(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806298
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】反射防止コーティング組成物及び微細電子デバイスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20151021BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/32
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-513001(P2013-513001)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-530425(P2013-530425A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】IB2011001229
(87)【国際公開番号】WO2011151719
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】12/792,994
(32)【優先日】2010年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・フイロン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】リン・グアンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサー・マーク・オー
(72)【発明者】
【氏名】アブダラー・デイビッド・ジェイ
【審査官】
中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/066169(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/004378(WO,A1)
【文献】
特開2010−139822(JP,A)
【文献】
特開2010−102128(JP,A)
【文献】
特表2008−513567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
G03F 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のポリマーと第二のポリマーとの混合物、及び熱酸発生剤を含む反射防止コーティング
組成物であって、前記第一のポリマーが、少なくとも一つのフルオロアルコール部分、少なくとも一つの脂肪族ヒドロキシル部分、及びフルオロアルコール以外の、
8〜11の範囲のpKaを有する少なくとも一つの酸部分を含み、
更に前記第一のポリマーは、アリール発色団部分を含むかまたは含まず、前記第二のポリマーが、アミノプラスト化合物と、少なくとも一つのヒドロキシル基及び/または少なくとも一つの酸基を含む化合物との反応生成物
であり、及び前記第一のポリマーが、フルオロアルコール以外の、8〜11の範囲のpKaを有する酸部分として、次の構造(8)または(9)に由来する単位を含む、前記反射防止コーティング
組成物。
【化1】
式中、R1、R2及びR3は、独立して、水素及び(C1〜C4)アルキルから選択され、R”4は、線状(C1〜C10)アルキル基または(C6〜C14)アリール部分であり、そしてR8は、直接原子価結合であるかまたは(C1〜C10)アルキレンスペーサー基である。
【請求項2】
前記第一の
ポリマーが、次の構造(I)を有する、請求項
1に記載の反射防止コーティング組成物。
【化2】
式中、P
1は、フルオロアルコール部分を含むモノマー性単位であり;P
2は、脂肪族
ヒドロキシル部分を含むモノマー性単位であり;P
3は、
次の構造(8)または(9)に由来する、酸部分としてのイミド部分を含むモノマー性単位であり;P
4は、
更なる酸部分としての塩基イオン化可能アリールヒドロキシ部分を含むモノマー性単位であり;P
5は、アリール発色団部分を含む任意選択のモノマー性繰り返し単位であり;u、v、w、x、yは、ポリマー鎖中の繰り返し単位のモル%割合を示し、そしてu、v
及びwは0よりも大きく、
xは0または0より大きく、yは0またはそれ以上である。
【化3】
式中、R1、R2及びR3は、独立して、水素及び(C1〜C4)アルキルから選択され、R”4は、線状(C1〜C10)アルキル基または(C6〜C14)アリール部分であり、そしてR8は、直接原子価結合であるかまたは(C1〜C10)アルキレンスペーサー基である。
【請求項3】
フルオロアルコール部分が、次の構造(2)に由来する、請求項1
または2に記載の反射防止コーティング組成物。
【化4】
式中、Xはエチレン性単位または置換されたエチレン性単位であり、Wは、アルキレン及びアリーレン基から選択され、そしてRf
1及びRf
2は、独立して、フルオロ(C
1〜C
4)アルキル基である。
【請求項4】
脂肪族ヒドロキシル部分が、次の構造(7)に由来する、請求項1〜
3のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【化5】
式中、R
1、R
2及びR
3は、独立して、水素及び(C
1〜C
4)アルキルから選択され
、R4は水素または(C
1〜C
10)アルキル基であり、そしてR
9は、直接結合及び(C
1〜C
12)アルキルスペーサー基から選択される。
【請求項5】
更なる酸部分としての塩基イオン化可能アリールヒドロキシ部分が、次の構造(10a)または(10b)
に由来する、請求項1〜
4のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【化6】
式中、Arはアリール部分であり、ここでR
1、R
2及びR
3は、独立して、水素及び(C
1〜C
4)アルキルから選択され、R
4は、(C
1〜C
10)アルキル基または(C
6〜C
14)アリール部分であり、R
5は直接原子価結合またはスペーサー基であり、R
6及びR
7は、独立して、水素、(C
1〜C
10)アルキル基、アリール部分(C
6〜C
14)、(C
2〜C
8)カルボニルオキシアルキル、及び(C
2〜C
8)カルボニルから選択され、そしてnは1〜3である。
【請求項6】
アリール発色団部分が、次の構造(11)または(12)に由来する、請求項1〜
5のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【化7】
式中、Arはアリール部分であり、ここでR
1、R
2及びR
3は、独立して、水素及び(C
1〜C
4)アルキルから選択され、R
4は、(C
1〜C
10)アルキル基または(C
6〜C
14)アリール部分であり、R
5は、直接原子価結合またはスペーサー基であり、R
6及びR
7は、独立して、水素、(C
1〜C
10)アルキル基、アリール部分(C
6〜C
14)、(C
2〜C
8)カルボニルオキシアルキル、及び(C
2〜C
8)カルボニルから選択される。
【請求項7】
前記第二のポリマーが、アミノプラストとポリヒドロキシル化合物との反応生成物である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【請求項8】
前記アミノプラストが、以下の構造19から選択される、請求項1〜7のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【化8】
式中、各R
10は、独立して、CH
2−O−(CH
2)
m−CH
3であり、mは0〜3であり、そしてR
11及びR
12は、独立して、水素またはC
1〜C
10アルキルである。
【請求項9】
前記ヒドロキシル化合物が、次の構造27及び28から選択される、請求項1〜
8のいずれか一つに記載の反射防止コーティング組成物。
【化9】
式中、R
13はスペーサー基であり、R
14は、水素、C
1〜C
10アルキル、アリール(C
6〜C
20)、(C
6〜C
20)アルキルアリールから選択され、R
15、R
16及びR
17は、独立して、C
2〜C
8アルキレンスペーサーである。
【請求項10】
微細電子デバイスの製造方法であって、
a) 請求項1〜9のいずれか一つからの反射防止コーティング組成物の第一の層を基材に供すること;
b) 前記反射防止コーティング層の上にフォトレジスト層をコーティングすること;
c) 前記フォトレジスト層を像様露光すること;
d) 前記フォトレジスト層を水性アルカリ性現像液で現像すること、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記第一の反射防止コーティング層が0.05〜0.35の範囲のk値を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フォトレジストが、250nm〜12nmの放射線に感度を示すものである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
現像液が、水酸化物塩基を含む水溶液である、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の吸光性底面反射防止コーティング組成物(BARC)に関する。反射防止コーティング組成物は、BARCに疎水性酸性上面層を与えるように選択された二種のポリマーのブレンドを含む。本発明は更に、該新規反射防止コーティングの上にコーティングされたフォトレジストに画像を形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物は、コンピュータチップ及び集積回路の製造など、微細化された電子部品を製造するためのマイクロリソグラフィプロセスに使用されている。一般的に、これらのプロセスでは、先ず、フォトレジスト組成物のフィルムの薄い被膜を、集積回路の製造に使用されるケイ素に基づくウェハなどの基材に供する。次いで、このコーティングされた基材はベークしてフォトレジスト組成物中の溶剤を蒸発させ、そして被膜を基材上に定着させる。このコーティング及びベークされた基材表面は次に放射線での像様露光に付される。
【0003】
この放射線露光は、コーティングされた表面の露光された領域において化学的な変化を引き起こす。可視光線、紫外線(UV)、電子ビーム及びX線放射エネルギーが、現在マイクロリソグラフィプロセスに常用されている放射線種である。この像様露光の後、コーティングされた基材を現像剤溶液で処理して、フォトレジストの放射線露光された領域または未露光の領域のいずれかを溶解、除去する。
【0004】
半導体デバイスは微細化される傾向にあり、このような微細化に伴う問題を克服するために、より一層短い波長の放射線に感度を示す新しいフォトレジストや、精巧なマルチレベルシステムが使用されている。フォトリソグラフィにおける吸光性反射防止コーティング及び下層が、高反射性基材からの光の後方反射(back reflection)の結果生ずる問題を軽減するために使用されている。
【0005】
フォトレジストの解像度及び焦点深度を更に向上させるため、液浸リソグラフィは、深紫外線(uv)リソグラフィイメージングの解像限界を拡張するために使用されてきた技術である。液浸リソグラフィの方法は、“Immersion liquids for lithography in deep ultraviolet”Switkes et al.,Proceedings of SPIE Vol.5040(2003),p.690−699(非特許文献1)に記載されている。
【0006】
0.5λ/NA(λは、露光放射線の波長であり、NAは露光用のレンズの開口数である)未満のピッチでフォトレジストフィルムにパターンを形成するために使用されてきた一つの技術は、ダブルパターニング法である。ダブルパターニング法は、微細電子デバイスにおいてフォトレジストパターンの密度を高めるための方法を提供する。典型的には、ダブルパターニング法では、0.5λ/NAを超えるピッチで基材上に第一のフォトレジストパターンを画定し、次いで他のステップで、第一のフォトレジストパターンの間に、第一のパターンと同じピッチで第二のフォトレジストパターンを画定する。両方の画像は基材に同時に転写され、その結果、一回の露光の半分のピッチが生ずる。
【0007】
慣用の単層BARCは、NAが1.0を超えるリソグラフィー用途では、全ての入射角において1%未満に反射性を制御するのには不十分である(Abdallah et al.,Proceedings of SPIE Vol.5753(2005),p.417−435(非特許文献2))。調整されたn及びk値を有する勾配型(graded)BARCは向上した反射性制御を与える。最初は、この種の材料は、US6,297,521(特許文献1)に記載のように化学蒸着CVDを用いて製造した無機フィルムに基づいていた。より最近になって(Brodskyら、US7,588,879B2(特許文献2))、互いに相分離しそして異なる光学的性質を有する二種のポリマーの混合物から一回のスピンコート操作で形成できる勾配型有機系BARCが開示された。液浸リソグラフィ及びダブルパターニング/液浸リソグラフィは、特に集積回路工業において32nmまたはそれ以上の図形の画像形成用として、デバイス製造のための最も有用でかつ重要な技術の一部である。BARCが、露光の後に、精密に調整されたBARC現像剤湿潤性をを有する反射防止コーティング組成物とすることが望ましく、そしてBARCとフォトレジストとの間の望ましくない交換相互作用が最小であることが、特に液浸リソグラフィ及びダブルパターニング/液浸リソグラフィにおいて、反射性制御及びフッティング/スカム低減などの良好なリソグラフィ性能にとって重要である。
【0008】
本新規反射防止コーティング組成物は、液浸リソグラフィに並びに液浸リソグラフィ/ダブルパターニング用途に有用であり、該反射防止コーティングは、液浸リソグラフィに使用されるフォトレジストの表面接触角と極めて一致した表面接触角を有するが、露光後に現像剤との良好な接触角をも有し、現像されたフォトレジストが、スカム及び欠陥がない良好なリソグラフィ性能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6,297,521
【特許文献2】US7,588,879B2
【特許文献3】US7,691,556
【特許文献4】US2010/0009297
【特許文献5】特開平1−293339号公報
【特許文献6】CA1204547
【特許文献7】US3,474,054
【特許文献8】US4,200,729
【特許文献9】US4,251,665
【特許文献10】US5,187,019
【特許文献11】US4,491,628
【特許文献12】US5,350,660
【特許文献13】US5,843,624
【特許文献14】US6,866,984
【特許文献15】US6,447,980
【特許文献16】US6,723,488
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Immersion liquids for lithography in deep ultraviolet”Switkes et al.,Proceedings of SPIE Vol.5040(2003),p.690−699
【非特許文献2】Abdallah et al.,Proceedings of SPIE Vol.5753(2005),p.417−435
【発明の概要】
【0011】
本発明は、第一のポリマーと第二のポリマーとの混合物と、熱酸発生剤とを含む、反射防止コーティングであって、前記第一のポリマーが、少なくとも一つのフルオロアルコール部分、少なくとも一つの脂肪族ヒドロキシル部分、及び前記フルオロアルコール以外の、約8〜約11の範囲のpKaを有する少なくとも一つの酸部分を含み; 及び前記第二のポリマーが、アミノプラスト化合物と、少なくとも一つのヒドロキシル及び/または少なくとも一つの酸基を含む化合物との反応生成物である、前記反射防止コーティングに関する。本発明は更に、画像の形成のために前記新規組成物を使用する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【0013】
[発明の詳細な説明]
本発明は、少なくとも2種のポリマーの混合物を含む反射防止コーティングに関する。該反射防止コーティング組成物は、少なくとも第一のポリマーと、前記第一のポリマーとは異なる少なくとも第二のポリマーを含む。前記第一のポリマーは、フルオロアルコール部分を有する少なくとも一つの単位、フルオロアルコール以外の酸性部分を含む少なくとも一つの単位、及び脂肪族アルコールを有する少なくとも一つの単位を含む。酸性部分を含む単位は、イミドまたは芳香族アルコール(例えばフェノール、ナフトールなど)であることができる。一つの態様では、前記酸性部分は、約8〜11の範囲のpKaを有し得る。第一のポリマーは、更に、芳香族部分を含む少なくとも一つの単位を含んでよい。該新規組成物は、アミノプラスト化合物と、少なくとも一つのヒドロキシ基及び/または少なくとも一つの酸基を含む反応性化合物との重合反応生成物である第二のポリマーを含む。一つの態様では、前記反応性化合物は、二つまたはそれ以上のヒドロキシ基を含むか(ポリヒドロキシ化合物またはポリオール)、二つまたはそれ以上の酸基を含む化合物を含むか(ポリ酸化合物)、またはヒドロキシ基と酸基の両方を含むハイブリッド化合物を含む。前記第二のポリマーは、反応性アミノメチレンアルコキシまたはアミノメチレンヒドロキシ部分(N−CH
2−OR、R=アルキルまたはH)を含み得る。更に、第二のポリマーは、第一のポリマーよりも疎水性が低く、そうして第一のポリマーが、該新規反射防止コーティング組成物からのコーティングされたフィルムの表面に向かって移行することを可能にする。該新規組成物は、フィルム中において屈折率と吸光性に勾配がある光学的に勾配した反射防止コーティングを形成することができる。該反射防止組成物は、更に、熱酸発生剤(TAG)を含み、それの機能は架橋を増強することである。該組成物の固形成分は有機溶剤中に溶解される。
【0014】
該新規反射防止コーティング組成物は、第一のポリマーと第二のポリマーの少なくとも二種のポリマーを含む。前記第一のポリマーは、三種の繰り返し単位、すなわちP
1の少なくとも一つ、P
2の少なくとも一つ、P
3及び/またはP
4の少なくとも一つ、及び任意に、繰り返し単位(P
5)を含む。第一のポリマータイプの組成は、以下の構造(I)によって例示し得る。
【0015】
【化1】
【0016】
式中、P
1は、フルオロアルコール部分を含むモノマー性単位であり、P
2は、脂肪族アルコール基を含むモノマー性単位であり; P
3は、イミド部分を含むモノマー性単位であり; R
4は、塩基(アルカリ)イオン化可能アリールヒドロキシ部分を含むモノマー性単位であり; R
5は、アリール発色団部分を含む任意選択のモノマー性繰り返し単位であり; u、v、w、x、yは、ポリマー鎖中の繰り返し単位のモル%割合を表し、ここでu、vは0より大きく、w及びxのうちの少なくとも一つは0より大きく、そしてyは0またはそれ以上である。P
2は、非フッ素化脂肪族アルコールである。一つの態様では、該ポリマーは、P
1、P
2、P
3、及び任意にP
5を含む。他の態様の一つでは、該ポリマーは、P
1、P
2、P
4、及び任意にP
5を含む。他の態様の一つでは、該ポリマーは、P
1、P
2、P
3及びP
4、及び任意にP
5を含む。
【0017】
第一のポリマーにおいて、フルオロアルコール部分を含む単位P
1は、構造2を有するモノマー単位から誘導してよく、ここでXは、ポリマーの主鎖を形成するエチレン性もしくは置換されたエチレン性部分であり、Rf
1及びRf
2は独立してフルオロ(C
1〜C
6)アルキル基であり、そしてWは、直接の原子価結合及びスペーサー基から選択される。スペーサー基の例は、アルキル、アルキルエステル、アリール、アラルキル、及びこれらの混合物である。前記エチレン性基は、アルキル、アリール、アルキルエステル、アルキルカルボニルなどによって置換されてよい。より具体的には、P
1は、構造3、4、5及び6のモノマーから誘導してよい。
【0018】
【化2】
【0019】
式中、R
1、R
2及びR
3は独立して水素及び(C
1〜C
4)アルキルから選択され、R
4は(C
1〜C
10)アルキル基または(C
6〜C
14)アリール部分(例えばフェニル、ナフチル)であり、R
5は、直接原子価結合またはスペーサー基であり、ここでスペーサー基は、アルキル、アルキルエステル、アリール、アラルキルであってよく; Rf
1及びRf
2は独立してフルオロ(C
1〜C
6)アルキル基(例えばCF
3、CF
2CF
3、CH(CF
3)
2)、CF(CF
3)
2)、及び類似物など)であり; R
6及びR
7は独立して水素、(C
1〜C
10)アルキル基、アリール部分(C
6〜C
14)(例えばフェニル、ナフチルなど)、(C
2〜C
8)カルボニルオキシアルキル(例えば、CO
2−OCH
3)、及び(C
2〜C
8)カルボニル(例えばホルミル、アセチルなど)から選択される。R
4の例は、線状(C
1〜C
10)アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピルなど)、分枝状(C
3〜C
10)アルキル基(例えばイソプロピル、イソブチルなど)、(C
5〜C
12)環状アルキル基(例えばシクロヘキシル、シクロペンチルなど)である。R
5の例は、直接原子価結合またはスペーサー基、例えば線状アルキレン(C
1〜C
10)(例えばメチレン、エチレンなど)、分枝状アルキレン(C
3〜C
12)シクロアルキレン(C
5〜C
12)、及びアリーレンスペーサー基(C
6〜C
14)(例えばフェニレン、ナフチレンなど)から選択されるスペーサー基である。R
6及びR
7の更に別の例は、線状アルキル基(C
1〜C
10)(例えばメチル、エチル、n−プロピルなど)、分枝状アルキル基(C
3〜C
10)(例えばイソプロピル、イソブチルなど)及び環状アルキル基(C
5〜C
12)(例えばシクロヘキシル、シクロペンチルなど)である。ここで一般的に及び本明細書全体にわたり、アルキルとは、線状、分枝状、環状またはこれらの混合物のことである。
図1は、一般構造2からのP
1繰り返し単位が誘導されるフルオロアルコール部分含有モノマーの具体的で非限定的な例を示す。
【0020】
第一のポリマーでは、脂肪族アルコール基を含む繰り返し単位である単位P
2は、構造(7)を有するモノマーから誘導され、ここでR
1、R
2及びR
3は上述の通りであり、R
4’は水素または(C
1〜C
10)アルキル基であり、そしてR
9は直接結合及び(C
1〜C
12)アルキルスペーサー基から選択される。R
9は、アルキレンスペーサー基(C
1〜C
10)、例えばメチレン、エチレン(−CH
2−、−CH
2CH
2−)、分枝状アルキレンスペーサー基(C
3〜C
12)、例えば(−CH(CH
3)
2−)、環状アルキレンスペーサー基(例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシル環など)であってよい。
図2は、P
2単位を誘導し得るモノマー構造の具体的な例を示す。
【0021】
【化3】
【0022】
第一のポリマーにおいて、イオン化可能なイミドポリマー繰り返し単位を含む単位P
3は、二つの可能なモノマー構造(8及び/または9)から誘導される。構造8は環状イミドであり、ここでR
8は直接原子価結合または(C
1〜C
10)アルキレン基である。構造9は非環式イミドであり、ここでR
1、R
2及びR
3は独立して水素及び(C
1〜C
4)アルキルから選択され、R”
4は線状(C
1〜C
10)アルキル基または(C
6〜C
14)アリール部分(例えばフェニル、ナフチルなど)である。R
8の例は、線状アルキレンスペーサー基(C
1〜C
3)(例えばメチレン、エチレンなど)または分枝状アルキレンスペーサー基(C
2〜C
10)である。
【0023】
【化4】
【0024】
構造8及び9に基づく単位P
3、すなわちイミド含有イオン化可能部分が誘導される可能なモノマーの具体的で非限定的な例を
図3に示す。
【0025】
第一のポリマーでは、単位P
4はモノマー単位(10a)またはモノマー単位(10b)から誘導され、ここでArは独立してアリール部分、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル及び類似物であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は上述の通りでありそして少なくとも一つのヒドロキシル置換基を有する(構造10a及び10bにおいてnは1〜3)。
図4は、構造10a及び10bから誘導される具体的で非限定的な例を示す。
【0026】
【化5】
【0027】
第一のポリマーにおいて、任意選択の単位P
5は発色団繰り返し単位であり、そしてモノマー単位(11)またはモノマー単位(12)のいずれかから誘導され、ここでArは独立してアリーレン部分、例えばフェニレン、ナフチレン、アントラセニレンであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は上述の通りである。R
4はヒドロキシルではない。
【0028】
【化6】
【0029】
図5は、ポリマー性単位P
5を形成するのに使用し得る構造(11)及び(12)のモノマーの例を示す。
【0030】
第一のタイプのポリマーの一つの態様において、該ポリマーは、ここに記載のモノマー単位P
1、P
2及びP
3から誘導される繰り返しを含んでよい。一つの態様では、第一のポリマーは次のものである。
【0031】
【化7】
【0032】
第一のポリマーは、次の式によって表し得る。
【0033】
【化8】
【0034】
第一のタイプのポリマーの他の態様の一つでは、該ポリマーは次のものである。
【0035】
【化9】
【0036】
より具体的には、次のものである。
【0037】
【化10】
【0038】
イソプロピルヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート、マレイミド、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びスチレンの特定の四種のモノマーの重合から生ずるポリマーの構造を(18)に示す。
【0039】
【化11】
【0040】
本発明の第一のタイプのポリマーは、任意の既知の重合方法、例えば触媒を用いた遊離基重合を用いて合成し得る。該ポリマーは、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合または類似の重合法などを用いて重合し得る。本発明のポリマーは重合されて、約1,000〜約80,000、または5,000〜30,000の重量平均分子量を有するポリマーを与える。分子量は、二種のタイプのポリマーの勾配型混合物の所望の厚さにおいて、第一のポリマーがより均一にコートするように選択される。遊離基ポリマーの多分散性(Mw/Mn)(Mwは重量平均分子量であり、そしてMnは数平均分子量である)は、1.0〜10.0の範囲であることができ、ここでポリマーの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定し得る。
【0041】
本発明の新規組成物は、互いに相分離する少なくとも二つのポリマーを含み、この際、第一のポリマーは、主に、コーティングされたフィルムの表面側に行く。フィルムの表面は、少量の第二のポリマーを含み、このポリマーが第一のポリマーと架橋して、フィルム全体を硬化させる。それ故、フィルムのトップ部分には濃度勾配が存在し、その際、表面は第一のポリマーを最大量で含み、フィルムの底部は第二のポリマーを最大量で含む。追加的に、これらの二種のポリマーは、ベークの間に架橋された網状構造を形成し、そうしてコーティングが、該新規コーティングの上にコーティングされるフォトレジストのスピンキャスト溶剤に耐性になる。該BARCフィルムの表面は、特に露光の後及び現像中に、水性アルカリ性現像剤によって濡れることができ、そのため、新規BARCフィルムの表面上に形成された画像形成されたフォトレジスト図形のスカミング及びフッティングを最小化する。更に、第一及び第二ポリマーの光学定数、屈折率及び吸光性は、コーティングされたフィルムが、BARCフィルムにわたって勾配した光学定数を有して、最適な反射防止特性を与えるようにする。
【0042】
第一のタイプのポリマーにおけるP
1繰り返し単位の組成範囲は、約20〜約60モル%である。より具体的な組成範囲は約35〜約50モル%である。塩基イオン化可能部分を有するP
3及び/またはP
4ポリマー繰り返し単位は、水性アルカリ性現像剤中での現像の間に良好な水性塩基湿潤性を供する。P
3及び/またはP
4は、約15〜約45モル%または約20〜約30モル%の範囲である。繰り返し単位P
1と、P
3及び/またはP
4、すなわちそれぞれフルオロアルコール含有部分とイオン化可能部分との合計モル%組成は、30〜80モル%、または50〜70モル%の範囲であることができる。この範囲は良好な水性塩基湿潤性を与えながらも、なおも第一のタイプのポリマーが、ポリマーブレンドの表面に移行することを可能にする。P
2の合計モル%組成は10〜40%または15〜35%である。UV吸収性部分を有する任意選択のP
5ポリマー繰り返し単位は、0〜20モル%の組成範囲を有してよい。存在する場合には、5〜15モル%の組成範囲を使用してよい。この単位は、最大の反射防止性を供するために光学定数の微調整に使用し得る。
【0043】
該反射防止コーティング組成物は、好ましくは、約65°〜85°の範囲の水接触角を有するフィルムを形成することができる。該反射防止コーティング組成物は、好ましくは、水性アルカリ性現像剤中で約55°〜65°の範囲の接触角を有するフィルムを形成できる。
【0044】
本発明に有用な第一のポリマーは、好ましくは、約65〜85°または約70〜80°の水との接触角範囲を有するように選択され、このような接触角は、第二のタイプのポリマーからの良好な相分離を供する。第一のポリマーは、好ましくは、画像形成プロセスの後、すなわち露光及び現像の後に、55〜65°の水性アルカリ性現像剤との接触角を有する。現像剤は、典型的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド類または2.3重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。該新規組成物は、BARC上にコーティングされたフォトレジストに画像形成された図形のフッティング及びスカミングを最小化する。更に、193nmでの第一のポリマーのn及びkの範囲は、n=1.5〜1.75及びk=0.05〜0.35、またはn=1.55〜1.70及びk=0.1〜0.3であるのがよい。記載の値は、193nmでの光学定数の範囲であるが、同様の光学値が248nmなどの他の波長の紫外線でも存在する。
【0045】
本発明の新規組成物は、アミノプラストと、少なくとも一つのヒドロキシ基及び/または少なくとも一つの酸基を含む反応性化合物とを、トルエンスルホン酸などの強酸の触媒量の存在下に縮合重合させた生成物である第二のポリマーを含む。アミノプラストポリマーは、US7,691,556(特許文献3)及びUS2010/0009297(特許文献4)に記載されている。これらの文献の内容は本明細書中に掲載されたものとする。一つの態様では、上記反応性化合物は、二つまたはそれ以上のヒドロキシ基(ポリヒドロキシ化合物またはポリオール)を含むか、二つまたはそれ以上の酸基を含む化合物(ポリ酸化合物)であるか、またはヒドロキシ基と酸基の両方を含むハイブリッド化合物である。前記アミノプラストは、反応性アミノメチレンアルコキシ部分(N−CH
2−O−アルキル)を含み、これは、少なくとも一つのヒドロキシル基及び/または少なくとも一つのカルボン酸基を含む化合物と部分的に反応して樹脂を形成して、第二のポリマーを生成する。アミノメチレンの一部は反応して第二のタイプのポリマーを形成するが、これらの一部は未反応のまま残って、そうしてそれらは、自己架橋し得るようになるか、または第一のタイプのポリマーのP
3アルコール含有繰り返し単位を介して当該二種のポリマー種の勾配型ブレンドと架橋し得るようになる。典型的には、アミノプラストは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)または類似の溶剤などの溶剤中でヒドロキシル及び/または酸含有化合物と反応させ、そしてパラトルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下に攪拌しながら数時間加熱する。そのポリマーは、典型的には、水中に析出させ、次いで乾燥して回収される。第二のタイプのポリマーを生成するために重合するべきアミノプラストは、構造19〜26のいずれかを有する以下のものからなる群から選択され、ここで各R
10は、CH
2−O−(CH
2)
m−CH
3であり、各R
11及びR
12は、独立して、水素またはC
1〜C
10アルキルであり、そしてmは0〜3である。
【0046】
【化12】
【0047】
アミノプラストの例は、CYMELの商標でCytec Industriesから商業的に入手できるものや、RESIMENEの商標でMonsanto Chemical Co.から商業的に入手できるものなどである。他のアミン類及びアミド類の縮合生成物も使用でき、例えばトリアジン類、ジアジン類、ジアゾール類、グアニジン類、グアニミン類、及びこれらの化合物のアルキル−及びアリール置換誘導体、例えばアルキル−及びアリール置換メラミン類のアルデヒド縮合物などがある。このような化合物の一部の例は、N,N’−ジメチル尿素、ベンゾユリア、ジシアンジアミド、ホルムアグアナミン、アセトグアナミン、アンメリン、2−クロロ−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、6−メチル−2,4−ジアミノ,1,3,5−トライジン、3,5−ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2−メルカプト−4,6−ジアミノ−ピリミジン、3,4,6−トリス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、N,N,N’,N’−テトラメトキシメチルユリア及び類似物などである。他の可能なアミノプラストには、
図6に示す化合物などが挙げられる。追加的に、東ソー社の特開平1−293339号公報(特許文献5)に記載のものなどのそれらの類似物及び誘導体、並びにエーテル化されたアミノ樹脂、例えばメチル化もしくはブチル化メラミン樹脂(それぞれN−メトキシメチル−もしくはN−ブトキシメチル−メラミン)またはメチル化/ブチル化グリコールウリル類、例えばCiba Specialty Chemicals社のCA1204547(特許文献6)に記載のものなども挙げられる。様々なメラミン及び尿素樹脂が、Nicalacs(Sanwa Chemical Co.)、Plastopal(BASF AG)、またはMaprenal(Clariant GmbH)の商標で商業的に入手することができ、使用し得る。
【0048】
より具体的には、アミノプラストは、構造19を有するグリコールウリル類からなる群から選択し得る。グリコールウリル類の例は、テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリルであり、例えば、テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、テトラ(n−プロポキシメチル)グリコールウリル、テトラ(i−プロポキシメチル)グリコールウリル、テトラ(n−ブトキシメチル)グリコールウリル、テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリル、置換されたテトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル類、例えば7−メチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7−エチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7−(i−もしくはn−)プロピルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7−(i−もしくはsec−もしくはt−)ブチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7,8−ジメチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7,8−ジエチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7,8−ジ(i−もしくはn−)プロピルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7,8−ジ(i−もしくはsec−もしくはt−)ブチルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、7−メチル−8−(i−もしくはn−)プロピルテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、及び類似物などが挙げられ得る。テトラ(メトキシメチル)グリコールウリルは、Cytec IndustriesからPOWDERLINKの商標で入手できる(例えばPOWDERLINK1174)。他の例としては、メチルプロピルテトラメトキシメチルグリコールウリル、及びメチルフェニルテトラメトキシメチルグリコールウリルなどが挙げられる。
図6は、具体的なアミノプラスト材料の例を挙げるものである。グリコールウリル類の例は、テトラメトキシメチルグリコールウリルである。
【0049】
第二のポリマーの重合においては、該ポリマーを製造するための第二の化合物の一つの態様は、ポリオール(27)及び/またはシアヌル酸誘導体(28)からなる群から選択されるポリヒドロキシ化合物であってよい。構造(27)においては、R
13は、スペーサー基、例えば(C
1〜C
12)アルキレンであり、ここでアルキレンは、線状アルキレン(C
1〜C
10)(例えばメチレン、エチレンなど)、分枝状アルキレン(C
3〜C
12)またはシクロアルキレン(C
5〜C
12)によって例示し得、R
14は、水素及びC
1〜C
10アルキル、アリール(C
6〜C
20)(例えばフェニルなど)、アルキル置換アリール(C
6〜C
20)(例えば−Ph−CH
3など)、アルキルアリール誘導体(C
6〜C
20)(例えば−CH
2Phなど)及び線状もしくは分枝状アルキルヒドロキシル基(例えばHO−CH
2−など)から選択される。(27)によって概要される構造からなる群において、スチレングリコールがより具体的な例である。
【0050】
【化13】
【0051】
シアヌル酸誘導体(28)では、R
15、R
16及びR
17は独立してC
2〜C
8アルキレンスペーサーである。R
15、R
16及びR
17は全てエチレンスペーサー(−CH
2−CH
2−)であってもよい。
【0052】
該第二のポリマーはアミノプラスト基を含む。
図29は、第二のタイプのポリマーの繰り返し単位の一般構造を示し、これは、少なくとも二つのアミノメチレンオキシ部分(N−CH
2−O−)に結合したポリオール化合物から誘導されるZ部分を示している。Yは、アミノプラスト基内のアミノ部分を表す。波線は、Y上で、ZとY間の追加のアミノメチレンオキシ結合を示すか、または場合により未反応のアミノメチレンアルコキシもしくはアミノメチレンアルコキシヒドロキシ基を示す。未反応のアミノメチレンヒドロキシは全てのY繰り返し単位上に存在していなくともよいが、典型的なポリマー鎖では、ポリマーブレンドの架橋を保証するために少なくとも一部は存在する。
【0053】
構造30は、アミノプラスト成分がグリコールウリル化合物から誘導される場合の第二のポリマーのより具体的な構造を示し、ここで、Zは、アルキル置換基としてR
13を有するアルキルポリオール(27)からもしくはアリール置換基としてR
14を有する芳香族ポリオールから、または(28)シアヌル酸誘導体から、あるいはこれらの混合物から誘導される単位である。構造(30)は、グルコールウリル部分ライン上の波線を介して、ポリオールへの未反応アミノメチレンアルコキシ、アミノメチレンアルコキシヒドロキシ基または追加のアミノアルキルメチレン結合の存在を示す。Zは、他の部分への追加の結合を含んでもよい。
【0054】
【化14】
【0055】
一例は(31)である。
【0056】
【化15】
【0057】
第二のポリマーは、30〜80%のアミノプラスト単位及び70〜20%のポリオール/ポリ酸単位を含むことができる。該ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約1,000〜100,000または約3,000〜20,000である。193nmでの反射防止性として第二のタイプのポリマーの許容可能なn及びkの範囲は次の通りである: nが約1.6〜2.0、及びkが約0.1〜0.6。より具体的には、約1.7〜1.95のn及び約0.12〜0.5のkの範囲が許容可能である。第一のタイプのポリマーからの相分離を保証するために、第二のポリマーの水との接触角は、35°〜65°、または約40°〜約60°の範囲である。
【0058】
前記第一のポリマーと第二のポリマーを含む新規反射防止コーティングは、更に熱酸発生剤(TAG)を含む。TAG成分は、組成物内での架橋を触媒する。本発明で使用される熱酸発生剤は、本発明に存在するポリマーと反応してポリマーの架橋を伝播できる酸を加熱時に発生する任意の一種またはそれ以上であってよく、特に好ましい酸は、スルホン酸類などの強酸である。好ましくは、熱酸発生剤は、90℃超、より好ましくは120℃超、更により好ましくは150℃超で活性化される。熱酸発生剤の例は、金属不含スルホニウム塩及びヨードニウム塩、例えば強非求核酸のトリアリールスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、及びジアリールアルキルスルホニウム塩; 強非求核酸のアルキルアリルヨードニウム、ジアリールヨードニウム塩、及び強非求核酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、コバレント(covalent)熱酸発生剤も有用な添加剤として想定され、例えばアルキルまたはアリールスルホン酸の2−ニトロベンジルエステル、及び熱分解して遊離のスルホン酸類を与える他のスルホン酸エステルなどがある。例は、ジアリールヨードニウムパーフルオロアルキルスルホネート類、ジアリールヨードニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジアリールヨードニウムまたは第四アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例には、2−ニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、4−ニトロベンジルトシレート; ベンゼンスルホネート類、例えば2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−クロロベンゼンスルホネート、2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−ニトロベンゼンスルホネート; フェノール系スルホネートエステル類、例えばフェニル,4−メトキシベンゼンスルホネート; 第四アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、及び第四アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10−カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。様々な芳香族系(アントラセン、ナフタレンまたはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして使用することができ、例えばUS3,474,054(特許文献7)、US4,200,729(特許文献8)、US4,251,665(特許文献9)及びUS5,187,019(特許文献10)に記載のものなどが挙げられる。好ましくは、TAGは、170〜220℃の温度で非常に低い揮発性を有するものである。TAGの例は、Nacure及びCDXの名称でKing Industriesから販売されているものである。このようなTAGはNacure5225、及びCDX−2168Eであり、後者は、King Industries,Norwalk,Conn.06852,USAからプロピレングリコールメチルエーテル中25〜30%の活性成分濃度で供給されているドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩である。本発明で有用なTAGの具体例の一つは、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。
【0059】
上記二種のポリマーを含む該新規組成物は、更に、第二の架橋剤の追加を含んでもよい。様々な追加的な架橋剤を本発明の組成物に使用することができる。酸の存在下に該ポリマーを架橋できるものであれば任意の適当な架橋剤を使用してよい。このような架橋剤の非限定的な例は、メラミン類を含む樹脂、メチロール類、グリコールウリル、ポリマー性グリコールウリル類、ベンゾグアナミン、尿素、ヒドロキシアルキルアミド類、エポキシ及びエポキシアミン樹脂、ブロックドイソシアネート類、及びジビニルモノマーである。モノマー性メラミン類、例えばヘキサメトキシメチルメラミン; グリコールウリル類、例えばテトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル; 及び芳香族メチロール類、例えば2,6ビスヒドロキシメチルp−クレゾールを使用し得る。エポキシに基づく架橋剤も使用し得る。
【0060】
該反射防止コーティング組成物の固形成分は、該反射防止コーティングの固形成分を溶解する溶剤または複数種の溶剤の混合物と混合される。該反射防止コーティング組成物のための適当な溶剤には、例えばグリコールエーテル誘導体、例えばエチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、またはジエチレングリコールジメチルエーテル; グリコールエーテルエステル誘導体、例えばエチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA); カルボキシレート類、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル及び酢酸アミル; 二塩基性酸のカルボキシレート類、例えばジエチルオキシレート及びジエチルマロネート; ジグリコール類のジカルボキシレート類、例えばエチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセテート; 及びヒドロキシカルボキシレート類、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル、及びエチル−3−ヒドロキシプロピオネート; ケトンエステル類、例えばピルビン酸メチルもしくはピルビン酸エチル; アルコキシカルボン酸エステル類、例えばメチル3−メトキシプロピオネート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオネート、もしくはメチルエトキシプロピオネート; ケトン誘導体、例えばメチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンもしくは2−ヘプタノン; ケトンエーテル誘導体、例えばジアセトンアルコールメチルエーテル; ケトンアルコール誘導体、例えばアセトールもしくはジアセトンアルコール; ケタール類もしくはアセタール類、例えば1,3ジオキサラン及びジエトキシプロパン; ラクトン類、例えばブチロラクトン及びガンマバレロラクトン; アミド誘導体、例えばジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド、アニソール、及びこれらの混合物などが挙げられ得る。
【0061】
該調合物の組成は、スピンキャスト溶剤(例えば、PGMEA、PGME、PGMEA/PGME70/30など)中の1〜10重量%溶液からなり、そのうちの本質的な固形成分は、第一のポリマーのポリマーまたはポリマー混合物を固形成分の1〜50重量%またはより具体的には2〜20重量%の範囲; 固形成分の50〜99重量%、好ましくは80〜98重量%の範囲の第二のポリマー; 及び固形成分の0.5〜5重量%からなるTAG成分を含む。他の成分を加えてもよく、このような成分としては、光酸発生剤、他の架橋剤、例えばモノマー性アミノプラスト及びエポキシ架橋剤などがあり、そして最後にフッ素系界面活性剤をレベリング剤として加えることができる。
【0062】
該反射防止フィルムは、基材のトップにコーティングされ、またドライエッチングに付されるため、半導体デバイスの性質が悪影響を受けない程に該フィルムが、十分に金属イオン濃度が低く及び十分に純度が高いことも想定のうちである。ポリマーの溶液をイオン交換カラムに通したり、濾過や、抽出プロセスなどの処理を、金属イオン濃度を減少させ及び異物(particles)を減らすために使用することができる。
【0063】
本発明の反射防止コーティングでは、疎水性は二つの観点で重要である。すなわち、第一には、従来の意味合いで、勾配型BARCのトップ層が、コーティングされたフィルムの形成の後に、反射防止コーティングの上にコーティングされるフォトレジストフィルムの疎水性と適合し、それによって良好な均一性をもったコーティングが得られるように、疎水性であることが重要である。しかし、本発明では、混合物中での各々の個々のポリマー成分の疎水性は、二種のポリマー成分が如何に良好に互いに相分離するかを確定すること、そして第一のポリマー成分がフィルムのトップに移行して、そこでこれがスピンコーティングの間は疎水性であるが、その上にある露光された領域のレジストフィルムが現像して貫通された時に、現像剤がその表面を濡らすことを保証するために塩基またはアルカリイオン化可能部分を有することを確実にするためにも重要である。このことは、レジスト図形のスカミング及びフッティングを最小化する。また、上記二種のポリマー成分の間の疎水性の差異は、上記二種のポリマーが如何に良好に勾配型フィルムを形成して、勾配のある光学特性を有する反射防止コーティングを提供するかを決めるために、重要である。上記二種のポリマー成分フィルムの疎水性は、フィルムの水接触角(CA
Water)によって測定でき、ここで接触角とは、ベークした反射防止コーティングフィルム上で水滴によって形成される角度である。典型的には、液浸リソグラフィに使用されるフォトレジストフィルムは、約80°の水接触角を有する。それ故、該反射防止コーティングフィルムの水接触角は、架橋されたBARCブレンドの表面に移行するように設計された上記第一のポリマー成分の詳細な説明において上で詳述した通り、約60°〜85°またはより好ましくは70°〜80°の類似の範囲内である。フォトレジストを画像形成し及び水性アルカリ性現像剤中で現像した時、反射防止コーティングフィルムの現像剤接触角は、水中での接触角よりも小さいのがよく、そうすると、現像剤が、反射防止コーティング表面上で良好な湿潤能力を有するようになり、欠陥を現象させる助けとなる。水中での接触角及び現像剤中での接触角の差異は5°〜15°の範囲である。該反射防止コーティングは、現像後に基材上に残る。
【0064】
n及びk値は、J.A.Woollam WVASE VU−32
TMエリプソメータなどのエリプソメータを用いて計算することができる。k及びnの最適範囲の正確な値は、使用する露光波長及び適用のタイプに依存する。n及びk値のモデリングは、該新規組成物から形成されたフィルムにおいて、均一に混合された中間層を備えた二重層に良好なフィットが得られたことを示した。それ故、該フィルムの表面は、第一のポリマーのそれと近似するn及びk値を有し、該フィルムの底面は第二の層のそれと近似するn及びk値を有し、そしてフィルムの表面部分と底面部分との間には均一に混合された層が形成された。
【0065】
該反射防止コーティング組成物は、当業者には周知の技術を用いて基材にコーティングされる。このような技術には、例えばディップコート法、スピンコート法またはスプレーコート法などがある。反射防止コーティングのフィルム厚は約15nm〜約400nmの範囲である。このコーティングは、更に、残留溶剤を除去して架橋を誘発し、それによって反射防止コーティングを不溶化して反射防止コーティングとその上にコーティングされる層との相互混合を防ぐのに十分な時間、ホットプレートまたはコンベクションオーブンで加熱される。温度の好ましい範囲は約150℃〜約280℃である。本発明の反射防止コーティングは、一つまたはそれ以上の反射防止コーティングの他の層または複数の他の層の上にコーティングしてよい。
【0066】
最上の反射防止コーティングの上にはフォトレジストのフィルムをコーティングし、そしてベークしてフォトレジスト溶剤を実質的に除去する。コーティングステップの後に、当技術分野で周知の方法を用いて、エッジビードリムーバを適用して基材の縁を清浄してもよい。
【0067】
反射防止コーティングがその上に形成される基材は、半導体工業で典型的に使用されるもののうちの任意のものであることができる。適当な基材には、限定はされないが、低誘電率材料、ケイ素、金属表面で被覆されたケイ素基材、銅で被覆されたケイ素ウェハ、銅、アルミニウム、ポリマー性樹脂、二酸化ケイ素、金属、ドープド二酸化ケイ素、窒化ケイ素、タンタル、ポリシリコン、セラミック、アルミニウム/銅混合物: ヒ化ガリウム、及び他のこのようなIII/V族化合物などが挙げられる。基材は、上記の材料でできた任意の数の層を含んでよい。
【0068】
フォトレジストは、フォトレジスト及び反射防止コーティング中の光活性化合物が、画像形成プロセスに使用される露光波長を実質的に吸収するものであることを条件に、半導体工業で使用される種のうち任意のものであることができる。液浸リソグラフィに有用なフォトレジストが好ましい。典型的には、液浸リソグラフィを用いた画像形成に適したフォトレジストを使用してよく、この際、このようなフォトレジストは、1.85を超える屈折率を有し、かつ75°〜95°の範囲の水接触角を持ち疎水性でもある。
【0069】
これまでに、微細化に大きな進展をもたらした幾つかの主要な深紫外線(uv)露光技術があり、これらは、248nm、193nm、157nm、及び13.5nmの放射線である。248nm用のフォトレジストは、典型的には、置換されたポリヒドロキシスチレン及びそれのコポリマー/オニウム塩、例えばUS4,491,628(特許文献11)及びUS5,350,660(特許文献12)に記載のものなどに基づく。他方、193nm露光用のフォトレジストは、芳香族類がこの波長で不透明なために非芳香族系ポリマーを必要とする。US5,843,624(特許文献13)及びUS6,866,984(特許文献14)は、193nm露光に有用なフォトレジストを開示している。一般的に、脂肪環式炭化水素を含むポリマーが、200nm未満の露光のためのフォトレジストに使用される。脂肪環式炭化水素は多くの理由からポリマーに組み入れられる。というのも、第一には、これらは耐エッチング性を向上する比較的高い炭素:水素比を有し、またこれらは低波長での透明性を供し、及びこれらは比較的高いガラス転移温度を有するからである。US5,843,624(特許文献13)は、無水マレイン酸と不飽和環状モノマーとの遊離基重合によって得られるフォトレジスト用ポリマーを開示している。193nmフォトレジストの既知のタイプのうち任意をものを使用してよく、例えばUS6,447,980(特許文献15)及びUS6,723,488(特許文献16)に記載のものなどがある。これらの文献の内容は本明細書に掲載されたこととする。
【0070】
コーティングプロセスの後、フォトレジストは像様露光される。露光は、典型的な露光装置を用いて行うことができる。露光されたフォトレジストは、次いで、水性現像剤中で現像して、処理されたフォトレジストを除去する。現像剤は、好ましくは、水性アルカリ性溶液、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含む水性アルカリ性溶液である。大概は、水中2.3重量%のTMAHが使用される。現像剤は、更に、一種またはそれ以上の界面活性剤を含んでもよい。現像の前及び露光の後に任意選択に加熱ステップをプロセスに組み入れることができる。
【0071】
フォトレジストのコーティング及び画像形成プロセスは当業者には周知であり、使用するフォトレジストの特定のタイプに合わせて最適化される。次いで、パターン化された基材を、エッチングガスまたは複数種のガスの混合物を用いて適当なエッチングチャンバ中でドライエッチして、反射防止フィルムのまたは反射防止コーティングの複数の層の露光された部分を除去することができる。この際、残ったフォトレジストはエッチングマスクとして働く。有機系反射防止コーティングをエッチングるための様々なエッチングガスが当技術分野で既知であり、例えばO
2、CF
4、CHF
3、Cl
2、HBr、SO
2、COなどを含むものなどがある。
【0072】
上記で引用した文献はそれぞれ、全ての目的に関してその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び使用する方法の詳細な例示を与えるものである。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定または減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に使用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものとは解釈するべきではない。
【実施例】
【0073】
以下の例において反射防止コーティングの屈折率値(n)及び吸光値(k)は、J.A.Woollam VASE32エリプソメータで測定した。
【0074】
ポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した。
【0075】
静的接触角(SCA)データは、EM Science社(480 Democrat Road,Gibbstown,NJ08027)のOmnisolv水またはAZ(登録商標)300MIF現像剤(AZ(登録商標)Electronic Materials USA Corp.,70,Meister Ave.,Somerville,NJ08876から入手できる)を用いて、AST Products,Inc.社(9 Linnell Circle,Billerica,MA01821)のVCA2500XE(ビデオ接触角システム)で収集した。試験は、クラス1000Fab環境中で行った。静的接触角は、五回を超える測定からの平均値として報告した。
【0076】
合成例1: ポリ(ヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート−co−マレイミド−co−ヒドロキシプロリルメタクリレートの合成
15.0gのイソプロピルヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート(MA−BTHB−OH)、8.9gのマレイミド、8.7gのヒドロキシプロリルメタクリレートを、120gのテトラヒドロフラン(THF)溶剤中で混合した。重合反応を、0.7gのAIBNの存在下に75℃で窒素雰囲気下に20時間行った。室温に冷却した後、反応混合物を脱イオン(DI)水中で析出させた。白色のポリマー固形物を洗浄しそして真空下に45℃で乾燥すると、19,000の平均MWを有する29.5g(90%)の収量を得た。
【0077】
合成例2: ポリ(ヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート−co−マレイミド−co−ヒドロキシプロピルメタクリレート−co−スチレンの合成
20.0gのイソプロピルヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート(MA−BTHB−OH)、4.1gのマレイミド、6.0gのヒドロキシプロピルメタクリレート及び1.8gのスチレンを、120gのTHF溶剤中で混合した。重合反応を、0.7gのAIBNの存在下に75℃で窒素雰囲気下に20時間行った。室温に冷却した後、反応混合物をDI水中で析出させた。白色のポリマー固形物を洗浄しそして真空下に45℃で乾燥すると、20000の平均MWの29.7g(93%)の収量を得た。
【0078】
合成例3: ポリ(ヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート−co−マレイミド−co−ヒドロキシプロピルメタクリレート−co−スチレンの合成
20.0gのイソプロピルヘキサフルオロイソプロパノールメタクリレート(MA−BTHB−OH)、4.1gのマレイミド、6.0gのヒドロキシプロリルメタクリレート及び1.8gのスチレンを120gのPGME溶剤中で混合した。重合反応を、3.0gのAIBNの存在下に85℃、窒素雰囲気下に4時間行った。室温に冷却した後、反応混合物をDI水中で析出させた。固形物を集め、乾燥しそしてアセトン中に再溶解させた。この溶液をDI水中で析出させた。固形の生成物を洗浄しそして真空下に45℃で乾燥すると、8000の平均MWを有するポリマーが得られた。
【0079】
合成例4: アミノプラストとポリオールとのコポリマーの合成
600gのテトラメトキシメチルグリコールウリル、96gのスチレングリコール及び1200gのPGMEAを、温度計、機械的攪拌機及び冷水凝縮器を備えた2Lジャケット付きフラスコ中に仕込み、そして85℃に加熱した。触媒量のpara−トルエンスルホン酸一水和物を加えた後、反応をこの温度で5時間維持した。次いで、この反応溶液を室温に冷却しそして濾過した。濾液を、攪拌しながらゆっくりと蒸留水中に注ぎ入れて、ポリマーを析出させた。このポリマーを濾過し、水で徹底的に洗浄し、そして減圧炉中で乾燥した(250gが得られた)。得られたポリマーは、約17,345g/molの重量平均分子量及び2.7の多分散性を有していた。
【0080】
調合例1
合成例1からの1.0gのポリマーを、30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して、3.3重量%の溶液を調製した。テトラメトキシメチルグリコールウリル0.1g及びPGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を、孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。この反射防止コーティングを分光エリプソメータで分析した。最適化された193nmでの屈折率“n”は1.60であり、そして吸光パラメータ“k”は0.15であった。
【0081】
調合例2
合成例2からの1.0gのポリマーを、30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して、3.3重量%の溶液を調製した。テトラメトキシメチルグリコールウリル0.15g及びPGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。この反射防止コーティングを分光エリプソメータで分析した。最適化された193nmでの屈折率“n”は1.63であり、そして吸光パラメータ“k”は0.17であった。
【0082】
調合例3
合成例3からの1.0gのポリマーを、30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して、3.3重量%の溶液を調製した。テトラメトキシメチルグリコールウリル0.15g及びPGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。この反射防止コーティングを分光エリプソメータで分析した。最適化された193nmでの屈折率“n”は1.63であり、そして吸光パラメータ“k”は0.17であった。
【0083】
調合例4:
合成例4からの1.0gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。この反射防止コーティングを分光エリプソメータで分析した。最適化された193nmでの屈折率“n”は1.89であり、そして吸光パラメータ“k”は0.34であった。
【0084】
調合例5:
合成例1からの0.1gのポリマー及び合成例4からの0.9gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0085】
調合例6:
合成例1からの0.2gのポリマー及び合成例4からの0.8gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0086】
調合例7:
合成例1からの0.5gのポリマー及び合成例4からの0.5gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0087】
調合例8:
合成例2からの0.1gのポリマー及び合成例4からの0.9gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0088】
調合例9:
合成例2からの0.2gのポリマー及び合成例4からの0.8gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0089】
調合例10:
合成例2からの0.5gのポリマー及び合成例4からの0.5gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0090】
調合例11:
合成例3からの0.05gのポリマー及び合成例4からの0.95gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0091】
調合例12:
合成例3からの0.1gのポリマー及び合成例4からの0.9gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0092】
調合例13:
合成例3からの0.2gのポリマー及び合成例4からの0.8gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0093】
調合例14:
合成例3からの0.5gのポリマー及び合成例4からの0.5gのポリマーを30gのPGMEA/PGME70/30溶剤中に溶解して3.3重量%の溶液を調製した。PGMEA/PGME70/30中10%のドデシルベンゼンスルホン酸トリエチルアミン塩0.1gをポリマー溶液中に添加した。次いで、この混合物を孔サイズが0.2μmのマイクロフィルターに通して濾過した。この溶液を、次いで、40秒間、ケイ素ウェハ上にスピンコートした。次いで、このコーティングされたウェハをホットプレートで200℃で1分間、加熱した。
【0094】
BARCフィルムについての溶剤及び現像剤に対する耐性の評価
PGMEA/PGME70:30溶剤を、調合例1〜14からのBARC材料でコーティングしたケイ素ウェハ上に施した。60分後に窒素を吹き込んで溶剤を除去した。有意なフィルムの損失は観察されなかった。同様の実験を現像剤としてAZ(登録商標)300MIF Developerを用いて行った。調合例1(合成例1からのポリマー)からのコーティングは、そのイミド含有量の故に現像剤中に溶解した。他の調合例2〜14からのBARCフィルムは、現像剤に対して良好な耐性を示した。
【0095】
BARCコーティングについての接触角測定
調合例1〜20から生じたBARCフィルムを接触角検査に付した。コーティングされたウェハそれぞれにつき、5滴の水を、ウェハのセンター領域、上側領域、下側領域、左側領域及び右側領域にたらした。ウェハの接触角をVCA 2500XEシステムを用いて測定した。これらの五つの接触角データを平均して、BARCの水接触角を得た。水の代わりに現像剤(AZ300MIF)を用い及び上記と同じ手順に沿って、BARC上での現像剤接触角を測定した。結果を、それぞれ合成例1、2及び3からのトップポリマーを用いた調合物について表1、表2及び表3に示す。合成例1及び4からのポリマーでは(表1)、合成例1からの疎水性ポリマーを添加した時の接触角の増大は望むようには効果的ではない。これは、ポリマー中の低いフルオリネート含有量及びイミド含有量の性質の結果である。合成例2及び4からのポリマー(表2)または合成例3及び4からのポリマー(表3)では、合成例2または3からの疎水性ポリマーの添加によって接触角の有意な増加が観察され、これは、勾配型トップ層が形成されたことを示す。合成例2及び3からのポリマーは、かなりの量の疎水性単位を含む。この結果は、また、トップ層材料のMWが、勾配挙動に大きな影響を持たないことを表している。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
勾配型材料の光学的分析
勾配型材料の光学的分析を角度可変分光エリプソメトリ(VASE)を用いて行った。調合例2及び4からの均一なフィルムについて光学分散モデル(WVASE(登録商標)genosc.mat,J.A.Woolam)を、調合例8、9及び10であるこれらの二成分のブレンドから形成されたフィルムをモデル化するのに使用した。相分離したフィルムの実験データ(Δ、Ψ)を様々なレイヤードモデルにフィットさせた。これらの中には、二重層、中間に均一に混合された混合領域を有する二重層、中間に勾配領域を有する二重層、及び単一の勾配層が含まれる。均一に混合された混合領域を有する二重層が、調合物中の組成と及び接触角組成によって得られた結果とも合致する優れたフィットであることが確認された。
【0100】
比較リソグラフィ例1
該反射防止コーティング調合物のリソグラフィ性能をAZ(登録商標)EXP AX2110Pフォトレジストを用いて評価した。調合例4の溶液をケイ素ウェハ上にコーティングし、そして200℃で60秒間ベークした。AZ(登録商標)EXP AX1120Pフォトレジストを用いて、190nmフィルムをコーティングし、そして100℃で60秒間ベークした。次いで、このウェハを、193nm露光ツールを用いて像様露光した。この露光されたウェハを110℃で60秒間ベークし、そしてAZ(登録商標)300MIF現像剤を用いて30秒間現像した。走査電子顕微鏡で観察するとそのライン・アンド・スペースパターンは定在波を示さず、現像後に基材上に残った底面反射防止コーティングの有効性を示した。
【0101】
リソグラフィ例2
該反射防止コーティング調合物のリソグラフィ性能を、AZ(登録商標)EXP AX2110Pフォトレジストを用いて評価した。調合例8の溶液をケイ素ウェハ上にコーティングし、そして200℃で60秒間ベークした。AZ(登録商標)EXP AX1120Pフォトレジストを用いて、190nmフィルムをコーティングし、そして100℃で60秒間ベークした。次いで、このウェハを193nm露光ツールを用いて像様露光した。この露光したウェハを110℃で60秒間ベークし、そしてAZ(登録商標)300MIF現像剤を用いて30秒間現像した。走査電子顕微鏡で観察した時のライン・アンド・スペースパターンは定在波を示さず、それ故、該底面反射防止コーティングの有効性を示した。パターンプロフィルは、比較リソグラフィ例1からの結果と比較して、低減したフッティング/スカムを示した。