(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャンバ側壁の温度が常温よりも高くなる減圧可能なホットウォールチャンバと,このホットウォールチャンバに対して基板を搬出入する搬送アーム機構を有する減圧可能なトランスファチャンバと,これらのチャンバの間に設けられるゲートバルブ装置とを備えた基板処理装置であって,
前記ゲートバルブ装置は,
前記ホットウォールチャンバとの基板搬出入口と,前記トランスファチャンバとの基板搬出入口を有する筐体を備え,
前記ホットウォールチャンバと前記トランスファチャンバのうち,より高い真空度を保持することが要求される方のチャンバの側壁と前記筐体の側壁との間は,そのチャンバとの基板搬出入口を第1シール部材とその外側の第2シール部材により囲んで2重シール構造とし,これらシール部材間の隙間を前記筐体の内部空間に連通する少なくとも1つの連通孔を前記筐体の側壁に設け,
前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を,前記筐体内を昇降自在な弁体によって開閉するようにし,前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を前記弁体で閉塞し,他方のチャンバとの基板搬出入口は開成したままその他方のチャンバを減圧することで,前記シール部材間の隙間を前記連通孔を介して前記他方のチャンバにより真空引きすることを特徴とする基板処理装置。
基板に対してプロセス処理を行う複数のプロセスチャンバをそれぞれゲートバルブ装置を介して接続し,前記各プロセスチャンバに対して前記ゲートバルブ装置を介して前記基板を搬出入する搬送アーム機構を有する減圧可能なトランスファチャンバを備えた基板処理装置であって,
前記複数のプロセスチャンバは,チャンバ側壁の温度が常温よりも高くなる減圧可能なホットウォールチャンバと,高真空雰囲気で前記プロセス処理を行う減圧可能な高真空チャンバとを含み,
少なくとも前記ホットウォールチャンバと前記トランスファチャンバとの間のゲートバルブ装置は,前記ホットウォールチャンバとの基板搬出入口と,前記トランスファチャンバとの基板搬出入口を有する筐体を備え,前記トランスファチャンバの側壁と前記筐体の側壁との間は,そのトランスファチャンバとの基板搬出入口を第1シール部材とその外側の第2シール部材により囲んで2重シール構造とし,これらシール部材間の隙間を前記筐体の内部空間に連通する少なくとも1つの連通孔を前記筐体の側壁に設け,前記トランスファチャンバとの基板搬出入口を,前記筐体内を昇降自在な弁体によって開閉するようにし,前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を前記弁体で閉塞し,他方のチャンバとの基板搬出入口は開成したままその他方のチャンバを減圧することで,前記シール部材間の隙間を前記連通孔を介して前記他方のチャンバにより真空引きすることを特徴とする基板処理装置。
基板に対してプロセス処理を行う複数のプロセスチャンバをそれぞれゲートバルブ装置を介して接続し,前記各プロセスチャンバに対して前記ゲートバルブ装置を介して前記基板を搬出入する搬送アーム機構を有する減圧可能なトランスファチャンバを備えた基板処理装置であって,
前記各プロセスチャンバは,チャンバ側壁の温度が常温よりも高くなり,高真空雰囲気で前記プロセス処理を行う減圧可能な高真空ホットウォールチャンバであり,
前記ゲートバルブ装置は,前記高真空ホットウォールチャンバと前記トランスファチャンバのうち,より高い真空度が要求される方のチャンバの側壁と前記筐体の側壁との間は,そのチャンバとの基板搬出入口を第1シール部材とその外側の第2シール部材により囲んで2重シール構造とし,これらシール部材間の隙間を前記筐体の内部空間に連通する少なくとも1つの連通孔を前記筐体の側壁に設け,
前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を,前記筐体内を昇降自在な弁体によって開閉するようにし,前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を前記弁体で閉塞し,他方のチャンバとの基板搬出入口は開成したままその他方のチャンバを減圧することで,前記シール部材間の隙間を前記連通孔を介して前記他方のチャンバにより真空引きすることを特徴とする基板処理装置。
チャンバ側壁の温度が常温よりも高くなる減圧可能なホットウォールチャンバと,このホットウォールチャンバに対して基板を搬出入する搬送アーム機構を有する減圧可能なトランスファチャンバとの間に設けられるゲートバルブ装置であって,
前記ホットウォールチャンバとの基板搬出入口と,前記トランスファチャンバとの基板搬出入口を有する筐体を備え,
前記ホットウォールチャンバと前記トランスファチャンバのうち,より高い真空度を保持したい方のチャンバの側壁と前記筐体の側壁との間は,そのチャンバとの基板搬出入口を第1シール部材とその外側の第2シール部材により囲んで2重シール構造とし,これらシール部材間の隙間を前記筐体の内部空間に連通する少なくとも1つの連通孔を前記筐体の側壁に設け,
前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を,前記筐体内を昇降自在な弁体によって開閉するようにし,前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を前記弁体で閉塞し,他方のチャンバとの基板搬出入口は開成したままその他方のチャンバを減圧することで,前記シール部材間の隙間を前記連通孔を介して前記他方のチャンバにより真空引きすることを特徴とするゲートバルブ装置。
チャンバ側壁の温度が常温よりも高くなる減圧可能なホットウォールチャンバと,このホットウォールチャンバに対して前記基板を搬出入する搬送アーム機構を有する減圧可能なトランスファチャンバと,これらのチャンバの間に設けられるゲートバルブ装置とを備えた基板処理装置の基板処理方法であって,
前記ゲートバルブ装置は,前記ホットウォールチャンバとの基板搬出入口と,前記トランスファチャンバとの基板搬出入口を有する筐体を備え,前記ホットウォールチャンバと前記トランスファチャンバのうち,より高い真空度を保持することが要求される方のチャンバの側壁と前記筐体の側壁との間は,そのチャンバとの基板搬出入口を第1シール部材とその外側の第2シール部材により囲んで2重シール構造とし,これらシール部材間の隙間を前記筐体の内部空間に連通する少なくとも1つの連通孔を前記筐体の側壁に設け,前記2重シール構造によってシールするチャンバとの基板搬出入口を,前記筐体内を昇降自在な弁体によって開閉するように構成し,
前記基板処理方法は,前記2重シール構造によってシールするチャンバを高真空雰囲気に保持する際には,そのチャンバとの基板搬出入口を前記弁体で閉塞し,他方のチャンバとの基板搬出入口は開成したままその他方のチャンバを減圧することで,前記シール部材間の隙間を前記連通孔を介して前記他方のチャンバにより真空引きすることを特徴とする基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお,本明細書中1Torrは(101325/760)Paとする。
【0024】
(基板処理装置の構成例)
先ず,本発明の実施形態にかかるゲートバルブ装置を適用可能な基板処理装置の構成例について図面を参照しながら説明する。
図1は,実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示す基板処理装置100は,ウエハWに対して所定のプロセス処理(例えば成膜処理,アニール処理など)を行う複数(例えば4つ)のプロセスチャンバ200A〜200Dをトランスファチャンバ(共通搬送室)300の周りにゲートバルブ400A〜400Dを介して接続してなるプロセスモジュール(真空処理ユニット)110と,このプロセスモジュール110に対してウエハWをロード又はアンロードするローダモジュール(搬送ユニット)120とを備える。なお,プロセスチャンバの数は,
図1に示す場合に限られるものではない。
【0025】
各プロセスチャンバ200A〜200Dとトランスファチャンバ300はその内部を所定の真空圧力に減圧できるように構成されており,ローダモジュール120は大気圧雰囲気のローダチャンバ130により構成されている。
【0026】
ゲートバルブ400A〜400Dは,トランスファチャンバ300の側壁に形成された基板搬出入口(
図1では図示省略)と,各プロセスチャンバ200A〜200Dの側壁に形成された基板搬出入口(
図1では図示省略)との間を開閉するものである。ゲートバルブ400A〜400Dと各チャンバ200A〜200D,300の側壁との間は減圧時に各基板搬出入口から大気が侵入しないようにOリングなどのシール部材(
図1では図示省略)で気密にシールされている。これら基板搬出入口とそのシール構造については後述する。
【0027】
トランスファチャンバ300には,真空雰囲気のプロセスモジュール110と大気圧雰囲気のローダモジュール120との間の圧力調整を行う2つのロードロックチャンバ140がそれぞれゲートバルブ142を介して接続されている。各ロードロックチャンバ140はそれぞれ,ローダチャンバ130にゲートバルブ144を介して接続されている。
【0028】
トランスファチャンバ300内には,ウエハWを搬送するトランスファアーム機構304が設けられている。トランスファアーム機構304は旋回及び伸縮自在な2つのトランスファアーム306を備え,処理済ウエハWと処理前ウエハWを交換するように搬出入することができる。このようなトランスファアーム機構304によって,各ロードロックチャンバ140及びプロセスチャンバ200A〜200Dに対してウエハWを搬出入する。
【0029】
ローダチャンバ130には,複数(例えば25枚)のウエハWが収容されたカセット容器122A〜122Cをセットする複数のカセット台124A〜124Cと,ウエハWの位置決め装置としてのオリエンタ(プリアライメントステージ)126が設けられている。
【0030】
ローダチャンバ130内には,ウエハWを搬送するローダアーム機構132が設けられている。ローダアーム機構132は,旋回及び伸縮自在な2つのローダアーム134を備え,処理済ウエハWと処理前ウエハWを交換するように搬出入することができる。また,ローダアーム機構132は,ローダチャンバ130内を水平移動できるように構成されている。このようなローダアーム機構132によって,各カセット容器122A〜122Cとの間でウエハWを搬出入するとともに,オリエンタ126及び各ロードロックチャンバ140との間でウエハWを搬出入する。
【0031】
基板処理装置100には,制御部(全体制御装置)150が接続されており,この制御部150によって各プロセスチャンバ200A〜200D,トランスファチャンバ300,各ロードロックチャンバ140,ローダチャンバ130,各ゲートバルブ400A〜400D,142,144などが制御されるようになっている。
【0032】
さらに,制御部150には,基板処理装置100で実行される各種処理(ウエハWに対する成膜処理などのプロセス処理,ウエハWの搬送制御など)を制御部150の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された図示しない記憶部が接続されている。
【0033】
これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部の所定位置にセットするようになっていてもよい。制御部150は,所望のプログラム,処理条件を上記記憶部から読み出して各部を制御することで,基板処理装置100での所望の処理を実行する。
【0034】
このような基板処理装置100において,ウエハWのプロセス処理を行う際には,ローダアーム機構132によってカセット容器122A〜122CのいずれかからウエハWが搬出されてオリエンタ126まで搬送される。そして,オリエンタ126で位置決めされたウエハWは,オリエンタ126から搬出されて一方のロードロックチャンバ140へ搬入される。このとき,そのロードロックチャンバ140に必要なすべての処理が完了した処理完了ウエハWがあれば,その処理完了ウエハWを搬出してから,未処理ウエハWを搬入する。
【0035】
ロードロックチャンバ140へ搬入されたウエハWは,トランスファアーム機構304によってロードロックチャンバ140から搬出され,プロセスチャンバ200A〜200Dのうち,そのウエハWを処理するチャンバに搬入されて所定のプロセス処理が実行される。そして,そのプロセスチャンバでの処理が完了した処理済ウエハWはトランスファアーム機構304によって搬出される。このとき,そのウエハWが連続して他のプロセスチャンバでの処理が必要な場合には,次の処理を行うプロセスチャンバへウエハWを搬入し,次のプロセス処理が実行される。
【0036】
そして,必要なすべてのプロセス処理が完了した処理完了ウエハは,他方のロードロックチャンバ140へ戻される。ロードロックチャンバ140へ戻された処理済ウエハWは,ローダアーム機構132によって元のカセット容器122A〜122Cに戻される。
【0037】
このような基板処理装置100においては,ゲートバルブ400A〜400Dは閉成しており,プロセスチャンバ200A〜200Dのいずれかとトランスファチャンバ300との間でウエハWの搬出入を行う場合にそのプロセスチャンバのゲートバルブだけ開成するようになっている。
【0038】
ゲートバルブ400A〜400Dのいずれかを開成する場合には,パーティクルの巻上げ防止などのため,各プロセスチャンバ200A〜200Dとトランスファチャンバ300との間で大きな圧力差が生じないようにする必要がある。このため,ゲートバルブ400A〜400Dを開成する前に,トランスファチャンバ300内の真空圧力がウエハWを搬出入するプロセスチャンバの真空圧力とほぼ同等になるように調整する。例えばプロセスチャンバ200Aが高真空でウエハWの処理を行う高真空チャンバの場合には,そのプロセスチャンバ200AとウエハWの搬出入を行う場合にはトランスファチャンバ300も高真空に保持する必要がある。
【0039】
ところが,プロセスチャンバ200B〜200Dの少なくとも1つが,チャンバ側壁が常温(略25℃)よりも高くなるホットウォールチャンバである場合には,その熱がゲートバルブ400B〜200Dまで伝達するので,基板搬出入口をシールするシール部材まで加熱されてしまう。このシール部材がフッ素系ゴムなどのOリングで構成されるので,シール効果が低下して大気を透過してしまう虞がある。
【0040】
このとき,シール構造やゲートバルブの構成によってはシール部材を透過した大気が基板搬出入口から侵入してしまい,トランスファチャンバ300内の真空圧力やプロセスチャンバ200A〜200Dの真空圧力が上昇して,所定の真空圧力を保持できなくなる不具合が生じる虞がある。
【0041】
(ホットウォールチャンバを含むチャンバ構成例)
上述したようにプロセスチャンバ200B〜200Dの少なくとも1つがホットウォールチャンバである場合に生じる不具合について,具体的なチャンバ構成例を挙げながらより詳細に説明する。ここでは,
図1に示す基板処理装置100のプロセスチャンバにおいて,チャンバ側壁が常温(略25℃)より高くなるホットウォールチャンバと,チャンバ側壁が常温又はそれよりも低い温度になるコールドウォールチャンバとが混在する場合のチャンバ構成例を挙げる。
【0042】
図2はホットウォールチャンバを含むチャンバ構成例を説明するための図であり,
図1に示すプロセスチャンバ200Aを高真空の圧力雰囲気でウエハWの処理を行うコールドウォールチャンバとし,プロセスチャンバ200Bをプロセスチャンバ200Aよりも低い真空度の圧力雰囲気でウエハWの処理を行うホットウォールチャンバとした場合である。
【0043】
図2に示すプロセスチャンバ200Aは,高真空度例えば1×10
−9〜1×10
−7Torr程度の到達圧力が要求される物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)処理を行う高真空PVDチャンバとして構成される。このようなPVD処理としては例えばTi膜,Cu膜などをウエハW上に成膜する成膜処理が挙げられる。
【0044】
図2に示すプロセスチャンバ200Bは,それよりも低い真空度例えば1×10
−6〜1×10
−3Torr程度の到達圧力が要求される化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によるCVDチャンバとして構成される。このようなCVD処理としては,例えばRu,Hf等をウエハW上に成膜する成膜処理が挙げられる。
【0045】
このようなプロセスチャンバ200A,200Bのガス導入系および排気系の配管構成について
図2を参照しながら説明する。
図2に示すようにプロセスチャンバ200A,200Bにはそれぞれ,各チャンバ200A,200B内へ成膜ガスなどの処理ガスの他,例えばArガス,Neガス,Heガス,N
2ガス,H
2ガス,COガスなどウエハWのプロセス処理に応じて必要なガスを導入可能なガス導入系210A,210B,および各チャンバ200A,200B内を排気するための排気系220A,220Bが設けられている。
【0046】
ガス導入系210A,210Bはそれぞれ,例えばガス供給源212A,212Bをマスフローコントローラ214A,214Bとガス導入バルブ216A,216Bを介してプロセスチャンバ200A,200Bに接続して構成される。ガス供給源212Aからプロセスチャンバ200Aへ導入されるガスとしては,Ti膜成膜の場合にはTiCl
4ガス,Arガスなどが挙げられる。
【0047】
ガス供給源212Bからプロセスチャンバ200Bへ導入されるガスとしては,Ru膜成膜の場合には常温で固体のRu錯体(例えばRu
3(CO)
12:ルテニウムカルボニウム)を加熱気化させたガス,これを気化させる際に用いるキャリアガス(例えばCOガス),希釈ガス(例えばArガス,N
2ガス)などが挙げられる。なお,ガス導入系210A,210Bは
図2に示す構成に限られるものではない。
【0048】
排気系220A,220Bはそれぞれ,例えば真空ポンプ222A,222Bを圧力調整バルブ224A,224Bを介してプロセスチャンバ200A,200Bに接続して構成される。真空ポンプ222A,222Bは例えばターボ分子ポンプなどの主ポンプとこの主ポンプの排気側に接続されるドライポンプなどの補助ポンプで構成される。例えば補助ポンプによってチャンバ200A,200B内を一定の真空度まで排気する粗引き排気を行い,主ポンプによってチャンバ200A,200B内を更に高い真空度にまで排気する本引き排気を行う。
【0049】
なお,圧力調整バルブ224A,224BはAPC(Auto Pressure Controller)バルブで構成してもよい。これによれば,プロセスチャンバ200A,200Bの内部にガス導入系210A,210Bから所定のガスが導入されたときにその内部の圧力が目標のレベルに維持されるように,自動的にバルブ弁の開度を変化させて排気コンダクタンスを調整することができる。
【0050】
また,高真空度の圧力が要求されるプロセスチャンバ200Aの真空ポンプ222Aについてはクライオポンプを組み込むようにしてもよい。主ポンプ及び補助ポンプとともにクライオポンプを作動させることによって,チャンバ200A内をより高い真空度に調整することができる。
【0051】
図2に示すトランスファチャンバ300は,高い真空度が要求されるPVDチャンバであるプロセスチャンバ200Aが接続されているので,これとの間でウエハWを搬出入する際には,プロセスチャンバ200Aの圧力に合わせて高い真空度の圧力を維持することが要求される。
【0052】
このようなトランスファチャンバ300のガス導入系および排気系にかかる配管構成について説明する。チャンバ300内へパージガスなど所定のガスを導入可能なガス導入系310,チャンバ300内を排気するための排気系320が設けられている。
【0053】
ガス導入系310は例えばガス供給源312をマスフローコントローラ314とガス導入バルブ316を介してトランスファチャンバ300に接続して構成される。ガス供給源312からトランスファチャンバ300へ導入されるガスの例としては,パージガスや圧力調整ガスとして用いられるArガス,Neガス,Heガス,N
2ガスなど不活性ガスが挙げられる。なお,ガス導入系310は
図2に示す構成に限られるものではない。
【0054】
排気系320は例えば真空ポンプ322を圧力調整バルブ324を介してトランスファチャンバ300に接続して構成される。真空ポンプ322は例えばターボ分子ポンプなどの主ポンプとこの主ポンプの排気側に接続されるドライポンプなどの補助ポンプで構成される。例えば補助ポンプによってトランスファチャンバ300内を一定の真空度まで排気する粗引き排気を行い,主ポンプによってトランスファチャンバ300内を更に高い真空度にまで排気する本引き排気を行う。これによれば,トランスファチャンバ300内の圧力は,例えば1×10
−9〜1×10
−6Torr程度の高い真空圧力までも減圧することができる。
【0055】
なお,このような高真空度の圧力が要求されるトランスファチャンバ300の真空ポンプ222Aについても,上記プロセスチャンバ200Aの場合と同様にクライオポンプを組み込むようにしてもよい。主ポンプ及び補助ポンプとともにクライオポンプを作動させることによって,チャンバ200A内をより高い真空度に調整することができる。
【0056】
このようなプロセスチャンバ200Aにて例えばPVDによるTi膜成膜処理又はCu膜成膜処理を行う場合には,チャンバ内を例えば1×10
−8Torrの高真空雰囲気にし,ウエハWを加熱しながら成膜ガスを供給してPVD−Ti膜又はPVD−Cu膜を成膜する。また,プロセスチャンバ200Bにて例えばCVDによるRu膜成膜処理を行う場合には,チャンバ内を例えば1×10
−6Torrの高真空雰囲気にし,ウエハWを加熱しながら成膜ガスを供給してCVD−Ti膜又はPVD−Cu膜を成膜する。
【0057】
このようにプロセスチャンバ200A,200Bはともにウエハを加熱して処理を行うものであるため,いずれのチャンバ側壁も加熱されることになる。ところが,プロセスチャンバ200Aでは,常温で固体ではない成膜原料を用いるので,チャンバ壁を20℃程度に冷却することでコールドウォールチャンバとすることができる。
【0058】
これに対して,プロセスチャンバ200Bでは,常温で固体の成膜原料(Ru
3(CO)
12)を気化させて用いるので,チャンバ壁を冷却してしまうと,その内側に成膜原料が凝固して付着してしまう虞があるため,チャンバ側壁を冷却できない。このため,例えばチャンバ側壁は80℃以上の温度に加熱されるのでホットウォールチャンバとなる。
【0059】
ここで,これらのプロセスチャンバ200A,200Bに接続されるゲートバルブ400A,200Bとそのシール構造について比較例を挙げながら説明する。
図3,
図4は比較例にかかるゲートバルブ装置GV0の概略構成を示す断面図である。
図3は比較例にかかるゲートバルブ装置GV0をコールドウォールチャンバのゲートバルブ400Aに適用した場合であり,
図4は比較例にかかるゲートバルブ装置GV0をホットウォールチャンバのゲートバルブ400Bに適用した場合である。
【0060】
比較例にかかるゲートバルブ装置GV0は例えば
図3に示すように構成される。すなわち,
図3に示すゲートバルブ装置GV0はアルミニウムなどの金属で構成された略箱状の筐体(ハウジング)402を備え,一方の側壁はプロセスチャンバ200Aの側壁に接続され,他方の側壁はトランスファチャンバ300の側壁に接続されている。筐体402の側壁には,プロセスチャンバ200Aの側壁とトランスファチャンバ300の側壁にそれぞれ形成された基板搬出入口203,303とほぼ同形状の基板搬出入口404,406が形成されている。
【0061】
ゲートバルブ装置GV0においては,トランスファチャンバ300と筐体402との間に基板搬出入口303,406を囲むようにOリングなどのシール部材330が設けられ,プロセスチャンバ200Aの方の基板搬出入口203,404を弁体410で開閉するようになっている。なお,プロセスチャンバ200Aと筐体402との間にも基板搬出入口203,404を囲むようにOリングなどのシール部材230が設けられる。
【0062】
弁体410は,基板搬出入口404の周縁の側面を弁座として,この弁座に接離自在(開閉自在)であるとともに,昇降自在に構成されている。これにより,基板搬出入口404を閉じるときには弁体410を基板搬出入口404の周縁の側面に押し当てながら,基板搬出入口404を閉塞してシールすることができる。なお,基板搬出入口404の周縁の側面と弁体との間にはOリングなどのシール部材を介在させてもよい。
【0063】
弁体410は昇降自在な昇降軸420の先端に取り付けられ,昇降軸420の基端側は筐体402の下方に突出して設けられた昇降案内フレーム430内を通って,下方の弁体駆動部432に接続されている。
【0064】
弁体駆動部432は,弁体410を昇降駆動及び開閉駆動(基板搬出入口406に対する接離駆動)するように構成する。例えば基板搬出入口406を閉塞する場合には,弁体410を筐体402の側壁内側と接触しない程度の隙間を空けて基板搬出入口406の対向位置まで上昇させた後,基板搬出入口406を閉塞する方向に移動するように駆動する。これに対して,基板搬出入口406を開成する場合には,弁体410を筐体402の側壁内側と接触しない程度の隙間が空くまで基板搬出入口406から離間する方向に移動させた後,基板搬出入口406を通じて行われるウエハWの搬出入動作に邪魔にならない下方の待機位置まで下降させる。
【0065】
ここでの弁体駆動部432は,例えば昇降軸420を昇降駆動させるエアシリンダと,弁体410が上述した昇降駆動及び開閉動作するように昇降軸420を案内するカム機構とで構成することができる。この場合,例えば昇降軸420に突起を設け,その突起を案内するカム孔の形状を弁体410が上述した昇降駆動及び開閉駆動するように形成する。なお,弁体駆動部432の構成はこれに限られるものではない。
【0066】
このような弁体駆動部432はパーティクル発生の汚染源となるので,清浄度が要求される筐体402の内部空間とは隔離する必要がある。このため,昇降案内フレーム430内には昇降軸420を覆うようにベローズ440が配置されている。ベローズ440は例えばステンレスなど耐食性を有する気密な蛇腹状部材で構成される。
【0067】
ベローズ440は昇降動作に応じて伸縮自在に構成されている。ここでのベローズ440はその上端が筐体402の底部に形成された孔縁に取り付けられ,下端が昇降軸420の下方に取り付けられている。これにより,ベローズ440の内部空間は筐体402の内部空間と連通し,ベローズ440の外側空間とは隔離される。
【0068】
このようなゲートバルブ装置GV0によれば,
図3に示すようにプロセスチャンバ200Aの方の基板搬出入口404を弁体410で閉成し,トランスファチャンバ300の方の基板搬出入口406を開放した状態でトランスファチャンバ300を高い真空圧力(例えば1×10
−8Torr)まで減圧して保持する。その状態で,基板搬出入口404から弁体410を離間させて退避位置まで下降させることによって基板搬出入口404を開成する。これにより,トランスファチャンバ300とプロセスチャンバ200Aとの間でウエハWの搬出入ができるようになる。
【0069】
プロセスチャンバ200Aのようなコールドウォールチャンバに接続されるゲートバルブ400Aにおいては,プロセスチャンバ200Aから熱によりOリングのシール効果が低下することはないので,
図3に示すゲートバルブ装置GV0を適用してトランスファチャンバ300の方の基板搬出入口406を開放したまま減圧しても,トランスファチャンバ300の圧力が変動することはなく,高い真空度を保持することができる。
【0070】
これに対して,もし
図4に示すように,プロセスチャンバ200Bのようなホットウォールチャンバに接続されるゲートバルブ400Bについても,
図3に示すゲートバルブ装置GV0を適用して,トランスファチャンバ300の方の基板搬出入口406を開放したまま減圧すると,トランスファチャンバ300の真空圧力を保持できなくなる虞がある。
【0071】
すなわち,プロセスチャンバ200Bのようなホットウォールチャンバではその側壁が常温よりも高い温度(例えば80℃以上)になるので,その熱がゲートバルブ400Bにまで伝達して,プロセスチャンバ200B側のシール部材230のみならず,トランスファチャンバ300のシール部材330まで加熱されてしまう。
【0072】
このようなシール部材230,330は,フッ素系ゴム(FKM,FPM,FFKM,FEPMなど)又はフッ素系樹脂(FEP,PFAなど)により構成されるので,その加熱されたシール部材230,330の温度によってはこれらのシール効果が低下して大気を透過してしまう。
【0073】
例えばシール部材330が加熱されて大気を透過するようになると,
図4に示すようにシール部材330を透過した大気は基板搬出入口406,303に侵入してトランスファチャンバ300内にまで入り込み,これによってトランスファチャンバ300内の圧力が上昇してしまうので,高い真空度を保持できなくなる虞がある。
【0074】
このように,ホットウォールチャンバに接続されるゲートバルブ400Bにおいては,そのトランスファチャンバ300側のシール構造として1つのシール部材330を設けただけではトランスファチャンバ300への大気の侵入を防ぎきれない。さらにそのシール部材330の外側を囲むように同様のシール部材をもう1つ設けて2重シール構造にしたとしても,これらのシール部材は両方とも加熱されるので,両方のシール機能が低下してしまう。従って,単に2重シール構造にしただけでも,トランスファチャンバ300へ大気の侵入を防ぎきれず,圧力上昇も避けられない。
【0075】
この場合,トランスファチャンバ300に要求される目標圧力の真空度が高いと,加熱されたシール部材の温度が100℃以下の比較的低い温度であっても,常温より高い温度に加熱されると,その目標圧力の真空度が高いほど(圧力が低いほど),シール部材から侵入する大気の量も多くなり,トランスファチャンバ300内の圧力を保持できなくなる。
【0076】
ここで,このようなシール部材としてOリングの温度とそれによりシールされるチャンバ内の圧力との関係について図面を参照しながら説明する。
図5は,フッ素系ゴム(FKM)からなるOリングの温度とそのときに保持可能なチャンバ内圧力をグラフにしたものである。これはOリングが同じ温度では,このグラフよりも高い圧力であれば保持することができるが,それよりも低い圧力は保持できないことを示している。
【0077】
例えばOリングの温度が略80℃の場合は,そのときに保持可能なチャンバ内圧力は略1×10
−7Torrである。従って,この場合は略1×10
−7Torr以上のチャンバ内圧力であれば保持できるのに対して,それよりも低い圧力は保持できないことが分かる。
【0078】
図5のグラフは右上がりのため,Oリングの温度が高くなるほど,大気の透過量も多くなりそのときに保持できるチャンバ内圧力も高くなることが分かる。また,
図5をチャンバ内圧力の方から見れば,1×10
−8〜1×10
−7Torrの比較的高い真空度の圧力範囲では,100℃以下の比較的低い温度でも保持できなくなることも分かる。なお,
図5に示すグラフはOリングの材質によって変わるので,チャンバ内圧力を保持できるかどうかは,その目標圧力のみならず,Oリングの材質も含めて判断すべきである。
【0079】
図5に示すグラフに基づいて考察してみれば,Oリングの温度が常温(略25℃)を超えると,100℃以下の比較的低い温度であっても,1×10
−8〜1×10
−7Torr以下の高い真空度の圧力は保持できなくなる場合があるのに対して,それよりも低い真空度,例えば1×10
−6Torr以上の圧力であれば保持可能である。
【0080】
図4に示すプロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)の側壁温度が80℃程度になり,その圧力が1×10
−6Torr以上の低い真空度であれば,たとえシール部材230が加熱されて大気が透過してもその量は少なく,プロセスチャンバ200Bの圧力は上昇せず,目標の真空圧力を保持できる。
【0081】
これに対して,トランスファチャンバ300の圧力が1×10
−7Torr以下の高い真空度でありこれを保持したい場合は,プロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)の側壁温度が80℃程度であっても,シール部材330が加熱されて大気が透過すると,トランスファチャンバ300の圧力が上昇し,目標の真空圧力を保持できなくなる。
【0082】
なお,大気には酸素が含まれるため,大気とともに酸素がトランスファチャンバ300内に入り込むと,トランスファチャンバ300の真空度が高いほど酸素の分圧も高くなる。このため,トランスファチャンバ300内に例えばRuなどの金属膜を成膜する前のウエハWが存在すれば,その下地膜が酸化され,金属膜の密着性にも影響を与える虞がある。これに対して,プロセスチャンバ200Bの真空度が低ければ,大気が入り込んだとしてもその量は少なく酸素の分圧も低いので,特に問題は生じない。
【0083】
そこで,本実施形態では,トランスファチャンバとホットウォールチャンバとの間に接続されるゲートバルブ装置については,これらのチャンバのうち,より高い真空圧力を保持したいチャンバ側のシール構造を工夫するとともに,そのチャンバには大気が入り込まないような構成にすることで,そのチャンバの真空圧力を保持できるようにしている。
【0084】
(ゲートバルブ装置の構成例)
以下,このような本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1の構成例を図面を参照しながらより詳細に説明する。
図6は,このような本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1の概略構成を示す断面図であり,このゲートバルブ装置GV1を
図2に示すホットウォールチャンバ側のゲートバルブ400Bに適用したものである。
図7はゲートバルブ装置GV1の作用説明図である。
【0085】
図6に示すようにゲートバルブ装置GV1は,プロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)の圧力(例えば10
−6Torrオーダー)よりも高い真空度の圧力(例えば10
−8Torrオーダー)を保持したいトランスファチャンバ300の側壁とゲートバルブ装置GV1の筐体402の側壁の間に基板搬出入口303,406を囲むように内側の第1シール部材330Aを設けるとともに,これを囲むように外側の第2シール部材330Bを設けて2重シール構造とする。
【0086】
さらに,ゲートバルブ装置GV1の筐体402の側壁に,これら第1,第2シール部材330A,330Bの隙間をゲートバルブ装置GV1の内部空間と連通する連通孔408を設け,弁体410によってトランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406を開閉するように構成し,プロセスチャンバ200B側の基板搬出入口203,404は開放状態とする。これら第1,第2シール部材330A,330Bは,例えばフッ素系ゴム(FKM,FPM,FFKM,FEPMなど)又はフッ素系樹脂(FEP,PFAなど)からなるOリングで構成される。
【0087】
なお,ここではプロセスチャンバ200Bがトランスファチャンバ300よりも圧力が高いので,この場合のプロセスチャンバ200B側のシール構造については,加熱されても透過する大気はそれほど多くなく,圧力上昇などの影響も少ない。このため,プロセスチャンバ200B側は
図6に示すように1つのシール部材230で足りるが,2重シール構造にしてもよい。このシール部材230についても上記第1,第2シール部材330A,330Bと同様の材質で構成される。
【0088】
このような本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1によれば,トランスファチャンバ300を減圧するときには,トランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406を弁体410で閉塞する。このとき,プロセスチャンバ200B側の基板搬出入口203,404は開放されているので,ゲートバルブ装置GV1内は基板搬出入口203,404を介してプロセスチャンバ200B内とのみ連通する。
【0089】
このため,プロセスチャンバ200Bの排気系220を駆動しておけば,たとえ第1,第2シール部材330A,330Bが加熱されてシール機能が低下し大気が透過したとしても,
図7に示すようにその大気は連通孔408からゲートバルブ装置GV1内に入り込み,基板搬出入口203,404からプロセスチャンバ200Bに流れ,プロセスチャンバ200Bの排気系220によって排気することができる。
【0090】
このように,内側の第1シール部材330Aと外側の第2シール部材330Bとの隙間を,連通孔408を介してプロセスチャンバ200Bの排気系220によって積極的に真空引きすることで,たとえ外側の第2シール部材330Bを大気が透過しても,第1シール部材330Aは透過しない。これによって,高い真空度を保持したいトランスファチャンバ300内には大気が入り込まないようにすることができる。
【0091】
なお,このときゲートバルブ装置GV1内の圧力はプロセスチャンバ200B内の圧力と同等,すなわちトランスファチャンバ300の圧力(例えば10
−8Torrオーダー)よりも高い圧力(例えば10
−6Torrオーダー)になっている。このため,たとえ大気がプロセスチャンバ200Bの方に流れ込んでも,その量は少なくプロセスチャンバ200Bへの影響も少ない。
【0092】
こうして,本実施形態によれば,プロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)からの熱により第1,第2シール部材330A,330Bが加熱されても,外側の第2シール部材330Bを透過して入り込んだ大気がトランスファチャンバ300側に入り込まないようにすることができるので,それによるトランスファチャンバ300の圧力上昇を避けることができ,高い真空度の圧力を保持することができる。
【0093】
ここで,本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1をプロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)に接続した場合(
図6)の効果を確認する実験を行った結果について,比較例にかかるゲートバルブ装置GV0を接続した場合(
図4)と比較しながら説明する。
【0094】
図8はその実験結果を示す図であり,プロセスチャンバ200Bの側壁温度とトランスファチャンバ300内の圧力との関係を示すものである。この実験では,トランスファチャンバ300内の圧力の所定の真空圧力(5.0×10
−8Torr)を目標圧力として保持するように減圧したときに,プロセスチャンバ200Bの側壁温度を変えてトランスファチャンバ300内の実際の圧力を検出してグラフにしたものである。
【0095】
図8において,横軸にはプロセスチャンバ200Bの側壁温度をとり,縦軸にはトランスファチャンバ300内の圧力をとっている。
図8において,白四角のグラフは比較例のゲートバルブ装置GV0(
図4)を用いた場合の実験結果であり,白丸のグラフは本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1(
図6)を用いた場合の実験結果である。
【0096】
図8によれば,白四角で示すグラフを見ると,比較例の場合(
図4)にはプロセスチャンバ200Bの側壁温度が高くなるほど,トランスファチャンバ300内の実際の圧力は上昇して目標圧力を保持できないことが分かる。
【0097】
これに対して,白丸で示すグラフを見ると,本実施形態の場合(
図6)にはプロセスチャンバ200Bの側壁温度が高くなっても,トランスファチャンバ300内の実際の圧力は変わらず,目標圧力を保持できていることが分かる。
【0098】
このように,本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1によれば,実験結果からもトランスファチャンバ300の圧力が高くなることを防止でき,所定の真空圧力を保持できる効果を確認することができた。
【0099】
なお,上述した本実施形態では,トランスファチャンバ300側の真空度を高く保持したい場合として,
図2に示すようにトランスファチャンバ300にホットウォールチャンバ(プロセスチャンバ200B)と,それよりも高い真空度を必要とするチャンバ(プロセスチャンバ200A)とを接続する場合を例に挙げたが,これに限られるものではない。ホットウォールチャンバ自体が高い真空度を必要とするプロセスチャンバであってもよい。この場合も,トランスファチャンバ300側の真空度を高く保持したい場合には
図6に示すゲートバルブ装置GV1を適用可能である。
【0100】
また,トランスファチャンバ300の真空度よりもホットウォールチャンバの真空度を高く保持したい場合(又はホットウォールチャンバ側の清浄度を保持したい場合)には,後述の変形例に示すようにホットウォールチャンバ側のシール構造を工夫するとともに,そのチャンバには大気が入り込まないような構成にすることで,そのチャンバの真空圧力を保持するようにしてもよい。
【0101】
(ゲートバルブ装置の変形例)
ここで,本実施形態にかかるゲートバルブ装置の変形例について図面を参照しながら説明する。
図9は変形例にかかるゲートバルブ装置GV2の概略構成を説明するための断面図であり,
図10はその作用説明図である。ここでは,トランスファチャンバの真空度よりもプロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)の真空度の方が高く,そのプロセスチャンバ200B側の圧力を保持したい場合を例に挙げる。ここでのプロセスチャンバ200Bは例えば10
−7Torrオーダー以下の高い真空度でCVD処理を行う高真空CVDチャンバで構成される。
【0102】
図9に示すようにゲートバルブ装置GV2は,
図6の場合とは逆側すなわちプロセスチャンバ200B(ホットウォールチャンバ)の側壁とゲートバルブ装置GV2の筐体402の側壁の間に基板搬出入口203,404を囲むように内側の第1シール部材230Aを設けるとともに,これを囲むように外側の第2シール部材230Bを設けて2重シール構造とする。
【0103】
さらに,ゲートバルブ装置GV2の筐体402の側壁に,これら第1,第2シール部材230A,230Bの隙間をゲートバルブ装置GV2の内部空間と連通する連通孔408を設け,
図6の場合とは逆側すなわち弁体410によってプロセスチャンバ200B側の基板搬出入口203,404を開閉するように構成し,トランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406は開放状態とする。これら第1,第2シール部材230A,230Bは,
図6に示す第1,第2シール部材330A,330Bと同様の材料で構成される。
【0104】
なお,ここではトランスファチャンバ300がプロセスチャンバ200Bよりも圧力が高いので,この場合のトランスファチャンバ300側のシール構造については,加熱されても透過する大気はそれほど多くなく,圧力上昇などの影響も少ない。このため,トランスファチャンバ300側は
図9に示すように1つのシール部材330で足りるが,2重シール構造にしてもよい。このシール部材330についても上記第1,第2シール部材230A,230Bと同様の材質で構成される。
【0105】
このような本実施形態の変形例にかかるゲートバルブ装置GV2によれば,トランスファチャンバ300を減圧するときには,プロセスチャンバ200B側の基板搬出入口203,404を弁体410で閉塞する。このとき,トランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406は開放されているので,ゲートバルブ装置GV2内は基板搬出入口303,406を介してトランスファチャンバ300内とのみ連通する。
【0106】
このため,トランスファチャンバ300の排気系320を駆動しておけば,たとえ第1,第2シール部材230A,230Bが加熱されてシール機能が低下し大気が透過したとしても,
図10に示すようにその大気は連通孔408からゲートバルブ装置GV2内に入り込み,基板搬出入口303,406からトランスファチャンバ300に流れ,トランスファチャンバ300の排気系320によって排気することができる。
【0107】
このように,内側の第1シール部材230Aと外側の第2シール部材230Bとの隙間を,連通孔408を介してトランスファチャンバ300の排気系320によって積極的に真空引きすることで,たとえ外側の第2シール部材230Bを大気が透過しても,第1シール部材230Aは大気が透過しない。これによって,高い真空度を保持したいプロセスチャンバ200B内には大気が入り込まないようにすることができる。
【0108】
(ゲートバルブ装置の他の構成例)
次に,本実施形態にかかるゲートバルブ装置の他の構成例について図面を参照しながら説明する。ここでは,プロセスチャンバ200Bよりもトランスファチャンバ300側の圧力を高い真空度に保持したい場合に用いられるゲートバルブ装置GV1について,弁体駆動部432を弁体410の昇降動作及び開閉動作を行うように構成する代わりに,弁体駆動部432を昇降動作のみを行うように構成し,弁体410をクランク機構によって基板搬出入口406に押しつけて開閉動作を行うように構成した場合を例に挙げる。
図11は,ゲートバルブ装置GV1の他の構成例を示す断面図である。
図12は,
図11に示すトランスファチャンバ300におけるゲートバルブ装置GV1との接続面の正面図である。
【0109】
図11に示すゲートバルブ装置GV1は例えばアルミニウムで構成された略箱状の筐体402を備え,一方の側壁はプロセスチャンバ200Bに接続され,他方の側壁はトランスファチャンバ300と接続されている。筐体402において,プロセスチャンバ200B側の側壁とトランスファチャンバ300側の側壁にはそれぞれ,搬出入するウエハWを通すために,基板搬出入口203,303に対向する位置にその基板搬出入口203,303とほぼ同形状の基板搬出入口404,406が設けられている。
【0110】
そして,各チャンバ200B,300とゲートバルブ装置GV1との間のシール構造は
図6の場合と同様である。すなわち,ここではプロセスチャンバ200Bよりもトランスファチャンバ300の真空度を高く保持したい場合なので,プロセスチャンバ200Bとゲートバルブ装置GV1との間は1つのシール部材230を設けるのに対して,トランスファチャンバ300とゲートバルブ装置GV1との間は第1,第2シール部材330A,330Bを設けて2重シール構造にしている。これら各シール部材330A,330B,230の構成はそれぞれ,
図6に示すものと同様である。
【0111】
そして,筐体402のトランスファチャンバ300側の側壁には第1,第2シール部材330A,330Bの間の隙間と筐体402の内部空間とを連通する複数の連通孔408を設けている。
【0112】
ここでの連通孔408は例えば
図12に示す位置に配置される。すなわち
図12では,4つの円形の連通孔408をそれぞれ,第1,第2シール部材330A,330Bの間に上下左右に配置したものである。なお,連通孔408の形状は
図12に示すものに限られるものではなく,スリットでも長孔でもよい。また,連通孔408の数も
図12に示すものに限られるものではなく,5つ以上にしてもよく,また3つ以下にしてもよい。
【0113】
図11に示すゲートバルブ装置GV1は,弁体410を昇降,進退させることによってトランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406を開閉する。基板搬出入口406を閉じるときには基板搬出入口406を押圧しながら閉塞する。具体的には弁体410を基板搬出入口406の周りの壁面に押し当てながら,基板搬出入口406を閉塞してシールする。
【0114】
ここでの弁体410は,弁体支持部412にリンク機構414によって基板搬出入口406を開閉する方向に進退自在に支持されている。弁体支持部412には弁体410を基板搬出入口406から離間する方向に付勢する付勢部材(例えばバネ)416が設けられている。
【0115】
弁体支持部412は,弁体駆動部432によって弁体410を支持したまま昇降自在に構成されている。具体的には,弁体支持部412は昇降自在な昇降軸420の先端に取り付けられ,昇降軸420の基端側は筐体402の下方に突出して設けられた昇降案内フレーム430内を通って,下方の弁体駆動部432に接続されている。弁体駆動部432は,例えば昇降軸420を空圧シリンダなどのアクチュエータにより構成され,昇降軸420を昇降できるようになっている。
【0116】
このような弁体駆動部432はパーティクル発生の汚染源となるので,清浄度が要求される筐体402の内部空間とは隔離する必要がある。このため,昇降案内フレーム430内には昇降軸420を覆うようにベローズ440が配置されている。なお,ベローズ440は
図6の場合と同様に例えばステンレスなど耐食性を有する気密な蛇腹状部材で構成される。
【0117】
ベローズ440は昇降動作に応じて伸縮自在に構成されている。ここでのベローズ440は
図6の場合と異なり,その上端が昇降軸420に取り付けられ,下端が弁体駆動部432に取り付けられる。これにより,ベローズ440の外部空間は筐体402の内部空間と連通し,ベローズ440の内部空間とは隔離される。
【0118】
筐体402内には,そのトランスファチャンバ300側の側壁の上方に,弁体410の上昇動作を規制して基板搬出入口406側に案内するための弁体規制部材418を設ける。なお,弁体規制部材418は,連通孔408を塞がないように,
図12に点線で示す位置に部分的に設ける。
図12では,2つの弁体規制部材418を上部に位置する連通孔408の両側に設けた場合を示しているが,これに限られるものではない。
【0119】
なお,弁体410の上面には,
図11,
図12に示すように弁体規制部材418との当接部位に樹脂などからなる緩衝部材411を設けるようにしてもよい。これにより,弁体規制部材418と接触した後,弁体410を基板搬出入口406側にスムーズに案内させることができる。
【0120】
次に,
図11に示すゲートバルブ装置GV1の動作を図面を参照しながら説明する。
図13A,
図13B,
図13Cは
図11に示すゲートバルブ装置GV1の動作説明図である。
図13Aは,弁体410を待機位置まで下降させた場合を示すものである。
図13Bは,弁体410を上昇させて弁体規制部材418に当接した場合を示すものである。
図13Cは,弁体410が基板搬出入口406を閉塞した場合を示すものである。
【0121】
先ず,基板搬出入口406を開成してウエハWの搬出入動作を行う場合には,
図13Aに示すようなウエハWの搬送動作の邪魔にならない待機位置まで弁体410を下降させる。そして,基板搬出入口406を閉塞する場合には,昇降軸420を上昇させることによって弁体支持部412を弁体410とともに上昇させる。
【0122】
そして,
図13Bに示すように弁体410が弁体規制部材418に当接すると,弁体410はそれ以上の上昇が規制される。さらに弁体支持部412を上昇させると,リンク機構414によって弁体410は付勢部材416の付勢力に抗して基板搬出入口406の方に移動し,
図13Cに示すようにトランスファチャンバ300側の基板搬出入口406を閉塞する。
【0123】
そして,トランスファチャンバ300側を所定の真空圧力まで減圧する際には,弁体410でトランスファチャンバ300側の基板搬出入口406を閉じる。このとき,もしプロセスチャンバ200Bからの熱により第1,第2シール部材330A,330Bが加熱されてそのシール機能が低下していて,
図13Cに示すように外側の第2シール部材330Bを大気が透過したとしても,内側の第1シール部材330Aまで透過してトランスファチャンバ300に入り込むことはない。
【0124】
すなわち,外側の第2シール部材330Bを透過した大気は連通孔408からゲートバルブ装置GV1内に入り,基板搬出入口404からプロセスチャンバ200Bに向けて流れるので,プロセスチャンバ200Bの排気系220Bによって排気できる。こうして,内側の第1シール部材330Aと外側の第2シール部材330Bとの隙間を,連通孔408を介してプロセスチャンバ200Bの排気系220Bによって真空引きすることができる。
【0125】
このように,
図11に示すゲートバルブ装置GV1についても,
図6に示すものと同様に,たとえ外側の第2シール部材330Bを大気が透過しても,トランスファチャンバ300側には入り込まないようにすることができるので,トランスファチャンバ300の圧力が高くなることを防止でき,所定の真空圧力を保持することができる。
【0126】
なお,
図11に示すゲートバルブ装置GV1では,弁体410をクランク機構によってトランスファチャンバ300側の基板搬出入口406に押しつけて閉塞するタイプのゲートバルブ装置に適用した場合について説明したが,これに限られるものではなく,例えば弁体410をピストン機構によってトランスファチャンバ300側の基板搬出入口406に押しつけて閉塞するタイプのゲートバルブ装置に適用してもよい。
【0127】
(ゲートバルブ装置が適用されるチャンバ構成の具体例)
次に,
図1に示す基板処理装置100において,本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1が適用されるチャンバ構成の具体例について
図14を参照しながら説明する。ここでは,
図1に示す基板処理装置100を,Cu配線の下地として用いるCVD−Ru膜をウエハW上に形成する装置として構成した場合を例に挙げる。
【0128】
図14に示すチャンバ構成では,プロセスチャンバ200A,200B,200Cをそれぞれ,PVDによってTi膜をバリア膜として形成するPVD−Ti膜成膜チャンバ,そのTi膜上にCVDによって下地のRu膜を形成するCVD−Ru膜成膜チャンバ,CVD−Ru膜を水素含有雰囲気でアニールするアニールチャンバとしての機能を有するように構成したものである。これによれば,Ti膜成膜,CVD−Ru膜からアニール処理までウエハWを大気に晒すことなく連続して処理することができる。
【0129】
なお,プロセスチャンバ200Dはどのように構成してもよい。例えばアニール後のCVD−Ru膜上にCu膜を成膜するCu膜成膜チャンバとしての機能を有するように構成してもよい。これによれば,Cu膜成膜までウエハWを大気に晒すことなく連続で行うことができる。
【0130】
また,プロセスチャンバ200DはCVD−Ru膜上にCuシード膜を成膜するCuシード膜成膜チャンバとしての機能を有するように構成してもよい。これによれば,Cuシード膜成膜までウエハWを大気に晒すことなく連続で行い,そのウエハWを基板処理装置100から搬出してカセット容器に収容し,別の装置によってCuメッキを行うことができる。なお,
図1に示すチャンバ構成に限られるものではなく,各チャンバの機能はプロセスチャンバ200A〜200Dのどれに割り当ててもよい。
【0131】
このような
図14に示すチャンバ構成において,PVD−Ti膜成膜チャンバは1×10
−8Torr程度の高い真空度が要求され,ウエハWを常温で固体ではない成膜ガス(例えばTiCl
4ガス(常温で液体))を用いるためチャンバ側壁は冷却可能で20℃程度の温度になるため,高真空のコールドウォールチャンバに相当する。
【0132】
CVD−Ru膜成膜チャンバは1×10
−6Torr程度の低い真空度であってウエハWを150〜250℃に加熱して行うものの,常温で固体の成膜ガスを用いるのでチャンバ側壁は冷却できず80℃程度の常温よりも高い温度になるのでホットウォールチャンバに相当する。アニールチャンバは,1.0〜10Torrと高い圧力であるものの,ウエハWを150℃〜400℃の高温で加熱して処理を行うので,ホットウォールチャンバに相当する。
【0133】
さらに,これらが接続されるトランスファチャンバ300は,1×10
−8Torr程度の高い真空度と清浄度が要求されるチャンバであるので,トランスファチャンバ300側の圧力を高い真空度に保持したい場合である。
【0134】
従って,PVD−Ti膜成膜チャンバとの間のゲートバルブ400Aは,ゲートバルブ装置GV0(
図3)で構成すれば足りるのに対して,CVD−Ru膜成膜チャンバとアニールチャンバは本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1(
図6又は
図11)で構成する。こうすることにより,プロセスチャンバ200Bの温度が上昇しても,トランスファチャンバ300では所定の真空圧力を保持することができる。
【0135】
このようなホットウォールチャンバとして,
図14に示すCVD−Ru膜成膜チャンバ(プロセスチャンバ200B)の具体的な構成例を
図15を参照しながら説明する。このCVD−Ru膜成膜チャンバ(プロセスチャンバ200B)は,気密に構成された略円筒状の容器202を有しており,その内部にはウエハWを載置するサセプタ250がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材252により支持された状態で配置されている。
【0136】
サセプタ250にはヒータ254が埋め込まれており,このヒータ254にはヒータ電源256が接続されている。そして,サセプタ250に設けられた熱電対(図示せず)の検出信号に基づいてヒータコントローラ(図示せず)によりヒータ電源256を制御して,ウエハWを所定の温度に制御するようになっている。また,サセプタ250には,ウエハWを支持して昇降させるための3本のウエハ昇降ピン(図示せず)がサセプタ250の表面に対して突没自在に設けられている。
【0137】
容器202の天壁には,CVD成膜のための所定のガスを容器202内に導入するためのシャワーヘッド260がサセプタ250と対向するように設けられている。シャワーヘッド260は,後述するガス供給機構280から供給された成膜ガスを容器202内に吐出するためのものである。シャワーヘッド260の上部には成膜ガスを導入するガス導入口262が設けられている。また,シャワーヘッド260内にはガス拡散空間264が形成されており,その底面には多数のガス吐出孔266が形成されている。
【0138】
容器202の底壁には,下方に向けて突出する排気室270が設けられている。排気室270の側面には排気配管272が接続されており,この排気配管272には真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気装置274が接続されている。そしてこの排気装置274を作動させることにより容器202内を所定の真空圧力(例えば1×10
−6Torr程度)にすることができる。
【0139】
ガス供給機構280は,常温で固体の成膜原料Sとしてルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)を収容する成膜原料容器281を有している。成膜原料容器281の周囲にはヒータ282が設けられている。成膜原料容器281には,上方からキャリアガス供給配管283が挿入され,キャリアガス供給源284からキャリアガス供給配管283を介してキャリアガスとして例えばCOガスを成膜原料容器281内に吹き込むようになっている。
【0140】
また,成膜原料容器281には,ガス供給配管285が挿入されている。このガス供給配管285の他端は,シャワーヘッド260のガス導入口262に接続されている。これによれば,キャリアガス供給配管283を介して成膜原料容器281内にキャリアガスを供給することにより,成膜原料容器281内で昇華したルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)ガスをキャリアガスに搬送させた状態でガス供給配管285およびシャワーヘッド260を介して容器202内に供給することができる。
【0141】
キャリアガス供給配管283には流量制御用のマスフローコントローラ286とその前後のバルブ287a,287bが設けられている。また,ガス供給配管285には,ルテニウムカルボニル(Ru
3(CO)
12)のガス量を検出するための流量計288とその前後のバルブ289a,289bが設けられている。
【0142】
ガス供給配管285の途中には,成膜ガスを適宜に希釈するためのガスを供給する希釈ガス供給配管290が接続されている。希釈ガス供給配管290には,Arガス,N
2ガス等の不活性ガスからなる希釈ガスを供給する希釈ガス供給源291が接続されており,この希釈ガス供給源291から希釈ガス供給配管290を介して希釈ガスを供給することにより,原料ガスが適宜の濃度に希釈される。
【0143】
希釈ガス供給源291からの希釈ガスは,ガス供給配管285,容器202内の残留ガスをパージするパージガスとしても機能するようになっている。なお,希釈ガス供給配管290は,流量制御用のマスフローコントローラ292とその前後のバルブ293a,293bを有している。また希釈ガス供給配管290には他のガス,例えばCOガスやH
2ガス等が別途接続されていてもよい。
【0144】
このようなCVD−Ru膜成膜チャンバでは,PVD−Ti膜成膜チャンバによりバリア膜(ここではTi膜)を成膜した後のウエハWに対してCVD−Ru膜の成膜処理を行う。サセプタ250上に載置されたウエハWを,ヒータ254によりサセプタ250を介して150〜250℃に加熱する。そして,排気装置274の真空ポンプにより容器202内を排気し,容器202内を1×10
−6Torr程度の真空圧力に調整する。
【0145】
次いで,バルブ287a,287bを開にしてキャリアガス供給配管283を介して成膜原料容器281にキャリアガスとして例えばCOガスを吹き込み,成膜原料容器281内でヒータ282の加熱により昇華して生成されたRu
3(CO)
12ガスをキャリアガスによりキャリアさせてガス供給配管285およびシャワーヘッド260を介して容器202内に導入する。
【0146】
このとき,ウエハWの表面では,Ru
3(CO)
12ガスが熱分解して生成されたRuがウエハWのTi膜上に堆積し,所定の膜厚を有するCVD−Ru膜が成膜される。なお,このときのRu
3(CO)
12ガスの流量は,例えば1〜5mL/min(sccm)程度が好ましい。また,所定割合で希釈ガスを導入してもよい。
【0147】
ウエハW上に所定の膜厚のCVD−Ru膜が形成されると,バルブ287a,287bを閉じてRu
3(CO)
12ガスの供給を停止し,希釈ガス供給源291から希釈ガスをパージガスとして容器202内に導入してRu
3(CO)
12ガスをパージする。これにより,ウエハWを容器202から搬出可能となる。
【0148】
ところで,このようなCVD−Ru膜成膜チャンバ(プロセスチャンバ200B)に接続されるゲートバルブ400Bを例えば
図6に示すゲートバルブ装置GV1によって構成した場合には,Ruの成膜処理を行っている間は
図16に示すようにトランスファチャンバ300側の基板搬出入口303,406が弁体410によって閉塞されている。このため,Ruの成膜処理中にトランスファチャンバ300側に成膜ガス(ここではRu
3(CO)
12ガスなど)が入り込むことはない。
【0149】
ところが,プロセスチャンバ200B側の基板搬出入口203,404は開放されたままであるため,
図16の矢印に示すように,その成膜ガスが基板搬出入口203,404を通ってゲートバルブ装置GV1内に入り込むため,昇降案内フレーム430内にも入り込んでしまう虞がある。
【0150】
このとき,ベローズ440は,アルミニウム製の筐体402に比して伝熱性の低いステンレスなどで構成されるので,周囲よりも低い温度になり易い。このため,上述したRu
3(CO)
12ガスのように常温で固体の成膜原料を昇華させた成膜ガスが昇降案内フレーム430内(ここではベローズ440の内側)に入り込むと,ベローズ440の内側表面で冷えて凝固して付着してしまう虞がある。このようにベローズ440に付着物が付着したまま弁体410を昇降させると,ベローズ440が伸縮したときにその表面から付着物が剥がれてパーティクル発生や故障の要因になり得る。
【0151】
そこで,このような場合には,例えば
図16に示すようにベローズヒータ450を設けて,ベローズ440を加熱する。
図16はベローズヒータ450を昇降案内フレーム430の周囲に設けることによって,ベローズ440を加熱する場合を例に挙げたものである。これによれば,ベローズヒータ450によってベローズ440を加熱してベローズ440の温度低下を防ぐことができる。これによって,たとえ処理ガスが昇降案内フレーム430内に入り込んだとしても,ベローズ440の表面に付着することを防止できるので,パーティクル発生を防止できる。
【0152】
なお,ゲートバルブ400Bを
図11に示すゲートバルブ装置GV1によって構成した場合にも同様の問題が生じる虞がある。具体的には
図17に示すように,成膜ガスが昇降案内フレーム430内(ここではベローズ440の外側)に入り込むと,ベローズ440の外側表面で冷えて凝固して付着してしまう虞がある。この場合は,例えば
図17に示すようにベローズヒータ450を昇降案内フレーム430の周囲に設けるようにしてもよい。
【0153】
このようなベローズヒータ450としては
図16,
図17に示すようにベローズ440をその外側から加熱するものに限られるものではなく,ベローズヒータ450をベローズ440の内側に配設するようにしてもよい。
【0154】
なお,
図1又は
図14に示すトランスファチャンバ300と各ロードロックチャンバ140との間のゲートバルブ142は,各ロードロックチャンバ140で温度を上昇させるような処理を行わない場合は,必ずしも本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1のように構成する必要はない。これに対して,各ロードロックチャンバ140で温度を上昇させるような処理を行う場合は,各ゲートバルブ142についても本実施形態にかかるゲートバルブ装置GV1のように構成することが好ましい。
【0155】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。