特許第5806635号(P5806635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806635
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/14 20060101AFI20151021BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   H01L27/14 Z
   H01L27/14 E
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-78609(P2012-78609)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211291(P2013-211291A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】一木 孝彦
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−216853(JP,A)
【文献】 特開2006−245045(JP,A)
【文献】 特開2008−028111(JP,A)
【文献】 特開2004−207487(JP,A)
【文献】 特開平05−013520(JP,A)
【文献】 特開2008−204767(JP,A)
【文献】 特開平08−293836(JP,A)
【文献】 特開2009−081297(JP,A)
【文献】 特表2005−539247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号読出し回路を備えた半導体ウエハと、
該半導体ウエハ上に形成された、多数の光電変換画素からなる撮像領域を含む複数の撮像素子部と、
前記半導体ウエハ上の前記撮像領域以外に形成されたテストパターンとを備え、
前記光電変換画素は、前記半導体ウエハ上に順に積層された画素電極、有機光電変換膜および対向電極を含み、
前記テストパターンが、前記光電変換画素の前記有機光電変換膜および前記対向電極とそれぞれ同時に形成された同一構成のテスト用有機光電変換膜およびその上に形成されたテスト用対向電極、前記テスト用有機光電変換膜の下面側に電気的に接続された第1のテスト用端子、および前記テスト用対向電極に電気的に接続された第2のテスト用端子を含み、
さらに、前記撮像領域および前記テストパターンを覆うように前記半導体ウエハ上の全域に亘って形成された後に、前記撮像領域を露出させることなく前記第1のテスト用端子の一部および前記第2のテスト用端子の一部を露出するように部分的に除去された保護膜を備えた撮像素子形成ウエハを作製する工程と、
該撮像素子形成ウエハの前記テストパターンの、前記第1のテスト用端子および前記第2のテスト用端子に外部から触針プローブを接触させて、前記テスト用有機光電変換膜の機能検査を行うことにより前記撮像素子形成ウエハの良否を判定する検査工程とを含み、
前記機能検査が、前記テストパターンを前記触針プローブにより外部回路と接続させ、前記有機光電変換膜に発光を生じさせる向きの電圧をかけて電流を通し、前記有機光電変換膜からの発光を検出するものであり、
前記検査工程において、前記撮像素子形成ウエハが否と判定された場合には以後の製造工程の継続を中止し、良と判定された場合には以後の製造工程を継続することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
前記テストパターンが前記半導体ウエハ上の撮像素子部間のダイシングライン上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の固体撮像素子の製造方法
【請求項3】
前記テストパターンが、前記画素電極と同時に形成された該画素電極と同一材料からなる第1のテスト用電極と第2のテスト用電極とを備え、
前記第1のテスト用電極上に前記テスト用有機光電変換膜が形成され、前記テスト用対向電極が前記テスト用有機光電変換膜を覆うと共に前記第2のテスト用電極を覆うように形成されており、
前記第1のテスト用端子が前記第1のテスト用電極を介して、前記テスト用有機光電変換膜の下面側に電気的に接続され、前記第2のテスト用端子が前記第2のテスト用電極を介して、前記テスト用対向電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の固体撮像素子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明な、固体撮像素子の製造過程に生成される撮像素子形成ウエハ、固体撮像素子の製造方法および撮像素子チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のシリコン系固体撮像素子に代わる新たな固体撮像素子として、有機光電変換層を受光部に持ち、その上部が保護膜で覆われた有機CMOSセンサ等の固体撮像素子が提案されている(特許文献1等)。これは、シリコン基板上に形成された信号読出し回路の上方に、有機光電変換膜を成膜して作製されるフォトダイオードを備えた撮像デバイスである。このデバイスを製造する際に、信号読出し回路は標準的な半導体プロセスで形成されるため、信号読出し回路については製造時の検査方法が確立されている。一方、有機光電変換膜についての検査方法は十分に確立されていない。生産性の向上のためにも有機光電変換膜の欠陥検査は必須である。
【0003】
特許文献1には、固体撮像素子の製造工程途中で有機光電変換膜の欠陥検査を行うために、撮像領域とは異なる位置にテストパターンを構築し、外部と電気的接触を取ることができる端子の構造が提案されている。この構造により、欠陥検査方法が破壊検査か非破壊検査であるかに関わらず、撮像領域に影響を及ぼさずに有機光電変換膜の欠陥検査を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−216853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、有機光電変換膜を検査するにあたっての検査部の構造の詳細は述べられていない。
有機光電変換膜は酸素、水分などに非常に影響を受けやすく、これらの侵入による特性の変動が激しい。そこで、有機光電変換膜の成膜後、有機光電変換膜が外気に触れないようにその上に保護膜を形成することが必須である。ゆえに、保護膜形成の後に欠陥検査を行うことが現実的である。
【0006】
特許文献1では、パターニング成膜により保護膜をテスト用端子上には成膜しないようして、テスト用端子に対し外部アクセスが可能とする構造が開示されている。
しかしながら、保護膜はその製法上、成膜のパターニングが難しい。また、保護膜をパターニング成膜すると、保護性能および密着性が十分に得られない場合がある。
【0007】
また、特許文献1には、有機光電変換膜を検査するにあたっての検査方法についての詳細は述べられていない。
有機光電変換膜は従来のSi系フォトダイオードとは性質が異なるため、効率的に欠陥検査を行うには、有機光電変換膜に適した検査手法を構築、適用することが必要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、保護膜による撮像領域の保護機能を十分なものとしつつ、撮像素子の製造工程中において、撮像領域に影響を与えることなく有機光電変換膜の良否を検査することが可能な構造を有する撮像素子形成ウエハを提供することを目的とする。また、有機光電変換膜を有する撮像素子を歩留まり高く製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像素子形成ウエハは、信号読出し回路を備えた半導体ウエハと、
半導体ウエハ上に形成された、多数の光電変換画素からなる撮像領域を含む複数の撮像素子部と、
半導体ウエハ上の前記撮像領域以外に形成されたテストパターンとを備え、
光電変換画素は、半導体ウエハ上に順に積層された画素電極、有機光電変換膜および対向電極を含み、
テストパターンが、前記光電変換画素の前記有機光電変換膜および前記対向電極とそれぞれ同時に形成された同一構成のテスト用有機光電変換膜およびその上に形成されたテスト用対向電極、前記テスト用有機光電変換膜の下面側に電気的に接続された第1のテスト用端子、および前記テスト用上部電極層に電気的に接続された第2のテスト用端子を含み、
さらに、前記撮像領域および前記テストパターンを覆うように前記半導体ウエハ上の全域に亘って形成された後に、前記撮像領域を露出させることなく前記第1のテスト用端子の一部および前記第2のテスト用端子の一部を露出するように部分的に除去された保護膜を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
前記テストパターンが前記半導体ウエハ上の撮像素子部間のダイシングライン上に設けられていることが望ましい。
【0011】
前記テストパターンが、前記画素電極と同時に形成された該画素電極と同一材料からなる第1のテスト用電極と第2のテスト用電極とを備え、
前記第1のテスト用電極上に前記テスト用有機光電変換膜が形成され、前記テスト用対向電極が前記テスト用有機光電変換膜を覆うと共に前記第2のテスト用電極を覆うように形成されており、
前記第1のテスト用端子が前記第1のテスト用電極を介して、前記テスト用有機光電変換膜の下面側に電気的に接続され、前記第2のテスト用端子が前記第2のテスト用電極を介して、前記テスト用対向電極に電気的に接続されている構成とすることができる。
【0012】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、本発明の撮像素子形成ウエハを作製する工程と、
該撮像素子形成ウエハの前記テストパターンの、前記第1のテスト用端子および前記第2のテスト用端子に外部から触針プローブを接触させて、テスト用有機光電変換膜の機能検査を行うことにより前記撮像素子形成ウエハの良否を判定する検査工程とを含み、
該検査工程において、撮像素子形成ウエハが否と判定された場合には以後の製造工程の継続を中止し、良と判定された場合には以後の製造工程を継続することを特徴とする。
【0013】
前記機能検査は、前記テストパターンを前記触針プローブにより外部回路と接続させ、前記有機光電変換膜に逆電圧をかけて電流を通し、前記有機光電変換膜からの発光を検出するものとすることができる。
【0014】
本発明の他の固体撮像素子の製造方法は、本発明の撮像素子形成ウエハを作製する工程と、
該撮像素子形成ウエハの前記テストパターンの、前記第1のテスト用端子および前記第2のテスト用端子に外部から触針プローブを接触させて、テスト用有機光電変換膜の機能検査を行うことにより該テストパターンに対応する撮像領域の良否を判定する検査工程とを含み、
該検査工程において、否と判定された撮像領域については以後の製造工程の継続を中止し、良と判定された撮像領域については以後の製造工程を継続することを特徴とする。
【0015】
前記機能検査を、前記テストパターンを前記触針プローブにより外部回路と接続させ、前記有機光電変換膜に正電圧をかけた状態で、前記テストパターンに単一波長の光を照射し、前記外部回路に流れた電流を検出するものとすることができる。
【0016】
なお、前記正電圧を掃引させて、前記電流を検出するようにしてもよい。
【0017】
前記機能検査を、前記テストパターンを前記触針プローブにより外部回路と接続させ、前記有機光電変換膜に正電圧をかけた状態で、前記外部回路に流れる暗電流の変化を検出するものとすることができる。
【0018】
なお、前記正電圧を掃引させて、前記暗電流を検出するようにしてもよい。
【0019】
本発明の撮像素子チップは、信号読出し回路を備えた半導体基板と、
該半導体基板上に形成された、多数の光電変換画素からなる撮像領域を含む撮像素子部と、
前記半導体基板上の前記撮像領域以外に形成されたテストパターンとを備え、
前記光電変換画素が、前記半導基板上に順に積層された画素電極、有機光電変換膜および対向電極を含むものであり、
前記テストパターンが、前記光電変換画素の前記有機光電変換膜および前記対向電極とそれぞれ同時に形成された同一構成のテスト用有機光電変換膜およびその上に形成されたテスト用対向電極、前記テスト用有機光電変換膜の下面側に電気的に接続された第1のテスト用端子、および前記テスト用上部電極層に電気的に接続された第2のテスト用端子を含むものであり、
さらに、前記撮像領域および前記テストパターンを覆うように前記半導体基板の全域に亘って形成された保護膜を備え、該保護膜に前記第1のテスト用端子の一部および前記第2のテスト用端子の一部を露出するように部分開口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の撮像素子形成ウエハは、一旦ウエハの全面に保護膜を形成した後、テスト用端子の一部を露出させた構造を有しているため、保護膜の密着性が高く、有機光電変換部を保護する保護性能を十分なものとすることができる。
【0021】
本発明の撮像素子形成ウエハを用いれば、撮像素子の製造工程途中にウエハの良否および/または撮像領域の有機光電変換膜の良否をテストパターンのテスト用有機光電変換膜の機能検査により早期に判断することができる。これにより、工程の最後でのみ検査を行った場合に比べて、不良品に余計な工程を実施せずに済むため、コスト低減が可能となる。
【0022】
本発明の固体撮像素子の製造方法を用いれば、製造工程途中に撮像素子形成ウエハの良否または撮像領域の有機光電変換膜の良否をテストパターンのテスト用有機光電変換膜の機能検査により早期に判断することができる。これにより、工程の最後でのみ検査を行っていた場合に比べて、不良品に余計な工程を実施せずに済むため、コスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】固体撮像素子100の横断面模式図
図2A】撮像素子形成ウエハの平面図および一部拡大図
図2B】撮像素子部の設計変更例を示す平面図
図3図2AのIII-III線断面模式図
図4図2AのIV-IV線断面模式図
図5】有機光電変換膜の断面模式図
図6】設計変更例1のテストパターンの模式平面図
図7】設計変更例1のテストパターンの模式断面図
図8】設計変更例2のテストパターンの模式平面図
図9】設計変更例2のテストパターンの模式断面図
図10】第1の検査方法の説明図
図11】光電変換素子の撮像時感度とEL発光時強度の対応を示す模式図
図12】第2の検査方法の説明図
図13】第2の検査方法において電圧掃引をした場合の良品および不良品の光電流の変化を模式的に示すグラフ
図14】第3の検査方法の説明図
図15】第3の検査方法において電圧掃引をした場合の良品および不良品の暗電流の変化を模式的に示すグラフ
図16】本発明の固体撮像素子製造方法により得られる固体撮像素子を備えたデジタルカメラの機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
まず、固体撮像素子100の構成について簡単に説明する。図1は、固体撮像素子100の縦断面模式図である。この固体撮像素子100は、撮像素子チップ101と、撮像素子チップ101の背面側に貼り付けられた回路基板103とを備える。
【0026】
面積的には、回路基板103>撮像素子チップ101となっており、回路基板103の中央部分に撮像素子チップ101が貼り付けられている。撮像素子チップ101の周辺部つまり撮像領域の周辺部には接続パッドが形成されており、この接続パッドと回路基板103とがワイヤ104でボンディングされている。
【0027】
撮像素子チップ101は、本発明の撮像素子形成ウエハから個片化されて形成されるものである。図2Aは、本発明の撮像素子形成ウエハの平面図および、その一部拡大図を示すものである。
【0028】
本発明における撮像素子形成ウエハ1とは、半導体ウエハ110と、ウエハ110上に半導体装置製造技術や製膜技術を用いて形成された多数の光電変換画素からなる撮像領域112を含む撮像素子部101aと、撮像素子部101a間のダイシングライン105に形成された、個々の撮像素子部101aと対応するテストパターン10とを含むものである。
【0029】
撮像領域および各光電変換画素の大きさは仕様により異なるが、一例をあげると、撮像領域の大きさは5mm×5mm程度、画素の大きさは0.9μm×0.9μm〜3μm×3μm程度である。
【0030】
半導体ウエハ110上において個々の撮像素子部101aは矩形に形成される。各撮像素子部101aにおいては、中央部に矩形の撮像領域112が形成され、周辺部に接続パッド113が形成されている。
撮像素子チップ101は、この撮像素子形成ウエハ1からダイシングにより個片化された、半導体基板上に撮像素子部101aが形成されてなるものである。本実施形態のようにダイシングライン105上にテストパターン10が設けられている場合には、個片化された撮像素子チップ101上にテストパターンの全部または一部が残存してもよいし、しなくてもよい。
【0031】
テストパターン10は、本実施形態のようにダイシングライン105上に形成されることが好ましいが、撮像素子部101a内の所要の接続パッド113や撮像領域112以外の領域に設けられて入れもよい。
【0032】
例えば、図2Bに撮像素子部101a’として示すように、撮像領域112と接続パッド113との間にテストパターン10’が設けられていてもよい。撮像素子部101a内に設けられている場合には、個片化された撮像素子チップ101内にテストパターン10が残存することとなり、この図2Bに示す撮像素子部101a’をウエハから個片化したものは本発明の撮像素子チップの実施形態に相当する。
【0033】
図3は、図2AのIII―III線断面模式図であり、撮像素子部101aおよびテストパターン10の横断面模式図である。図4は、図2AのIV−IV線断面模式図であり、テストパターン10の縦断面模式図である。なお、図2Bに示したテストパターン10’の断面は図3図4に示すテストパターン10の断面と同一である。
【0034】
半導体ウエハ110には、撮像素子部毎に信号電荷蓄積部を含む各画素対応の信号読出し回路122が形成されている信号読出し回路122は、一般的なCMOS型イメージセンサと同様に、個々の画素対応に図示省略のMOSトランジスタ回路である。各信号読出回路122は、対応する信号電荷蓄積部の蓄積電荷に応じた信号を撮像画像信号として、該当する接続パッド113を通して外部に読み出す。なお、信号読出し回路はCCD型としてもよい。
【0035】
半導体ウエハ110の上面には図示しない金属配線層および絶縁層124が積層されている。
【0036】
まず、撮像素子部101aの構成を説明する。
【0037】
半導体ウエハ110上の絶縁層124上において、個々の画素対応の画素電極125が撮像領域内に二次元アレイ状に配列形成されている。
画素電極125の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。画素電極125の材料として特に好ましいのは、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タンタル、窒化タングステンのいずれかである。
【0038】
撮像領域112のうち全ての画素電極125が配置される領域の外側の画素電極125と同一面上には、対向電極131にバイアス電圧を印加するための、画素電極125と同一材料からなるバイアス電圧印加用電極125cが形成されている。
【0039】
各画素電極125と、画素対応の信号電荷蓄積部122とは、絶縁層124内に立設されたビアプラグ126によって電気的に接続されている。各ビアプラグ126の途中には、個々に分離された金属膜127が絶縁層124内に埋設されており、金属膜127が信号電荷蓄積部122の遮光を図る様になっている。金属膜127は、絶縁層124のうち下半分が積層された後に形成され、その上に、絶縁層124の上半分が積層される。
【0040】
各画素電極125の上には、撮像領域毎の画素電極125に共通の有機光電変換膜130が積層されている。
【0041】
有機光電変換膜130は、その断面構成の模式図を図5に示すように、本実施形態では光電変換層130Aとその下側(半導体基板側)に形成された電荷ブロッキング層130Bとを含んで構成される。
【0042】
電荷ブロッキング層130Bは、画素電極125から光電変換層130Aに電荷(例えば電子)が注入されてしまうのを防ぐための層である。なお、電荷ブロッキング層130Bは、画素電極125と光電変換層130Aとの間に2つ以上設けられていてもよい。
【0043】
光電変換層130Aは、光を受光して、その光量に応じた電荷(電子、正孔)を発生する有機の光電変換材料を含んで構成された層である。ここでは、光電変換層130Aの材料としては、可視光全域に渡って感度を持つ材料を用いる。
【0044】
電荷ブロッキング層130Bおよび光電変換層130Aの具体的な材料としては、例えば、特開2011―216853号公報記載の材料を適宜使用することができる。なお、電荷ブロッキング層と光電変換層との間にバッファ層を備えていてもよいし、さらに他の層を含んでいてもよい。
【0045】
有機光電変換膜130を構成する複数層のうち、少なくとも光電変換層は有機材料から構成される。電荷ブロッキング層を含め、他の層は有機材料からなるものであってもよいし、無機材料からなるものであってもよい。
【0046】
有機光電変換膜130の上には、有機光電変換膜130を覆うように一枚構成のITO等の可視光に対し透明な対向電極131が積層されている。
【0047】
対向電極131は、ビアプラグ133で半導体ウエハ110の高濃度不純物層134に接続されており、高濃度不純物層134及び図示省略の配線層及び該当の接続パッド113を介して外部から所要電圧が対向電極131に印加される。
【0048】
対向電極131の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。
【0049】
撮像領域112において、各光電変換画素は、画素電極125、有機光電変換膜130および対向電極131から構成されている。
【0050】
対向電極131上には保護膜132が備えられており、撮像素子部全域が保護膜132により覆われている。なお、接続パッド113はワイヤボンディングの直前に開口が設けられる。
【0051】
保護膜132は、光電変換膜130の保護機能(水分や酸素が浸入しにくい緻密性)と透明性とを兼ね備えた材料の薄膜である。保護膜132は、波長400nm〜700nmにおける光透過率が80%以上であれば、光電変換膜130に十分に可視光を入射させることができる。
【0052】
保護膜132は、無機材料をALCVD法によって成膜したものであることが好ましい。ALCVD法は原子層CVD法であり緻密な無機膜を形成することが可能で、光電変換膜の有効な保護膜となり得るからである。ALCVD法はALE法もしくはALD法としても知られている。ALCVD法により成膜すべき無機材料は、無機酸化物(例えばAl23、SiO2,TiO2,ZrO2,MgO,HfO2,Ta25)であることが好ましく、その中でも最も効果が高いのはAl23である。
尚、光電変換膜130の保護性能をより向上させるために、保護膜132上又は保護膜132下に更にもう1つ保護膜を設けても良い。この場合の保護膜は、例えば酸化窒化珪素膜(SiON膜)で構成される。尚、光電変換膜130の保護効果が特に高いのは、保護膜132上にもう1つ保護膜を設けた構成である。
【0053】
上述のように保護膜の成膜にはALCVDを用い、ウエハ全面に対して一様な保護膜を形成する。保護膜は、すなわち、撮像素子部のみならず、テストパターンおよびダイシングラインを含め全域に形成される。
【0054】
次にテストパターン10の構成について説明する。
【0055】
テストパターン10は、テスト用電極125a、テスト用電極125aを覆うように成膜されたテスト用有機光電変換膜130a、テスト用有機光電変換膜130aを覆うように形成されたテスト用対向電極131a、テスト用対向電極に接続されたテスト用電極125b、テスト用電極125aとビアプラグ126aを介して電気的に接続された絶縁層124内に形成された金属配線層127a、および、テスト用電極125bとビアプラグ126bを介して電気的に接続された絶縁層124内に形成された金属配線層127bとを備えている。
【0056】
本実施形態においては、テスト用電極125aおよびビアプラグ126aを介してテスト用有機光電変換膜130aの下面に接続されている金属配線層127aが第1のテスト用端子であり、テスト用電極125bおよびビアプラグ126bを介してテスト用対向電極131aに接続された金属配線層127bが第2のテスト用端子である。
【0057】
テストパターン10上には、撮像領域に設けられている保護膜が連続して形成されているが、金属配線層127aおよび127bの一部が露出するようにその上の絶縁層124および保護膜132が一部除去されて開口140が設けられている。
【0058】
テスト用電極125aおよびテスト用電極125bは画素電極125の製造時に同一材料により同時に形成される。
また、テスト用有機光電変換膜130aは、撮像領域の光電変換膜130と同一材料により同時に形成される。
【0059】
また、金属配線層127a、127bは、撮像領域112の金属膜127と同一工程により形成される。また、ビアプラグ126a、126bは、撮像領域112のビアプラグ126と同一工程により形成される。
【0060】
テストパターン10の横幅(ダイシングライン105に垂直方向)は画素電極125a、有機光電変換膜130a、対向電極131aのうち最大の幅を持つものと等しい。画素電極125a、有機光電変換膜130a、対向電極131aのいずれの幅が最大であってもよいが、画素電極125aと対向電極131aが直接接触してはならない。
【0061】
本実施形態のように、テストパターンはダイシングライン上に構築することが望ましい。その場合、テストパターンの横幅は、ダイシングライン幅を超えないものとする。ダイシングライン幅は、例えば、160μm程度である。
【0062】
上記構成の撮像素子形成ウエハは、固体撮像素子100の撮像素子チップ製造工程において作製されるものである。
この撮像素子形成ウエハ1では、接続パッド113を露出させることなく、テスト用端子127aおよび127bに対して触針プローブを接触させ外部回路と接続し、テストパターンのテスト用光電変換膜130aが十分な光電変換機能を持っているか否かを検査することができ、これにより、各テストパターン10に対応する撮像領域112の光電変換膜130の良否判断を行うことができる。なお、テスト用端子127aと画素電極、およびテスト用端子127bと対向電極との間に、バッファアンプをはさんでもよい。この場合、バッファアンプは半導体ウエハ内に設置される。
【0063】
なお、接続パッド113は、図1に示すワイヤ104をボンディングするときまで絶縁層124で覆ったままとし、ボンディングする直前に接続パッド113上を開口し、接続パッド113の表面を若干削って電気接続が良好となるように清浄面が露出できる様にしている。
【0064】
良否判定の結果、良と判定されたものについてはダイシングにより個片化された後、回路基板上の所定位置に載置され、接続パッド開口がなされて、図1に示すワイヤワイヤボンディングがなされ、固体撮像素子100が得られる。
【0065】
斯かる構成の光電変換膜積層型固体撮像素子チップでは、入射光が保護膜132,対向電極131を通して有機光電変換膜130に入射すると、有機光電変換膜130内で入射光量に応じた正孔・電子対が発生する。正孔は、対向電極131に流れ、電子が各画素電極125を通して信号電荷蓄積部122に流れ、信号電荷蓄積部122の蓄積電荷量に応じた撮像画像信号が、信号読出回路によって外部に読み出される。
【0066】
テストパターンの設計変更例を説明する。
【0067】
図6は、設計変更例1のテストパターンの模式平面図であり、図7はその模式断面図である。なお、上記実施形態のテストパターン10と同等の箇所には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0068】
図6および図7に示すように設計変更例1のテストパターン10Aは、上記テストパターン10の構成に加え、第1および第2の触針電極125dおよび125eが、テスト用電極125aおよび125bと並んで形成されている。第1の触針電極125dは、第1の金属配線層127aとビアプラグ126dを介して接続されており、本実施形態においてこれが第1のテスト用端子に相当する。第2の触針電極125eは、第2の金属配線層127bとビアプラグ126eを介して接続されており、本実施形態においてこれが第2のテスト用端子に相当する。
【0069】
そして、第1および第2の触針電極125d、125eを露出させる開口141は保護膜のみを除去したものである。
【0070】
図8は、設計変更例2のテストパターンの模式平面図であり、図9はその模式断面図である。ここでも、上記実施形態のテストパターン10と同等の箇所には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0071】
図8および図9に示すように設計変更例2のテストパターン10Bは、上記テストパターン10の構成におけるテスト用電極125bを備えていない。ここでは、ビアプラグ126bが直接にテスト用対向電極131aと接触するよう構成されている。
【0072】
テスト用電極125aにビアプラグ126aを介して接続された金属配線層127a、およびビアプラグ126bに接続された金属配線層127bが第1および第2のテスト用端子である点は、テストパターン10と同じであり、触針用の開口142は、保護膜132および絶縁層124の一部を除去して形成されている点についても共通である。
【0073】
いずれの構成のテストパターン10、10A、10Bも、撮像領域の光電変換画素形成の工程において同時に形成することができる。
【0074】
次に、上述した固体撮像素子100の製造方法について説明する。
【0075】
信号読出し回路122を有し、表面に金属配線層および層間絶縁層124が形成された半導体ウエハ上の、絶縁層124上に、画素電極125の材料として導電性材料を成膜する。次に、成膜した導電性材料膜をフォトリソグラフィ及びエッチングによってパターニングし、画素電極125、バイアス電圧印加用電極125c、テスト用電極125a、125bを同時に形成する。
【0076】
次に、各撮像領域内の画素電極125およびテストパターンの画素電極125aが形成された領域のみを開口するマスクを用意し、このマスクを介して、各画素領域において複数の画素電極125に亘って形成される有機光電変換膜130およびテスト用電極125a上にテスト用有機光電変換膜130aを同時に形成する。
【0077】
次に、撮像領域112の有機光電変換膜130を覆う対向電極131およびテストパターン10のテスト用有機光電変換膜130aを覆うテスト用対向電極131aを形成する。ここでも対向電極を形成すべき領域のみを開口するマスクを用い、対向電極131およびテスト用対向電極131aを同時に形成する。
【0078】
次に、撮像領域112およびテストパターン10を含むウエハ表面全域に亘る一様な保護膜132を形成する。既述の通り保護膜132はCVDにより形成する。
【0079】
その後、テストパターン10の第1のテスト用端子127aおよび第2のテスト用端子127bを露出させるように保護膜132および絶縁層124を一部エッチング除去し、開口140を設ける。
なお、保護膜132の形成後、テスト用端子露出前に、各撮像領域112上の保護膜132上にカラーフィルタを形成してもよい。
【0080】
以上の工程により図2の下図に示すような、半導体ウエハ上に多数の撮像素子部101aおよびテストパターン10を有する撮像素子形成ウエハ1を作製することができる。
【0081】
次に、撮像素子形成ウエハ1の有機光電変換膜130の良否、もしくは撮像素子形成ウエハ1の各撮像領域の有機光電変換膜130の良否を、テストパターン10のテスト用光電変換膜の検査を行うことにより判定する。
【0082】
有機物で構成されている光電変換層は、わずかな水蒸気や酸素で容易に劣化してしまうため、もし保護膜成膜前に欠陥検査をしようとすると不活性ガス雰囲気下(窒素など)で行うことが必須であるが、工程上難しい(真空一貫で有機膜〜保護膜まで成膜するため)。また、検査の後、保護膜の成膜前または成膜中に光電変換層が劣化してしまう可能性もある。したがって、保護膜成膜後に欠陥検査を行うこととしている。
【0083】
非常に小さな粒子である酸素、水などの気体を効果的に遮断するには、保護膜の緻密さが重要である。既述のように、ALCVD法を用いることで、緻密な保護膜を形成することが可能である。
しかしながらALCVD法は特性上、成膜材料である反応気体の回り込みがあるため、マスクを用いて局所的に成膜(パターニング)することは難しく、保護膜の成膜時において、テスト用端子上に成膜することなく、かつ撮像領域を保護する性能および十分な密着性を得るのは困難である。
本構成は、保護膜のウエハ全面への成膜、その後触針部を開口する構成であるため、保護膜の成膜は容易となる。また、局所的な保護膜の成膜と比較して全面への成膜は保護膜の密着性および保護機能の観点からも好ましい。
【0084】
検査方法について説明する。検査方法には以下の3つの方法があり、いずれを用いてもよい。なお、第1の検査方法は、撮像素子形成ウエハ1自体の良否を判定するための検査方法であり、第2および第3の検査方法は、撮像素子形成ウエハ1中の各撮像領域の良否を判定するための検査方法である。
【0085】
(第1の検査方法)
図10は、第1の検査方法を説明するための説明図である。テストパターン10は図4に示したものと同一である。
【0086】
開口140にプローブ3aおよび3bを挿入してプローブ先端を第1および第2のテスト用端子127a、127bにそれぞれ接触させ、図示しない外部回路とテストパターン10を接続し、テスト用有機光電変換膜130aに対して、通常とは逆向きの電圧をかけることで有機光電変換膜に電流を通し、発光させる。
本構成の撮像素子を通常駆動させる場合、対向電極が正、画素電極が負となるように電圧を印加するが、本検査ではテスト用対向電極131aが負(−)、テスト用電極125aが正極(+)となるように電圧をかける。電圧は5V〜30Vの範囲内であることが望ましい。また、この検査方法を行う場合、テストパターンの有機光電変換膜のサイズは50μm×50μm以上であることが望ましい。
【0087】
そして、発光ELをテスト用光電変換膜130aの上方に配置したCCDカメラ5で検出する。CCDカメラ5は赤外領域(〜1100nm)まで検出できるものを用いることが望ましい。
図11に、光電変換素子の撮像時感度とEL発光時強度の対応を示す模式図を示す。図11に示すように、撮像時に感度の低い部分(暗部)は、EL発光強度が弱く、撮影時に感度の高い部分(明部)は、EL発光強度が強いことが、事前の検討で明らかになっている。
【0088】
このEL発光強度分布から欠陥の有無の情報を取得して、ウエハ上の光電変換膜の良否を判定する。
成膜工程における作業環境の影響により、ウエハ全域に亘り欠陥が生じる場合がある。成膜中に生じる欠陥で問題となるものは数画素にわたって感度が低くなる現象である。原因は外部からガス(水、酸素など)が、膜表面のわずかな穴から侵入して広がったものである。膜表面の穴は、基板上の微細なごみを起点とするが、この穴自体は重大な欠陥とはならない。この穴は基板表面全体に一様に存在するとしてよい。これら微細ごみによる穴は、場所によらず作業環境の酸素、水濃度および曝露時間に等しく影響を受けるため、テストパターンの検査をすることで、ウエハ上の全体の膜の状態を類推することが可能である。すなわち、テストパターンにおいて、図11に示すような発光強度分布が示された場合、このようながウエハ上の各撮像領域において、同様に、感度のバラツキが生じていると類推される。例えば、テストパターンにおける発光強度の弱い箇所の密度に閾値を設け、該閾値以上であればそのウエハを不良とし、該閾値未満であれば良と判定すればよい。
【0089】
なお、図2に示す実施形態においてテストパターンは、1つの撮像領域に対し1つ設けているが、本検査方法の場合には、ウエハ上に1つのみであってもよい。また、撮像領域の数とは無関係に、互いにある程度の距離を隔ててウエハ上の複数箇所にテストパターンを形成するようにしてもよい。
【0090】
第1の検査方法により、撮像素子形成ウエハ1が良品と判定された場合には製造工程を継続し、不良品と判定された場合には製造工程を中止する。
すなわち、第1の検査方法により良と判定された撮像素子形成ウエハ1については、撮像素子形成ウエハ1をダイシングして複数の撮像素子チップ101を得、さらに各撮像素子チップ101を回路基板103上に載置し、撮像素子チップ101の接続パッド113の清浄面を露出させ、この接続パッド113と、回路基板103との間でワイヤボンディングを行うことにより、固体撮像素子100を製造する。
【0091】
(第2の検査方法)
図12は、第2の検査方法を説明するための説明図である。テストパターン10は図4に示したものと同一である。
【0092】
開口140にプローブ3aおよび3bを挿入してプローブ先端を第1および第2のテスト用端子127a、127bにそれぞれ接触させ、図示しない外部回路とテストパターン10を接続させ、テスト用有機光電変換膜130aに対して、通常駆動の際と同じ向きの電圧(正電圧)をかける。
この状態で、テスト用有機光電変換膜130a上に配置された光源6を用いて、テスト用有機光電変換膜130aに単一波長の光Lを照射する。光Lの波長は可視光領域(380〜780nm)のものとする。
【0093】
光Lの照射に伴い、外部回路に流れた電流を検出し、その値から撮像素子の感度を確認する。
予め良否判定の光電流の数値を定め、その数値未満であれば不良、以上であれば良と判定するものとすればよい。
【0094】
なお、通常駆動電圧を印加し、その際の電流値を取得して、良否を検出することも可能であるが、印加電圧を掃引することによってより良否判定を明確に行うことができる。
図13は電圧掃引した場合の良品(正常)についてと不良品(Error)との電流値の変化を模式的に示すものである。電界強度は横軸右側が大である。
【0095】
通常駆動電圧では違いの判別が難しくても、電圧を掃引することによって、図13のように正常な場合と不良品との違いが明らかになる。このような電圧掃引により良否を判定する方法は、電圧に依存する有機膜の電気的特徴を活かした、有機撮像素子に独自の方法である。
【0096】
(第3の検査方法)
図14は、第3の検査方法を説明するための説明図である。テストパターン10は図4に示したものと同一である。
【0097】
開口140にプローブ3aおよび3bを挿入してプローブ先端を第1および第2のテスト用端子127a、127bにそれぞれ接触させ、図示しない外部回路とテストパターン10を接続させる。
【0098】
この状態で、テスト用有機光電変換膜130aに対して、通常駆動の際と同じ向きの電圧(正電圧)をかけ、その際の暗電流を測定する。
【0099】
暗電流を調べることによって、膜状態の確認(膜内に欠損があると、そこから熱励起によって電流が湧き出す場合がある)と、短絡の有無の確認(電極間で短絡があると暗電流の値が極端に大きくなる)が可能である。
ここでも、正常時の暗電流を基準として、その数値からのずれにより良否を判定すればよい。
【0100】
なお、通常駆動電圧を印加し、その際の暗電流により良否を検出することもかのうであるが、印加電圧を掃引することによってより良否判定を明確に行うことができる。
図15は、電圧掃引した場合の良品(正常)についてと不良品(Error)との暗電流の変化を模式的に示すものである、電界強度は横軸右側が大である。
【0101】
通常駆動電圧では違いの判別が難しくても、電圧を掃引することによって、図15のように正常な場合と不良品との違いが明らかになる。このような電圧掃引により良否を判定する方法は、電圧に依存する有機膜の電気的特徴を活かした、有機撮像素子に独自の方法である。
【0102】
上記第2および第3の検査方法については、図2に示すように、テストパターンを1つの撮像領域に対し1つ設けて1つのテストパターンを1つの撮像領域の良否判定に用いてもよいし、1つのテストパターンを複数の撮像領域に対応させてもよい。例えば、ダイシングライン上にテストパターンを設ける場合には、そのテストパターンを、それを挟んで隣接する2つの撮像領域の良否判定に用いるようにしてもよい。
【0103】
また、以上の検査の他にも、有機光電変換膜の光応答速度を測定することにより良否判定を行うこともできる。
【0104】
なお、上記第1の検査方法により、良と判定された撮像素子形成ウエハ1について、さらに、第2あるいは第3の検査方法により、個々の撮像領域についての良否を判定するようにしてもよい。
【0105】
第2あるいは第3の検査方法により、個々の撮像素子部について良否判定の後、撮像素子形成ウエハ1をダイシングして撮像素子チップ101を得て、上記の検査の結果、良品と評価された撮像素子部からなる撮像素子チップ101に対しては以後の製造工程を継続し、不良品と評価された撮像素子部からなる撮像素子チップに対しては製造工程を継続しない。
【0106】
すなわち、第2あるいは第3の検査方法により良と判定された撮像素子部からなる撮像素子チップ101のみ用いて固体撮像素子100を製造する。具体的には撮像素子チップ101を回路基板103上に載置し、撮像素子チップ101の接続パッド113の清浄面を露出させ、この接続パッド113と、回路基板103との間でワイヤボンディングを行うことにより固体撮像素子100を製造する。
【0107】
上記のように、第1の検査方法もしくは第2、第3の検査方法により、ダイシング前の段階で、撮像素子形成ウエハ1の良否、もしくは撮像素子形成ウエハ1中の各撮像領域112の良否を判断する検査を行うことにより、固体撮像素子100の製造歩留まりが向上し、固体撮像素子100の製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0108】
図16は、本発明の製造方法により製造される固体撮像素子を備えた撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの構成図である。このデジタルカメラは、固体撮像素子100と、固体撮像素子100の前段に置かれた撮影レンズ21と、固体撮像素子100から出力されるアナログの画像データを自動利得調整(AGC)や相関二重サンプリング処理等のアナログ処理するアナログ信号処理部22と、アナログ信号処理部22から出力されるアナログ画像データをデジタル画像データに変換するアナログデジタル変換部(A/D)23と、後述のシステム制御部(CPU)29からの指示によって撮影レンズ21,A/D23,アナログ信号処理部22,固体撮像素子100の駆動制御を行う駆動部(タイミングジェネレータを含む)24と、CPU29からの指示によって発光するフラッシュ25とを備える。
【0109】
本実施形態のデジタルカメラは更に、A/D23から出力されるデジタル画像データを取り込み補間処理やホワイトバランス補正,RGB/YC変換処理等を行うデジタル信号処理部26と、画像データをJPEG形式などの画像データに圧縮したり逆に伸長したりする圧縮/伸長処理部27と、メニューなどを表示したりスルー画像や撮像画像を表示する表示部28と、デジタルカメラ全体を統括制御するシステム制御部(CPU)29と、フレームメモリ等の内部メモリ30と、JPEG画像データ等を格納する記録メディア32との間のインタフェース処理を行うメディアインタフェース(I/F)部31と、これらを相互に接続するバス40とを備える。また、システム制御部29には、ユーザからの指示入力を行う操作部33が接続されている。
【0110】
本発明のウエハおよび製造方法を用いれば、固体撮像素子を歩留まりよく得ることができるので、固体撮像素子を備えた上記のような撮像装置をより安価に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0111】
1 撮像素子形成ウエハ
3a、3b プローブ
5 CCDカメラ
6 光源
10,10A,10B テストパターン
100 固体撮像素子
101 撮像素子チップ
101a 撮像素子部
103 回路基板
104 ワイヤ
105 ダイシングライン
110 半導体ウエハ
112 撮像領域
113 接続パッド
122 信号読出し回路
125 画素電極
125a、125b テスト用電極
130 有機光電変換膜
130a テスト用有機光電変換膜
131 対向電極
131a テスト用対向電極
132 保護膜
140、141、142 保護膜開口
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16