクジェットヘッドを、ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量5.0pL、吐出周波数25.5kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にてライン方式で、紙目方向(
図4のy方向)と直交する方向(
図4のx方向)に、幅(y方向)50mm、長さ(x方向)140mmのストライプ画像を作成した。なお、dpiは、「dot per inch」を意味する。
【0236】
(赤外線照射工程1)
図3に、実施例および比較例で画像形成した画像に赤外線を照射する模様を示す模式図を示す。
図3には、インクを吐出するインクジェットヘッド(head1)と、赤外線ヒータ1〜3(IR1〜IR3)と、温風を噴出す温風ブロア1〜3(HA1〜HA3)とが示されている。
図3中の紙面左から右に伸びる矢印は、head1で画像形成された記録媒体が、矢印方向に搬送されることを示している。つまり、
図3は、記録媒体が搬送される中で赤外線照射と温風吹きつけとが記録媒体に施されていることを示している。
【0237】
記録媒体の搬送経路上に赤外線ヒータおよび温風ブロアを
図3のように設置し、インクを打滴された用紙の乾燥を行った。赤外線ヒータとしては、ヘレウス社製の短波長赤外線ヒータZKG2400/340Gを用い、最大エネルギー波長1.3μm、出力2400W、発光長340mmのハロゲンランプを3本用いた。温風ブロアは、風温60℃、風速5m/sにて送風するブロアを3本使用した。
【0238】
<画像形成2>〜処理液なしの場合〜
シリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクを、実施例または比較例のインク組成物に順次詰め替えた。なお、シリコンノズルプレートの表面には、フッ化アルキルシラン化合物を用いて形成された撥液膜が予め設けられている。
また、記録媒体には、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」(坪量104.7g/m
2)をA5サイズにカットした紙片を用いた。
【0239】
(画像形成工程2)
150mm四方にカットした紙片(記録用紙)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃に保持した。その後、インクジェットヘッドを、ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量5.0pL、吐出周波数25.5kHz、解像度1200dpi×1200dpiの吐出条件にてライン方式で、紙目方向(
図4のy方向)と直交する方向(
図4のx方向)に、幅(y方向)50mm、長さ(x方向)140mmのストライプ画像を作成した。
【0240】
(赤外線照射工程2)
赤外線照射工程1と同様に、
図3に示す搬送経路で記録媒体上に形成された画像に赤外線を照射し、乾燥した。
【0241】
<評価>
〜残水量測定方法〜
乾燥された印画用紙が含む水分量は、用紙の印画部を30mm×20mmサイズで打ち抜き、微量水分測定系CA−200(株式会社三菱化学アナリテック社製)を用いて測定した。画像形成し、乾燥後2分以内に測定を行った。測定された水分量[g]を打ち抜き面積で除算し、単位面積当り水分量[g/m
2]を算出した。
また、上記から印刷前に用紙が保持する水分量を差し引いた値として、残水量[g/m
2]と定義した。なお、印画用紙自体の水分量は、画像形成する前の白紙用紙を用いて別途測定した。
同様の操作を3回繰り返して同じ画像を3枚作成し、それぞれ測定を行って残水量[g/m
2]の3枚の平均値を算出した。
算出された残水量から、下記評価基準に基づいて、残水量評価を行った。結果を表3、表5、及び表7に示す。
【0242】
<評価基準>
A:残水量が0.5g/m
2未満である。
B:残水量が0.5g/m
2以上1g/m
2未満である。
C:残水量が1g/m
2以上2g/m
2未満である。
D:残水量が2g/m
2以上である
【0243】
〜紙のカックル評価方法〜
図4に、紙のカックル評価に用いた印画用紙の模式図を示す。
図4には、150mm四方の記録用紙54に、縦(x方向)140mm×横(y方向)50mmの矩形画像の画像部52が形成された状態が示されている。
図4に示す記録用紙において、記録用紙の紙目方向(抄紙方向)は、矩形画像の幅方向(y方向)である。また、
図4に示す矩形画像の形成は、画像の形状を変えたほかは、既述の画像形成1または画像形成2に示す方法と同様の方法で行った。
【0244】
図4において、記録用紙54の紙目方向(y方向)と直交する方向(x方向)の直線56部分におけるカックルを測定した。直線56部分におけるカックルを模式的に表すと、
図5に示される曲線のように示される。
図5は、記録用紙54を直線56に沿って切断したときの記録用紙54の断面形状をx方向とz方向の方向変位として示したグラフである。なお、
図4と
図5において、x方向は、同一の方向であり、記録用紙54の紙目方向(y方向)と直交する方向である。z方向は、記録用紙54の画像部52における皺の高さ方向である。
【0245】
カックルの評価は、より具体的には、
図4に示す画像を形成し、乾燥後2分以内に、直線56における記録用紙54の皺の高さZ(記録用紙54のz方向の変位プロファイル)をレーザ変位計(Keyence社製レーザ変位計LK−080)で測定した。カックルの程度を表す指標として、カックル量=(L’−L)/Lを用いた。
同様の操作を3回繰り返して同じ画像を3枚作成し、それぞれ測定を行ってカックル量の3枚の平均値を算出した。
【0246】
ここで、Lは測定長(150mm)を示し、L’は変位プロファイルの経路積分長であり、式「L’=Σ√(Δx
i2+Δz
i2)」から算出する。
なお、式中のΔx
iおよびΔz
iは、
図5に示されるパラメータである。
(L’−L)/Lから算出されたカックル量から、下記評価基準にて、カックル評価を行い、評価結果を表3、表5、及び表7に示した。
なお、範囲はC以上であり、B以上が好ましく、Aであることが最も好ましい。
【0247】
<評価基準>
A:カックル量が0.03%未満である。
B:カックル量が0.03%以上0.07%未満である。
C:カックル量が0.07%以上0.13%未満である。
D:カックル量が0.13%以上である。
【0248】
〜色差評価〜
実施例および比較例の各インクを用いて形成された各ストライプ画像の色味の差から、近赤外線吸収色素による画像の色味変化の有無を評価した。
具体的には、まず、実施例および比較例の各インクを用いて形成された各ストライプ画像のL*a*b*を、分光光度計(GRETAG MACBETH社製のSpectroEye)を用いて測定した。
次に、同じ色(Y、M、及びC)で、特定IR色素を含有していないインクを用いて形成された画像のL*a*b*(E
0という)と、特定IR色素を含有しているインクを用いて形成された画像のL*a*b*(E
1という)との差ΔE(=|E
1−E
0|)を算出し、下記表基準に基づき、評価した。
なお、範囲はC以上であり、B以上が好ましく、Aであることが最も好ましい。
評価結果を表3、表5、及び表7に示す。
【0249】
<評価基準>
A:ΔE1以下
B:ΔEが1より大きく2.5以下
C:ΔEが2.5より大きく4以下
D:ΔEが4より大きい
【0250】
なお、表3、表5、及び表7には、近赤外線吸収色素(表中は「IR色素」と示した)の種類と、インク中の含有量、及び、近赤外線吸収色素の全質量を1(部)としたときの、有機顔料の割合(部)も示した。
【0251】
また、表1に、近赤外線吸収色素分散物A1〜A4および近赤外線吸収色素溶液D1〜D2の組成概要を示した。
さらに、表2にインクY1〜インクY14の組成概要、表4にインクM1〜インクM3の組成概要、及び表6にインクC1〜インクC3の組成概要を示した。
【0252】
【表1】
【0253】
【表2】
【0254】
【表3】
【0255】
表3からわかるように、実施例1Y〜実施例12Yでは、残水量、カックル、及び色差のいずれの評価も許容範囲またはそれ以上の評価が得られ、用いたインクが、紙のカックルを抑制し、画像の色味を損ね難いインク組成物であることがわかった。
なお、近赤外線吸収色素は、色素溶液にしてインクを調製した実施例10Yおよび実施例11Yに比べ、色素分散物にしてインクを調製したもの(例えば、実施例1Y)の方が、残水量およびカックル評価が良かった。これは、近赤外線吸収色素が、分散状態よりも、溶解状態である方が、紙に染み込み易く、紙内部に染みこんだ近赤外線吸収色素が赤外線照射によって十分に発熱しなかったためと推測される。一方、近赤外線吸収色素が分散状態でインクに含まれる実施例1Y等においては、近赤外線吸収色素が紙面上に残り易いため、インクへの赤外線照射により、近赤外線吸収色素が発熱し易く、インク内の加熱が速やかに行われたものと考えられる。
【0256】
【表4】
【0257】
【表5】
【0258】
【表6】
【0259】
【表7】
【0260】
表5および表7からわかるように、一般式(I)で表される近赤外線吸収色素を含むインクは、表3に示すイエローインクのみならず、マゼンタインクおよびシアンインクに適用しても紙のカックルを抑制し、画像の色味を損ね難いことがわかる。