(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧迫状態にある検査対象物の側部から採取針を穿刺して前記検査対象物の検査部位を採取し、且つコリメータにより放射線の照射範囲を調整した状態で放射線源から前記検査対象物に対して放射線を照射し、放射線検出器において前記検査対象物を透過した前記放射線を検出して放射線画像を取得する放射線画像撮像装置の作動方法において、
前記採取針の先端部と前記検査部位が収まるように設定された前記放射線の照射範囲の第1の放射線画像を取得する第1取得ステップと、
前記第1取得ステップ後に前記採取針を移動させるとともに、前記第1取得ステップにより取得した前記放射線画像の前記放射線の照射範囲よりも小さい範囲で、且つ前記採取針の先端部と前記検査部位が収まるように前記放射線の照射範囲を設定する設定ステップと、
前記設定ステップにより設定された前記放射線の照射範囲に基づき第2の放射線画像を取得する第2取得ステップと、
前記第2の放射線画像に、前記採取針の先端部と前記検査部位が共に収まっていない場合に、該第2の放射線画像に基づき前記放射線の照射範囲を再設定する照射範囲再調整ステップと、を有する
ことを特徴とする放射線画像撮像装置の作動方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る放射線画像撮像装置について、それを実施する放射線画像撮像装置の
作動方法の関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
[本実施形態の構成]
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10(放射線画像撮像装置)は、基本的には、立設状態に設置される基台12と、該基台12の略中央部に配設された旋回軸14の先端部に固定されるアーム部材16と、被検体18の検査対象物としてのマンモ20に対して放射線22を照射する放射線源24を収容し、且つ、アーム部材16の一端部に固定される放射線源収容部26と、マンモ20を透過した放射線22を検出する固体検出器28(放射線検出器)が収容され、且つ、アーム部材16の他端部に固定される撮影台30(保持部材)とを有する。
【0027】
放射線源24から放射される放射線22の照射方向前方(放射線源24の下側)には、放射線22の照射範囲23(
図6参照)を調整するコリメータ25が配設されている。このコリメータ25は、マンモグラフィ装置10の駆動制御によって絞りや位置(放射線源24に対する相対位置)が設定可能となっている。したがって、放射線源24が出射した放射線22は、コリメータ25により照射範囲23外の放射線22が遮光され、照射範囲23内の放射線22が平行光線として、マンモ20の所定箇所に照射される。
【0028】
また、マンモグラフィ装置10において、アーム部材16における被検体18と対向する矢印Y方向の側部(正面側)には、矢印Z方向に沿って溝部32が設けられ、該溝部32には、圧迫板支持部材34が矢印Z方向に変位可能に取り付けられている。
【0029】
圧迫板支持部材34は、溝部32に挿入して図示しない取付部に嵌合支持される。また、圧迫板支持部材34は、放射線源収容部26と撮影台30との間に配設される基端部34aと、基端部34aの先端から撮影台30に向って垂下する2つの中間部34b、34cと、中間部34b、34cの先端を連結する連結部34dとから構成される。この連結部34dの下部側には、圧迫板38(圧迫部材)が連結されている。
【0030】
圧迫板38は、撮影台30の上面と平行になる対向面を有し、圧迫板支持部材34によって矢印Z方向(上下方向)に移動自在とされている。マンモ20は、撮影台30の所定位置に載置した状態で、圧迫板38が下方向に移動することで、圧迫板38の対向面と撮影台30の上面によって圧迫保持される。
【0031】
また、基台12には、被検体18の撮影部位等の撮影条件や被検体18のID情報等を表示すると共に、必要に応じてこれらの情報を設定可能な表示操作部40が配設される。
【0032】
放射線源収容部26及び撮影台30を連結するアーム部材16は、旋回軸14を中心として旋回することで、被検体18のマンモ20に対する方向が調整可能に構成される。また、放射線源収容部26は、ヒンジ部42を介してアーム部材16に連結されており、矢印θ方向に撮影台30とは独立に旋回可能に構成される。
【0033】
アーム部材16における矢印X方向(被検体18のマンモ20の左右方向)に沿った両側部には、被検体18が把持するための取手部44がそれぞれ設けられている。また、アーム部材16の正面側における撮影台30近傍の箇所には、溝部32を挟んで2つの穴46が形成されている。
【0034】
マンモグラフィ装置10には、
図2及び
図3に示すように、マンモ20の生検部位48(検査部位)から必要な組織を採取する生検針50(採取針)を備えたバイオプシ装置52が組み込まれている。バイオプシ装置52は、生検針50が装着される生検針保持部54と、生検針保持部54を移動させることにより生検針50を所望の場所に移動させる生検針移動機構56とから構成される。
【0035】
生検針移動機構56は、2つのベース部材58を介して撮影台30に載置された移動機構本体59を有する。
【0036】
移動機構本体59の矢印X方向に沿った両側部には、アーム部材16に向って延在するアーム60がそれぞれ設けられ、各アーム60には、前述した穴46に嵌合するロッド62が設けられている。従って、2つのベース部材58を介して移動機構本体59を撮影台30に載置した状態で、2本のロッド62を2つの穴46にそれぞれ嵌合すれば、アーム部材16と圧迫板支持部材34の中間部34b、34cとの間の所定位置において、被検体18と対向した状態で移動機構本体59を位置決め固定することができる。
【0037】
移動機構本体59は、アーム部材16側で矢印Z方向に立設する背面部材64と、背面部材64に対して前方(被検体18側)から装着された前面部材66と、前面部材66の前方に装着された移動ユニット68と、移動ユニット68の前方に装着された他の移動ユニット70とから構成される。また、移動機構本体59の側面における背面部材64と前面部材66との境界部分にはつまみ72が設けられ、移動ユニット68の側面には、つまみ74、76が設けられている。さらに、移動ユニット70には、被検体18に向って3本のロッド78〜82が矢印Y方向に沿って延在し、各ロッド78〜82の先端には平板状の保持部材84が取り付けられている。
【0038】
背面部材64は、被検体18に対向して比較的大きな凹部が形成された薄肉の部材であり、前面部材66は、アーム部材16に対向して比較的大きな凹部が形成された薄肉の部材である。従って、背面部材64に対して前面部材66を装着することにより、移動機構本体59内には比較的大きな閉空間が形成され、生検針50を移動させるための図示しない機械要素からなる移動機構が前記閉空間に収容される。なお、前面部材66は、その底部を中心として、背面部材64に対して回動可能である。
【0039】
移動ユニット68は、前記移動機構の駆動作用下に前面部材66に対して矢印Z方向に移動可能である。移動ユニット70は、前記移動機構の駆動作用下に移動ユニット68に対して矢印X方向に移動可能である。保持部材84は、前記移動機構の駆動作用下に各ロッド78〜82が矢印Y方向に沿って進退することにより、矢印Y方向に移動可能である。なお、前述した移動機構としては、例えば、ギヤ、ウォームギヤ、ラック、ピニオン等の機械要素を用いることにより、上述した移動機構本体59の各構成要素を矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向に移動可能な周知の移動機構であればよい。
【0040】
また、各つまみ72〜76は、前記移動機構に連結されている。医師又は技師がつまみ72を回すと、その回転力が前記移動機構に伝わり、該移動機構は、前記回転力に基づいて移動ユニット68を矢印Z方向に変位させる。また、医師又は技師がつまみ74を回すと、その回転力が前記移動機構に伝わり、該移動機構は、前記回転力に基づいて移動ユニット70を矢印X方向に変位させる。さらに、医師又は技師がつまみ76を回すと、その回転力が前記移動機構に伝わり、該移動機構は、前記回転力に基づいて各ロッド78〜82を矢印Y方向に進退させる。
【0041】
保持部材84には、
図2の側面視でU字状のアーム支持部材86が固定され、該アーム支持部材86には、矢印X方向に延在する保持アーム88が軸支されている。
【0042】
具体的に、アーム支持部材86は、保持部材84側の平板部分と、該平板部分の上端及び下端から被検体18に向って膨出した膨出部分とから構成される。また、保持アーム88の一端部90は、アーム支持部材86内方に接触するように略U字状に形成されている。そして、軸部材92が保持部材84の上下の膨出部分及び保持アーム88の一端部90を矢印Z方向に貫通することにより、保持アーム88の一端部90は、軸部材92を中心として回動可能に軸支される。
【0043】
なお、保持部材84の上側の膨出部分には、該膨出部分を貫通して一端部90に当接するつまみ94が配設されている。つまみ94には図示しないネジ溝が形成されており、医師又は技師がつまみ94を回して該つまみ94の先端を一端部90に当接させることにより、保持アーム88(の一端部90)を軸部材92を中心とした所定の回動角度に固定することができる。
【0044】
保持アーム88の他端部96には、矢印X方向に沿って延在する矩形状のロッド98が固着され、該ロッド98の先端部には、エンドブロック102が連結されている。ロッド98には、他端部96とエンドブロック102との間を摺動可能なスライダ106が配設されている。なお、スライダ106の移動方法としては、電動シリンダを構成して自動的に移動させる方法や、医師又は技師が手動で移動させる方法がある。
【0045】
スライダ106は、撮影台30に向って垂下する支持部材118を介して平板状の取付部材120と連結され、該取付部材120には、生検針保持部54が取り付けられている。
【0046】
生検針保持部54は、その内部において生検針50の基端部を保持し、図示しないバネの弾発力によって所定位置まで生検針50を一気に進出させる内部機構を備える。これにより、生検針50は、生検針保持部54の進出操作に基づき穿刺方向に向かって瞬発的に進出する。
【0047】
また、生検針50は、マンモ20の生検部位48の組織(例えば、石灰化組織)を吸引して採取する採取部122を先端部に備える。
【0048】
前述のように、生検針移動機構56は、移動機構本体59内の移動機構の駆動作用下に移動ユニット68を矢印Z方向に移動させ、移動ユニット70を矢印X方向に移動させ、且つ、各ロッド78〜82を介して保持部材84を矢印Y方向に移動させる。また、保持部材84に固定されたアーム支持部材86(を貫通する軸部材92)には、保持アーム88の一端部90が軸支されている。保持アーム88の他端部96とエンドブロック102との間に連結されたロッド98では、スライダ106が矢印X方向に摺動可能である。そして、スライダ106には、支持部材118及び取付部材120を介して生検針50が装着された生検針保持部54が連結されている。
【0049】
従って、マンモグラフィ装置10は、前記移動機構の駆動作用によって生検針50を矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向に移動させることができる。また、軸部材92を中心として保持アーム88の一端部90が回動することにより、生検針50をX−Y平面内で回動させることができる。
【0050】
さらに、マンモグラフィ装置10は、生検針50をマンモ20の側部に位置決めした後、移動機構の駆動作用により、該生検針50を矢印X方向に移動させてマンモ20に穿刺する。ここで、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、マンモ20に生検針50を穿刺する場合に、マンモ20の生検部位48に対し、生検針50の先端部を所定間隔離間した位置に比較的緩やかに移動させる第1移動制御を実施し、その後生検針50を一気(瞬間的)に進入させて、生検部位48の近傍位置(下部)に採取部122を配置する第2移動制御(いわゆる、ピアス動作)を実施する。
【0051】
すなわち、第1移動制御では、ロッド98に沿ったスライダ106の摺動によって生検針50と生検針保持部54を同時に移動させて、マンモ20の側部に生検針50を穿刺し、さらにそのまま移動を続けて所定位置(生検部位48に対し生検針50の先端部が所定間隔離間した位置)に配置する。
【0052】
この第1移動制御後に、第2移動制御では、生検針50を保持している生検針保持部54の内部機構(バネ)を駆動(進出操作)することで、該バネによって生検針50の採取部122を生検部位48の下部に一気に進入させる。この結果、平面視で、採取部122と生検部位48が重なり合い、該採取部122によって生検部位48の採取を行うことができる(
図8A参照)。
【0053】
このように、第1及び第2移動制御の2段階に分けてマンモ20に生検針50を穿刺する場合は、第1及び第2移動制御による生検針50の穿刺状態や生検部位48の位置を再確認するため、通常は、第1移動制御後及び第2移動制御後に、放射線画像の取得(撮像)をそれぞれ行う。これにより、医師又は技師は、再度取得した放射線画像に基づき生検針50の先端部の位置や生検部位48の位置を認識することができ、より精度の高いバイオプシを実施することができる。
【0054】
すなわち、マンモグラフィ装置10においては、放射線22によりマンモ20を撮像する機会として、少なくとも以下の4つの機会があげられる。
[1]撮影台30と圧迫板38によって圧迫されたマンモ20の生検部位48を特定するための撮像(以下、第1撮像という)
[2]第1撮像で取得した放射線画像により生検部位48が特定された後、該生検部位48付近を鮮明(明確)にするための撮像(以下、第2撮像という)
[3]第1移動制御により生検針50の先端部を生検部位48に対し所定間隔離間した位置に配置した後、生検針50の先端部及び生検部位48の位置を再確認するための撮像(以下、第3撮像という)
[4]第2移動制御により生検針50の採取部122を生検部位48の近傍位置に進入した後、生検針50の先端部及び生検部位48の位置を再確認するための撮像(以下、第4撮像という)
【0055】
次に、マンモグラフィ装置10によって実施される第1〜4撮像について具体的に説明していく。
図6は、マンモ20の放射線画像を取得する状態を概略的に示す要部平面図であり、
図6Aは、第1撮像時の状態を示す図であり、
図6Bは、第2撮像時の状態を示す図である。また、
図7Aは、第3撮像時の状態を概略的に示す要部平面図であり、
図7B〜
図7Dは、
図7Aで撮像された放射線画像の一例を示す説明図である。さらに、
図8Aは、第4撮像時の状態を概略的に示す要部平面図であり、
図8B〜
図8Dは、
図8Aで撮像された放射線画像の一例を示す説明図である。
【0056】
図6Aに示すように、第1撮像では、圧迫状態のマンモ20に対し全体的に放射線22を照射し、該マンモ20の全体画像を放射線画像(以下、第1放射線画像という)200として取得する。これにより、医師又は技師は、第1放射線画像200を参照してマンモ20内の生検部位48の位置を特定することが可能となる。この場合、放射線22の照射範囲23を制御するコリメータ25は、マンモ20の撮影条件等によって適宜の絞りに設定される。
【0057】
なお、この第1撮像においては、生検部位48の三次元位置を特定するために、異なる角度で配置された放射線源24からマンモ20に対して放射線22を照射するステレオ撮影が2回以上行われることが好ましい。こにより、2枚以上の第1放射線画像200から生検部位48を認識することができ、該生検部位48の位置を精度よく特定することが可能となる。
【0058】
図6Bに示すように、第2撮像では、第1放射線画像200において特定されたマンモ20の生検部位48の位置に基づき、その周辺部を含む領域の放射線画像(以下、第2放射線画像という)202を取得する。医師又は技師は、取得した第2放射線画像202を参照することで、生検部位48の状態をより明確に認識することができ、また生検部位48の位置に関して補正等を行うこともできる。この第2撮像では、第1放射線画像200に基づき医師又は技師が生検部位48の位置を指示すると、その生検部位48の位置を略中心において予め設定されるサイズとなるようにコリメータ25が制御され、放射線22の照射範囲23が縮小される。
【0059】
図7Aに示すように、第3撮像では、第1移動制御によって生検針50をマンモ20に穿刺した状態での放射線画像(以下、第3放射線画像という)204を取得する。ここで、本実施形態に係る第3撮像では、放射線22の照射範囲が、第2撮像における放射線22の照射範囲23よりも小さい範囲で、且つ生検針50の先端部と生検部位48が共に収まる範囲に設定(調整)される。したがって、取得される第3放射線画像204は第2放射線画像202よりも縮小された範囲の画像となる。
【0060】
すなわち、第3撮像は、マンモ20に穿刺した生検針50の先端部と生検部位48が予め設定(想定)した位置に存在するか否かを確認するために実施される。よって、生検針50の先端部と生検部位48が共に収まる範囲内の放射線画像を取得できればよく、その他の部分(例えば、生検針50の基端側等)は無駄な照射範囲となる。そこで、第3撮像では、コリメータ25を制御し放射線22の照射範囲23を縮小することで、この無駄な照射範囲を省くようにしている。
【0061】
また、Lateral方式のバイオプシでは、マンモ20の側部から生検針50を穿刺することによって、該生検針50からの力(突き刺し力)によってマンモ20が生検針50の反対側の穿刺方向に移動(位置ずれ)することが想定される。このため、放射線22の照射範囲23は、その大きさ(面積)が設定されると、生検針50の穿刺方向に沿って所定量(例えば、10mm程度)移動した位置となるように設定(補正)される。
【0062】
この場合、第3撮像によって取得される第3放射線画像204としては、例えば、
図7B〜
図7Dに示す画像204a〜204cがあげられる。画像204aは、生検針50の先端部と生検部位48が共に収まっている正常状態を示している。画像204bは、生検部位48のみが撮像され生検針50の先端部が収まっていない異常状態を示している。画像204cは、生検針50の先端部が撮像され、生検部位48が収まっていない異常状態を示している。
【0063】
第3撮像によって画像204aを取得した場合は、生検針50の先端部と生検部位48の位置を確認することができる。このため、生検針50の先端部と生検部位48が所定間隔離間しているか否かを容易に判断することができる。仮に、生検針50の先端部と生検部位48の間隔が設定値からずれているのであれば、画像204aに基づき、生検針50の進退移動を再度実施すればよい。また仮に、生検部位48の位置に対し生検針50の先端部の傾きが想定範囲外であれば、このまま第2移動制御を行っても、生検部位48の採取が困難となるため、生検針50を一旦引き抜き、第1移動制御を再度実施し直せばよい。
【0064】
一方、画像204bにおいて、生検針50の先端部が収まっていないということは、生検針50の位置決めや移動(第1移動制御)にずれが生じ、生検部位48の付近に到達できていないと予測できる。したがって、放射線22の照射範囲23を生検針50の穿刺方向に延長(拡大)するようにコリメータ25の制御を行い、第3放射線画像204を再度撮影することにより、画像204aのように生検針50の先端部と生検部位48が共に収まった画像を取得することができる。この場合、生検針50の先端部と生検部位48は所定間隔離間していないことになるので、再撮影によって得られた画像に基づき生検針50の進退移動を再度実施すればよい。
【0065】
一方、画像204cにおいて、生検部位48が収まっていないということは、マンモ20(生検部位48)の大きな移動(位置ずれ)が起こったことが予測できる。したがって、生検部位48が収まるように放射線22の照射範囲23を生検針50の穿刺方向に移動させる制御を行い、第3放射線画像204を再度撮影することにより、画像204aのように生検針50の先端部と生検部位48が共に収まった画像を取得することができる。この場合、放射線22の照射範囲23は、取得された第3放射線画像204を医師又は技師が参照して移動されればよい。なお、放射線22の照射範囲23の移動によって生検針50の先端部が収まらないと予測される場合は、照射範囲23を適宜拡大してよいことは勿論である。
【0066】
図8Aに示すように、第4撮像では、第2移動制御によって採取部122が生検部位48に近接した状態の放射線画像(以下、第4放射線画像という)206を取得する。この第4撮像では、放射線22の照射範囲23が、第3撮像における放射線22の照射範囲23よりも小さい範囲で、且つ生検針50の先端部と生検部位48が共に収まる範囲に設定(調整)される。したがって、取得される第4放射線画像206は、第3放射線画像204よりもさらに縮小された範囲の画像となる。
【0067】
すなわち、第4撮像は、生検針50の採取部122と生検部位48が、平面視で重なる位置に存在するか否かを確認するために実施される。したがって、採取部122と生検部位48が共に収まる範囲内の放射線画像として、第3撮像よりも縮小した照射範囲23に設定することで、無駄な照射範囲を省くようにしている。
【0068】
また、Lateral方式のバイオプシにおいて第2移動制御(ピアス動作)を実施すると、マンモ20の位置ずれの発生が想定される。このため、マンモグラフィ装置10は、放射線22の照射範囲23を生検針50の穿刺方向に沿って所定の移動量(例えば、10mm程度)移動させた位置に設定して、第4放射線画像206の撮像を行う。
【0069】
この場合、第4撮像によって取得される第4放射線画像206としては、例えば、
図8B〜
図8Dに示す画像206a〜206cがあげられる。画像206aは、採取部122と生検部位48が重なっている正常状態を示している。画像206bは、採取部122と生検部位48が共に収まっていない異常状態を示している。画像206cは採取部122と生検部位48が共に収まっているが採取部122と生検部位48が重なっていない異常状態を示している。
【0070】
第4撮像によって画像206aを取得した場合は、採取部122が生検部位48に対して正常に移動してきたことを示しているため、採取部122による生検部位48の採取を実施することができる。
【0071】
一方、画像206bにおいて、採取部122と生検部位48が共に収まっていないということは、第2移動制御により生検部位48の位置ずれが想定以上に生じた(又は想定よりも生じなかった)、或いは、放射線22の照射範囲23の縮小や移動よって採取部122と生検部位48が存在する位置との間にずれが生じた等の種々の原因が考えられる。したがって、医師又は技師は取得された第4放射線画像206に基づき放射線22の照射範囲23を操作して、該放射線22の照射範囲23の大きさや位置を再設定して、第4放射線画像206を再度撮影する。
【0072】
この場合、画像206bのように採取部122と生検部位48が共に収まっていないとしても、極端な位置ずれが発生していることはほとんどないため、画像206bの周辺部分を再度撮影することにより、画像206aのような採取部122と生検部位48が共に収まった画像を取得することができる。また、画像206bのように生検針50の棒状の部分が撮像されていれば、その延長上に採取部122が存在すると予測可能であるため、容易に放射線22の照射範囲23を再設定することができる。
【0073】
一方、画像206cにおいて、採取部122と生検部位48が重なっていないということは、第2の移動制御による生検針50の移動が正常に行われなかったと予測できる。したがって、医師又は技師は、画像206cに基づき生検針50を移動させて採取部122を生検部位48に近接させるか、又は生検針50をマンモ20から引き抜いてバイオプシを再度実施し直すか、を判断すればよい。生検針50を移動させて採取部122を生検部位48に近接させる場合は、該生検針50の移動後に第4放射線画像206を再度撮像する。この際、画像206cに基づき放射線22の照射範囲23の位置を生検部位48の位置に移動させてもよいことは勿論である。
【0074】
次に、上記の動作を実施するマンモグラフィ装置10の制御系について説明する。
図9は、マンモグラフィ装置10の構成ブロック図である。
【0075】
マンモグラフィ装置10は、撮影条件設定部130、放射線源駆動制御部132、放射線制御部134、生検針位置情報算出部(採取針位置情報算出部)136、圧迫板駆動制御部138、圧迫板位置情報算出部140、検出器制御部142、画像情報記憶部144、CAD(Computer Aided Diagnosis)処理部146、表示部148、生検部位選択部150、生検部位位置情報算出部152、穿刺方向判定部154、生検針移動量算出部(採取針移動量算出部)156をさらに有する。
【0076】
撮影条件設定部130は、放射線源24の管電流及び管電圧、放射線22の照射線量及び照射時間、撮影方法、撮影順序等の撮影条件を設定する。放射線源駆動制御部132は、前記撮影条件に従って放射線源24を駆動制御する。放射線制御部134は、コリメータ25に接続し、該コリメータ25の絞り及び位置を駆動制御する。この放射線制御部134については後に詳述する。
【0077】
生検針移動機構56は、生検針50等を所定位置に移動及び/又は回動させた場合、その移動量や回動量に関わる情報(例えば、図示しない移動機構を構成するギヤ等の回転量)を、生検針位置情報算出部136に出力する。生検針位置情報算出部136は、生検針移動機構56からの情報に基づいて生検針50の先端部の三次元位置(現在位置)を算出する。
【0078】
圧迫板駆動制御部138は、圧迫板支持部材34及び圧迫板38を矢印Z方向に移動させる。圧迫板位置情報算出部140は、圧迫板駆動制御部138によって移動する圧迫板38の撮影台30に対する位置を算出する。圧迫板38は、撮影台30に対してマンモ20を圧迫して保持するため、圧迫板38の位置情報は、圧迫時のマンモ20の厚み情報を示すことになる。
【0079】
検出器制御部142は、固体検出器28を制御して、該固体検出器28で放射線22から変換された放射線画像を画像情報記憶部144に記憶する。CAD処理部146は、画像情報記憶部144に記憶された放射線画像に対する画像処理を行って表示部148及び表示操作部40に表示させる。
【0080】
なお、マンモグラフィ装置10では、固体検出器28に対して垂直方向(矢印Z方向)に沿って配置された放射線源24からマンモ20に対して放射線22を照射するスカウト撮影、あるいは、ヒンジ部42を中心とした放射線源収容部26の矢印θ方向への回動により所定の角度配置された放射線源24からマンモ20に対して放射線22を照射するステレオ撮影が行われる。固体検出器28は、スカウト撮影又はステレオ撮影によりマンモ20を透過した放射線22を検出して放射線画像に変換する。
【0081】
そのため、スカウト撮影の場合には1つの撮影角度(θ=0°)での1枚の放射線画像が画像情報記憶部144に記憶され、ステレオ撮影の場合には2つの撮影角度(θ=0°、+θ及び−θのうち、2つの角度(ステレオ角度))での2枚の放射線画像が画像情報記憶部144に記憶される。
【0082】
生検部位選択部150は、マウス等のポインティングデバイスであり、表示部148及び/又は表示操作部40の表示内容(ステレオ撮影により得られた2枚の放射線画像)を視た医師又は技師は、前記ポインティングデバイスを用いて、2枚の放射線画像中の(複数の)生検部位48の中から、組織を採取したい生検部位48を選択することが可能である。なお、生検部位選択部150による生検部位48の選択では、2枚の放射線画像の一方の画像中の生検部位48を選択すると共に、該一方の画像中の生検部位48に対応する他方の画像中の生検部位48も選択する。
【0083】
生検部位位置情報算出部152は、生検部位選択部150により選択された2枚の放射線画像中の生検部位48の位置に基づいて、該生検部位48の三次元位置を算出する。なお、生検部位48の三次元位置については、ステレオ撮影における公知の三次元位置の算出方法に基づき算出することが可能である。
【0084】
穿刺方向判定部154は、生検針位置情報算出部136が算出した生検針50の先端部の三次元位置と、圧迫板位置情報算出部140が算出した圧迫板38の位置、及び/又は、生検部位位置情報算出部152が算出した生検部位48の三次元位置とに基づいて、マンモ20に対する生検針50の穿刺方向を判定する。
【0085】
すなわち、生検針50の先端部と圧迫板38との位置関係からマンモ20に対する生検針50の穿刺方向が推定できるので、穿刺方向判定部154は、生検針50の先端部の三次元位置と、圧迫板38の位置(に基づくマンモ20の位置)とを用いて、マンモ20に対する生検針50の穿刺方向を特定する。
【0086】
また、生検針50の先端部と生検部位48との位置関係からマンモ20に対する生検針50の穿刺方向を推定可能であるため、穿刺方向判定部154は、生検針50の先端部の三次元位置と、生検部位位置情報算出部152が算出した生検部位48の三次元位置とに基づいて、マンモ20に対する生検針50の穿刺方向を特定することもできる。
【0087】
さらに、穿刺方向判定部154は、生検針50の先端部の三次元位置、圧迫板38の位置及び生検部位48の三次元位置に基づいて、マンモ20に対する生検針50の穿刺方向を特定することも可能である。
【0088】
生検針移動量算出部156は、生検部位位置情報算出部152により算出された生検部位48の三次元位置と、生検針位置情報算出部136により算出された生検針50の先端部の三次元位置と、圧迫板位置情報算出部140が算出した圧迫板38の位置(マンモ20の厚み)と、穿刺方向判定部154が決定した生検針50の穿刺方向とに基づいて、生検部位48に対する生検針50の移動量を算出する。
【0089】
図10は、
図9の放射線制御部134と該放射線制御部134に関係する構成を示す構成ブロック図である。
【0090】
放射線制御部134は、照射範囲調整部160、照射範囲再調整部162、照射範囲移動部164、照射範囲再移動部166、コリメータ駆動制御部168を有する。
【0091】
照射範囲調整部160は、上述した第1〜第4撮像における放射線22の照射範囲23の面積(大きさ)を設定(調整)する。例えば、第1撮像では、撮影条件設定部130が設定した撮影条件に基づき、マンモ20の全体画像を撮像するように照射範囲23を自動的に設定する。
【0092】
また、第2撮像では、生検部位位置情報算出部152によって算出された生検部位48の位置情報と、撮影条件設定部130が設定した放射線22の撮影条件とに基づき、生検部位48とその周辺部分を撮像するように照射範囲23を自動的に設定する。
【0093】
さらに、第3撮像では、第2撮像によって設定された照射範囲23と、生検針位置情報算出部136が特定した生検針50の先端部の位置情報と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量とに基づき、第2撮像によって設定された照射範囲23よりも小さく、且つ生検針50の先端部と生検部位48が共に収まる照射範囲23を自動的に設定する。
【0094】
またさらに、第4撮像では、第3撮像によって設定された照射範囲23と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針保持部54における進入操作時の生検針50の進出量とに基づき、第3撮像によって設定された照射範囲23よりも小さく、且つ生検針50の採取部122と生検部位48が共に収まる照射範囲23を自動的に設定する。
【0095】
一方、照射範囲再調整部162は、医師又は技師が画像情報記憶部144に記憶されている第3放射線画像204を確認しつつ、放射線22の照射範囲23を再設定する。例えば、第3撮像により撮像された第3放射線画像204が、生検針50の先端部が収まっていない画像204bである場合には、照射範囲再調整部162により照射範囲調整部160が設定した放射線22の照射範囲23の再調整を行う。
【0096】
照射範囲移動部164は、上述した第3及び第4撮像における放射線22の照射範囲23の位置を移動する。すなわち、照射範囲移動部164は、生検針50の穿刺にともなって生じるマンモ20の位置ずれに対応して、照射範囲23を適切な位置に変更(移動)する機能を有している。この場合、第1及び第2撮像は、生検針50の穿刺前であるため、照射範囲調整部160が設定した照射範囲23をそのまま使用することができる。
【0097】
第3撮像では、照射範囲調整部160によって設定された照射範囲23と、生検針位置情報算出部136が特定した生検針50の先端部の位置情報と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量とに基づき、該設定された照射範囲23の移動を行う。この場合、第1移動制御によって生じる生検部位48の位置ずれ量(移動量)の平均値等を予め求めておき、この位置ずれ量(例えば、10mm程度)に基づき生検針50の穿刺方向に照射範囲23を移動するように設定すればよい。
【0098】
また、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量に基づき放射線22の照射範囲23の移動量を設定してもよい。すなわち、生検針50の移動量は、マンモ20の位置ずれ量に連動するため、生検針移動量算出部156により算出した移動量に基づき放射線22の照射範囲23を移動させれば、該放射線22の照射範囲23の位置を、生検部位48の存在箇所に精度よく合わせることができる。
【0099】
一方、第4撮像では、照射範囲調整部160によって設定された照射範囲23と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針保持部54における進入操作時の生検針50の進出量とに基づき、該設定された照射範囲23の移動を行う。この場合も、第2移動制御によって生じる生検部位48の位置ずれ量(移動量)の平均値等を予め求めておき、この位置ずれ量(例えば、10mm程度)に基づき生検針50の穿刺方向に照射範囲23を移動するように設定すればよい。また、生検針保持部54による進出操作時の生検針50の進出量に基づき、放射線22の照射範囲23の移動量を設定してもよい。これにより、放射線22の照射範囲23の位置を、生検部位48の存在箇所に精度よく合わせることができる。
【0100】
また、照射範囲再移動部166は、医師又は技師が画像情報記憶部144に記憶される第4放射線画像206を確認しつつ、放射線22の照射範囲23の再移動を行う。例えば、第4撮像により撮像された第3放射線画像204が、生検針50の採取部122と生検部位48が収まっていない画像206bである場合には、該画像206bに基づき照射範囲再移動部166により照射範囲23の位置の再変更を行う。
【0101】
コリメータ駆動制御部168は、上述した照射範囲調整部160、照射範囲再調整部162、照射範囲移動部164、照射範囲再移動部166による放射線22の照射範囲23の設定に基づき、コリメータ25の絞り及び位置を制御する機能を有している。すなわち、放射線22の照射範囲23の大きさを変更する際には、コリメータ25の絞りを変更し、放射線22の照射範囲23の位置を移動する際には、コリメータ25を全体的にスライド移動して該コリメータ25の位置を変更する。
【0102】
これにより、コリメータ25は、撮像状況(第1〜第4撮像)に応じた照射範囲23を設定することができる。放射線源24から照射された放射線22は、コリメータ25の絞り等によって照射範囲23外の部分が遮光されるため、その放射線量が低減されてマンモ20に照射されることになる。
【0103】
[本実施形態の動作]
本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、以上のように構成されるものであり、次に、マンモグラフィ装置10の動作について説明する。
【0104】
図11及び
図12は、マンモグラフィ装置10の動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、一例として、マンモ20に対し、撮影状況に応じてステレオ撮影及びスカウト撮影の両方を実施し、得られた放射線画像に基づいてLateral方式のバイオプシが実施される場合について説明する。
【0105】
ステップS1において、先ず、撮影条件設定部130(
図10参照)を用いて、マンモ20に応じた管電流、管電圧、放射線22の照射線量、照射時間、撮影方法、撮影順序等の撮影条件が設定される。設定された撮影条件は、放射線源駆動制御部132に設定される。
【0106】
次のステップS2において、医師又は技師は、2つの穴46(
図1及び
図2参照)にロッド62を嵌合して撮影台30上の所定位置に移動機構本体59を含むバイオプシ装置52(
図3参照)を配置すると共に、圧迫板38が取り付けられた圧迫板支持部材34の基端部34aを溝部32に嵌合する。
【0107】
次のステップS3において、撮影台30及び圧迫板38による被検体18のマンモ20の圧迫が行われる。すなわち、撮影台30の所定位置(圧迫板38に対向する位置)にマンモ20が配置された後、撮影台30に対して平行に配置された圧迫板38を圧迫板駆動制御部138により撮影台30に向かって矢印Z方向に移動させ、マンモ20を圧迫する。これにより、マンモ20は、撮影台30及び圧迫板38により矢印X方向に沿って均一な圧迫圧で圧迫固定される。なお、圧迫板位置情報算出部140は、圧迫板38の撮影台30に対する位置情報を算出する。
【0108】
次のステップS4において、マンモグラフィ装置10は、放射線源24を駆動して、マンモ20に対し第1撮像(ステレオ撮像)を行い、例えば、放射線22の照射範囲23として
図6Aの2点鎖線内に示される2枚の第1放射線画像200を取得する。この場合、ヒンジ部42(
図1参照)を中心として矢印θ方向に放射線源収容部26を回動させることにより、2つの角度位置に放射線源24を移動させ、これらの位置から放射線22をそれぞれ照射することにより、マンモ20を透過した放射線22が固体検出器28によって放射線画像として検出される。2枚の第1放射線画像200は、画像情報記憶部144に記憶され、CAD処理部146による画像処理を介して、表示部148及び表示操作部40に表示される。
【0109】
次のステップS5において、医師又は技師は、マウス等のポインティングデバイスである生検部位選択部150を用いて、表示部148及び/又は表示操作部40に表示された2枚の第1放射線画像200から、(複数の)生検部位48のうち、組織を採取したい生検部位48を選択する。
【0110】
次のステップS6において、選択された生検部位48の位置に基づき、生検部位位置情報算出部152が、該生検部位48の三次元位置を算出する。放射線制御部134の照射範囲調整部160は、この生検部位48の三次元位置と、撮影条件設定部130が設定した放射線22の撮影条件に基づき、コリメータ駆動制御部168を介してコリメータ25の駆動を制御し、生検部位48を含む縮小した照射範囲23を設定する。
【0111】
次のステップS7(第1取得ステップ)において、マンモグラフィ装置10は、マンモ20に対し第2撮像(スカウト撮影)を行い、例えば、
図6Bの2点鎖線内に示される第2放射線画像202を取得する。スカウト撮影では、固体検出器28に対して垂直方向(矢印Z方向)に沿って放射線源24を配置し、この位置から放射線22をそれぞれ照射する。この第2放射線画像202も、ステップS4と同様の処理を介して、表示部148及び表示操作部40に表示される。
【0112】
なお、ステップS7の実施前には、医師又は技師によって、マンモ20に対し麻酔の投与を行ってもよい。これにより、マンモ20が膨張して生検部位48の位置がずれることもあるが、ステップS7によって得られる第2放射線画像202内の生検部位48の情報に基づき、生検部位48の三次元位置の補正を行うことができる。
【0113】
次のステップS8において、生検針移動量算出部156は、生検部位位置情報算出部152が算出した生検部位48の三次元位置と、生検針位置情報算出部136が算出した生検針50の先端部の三次元位置と、圧迫板位置情報算出部140が算出した圧迫板38の位置と、穿刺方向判定部154が決定した生検針50の穿刺方向とに基づいて、生検部位48に対する生検針50の移動量を算出する。
【0114】
次のステップS9において、生検針移動機構56は、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量に基づいて、生検針50を移動させる。生検針移動機構56では、移動機構本体59による矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向への移動制御により生検針50を生検部位48に対向する位置(生検部位48に対して矢印X方向に沿った所定位置)に位置決めする。
【0115】
次のステップS10(第1移動ステップ)において、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量に基づき、スライダ106を駆動(矢印X方向へ摺動)し、生検針50をマンモ20の側部に向けて移動させ、マンモ20の側部から生検針50の先端部を穿刺する。穿刺後は、生検針50をさらに移動(進入)させて、先端部が生検部位48に対し所定間隔離間した位置に配置する。
【0116】
なお、このステップS10の前には、マンモ20の穿刺箇所(側部)を切開する作業を実施してもよい。これにより、マンモ20に対する生検針50の穿刺をスムーズに行うことが可能となり、生検部位48の位置ずれ等を低減することができる。
【0117】
次のステップS11(設定ステップ、位置変更ステップ)において、放射線制御部134の照射範囲調整部160は、第2放射線画像202を撮像した照射範囲23よりも小さい範囲となるように、第3撮像の放射線22の照射範囲23の大きさを設定(調整)する。この照射範囲23は、
図7Aに示すように、生検針50の先端部と生検部位48が共に収まるように設定される。この場合、照射範囲調整部160は、生検針位置情報算出部136が算出した生検針50の先端部の三次元位置と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向とに基づき最適な照射範囲を設定する。
【0118】
また、照射範囲23の大きさの設定と同時に、照射範囲移動部164は、生検針位置情報算出部136が特定した生検針50の先端部の位置情報と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針移動量算出部156が算出した生検針50の移動量とに基づき、該設定された照射範囲23を生検針50の穿刺方向に沿って移動する。
【0119】
次のステップS12(第2取得ステップ)において、マンモグラフィ装置10は、設定された照射範囲23に基づき、第3撮像(スカウト撮影)を実施する。すなわち、コリメータ駆動制御部168によってコリメータ25の絞りを設定された照射範囲23となるように変更し、この状態でマンモ20に対しスカウト撮影を行う。この結果、例えば、
図7B〜
図7Dに示される第3放射線画像204を取得する。この第3放射線画像204も、ステップS4と同様の処理を介して、表示部148及び表示操作部40に表示される。
【0120】
次のステップS13において、医師又は技師によって、第3放射線画像204に生検針50の先端部が収まっているか否か、すなわち
図7Bに示すような画像204aか、
図7Cに示すような画像204bかを判別する。第3放射線画像204に生検針50の先端部が収まっていない場合はステップS14に進み、収まっている場合はステップS15に進む。
【0121】
ステップS14(照射範囲再調整ステップ)では、照射範囲再調整部162が画像204bに基づき照射範囲23を再設定する。この場合、照射範囲23を生検針50の基端方向に延長(拡大化)するように照射範囲23を再設定すれば、生検針50の先端部が写り込むようになる。このステップS14が終了すると、ステップS12に戻り、照射範囲再調整部162によって設定された照射範囲23に基づき、再度スカウト撮影を実施する。
【0122】
一方、ステップ15では、医師又は技師によって、第3放射線画像204に生検部位48が収まっているか否か、すなわち
図7Bに示すような画像204aか、
図7Dに示すような画像204cかが判別される。第3放射線画像204に生検部位48が収まっていない場合はステップS16に進み、収まっている場合はステップS17に進む。
【0123】
ステップS16(照射範囲再変更ステップ)では、照射範囲再移動部166が画像204cに基づき照射範囲23の位置を変更する。この場合、生検部位48が生検針50の穿刺方向と逆方向に移動したことが想定されるため、照射範囲23を生検針50の穿刺方向に移動するように照射範囲23を再設定すれば、生検部位48が写り込むようになる。このステップS16が終了すると、ステップS12に戻り、照射範囲再移動部166によって設定された照射範囲23に基づき、再度スカウト撮影を実施する。
【0124】
次のステップS17(第2移動ステップ)において、移動機構により生検針保持部54の進入操作を行い、採取部122が生検部位48の下部側に達するように生検針50をマンモ20内に一気に進入させる。
【0125】
次のステップS18(設定ステップ)において、放射線制御部134の照射範囲調整部160が第3放射線画像204を撮像した照射範囲23を縮小し、さらに照射範囲移動部164が照射範囲23の位置を移動(変更)する。この場合、照射範囲調整部160は、第3撮像によって設定された照射範囲23と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針保持部54における進入操作時の生検針50の進出量とに基づき照射範囲23を設定する。また、照射範囲移動部164は、照射範囲調整部160によって設定された照射範囲23と、穿刺方向判定部154が特定した生検針50の穿刺方向と、生検針保持部54における進入操作時の生検針50の進出量とに基づき、該設定された照射範囲23の移動を行う。これにより、
図8Aに示すように、照射範囲23の最適な位置が設定される。
【0126】
次のステップS19(第2取得ステップ)において、マンモグラフィ装置10は、設定された照射範囲23の位置に基づき、第4撮像(スカウト撮影)を実施する。コリメータ駆動制御部168は、照射範囲移動部164からの照射範囲23の移動指示に基づきコリメータ25の駆動を制御し照射範囲23を移動させる。この状態でマンモ20に対しスカウト撮影を行い、例えば、
図8B〜8Dに示されるような第4放射線画像206を取得する。
【0127】
次のステップS20において、医師又は技師によって、第4放射線画像206に採取部122と生検部位48が収まっているか否か、すなわち、
図8Bに示すような画像206aか、
図8Cに示すような画像206bかを判別する。第4放射線画像206に採取部122と生検部位48が収まっていない場合はステップS21に進み、収まっている場合はステップS22に進む。
【0128】
ステップS21では、医師又は技師によって、照射範囲23の拡大又は照射範囲23の移動が選択され、放射線22の照射範囲23が変更される。すなわち、医師又は技師は、照射範囲再調整部162又は照射範囲再移動部166を選択的に動作させ、放射線22の照射範囲23の再設定を実施する。このステップS21が終了すると、ステップS19に戻り、照射範囲再調整部162又は照射範囲再移動部166によって設定された照射範囲23に基づき、第4撮像を再度実施する。
【0129】
次のステップS22において、医師又は技師によって、第4放射線画像206に生検部位48と採取部122が採取可能な位置(生検部位48と採取部122が重なる位置)に移動しているか否か、すなわち、
図8Bに示すような画像206aか、
図8Dに示すような画像206cかを判別する。第4放射線画像206に採取部122が採取可能な位置に移動していない場合は、医師又は技師の操作に基づきステップS3やステップS10等に選択的に戻り、再度同じステップが繰り返される。
【0130】
一方、採取部122が採取可能な位置に移動した状態にあると判別すると、次のステップS23において、生検針50による吸引処理が開始され、生検部位48の組織が採取される。
【0131】
次のステップS24において、スライダ106を駆動し、生検針50を矢印X方向に移動させることにより、生検針50がマンモ20から抜き取られ、Lateral方式のバイオプシが終了する。
【0132】
次のステップS25において、圧迫板38を上昇させ、マンモ20を圧迫状態から解放する。
【0133】
なお、ステップS13、ステップS15、ステップS20、ステップS22における放射線画像(第3放射線画像204、第4放射線画像206)の判別は、医師又は技師が行うだけでなく、マンモグラフィ装置10が行ってもよいことは勿論である。例えば、マンモグラフィ装置10は、第2放射線画像202の生検部位48等の特定箇所を記憶しておき、第3及び第4放射線画像204、206において近似する箇所を認識することで、該生検部位48の位置を特定することができる。また、第3及び第4放射線画像204、206において生検針50が撮像される箇所は、周囲の部分と比較して影が濃くなるため、この影を認識することで、生検針50の位置を特定することができる。
【0134】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10によれば、生検針50をマンモ20に穿刺した状態において放射線画像を取得する場合に、照射範囲調整部160が生検針50をマンモ20に穿刺する前に取得した第2放射線画像202の放射線22の照射範囲23よりも小さい範囲に設定することで、照射範囲23が縮小された放射線22をマンモ20に対して照射することができる。すなわち、生検針50の穿刺状態における放射線22の照射範囲23が縮小されるため、マンモ20が浴びる放射線量を少なくすることができ、被検体18への負担を低減することができる。また、放射線22の照射範囲23が、生検針50の先端部と生検部位48が収まるように設定されるため、生検針50の先端部の位置及び生検部位48の位置を容易に再確認することができる。
【0135】
また、生検針位置情報算出部136が生検針50の先端部の位置情報を特定し、穿刺方向判定部154が生検針50の穿刺方向を特定することで、生検針50の状態(位置及び穿刺方向)を容易に認識することができる。このため、照射範囲調整部160が放射線22の照射範囲23を設定する際に、特定した生検針50の先端部の位置及び穿刺方向によって、該生検針50の先端部を放射線22の照射範囲23に容易に収めることができる。
【0136】
ここで、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10では、マンモ20の生検部位48に対し、生検針50の先端部を所定間隔離間した位置に比較的緩やかに移動させる第1移動制御を実施し、その後、生検針50を一気に進入させる第2移動制御を実施している。そして、第1移動制御後に、生検針50の先端部と生検部位48が収まるように放射線22の照射範囲23を設定する際には、生検針50の先端部が生検針50の近くに位置しているため、該照射範囲23を充分縮小した範囲に設定することができる。これにより、マンモ20が浴びる放射線量が一層少なくなる。
【0137】
また、第2移動制御後は、生検針50の採取部122が生検部位48と重なる位置にあるため、採取部122と生検部位48が収まるように放射線22の照射範囲23を設定した場合、該照射範囲23をさらに縮小した範囲とすることができる。これにより、マンモ20が浴びる放射線量がより一層少なくなる。
【0138】
さらに、マンモグラフィ装置10は、第3撮像や第4撮像において、照射範囲再調整部162が、先に撮像した放射線画像に基づき放射線22の照射範囲23を再設定することで、放射線22の照射範囲23を広げる等の補正を容易に行うことができる。よって、次に放射線画像を取得する際に、照射範囲再調整部162が設定した放射線22の照射範囲23に従って放射線22を照射することで、生検針50の先端部と生検部位48が収まった放射線画像を容易に取得することができる。
【0139】
なお、上述した各説明では、被検体18のマンモ20を圧迫保持する場合について説明した。本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、これらの説明に限定されることはなく、マンモ20を模擬したファントムを検査対象物として圧迫保持することも可能である。このファントムは、医師によるバイオプシのトレーニングに用いられるファントムであって、該ファントム内には、生検部位48の組織を模擬した物質も内蔵されている。
【0140】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。