(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状の剛性リングと、該剛性リングに接着された弾性膜と、前記剛性リングに対して上下方向に移動可能に結合され、前記弾性膜と前記剛性リングとともに第1の密閉空間部を形成する中板とを具備し、前記弾性膜の下面部にワークの裏面を保持し、該ワークの表面を定盤上に貼り付けられた研磨布に摺接させて研磨する研磨ヘッドにおいて、さらに、前記第1の密閉空間部に封入された非圧縮性の流体と、前記中板の上下方向の位置を調整する中板位置調整手段と、前記中板の上下方向の移動の上限位置及び下限位置をそれぞれ制限するためのストッパーを具備し、前記中板位置調整手段で前記中板の上下方向の位置を調整することによって前記弾性膜の下面部の形状を調整できるものであり、前記中板と、該中板の上方に配置される研磨ヘッド本体と、該研磨ヘッド本体の下端と接する前記剛性リングの上部とで形成される第2の密閉空間部を有し、前記中板位置調整手段は前記第2の密閉空間部内の圧力を制御することによって前記中板の上下方向の位置を調整するものであることを特徴とする研磨ヘッド。
前記弾性膜の下面部の周辺部に前記剛性リングと同心状に設けられ、前記ワークのエッジ部を保持する環状のテンプレートを具備するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨ヘッド。
前記剛性リングの外側に同心状に設けられ、前記ワークのエッジ部を保持する樹脂製リングを具備するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨ヘッド。
ワークの表面を研磨する際に使用する研磨装置であって、定盤上に貼り付けられた研磨布と、該研磨布上に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構と、前記ワークを保持するための研磨ヘッドとして、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の研磨ヘッドを具備するものであることを特徴とする研磨装置。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、それに用いられている半導体ウェーハの平面度の要求は益々厳しいものとなっている。また、半導体チップの収率を上げるためにウェーハのエッジ近傍の領域までの平坦性が要求されている。
半導体ウェーハの形状は最終の鏡面研磨加工によって決定されている。特に直径300mmのシリコンウェーハでは厳しい平坦度の仕様を満足するために両面研磨での一次研磨を行い、その後に表面のキズや面粗さの改善のために片面での表面二次及び仕上げ研磨を行っている。
【0003】
片面の表面二次及び仕上げ研磨では両面一次研磨で作られた平坦度を維持あるいは改善するとともに表面側にキズ等の欠陥の無い完全鏡面に仕上げることが要求されている。
一般的な片面研磨装置は、例えば
図13に示すように、研磨布102が貼り付けられた定盤103と、研磨剤供給機構104と、研磨ヘッド101等から構成されている。このような研磨装置110では、研磨ヘッド101でワークWを保持し、研磨剤供給機構104から研磨布102上に研磨剤105を供給するとともに、定盤103と研磨ヘッド101をそれぞれ回転させてワークWの表面を研磨布102に摺接させることにより研磨を行う。
【0004】
ワークを研磨ヘッドに保持する方法としては、平坦なワーク保持盤にワックス等の接着剤を介してワークを貼り付ける方法等がある。また、
図14に示すように、バッキングフィルム113aと呼ばれる弾性膜の上にワークの飛び出し防止用のテンプレート113bが接着されて市販されているテンプレートアセンブリ113をワーク保持盤112に貼ってワークWを保持するワックスレス方式の研磨ヘッド121等がある。
【0005】
ワックスレス方式の別の研磨ヘッドとして、
図15に示すように、市販のテンプレートの代わりにワーク保持盤112の表面にバッキングフィルム113aを貼り、ワーク保持盤側面にワーク飛び出し防止用の円環状のガイドリング113bを設けた研磨ヘッド131等も用いられている。
ワーク保持盤112には、一般には高平坦なセラミックプレートを用いているが、バッキングフィルム113aの厚さむら等により、微小な圧力分布が生じ、加工後のワーク表面にうねりが生じ、ワークの平坦度を悪化させる問題がある。
【0006】
そこで、ワーク保持盤の代わりにワーク保持部をラバー膜とし、該ラバー膜の背面に空気等の加圧流体を流し込み、均一の圧力でラバー膜を膨らませて研磨布にワークを押圧する、いわゆるラバーチャック方式の研磨ヘッドも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ラバーチャック方式の研磨ヘッドの構成の一例を模式的に
図16に示す。この研磨ヘッド141の要部は、環状のSUS製などの剛性リング144と、剛性リング144に接着されたラバー膜143と、剛性リング144に結合された裏板145とからなる。剛性リング144と、ラバー膜143と、裏板145とによって、密閉された空間部146が形成される。また、ラバー膜143の下面部にはバッキングフィルム148が貼られ、剛性リング144と同心に、環状のテンプレート147が具備される。また、裏板145の中央から圧力調整機構150により加圧流体を供給するなどして空間部146の圧力を調節する。また、裏板145に連結される研磨ヘッド本体149は、裏板145を研磨布方向に押圧する図示しない押圧手段を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなラバーチャック方式の研磨ヘッドを用いることで、バッキングフィルムの厚さむらに起因した微小な圧力分布が生じないため、加工後のワーク表面にうねりが生じない。しかし、テンプレートの内径はワークの外径よりも大きいため、テンプレートとワークの間には僅かに隙間が生じ、上記したように空間部の内部に圧力調整機構により加圧流体を供給して圧力調整を行った場合、テンプレートとワークの間の隙間部分のラバー膜の膨らみが大きくなり、ワーク外周部の圧力が高くなり、ワーク外周部が過研磨されることにより外周ダレが発生しやすくなる。
【0010】
テンプレートの厚さを調整することで、ワーク外周部の圧力をある程度調節することは可能だが、該テンプレートの厚さばらつきによってワーク外周部の研磨代が変化し、安定した平坦度が得られない問題が生じる。
また、ワークの仕上げ研磨においては、仕上げ研磨布にテンプレートを接触させた場合、テンプレートからの異物の脱離等により、ワークの表面に傷等の欠陥を発生させてしまうため、テンプレートを研磨布に接触させないことが望まれる。
【0011】
しかしながら、テンプレートの厚さを研磨布に接触させないようにワークの厚さよりも薄くした場合、ワーク外周部の圧力が高くなり、ワーク外周部が過研磨されることにより外周ダレが発生し、ワークの平坦度を悪化させてしまうため、ワークの仕上げ研磨には適用できない問題もあった。
【0012】
また、他のラバーチャック方式の研磨ヘッドとして、特許文献2に前面が弾性膜で形成された保持プレートの流体封入部に水を封入し、流体封入部内に向けて出し入れ可能な容積調整ネジを設け、この調整により弾性膜表面を均一な平面にし、ワーク全面に密着させて押圧する方法が提案されている。この方法の場合、加圧流体を供給して圧力調整を行わないため、テンプレートとワークの隙間のラバー膜の膨らみを抑制できるために外周ダレは抑制されるが、ワーク保持面形状がフラットなため、ワークと研磨布との間の吸着力が高い場合には、ワーク研磨加工終了後に研磨布上からワークを引き剥がすことができない問題が発生していた。
【0013】
また、二次研磨に軟質な研磨布を用いた場合には、研磨布要因により外周ダレが発生する。そのため、テンプレートをワークと同等の厚さにして、テンプレートをワークと一緒に研磨布に押圧する必要がある。その場合、仕上げ研磨時ではテンプレートが研磨布と接触するので、ワーク表面に欠陥が発生してしまう。従って、ワークよりも薄いテンプレートを具備した研磨ヘッドを別に準備する必要が生じてしまい、二次研磨と仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドを用いて実施できず、作業性に大きな問題も生じる。
【0014】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、ワーク表面にキズ等の表面欠陥を発生させることなく、ワークの最外周部まで均一に研磨でき、ワークの研磨後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができる研磨ヘッド及び研磨装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、環状の剛性リングと、該剛性リングに接着された弾性膜と、前記剛性リングに対して上下方向に移動可能に結合され、前記弾性膜と前記剛性リングとともに第1の密閉空間部を形成する中板とを具備し、前記弾性膜の下面部にワークの裏面を保持し、該ワークの表面を定盤上に貼り付けられた研磨布に摺接させて研磨する研磨ヘッドにおいて、さらに、前記第1の密閉空間部に封入された非圧縮性の流体と、前記中板の上下方向の位置を調整する中板位置調整手段とを具備し、前記中板位置調整手段で前記中板の上下方向の位置を調整することによって前記弾性膜の下面部の形状を調整できるものであることを特徴とする研磨ヘッドが提供される。
【0016】
このような研磨ヘッドであれば、中板の上下方向の位置を調整することにより、ワークを保持する弾性膜の下面部の形状を適切に調整することが可能となるので、ワークの最外周部まで均一に研磨することができ、かつワーク表面にキズ等の表面欠陥も抑制できるものとなる。また、中板の上下方向の位置を上方に移動させてワークを保持する弾性膜の表面形状を上凸形状とすることにより、ワークを研磨ヘッドに確実に吸着させることができ、研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができるものとなる。
【0017】
このとき、前記中板と、該中板の上方に配置される研磨ヘッド本体と、該研磨ヘッド本体の下端と接する前記剛性リングの上部とで形成される第2の密閉空間部を有し、前記中板位置調整手段は前記第2の密閉空間部内の圧力を制御することによって前記中板の上下方向の位置を調整するものであることが好ましい。
このようなものであれば、中板の上下方向の位置を任意の位置に調節でき、ワークを保持する弾性膜の下面部の形状を簡便に調節できる。
【0018】
またこのとき、前記中板の上下方向の移動の上限位置及び下限位置をそれぞれ制限するためのストッパーを具備するものとすることができる。
このようなものであれば、弾性膜の所定以上の形状変化を抑え、弾性膜の破損を防止できる。
【0019】
またこのとき、前記弾性膜は、引張強度が10MPa以上の材料から成るものであることが好ましい。
このようなものであれば、研磨時にワークに掛ける研磨荷重や研磨布とワークの間で生じる摩擦抵抗を受けても、弾性膜の下面部の形状を確実に維持できる。
【0020】
またこのとき、前記弾性膜の下面部の周辺部に前記剛性リングと同心状に設けられ、前記ワークのエッジ部を保持する環状のテンプレート、又は前記剛性リングの外側に同心状に設けられ、前記ワークのエッジ部を保持する樹脂製リングを具備するものであることが好ましい。
【0021】
このようなものであれば、研磨時にワークの横方向のズレを抑制できる。また、軟質な研磨布を用いた二次研磨においても、テンプレート又は樹脂製リングを研磨布に押圧してワークの最外周部まで均一に研磨できる。さらに、テンプレート又は樹脂製リングの研磨布への押圧の有無を中板の上下方向の位置を調整してワークの表面位置を変更することによって切り替えることができるので、二次研磨及び仕上げ研磨の両方に好適に適用できるものとなる。
【0022】
またこのとき、前記環状のテンプレートの厚みは前記ワークの仕上がり厚さに対して±1%以内に調整されたものであることが好ましい。
このようなものであれば、より確実にワークの最外周部まで均一に研磨することができる。
【0023】
またこのとき、前記中板が前記下限位置に移動されたとき、前記弾性膜の下面部の形状が下凸形状に調整されることによって変更した前記ワークの表面位置が前記テンプレート又は樹脂製リングの下面位置よりも、好ましくは、50μm以上、前記ワークの仕上がり厚さの55%以下低い位置になるものであることが好ましい。
このようなものであれば、仕上げ研磨において、テンプレート又は樹脂製リングを研磨布に押圧せずに研磨でき、確実に表面欠陥を抑制できる。また、中板の上下方向の位置調整も容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明によれば、ワークの表面を研磨する際に使用する研磨装置であって、定盤上に貼り付けられた研磨布と、該研磨布上に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構と、前記ワークを保持するための研磨ヘッドとして、前記本発明の研磨ヘッドを具備するものであることを特徴とする研磨装置が提供される。
【0025】
このような研磨装置であれば、中板の位置を調整することにより、ワークを保持する弾性膜の下面部の形状を適切に調整することが可能となるので、ワークの最外周部まで均一に研磨することができ、かつワーク表面にキズ等の表面欠陥も抑制できるものとなる。また、中板の位置を上方に移動させてワークを保持する弾性膜の表面形状を上凸形状とすることにより、ワークを研磨ヘッドに確実に吸着させることができ、研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができるものとなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、研磨ヘッドにおいて、第1の密閉空間部に封入された非圧縮性の流体を有し、中板位置調整手段で中板の上下方向の位置を調整することによって弾性膜の下面部の形状を調整できるものであるので、ワークの最外周部まで均一に研磨することができ、かつワーク表面にキズ等の表面欠陥も抑制でき、さらに研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができ、確実なワークの搬送が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来、ワーク外周部の過研磨を抑制するために、テンプレートなどを用いてワーク外周部の圧力を調節する方法が用いられている。しかし、テンプレートの厚さばらつきによってワーク外周部の研磨代が変化し、安定した平坦度が得られない問題や、仕上げ研磨において研磨布にテンプレートなどを接触させた場合、テンプレートからの異物の脱離等により、ワークの表面に欠陥が発生してしまうという問題がある。また、ワークと研磨布との間の吸着力が高い場合には、研磨終了後に研磨布からワークを引き剥がすことができないことがある。
【0029】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、剛性リングと弾性膜と中板とによって形成された密閉空間部に非圧縮性の流体を封入し、中板を剛性リングに対して上下方向に移動可能に結合するように構成すれば、中板の上下方向の位置を調整して弾性膜の下面部の形状を最適化でき、これによって最外周まで平坦なワークの研磨加工ができることを見出した。また、中板の上下方向の位置を上方に移動させて弾性膜の下面部を上凸形状に調整すれば、研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
まず、本発明の研磨ヘッドの第1の実施形態を
図1を参照して説明する。
図1に示すように、研磨ヘッド1aは、弾性膜3と、環状の剛性リング4と、中板5と、中板位置調整手段8と、研磨ヘッド本体9とを有する。この剛性リング4の下面側に均一の張力で弾性膜3が接着される。中板5は剛性リング4に対して上下方向に移動可能に結合され、中板5の上下方向の位置は中板位置調整手段8により調整される。この弾性膜3と剛性リング4と中板5とによって、第1の密閉空間部6が形成される。ワークWは裏面側を弾性膜3の下面部に保持され、その表面側が研磨される。
【0031】
このような、弾性膜3、剛性リング4及び中板5等から構成されるラバーチャック部において、ワークWを研磨する前に、予め第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2が封入される。ここで、本発明で言う非圧縮性の流体とは、例えば、気体のように加圧されると圧縮されて体積が大幅に縮小する流体ではない流体のことである。例えば、非圧縮性の流体2として、水又は主成分が水である非圧縮性の流体、或いは油を用いることができる。
水又は主成分が水である非圧縮性の流体を用いれば、低コストで構成でき、例えば研磨中に弾性膜3が裂けるなどした場合のように、非圧縮性の流体2が例え第1の密閉空間部6から漏れたとしても、ワークや研磨装置の内部を汚染する恐れもないのでより好ましい。
【0032】
さらに、非圧縮性の流体2が例え第1の密閉空間部6から漏れた場合に、ワークWの研磨特性に影響を及ぼさないように、ワークWの研磨加工に用いる研磨剤や、ワークWの研磨加工に用いる研磨剤の成分のうち、少なくともひとつ以上の成分を含む水溶液を用いることが好ましい。また、ワークWが半導体材料の場合には、金属汚染等の防止目的から、非圧縮性の流体2として金属イオン等が含まない純水が好適である。
剛性リング4の材質は例えばSUS(ステンレス)等の剛性材料とすることができる。中板5の材質、形状は特に限定されることはなく、剛性リング4と、ラバー膜3と共に第1の密閉空間部6を形成できるものであれば良い。
【0033】
中板5を剛性リング4に対して上下方向に移動可能に結合する構成としては、例えば、中板5と剛性リング4とをダイヤフラムを介して結合したり、中板位置調整手段8にボールネジ或いはエアシリンダを用いて中板5と連結する構成とすることができるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。
中板5の上下方向の位置を調整することによって弾性膜3の下面部の形状を、例えば上凸形状、下凸形状、フラット形状などといった形状に調整できる。
研磨ヘッド本体9は不図示の加圧手段を備え、ワークWに研磨荷重(押圧力)を掛けることができる。
【0034】
弾性膜3の材質は特に限定されることはないが、引張強度(JIS K6251)が10MPa以上、より好ましくは20MPa以上の材料から成るものが好ましい。このようなものであれば、研磨時にワークに掛ける研磨荷重や研磨布とワークの間で生じる摩擦抵抗を受けても、弾性膜の下面部の形状を確実に維持できる。
【0035】
本発明の研磨ヘッド1aを用いた場合、中板位置調整手段8で中板5の上下方向の位置を調整することにより、ワークWを保持する弾性膜3の下面部の形状を研磨条件に合わせて最適化でき、研磨中に第1の密閉空間部6に封入された非圧縮性の流体2の体積が殆ど変化ないため弾性膜の下面部の最適形状が維持され、ワークW全体に均一な荷重を掛けてワークWを研磨することが可能となる。そのため、ワークの最外周部まで均一に研磨することができるし、異物の脱離等により生じるワーク表面の表面欠陥も発生しない。また、中板5の上下方向の位置を上方に移動させて弾性膜3の表面形状を上凸形状とすることにより、ワークを研磨ヘッドに確実に吸着させることができ、研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができ、確実なワークの搬送が可能となる。
【0036】
図2は、中板5と剛性リング4との結合にダイヤフラムを用いた本発明の研磨ヘッドの第2の実施形態を示した概略図である。
図2に示すように、研磨ヘッド1bの中板5は剛性リング4に対してダイヤフラム10を介して上下方向に移動可能に結合される。また、中板5と、該中板5の上方に配置される研磨ヘッド本体9と、該研磨ヘッド本体9の下端と接する剛性リング4の上部とで第2の密閉空間部11が形成される。中板位置調整手段8は、第2の密閉空間部11と連結する圧力制御装置12を用いて構成され、圧力制御装置12は第2の密閉空間部11内の圧力を調整するために減圧及び加圧制御可能となっている。
【0037】
すなわち、中板位置調整手段8は第2の密閉空間部内11の圧力を制御することによって中板5の上下方向の位置を調整することができる。
このような本発明の研磨ヘッド1bであれば、中板5の上下方向の位置を任意の位置に調節でき、ワークを保持する弾性膜の下面部の形状を簡便に最適化できる。
【0038】
図3は、本発明の研磨ヘッドの第3の実施形態を示した概略図である。
図3に示すように、研磨ヘッド1cには中板5の上下方向の移動の上限位置及び下限位置をそれぞれ制限する目的で、上限のストッパー13a及び下限のストッパー13bが設けられている。
このような本発明の研磨ヘッド1cであれば、弾性膜3の所定以上の形状変化を抑え、弾性膜3の破損を防止できる。
【0039】
図4は、本発明の研磨ヘッドの第4の実施形態を示した概略図である。
図4に示すように、研磨ヘッド1dは、
図3に示す研磨ヘッド1cの構成に加え、環状のテンプレート7とバッキングフィルム14が設けられたものである。環状のテンプレート7は弾性膜3の下面部の周辺部に剛性リング4と同心状に設けられ、ワークWのエッジ部を保持する。ここで、テンプレート7の材質は、ワークWを汚染せず、かつ、キズや圧痕をつけないために、ワークWよりも柔らかく、研磨中に研磨装置の研磨布と摺接されても磨耗しにくい、耐磨耗性の高い材質であることが好ましい。
【0040】
バッキングフィルム14は、弾性膜3の下面部の少なくともワークWを保持する部分に貼設され、水を含ませてワークWを貼りつけ、弾性膜3のワーク保持面にワークWを保持するためのものである。バッキングフィルム14に含まれる水の表面張力によりワークWを確実に保持できる。ここで、バッキングフィルム14は、例えばポリウレタン製とすることができる。また、バッキングフィルムの表面にテンプレートを貼ってテンプレートアセンブリとして市販されているものを用いても良い。
このような環状のテンプレート7及びバッキングフィルム14を有するものであれば、研磨時にワークWの横ずれを防ぎ、ワークをより安定的に保持できる。
【0041】
テンプレート7の厚さをワークWの厚さと同じとし、研磨時にテンプレート7をワークWと共に研磨布に押圧可能に構成できる。このようなものであれば、特に研磨布要因により外周ダレが発生しやすい軟質な研磨布を用いた二次研磨においても、ワークの最外周部までより均一に研磨でき、ワークWの外周ダレを効果的に抑制できる。この際、テンプレート7の厚み精度がワークの仕上がり厚さに対して±1%以内に調整されたものであれば、より確実にワークの最外周部まで均一に研磨することができるので好ましい。
【0042】
上記したように、本発明の研磨ヘッドは中板位置調整手段8で中板5の上下方向の位置を調整することで、弾性膜3の下面部の形状を調整できるので、弾性膜3の下面部の形状変化によってワークWの表面の上下方向の位置も調整できる。例えば、弾性膜3の下面部の形状を下凸形状に調整すれば、ワークWの表面の上下方向の位置を弾性膜3の下面部の形状がフラット形状の状態の位置より下方に調整できる。すなわち、中板5の上下方向の位置を調整することで、ワーク表面とテンプレート下端面との上下方向の相対距離を調整でき、テンプレートの研磨布への押圧の有無を切り替えることができる。
【0043】
そのため、テンプレートとワークとの厚さが同じものを用いても、特に仕上げ研磨において、テンプレートが研磨布と接触しないようにして研磨することもでき、ワーク表面に欠陥が発生するのを抑止しつつ、ワークWを最外周部まで均一に仕上げ研磨できる。このように、本発明の研磨ヘッドは二次研磨及び仕上げ研磨の両方に好適に適用できる。
【0044】
図5は、本発明の研磨ヘッドの第5の実施形態を示した概略図である。
図5に示すように、弾性膜3は剛性リング4の側面のみで接着され、剛性リング4の下端と弾性膜3の間には非圧縮性の流体2が入る隙間を有している。また、
図4に示す研磨ヘッド1dでは、環状のテンプレート7でワークWのエッジ部を保持するのに対し、
図5に示す研磨ヘッド1eでは、剛性リング4の外側に同心状に設けられる樹脂製リング15でワークWのエッジ部を保持する。
このような樹脂製リング15及びバッキングフィルム14を有するものであれば、研磨時にワークWの横ずれを防ぎ、ワークをより安定的に保持できる。
【0045】
樹脂製リング15は、弾性膜3の形状が平坦となる状態でワークWが保持された際のワーク表面と樹脂製リング15の下端面との上下方向の位置が同じになるように高さが調整されることができる。このような研磨ヘッド1eにおいて、上記研磨ヘッド1dでの説明と同様に、研磨時に樹脂製リング15をワークWと共に研磨布に押圧することで、ワークの最外周部までより均一に研磨できる。
【0046】
図6は、
図4に示す研磨ヘッド1dに非圧縮の流体2を封入する方法の一例を示したものである。
図6に示すように、中板5の上面側には、第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2を導入及び排出するために2つの貫通孔18a、18bが設けられている。非圧縮性の流体2の圧力を保ったまま、第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2を封入するためにそれぞれの貫通孔18a、18bにカプラー19a、19bが装着されている。
【0047】
非圧縮性の流体2の導入のための流体封入装置20は圧力計21とバルブ22aが接続された回路を有し、該回路の末端にニップル23aが接続されている。該ニップル23aは、中板5に設けられたカプラー19aに接続される。さらに流体封入装置20は、非圧縮性の流体2の排出のために、末端がドレインに接続され、中間にバルブ22bが接続された回路を有している。回路の先端にはニップル23bが接続されており、該ニップル23bは、中板5に設けられたカプラー19bに接続される。
【0048】
まず、中板5を下限のストッパー13bに押し当てた状態で、クランプ治具16aを介して中板5を剛性リング4に固定する。テンプレート7内にワークW、或いはワークWと同じ厚さの調整板を挿入し、更にテンプレート下端面に調整用スペーサー17を挿入し、平坦で剛性の高いベース24上に載置する。次に、剛性リング4をクランプ治具16bを介してベース24に固定する。
次に、バルブ22a、22bを開き、第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2を導入し、第1の密閉空間部6内の気抜きを行う。ここで、気抜きとして、バルブ22aを閉じてバルブ22bを開き、ドレイン側に減圧回路を接続して行うことができる。
【0049】
次に、バルブ22a、22bを閉じて、不図示の圧力調整機構によって圧力計21が所定の圧力になるように、すなわち非圧縮性の流体2の圧力を調整して、バルブ22aを開けて第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2を導入する。圧力計21が所定の圧力になっていることを確認して、バルブ22aを閉じ、第1の密閉空間部6内に非圧縮性の流体2を封入する。封入後、中板5の上部に装着されたカプラー19a、19bからニップル23a、23bを取り外す。このようにして流体を封入した後、剛性リング4の上面に、不図示の加圧手段を備えた研磨ヘッド本体9を装着し、第2の密閉空間部に圧力制御装置を連結する。以上のようにして非圧縮の流体2を封入し、本発明の研磨ヘッド1dが構成される。
【0050】
このような方法で非圧縮性の流体2を第1の密閉空間部6内に封入した
図4に示す本発明の研磨ヘッド1dを用いれば、研磨ヘッド本体9で加圧されるワークWへの圧力に対して、圧力制御装置12で第2の密閉空間部11内の圧力を高く保つことにより、中板5が下限のストッパー13bに押し当てられた状態で研磨することになり、ワークWと同じ厚みのテンプレート7を用いても、テンプレート7を研磨布に接触させないで仕上げ研磨が可能となり、ワークWの表面の傷等の欠陥発生を抑えることができる。
【0051】
次に、本発明の研磨装置について説明する。
図7は本発明の研磨装置の一例を示した概略図である。
図7に示すように、本発明の研磨装置30は、定盤33上に貼り付けられた研磨布32と、該研磨布32上に研磨剤35を供給するための研磨剤供給機構34と、ワークWを保持するための研磨ヘッドとして、上記した本発明の研磨ヘッド1dを有する。この研磨ヘッド1dは、不図示の加圧機構によってワークWを定盤33に貼られた研磨布32に押圧できる構造になっている。
【0052】
そして、研磨剤供給機構34によって研磨剤35を研磨布32上に供給しながら、回転軸に連結された研磨ヘッド1dの自転運動と定盤33の回転運動によって、ワークWの表面を摺接して研磨を行う。
このような本発明の研磨装置30は、中板の位置を調整することにより、ワークを保持する弾性膜の下面部の形状を適切に調整することが可能となるので、ワークの最外周部まで均一に研磨することができ、かつワーク表面にキズ等の表面欠陥の発生を抑制できるものである。また、中板の位置を上方に移動させてワークを保持する弾性膜の表面形状を上凸形状とすることにより、ワークを研磨ヘッドに確実に吸着させることができ、研磨終了後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができるものである。
【0053】
研磨装置30を用いて二次研磨を行う場合、
図8(A)に示すように、弾性膜3のワーク保持面がフラット形状になるように中板5の上方にある第2の密閉空間部11内の圧力を調整して、適切な位置に中板を固定させて研磨を行う。仕上げ研磨の場合には、
図8(B)に示すように、第2の密閉空間部11内の圧力を高くして、中板5の上下方向の位置を下限のストッパー13bに押し当てた状態に固定させる。これにより、弾性膜3のワーク保持面は下凸形状となり、テンプレート7と研磨布32が接触しない状態での研磨が可能となる。
【0054】
研磨終了後にワークを搬送する場合には、
図8(C)に示すように、第2の密閉空間部11内を減圧して、中板5の上下方向の位置を上限のストッパー13aに押し当てた状態に固定させる。これにより、弾性膜3のワーク保持面は上凸形状となるのでワーク吸着することができ、研磨布32からワークWを容易に引き剥がすことができ、確実なワークの搬送が可能となる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
図7に示す本発明の研磨装置30を用いてワークを研磨した。
図6に示すような流体封入装置20を用いて、
図4に示すような研磨ヘッド1dを以下のように準備した。剛性リングとして外径360mm、内径320mmのSUS製のものを用い、弾性膜として引張強度が18MPaのEPDMゴムを剛性リングの下面に接着した。弾性膜の下面には、バッキングフィルム表面に外径355mm、内径302mm、厚さ780μmのテンプレートを貼った市販のテンプレートアセンブリを接着した。
【0057】
ワークとして直径300mm、厚さ775μmのシリコン単結晶ウェーハを用い、調整用スペーサーの厚さを250μmとした。非圧縮性の流体として純水を使用し、第1の密閉空間部内に圧力70KPaで封入した。研磨ヘッドを研磨装置に搭載し、ワークの二次及び仕上げ研磨を行った。定盤には直径800mmであるものを使用し、二次研磨用の研磨布には不織布にウレタンを含浸したベロアタイプ研磨布を、仕上げ研磨用の研磨布には不織布上にウレタンを発泡させたスエードタイプ研磨布を使用した。
なお、ワークとして使用したシリコン単結晶ウェーハは、その両面に予め一次研磨を施し、エッジ部にも研磨を施したものである。
【0058】
二次研磨の際には、研磨剤としてコロイダルシリカを含有するアルカリ溶液を使用し、研磨ヘッドと定盤はそれぞれ31rpm、29rpmで回転させた。ワークの研磨荷重(押圧力)は、不図示の加圧手段により、ワークの面圧換算で15KPaとなるように設定し、第2の密閉空間部内の圧力を圧力制御装置によって、ワークとテンプレートに掛かる圧力が同じになるように10KPaに制御した。研磨時間はワークの平均研磨量が1μmになるように調整した。
【0059】
更に二次研磨後に同じ研磨ヘッドを用いて連続してワークの仕上げ研磨を行った。仕上げ研磨の際には、研磨剤を濡れ剤として微量の水溶性高分子添加剤が添加されたコロイダルシリカを含有するアルカリ溶液を使用し、研磨ヘッドと定盤はそれぞれ31rpm、29rpmで回転させた。ワークの研磨荷重は、不図示の加圧手段により、ワークの面圧換算で15KPaとなるように設定し、第2の密閉空間部内の圧力を圧力制御装置によって、中板が下限のストッパーに押し当てた状態になるように高い圧力に設定し、その圧力を50KPaに制御して、120秒間研磨した。仕上げ研磨後に、ワーク表面の研磨剤を除去するために、ワークに70℃の温度で加温されたアンモニア・過酸化水素水洗浄、いわゆるSC1洗浄を施した。
【0060】
仕上げ研磨後に中板の位置を上方に移動させて、研磨布からワークを容易に引き剥がすことができた。
このようにして研磨を行ったワークの面内の研磨代のばらつきを評価した。研磨代については、平坦度測定器で研磨前後のワークの厚さを平坦度保証エリアとして最外周部1mm幅を除外した領域を測定し、ワークの直径方向のクロスセクションでの研磨前後の厚さの差分を取り算出した。平坦度測定機としてはWafer Sight(KLA−Tencor社製)を用いた。
【0061】
さらに、研磨後のワークの表面欠陥を評価した。表面欠陥評価には、KLA−Tencor社製のSP−2を用い、ワーク表面上の37nm以上の欠陥数を測定した。
実施例1で研磨したワークの研磨代分布を
図9に示す。
図9(A)は全体の研磨代分布、
図9(B)はワーク上の位置120から150mmの範囲の拡大図である。
図9(A)(B)に示すように、外周3mmまではほぼ均一に研磨されており、外周3mmから1mmの範囲で僅かに研磨代が増加しているが、研磨代ばらつきは39.6nmであり、同じ弾性膜で同じテンプレートを用いた後述する比較例2に対して大幅に外周ダレが改善された。
【0062】
実施例1で研磨したワークの表面欠陥マップを
図12(A)に示す。
図12(A)に示すように、ワーク表面の37nm以上の欠陥数は18個であり、同様にワークと同じ厚みのテンプレートを用いた比較例2に対して大幅に改善された。
このように、本発明の研磨ヘッド及び研磨装置を用いて二次研磨及び仕上げ研磨を行うことで、ワーク表面にキズ等の表面欠陥を発生させることなく、ワークの最外周部まで均一に研磨でき、ワークの研磨後に研磨布からワークを容易に引き剥がすことができることが確認できた。
【0063】
(実施例2―5)
研磨ヘッドの弾性膜として、引張強度8MPaの厚さ2mmのシリコンゴム(実施例2)、引張強度12MPaの厚さ2mmのEPDMゴム(実施例3)、引張強度21MPaの厚さ2mmのNBRゴム(実施例4)、引張強度37MPaの厚さ2mmの水素添加NBRゴム(実施例5)を用い、実施例1と同じ条件にてワークの二次及び仕上げ研磨を行った。
【0064】
異なる引張強度の弾性膜を用いた実施例2―5で二次及び仕上げ研磨されたワークの研磨代分布を
図10に示す。
図10に示すように、弾性膜の引張強度が高い材料を用いることで最外周部の研磨代増加を抑え、より平坦な研磨が可能であることが分かった。
また、用いた弾性膜の引張強度と研磨代ばらつきの関係を
図11に示す。実施例2―5で研磨したワークの研磨代ばらつきは、それぞれ53.4nm、49.7nm、27.3nm、13.6nmとなった。弾性膜の引張強度が高い程、ワークの研磨代ばらつきは小さくなった。
【0065】
この結果から、ワークの研磨代ばらつきを50nm以下に抑えるためには、引張強度が10MPa以上の材料からなる弾性膜を用いるのが好ましい。さらに、研磨代ばらつきを30nm以下に抑えるには、引張強度20MPa以上の材料からなる弾性膜を用いるのが好適である。このように引張強度の高い弾性膜を用いることで、ワークの外周部をさらに均一に研磨することが可能となる。
【0066】
(比較例1、比較例2)
図16に示すような従来の研磨ヘッドを具備した研磨装置を用いて実施例1と同様のシリコン単結晶ウェーハを研磨した。剛性リングとして外径360mm、内径320mmのSUS製のものを用い、厚さ2mmの引張強度18MPaのEPDMゴムを接着した。EPDMゴム表面には、バッキングフィルム表面に外径355mm、内径302mm、厚さ750μmのテンプレート(比較例1)を貼った市販のテンプレートアセンブリを接着した。研磨ヘッドを
図13に示すような研磨装置に搭載し、ワークの二次及び仕上げ研磨を行った。
【0067】
定盤には直径800mmであるものを使用し、二次研磨用の研磨布には不織布にウレタンを含浸したベロアタイプ研磨布を、仕上げ研磨用の研磨布には不織布上にウレタンを発泡させたスエードタイプ研磨布を使用した。
なお、ワークとして使用したシリコン単結晶ウェーハは、その両面に予め一次研磨を施し、エッジ部にも研磨を施したものである。
【0068】
二次研磨の際には、研磨剤としてコロイダルシリカを含有するアルカリ溶液を使用し、研磨ヘッドと定盤はそれぞれ31rpm、29rpmで回転させた。密閉空間部146内に圧縮空気を流入させるようにして、圧力調整機構150によって、内部の圧力を15KPaになるように制御し、ワークに15KPaの研磨荷重が掛かるようにした。研磨時間はワークの平均研磨量が1μmになるように調整した。
【0069】
更に二次研磨後に同じ研磨ヘッドを用いて連続してワークの仕上げ研磨を行った。仕上げ研磨の際には、研磨剤を濡れ剤として微量の水溶性高分子添加剤が添加されたコロイダルシリカを含有するアルカリ溶液を使用し、研磨ヘッドと定盤はそれぞれ31rpm、29rpmで回転させた。密閉空間部146内に圧縮空気を流入させるようにして、圧力調整機構150によって、内部の圧力を15KPaになるように制御し、ワークに15KPaの研磨荷重が掛かるようにして、120秒間研磨した。仕上げ研磨後に、ワーク表面の研磨剤を除去するために、ワークに70℃の温度で加温されたアンモニア・過酸化水素水洗浄、いわゆるSC1洗浄を施した。
【0070】
さらにテンプレートの厚さ780μm(比較例2)のテンプレートアセンブリを貼った研磨ヘッドも準備し、比較例1と同様な条件でワークを研磨した。
このようにして研磨を行ったワークの面内の研磨代のばらつきを実施例1と同様にして評価した。また、研磨後のワークの表面欠陥を実施例1と同様にして評価した。
【0071】
比較例1及び比較例2で研磨したワークの研磨代分布を
図9に示す。比較例1の場合、外周25mmくらい研磨代の増加が見られ、外周3mmから1mmで急激な研磨代の増加が見られ、研磨代ばらつきは、116.2nmであった。テンプレートをワークの厚みに近い780μmの厚さのものを用いた比較例2の場合、外周25mmからの研磨代の増加は改善され、外周3mmまでは均一に研磨されているが、外周3mmから1mmでの急激な研磨代増加については改善が見られず、研磨代ばらつきは、81.2nmであった。
【0072】
比較例1及び比較例2で研磨したワークの表面欠陥マップをぞれぞれ
図12(B)(C)に示す。テンプレート厚さ750μmの比較例1では欠陥数が216個、テンプレート厚さ780μmの比較例2では欠陥数684個であった。テンプレートの厚みが厚い比較例2は、仕上げ研磨布とテンプレートが常に接触状態のため、比較例1よりも欠陥数が増加した。
このように、比較例1、2では、二次研磨及び仕上げ研磨を同じ研磨ヘッドを用いて行って均一な研磨代での研磨と欠陥抑制の両方を同時に果たすことができない。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、本発明に係る研磨ヘッドは
図1〜
図5に示した実施形態に限定されず、例えば、ヘッド本体の形状等は特許請求の範囲に記載された要件以外については適宜設計すればよい。さらに研磨装置の構成も
図7に示したものに限定されず、例えば本発明に係る研磨ヘッドを複数備えた研磨装置とすることもできる。