(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疎水性絶縁膜は、前記多官能性化合物を含有する硬化性組成物を硬化させることにより作製され、該多官能性化合物の重合により形成された架橋構造を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光学素子。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の光学素子及び画像表示装置について詳細に説明する。
【0027】
≪光学素子≫
本発明の光学素子は、少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性である第1基板と、前記第1基板の導電性の表面に対向するように配置された第2基板と、前記第1基板の導電性の表面と前記第2基板との間に設けられた、非導電性のオイル及び導電性の親水性液体と、前記第1基板の導電性の表面側の少なくとも一部に設けられ、前記オイルと接触し、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有する疎水性絶縁膜と、を有するセルを備え、前記親水性液体と前記第1基板の導電性の表面との間に印加された電圧に応じ、前記オイルと前記親水性液体との界面の形状が変化する。
【0028】
本発明の光学素子では、導電性の親水性液体と前記第1基板の導電性の表面との間に(即ち、疎水性絶縁膜を介して)電圧が印加される。印加された電圧が所定のしきい値を超えると、疎水性絶縁膜の表面に電荷が生じる。この電荷によって、導電性の親水性液体が疎水性絶縁膜に接近し(更に好ましくは、導電性の親水性液体が、疎水性絶縁膜に接していたオイルを押しのけて疎水性絶縁膜に接触し)、これによりオイルと親水性液体との界面の形状が変化し、光学素子が動作(駆動)する。
【0029】
従来の光学素子でも、上記と同様にして駆動する光学素子があった。
しかしながら、従来の光学素子では、駆動(電圧印加)を繰り返し行い、疎水性絶縁膜の表面における電荷の発生及び消滅が繰り返されると、疎水性絶縁膜が劣化し、ひいては光学素子の応答性が劣化する場合があることが判明した。
この点に関し本発明の光学素子では、疎水性絶縁膜が、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有する構成とされているため、疎水性絶縁膜の膜強度が高い。このため、電圧印加が繰り返されたときの疎水性絶縁膜の劣化が抑制される。
従って本発明によれば、繰り返し駆動時における疎水性絶縁膜の劣化が抑制され、光学素子の耐久性が向上する。
【0030】
上記繰り返し駆動時の疎水性絶縁膜の劣化は、特に、電圧印加により、(親水性液体が、疎水性絶縁膜に接していたオイルを押しのけて疎水性絶縁膜に接触することにより、)オイルと疎水性絶縁膜との接触面積が変化する場合に顕著である。この理由は、前記接触面積が変化する場合(即ち、オイル、疎水性絶縁膜、及び親水性液体の三者の境界線が移動する場合)には、親水性液体が疎水性絶縁膜を膨潤させ易く、また、前記境界線の移動により疎水性絶縁膜表面に摩擦が生じ易いため、と考えられる。
従って、電圧印加によりオイルと疎水性絶縁膜との接触面積が変化する場合には、上記架橋構造による疎水性絶縁膜の劣化抑制の効果がより顕著に奏される。
【0031】
本発明において、前記界面形状(好ましくは前記接触面積)を変化させるために、親水性液体と第1基板の導電性の表面との間に印加される電圧(駆動電圧)には特に限定はないが、例えば、1V〜25V(好ましくは1V〜20V)の間で任意に設定できる。
また、前記駆動電圧は、直流電圧であってもよいし、交流電圧であってもよい。
【0032】
本発明の光学素子は上記構成を備えるかぎり、その用途には特に制限はない。
例えば、本発明の光学素子は、特開2000−356792号公報などに記載の光シャッター、特開2001−013306号公報、特表2001−519539号公報、特開2008−96953号公報などに記載の可変焦点レンズ、特表2007−530997号公報に記載の光ピックアップレンズ、特開2009−86668号公報、特開平10−39800号公報、特表2005−517993号公報、特表2007−531917号公報、特開2004−252444号公報、特開2004−287008号公報などに記載のディスプレイやサイネージ、特表2005−506778号公報などに記載の3Dディスプレイ、特開2010−79297号公報などに記載の光変調装置、米国特許第2011/0083964号明細書などに記載のポンプシステムなどに好ましく適用できる。
本発明の光学素子は、エレクトロウェッティング現象によって動作するエレクトロウェッティング素子であることが好ましい。エレクトロウェッティング現象については公知であり、その詳細は、上記の各公報に記載されているとおりである。
【0033】
以下、本発明の光学素子の実施形態について、
図1〜
図3を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0034】
<第1の実施形態>
図1及び
図2は、本発明の光学素子の第1の実施形態を概念的に示す概略断面図である。この第1の実施形態は、本発明の光学素子を画像表示装置の画素として用いる場合に好適な実施形態である。
図1は、光学素子100の電圧オフ状態(電圧無印加状態。以下同じ。)を示しており、
図2は、同じ光学素子100の電圧オン状態(電圧印加状態。以下同じ。)を示している。
図1及び
図2に示すように、光学素子100は、基板11(第1基板)に設けられた疎水性絶縁膜20と基板12(第2基板)との間であって、側面22a及び側面22bによって区画された領域内に、親水性液体14及びオイル16が設けられたセル30を有する構成となっている。
ここで、側面22a及び側面22bのそれぞれは、例えば隔壁の側面として構成される。
図1及び
図2では、疎水性絶縁膜20、基板12、側面22a、及び側面22bによって閉じた空間が形成されているが、本発明はこの形態には限定されない。例えば、側面22a及び側面22bの一部(好ましくは基板12側の一部)が開放されていてもよい(後述の
図3中の側面122a及び側面122bについても同様である)。
【0035】
基板11は、基板11aと基板11aに設けられた導電膜11bとからなるものである。この導電膜11bは、導電膜11bと親水性液体14との間に電圧を印加するための一方の電極として機能する。
光学素子100では、この導電膜11bに接するようにして疎水性絶縁膜20が設けられている。この疎水性絶縁膜20は、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有する。
【0036】
親水性液体14及びオイル16は互いに混じり合わない液体であり、界面17A又は界面17Bを境に互いに分離している。
図1及び
図2では、電圧オフ状態における親水性液体14とオイル16との界面を界面17A(
図1)とし、電圧オン状態における親水性液体14とオイル16との界面を界面17B(
図2)としている。
【0037】
更に、この光学素子100には、導電膜11bと親水性液体14との間に電圧を印加するための電源25(電圧印加手段)及びこの電圧をオン/オフするためのスイッチ26が設けられている。
この実施形態では、親水性液体14への電圧(電位)の印加は、親水性液体14中に差し込まれた電極によって行われる。但し本発明はこの形態には限定されず、光学素子は、基板12の親水性液体14に接する側の表面が導電性を有する構成(例えば、基板12の親水性液体14に接する側に導電膜が存在する構成)となっており、この導電性の表面(例えば導電膜)に電圧(電位)を印加することにより、親水性液体14への電圧(電位)の印加を行ってもよい。
【0038】
次に、光学素子100の動作(電圧オフ状態及び電圧オン状態)について説明する。
図1に示すように、電圧オフ状態では、疎水性絶縁膜20とオイル16との親和性が高いことから、疎水性絶縁膜20の全面にオイル16が接した状態となっている。
光学素子100に対し電圧が印加されると、親水性液体14とオイル16との界面が、界面17A(
図1)から界面17B(
図2)のように変形し、疎水性絶縁膜20とオイル16との接触面積が減少し、オイル16がセルの端に移動する。この現象は前述のとおり、電圧印加により疎水性絶縁膜20の表面に電荷が発生し、この電荷によって、親水性液体14が、疎水性絶縁膜20に接していたオイル16を押しのけて疎水性絶縁膜20に接触するために生じる現象である。
光学素子100は、
図2における電圧をオフ状態とすると、再び
図1の状態に戻る。
光学素子100では、上記
図1及び
図2に示した動作が繰り返し行われるが、疎水性絶縁膜20が重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有していることから、繰り返し動作時の疎水性絶縁膜20の劣化が抑制される。
【0039】
本発明の光学素子の第1の実施形態について
図1及び
図2を参照して説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
例えば、
図1及び
図2では、導電膜11bが基板11表面の全体に渡って設けられているが、導電膜が基板表面の一部にのみ設けられた形態であってもよい。
また、前述のとおり、基板11に導電膜11bが存在することに加え、基板12の親水性液体14に接する側にも導電膜が存在していてもよい。
【0040】
上記実施形態において、オイル16に色材の少なくとも1種を含有させて該オイル16を所望の色(例えば、黒、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエロー等)に着色することにより、光学素子100を、エレクトロウェッティング画像表示装置(以下、単に「画像表示装置」ともいう)の一画素として用いることができる。この場合、オイル16が、例えば、画素のオン状態及びオフ状態を切り替える光シャッターとして機能する。詳細な機能については、例えば、既述の各公報に記載されているとおりである。この場合の画像表示装置は、透過型、反射型、半透過型のいずれの方式の画像表示装置であってもよい。
光学素子100を画像表示装置の一画素とする場合、基板表面を隔壁によって例えば格子状に区画し、区画された一領域を一画素とすることができる。このとき、導電膜11bは、一画素ごとに独立してパターニングされた膜であってもよいし(例えば、アクティブマトリクス型の画像表示装置の場合など)、複数画素にまたがるストライプ状にパターニングされた膜であってもよい(例えば、パッシブマトリクス型の画像表示装置の場合など)。
また、光学素子100を画像表示装置の一画素とする場合、側面22a及び22bの基板12側の一部が開放され、疎水性絶縁膜20と基板12(第2基板)との間の空間が、複数画素に渡って連通されていてもよい。
【0041】
また、光学素子100を画像表示装置の一画素とする場合、基板11a及び基板12として、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)等の光透過性を有する基板を用い、かつ、導電膜11b及び疎水性絶縁膜20としても光透過性を有する膜を用いることにより、透過型の画像表示装置の画素とすることができる。この透過型の画像表示装置の画素において、セル外部に反射板を設けることで、反射型の画像表示装置の画素とすることもできる。
また、導電膜11bとして、反射板としての機能を兼ね備えた膜(例えば、Al膜、Al合金膜などの金属膜)を用いたり、基板11aとして、反射板としての機能を兼ね備えた基板(例えば、Al基板、Al合金基板などの金属基板)を用いたりすることで、反射型の画像表示装置の画素とすることもできる。
【0042】
本実施形態における光学素子100を画像表示装置の一画素として用いる場合、セルや画像表示装置のその他の構成は、例えば、特開平10−39800、特表2005−517993、特開2004−252444、特開2004−287008、特表2005−506778、特表2007−531917号公報、特開2009−86668号公報等に記載の公知の構成とすることができる。また、公知のアクティブマトリクス型又はパッシブマトリクス型の液晶表示装置の構成も参照することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の光学素子の第2の実施形態を概念的に示す概略断面図である。
この第2の実施形態は、本発明の光学素子を可変焦点レンズとして用いる場合に好適な実施形態である。
図3に示すように、光学素子200は、上記光学素子100と同様に、基板111(第1基板)に設けられた疎水性絶縁膜120と基板112(第2基板)との間であって、側面122a及び側面122bによって区画された領域内に、親水性液体114及びオイル116が設けられたセル130を有する構成となっている。
図3では図示を省略しているが、光学素子200には、光学素子100と同様に、電源及びスイッチが接続されている。
【0044】
光学素子200の構成は、以下の点を除き、光学素子100の構成と同様である。
即ち、疎水性絶縁膜120の表面は、中央部(好ましくは円形状の領域)を除いた外周部120aに親水性処理が施されている。これにより、オイル116が疎水性絶縁膜120の表面の前記中央部(好ましくは円形状の領域)のみに接触することで、電圧オフ状態において、オイル116と親水性液体114との界面117Aが曲面状となっている。
更に、基板111(第1の基板)は、基板111aと該基板111aの表面の中央部(好ましくは円形状の領域)が露出するようにパターニングされた導電膜111bとから構成されている。ここで、導電膜111bは、基板111aの表面に対して垂直な方向からみたときに、電圧オフ状態におけるオイル116と疎水性絶縁膜120との接触領域内にパターンエッジが位置するようにパターニングされている。
光学素子200において、基板111、疎水性絶縁膜120、オイル116、親水性液体114、及び基板112は、光透過性を有している。
これにより、オイル116がレンズとして機能する。
【0045】
図3では、電圧オフ状態におけるオイル116と親水性液体114との界面を界面117Aとし、電圧オン状態におけるオイル116と親水性液体114との界面を界面117Bとしている。
図3に示すように、電圧オフ状態においてオイル116と親水性液体114との界面は既に所定の曲率を有しているが(界面117A)、電圧オン状態となると、界面の曲率が更に大きくなる(界面117B)。この理由は、第1の実施形態と同様に、電圧が印加されると、疎水性絶縁膜120表面(オイル116との接触面)に電荷が発生するためである。
このようにして、電圧印加により、オイル116と親水性液体114との界面の曲率を変化させることができ、オイル116からなるレンズの焦点距離を変化させることができる。
【0046】
光学素子200においても、電圧オン及び電圧オフが繰り返されることにより、疎水性絶縁膜120表面における電荷の発生及び消滅が繰り返される。
ここでも、疎水性絶縁膜120が重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有していることから、繰り返し駆動時の疎水性絶縁膜120の劣化が抑制される。
【0047】
前記光学素子200は、オイル116を可変焦点レンズとして用いる場合の一例に過ぎず、その構成については種々の変更が可能である。例えば、外周部120aに親水性処理を施さず、疎水性絶縁膜120の表面全体にオイル116を接触させ、かつ、側面122a及び122bにも導電膜及び疎水性絶縁膜を設けた形態に変更すれば、疎水性絶縁膜120とオイル116との接触面積を変えずに、親水性液体114とオイル116との界面の形(レンズの焦点距離)のみを変化させることができる。
光学素子を可変焦点レンズとして用いる場合の具体的な構成については、例えば、特許第4154858号公報、特開2001−013306号公報、特表2001−519539号公報、特開2008−96953号公報等に記載の公知の構成を参照することができる。
【0048】
次に、本発明の光学素子に用いられる各部材や材料について説明する。
【0049】
<疎水性絶縁膜>
本発明における疎水性絶縁膜は、第1基板の導電性の表面側の少なくとも一部に設けられる膜であり、オイルと接触する膜である。
本発明における「疎水性」には特に限定はないが、例えば水接触角が60°以上(好ましくは70°以上、より好ましくは80°以上)である性質を指す。
前記水接触角は、具体的にはJIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」内の「6.静滴法」に記載された方法が適用される。
より具体的には、接触角測定器(協和界面科学(株)製の接触角計CA−A)を用い、20メモリの大きさの水滴をつくり、針先から水滴を出して、疎水性絶縁膜に接触させて水滴を形成し、10秒静置後、接触角計の覗き穴から水滴の形状を観察し、25℃における接触角θを求める。
【0050】
また、本発明における「絶縁」には特に限定はないが、例えば、比抵抗が10
7Ω・cm以上(好ましくは10
8Ω・cm以上、より好ましくは10
9Ω・cm以上)である性質を指す。比抵抗は、例えばJIS C 2526に基づいて測定することができる。
【0051】
前記疎水性絶縁膜は、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有する。これにより、疎水性絶縁膜が架橋構造を有しない場合(例えば、疎水性絶縁膜に含まれるポリマーとして線状ポリマーのみを用いた場合)と比較して、電圧印加を繰り返したときの疎水性絶縁膜の劣化が抑制される。
前記架橋構造は、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物の少なくとも1種を(必要に応じ他のモノマーとともに)重合させることにより好適に形成される。
【0052】
(多官能性化合物)
前記多官能性化合物は、(一分子内に)重合性基を2つ以上有する。
前記重合性基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、縮合重合性基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、−C(O)OCH=CH
2等が好ましい。
また、多官能性化合物に含まれる2つ以上の重合性基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
前記架橋構造の形成において、前記多官能性化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記多官能性化合物としては、公知の多官能の重合性化合物(ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、縮合重合性化合物等)を用いることができる。
【0053】
前記多官能性化合物としては、例えば、多官能アクリレートとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記多官能性化合物としては、上記以外にも、例えば、特開2008−181067号公報の段落0031〜0035、特開2008−139378号公報の段落0149〜0155、特開2010−134137号公報の段落0142〜0146等に記載されている公知の重合性化合物や、後述する「共重合させる他のモノマー」の中から、多官能の重合性化合物を適宜選択して用いることができる。
【0055】
本発明における多官能性化合物は、(一分子内に)重合性基を3つ以上(好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上)有することが好ましい。これにより、膜中における架橋構造の密度を更に増加させることができるので、電圧印加を繰り返したときの疎水性絶縁膜の劣化がさらに抑制される。
【0056】
本発明における多官能性化合物としては、含フッ素化合物が好ましく、フッ素含有率が分子量の30質量%以上(好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上)である多官能性化合物がより好ましい。
前記多官能性化合物がフッ素原子を含むこと(特に、フッ素含有率が分子量の30質量%以上であること)により、疎水性絶縁膜の疎水性がより向上する。
前記多官能性化合物におけるフッ素含有率の上限には特に制限はないが、上限は、例えば分子量の60質量%(好ましくは55質量%、より好ましくは50質量%)とすることができる。
【0057】
前記含フッ素化合物の好ましい形態は、フッ素原子と炭素原子とを含む実質的に重合に関与しない原子団(以下、「含フッ素コア部」ともいう)と、この含フッ素コア部にエステル結合やエーテル結合などの連結基を介して連結された、ラジカル重合性、カチオン重合性、または縮合重合性などの重合性を有する、3つ以上の重合性基と、を有する形態である。含フッ素コア部は、更に、その他の原子(例えば酸素原子及び水素原子の少なくとも一方)を含んでいてもよい。
【0058】
本発明における多官能性化合物として、好ましくは下記一般式(A)で表される多官能性化合物(以下、単に「一般式(A)で表される化合物」ともいう)である。下記一般式(A)で表される多官能性化合物は含フッ素化合物である。
【0060】
前記一般式(A)中、Rf
Aは、炭素原子及びフッ素原子を含む鎖状又は環状の(p+q)価の連結基を表す。
前記一般式(A)中、pは3以上の整数を表し、qは0以上の整数を表し、mは0又は1を表す。
前記一般式(A)中、Lは二価の連結基を表し、Yは重合性基を表す。
【0061】
前記一般式(A)中のRf
Aは、炭素原子及びフッ素原子に加え、その他の原子を含んでいてもよい。この場合のその他の原子としては、酸素原子及び水素原子の少なくとも一方が好ましい。このRf
Aは、上記「含フッ素コア部」に相当する基である。
【0062】
前記Rf
Aとしては、鎖状若しくは環状の(p+q)価のフッ化炭化水素基、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の(p+q)価の連結基、又は、フッ化炭化水素基と炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の(p+q)価の連結基が好ましく、鎖状若しくは環状の(p+q)価のフッ化炭化水素基、又は、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の(p+q)価の連結基がより好ましい。
なお、本明細書中において、フッ化炭化水素基とは、炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置き換わった構造の基を指す。
【0063】
前記Rf
Aが水素原子を含む場合、Rf
Aにおける水素原子数/フッ素原子数には特に制限はないが、防汚性をより向上させる観点からは、1/4以下が好ましく、1/9以下がより好ましい。
【0064】
前記一般式(A)中、pは3〜10の整数であり、qは0〜7の整数であり、かつ、(p+q)は3〜10の整数であることが好ましい。
pは、3〜6の整数であることがより好ましく、3〜4の整数であることが更に好ましい。
qは、0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0が更に好ましい。
(p+q)は、3〜6の整数であることがより好ましく、3〜4の整数であることが更に好ましい。
【0065】
前記一般式(A)中、Yは、ラジカル重合性、カチオン重合性、又は縮合重合性の重合性基であることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、又は−C(O)OCH=CH
2である。
これらの中でも、重合性の観点から、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、−C(O)OCH=CH
2が好ましく、より好ましくは、ラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、および−C(O)OCH=CH
2である。
【0066】
前記一般式(A)中、Lは、二価の連結基を表し、好ましくは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、炭素数1〜10のアルキレン基と−O−、−S−及び−N(R)−の少なくとも1種とを組み合わせて得られる基、又は、炭素数6〜10のアリーレン基と−O−、−S−及び−N(R)−とを組み合わせて得られる基を表す(Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)。
前記Lとしては、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、又は、炭素数1〜10のアルキレン基と−O−、−S−及び−N(R)−の少なくとも1種とを組み合わせて得られる基が好ましい。
前記Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることが更に好ましい。
【0067】
本発明における多官能性化合物としては、下記一般式(B)で表される多官能性化合物(以下、単に、「一般式(B)で表される化合物」ともいう)がより好ましい。
【0069】
前記一般式(B)中、Rf
Bは、鎖状若しくは環状の(p+q)価のパーフルオロ飽和炭化水素基、又は、パーフルオロ飽和炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の(p+q)価の連結基を表す。
前記一般式(B)中、Rf
p及びRf
qは、それぞれ独立に、炭素原子及びフッ素原子を含む鎖状又は環状の1価の基を表す。
前記一般式(B)中、rp及びrqは、それぞれ独立に0〜100の整数を表し、sp及びsqは、それぞれ独立に0又は1を表し、tp及びtqは、それぞれ独立に0又は1を表す。
前記一般式(B)中におけるY、L、p、q、及びmは、それぞれ、前記一般式(A)中におけるY、L、p、q、及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、前記一般式(B)において、p個の基における、(OCF
2CF
2)、(OCF
2)、及び(CFRf
p)の配置順、及び、q個の基における、(OCF
2CF
2)、(OCF
2)、及び(CFRf
q)の配置順には特に限定はない。
【0070】
本明細書中において、パーフルオロ飽和炭化水素基とは、飽和炭化水素基に含まれる水素原子の全てがフッ素原子に置き換わった構造の基を指す。
また、一般式(B)において、Rf
p及びRf
qは、それぞれ独立に、炭素原子及びフッ素原子に加え、その他の原子を含んでいてもよい。この場合のその他の原子としては、酸素原子及び水素原子の少なくとも一方が好ましい。
前記Rf
p及びRf
qは、それぞれ独立に、鎖状若しくは環状の1価のフッ化炭化水素基、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の1価の基、又は、フッ化炭化水素基と炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の1価の基が好ましく、鎖状若しくは環状の1価のフッ化炭化水素基、又は、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状の1価の基がより好ましい。
前記Rf
p及びRf
qは、それぞれ独立に、更に好ましくは炭素数1〜12の鎖状又は分岐のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル等)又は炭素数3〜12のパーフルオロシクロアルキル基(例えば、パーフルオロシクロペンチル、パーフルオロシクロヘキシル等)であり、より好ましくは炭素数1〜12の鎖状又は分岐のパーフルオロアルキル基であり、最も好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0071】
また、前記一般式(B)において、rp及びrqは、それぞれ独立に0〜100の整数を表すが、0〜20の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1が更に好ましい。
また、前記一般式(B)において、sp及びsqは、それぞれ独立に0又は1を表すが、0が好ましい。
また、前記一般式(B)において、tp及びtqは、それぞれ独立に0又は1を表すが、0が好ましい。特に、(p+q)が5以上の整数である場合は、tp及びtqは0であることが好ましい。
【0072】
上述した一般式(A)の特に好ましい形態は、pが3〜6の整数であり、かつ、qは0である形態である。
また、上述した一般式(B)の特に好ましい形態は、pが3〜6の整数であり、qが0であり、rp及びrqがそれぞれ独立に1〜5の整数である形態である。
【0073】
本発明における多官能性化合物としては、下記一般式(1)で表される多官能性化合物(以下、単に、「一般式(1)で表される化合物」ともいう)が更に好ましい。
【0075】
一般式(1)中、Rfは、炭素原子及びフッ素原子を含む鎖状又は環状のn価の連結基を表す。
一般式(1)中、nは、3以上の整数を表す。
一般式(1)中、L、Y、及びmについては、それぞれ、前記一般式(A)におけるL、Y、及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0076】
前記一般式(1)中、nは3〜10の整数であることが好ましく、3〜6の整数であることがより好ましく、3〜4の整数であることが特に好ましい。
【0077】
前記一般式(1)中のRfは、炭素原子及びフッ素原子に加え、その他の原子を含んでいてもよい。この場合のその他の原子としては、酸素原子及び水素原子の少なくとも一方が好ましい。
このRfは、上記「含フッ素コア部」に相当する基である。
【0078】
前記Rfとしては、鎖状若しくは環状のn価のフッ化炭化水素基、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状のn価の連結基、又は、フッ化炭化水素基と炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状のn価の連結基が好ましく、鎖状若しくは環状のn価のフッ化炭化水素基、又は、フッ化炭化水素基と−O−とを組み合わせて得られる鎖状若しくは環状のn価の連結基がより好ましい。
【0079】
前記Rfが水素原子を含む場合、Rfにおける水素原子数/フッ素原子数には特に制限はないが、防汚性をより向上させる観点からは、1/4以下が好ましく、1/9以下がより好ましい。
また、Rfは、一般式(1)で表される多官能性化合物が全ての重合性基によって重合したときに、架橋間分子量がすべて300以下になるような基であることも好ましい。架橋間分子量については後述する。
【0080】
前記Rfの特に代表的なものとして、下記の具体例が挙げられる。
【0082】
前記式f−1〜前記式f−9中、*は、前記mが1の場合には前記Lとの結合位置を表し、前記mが0の場合には前記Yとの結合位置を表す。
前記一般式(1)中のRfが、前記式f−1〜前記式f−9から選ばれるn価の基である場合、該nは3〜6の整数である。
【0083】
前記一般式(1)で表される多官能性化合物として、より好ましくは、屈折率および重合性の観点から、一般式(2)又は一般式(3)で表される多官能性化合物である。
【0085】
一般式(2)及び一般式(3)中、Rf及びnは、一般式(1)中におけるRf及びnと同義である。
【0086】
以下、本発明における多官能性化合物の好ましい具体例(下記式M−1〜M−13及び式M−24〜M−75のいずれか1つで表される化合物;以下、例示化合物M−1〜M−13、例示化合物M−24〜M−75ともいう)を挙げるが、本発明はこれらによって限定されない。
【0099】
例示化合物M−1〜M−13及びM−24〜M−75におけるフッ素含有率(質量%;以下では、単に「%」とも表記する)は、それぞれ、以下の通りである。
M−1: 37.5%
M−2: 46.2%
M−3: 48.6%
M−4: 49.8%
M−5: 36.6%
M−6: 39.8%
M−7: 47.0%
M−8: 35.1%
M−9: 44.9%
M−10: 42.5%
M−11: 36.2%
M−12: 47.7%
M−13: 45.8%
M−24: 34.2%
M−25: 44.0%
M−26: 34.1%
M−27: 31.4%
M−28: 35.6%
M−29: 30.6%
M−30: 45.9%
M−31: 47.8%
M−32: 48.9%
M−33: 50.0%
M−34: 34.3%
M−35: 31.7%
M−36: 51.5%
M−37: 49.4%
M−38: 41.7%
M−39: 54.4%
M−40: 44.5%
M−41: 37.3%
M−42: 51.5%
M−43: 49.5%
M−44: 51.9%
M−45: 46.0%
M−46: 47.8%
M−47: 50.4%
M−48: 45.5%
M−49: 49.4%
M−50: 52.7%
M−51: 50.9%
M−52: 54.9%
M−53: 44.9%
M−54: 46.3%
M−55: 48.0%
M−56: 48.6%
M−57: 52.1%
M−58: 52.8%
M−59: 52.5%
M−60: 49.1%
M−61: 54.9%
M−62: 56.7%
M−63: 47.5%
M−64: 49.6%
M−65: 51.6%
M−66: 48.4%
M−67: 49.0%
M−68: 49.7%
M−69: 49.7%
M−70: 50.9%
M−71: 52.0%
M−72: 46.9%
M−73: 49.7%
M−74: 51.7%
M−75: 50.1%
【0100】
また、本発明の多官能性化合物は、架橋密度の観点から、前記重合性基によって重合したときに、架橋間分子量の計算値が全て300以下となる多官能性化合物(より好ましくは含フッ素化合物)であることが好ましい。これにより、硬度がより向上し、繰り返し動作時の疎水性絶縁膜の劣化がより抑制される。
更に、本発明の多官能性化合物としては、フッ素含有率が分子量の30質量%以上(より好ましくは35質量%以上)であり、前記重合性基によって重合して架橋構造を形成したときに全ての架橋間分子量の計算値が300以下となる含フッ素化合物であることが更に好ましい。
【0101】
ここで、架橋間分子量の計算値とは、前記重合性基によって多官能性化合物が重合して得られた重合体において、合わせて3個以上の炭素原子又はケイ素原子が結合した炭素原子を(a)、合わせて3個以上の炭素原子又は酸素原子が結合したケイ素原子を(b)とするときに、(a)と(a)、(b)と(b)、又は(a)と(b)で挟まれた原子団の分子量を指す。
なお、「合わせて3個以上の炭素原子又はケイ素原子が結合した炭素原子」とは、4つある結合手のうち、3つ以上が、炭素原子又はケイ素原子と結合している炭素原子を示し、「合わせて3個以上の炭素原子又は酸素原子が結合したケイ素原子」とは、4つある結合手のうち、3つ以上が、炭素原子又は酸素原子と結合しているケイ素原子を示す。
【0102】
前記架橋間分子量について、例えば、前記多官能性化合物のうち、例示化合物M−2を例に挙げて説明する。
例示化合物M−2が、一分子に含まれる全ての重合性基によって重合したと仮定すると、得られる重合体は、式(4)のように表される。
【0104】
この場合、上記で定義した架橋間分子量の計算の対象となる部分構造は、式(4)の破線で囲まれた部分であり、架橋間分子量の計算値は、それぞれC
2F
4O=116.0とC
5H
2F
6O
3=224.1であり、何れも300以下である。
【0105】
架橋間分子量の計算値が全て300以下となる多官能性化合物として、特に好ましくは、上述の例示化合物M−1〜M−13である。
例示化合物M−1〜M−13のそれぞれについて、一分子に含まれる全ての重合性基によって重合したときの架橋間分子量(複数の架橋間分子量が存在する場合にはこれらの最大値)を求めると、以下のようになる。
即ち、架橋間分子量は、それぞれ、50.0(M−1)、224.1(M−2)、210.1(M−3)、224.1(M−4)、100.0(M−5)、91.0(M−6)、94.1(M−7)、58.0(M−8)、224.1(M−9)、224.1(M−10)、100.0(M−11)、224.1(M−12)、210.1(M−13)である。
【0106】
架橋間分子量の計算値は、より好ましくは250以下、さらに好ましくは200以下である。
【0107】
前記多官能性化合物が含フッ素化合物(例えば、一般式(A)で表される化合物(一般式(B)又は一般式(1)で表される化合物を含む。以下同じ。))である場合、該含フッ素化合物の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下の方法が好適である。
即ち、エステル結合、ジアルコキシ基、および/またはハロゲン原子を有する化合物を液相フッ素化することにより、80mol%以上(好ましくは90mol%以上)の水素原子をフッ素原子に置換した後、3つ以上(好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上)の重合性基を導入する方法が好適である。
前記液相フッ素化については、例えば、米国特許第5093432号明細書に記載されている。
【0108】
液相フッ素化に供される化合物としては、液相フッ素化する際に用いるフッ素系の溶媒に溶解するか、または、液体であることが要求されるが、それ以外は特に制限は無い。こうした溶解性や反応性の観点から、予めフッ素を含有する化合物を用いても良い。また、エステル結合、ジアルコキシ基、および/またはハロゲン原子を有する化合物は、液相フッ素化後に重合性基を導入する際の反応点を有することができるため、好適である。
液相フッ素化によってフッ素原子の導入を行うことにより、後から導入する重合性基以外の部分のフッ素含有率を極めて高くすることが可能である。
【0109】
−多官能性化合物に由来する重合体−
前記多官能性化合物は種々の重合方法により重合させ、該多官能性化合物に由来する重合体として疎水性絶縁膜に含有させることができる。重合に際しては、該多官能性化合物を単独重合させても共重合させてもよく、さらには、該多官能性化合物を架橋剤として用いてもよい。
【0110】
前記多官能性化合物として前記一般式(A)で表される化合物を用いる場合、疎水性絶縁膜に含まれる重合体は、前記一般式(A)で表される化合物の単独重合体であってもよいし、前記一般式(A)で表される化合物と他のモノマーとの共重合体であってもよい。
共重合させる他のモノマーとしては、公知慣用のモノマー類を使用することができるが、特に代表的なモノマーを例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチルアリルエーテル、α−フルオロアクリル酸メチルエステル、酢酸ビニル、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどのラジカル重合性のモノマー類、
【0111】
テトラエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、または以下の化学式で表されるモノマーなど、縮合重合性のモノマー類、
【0115】
グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、フルオログリシノールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのカチオン重合性のモノマー類などが挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、ラジカルまたはカチオン重合性のモノマー類が好ましく、より好ましくは、ラジカル重合性のモノマー類である。
【0116】
前記多官能性化合物の重合方法として、好ましくは、塊状重合または溶液重合である。
重合の開始方法は、重合開始剤(例えばラジカル開始剤)を用いる方法、光または放射線を照射する方法、酸を加える方法、光酸発生剤を添加した後に光を照射する方法、加熱により脱水縮合させる方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二著、「高分子合成方法」改訂版(日刊工業新聞社刊、1971年)や大津隆行・木下雅悦共著、「高分子合成の実験法」、化学同人、昭和47年、124〜154頁に記載されている。
【0117】
(硬化性組成物)
本発明における疎水性絶縁膜は、前記多官能性化合物を含有する硬化性組成物を用いて好適に作製される。
前記硬化性組成物に含まれる前記多官能性化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0118】
また、前記硬化性組成物は、更に、単官能性化合物を含んでいてもよい。
単官能性化合物としては特に限定はなく、公知の単官能モノマーを用いることができる。例えば、単官能性化合物としては、上述の共重合させる他のモノマーとして例示したものから単官能モノマーを適宜選択して用いることができる。
【0119】
前記硬化性組成物中における多官能性化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は特に制限はないが、硬化性の観点からは、硬化性組成物の全固形分に対し、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。ここで、全固形分とは溶剤を除いた全成分を指す。
また、前記硬化性組成物が、前記多官能性化合物の少なくとも1種として前記一般式(A)で表される多官能性化合物を含む場合、前記一般式(A)で表される多官能性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
【0120】
前記硬化性組成物は、更に、溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタムなどが挙げられる。
【0121】
前記硬化性組成物中における溶剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、前記硬化性組成物の全質量に対し、20質量%〜90質量%が好ましく、30質量%〜80質量%がより好ましく、40質量%〜80質量%が特に好ましい。
【0122】
前記硬化性組成物は、更に、重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、熱及び光の少なくとも一方の作用によりラジカルを発生する重合開始剤が好ましい。
【0123】
熱の作用によりラジカル重合を開始する重合開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
前記有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドが挙げられる。前記無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、有機アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウムなどが挙げられる。
【0124】
光の作用によりラジカル重合を開始する重合開始剤としては、ヒドロキシアルキルフェノン類、アミノアルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類などがある。
前記ヒドロキシアルキルフェノン類の例には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが含まれる。
前記アミノアルキルフェノン類の例には、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが含まれる。
前記アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
また、これらの重合開始剤と併用して増感色素を用いることもできる。
【0125】
前記重合開始剤の含有量は特に制限されないが、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%である。
【0126】
前記硬化性組成物は、必要に応じ、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、無機酸化物微粒子、シリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤等が挙げられる。
その他の成分の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0127】
本発明における疎水性絶縁膜の膜厚には特に限定はないが、50nm〜10μmが好ましく、より好ましくは100nm〜1μmである。前記疎水性絶縁膜の膜厚が上記範囲であると、絶縁性と駆動電圧とのバランスの点で好ましい。
【0128】
(疎水性絶縁膜の作製方法)
本発明における疎水性絶縁膜は、第1基板の導電性の表面側(例えば、第1基板が導電膜を有する場合には少なくとも導電膜上)に前記多官能性化合物を含有する硬化性組成物を用いて硬化性層を形成する硬化性層形成工程と、形成された硬化性層中の多官能性化合物を重合させて該硬化性層を硬化させる硬化工程と、を有する方法により好適に作製できる。これにより、架橋構造を有する疎水性絶縁膜が作製される。
【0129】
前記第1基板上への硬化性層の形成は、公知の塗布法又は転写法により行うことができる。
塗布法の場合、第1基板上に硬化性組成物を塗布して(更に、好ましくは乾燥させて)硬化性層を形成する。前記塗布の方法には特に制限はなく、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の方法を用いることができる。
転写法の場合、予め、前記硬化性組成物を用いて形成された硬化性層を有する転写材料を準備しておき、該転写材料の硬化性層を第1基板上に転写することにより、第1基板上に硬化性層を形成する。転写法の詳細については、例えば、特開2008−202006号公報の段落0094〜0121や、特開2008−139378号公報の段落0076〜0090を参照することができる。
【0130】
前記硬化性層の硬化(多官能性化合物の重合)は、例えば、活性エネルギー線の照射(以下、「露光」ともいう)及び加熱の少なくとも一方によって行うことができる。
前記露光に用いられる活性エネルギー線としては特に限定はなく、紫外線(g線、h線、i線等)、電子線、X線が好ましく用いられる。前記露光は、プロキシミティ方式、ミラープロジェクション方式、ステッパー方式等の公知の露光装置を用いて行ってもよい。
前記露光における露光量は適宜設定できるが、例えば、10mJ/cm
2〜2000mJ/cm
2とすることができ、50mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2が好ましい。
また、前記露光の際、所定のフォトマスクを介して露光し、次いでアルカリ溶液などの現像液を用いて現像することにより、所望とするパターンにパターニングされた疎水性絶縁膜を得ることも可能である。
【0131】
前記加熱は、例えばホットプレートや炉を用いた公知の方法により行うことができる。
加熱温度は適宜設定できるが、例えば、100℃〜280℃とすることができ、150℃〜250℃が好ましい。加熱時間も適宜設定できるが、例えば、2分〜120分とすることができ、5分〜60分が好ましい。
【0132】
<第1基板、第2基板>
本発明における第1基板は、少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性を有する基板である。
本発明における第2基板は、前記第1基板の導電性の表面に対向するように配置される基板である。
【0133】
本発明における光学素子を画像表示装置や可変焦点レンズに用いる観点からは、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方は、光透過性を有していることが好ましく、具体的には、380nm〜770nmの波長領域全域に渡り透過率が80%以上(より好ましくは90%以上)であることが好ましい。透過率は、例えば、JIS K 7361−1に基づいて測定することができる。
【0134】
(第1基板)
前記第1基板は、少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性を有していれば特に限定はない。この導電性の表面が、光学素子における電極として機能する。
ここで「導電性」としては電圧を印加できる程度の性質であれば特に制限はないが、例えば、表面抵抗500Ω/□以下(好ましくは70Ω/□以下、より好ましくは60Ω/□以下、更に好ましくは50Ω/□以下)の性質が好適である。
前記第1基板は、単一構成の導電性基板(金属基板等)であってもよいし、支持基板と支持基板上に設けられた導電膜(パターニングされた導電膜であってもパターニングされていない導電膜であってもよい)とを有する構成の基板であってもよい。
中でも、本発明における光学素子を画像表示装置や可変焦点レンズに用いる観点からは、第1基板の構成は、支持基板と支持基板上に設けられた導電膜とを有する構成であることが好ましい。この形態では、第1基板における導電性の表面は、導電膜の表面に相当する。
なお、表面抵抗は、例えば、JIS C 2139に基づいて測定することができる。
【0135】
前記支持基板としては、ガラス基板(例えば、無アルカリガラス基板、ソーダガラス基板、パイレックス(登録商標)ガラス基板、石英ガラス基板等)、プラスチック基板(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリイミド(PI)基板等)、アルミ基板やステンレス基板等の金属基板、シリコン基板等の半導体基板等を用いることができる。中でも、光透過性の観点から、ガラス基板又はプラスチック基板が好ましい。
また、前記支持基板としては、薄膜トランジスタ(TFT)が設けられたTFT基板を用いることもできる。この場合には、前記導電膜がTFTに接続された形態(即ち、前記導電膜が、TFTに接続された画素電極である形態)が好適である。これにより、画素ごとに独立して電圧を印加できるようになり、TFTを備えた公知の液晶表示装置と同様に、画像表示装置全体のアクティブ駆動が可能となる。
前記TFT基板における、TFT、各種配線、積蓄容量等の配置については、公知の配置とすることができ、例えば、特開2009−86668号公報に記載された配置を参照することができる。
【0136】
前記導電膜の比抵抗には特に制限はないが、例えば、1.0×10
−3Ω・cm以下とすることができる。
【0137】
前記導電膜としては、金属膜を用いることもできるが、光透過性の観点からは、透明導電膜が好ましい。
前記透明導電膜は、380nm〜770nmの波長領域全域に渡り透過率が80%以上(より好ましくは90%以上)であることが好ましい。
前記透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(ITO(Indium Tin Oxide)とも呼ばれている)、酸化インジウム亜鉛(IZO(Indium Zinc Oxide)とも呼ばれている)、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、及び酸化マグネシウムの少なくとも1種を含む膜が挙げられる。
中でも、前記透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(ITO)を含む膜であることが、光透過性及び導電性の観点から好ましい。
酸化インジウムスズ(ITO)を含む膜における酸化スズの添加量は、5〜15質量%
の範囲が、抵抗値を小さくするためには好ましく、8〜12質量%がさらに好ましい。
【0138】
(第2基板)
前記第2基板としては特に限定はなく、例えば、上記支持基板として例示した基板を用いることができる。
また、前記第2基板としては、前記第1基板と同様に、少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性を有する基板を用いることもでき、この場合の第2基板の好ましい形態は前記第1基板の好ましい形態と同様である。
【0139】
前記第2基板が導電膜を有する形態では、該導電膜が、例えば、親水性液体に電位を付与するための電極として機能する。
本発明の光学素子を画像表示装置の画素として用いる場合の特に好ましい形態として、第2基板の導電膜に複数画素に渡る共通の電位を付与する一方、第1基板の導電膜表面には画素ごとに独立した電位を付与することで、各画素に独立した電圧を印加する形態である。この形態については、公知の液晶表示装置の形態を参照することができる。
【0140】
<オイル>
本発明におけるオイルは、非導電性のオイルである。
前記オイルは、単一成分のオイルであってもよいし、二種以上の成分を含むオイル(オイル組成物)であってもよい。
また、「非導電性」については特に限定はないが、例えば比抵抗10
6Ω・cm以上(好ましくは10
7Ω・cm以上)の性質を指す。
【0141】
また、前記オイルは、比誘電率が小さいことが好ましい。
具体的には、前記オイルの比誘電率は10.0以下の範囲が好ましく、2.0〜10.0の範囲であることがより好ましい。この範囲内であると、比誘電率が10.0を超える場合と比較して、応答速度が速くより低い電圧で駆動(動作)させ得る点で好ましい。
ここで、比誘電率は、オイルをセルギャップ10μmのITO透明電極付きガラスセルに注入し、得られたセルの電気容量を、エヌエフ株式会社製の型式2353LCRメーター(測定周波数:1kHz)を用いて20℃、40%RHにて測定して得られる値である。
【0142】
また、前記オイルの粘度としては、20℃での動的粘度で10mPa・s以下であることが好ましい。中でも、該粘度は、0.01mPa・s以上が好ましく、更には0.01mPa・s以上8mPa・s以下がより好ましい。前記オイルの粘度が10mPa・s以下であることで、粘度が10mPa・sを超える場合と比較して、応答速度が速くより低い電圧で駆動させ得る点で好ましい。
なお、前記動的粘度は、粘度計(500型、東機産業(株)製)を用いて20℃に調整して測定される値である。
【0143】
前記オイルは、実質的に、後述の親水性液体と混ざり合わないことが好ましい。
具体的には、オイルの親水性液体に対する溶解度(25℃)は、0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下が特に好ましい。
【0144】
前記オイルは、溶媒として、非極性溶媒の少なくとも一種を含有することが好ましい。ここで、非極性溶媒とは、比誘電率の値が小さい溶媒(いわゆる無極性溶媒)をいう。
前記非極性溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒(好ましくは、炭素数6〜30の脂肪族炭化水素系溶媒);前記脂肪族炭化水素系溶媒がフッ素で置換された溶媒(例えばフルオロカーボンオイル等);シリコーン系溶媒(例えばシリコーンオイル等);等が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましい。
前記非極性溶媒の含有量は、オイルに含まれる溶媒の全量に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。非極性溶媒の含有量が70質量%以上であることで、より優れた光シャッター特性を発現させることができる。また、オイルが色材を含有する場合には、オイルへの色材の溶解性がより良好に保たれる。
【0145】
(色材)
例えば、本発明の光学素子を画像表示装置の画素として用いる場合には、前記オイルは色材の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記色材としては特に制限はなく、前記非極性溶媒に対して溶解性、分散性を有する色素の中から、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択することができる。
前記色材としては、前記非極性溶媒に対し溶解性を示す染料又は顔料が好ましく、染料がより好ましい。
【0146】
前記色材としては特に限定はないが、例えば、画像表示装置用カラーフィルタ(例えば、液晶表示装置用カラーフィルタや固体撮像素子用カラーフィルタ等)の分野で公知の色素のうち、非極性溶媒に溶解するものを適宜選択して用いることができる。
前記色素としては、例えば、メチン系色素(例えば、ピラゾロンメチン系色素、ピリドンメチン系色素、イソオキサゾロンメチン系色素、イソオキサゾリンメチン系色素、等)、アゾメチン系色素(例えば、ピラゾロン系アゾメチン色素、ピリドン系アゾメチン色素、イソオキサゾロン系アゾメチン色素、ピロロトリアゾール系アゾメチン色素、ピラゾロントリアゾール系アゾメチン色素、ナフトール系アゾメチン色素、等)、アゾ系色素(例えば、モノアゾ系色素、ビスアゾ系色素、ベンゾチアゾリルモノアゾ系色素、ピラゾールアゾ系色素、アニリノアゾ系色素、ピラゾロトリアゾールアゾ系色素、ピリドンアゾ系色素)、ジピロメテン系色素、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン系色素、アンスラピリドン系色素、ベンジリデン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、フェノチアジン系色素、キサンテン系色素、フタロシアニン系色素、ベンゾピラン系色素、インジゴ系色素、等の各種の色素を挙げることができる。
前記色素として、より具体的には、Oil Blue N(アルキルアミン置換アントラキノン)、Solvent Green、Sudan Red、Sudan Blackなどが挙げられる。
また、前記色材としては、国際公開第2011/111710号パンフレット、国際公開第2008/142086号パンフレット、特開2009−138189号公報に記載の色材も好ましく用いることができる。
【0147】
前記色素は公知の方法に準じて合成することができる。
例えば、前記アゾメチン系色素の合成は、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.),1957年、79巻、583頁、特開平9−100417号公報、特開2011−116898号公報、特開2011−12231号公報、特開2010−260941号公報、特開2007−262165号公報などに記載の方法に準じて行なうことができる。
また、ピラゾロンメチン系色素の合成は、例えば、特開2008−248123号公報、特開平2−3450号公報、特開昭49―114420号公報、特許第2707371号、特開平5−45789号、特開2009−263517号、特開平3−72340号などに記載の方法に準じて行なうことができる。
また、イソオキサゾロンメチン系色素の合成は、例えば、特許第2707371号、特開平5−45789号、特開2009−263517号、および特開平3−72340号、など記載の方法に準じて行なうことができる。
また、モノアゾ系色素、ビスアゾ系色素、及びアントラキノン色素の合成は、例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日技報堂発行)、A.V.Ivashchenko著、Dichroic Dyes for Liquid Crystal Displays、CRC Press、1994年、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 第76巻、第607−612頁、2003年、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 第72巻、第127−132頁、1999年、など記載の方法に準じて行なうことができる。
また、ジピロメテン系色素の合成は、例えば、特開2008−292970号公報に記載の方法に準じて行なうことができる。
また、アゾ系色素は、特許第4408380号、特許第4642403号、特許第4357383号、特許第4359541号、特開2006−91190号、特開2007−31616号、特開2007−39478号、特許第4597806号、特開2002−371079号、及び特許第4666873号の各公報などに示す公知の方法で製造することができる。
【0148】
前記色材は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
オイルが色材を含有する場合、色材の含有量は特に制限されるものではなく、その目的に応じて任意の濃度で調製することができる。
前記色材の含有量は、オイル全質量に対して、例えば0.2質量%以上とすることができ、色材は、必要とされるεC値(εはオイルの吸光係数)に応じて溶媒(例えば非極性溶媒)により希釈して用いられる。
色相や色濃度の観点から、前記色材の含有量は、オイル全質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
【0149】
前記オイルは、必要に応じ、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤の含有量に特に制限はないが、通常、オイルの全質量に対して20質量%以下程度で用いられる。
【0150】
<親水性液体>
本発明における親水性液体は、導電性の親水性液体である。
ここで「導電性」については特に限定はないが、例えば比抵抗10
5Ω・cm以下(好ましくは10
4Ω・cm以下)の性質を指す。
【0151】
前記親水性液体は、例えば、電解質及び水性溶媒を含んで構成される。
前記電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、テトラブチルアンモニウムクロリド等の塩が挙げられる。
親水性液体中における電解質の濃度は、0.1〜10mol/Lが好ましく、0.1〜5mol/Lがより好ましい。
【0152】
また、前記親水性液体は、水性溶媒として、水以外の水性溶媒を含んでいてもよい。水以外の水性溶媒としては、エタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。
【0153】
<その他の部材>
本発明の光学素子は、第1基板上に、セルの領域を確定する隔壁を有することが好ましい。この隔壁は、既述のとおり、第2基板に接していてもよいし、第2基板に接していなくてもよい。
前記隔壁は樹脂を含むことが好ましく、例えば、液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる公知の隔壁と同様の構成とすることができる。
前記隔壁は、例えば、感光性レジストや感光性フィルムを用いた公知のフォトリソグラフィー法によって形成することができる。
【0154】
本発明の光学素子は、更に必要に応じ、親水性液体と第1基板の導電性の表面との間に電圧を印加するための電圧印加手段(例えば電源)、セルギャップ(第1基板に設けられた疎水性絶縁膜表面と第2基板との距離)を確保するためのスペーサー等のその他の部材を有していてもよい。本発明の光学素子に用いられることがあるその他の部材としては、例えば、液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる公知の部材を用いることができる。
【0155】
なお、本発明におけるセルのセルギャップ(第1基板に設けられた疎水性絶縁膜表面と第2基板との距離)には特に制限はないが、例えば、3μm〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
また、本発明におけるセルのセル面積は、100μm
2〜100cm
2の範囲が好ましく、より好ましくは500μm
2〜10cm
2の範囲であり、特に好ましくは1000μm
2〜1cm
2の範囲である。
また、本発明におけるセル内は、オイルと親水性液体とで満たされていることが好ましい。オイルと親水性液体との体積比率(オイル:親水性液体)は、好ましくは1:1000〜1:0.1、より好ましくは1:100〜1:1、特に好ましくは1:50〜1:2である。
【0156】
≪画像表示装置≫
本発明の画像表示装置は、既述の本発明の光学素子を有する画素を備え、前記オイルが色材を含有する。
本発明の画像表示装置は、既述の本発明の光学素子を有する画素を備えているので、電圧オン及び電圧オフを繰り返したときの疎水性絶縁膜の劣化が抑制され、繰り返し駆動時の耐久性に優れる。
【0157】
本発明の画像表示装置の好ましい形態については前述のとおりである。
より具体的には、本発明の画像表示装置は、公知の液晶表示装置の構成における液晶を、オイル及び親水性液体に置き換えた構成とすることができる。これにより、従来の液晶表示装置と同様に駆動させることができる。
即ち、本発明の画像表示装置は、本発明の光学素子を有する画素に加え、必要に応じ、バックライト、セルギャップ調整用のスペーサー、封止用のシール材等、公知の液晶表示装置と同様の部材を備えて構成することができる。
【0158】
このとき、オイル及び親水性液体は、例えば、第1基板上の隔壁によって区画された領域に、インクジェット法により付与して設けることができる。
本発明の画像表示装置の製造方法としては、例えば、前記第1基板を準備する第1基板準備工程と、前記第1基板の導電性表面側に前記疎水性絶縁膜を形成する工程と、前記第1基板の前記疎水性絶縁膜形成面上を区画する隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁により区画された領域に、(例えばインクジェット法により)前記オイル及び前記親水性液体をこの順に付与する付与工程と、前記付与工程後の前記第1基板のオイル及び親水性液体が付与された側に前記第2基板を重ねてセルを形成するセル形成工程と、(更に必要に応じ、第1基板と第2基板とを前記セルの周囲で接着することにより、前記セルを封止する封止工程と、)を有する方法が挙げられる。
第1基板と第2基板との接着は、液晶表示装置の作製に通常用いられるシール材を用いて行うことができる。
また、隔壁形成工程の後であってセル形成工程の前に、セルギャップ調整用のスペーサーを形成するスペーサー形成工程が設けられていてもよい。
【実施例】
【0159】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0160】
〔実施例1〜20〕
<硬化性組成物A1〜A20の調製>
下記表1及び表2に示す種類及び量の重合性単量体及び重合開始剤をメチルエチルケトンに溶解させて固形分30質量%溶液を調製した後、さらに重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性単量体に対して200ppm(0.02質量%)となるように加えた。得られた溶液を0.1μmのテトラフロロエチレン製フィルターでろ過し、硬化性組成物A1〜A20をそれぞれ調製した。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
(表1及び表2の説明)
・表1及び表2に示す各成分の数値は質量比である。
・表1及び表2に示す重合性単量体及び開始剤の詳細は以下のとおりである。
【0164】
−重合性単量体−
M−1〜M−4、M−9、M−10、M−24、M−25、M−27、M−31、M−54、M−63、M−64、M−74: 前記例示化合物M−1〜M−4、M−9、M−10、M−24、M−25、M−27、M−31、M−54、M−63、M−64、M−74(いずれも多官能性化合物)
M−14:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)(多官能性化合物)
M−15:4官能ウレタンアクリレート(U−4HA、日本化薬(株)製)(多官能性化合物)
M−16:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ATMMT、新中村化学(株)製)(多官能性化合物)
M−17:2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(V−3F、大阪有機化学工業(株)製)(単官能性化合物)
M−18:2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(R−1420、ダイキン工業(株)製)(単官能性化合物)
M−19:2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジアクリレート(SynQuest Laboratories, Inc.製)(多官能性化合物)
M−20:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A−DCP、新中村化学(株)製)(多官能性化合物)
M−21:ステアリルアクリレート(東京化成工業(株)製)(単官能性化合物)
M−22:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300、新中村化学(株)製)(多官能性化合物)
M−23:エチレングリコールジアクリレート(Aldrich社製)(多官能性化合物)
【0165】
−開始剤(光重合開始剤)−
P−1:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン(BASF社製。Darocur1173)
P−2:(2−ジメチルアミノ−2−(4メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン(BASF社製、Irgacure379EG)
【0166】
<オイルの調製>
下記組成中の成分を混合し、オイルを得た。
得られたオイルは黒色であり、その動的粘度(20℃)を粘度計で測定したところ、7.9mPa・sであった。
以下、オイルを「黒インク」とも称することがある。
【0167】
−オイル(黒インク)の組成−
下記色素Y1 … 260mg
下記色素M1 … 200mg
下記色素M2 … 160mg
下記色素C1 … 300mg
下記色素C2 … 100mg
n−デカン … 4080mg
【0168】
【化28】
【0169】
【化29】
【0170】
<テストセルの作製>
以下のようにして、
図4に示す構造の光学素子(テストセル300)を作製した。
図4は、本実施例に用いたテストセルの概略断面図である。
まず、第1基板211として、膜厚100nmの酸化インジウムスズ膜(ITO膜;透明電極)211bが形成されたガラス基板(1cm角)211aを準備した。
このガラス基板211aのITO膜211b上に、上記で得られた硬化性組成物A1〜A20のいずれか1つを塗布して塗布層を形成し、引き続き、VCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベーク処理して硬化性組成物層を得た。得られた硬化性組成物層に対し、窒素雰囲気下、超高圧水銀灯を用いて露光量300mJ/cm
2で露光することで、硬化性組成物層に含まれる多官能性化合物を重合させて硬化性組成物層を硬化させた。更に、露光後の硬化性組成物層に対し、240℃で50分間加熱処理を施した。
以上により、ITO膜211b上に、多官能性化合物に由来する架橋構造を有する疎水性絶縁膜220(架橋膜;膜厚100nm)を形成した。
形成された疎水性絶縁膜220上に、厚み20μmのフォトレジストフィルム(日立化成社製、商品名フォトキャスト)を重ねた後、格子状パターンを有するフォトマスク(格子の大きさ200μm角、格子の線幅20μm)を介して上記フォトレジストフィルムを露光し、アルカリ現像処理を行うことで隔壁(高さ20μm、幅20μm)223を作製した。
隔壁形成後のガラス基板の縁に、シール材232として、厚み40μm、幅1mmのシリコンゴム(扶桑ゴム社製、商品名シリウス)を置いた。
次に、隔壁に223よって区画された領域に、オイル216として、上記で得られたオイル(黒インク)を、厚み4μmとなるようにインクジェット法により注入し、その上に、親水性液体214としての電解液(NaClの濃度が1mol/LのNaCl水溶液)を厚み36μmとなるよう注入した。
その上に、ITO膜212bが設けられたガラス基板212a(第2基板212)を、ITO膜212bが親水性液体214(電解液)側となるように置き、疎水性絶縁膜220が設けられた第1基板211と第2基板212とを、シリコンゴム(シール材232)によって固定した。
以上のようにして、
図4に示すテストセル300を作製した。
【0171】
<駆動時耐久性の評価>
得られたテストセル300では、電圧を印加しない状態(電圧オフ状態)では、黒インク(オイル216)が疎水性絶縁膜220上に広がっており、テストセルは黒色の状態であった(
図4)。
このテストセル300の上下の透明電極(ITO膜212b及びITO膜211b)をそれぞれ信号発生器に接続して、直流電圧15Vを印加したところ(電圧オン状態)、黒インク(オイル216)が縮んでテストセルは透明な状態となることが確認された(不図示)。
次に、直流電圧の印加を止めると(電圧オフ状態とすると)、再び黒インク(オイル216)が疎水性絶縁膜220上に広がり、テストセルは黒色の状態となった。
【0172】
以上の電圧オン及び電圧オフのサイクル(直流電圧の印加時間30秒、インターバル(電圧無印加の時間)30秒)を500回繰返し行った。
そして、このサイクルを500回繰返し行った後に、電圧オン状態として黒インク(オイル216)を縮ませ、この状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を下記表3に示す。
【0173】
−耐久性の評価基準−
A : 上記サイクルを500回繰返し行った後の黒インクの縮み具合が、サイクル1回目における黒インクの縮み具合と同等であった。
B : 上記サイクルを500回繰返し行った後の黒インクの縮み具合が、サイクル1回目における黒インクの縮み具合よりもやや小さかった。
C : 上記サイクルを500回繰返し行った後は黒インクがほとんど縮まず、上記サイクルを500回繰返したことにより、電圧印加に対する応答性が大幅に劣化した
【0174】
〔比較例1〕
実施例1のテストセルの作製において、硬化性組成物A1を用いて作製された疎水性絶縁膜を、デュポン社製のテフロン(登録商標)AF−1600を用いて作製された疎水性絶縁膜に変更したこと以外は実施例1と同様にしてテストセルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。ここで、AF−1600は、架橋構造を有しないアモルファスフルオロポリマーである。
評価結果を下記表3に示す。
【0175】
〔比較例2〕
実施例1のテストセルの作製において、硬化性組成物A1を用いて作製された疎水性絶縁膜220を、旭硝子(株)製のサイトップ「CTL−809M」を用いて作製された疎水性絶縁膜に変更したこと以外は実施例1と同様にしてテストセルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。ここで、サイトップは、架橋構造を有しないアモルファスフルオロポリマーである。評価結果を下記表3に示す。
【0176】
【表3】
【0177】
表3に示すように、多官能性化合物に由来する架橋構造を有する疎水性絶縁膜を用いた実施例1〜20のテストセルは、架橋構造を有しない疎水性絶縁膜を用いた比較例1及び2のテストセルと比較して、繰り返し駆動に対する耐久性に優れていた。