特許第5807024号(P5807024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5807024
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】蛍光プローブ
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20151021BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   C07F7/10 QCSP
   G01N21/78 C
【請求項の数】4
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2012-558042(P2012-558042)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2012053853
(87)【国際公開番号】WO2012111817
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-33394(P2011-33394)
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】長野 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】花岡 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】小出 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 尭寛
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/111818(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/099218(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/126077(WO,A1)
【文献】 特開2008−115353(JP,A)
【文献】 特開2006−117593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
G01N 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】
(式中、R1下記の式:
【化2】
(式中、R201、R202、R203及びR204はそれぞれ独立にカルボキシ基若しくはその塩、又はアセトキシメチルエステルを示し;R205、R206及びR207はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、又はニトロ基を示し;R208は水素原子である)で表される捕捉基(該捕捉基は-CO-NH-基を介してベンゼン環に結合していている)を示し;R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示し;R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R8は水素原子、アルキルカルボニル基、又はアルキルカルボニルオキシメチル基を示し、Xは珪素原子を示す)で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
R1がカルシウムイオンを捕捉するための捕捉基である請求項1に記載の化合物又はその塩
【請求項3】
請求項1又は2に記載の一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む蛍光プローブ。
【請求項4】
測定対象物質の測定方法であって、下記の工程:(a)請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物又はその塩と測定対象物質とを接触させる工程、及び(b)上記工程(a)で生成した測定対象物質の捕捉後の化合物又はその塩の蛍光強度を測定する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な蛍光団を有する蛍光プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルオレセインは1871年に報告された分子であり、高い水溶性、高い蛍光量子収率を有することからpH指示薬やラベル化色素として広く用いられてきた。また、フルオレセインを母核としたカルシウムプローブが開発されて以来、分子内光誘起電子移動(photoinduced electron transfer: PeT)やスピロ環の開環や閉環などを利用した高感度な蛍光off/on型プローブが数多く提供されてきた。特に、分子内光誘起電子移動を利用したプローブでは、フルオレセインにおけるベンゼン環の酸化電位を考慮してプローブの設計をすることにより、測定対象物質の捕捉前後において蛍光のoff/onを生じさせることができ、また、高感度に測定対象物質を測定することができる。
【0003】
従来、赤色のバイオイメージングを行うことができる蛍光色素としてローダミンを母核とした蛍光プローブが知られており、Rhod-2などのカルシウムプローブなどが分子内光誘起電子移動を利用したプローブとして実用化されている。しかしながら、ローダミンは分子内にアミノ基を有していることから生体内でカチオン性を帯びて特定のオルガネラ、特にミトコンドリアに集積しやすいという問題がある。
【0004】
一方、フルオレセインのキサンテン環の10位の酸素原子の構造修飾に関しては報告がほとんどなく、10位の酸素原子を他の原子に置換した化合物についての光学特性は従来知られていない。ローダミンの基本骨格であるパイロニンY(PY)の酸素原子を珪素原子に置換した化合物(TMDHS)及びこの化合物の蛍光プローブへの応用については既に報告があるが(Best, Qら、Pacifichem 2010, 演題番号2335、2010年12月19日;小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日)、フルオレセインのキサンテン環の10位の酸素原子を珪素原子に置き換えた化合物については未だ報告がなく、そのような化合物の蛍光特性も従来全く知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Best, Qら、Pacifichem 2010, 演題番号2335、2010年12月19日
【非特許文献2】小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は新規な蛍光団を有する蛍光プローブを提供することにある。
より具体的には、フルオレセイン骨格を化学修飾することにより、分子内光誘起電子移動を利用した蛍光off/on型プローブであって、赤色のバイオイメージングを行うことができる新規な蛍光プローブを提供することが本発明の課題である。また、特定のオルガネラに集積せずにサイトゾル中で測定対象物質の挙動を測定することができる蛍光プローブを提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、フルオレセイン骨格におけるキサンテン環の10位の酸素原子を珪素原子に置き換えた化合物のベンゼン環上に測定対象物質を捕捉可能な基(以下、本明細書において「捕捉基」と呼ぶ場合がある)を導入することにより、測定対象物質の捕捉の前後において分子内光誘起電子移動を誘起させて蛍光のoff/onを行うことができること、及びその化合物ではローダミンと同様の蛍光波長領域において蛍光のoff/onを行うことができ、赤色蛍光によるバイオイメージングを行うための蛍光団として利用できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】
(式中、R1はベンゼン環上に存在する1ないし5個の同一又は異なる一価の置換基(ただし該置換基のうちの少なくとも1個は測定対象物質に対する捕捉基として作用する置換基である)を示し;R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示し;R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R8は測定対象物質に対する捕捉基として作用する置換基、水素原子、アルキルカルボニル基、又はアルキルカルボニルオキシメチル基を示しR8は測定対象物質に対する捕捉基として作用する置換基、水素原子、アルキルカルボニル基、又はアルキルカルボニルオキシメチル基を示し、ただしR8が測定対象物質に対する捕捉基である場合には、R1のうちの少なくとも1個が測定対象物質に対する捕捉基である必要はない;Xは珪素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0009】
上記発明の好ましい態様によれば、R1のうち捕捉基がプロトン、金属イオン、低酸素環境、又は活性酸素種を捕捉するための捕捉基である上記の化合物又はその塩;R1のうち捕捉基以外の基が水素原子であるか、又は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルケニル基、炭素数1〜6個のアルキニル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる一価の置換基である上記の化合物又はその塩;Xが珪素原子である上記の化合物又はその塩; R1のうち捕捉基がカルシウムイオンを捕捉するための捕捉基であり、Xが珪素原子である上記の化合物、その塩、又はそのエステル;R1がカルシウムイオンを捕捉するための捕捉基であり、Xが珪素原子である上記の化合物、その塩、又はそのエステル;及びR1がカルシウムイオンを捕捉するための下記式(j-1)又は下記式(R1b)で表される捕捉基であり、Xが珪素原子である上記の化合物、その塩、又はそのエステルが提供される。
【0010】
また、上記発明の好ましい態様によれば、R1のうちの捕捉基は、(1)測定対象物質の捕捉前には、一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように該捕捉基が結合するベンゼン環に実質的に低い酸化電位又はベンゼン環に実質的に高い酸化電位を与えるものであり、かつ(2)測定対象物質の捕捉後には一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように、それらが結合するベンゼン環の酸化電位を実質的に上昇又は低下させるように選択される。また、R1のうちの捕捉基は、(3)測定対象物質の捕捉前には、一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように該捕捉基自身が実質的に低い酸化電位又実質的に高い酸化電位を持つものであり、(4) 測定対象物質の捕捉後には一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように該捕捉基自身の酸化電位を実質的に上昇又は低下させるように選択してもよい。さらに、R1のうちの捕捉基が(5)測定対象物質の捕捉前には、一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように該捕捉基自身が実質的に低い酸化電位又実質的に高い酸化電位を持つ基を持つものであり、(6)測定対象物質の捕捉時に該実質的に低い酸化電位を持つ基又は該実質的に高い酸化電位を持つ基が切断されて離脱して一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選択される。
【0011】
また、上記発明の好ましい態様によれば、R8が活性酸素種を捕捉するための捕捉基である上記の化合物又はその塩;R8が活性酸素種(特にヒドロキシラジカル、次亜塩素酸イオン、パーオキシナイトライト)を捕捉するための捕捉基であり、Xが珪素原子である上記の化合物又はその塩; R8が活性酸素種(特にヒドロキシラジカル、次亜塩素酸イオン、パーオキシナイトライト)を捕捉するためのp−ヒドロキシフェニル基又はp−アミノフェニル基であり、Xが珪素原子である上記の化合物又はその塩が提供される。
【0012】
上記発明の別の好ましい態様によれば、R8の捕捉基が、(7)測定対象物質の捕捉前には、一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように該捕捉基自身が実質的に低い酸化電位を持つ基を持つものであり、(8)測定対象物質の捕捉時に該実質的に低い酸化電位を持つ基が切断されて離脱して一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選択される。
【0013】
さらに、上記発明の好ましい態様によれば、R8が糖加水分解酵素を捕捉するための捕捉基である上記の化合物又はその塩;R8が糖加水分解酵素、(特にガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ)を捕捉するための捕捉基であり、Xが珪素原子である上記の化合物又はその塩; R8が糖加水分解酵素(特にガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ)を捕捉するためのガラクトシル基、グルコシル基、グルクロノシル基であり、Xが珪素原子である上記の化合物又はその塩が提供される。
【0014】
国際公報WO12004005917及び国際公報WO12005024049などを参照してR8が水素原子又は一価の置換基である一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ、一般式(I)で表される化合物のR8が水素原子である一般式(I)で表される化合物がデプロトネートして生成するアニオン体が実質的に高い蛍光性を持つように、酸化電位を目安としてベンゼン環に置換するR1の置換基が選択される。このよう選択されたR1で置換された一般式(I)で表される化合物のR8に糖加水分解酵素の捕捉基を置換させれば、糖加水分解酵素との接触前は実質的に無蛍光性であり、糖加水分解酵素と接触して捕捉基が切断され離脱したあとに一般式(I)(式中、R8が水素原子を示す:該水素原子は生理的な中性領域のpHではデプロトネートし、R8が置換している酸素原子は-O-のアニオン体で存在する)で表される実質的に高い蛍光性の化合物とすることができる。
上記の糖加水分解酵素と同様に他の加水分解酵素、例えば、R8がアルカリフォスファターゼの捕捉基であるリン酸基である上記の化合物又はその塩なども提供される。
【0015】
別の観点からは、本発明により、上記一般式(I)で表される化合物を含む蛍光プローブが提供される。この蛍光プローブは、R1のうちの捕捉基の種類に応じて、例えば、プロトン、金属イオン、低酸素環境、又は活性酸素種などの測定のための蛍光プローブとして用いる
ことができる。金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、又は亜鉛イオンなどを挙げることができ、活性酸素種としては、例えば、一酸化窒素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、及びスーパーオキシドなどを挙げることができる。また、この蛍光プローブは、R8の捕捉基の選択により活性酸素種の測定のための蛍光プローブとして用いることができる。活性酸素種としては、特にヒドロキシラジカル、次亜塩素酸イオン、パーオキシナイトライトを好適な活性酸素種として挙げることができる。さらに、R8の捕捉基の選択により糖加水分解酵素の測定のための蛍光プローブとして用いることもできる。特にガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼを好適な糖加水分解酵素として挙げることができる。
【0016】
また、本発明により、上記一般式(I)で表される化合物を蛍光プローブとして用いる方法;上記一般式(I)で表される化合物の蛍光プローブ製造のための使用;測定対象物質の測定方法であって、下記の工程:(a)上記一般式(I)で表される化合物と測定対象物質とを接触させる工程、及び(b)上記工程(a)の接触後に測定対象物質の捕捉後の化合物の蛍光強度を測定する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩は、測定対象物質の捕捉前には実質的に無蛍光であり、測定対象物質の捕捉後には分子内光誘起電子移動により高強度の赤色蛍光を発する化合物を与えることから、pH、金属イオン、又は活性酸素種などを高感度に測定可能な蛍光プローブとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】2-Me TM(例1)、2,4-DiMe TM(例2、化合物(a))、2,5-DiMe TM(例2、化合物(b))、2-OMe TM(例2、化合物(c))、2-OMe-5-Me TM(例2、化合物(d))、2,5-OMe TM(例2、化合物(e))、それぞれのベンゼン環部分の酸化電位と蛍光量子収率(Φfl)との関係を示した図である。
図2】種々の濃度のカルシウムイオンの存在下でCalcium TokyoMagenta(例3)の蛍光を測定した結果を示した図である。
図3】2-Me TM(図3a)、2-Me Ge-TM(図3b)、及び2-Me DiEtTM(図3c)の吸収及び蛍光スペクトルを示した図である。測定はリン酸バッファー(pH 9)で行い、2-Me TM(図3a)、2-Me Ge-TM(図3b)、及び2-Me DiEtTM(図3c)の蛍光スペクトルはそれぞれ582nm、572nm、及び582nmの励起波長で測定を行った。
図4】2-Me Ge-TM(例5)(1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図である。
図5】2-Me DiEtTM(例6)(1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図である。
図6】CaTM-1(例13)(図6a)及びCaTM-2(例13)(図6b)のCa2+依存的な吸収スペクトルを示した図である。
図7】CaTM-1(例13)(図7a)及びCaTM-2(例13)(図7b)のCa2+依存的な蛍光スペクトル(励起波長:550 nm)を示した図である。
図8】CaTM-2 AM(例14)又はRhod-2 AMを用いてHela細胞においてヒスタミンにより誘起されるカルシウム濃度の変動を測定した結果を示した図である。(図8b)及び(図8c)は(図8d)において▼で示した時点におけるCaTM-2での蛍光イメージを示し、(図8f)及び(図8g)は(図8h) において▼で示した時点におけるRhod-2での蛍光イメージを示す。(図8d)及び(図8h)はそれぞれ(図8a)及び(図8e)において特定された個々の細胞における蛍光変化を示す。スケールバーは30μmを示す。
図9】A549細胞にCaTM-2 AM(例14)(図9a)及びRhod-2 AM(図9b)をロードして生細胞中における局在を蛍光を測定することにより調べた結果を示した図である。図中、(c)〜(e)はミトコンドリア中に局在したRhod-2を示す。Rhod-2 AM (3μM)をMito Tracker Green FM (0.2μM)とともにインキュベートして蛍光によるイメージングを行った。(図9c)はRhod-2によるイメージ、(図9d)はMito Tracker Green FMによるイメージ、(図9e)は重ね合わせたイメージである。スケールバーは10μmを示す。
図10】CFP-核(青)及びYFP-ゴルジ体(黄色)でトランスフェクトされたHela細胞にCaTM-2 AM(例14)をロードして細胞内カルシウムを赤色でイメージングすることにより、3色で色分けされたイメージングを行った結果を示した図である。スケールバーは10μmを示す。
図11】細胞膜密着状態でパッチクランプ法により連続的にカルシウムイオンのイメージングを行った結果(上段)、及び同時に行った蛍光イメージングの結果(下段)を示した図である。
図12】CaTM-2 AM(例14)及びアクリジンオレンジを用いて海馬培養切片中のCA3錘体路細胞層を多色でイメージングした結果を示した図である。(図12a)はCaTM-2 AM(赤)、(図12b)はアクリジンオレンジ(緑)、(図12c)はそれらを重ね合わせたイメージである。(図12d)は(図12a)中で番号を付けた9個のニューロンから生じる自発的活動電位をCaTM-2の蛍光を用いて細胞内カルシウムイオン濃度の変化として10Hzで測定した結果を示す。スケールバーは50μmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中で化合物名を略式記載する場合について説明する。なお、ここでの説明は明細書の記載内容の理解を容易にするためのものであり、例外を排除する意図はなく、又、本明細書中における個別の定義に優先するものではない。
(a)「TokyoMagenta」は、一般式(I)においてR1が水素原子であり、R2及びR3が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R6及びR7が水素原子であり、R8が水素原子であり、Xが珪素原子である化合物を意味しており、この化合物を「TM」と略す場合がある。
(b)一般式(I)においてR1が水素原子であり、R2及びR3が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R6及びR7が水素原子であり、R8が水素原子であり、Xがゲルマニウム原子である化合物を「Ge-TM」と略す場合がある。
【0020】
例えば、「2-Me TokyoMagenta」と略式記載がある場合、「2-Me」は、「TM」のキサンテン環の9位に置換するベンゼン環の2位にR1としてメチル基が置換していることを示す。
また、「2-OMe-5-Me TokyoMagenta」と略式記載がある場合、「2-OMe-5-Me」は、「TM」のキサンテン環の9位に置換するベンゼン環の2位にR1としてメトキシ基が置換し、5位にR1としてメチル基が置換していることを示す。
上記のように「TM」を母核とした場合の略式記載例を説明した。「Ge-TM」が母核である場合には、「TM」が「Ge-TM」に置き換わるだけで、その他は同様である。
【0021】
本明細書において、「アルキル基」又はアルキル部分を含む置換基(例えばアルコキシ基など)のアルキル部分は、特に言及しない場合には例えば炭素数1〜6個、好ましくは炭素数1〜4個、さらに好ましくは炭素数1〜3個程度の直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。より具体的には、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピルメチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。本明細書において「ハロゲン原子」という場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよく、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子である。
【0022】
一般式(I)で表される化合物において、R1はベンゼン環上に存在する1ないし5個の同一又は異なる一価の置換基を示すが、該置換基のうちの少なくとも1個は測定対象物質に対する捕捉基として作用する置換基である。捕捉基として作用する置換基は、単独で捕捉基として作用する置換基であってもよく、あるいはベンゼン環上の2個以上の置換基の組み合わせにより、好ましくはベンゼン環上において隣接する2個の置換基の組み合わせにより捕捉基として作用する置換基であってもよい。このような2個の置換基が結合して環状構造を形成していてもよく、測定対象物質との反応後に該環状構造が開環構造に変化するものであってもよい。あるいは隣接する2個の置換基が測定対象物質との反応後にこれらの2個の置換基とともに環状構造を形成するものであってもよい。捕捉基として作用するためにベンゼン環が捕捉基の一部を形成していてもよい。さらに、単独で捕捉基として作用する置換基がベンゼン環上に2個以上結合していてもよく、異なる測定対象物質に対してそれぞれ捕捉基として作用する異なる2種以上の置換基がベンゼン環上に存在していてもよい。ベンゼン環上において捕捉基として作用する1個又は2個以上の置換基の置換位置は特に限定されず、任意の位置に置換することができる。R1が測定対象物質に対する捕捉基のみを示し、ベンゼン環上に捕捉基以外の他の置換基が存在しない場合もある。ただし、R8が測定対象物質に対する捕捉基である場合には、R1のうちの少なくとも1個が測定対象物質に対する捕捉基である必要はない。従って、R8が測定対象物質に対する捕捉基である場合にはベンゼン環上に置換するR1が測定対象物質に対する捕捉基とはならない場合がある。またR1が結合するベンゼン環とR1との組み合わの構造が捕捉基として機能する場合もあるが、このような態様も本発明の範囲に包含される。
【0023】
測定対象物質の種類は特に限定されず、例えば、金属イオン(例えば、ナトリウムイオンやリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなど)、非金属イオン(炭酸イオンや水酸イオンなど)、活性酸素種(例えば、ヒドロキシルラジカル、パーオキシナイトライト、次亜塩素酸、過酸化水素など)、又は酵素などのいずれであってもよい。
【0024】
測定対象物質を特異的に捕捉する捕捉基は種々提案されており、測定対象物質の種類に応じて適宜選択可能である。例えば、特開平10-226688号公報、国際公開WO 99/51586、特開2000-239272号公報、国際公開WO 01/62755などのほか、モレキュラープローブス社のカタログ(Molecular Probes Handbook 11th Edition)の第10章(酵素基質と分析)、第17章シグナル伝達プローブ)、第18章(一酸化窒素を含む活性酸素種プローブ)、第19章(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、及び他の金属イオンインディケーター)、第20章(pHインディケーター)、及び第21章(ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、及び他のイオン)に記載された捕捉基を用いることもできる。もっとも、捕捉基は上記刊行物に記載されたものに限定されることはない。
【0025】
本明細書において「捕捉」という用語は、捕捉基が実質的に化学変化を起こさずに金属イオンなどをキレート化などにより捕捉する場合のほか、測定対象物質との化学反応により化学構造が変化する場合、酵素との接触によって捕捉基が切断されて脱離する場合を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0026】
捕捉基としては、例えば、下記の(A)から(J)で表される捕捉基が挙げられるが、本発明において使用可能な捕捉基はこれらに限定されることはない。
【0027】
(A)亜鉛イオンの捕捉基
(A-1)
【化2】
(式中、R101、R102、R103、及びR104はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、2-ピリジルメチル基、2-ピリジルエチル基、2-メチル-6 -ピリジルメチル基、又は2-メチル-6-ピリジルエチル基を示すが、R101、R102、R103、及びR104からなる群から選ばれる基のうち少なくとも1つは2-ピリジルメチル基、2-ピリジルエチル基、2-メチル-6-ピリジルメチル基、及び2-メチル-6-ピリジルエチル基からなる群から選ばれる基を示し;R105は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる一価の置換基を示し;m及びnはそれぞれ独立に0又は1を示すが、m及びnが同時に0となることはない)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は特許4402191号公報及びJ. Am. Chem. Soc., 127, pp.10197-10204, 2005に開示されている。
【0028】
(A-2)
【化3】
(式中、R111、R112及びR133はそれぞれ独立にカルボキシ基及びその塩を示し、R114は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基はJ. Am. Chem. Soc., 124, pp.776-778, 2002に開示されている。
【0029】
(A-3)
【化4】
(式中、R115は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は米国特許第5648270号明細書に記載されている。
【0030】
(A-4)
【化5】
(式中、R121及びR122はそれぞれ独立にカルボキシ基及びその塩を示し;R123はC1-6アルキル基を示し;R124はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる水素原子を含む一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基はCell Calcium, 31, pp.245-251, 2002に開示されている。
【0031】
(A-5)
【化6】
(式中、R125は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる水素原子を含む一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は特開2000-239272号公報に開示されている。
【0032】
(B)一酸化窒素の捕捉基
【化7】
(式中、R131及びR132はベンゼン環上の隣接した位置に置換する置換基を示し、それぞれ独立にアミノ基又はC1-6アルキルモノ置換アミノ基を示すが、R131及びR132が同時にC1-6アルキルモノ置換アミノ基を示すことはなく;R133は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は特許第3200024号公報、米国特許第6441197号明細書、米国特許第675623号明細書、及び特許第3967943号公報に開示されている。
【0033】
(C)活性酸素種の捕捉基
【化8】
(式中、R141はアミノ基又はヒドロキシ基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は国際公開WO2001064664号公報に開示されている。
【0034】
(D)低酸素環境の捕捉基
(D-1)
【化9】
[式中、R151及びR152はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1ないし6個のアルキル基を示し、R151及びR152は互いに結合して炭素数2ないし6個のアルキレン基となってもよく;Y1は炭素数1ないし6個のアルキレン基を示し;X1は単結合、-CO-、又は-SO2-を示し;X2は-O-Y2-N(R154)-(式中、Y2は炭素数1ないし6個のアルキレン基を示し、R154は水素原子又は炭素数1ないし6個のアルキル基を示す)を示し;rは0又は1を示し;p-C6H4-はp-フェニレン基を示し;Arはアリールジイル基を示し;R153はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を示す]で表される捕捉基。
上記の捕捉基は国際公開WO2010026743に開示されている。
【0035】
(D-2)
【化10】
上記の捕捉基は特開2009-275006号公報に開示されている。
【0036】
(E)過酸化水素の捕捉基
【化11】
(式中、R161はベンゼン環上に存在する1個又は2個以上の電子吸引性置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は国際公開WO2009110487号公報に開示されている。
【0037】
(F)一重項酸素の捕捉基
【化12】
(式中、R171及びR172それぞれ独立にC1-4アルキル基又はアリール基を示し;R173は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は特許第4373608号公報及び国際公開WO2002018362に開示されている。
【0038】
(G)pH環境の捕捉基
【化13】
(式中、R181、R182、R183はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、若しくは置換基を有していてもよいアリール基であるか、又はR181とR182とが結合してC1-3アルキレン基を示すか、若しくはR181とR183とが結合してC1-3アルキレン基を示し;Aは置換基を有していてもよいC1-3アルキレン基を示し;R184は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基は国際公開WO2008099914号公報及び国際公開WO2008059910号公報に開示されている。
【0039】
(H)マグネシウムイオンの捕捉基
【化14】
(式中、R191、 R192及びR193はそれぞれ独立にカルボキシ基及びその塩を示し;R194は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基はAmerican Journal of Physiology, 256, C540-548, 1989に開示されている。
【0040】
(I)ナトリウムイオン及びカリウムイオンの捕捉基
【化15】
(式中、R195は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)で表される捕捉基。
上記の捕捉基はBioorg. Med. Chem. Lett., 15, pp.1851-1855, 2005に開示されている。
【0041】
(J)カルシウムイオンの捕捉基
【化16】
R1のうちの捕捉基又はR1が結合するベンゼン環とR1との組み合わせで形成される捕捉基が式(j-1)で表される捕捉基である場合(式中、R201、R202、R203及びR204はそれぞれ独立にカルボキシ基及びその塩を示し;R205、R206及びR207はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子及び臭素原子)、C1-6アルキル基、又はニトロ基を示し;R208は水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の同一又は異なる一価の置換基を示す)。これらの捕捉基は、例えば-CO-NH-などのスペーサーを介してベンゼン環に結合していてもよい。
【0042】
カルシウム捕捉基を導入した本発明の好ましい化合物としては、以下の一般式(IJ)において、
(1)R1aがメチル基若しくはエチル基などのC1-6アルキル基、又はカルボキシル基であり、R2、R3、R6、及びR7がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は塩素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立にメチル基、エチル基などのC1-6アルキル基であり、R8が水素原子であり、R201、R202、R203、及びR204がカルボキシル基であり、R205及びR206がそれぞれ独立に水素原子、メチル基などのC1-6アルキル基、ニトロ基、又はフッ素原子である化合物;
(2)R1aがメチル基若しくはエチル基などのC1-6アルキル基、又はカルボキシル基であり、R2、R3、R6、及びR7がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は塩素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立にメチル基、エチル基などのC1-6アルキル基であり、R8が水素原子、アセチル基などのアルカノイル基、又はアセトキシメチル基などのアルカノイルオキシアルキル基であり、R201、R202、R203、及びR204がアセトキシメチルオキシカルボニル基などのアルカノイルオキシアルキルオキシカルボニル基であり、R205及びR206がそれぞれ独立に水素原子、メチル基などのC1-6アルキル基、ニトロ基、又はフッ素原子である化合物;及び
(3)上記(2)の化合物においてR1aがカルボキシル基であり、X-キサンテン環の9位に結合してラクトンを形成しており、X-キサンテン環の3位のオキソ基が水酸基、アセトキシ基などのアルカノイルオキシ基、又はアセトキシメチルオキシ基などのアルカノイルオキシアルキルオキシ基となった化合物
(4) R1が結合するベンゼン環とR1との組み合わせで形成される捕捉基が式(j-1)で表される捕捉基となる化合物
などを挙げることができるが、本発明の化合物はこれらの化合物に限定されることはない。上記(4)の態様のように式(I)で表される化合物のベンゼン環が捕捉基の一部となる場合も本発明の範囲に包含されることに留意すべきである。
【0043】
【化17】
【0044】
上記のカルシウム捕捉基はモレキュラープローブス社のカタログ(Molecular Probes Handbook 11th Edition)の第19章(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、及び他の金属イオンインディケーター)及びJ. Biol.Chem., 260, pp.3440-3450, 1985に開示されている。
【0045】
上記の(A)から(J)で表される捕捉基は、R1として上記一般式(I)で表される化合物のベンゼン環に直接置換するほか、適当なスペーサーを介して上記一般式(I)で表される化合物のベンゼン環に置換してもよい。例えば、スペーサーとしては上記の式(R1b)に示したように-CO-NH-などを用いることができる。また、末端がベンゼン環(多環のものも含む)である捕捉基、例えば(A)、(B)、(F)、(G)、(H)、(I)、及び(J)などは、該末端のベンゼン環が一般式(I)で表される化合物のR1が置換するベンゼン環を含んだものであってもよい。
【0046】
上記の(A)から(J)で表される捕捉基は、本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩に上記刊行物に開示された方法やその他の方上記特許公報及び参照文献の開示のすべてを参照により本明細書の開示に含める。
【0047】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明の化合物の蛍光on/offの特性は分子内光誘起電子移動(PeT)により達成されるものである(PeTについては、J. Am. Chem. Soc., 125, 8666-8671, 2003、J. Am. Chem. Soc., 127, 4888-4894, 2005、J. Am. Chem. Soc., 128, 10640-10641, 2006、J. Am. Chem. Soc., 126, 14079-14085, 2004、YAKUGAKU ZASSHI, 126, 901-913, 2006に詳細に開示されている)。PeTとは蛍光消光の1つの方法であり、励起光照射により生成する1重項励起蛍光団が蛍光を発して基底状態に戻る速度よりも速く近隣の電子供与部位(PeTドナー)から電子移動が起き、蛍光消光が起こる現象(a-PeT)、及び励起光照射により生成する1重項励起蛍光団が蛍光を発して基底状態に戻る速度よりも速く近隣の電子受容部位(PeTアクセプター)へ電子移動が起き、蛍光消光が起こる現象(d-PeT)である。なお、R1が結合するベンゼン環や捕捉基の酸化電位の情報は、例えば該ベンゼン環や捕捉基の酸化電位を量子化学的手法に従って計算することにより容易に入手することができる。該ベンゼン環や捕捉基の酸化電位が低くなることは該ベンゼン環や捕捉基の電子密度が上昇することを意味しており、これはHOMO軌道エネルギーが高くなることに対応している。例えば、該ベンゼン環部位や捕捉基部位のHOMOエネルギーを密度汎関数法(B3LYP/6-31G(d))により求めることができる。R1として測定対象物質に対する捕捉基を含む場合には、測定対象物質の捕捉後にR1が結合するベンゼン環部位や捕捉基部位自身の酸化電位が変化するものを選択するか、捕捉基部位自身が測定対象物質の捕捉前には一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になる酸化電位を有する基を持ち、かつ該基が測定対象物質の捕捉時に切断されて離脱するものを選択する必要がある。
【0048】
一般式(I)で表される本発明の化合物において、捕捉基として作用するR1、又は捕捉基以外のR1が存在する場合には該R1と捕捉基であるR1との組み合わせは、捕捉基として作用するR1が、R1が結合するベンゼン環の酸化電位を変化させる捕捉基である場合には、例えば、(1)測定対象物質の捕捉前には一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、R1が結合するベンゼン環の酸化電位が1.57V以下、好ましくは1.26V以下、になるように、かつ(2)測定対象物質の捕捉後には、一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように、R1が結合するベンゼン環の酸化電位が1.75V以上、好ましくは1.98V以上、になる組み合わせとして選択される。また、一般式(I)で表される本発明の化合物において、捕捉基として作用するR1が測定対象物質の捕捉後にR1が結合するベンゼン環の酸化電位に実質的に影響を与えない捕捉基であり、該捕捉基自身の酸化電位の変化によって測定対象物質の捕捉を検出する場合には、R1が結合するベンゼン環の酸化電位が蛍光のon/offに影響を与えないように、すなわち捕捉基捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように、例えば、R1が結合するベンゼン環の酸化電位が1.75V以上、好ましくは1.98V以上、になる組み合わせとして選択される。
【0049】
一般式(I)で表される本発明の化合物において、捕捉基として作用するR1が、一般式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように該捕捉基自身が実質的に低い酸化電位を有する基である場合には、例えば、(1)該実質的に低い酸化電位を持つ基の酸化電位が1.57V以下、好ましくは1.26V以下、になるように、かつ(2)測定対象物質の捕捉によって、一般式(I)で表される化合物に由来する捕捉後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように、該実質的に低い酸化電位を持つ基の酸化電位が1.75V以上、好ましくは1.98V以上、に上昇する組み合わせとして選択される。
【0050】
一般式(I)で表される本発明の化合物において、R8が捕捉基として作用する場合も上記理論は適用される。
【0051】
また、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer:以下、「FRET」と言う場合もある。)を利用した測定対象物を測定するための種々の蛍光プローブも提案されている。本明細書において、FRETとは、ある2つの蛍光化合物が距離的に近い位置(おおむね100Å以内)に存在するとき、その2つの蛍光化合物のうちの片方(ドナー)の蛍光スペクトルと、もう片方(アクセプター)の励起スペクトルが重なりを持つ場合、ドナーの励起波長のエネルギ−を当てると、本来観察されるはずのドナーの蛍光が減衰し、代わりにアクセプターの蛍光が観察される現象をいう。
【0052】
例えば、ドナーとアクセプターを繋ぐリンカーが酵素特異的に切断されてFRETがon/offして測定対象の酵素活性を測定するプローブとして、特許第3692488号公報に開示されているCaspase活性測を定用する蛍光プローブ(2,7-ジクロロフルオレセインがドナーでテトラメチルローダミンがアクセプター)、J. Am. Chem. Soc., 124, pp.1653-1657, 2002に開示されているホスホジエステラーゼ活性を測定する蛍光プローブ(クマリンがドナーでフルオレセインがアクセプター)、Science, 279, pp.84-88, 1998に開示されているβ-ラクタマーゼ活性を測定する蛍光プローブ(クマリンがドナーでフルオレセインがアクセプター)などが提案されている。また、アクセプター蛍光色素の波長を変化させてFRETがon/offして測定対象の酵素活性を測定するプローブとしてChem. Eur. J., 9, pp.1479-1485, 2003に開示されているチロシンホスファターゼ活性を測定する蛍光プローブ(クマリンがドナーでフルオレセインがアクセプター)も提案されている。
【0053】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩は、上記のようなFRETを利用した蛍光プローブのドナー又はアクセプター用の蛍光化合物としても利用することができる。例えば、本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩をドナーとして用いる場合には、一般式(I)で表される化合物又はその塩の蛍光波長から580nmから700nm付近に吸収を持つ蛍光化合物がアクセプターとして適しており、これらの蛍光化合物としてSiR650(小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日)、Cy5及びCy5.5などを挙げることができる。また、本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩をアクセプターとして用いる場合には、一般式(I)で表される化合物又はその塩の吸収波長から500nmから600nm付近に蛍光を持つ蛍光化合物がドナーとして適しており、Fluorescein、BODIPY、Rhodamine 123、Rhodamine greenなどがドナーとして適している。
【0054】
また、特願2011-009577には、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩が、非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)との最大吸収波長が大きく乖離しており、フルオレセイン誘導体の場合に比べて約2倍以上の波長変化を与えることから、この性質を利用することにより、活性酸素種、又は各種酵素などを高感度に測定可能な蛍光プローブを製造するための母核化合物として有用であることが示されている。よって、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩の上記の性質と本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩におけるR1とを組み合わせれば、複数の測定対象物質を捕捉した場合にのみ蛍光特性が大きく変化する蛍光プローブとすることができる。例えば、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩に、一般式(I)で表される化合物又はその塩におけるR8にβ-ガラクトシダーゼによって切断される1価の基を導入し、R1にカルシウムイオンを捕捉するための基を導入して580nm付近の励起光で測定を行えば、β-ガラクトシダーゼ、カルシウムイオンがそれぞれ単独で存在する場合には発蛍光せず、β-ガラクトシダーゼとカルシウムイオンが同時存在する場合にのみ発蛍光する蛍光プローブとして使用できる。
【0055】
上記の蛍光化合物と本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩を結合させるために、本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩に置換する置換基に結合のための基、例えば、アミノ基、カルボキシ基及びその活性エステル基(スクシミジルエステルなど)、ホルミル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、マレイミド基、イソチアシアネート基及びイソシアネート基などを導入することができる。
【0056】
一般式(I)で表される化合物において、ベンゼン環上に存在するR1が示す置換基のうち、捕捉基として作用する以外の置換基もベンゼン環上の任意の位置に置換することができる。捕捉基として作用する以外の置換基がベンゼン環上に存在しないことが好ましい場合もある。捕捉基として作用する以外の置換基がベンゼン環上に存在する場合には、該置換基が1ないし3個程度存在していることが好ましい。捕捉基として作用する以外の置換基がベンゼン環上に存在する場合には、該置換基はベンゼン環上の任意の位置に置換することができるが、例えば、ベンゼン環上に該置換基が1個存在する場合には、該置換基はXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましい。該置換基が2個以上ベンゼン環上に存在する場合には、それらのうちの1個の置換基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましい。
【0057】
R1が示す一価の置換基のうち、捕捉基として作用する以外の置換基の種類は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルケニル基、炭素数1〜6個のアルキニル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれることが好ましい。これらの一価の置換基はさらに任意の置換基を1個又は2個以上有していてもよい。例えば、R1が示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR1が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、又はアミノアルキル基などであってもよい。また、例えばR1が示すアミノ基には1個又は2個のアルキル基が存在していてもよく、R1が示すアミノ基はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。さらに、R1が示すアルコキシ基が置換基を有する場合としては、例えば、カルボキシ置換アルコキシ基又はアルコキシカルボニル置換アルコキシ基などが挙げられ、より具体的には4-カルボキシブトキシ基又は4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基などを挙げることができる。
【0058】
R1が示す一価の置換基のうち、捕捉基として作用する以外の置換基がベンゼン環上に2個存在する場合には、それらの2個の置換基は例えば炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択されることが好ましく、炭素数1〜6個のアルキル基及び炭素数1〜6個のアルコキシ基からなる群から選ばれることがさらに好ましい。この場合において、1個の炭素数1〜6個のアルキル基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましく、アルコキシ基(例えば無置換アルコキシ基、モノカルボキシ基置換アルコキシ基、モノアルコキシカルボニル置換アルコキシ基、又は4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基など)がベンゼン環上の他の位置に存在することが好ましい。
【0059】
R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。R2又はR3がアルキル基を示す場合には、該アルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR2又はR3が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく、R2及びR3がともに水素原子である場合、又はR2及びR3がともに塩素原子又はフッ素原子である場合がより好ましい。
【0060】
R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示すが、R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜3個のアルキル基であることが好ましく、R4及びR5がともにメチル基であることがより好ましい。R4及びR5が示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR4又はR5が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R4又はR5がアリール基を示す場合には、アリール基は単環の芳香族基又は縮合芳香族基のいずれであってもよく、アリール環は1個又は2個以上の環構成ヘテロ原子(例えば窒素原子、イオウ原子、又は酸素原子など)を含んでいてもよい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。アリール環上には1個又は2個以上の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよい。
【0061】
R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示すが、R2及びR3について説明したものと同様である。
Xは珪素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示すが、珪素原子であることが好ましい。
【0062】
R8は測定対象物質に対する捕捉基として作用する置換基、水素原子、アルキルカルボニル基、又はアルキルカルボニルオキシメチル基を示す。アルキルカルボニル基としては、例えば、炭素原子数1〜13個程度、好ましくは炭素原子数1〜7個程度、さらに好ましくは炭素原子数1〜5個程度のアルキルカルボニル基を用いることができる。アルキルカルボニルオキシメチル基におけるアルキルカルボニル基についても同様である。例えば、アセトキシメチル基などを好ましく用いることができる。一般式(I)で表される化合物においてR8がアルキルカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシメチル基である化合物は、一般式(I)で表される化合物の脂溶性が高まり、細胞膜を通過して細胞内部に取り込まれ易くなるので、細胞内の測定対象物質をバイオイメージング手法により測定する場合にはR8がアルキルカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシメチル基である化合物を好適に使用できる。
【0063】
上記一般式(I)で表される化合物は塩として存在する場合がある。塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらに限定されることはない。
【0064】
一般式(I)で表される本発明の化合物は、置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、一般式(I)又は(II)で表される本発明の化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
【0065】
本発明の一般式(I)で表される化合物又はその塩は測定対象物質の捕捉前には実質的に無蛍光であり、測定対象物質の捕捉後には高強度の赤色蛍光を発する性質を有していることから、測定対象物質の測定のための蛍光プローブとして使用することができる。本明細書において用いられる「測定」という用語は、定量、定性、又は診断などの目的で行われる測定、検査、検出などを含めて、最も広義に解釈しなければならない。
【0066】
本発明の蛍光プローブを用いた測定対象物の測定方法は、一般的には、(a)上記式(I)で表される化合物と測定対象物質とを接触させてR1のうちの捕捉基及び/又はR8の捕捉基により測定対象物質を捕捉させる工程、及び(b)上記工程(a)で生成した化合物(R1のうちの捕捉基に金属イオンがキレート結合した化合物や、測定対象物質の捕捉後に化学構造が変化し、例えば環状構造を形成したり、開環するなどの化学修飾を受けた化合物、及び/又はR8が測定対象物質の補足後に切断されるなどの化学修飾を受けた化合物に相当する)の蛍光を測定する工程を含んでいる。例えば、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに本発明の蛍光プローブ又はその塩を溶解し、細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、測定対象物質との接触の前後における蛍光スペクトルを測定すればよい。
【0067】
測定対象物質を捕捉後の化合物の蛍光の測定は通常の方法で行うことができ、インビトロで蛍光スペクトルを測定する方法や、バイオイメージングの手法を用いてインビボで蛍光スペクトルを測定する方法などを採用することができる。例えば、定量を行う場合には、常法に従って予め検量線を作成しておくことが望ましい。例えば、励起波長として582nm程度、蛍光波長が598nm程度の蛍光を測定することができる。
【0068】
本発明の蛍光プローブは、必要に応じて試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1(参考例)
以下のスキームに従ってベンゼン環上にR1としてメチル基が導入された化合物を合成した。
【0070】
【化18】
【0071】
(1)工程(a)
炭酸カリウム (22.0 g, 159 mmol)をアセトニトリルに懸濁し、3-ブロモアニリン(8.71 mL, 80.0 mmol)、アリルブロミド (23.7 mL, 280 mmol) を加えて80℃で14時間攪拌した。室温まで冷却した後にセライトろ過を行い、酢酸エチルでよく洗った。溶媒を除去した後にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/40 酢酸エチル/ヘキサン) で精製し、3-ブロモ-N,N-ジアリルアニリン (17.1 g, 67.9 mmol, 収率85%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 3.87-3.90 (m, 4H), 5.11-5.15 (m, 2H), 5.17-5.18 (m, 2H), 5.75-5.88 (m, 2H), 6.58 (dd, 1H, J = 2.2, 8.1 Hz), 6.77-6.81 (m. 2H), 7.01 (t, 1H, J = 8.1Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ 52.7, 110.8, 115.0, 116.3, 119.0, 123.3, 130.2, 133.2, 150.0
HRMS (ESI+): Found: 252.0429, calculated 252.0388 for [M+H]+ (+4.1 mmu)
【0072】
(2)工程(b)
3-ブロモ-N,N-ジアリルアニリン (17.1 g, 67.9 mmol) を酢酸 (200 mL) に溶解し、37% ホルムアルデヒド液 (10.2 g, 340 mmol)を加えて80℃で75分間加熱した。室温まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とNaOHで中和した。この混合物をジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン (15.2 g, 29.5 mmol, 収率87%)を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 3.85-3.87 (m, 8H), 3.96 (s, 2H), 5.13-5.19 (m, 8H), 5.76-5.88 (m, 4H), 6.54 (dd, 2H, J = 2.9, 8.8 Hz), 6.81 (d, 2H, J =8.1 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 2.9 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ 39.7, 52.7, 111.7, 116.0, 116.2, 125.5, 126.9, 130.8, 133.5, 148.1
HRMS (ESI+): Found: 517.0654, calculated 517.0677 for [M+H]+ (-2.3 mmu)
【0073】
(3)工程(c)
乾燥させアルゴン置換したフラスコにビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン (8.16 g, 15.8 mmol) と脱水テトラヒドロフラン(THF, 50 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム(45 mL, 45mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でジクロロジメチルシラン (2.9 mL, 30 mmol) を脱水THF 10 mLに溶解してゆっくりと加え、室温に戻して1時間攪拌した。2N 塩酸で反応を停止して炭酸水素ナトリウムで中和した。この混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後に溶媒を除去した。残渣をアセトン (150 mL)に溶解し、0℃に冷却して過マンガン酸カリウム (6.88 g, 43.5 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。ジクロルメタン (200 mL)を加えてろ紙を用いて吸引ろ過した。溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン) で精製してN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントン (2.23 g, 5.20 mmol, 収率33%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 0.41 (s, 6H), 4.02 (d, 8H, J = 5.1 Hz), 5.17-5.23 (m, 8H), 5.82-5.94 (m, 4H), 6.80-6.83 (m, 4H), 8.34 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ -1.1, 52.8, 113.5, 114.8, 116.7, 130.0, 131.7, 133.1, 140.5, 150.2, 185.1
HRMS (ESI+): Found:429.2347, calculated 429.2362 for [M+H]+ (-1.5 mmu)
【0074】
(4)工程(d)
乾燥させアルゴン置換したフラスコにPd(PPh3)4(35.0 mg, 0.0303 mmol) と1,3-ジメチルバルビツール酸 (196 mg, 1.08 mmol) を加えた。この混合物にN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントン(99.2 mg, 0.231 mmol) をジクロルメタン 10 mL に溶解して加え、64℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和炭酸ナトリウム水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/3 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ジアミノ-Si-キサントン(48.8 mg, 0.182 mmol, 収率79%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CD3OD): δ0.40 (s, 6H), 6.76 (dd, 2H, J = 2.6, 8.4 Hz), 6.88 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.13 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CD3OD): δ -1.3, 116.6, 118.4, 131.0, 132.8, 142.6, 153.0, 187.5
HRMS (ESI+Tof): m/z Found: 269.1108, calculated 269.1110 for [M+H]+ (-0.2 mmu)
【0075】
(5)工程(e)
ジアミノ-Si-キサントン (48.8 mg, 0.182 mmol) を混合溶媒 (メタノール/6 N 硫酸, 4/5) 45 mLに溶解した。0℃に冷却後、亜硝酸ナトリウム(84.6 mg, 1.22 mmol) を水 2mLに溶解してゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。この混合物を沸騰した1 N 硫酸 (50 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後に氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し、食塩水でよく洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/20 メタノール/ジクロロメタン)で精製し、ジヒドロキシ-Si-キサントン (32.9mg, 0.122 mmol, 収率67%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CD3OD): δ0.45 (s, 6H), 6.95 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.07 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.26 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CD3OD): δ-1.5, 118.4, 120.0, 133.3, 133.8, 143.1, 162.2, 187.6
HRMS (ESI-Tof): Found 269.0674, calculated 269.0634 for [M-H]- (+4.0 mmu)
【0076】
(6)工程(f)
ジヒドロキシ-Si-キサントン (32.9 mg, 0.122 mmol), イミダゾール (85.5 mg, 1.26 mmol) をジクロルメタン 20 mLに溶解し、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(185mg, 1.23 mmol)をジクロルメタン 5 mLに溶解してゆっくりと加え、室温で14時間攪拌した。この混合物に水を加えてジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/20 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン(52.8 mg, 0.106 mmol, 収率84%)を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 0.26 (s, 12H), 0.46 (s, 6H), 1.01 (s, 18H), 6.98 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.04 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 8.37 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ -4.3, -1.6, 18.3, 25.6, 121.8, 123.7, 132.3, 134.5, 141.1, 158.7, 186.0
HRMS (ESI+): Found: 499.2480, calculated 499.2520 for [M+H]+ (-4.0 mmu)
【0077】
(7)工程(g):2-Me TokyoMagentaの合成
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモトルエン (200 μL, 1.6 mmol) と脱水THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (1.0 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン (9.4 mg, 0.019 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を10 mL加えて20分間攪拌した。この混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TokyoMagenta (4.5 mg, 0.013 mmol, 収率69%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, D2O): δ 0.46 (s 6H), 2.01 (s, 3H), 6.33 (dd, 2H, J = 2.9, 9.5 Hz), 7.01-7.09 (m, 5H), 7.27-7.46 (m, 3H)
HRMS (ESI-): Found:,343.1120 calculated 343.1154 for [M-H]- (-3.41mmu)
【0078】
例2(参考例)
例1の工程(6)で得られた3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントンを用いて以下の方法により化合物(a)〜(e)を合成した。
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコに、ブロモベンゼン誘導体(1.0 mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF, 5 mL)を加えた。−78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (0.5 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン(0.015−0.019 mmol)を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を5 mL加えて20分間攪拌した。反応混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を除去した後、残渣をHPLC にて精製して目的物を得た。
【0079】
(a)2,4-ジメチルTokyoMagenta(化合物(a))
【化19】
収率 : 93 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.37 (s, 6H), 1.83 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 6.21 (dd, 2H, J = 1.5, 9.5 Hz), 6.75 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 6.89-6.94 (m, 5H), 7.07 (s, 1H).
【0080】
(b)2,5-ジメチルTokyoMagenta(化合物(b))
【化20】
収率 : 96 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.38, (s, 3H), 0.40, (s, 3H), 1.82 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 6.19 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.73 (s, 1H), 6.89-7.11 (m, 6H).
【0081】
(c)2-メトキシ TokyoMagenta(化合物(c))
【化21】
収率 : 88 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.40, (s, 3H), 0.44, (s, 3H), 3. 65 (s, 3H), 6.29 (dd, 2H, J = 2.9, 9.5 Hz), 6.96-7.18 (m, 7H), 7.50 (dd, 1H, J = 7.0, 7.0 Hz).
【0082】
(d)2-メトキシ-5-メチル TokyoMagenta(化合物(d))
【化22】
収率 : 99 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.40, (s, 3H), 0.42, (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 3.58 (s, 3H), 6.23 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.75 (s, 1H), 6.95-7.03 (m, 5H), 7.21 (d, 1H, J = 8.1 Hz).
【0083】
(e)2,5-ジメトキシ TokyoMagenta(化合物(e))
【化23】
収率 : 90 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.39, (s, 3H), 0.41, (s, 3H), 3.53 (s, 3H), 3.58 (s, 3H), 6.22 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.54 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 6.89-7.02 (m, 6H).
【0084】
上記の例1で合成した2-Me TokyoMagenta と上記の(a)〜(e)の2,4-DiMe TokyoMagenta、2,5-DiMe TokyoMagenta、2-OMe TokyoMagenta、2-OMe-5-Me TokyoMagenta、2,5-OMe TokyoMagentaそれぞれの蛍光量子収率とベンゼン環部位の酸化電位との関係を調べた。結果を図1及び表1に示す。なお、蛍光量子収率はエタノール中のローダミンB(Φfl=0.65)を蛍光標準の対照としてリン酸ナトリウム緩衝液(pH9)で測定し、酸化電位は飽和カルメロ電極(SCE)を対照に記載した。図1中のプロットは右から順に2,4-DiMe TokyoMagenta、2,5-DiMe TokyoMagenta、2-OMe TokyoMagenta、2-OMe-5-Me TokyoMagenta、2,5-OMe TokyoMagentaの結果を示している。表1及び図1に示した結果から明らかなように、各化合物の蛍光量子収率はベンゼン環部位の酸化電位に依存して変化した。この結果から、a)酸化電位が1.26V以下で無蛍光であり、1,57Vでも蛍光量子収率が0.14と小さい。b)酸化電位が1.98V以上で蛍光量子収率は最大値で一定し(約0.4)、1.75Vでも蛍光量子収率が0.31と大きい。以上のことから、ベンゼン環部位の酸化電位を参考にPeT型の蛍光off/on型の蛍光プローブが設計できることが示された。
【0085】
【表1】
蛍光量子収率はエタノール中のローダミンB(Φfl=0.65)を蛍光標準の対照としてリン酸ナトリウム緩衝液(pH9)で測定した。
【0086】
例3:カルシウム蛍光プローブの合成
【化24】
【0087】
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコに、ブロモベンゼン誘導体(192 mg, 0.242 mmol) と脱水THF (20 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム(1 mmol)を加えて15分間攪拌した。そのままの温度で3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン(69.9 mg, 0.140 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を5 mL加えて20分間攪拌した。反応混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を除去した後、トリフルオロ酢酸(1 mL)を加え一晩攪拌した。この反応混合物をHPLCにて精製し、Calcium TokyoMagenta (6.7 mg, 0.0090 mmol, 6 %)を得た。
【0088】
【化25】
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.43 (s, 6H), 2.07 (s, 3H), 3.59 (s, 4H), 3.86(s, 4H), 4.29 (s, 4H), 6.33 (dd, 2H,J = 2.6, 9.2 Hz), 6.60-6.89 (m, 6H), 6.96 (d, 2H, J = 2.2 Hz) 7.22 (d, 2H, J = 9.5 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 743.2276, calculated 743.2272 for [M+H]+ (+0.3 mmu).
【0089】
例4:カルシウム蛍光プローブの評価
例3で得られたCalcium TokyoMagentaを用いて種々の濃度のカルシウムイオンの存在下で蛍光を測定した。100 mMの塩化カリウム及び10 mM EGTAを含む30 mM MOPS緩衝液(pH 7.2)に溶解したCalcium TokyoMagenta(1μM)に遊離カルシウムイオンを種々の濃度(0, 0.017, 0.038, 0.065, 0.100, 0.150, 0.225, 0.351, 0.602, 1.35, 35μM)で添加して22℃において蛍光スペクトルを測定した(励起波長: 550 nm)。カルシウムイオン濃度が増加するにつれて蛍光強度の増強が認められた(図2)。Kd値は0.25 μMであった。
【0090】
例5
以下の方法により本発明の化合物を製造するための母核化合物として利用可能なゲルマニウム含有化合物を合成した。
【化26】
【0091】
(a) N,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-Ge-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン(6.16 g, 11.9 mmol) と脱水THF (40 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム(BuLi) (34 mL, 34 mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でジクロロジメチルゲルマン (2.62 mL, 22.7 mmol) を脱水THF 15 mLに溶解したものをゆっくりと加え、室温に戻し1時間攪拌した。2N 塩酸で反応を止め、炭酸水素ナトリウムで中和した。これをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後に溶媒を除去した。これをアセトン (120 mL)に溶解し、0℃に冷却した。この混合物に過マンガン酸カリウム (5.20 g, 32.9 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。この混合物にジクロルメタン (200 mL)を加えて、その溶液をろ紙を用いて吸引ろ過した。そして溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ジクロルメタン) で精製することにより目的物(1.29 g, 2.72 mmol, 収率 23%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.54 (s, 6H), 4.00-4.02 (m, 8H) 5.17-5.23 (m, 8H), 5.81-5.94 (m, 4H), 6.72 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 6.78 (dd, 2H, J = 2.6, 9.2 Hz), 8.36 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-1.8, 52.3, 112.6, 114.4, 116.2, 129.6, 131.7, 132.7, 142.8, 149.8, 184.5
LRMS (ESI+): m/z Found 475, calculated 475 for [M+H]+
【0092】
(b) 3,6-ジアミノ-Ge-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (330 mg, 0.285 mmol) と 1,3-ジメチルバルビツール酸(1.41 g, 9.04 mmol) を加えた。この混合物に、N,N,N',N'-テトラアリルジアミノ-Ge-キサントン (1.00 g, 2.11 mmol) をジクロルメタン 50 mL に溶解して加え、35℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和炭酸ナトリウム水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/3 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジアミノ-Ge-キサントン混合物 (760 mg, 定量的) を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.55 (s, 6H), 6.73-6.76 (m, 4H), 8.33 (d, 2H, J = 9.5 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ-1.9, 116.1, 118.3, 130.9, 133.2, 145.2, 152.9, 187.3
LRMS (ESI+): m/z Found: 315, calculated 315 for [M+H]+
【0093】
(c)3,6-ジヒドロキシ-Ge-キサントン
3,6-ジアミノ-Ge-キサントン混合物 (760 mg) を3/4, メタノール / 6 N 硫酸 (45 mL)に溶解した。0℃に冷却後、亜硝酸ナトリウム(838 mg, 12.1 mmol) を水 5mLに溶解してゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。それを沸騰した1 N 硫酸 (70 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し食塩水でよく洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジヒドロキシ-Ge-キサントン(478 mg, 1.52 mmol, 収率 56% 2 ステップ) を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.58 (s, 6H), 6.90 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.0 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.25 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ-2.0, 117.7, 120.0, 133.7, 133.8, 145.6, 162.0, 187.7
LRMS (ESI+): Found 317, calculated 317 for [M+H]+
【0094】
(d)3,6-diTBDMSO-Ge-キサントン
ジヒドロキシ-Ge-キサントン(478 mg, 1.52 mmol)、イミダゾール(1.77 g, 26.0 mmol) をジクロルメタン 150 mLに溶解し、TBDMSCl (tert-ブチルジメチルシリルクロリド:3.70 g, 24.5 mmol)をジクロルメタン 50mLに溶解してゆっくりと加えて室温で14時間攪拌した。この混合物に水を加えてジクロルメタンで抽出し食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル, 1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-diTBDMSO-Ge-キサントン (702 mg, 1.29 mmol, 収率 85%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.25 (s, 12H), 0.59 (s, 6H), 1.01 (s, 18H), 6.92-6.98 (d, 4H, m), 8.36 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-4.4, -1.6, 18.2, 25.8, 121.1, 123.7, 132.5, 134.6, 143.6, 158.6, 185.9
LRMS (ESI+): m/z Found 545, calculated 545 for [M+H]+
【0095】
(e)母核化合物の合成(一般的手法)
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコにブロモベンゼン誘導体 (1.0 mmol) と脱水THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (0.5 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-X-キサントン (0.015-0.020 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して一般式(I)(式中、R8が水素原子を示す)で表される化合物を得た。
【0096】
(f)2-Me Ge-TM
上記(e)の方法に従って目的物を得た(収率 99%)
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ 0.42 (s, 6H), 1.80 (s, 3H), 6.11 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.79-6.86 (m, 5H), 7.06-7.26 (m, 4H)
HRMS (ESI+): m/z Found 391.0755, calculated 391.0753 for [M+H]+ (0.2 mmu)
【0097】
例6
【化27】
【0098】
(a)N,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコにビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン(1.65 g, 3.20 mmol) と脱水THF (20 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (10 mL, 10 mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でジクロロジエチルシラン (1.04 mL, 7.02 mmol) を脱水THF 5 mLに溶解してゆっくり加え、室温に戻し1時間攪拌した。2N 塩酸で反応を止め、炭酸水素ナトリウムで中和した。これをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後に溶媒を除去した。これをアセトン(50 mL)に溶解し、0℃に冷却した。この混合物に過マンガン酸カリウム (1.49 g, 9.43 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。この混合物にジクロルメタン(50 mL)を加えて、その溶液をセライトろ過した。そして溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル, 10/1 ヘキサン/酢酸エチル) で精製することによりN,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン (419 mg, 0.917 mmol, 収率 29%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.91 (s, 10H), 4.01-4.02 (m, 8H) 5.17-5.22 (m, 8H), 5.82-5.94 (m, 4H), 6.79-6.84 (m, 4H), 8.35 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ5.56, 7.48, 52.7, 113.3, 115.0, 116.5, 130.9, 131.6, 133.1, 138.3, 149.9, 185.3
HRMS (ESI+): m/z Found 457.2661, calculated 457.2675 for [M+H]+ (-1.5 mmu)
【0099】
(b)3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、Pd(PPh3)4(204 mg, 0.176 mmol) と1,3-ジメチルバルビツール酸(1.04 g, 6.67 mmol) を加えた。この混合物に、N,N,N',N'-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン (419 mg, 0.917 mmo) をジクロルメタン 30 mL に溶解して加え、35℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和炭酸ナトリウム水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/5 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン (236 mg, 0.796 mmol, 収率 87%) を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.83-0.95 (m, 10H), 4.10 (s, 4H), 6.76-6.81 (m, 4H), 8.33 (d, 2H, J = 7.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ5.37, 7.38, 116.2, 117.5, 132.0, 132.9, 138.8, 148.9, 185.5
HRMS (ESI+): m/z Found 297.1462, calculated 297.1423 for [M+H]+ (3.9 mmu)
【0100】
(c)3,6-ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン
3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン混合物(236 mg, 0.796 mmol) を3/4 メタノール/6N 硫酸 (35 mL)に溶解した。0℃に冷却後、亜硝酸ナトリウム(315 mg, 4.56 mmol) を水 3 mLに溶解したてゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。それを沸騰した1 N 硫酸(50 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後に氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し、食塩水でよく洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン(74.3 mg, 0.249 mmol, 収率 31%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.83-1.04 (m, 10H), 6.99 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 8.31 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ6.07, 7.56, 118.4, 120.0, 133.4, 135.0, 140.9, 162.0, 187.9
HRMS (ESI+): m/z Found 321.0964, calculated 321.0923 for [M+Na]+ (4.1 mmu)
【0101】
(d)3,6-diTBDMSO-ジエチルSi-キサントン
ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン(74.3 mg, 0.249 mmol)、イミダゾール(326 mg, 4.79 mmol)をジクロルメタン 20 mLに溶解し、TBDMSCl (715 mg, 4.74 mmol)をジクロルメタン 5 mLに溶解してゆっくり加えて室温で14時間攪拌した。この混合物に水を加えてジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-diTBDMSO-ジエチルSi-キサントン (93.2 mg, 0.177 mmol, 収率 71%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.26 (s, 12H), 0.85-1.02 (m, 28H), 6.98-7.05 (m, 4H), 8.39 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-4.14, 5.46, 7.45, 18.5, 25.8, 122.1, 123.9, 132.5, 135.8, 139.2, 158.7, 186.3
HRMS (ESI+): m/z Found 527.2869, calculated 527.2833 for [M+H]+ (3.6 mmu)
【0102】
(e)2-Me DiEtTM
例5の工程(e)の方法に従って目的物を得た(収率 94%)。
1H NMR (300 MHz, D2O, CD3OD): δ0.78-1.00 (m, 10H), 1.94 (s, 3H), 8.26 (dd, 2H, J = 2.6, 9.2 Hz) 6.88-6.98 (m, 5H), 7.24-7.39 (m, 3H)
HRMS (ESI+): m/z Found 373.1621, calculated 373.1624 for [M+H]+ (-0.3 mmu)
【0103】
2-Me TM、2-Me Ge-TM、及び2-Me DiEtTMの光学特性を下記の表2に示す。表中、aはリン酸バッファー(pH 9)で測定し、bについては1% DMSOを含む0.1M リン酸バッファー中で測定した。
【表2】
【0104】
例7: 2-COOH TMの合成
【化28】
【0105】
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(800 mg, 3.11 mmol) と脱水 THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-ブチルリチウム(2.0 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-Si-キサントン (40.0 mg, 0.0802 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で30分間攪拌後、2N 塩酸を10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にトリフルオロ酢酸(TFA、3 mL)を加えて室温で1時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH TM (13.6 mg, 0.0358 mmol, 収率 45%)を得た。
【0106】
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3): δ 0.56 (s, 3H), 0.64 (s, 3H), 6.76 (dd, 2H J = 2.9, 8.8 Hz), 6.83 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.23 (d, 2H J = 2.9 Hz), 7.38 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.67 (td, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz), 7.80 (td, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz), 7.94 (dd, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -1.4, 0.2, 91.1, 117.6, 121.1, 125.5, 126.3, 127.0, 129.3, 130.1, 135.1, 136.7, 138.2, 155.3, 157.7, 170.4
HRMS (ESI+): m/z Found 375.1018 , calculated 375.1053 for [M+H]+ (-3.5 mmu)
【0107】
例8
【化29】
【0108】
(a)4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン
3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(81.1 mg, 0.300 mmol)をメタノール(5 mL) に溶解し、この混合物に次亜塩素酸ナトリウムを100 mMになるように溶かした 0.1 N NaOH 4 mLをゆっくりと加え室温で1時間攪拌した。反応液に2 N 塩酸を加えてpH 2とした後に酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(83.8 mg, 0.247 mmol, 収率 82 %)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.80 (s, 6H), 7.11 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.27 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD): δ -1.6, 119.0, 127.0, 132.0, 133.8, 141.4, 158.4, 186.0
HRMS (ESI+): m/z Found 339.0053, calculated 339.0011 for [M+H]+ (4.2 mmu)
【0109】
(b)4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン
4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(69.0 mg, 0.203 mmol)、イミダゾール(54.5 mg, 0.801 mmol)をジクロルメタン(10 mL)に溶解し、TBDMSCl(121 mg, 0.803 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(109 mg, 0.193 mmol, 収率 95%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.30 (s, 12H), 0.81 (s, 6H), 1.06 (s, 18H), 7.06 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.35 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ -4.3, -2.0, 18.4, 25.6, 121.5, 130.6, 131.0, 134.2, 140.5, 155.1, 184.9
HRMS (ESI+): m/z Found 567.1731, calculated 567.1740 for [M+H]+(-0.9mmu)
【0110】
(c)2-Me DCTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモトルエン(17.1 mg, 0.100 mmol)と脱水THF (2 mL) を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (0.10 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(11.3 mg, 0.0200 mmol) を脱水THF 2 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を2 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me DCTM (8.2 mg, 0.020 mmol, 収率 99%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD): δ 0.87 (s, 3H), 0.87 (s,3H), 2.04 (s, 3H), 6.57 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 7.10 (d, 2H, J = 6.6 Hz), 7.32-7.47 (m, 3H)
HRMS (ESI+): m/z Found 413.0526, calculated 413.0531 for [M+H]+ (-0.5mmu)
【0111】
(d)2-COOH DCTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(129 mg, 0.502 mmol)と脱水 THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-ブチルリチウム (0.30 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(11.3 mg, 0.0200 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にTFA (5 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH DCTM (5.7 mg, 0.013 mmol, 収率 64%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.83 (s, 3H), 0.98 (s, 3H), 6.85 (d, 2H J = 8.8 Hz), 6.89 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 6.98 (d, 1H J = 7.8 Hz), 7.51 (td, 1H, J = 1.0, 7.6 Hz), 7.60 (td, 1H, J = 1.0, 7.6 Hz), 7.90 (d, 1H, J = 7.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -0.2, 0.5, 90.0, 119.8, 123.6, 124.3, 126.4, 127.1, 127.8, 129.9, 135.1, 136.2, 136.7, 153.6, 158.3, 171.2
HRMS (ESI+): m/z Found 443.0241, calculated 443.0273 for [M+H]+ (-3.2 mmu)
【0112】
(e)4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン
3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン (13.5 mg, 0.050 mmol)をアセトニトリル(3 mL)に溶解し、この混合物に Selectfluor(登録商標, 35.4 mg, 0.1 mmol)を加え、80℃で一晩加熱還流を行った後、HPLC で精製して4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(4.1 mg, 0.013 mmol, 収率 27 %)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.62-0.63 (m, 6H), 7.12 (m, 2H), 8.13 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
HRMS (ESI+): m/z, Found 329.0393, calculated 329.0422 for [M + Na]+ (-2.9 mmu)
【0113】
(f)4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン
4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(3.1 mg, 0.010 mmol)、イミダゾール(6.8 mg, 0.10 mmol)をジクロルメタン(2 mL)に溶解し、TBDMSCl(15.1 mg, 0.10 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン)で精製することにより、4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(4.7 mg, 0.088 mmol, 収率 88%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.25 (s, 12H), 0.64 (s, 6H), 1.02 (s, 18H), 7.09 (t, 2H, J = 8.8 Hz), 8.20 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 535.2380, calculated 535.2332 for [M + H]+ (4.8 mmu)
【0114】
(g)2-Me DFTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモトルエン(85.5 mg, 0.500 mmol)と脱水THF (3 mL) を加えた。 -78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (0.050 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(5.4 mg, 0.010 mmol)を脱水THF 3 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を2 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me DFTM (3.8 mg, 0.010 mmol, 収率定量的)を得た。
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ 0.60-0.64 (m, 6H), 1.94 (s, 3H), 6.42 (t, 2H, J = 9.5 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.95 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.22 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 7.32 (t, 1H, J = 7.3 Hz), 7.44 (d, 1H, J = 7.3 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 381.11145, calculated 381.1122 for [M + H]+ (2.3 mmu)
【0115】
(h)2-COOH DFTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(51 mg, 0.20 mmol)と脱水 THF (3 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-ブチルリチウム(0.30 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(5.4 mg, 0.010 mmol) を脱水THF 3 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にTFA (3 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH DFTM (2.2 mg, 0.054 mmol, 収率 54%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD): δ 0.68 (s, 3H), 0.79 (s, 3H), 6.66 (d, 2H J = 8.8 Hz), 6.87 (t, 2H, J = 9.2 Hz), 7.13 (d, 1H J = 7.3 Hz), 7.57-7.68 (m, 2H), 7.92 (d, 1H, J = 8.1 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 411.0902 , calculated 411.0864 for [M+H]+ (3.8 mmu)
【0116】
例9
【化30】
【0117】
(a)4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン
3,6-ジヒドロキシキサントン (45.6 mg, 0.200 mmol) をメタノール (5 mL) に溶解し、そこに次亜塩素酸ナトリウムを10 mMになるように溶かした 0.1 N NaOH 45 mLをゆっくりと加え室温で一晩攪拌した。反応液に2 N 塩酸を加えてpH 2とした後に酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 2/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン (57.3 mg, 0.193 mmol, 収率 96 %)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 7.02 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.01 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD): δ 109.2, 114.7, 116.0, 126.4, 154.9, 161.2, 176.7
HRMS (ESI+): m/z Found 318.9527, calculated 318.9541 for [M+Na]+ (-1.4 mmu)
【0118】
(b)4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-キサントン
4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン(44.6 mg, 0.150 mmol)、イミダゾール (40.8 mg, 0.600 mmol) をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、TBDMSCl (90.4 mg, 0.600 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-キサントン (68.2 mg, 0.130 mmol, 収率 87%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.31 (s, 12H), 1.07 (s, 18H), 6.95 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.12 (d, 2H, J= 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ -4.2, 18.4, 25.6, 113.8, 116.7, 117.1, 125.2, 153.5, 157.6, 175.2
HRMS (ESI+): m/z Found 525.1495, calculated 525.1451 for [M+H]+(4.4 mmu)
【0119】
2-COOH TM、2-Me DCTM、2-COOH DCTM、2-Me DFTM、及び2-COOH DFTMの光学特性を下記の表3に示す。測定は1% DMSOを含む0.1M リン酸バッファー(pH 9)中で行った。pKaはリン酸バッファー(pH 9)中での吸収から単相性又は二相性の曲線フィッチングにより求めた。量子収率は0.1M リン酸バッファー(pH 9)においける2-Me TokyoMagentaの量子収率(0.42)を標準として求めた。
【0120】
【表3】
【0121】
例10
【化31】
【0122】
2-Me TM (10.6 mg, 0.0308 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン (DIEA、17.4 μL, 0.0999 mmol)をアセトニトリル(5 mL)に溶解しブロモメチル酢酸エステル(9.8μL, 0.10 mmol)をゆっくり加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMAM (8.9 mg, 0.021 mmol, 収率 69%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.49 (s, 3H), 0.51 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 5.79 (s, 2H), 6.31 (dd, 1H, J = 9.5, 2.2 Hz), 6.89-6.99 (m, 3H), 7.00 (dd, 1H, J = 9.5, 2.2 Hz), 7.09 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.30-7.40 (m, 4H)
HRMS (ESI+): m/z Found 417.1536, calculated 417.1522 for [M + H]+ (1.4 mmu)
【0123】
例11
【化32】
【0124】
(a)2-Me-4-COOH TM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに4-ブロモ-3-メチル安息香酸tert-ブチル(1.08 g, 3.98 mmol) と脱水 THF (20 mL)を加えた。 -78℃に冷却後、1 M sec-ブチルリチウム (4.0 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-Si-キサントン (200 mg, 0.403 mmol) を脱水THF 10 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N 塩酸を20 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣に TFA (20 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロルメタン) で精製することにより2-Me-4-COOH TM (148 mg, 0.381 mmol, 収率 96 %)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3COCD3): δ 0.51 (s, 3H), 0.53 (s,3H), 2.14 (s, 3H), 6.50 (dd, 2H, J = 2.4, 9.8 Hz), 6.84 (d, 2H, J = 9.8 Hz), 7.11 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.31 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 8.03 (dd, 1H, J = 1.0, 7.8 Hz), 8.05 (s, 1H)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -1.5, -1.3, 19.5, 123.0, 128.0, 130.1, 130.5, 131.4, 132.1, 137.5, 139.2, 145.0, 145.1, 145.3, 156.4, 167.4, 172.2
HRMS (ESI+): m/z Found 389.1209, calculated 389.1209 for [M+H]+ (0.0 mmu)
【0125】
(b)2-Me TMCOOAM
2-Me-4-COOH TM (1.9 mg, 0.0049 mmol)、DIEA (20 mg, 0.15 mmol)をアセトニトリル(1 mL)に溶解しブロモメチル酢酸エステル(25 mg, 0.16 mmol)をゆっくり加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMCOOAM (1.3 mg, 0.0024 mmol, 収率 50%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3CN): δ 0.49-0.52 (m, 6H), 2.04 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 5.78 (s, 2H), 5.97 (s, 2H), 6.12 (dd, 1H, J = 10.3, 2.2 Hz), 6.77 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.82 (d, 1H, J = 2.2 Hz), 6.85 (d, 1H, J = 10.3 Hz), 6.92 (dd, 1H, J = 8.8, 2.9 Hz), 7.28 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.41 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 7.99 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.05 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 533.1596, calculated 533.1632 for [M + H]+ (-3.6 mmu)
【0126】
例12
本発明の化合物を製造するための母核化合物として利用可能な化合物として、ベンゼン環に親水性官能基を導入した化合物を以下のように合成した。
(a)2-Me TMIDA
【化33】
【0127】
2-Me-4-COOH TM(77.6 mg, 0.200 mmol)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N',-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(HATU:114 mg, 0.300 mmol)、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール 1水和物(HOBt・H2O:45.9 mg, 0.300 mmol)、ジ-tert-ブチルイミノジアセテート (490 mg, 2.00 mmol)、DIEA (258 mg, 2.00 mmol) を DMF (20 mL) に溶解し室温で3時間攪拌した。酢酸エチル(50 mL)を加え、2N 塩酸で洗い、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロロメタン)で精製した。トリフルオロ酢酸(10 mL)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TMIDA (58.8 mg, 0.117 mmol, 収率 59%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3): δ 0.50 (s, 3H), 0.51 (s, 3H), 2.09 (s, 3H), 4.32 (s, 2H), 4.37 (s, 2H), 6.48 (dd, 2H, J = 9.5, 2.2 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 7.24 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.42 (dd, 1H, J = 7.3, 1.5 Hz), 7.45 (d, 1H, J = 1.5 Hz)
13C-NMR (75 MHz, CD3COCD3): δ -1.6, -1.3, 19.5, 48.5, 52.4, 123.0, 125.1, 129.5, 130.0, 130.3, 130.7, 136.4, 137.5, 139.4, 142.2, 145.2, 156.7, 170.7, 171.3, 172.1
HRMS (ESI+): m/z Found 504.1471, calculated 504.1479 for [M + H]+ (-0.8 mmu)
【0128】
(b)2-Me TMIDAAM
【化34】
【0129】
2-Me TMIDA (5.0 mg, 0.0099 mmol)、DIEA (3.5 μL, 0.020 mmol) をアセトニトリル(1 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(3.0 μL, 0.31 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。DIEA (3.5 μL, 0.020 mmol) とブロモメチルアセテート(3.0μL, 0.31 mmol)をゆっくりと加え、室温でさらに一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMIDAAM (1.1 mg, 0.0015 mmol, 収率 15%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3CN): δ 0.49-0.52 (m, 6H), 2.01 (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.09 (s,3H), 4.28-4.31 (m, 4H), 5.73 (s, 2H), 5.77 (s, 2H), 5.79 (s, 2H), 6.14 (d, 1H, J = 10.3, 2.2 Hz), 6.81-6.98 (m, 4H), 7.19 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.33 (d, 1H, J = 8.1 Hz),7.38-7.43 (m, 2H); HRMS (ESI+): m/z Found 720.2120, calculated 720.2112 for [M+H]+ (0.8 mmu).
【0130】
(c)2-Me TMIDAIDA
【化35】
【0131】
2-Me TMIDA(25.2 mg, 0.0500 mmol)、HATU (190 mg, 0.500 mmol)、HOBt・H2O (77 mg, 0.50 mmol)、ジ-tert-ブチルイミノジアセテート(245 mg, 1.00 mmol)、DIEA (129 mg, 1.00 mmol) を DMF (5 mL) に溶解し室温で8時間攪拌した。ジクロロメタン(50 mL)を加え、2N 塩酸で洗い、食塩水で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロロメタン) で精製した。トリフルオロ酢酸(10 mL)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TMIDAIDA (5.2 mg, 0.0070 mmol, 収率 14%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD + NaOD): δ 0.45 (s, 3H), 0.46 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 3.80-4.00 (m, 8H), 4.49-4.55 (m, 4H), 6.29 (dd, 2H J = 9.5, 2.9 Hz), 6.86 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.89 (d, 1H J = 2.9 Hz), 7.19 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.54 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.58 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 734.1985, calculated 734.2017 for [M+H]+ (-3.2 mmu)
【0132】
(d)2-Me TMIDAIDAAM
【化36】
【0133】
2-Me TMIDAIDA (2.7 mg, 0.0037 mmol)、DIEA (3.6 μL, 0.021 mmol) をアセトニトリル(3 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(2.0μL, 0.020 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。DIEA (1.8 μL, 0.010 mmol) とブロモメチルアセテート(1.0 μL, 0.010 mmol)をさらに加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLCで反応中間体であるテトラAMエステル体を精製した。得られた中間体(2.1 mg)、DIEA (3.6μL, 0.020 mmol) をアセトニトリル(2 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(1.0μL, 0.010 mmol)をゆっくりと加え、室温で二晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製し、2-Me TMIDAIDAAM (0.8 mg, 0.0007 mmol, 収率20%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 0.38-0.43 (m, 6H), 1.96-2.04 (m, 18H), 3.98 (s, 2H), 4.12 (s, 2H), 4.17 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 4.29 (s, 2H), 4.34 (s, 2H), 5.59 (s, 2H), 5.64 (s, 2H), 5.67 (s, 2H), 5.69 (s, 2H), 5.73 (s, 2H), 6.09 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 6.72 (d, 1H, J = 2.0 Hz)6.82-6.90 (m, 3H), 7.09 (dd, 1H, J = 7.8, 2.0 Hz), 7.22 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 7.30 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.36 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 1094.3043, calculated 1094.3074 for [M+H]+ (-3.1 mmu)
【0134】
例13
カルシウムプローブCaTM-1及びCaTM-2を下記のスキームにより合成した。
【化37】
【0135】
(1) CaTM-1
特表2009-541779に記載の方法などを参照して合成した5-アミノBAPTA テトラメチルエステル (64.5 mg, 0.118 mmol)、HATU (154 mg, 0.405 mmol)、HOBt・H2O (84.0 mg, 0.549 mmol)をDMF (5mL)に溶解し、2-Me-4-COOH TM (48.9 mg, 0.126 mmol)をDMF3 mLに溶解して加えた。反応混合物をアルゴン下で一晩撹拌し、0.5 N 塩酸 (8 mL)を加えたのちジクロロメタンで抽出して食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、2N NaOH (2mL)とメタノール (2 mL)を加えて3時間撹拌した。2N 塩酸で中和し、HPLCで精製してCaTM-1(20.0 mg, 0.0232 mmol, 収率 20% )を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3COCD3): δ 0.51-0.53 (m, 6H), 2.14 (s, 3H), 4.14-4.15 (m, 8H), 4.47-4.48 (m, 4H), 6.46 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 6.81 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.89-7.13 (m, 7H), 7.30 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 7.41 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.74 (s, 1H), 7.98-8.03 (m, 2H)
HRMS (ESI+): m/z Found 862.2682, calculated 862.2643 for [M+H]+ (+3.9 mmu).
【0136】
(2) CaTM-2
5-アミノBAPTA テトラメチルエステル (66.7 mg, 0.122 mmol)、HATU (160 mg, 0.421mmol)、HOBt・H2O (84.2 mg, 0.550 mmol)をDMF (5mL)に溶解し、2-Me-4-COOH DCTM (11.9 mg, 0.0260 mmol)をDMF3 mLに溶解して加えた。反応混合物をアルゴン下で一晩撹拌し、0.5 N 塩酸 (8 mL)を加えたのちジクロロメタンで抽出して食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を除去した後、2N NaOH (2mL)とメタノール (4mL)を加えて2時間撹拌した。2N 塩酸で中和し、HPLCで精製してCaTM-2 (13.6 mg, 0.0146 mmol, 収率 56%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3COCD3) δ 0.88 (s, 6H), 2.14 (s, 3H), 4.11 (s, 3H), 4.48 (s, 3H), 6.66-7.13 (m, 9H), 7.31 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.43 (dd, 1H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.72 (s, 1H, J = 2.2 Hz), 7.99-8.04 (m, 2H)
HRMS (ESI+): m/z Found 952.1654, calculated 952.1683 for [M+Na]+ (-3.0 mmu)
【0137】
例14
(1) 5-アミノBAPTAテトラアセトキシメチルエステル
【化38】
【0138】
(a)5-ニトロBAPTAテトラアセトキシメチルエステル
乾燥させアルゴン置換したフラスコに5-nitroBAPTA(5'-ニトロ-l,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸:Cell Calcium, 10, pp.491-498, 1989に記載の方法により製造したもの, 49.3mg, 0.0946 mmol)及びアセトニトリル(5 mL)を加えた。この溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA) (129 mg, 1.00 mmol)のアセトニトリル(2 mL)溶液及びブロモメチルアセテート(106 mg, 0.700 mmol)のアセトニトリル溶液(1 mL)を加えた。室温で6時間撹拌した後、酢酸(2mL)を用いて溶液を酸性にし、水を加えてHPLCで精製することにより5-ニトロBAPTAテトラアセトキシメチルエステル(38.6 mg, 0.0477 mmol, 収率 50%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3) δ 2.08 (s, 6H), 2.09 (s, 6H), 4.19 (s, 4H), 4.31-4.38 (m, 8H), 5.59 (s, 4H), 5.66 (s, 4H), 6.72 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.87-6.98 (m, 4H), 7.77 (d, 1H, J = 2.2 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 2.2, 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ 20.6, 53.3, 53.5, 66.9, 67.8, 79.2, 79.5, 108.2, 114.1, 116.5, 118.2, 120.3, 112.1, 123.2, 139.0, 141.5, 144.7, 148.9, 150.5, 169.2, 169.4, 169.4, 170.0
HRMS (ESI+): m/z Found 832.1981, calculated 832.2025 for [M+Na]+ (-4.3 mmu)
【0139】
(b)5-アミノBAPTAテトラアセトキシメチルエステル
5-ニトロBAPTAテトラアセトキシメチルエステル(38.6 mg, 0.0477 mmol)を酢酸エチル(10 mL)に溶解し、Pd/C (触媒量) 加えた。水素雰囲気下にて3時間撹拌した後、メンブレンフィルターを用いてろ過し、溶媒を留去して5-アミノBAPTAテトラアセトキシメチルエステル(32.0 mg, 0.0410 mmol, 収率 86%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3) δ 2.07 (s, 6H), 2.08 (s, 6H), 4.10 (s, 4H), 4.21 (s, 4H), 4.29 (s, 4H), 5.64 (s, 4H), 5.66 (s, 4H), 6.22 (d, 1H, J = 2.2, 8.1 Hz), 6.31 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 6.81-6.94 (m, 5H)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ 20.6, 53.4, 53.9, 67.2, 67.3, 79.1, 79.3, 102.1, 107.8, 113.7, 119.8, 121.6, 122.9, 123.0, 130.5, 138.7, 143.4, 150.6, 152.5, 169.5, 170.2, 170.3
HRMS (ESI+): m/z Found m/z Found 802.2243, calculated 802.2283 for [M+Na]+ (-4.0 mmu).
【0140】
(2) CaTM-2 AM
【化39】
【0141】
5-アミノBAPTAテトラアセトキシメチルエステル(32.0 mg, 0.0410 mmol)、HATU (84.0 mg, 0.221 mmol)、HOBt・H2O (39.8 mg, 0.260 mmol)をDMF (3mL)に溶解し、2-Me-4-COOH DCTM (10.9 mg, 0.0239 mmol)をDMF3 mLに溶解して加えた。反応混合物をアルゴン下で一晩撹拌し、酢酸 (1 mL)を加えたのちHPLCで精製してCaTM-2 AM (2.8 mg, 0.0023 mmol, 収率 10%).を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3COCD3) δ 0.86 (s, 6H), 2.01-2.10 (m, 15H), 4.16 (s, 8H), 4.35 (s, 4H), 5.61 (s, 4H), 5.63 (s, 4H), 6.53-8.14 (m, 14H)
HRMS (ESI+): m/z Found 1240.2526, calculated 1240.2529 for [M+Na]+ (-0.3 mmu)
【0142】
例15:カルシウム蛍光プローブの評価
例13及び例14で製造した蛍光プローブの評価を行った。100 mM 塩化カリウム及び10 mM エチレングリコールテトラ酢酸(EGTA)を含む30 mM 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MPOS)バッファー(pH.7.2)中で種々の濃度のフリーCa2+イオン(0, 0.017, 0.038, 0.065, 0.100, 0.150, 0.225, 0.351, 0.602, 1.35, 39 μM)の存在下において22℃でCaTM-1(a)及びCaTM-2(b)のCa2+依存的な吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。結果をそれぞれ図6及び図7に示す。また、光物理化学的特性を下記の表4に示す。CaTM-1(a)及びCaTM-2(b)は共にCa2+イオン濃度によって吸収スペクトルは変化を受けないものの、蛍光強度はCa2+イオン濃度に伴って上昇していることから、試料中のカルシウムイオンを蛍光を用いて測定するための蛍光プローブとして機能することが確かめられた。
【0143】
【表4】
【0144】
CaTM-2 AM又はRhod-2 AMを用いてHela細胞においてヒスタミンにより誘起されるカルシウム濃度の変動を測定した。それぞれ3μMのCaTM-2 AM (a-d)又はRhod-2 AM (e-h)をHBSS中でロードしたHela細胞にヒスタミン(1μM)で刺激した。結果を図8に示す。また、A549細胞にCaTM-2 AM(a)及びRhod-2 AM(b)をロードし生細胞中における局在を蛍光を測定することにより調べた。結果を図9に示す。図9の(b)、(c)、(d)及び(e)よりRhod-2(Rhod-2 AMが細胞内に取り込まれてエステラーゼよって加水分解を受けて生成する)はミトコンドリアに選択的に集積するMitoTrakerと細胞内で同様の分布を示すことから、ミトコンドリアに集積しているのに対し、図9の(a)よりCaTM-2(CaTM-2 AMが細胞内に取り込まれてエステラーゼよって加水分解を受けて生成する)は細胞質内に均一に分布していることが分かる。このことからCaTM-2 AMは細胞質のカルシウム濃度を測定するための蛍光プローブとして適していることが示された。また、図8の(a-d)に示すようにCaTM-2はヒスタミン刺激によって生じるカルシウム振動をRhod-2(図8の(e-h))に比べシャープに検出していることから、カルシウムイオンを測定するための蛍光プローブとして優れた性能を有していることが示された。
【0145】
また、CFP-核(青)及びYFP-ゴルジ体(黄色)でトランスフェクトされたHela細胞にCaTM-2 AMをロードして細胞内カルシウムを赤色でイメージングすることにより、3色で色分けされたイメージング結果が得られ(図10)、蛍光波長の異なる3種の蛍光プローブを利用した同時イメージングが可能であることが示された。図11には細胞膜密着状態でパッチクランプ法により連続的にカルシウムイオンのイメージングを行った結果を示す。細胞内でのカルシウムイオンの一過性変化によりニューロン性活動電位が生じる様子がCaTM-2を用いた蛍光法で感度よく観察された。
【0146】
さらに、CaTM-2 AM 及びアクリジンオレンジを用いて海馬培養切片中のCA3錘体路細胞層を多色でイメージングした結果を図12に示す。図(a)はCaTM-2 AM (赤)、図(b)はアクリジンオレンジ(緑)、図(c)はそれらを重ね合わせたイメージである。(d)は図(a)中で番号を付けた9個のニューロンから生じる自発的活動電位をCaTM-2の蛍光を用いて細胞内カルシウムイオン濃度の変化として10Hzで測定した結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩は、測定対象物質の捕捉前には実質的に無蛍光であり、測定対象物質の捕捉後には分子内光誘起電子移動により高強度の赤色蛍光を発する化合物を与えることから、pH、金属イオン、又は活性酸素種などを高感度に測定可能な蛍光プローブとして有用である。
図11
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図12