(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における「シート」とは、軟質ポリウレタンフォームで製造されたシートクッションまたはシートバックレストである。
本明細書中における「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオールのほかに発泡剤、整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本明細書中における「反応性混合物」とは、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物と、任意に残りの成分とを混合した液である。
本明細書中における「ポリエーテル鎖」とは、エーテル結合を含む繰り返し単位が鎖状に連結された構造をいう。
本明細書中におけるポリオールの数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレン重合体をリファレンスとして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた、いわゆるポリスチレン換算分子量である。
また、本明細書中における「不飽和度」は、JIS K1557(2007年版)に準拠して測定した値である。
【0012】
<ポリエーテルポリオール(A1)の製造方法>
本発明のポリエーテルポリオール(A1)(以下、単にポリオール(A1)ということもある。)の製造方法は、複合金属シアン化物錯体触媒(本明細書において、DMC触媒ということもある。)の存在下で、平均水酸基数が2〜8の開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させる工程を経て得られた中間ポリオールに、重合触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用いて、所定量のエチレンオキシドを開環付加重合させてポリエーテルポリオール(A1)を得る工程を有する。ポリエーテルポリオール(A1)の、平均水酸基数は2〜8、水酸基価は5〜45mgKOH/gである。ポリオール(A1)は1分子中に水酸基を2個以上有する。
【0013】
中間ポリオールを製造する際に、アルキレンオキシドを開環付加重合させる重合触媒としてDMC触媒を用いることにより、副生成物である不飽和結合を有するモノオールの生成が抑えられ、ポリオール(A1)の不飽和度が低くなる。不飽和度が低いポリオールを用いて軟質フォームを製造すると、不飽和度が高いポリオールを用いた場合に比べて、軟質フォームの機械物性が向上する。
ポリオール(A1)の不飽和度は、0.030meq/g以下が好ましく、0.020meq/g以下がより好ましく、0.015meq/g以下が特に好ましい。不飽和度が、0.030meq/g以下であると、ポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの機械特性が良好となる。さらに不飽和度が0.015meq/g以下であると、ポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの良好な圧縮残留歪みおよび湿熱圧縮残留歪みが得られやすく、共振振動数が低く抑えられて、ヒステリシスロスが良好となる。また、フォームの厚みを低減させた際に得られる軟質フォームの共振振動数やヒステリシスロスの悪化を抑制することが出来るので好ましい。
【0014】
ポリオール(A1)の平均水酸基数は2〜8であり、2.5〜6.5が好ましく、2.5〜4.5が特に好ましい。該平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの良好な硬度が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの良好な耐久性が得られやすい。
ポリオール(A1)の水酸基価は5〜45mgKOH/gであり、5〜35mgKOH/gが好ましく、5〜25mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記の範囲内であると、ポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの良好な機械特性が得られやすい。
水酸基価が45mgKOH/g以下であると、共振振動数が低く抑えられやすい。また、水酸基価が25mgKOH/g以下であると、得られる軟質フォームの共振振動数がさらに低く抑えられ、且つヒステリシスロスや歪み特性が良好となり、また、フォームの厚みを低減させた際に得られる軟質フォームの共振振動数やヒステリシスロスの悪化を抑制することが出来るので好ましい。
【0015】
[複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)]
本発明におけるDMC触媒は公知のものを用いることができる。代表的には下式(1)で表される。
M
1a[M
2b(CN)
c]
de(M
3fX
g)h(H
2O)i(L)・・・(1)
(式(1)中、M
1〜M
3は金属を、Xはハロゲン原子を、Lは有機配位子を、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは金属の原子価や有機配位子の配位数等により変わり得る数を、それぞれ示す。)
式中、M
1またはM
3は、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)およびPb(II)からなる群から選ばれる金属原子であり、Zn(II)またはFe(II)が好ましい。なお金属の原子記号に続くかっこ内のローマ数字は原子価を表し、以下同様である。一分子中のM
1とM
3は互いに同じでもよく、異なっていてもよい。互いに同じであることが好ましい。
M
2は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)およびV(V)からなる群から選ばれる金属原子であり、Co(III)またはFe(III)が好ましい。
Xはハロゲン原子である。
【0016】
Lは、有機配位子を表す。有機配位子としては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミン、アミド等が使用でき、アルコールが好ましい。好ましい有機配位子は水溶性のものであり、具体例としては、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル(グライムともいう。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライムともいう。)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう。)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、iso−プロピルアルコールおよびジオキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。ジオキサンとしては、1,4−ジオキサンでも1,3−ジオキサンでもよく、1,4−ジオキサンが好ましい。
より好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、または、tert−ブチルアルコールとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルとの組み合わせである。より高い重合活性が得られ、ポリオール(A1)の分子量分布を小さくする点で好ましい。
【0017】
本発明におけるDMC触媒として、触媒活性の点で、有機配位子Lがtert−ブチルアルコールであるもの、または、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルであるものが好ましく、tert−ブチルアルコールが特に好ましい。
式(1)において、M
1およびM
3が互いに同一で、Zn(II)またはFe(II)であり、M
2がCo(III)またはFe(III)であり、Xがハロゲンであり、Lがtert−ブチルアルコールまたはエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルであるものが好ましく、M
1およびM
3がZn(II)、M
2がCo(III)、Xが塩素(Cl)、Lがtert−ブチルアルコールであるものが特に好ましい。
【0018】
DMC触媒の製造方法は特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、(i)ハロゲン化金属塩と、シアノメタレート酸および/またはアルカリ金属シアノメタレートとを水溶液中で反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させ、次いで、生成した固体成分を分離し、分離した固体成分をさらに有機配位子水溶液で洗浄する方法、または、(ii)有機配位子水溶液中でハロゲン化金属塩と、シアノメタレート酸および/またはアルカリ金属シアノメタレートとを反応させ、得られる反応生成物(固体成分)を分離し、その分離した固体成分をさらに有機配位子水溶液で洗浄する方法、によって得られるケーキ(固体成分)をろ過分離し、さらに乾燥させる方法が挙げられる。
【0019】
上記アルカリ金属シアノメタレートのシアノメタレートを構成する金属は、上式(1)のM
2に相当する。
本発明のDMC触媒の製造原料として用いるシアノメタレート酸またはアルカリ金属シアノメタレートとしては、H
3[Co(CN)
6]、Na
3[Co(CN)
6]、または、K
3[Co(CN)
6]が好ましく、Na
3[Co(CN)
6]、または、K
3[Co(CN)
6]が特に好ましい。
【0020】
ケーキをろ過分離する前の段階で、有機配位子水溶液に固体成分を分散させた液にポリエーテルポリオールを混合し、得られた混合液から水および過剰な有機配位子を留去することによって、DMC触媒がポリエーテルポリオール中に分散したスラリー状のDMC触媒混合物(以下、「スラリー状DMC触媒」とも記す。)を調製することもできる。
上記スラリー状DMC触媒を調製するために用いるポリエーテルポリオールは、アニオン重合触媒やカチオン重合触媒を用い、多価アルコールからなる群より選ばれる1種以上の開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造することができる。該ポリエーテルポリオールは、水酸基数が2〜8、数平均分子量(Mn)が300〜5,000であることが好ましい。DMC触媒の重合活性が高く、かつスラリー状DMC触媒の粘度も高くならずに取り扱いやすい点から好ましい。
【0021】
ポリオール(A1)の製造に用いるDMC触媒の量は、ポリオール(A1)の目標分子量を得るのに必要な量以上に設定される。
得られるポリオール(A1)に残存するDMC触媒およびDMC触媒に由来する金属化合物は少ない方が好ましい。これらが少ないと、ポリオール(A1)とポリイソシアネート化合物との反応速度や、ポリオール(A1)を原料に用いて製造された軟質フォームの物性に及ぼす残存DMC触媒の影響を小さくすることができる。
【0022】
本発明において、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた中間ポリオールまたはポリオール(A1)からDMC触媒を除去する操作を行ってもよい。しかし、中間ポリオールまたはポリオール(A1)に残存するDMC触媒の量が少なく、ポリオール(A1)とポリイソシアネート化合物との反応や、最終製品の特性に悪影響を及ぼさない場合は、DMC触媒を除去することなく次の工程へ進むことができるため、ポリオール(A1)の生産効率を高めることができる。
具体的に、重合反応終了時のポリオール(A1)中に含まれる、DMC触媒に由来する金属(例えばZnやCo等)の合計量が1〜30ppmであることが好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。該DMC触媒に由来する金属の合計量が30ppm以下であると、得られたポリオール(A1)からの残存触媒の除去が不要となりやすい。
【0023】
また、必要に応じて、得られた中間ポリオールまたはポリオール(A1)に対して、DMC触媒の除去処理および/またはDMC触媒の失活処理を行うこともできる。その方法としては、例えば、合成珪酸塩(マグネシウムシリケート、アルミニウムシリケート等)、イオン交換樹脂および活性白土等から選択される吸着剤を用いる吸着法や、アミン、水酸化アルカリ金属、有機酸、または鉱酸による中和法、中和法と吸着法を併用する方法等を用いることができる。
【0024】
[開始剤]
ポリオール(A1)の製造に用いる開始剤は、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物である。開始剤の好ましい水酸基数は2〜12であり、2〜8がより好ましく、2〜6が特に好ましい。水酸基数が12以下の開始剤を用いると、得られるポリオール(A1)の分子量分布が小さくなりやすい。開始剤は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。開始剤の平均水酸基数は2〜8であり、2.5〜6.5が好ましく、2.5〜4.5が特に好ましい。開始剤の平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると、得られるポリオール(A1)を用いて製造した軟質フォームの良好な硬度が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、該軟質フォームの良好な耐久性が得られやすい。
開始剤の具体例としては、水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類;グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖、メチルグルコシド等の糖類またはその誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール、レゾルシン等のフェノール類、等が挙げられる。
【0025】
また、開始剤としては、これらの化合物にアルキレンオキシドを公知の方法で重合させて得られるポリエーテルポリオールおよびポリオキシテトラメチレングリコールからなる群より選ばれる化合物も開始剤として使用できる。該化合物は、数平均分子量(Mn)が300〜20,000であり、1分子当たりの水酸基数が2〜12個であることが好ましい。また、水酸基価は187mgKOH/g以下が好ましい。
【0026】
開始剤の数平均分子量(Mn)は、18〜20,000が好ましく、300〜10,000がより好ましく、600〜5,000が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が300以上の開始剤を用いると、特に、DMC触媒存在下における前記開環付加重合反応が開始するまでの時間を短くできる。数平均分子量(Mn)が20,000以下であると、開始剤の粘度が高すぎず、前記開環付加重合反応が均一になりやすい。
なお、開始剤としての低分子アルコール等、同じ分子量の分子のみから構成されている場合は、化学式から求められる分子量を開始剤の数平均分子量(Mn)とする。
開始剤の水酸基価は6,300mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、187mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0027】
[アルキレンオキシド]
開始剤の活性水素原子にアルキレンオキシドを反応させることにより、アルキレンオキシドが開環付加してオキシアルキレン基を有するポリオールが生成する。活性水素原子に1分子のアルキレンオキシドが開環付加することによりヒドロキシアルキル基が生成し、また、その水酸基に引き続きアルキレンオキシドが開環付加し、この反応が繰り返されてオキシアルキレン基の連鎖が生成する。アルキレンオキシドがエチレンオキシドの場合は、オキシエチレン基が連鎖し、アルキレンオキシドがプロピレンオキシドの場合は、オキシプロピレン基が連鎖する。
【0028】
中間ポリオールを製造する際に、開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドは、炭素数が2〜20であるアルキレンオキシドが好ましい。具体例としては、エチレンオキシド(以下、EOともいう。)、プロピレンオキシド(以下、POともいう。)、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、シクロペンタンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよび炭素数5〜20のα−オレフィンオキシド等が挙げられる。アルキレンオキシドは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらのうちでエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシドまたは2,3−ブチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドが特に好ましい。特に、プロピレンオキシドを単独で用いるか、またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドの両方を用いることが好ましく、プロピレンオキシドを単独で用いることが特に好ましい。プロピレンオキシドを単独で用いることで、得られる軟質ウレタンフォームの湿熱圧縮永久歪みが良好となる。なお、アルキレンオキシドを2種以上用いる場合、開始剤へのアルキレンオキシドの開環付加重合は、ランダム重合、ブロック重合、ランダム重合とブロック重合の併用いずれでもよい。
【0029】
[中間ポリオールの製造方法]
DMC触媒の存在下で、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて中間ポリオールを得る工程は公知の方法でも行うことができる。
中間ポリオールの好ましい製造方法は、開始剤とDMC触媒とを含む反応液に、前記アルキレンオキシドの一部(以下、初期活性化用モノマーということもある。)を供給して反応させる初期活性化工程(a)と、初期活性化工程(a)の後に、アルキレンオキシドを追加供給して、DMC触媒の存在下で開環付加重合させる追加重合工程(b)とを有する方法である。
初期活性化工程(a)で供給するアルキレンオキシド(初期活性化用モノマー)は、ポリオール(A1)の製造において、開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドの一部である。
アルキレンオキシドを開環付加重合させる際には、開環付加重合反応に悪影響を及ぼさない溶媒(付加重合溶媒)を適宜用いてもよい。該付加重合溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびエチルメチルケトンが挙げられる。付加重合溶媒を用いない場合は、生成物からの溶媒除去工程が不要となり生産性を高めることができる。また、付加重合溶媒に含まれる水分や酸化防止剤の影響によってDMC触媒の触媒活性が低下する場合があり、付加重合溶媒を用いないことによって、そのような不都合の発生を防止できる。
本方法は、バッチ式で行うことが好ましい。具体的には以下のように実施できる。
【0030】
初期活性化工程(a)
まず、撹拌手段および温度調節手段を備えた耐圧反応容器に、開始剤の全量とDMC触媒の全量とを入れ、混合して反応液を調製する。通常、開始剤は粘性液体であり、DMC触媒は粒子状または該粒子を含むスラリー状である。該反応液は必要に応じて付加重合溶媒を含んでもよい。また反応液は、DMC触媒の製造工程において必要に応じて添加された成分を含んでもよい。
開始剤とDMC触媒との「混合」とは、両者が全体として均一に混ざり合った状態をいい、初期活性化工程(a)(以下、工程(a)ともいう。)では、両者がこのような「混合」状態にあることが必要である。
工程(a)における混合手段としては、DMC触媒と開始剤(必要に応じて添加される成分を含む。)とを充分に混合できる手段であれば特に制限されない。混合手段として、通常は、撹拌手段が用いられる。
【0031】
次に、好ましくは耐圧反応容器内を窒素置換する。これにより反応液中の酸素が除去される。反応液中の酸素量としては対窒素量で1質量%以下が好ましい。
耐圧反応容器内の排気は、開始剤の水分が多すぎる場合等、工程上必要な場合に行うのが好ましい。
【0032】
次いで、反応液を撹拌しながら加熱して昇温した後、該反応液の温度が所定の初期温度にある状態で、初期活性化用モノマーを供給して反応させる(初期活性化工程)。本明細書における初期温度とは、初期活性化用モノマーの供給開始の直前の反応液の温度をいう。
反応液の初期温度は120〜165℃とする。好ましくは125〜150℃であり、130〜140℃が特に好ましい。初期温度が上記範囲の下限値以上であると触媒活性が格段に良くなり、初期温度が上記範囲の上限値以下であると反応液に含まれる成分自身の熱分解が起こる心配がない。
【0033】
具体的には、反応液を撹拌しながら初期温度まで昇温し、該反応液の温度が維持された状態で初期活性化用モノマーの供給を開始することが好ましい。例えば、反応液が所定の初期温度に達したら加熱を止め、反応液の温度が降下しはじめる前に初期活性化用モノマーの供給を開始する。加熱を止めてから初期活性化用モノマーの供給開始までの時間は特に問わないが、効率の点から、1時間以内が好ましい。
初期活性化用モノマーは所定の速度で連続的または間欠的に供給することが好ましい。初期活性化用モノマーの供給速度は、得られるポリオールの10,000g当たり、100〜3,500g/時間が好ましく、150〜3,000g/時間が特に好ましい。
【0034】
初期活性化用モノマーの供給量は、反応液に含まれる開始剤の100質量部に対して5〜20質量部が好ましく、8〜15質量部がより好ましく、10〜12質量部が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると初期活性化が起こりやすく、上限値以下であると暴走反応を防止しやすい。
【0035】
初期活性化用モノマーの供給は、耐圧反応容器を密閉した状態で行う。反応液に初期活性化用モノマーが供給されると、直後に、未反応の初期活性化用モノマーの気化に伴って耐圧反応容器の内圧が上昇する。次いで、DMC触媒が初期活性化されると初期活性化用モノマーと開始剤との反応が生じ、耐圧反応容器の内圧が低下しはじめると同時に反応熱により反応液の温度が上昇する。供給された初期活性化用モノマーの全量が反応し終えると、耐圧反応容器の内圧は供給前と同程度にまで低下し反応熱による反応液の温度上昇はなくなる。
本明細書における初期活性化工程とは、初期活性化用モノマーの供給を開始してから、該初期活性化用モノマーの反応が終了するまでの工程をいう。初期活性化用モノマーの反応終了は耐圧反応容器の内圧低下によって確認できる。すなわち、初期活性化工程の終了とは、耐圧反応容器の内圧が初期活性化用モノマーの供給前と同程度まで低下した時をいう。
工程(a)の反応時間、すなわち初期活性化用モノマーの供給を開始してから、該初期活性化用モノマーの反応が終了するまでの時間は、特に限定されないが、概ね10〜60分程度で行われる。
【0036】
工程(a)において、反応液の最高温度が、該反応液の初期温度より15℃〜50℃高くなるようにする。該最高温度は初期温度より20℃以上高いことがより好ましく、25℃以上高いことが特に好ましい。初期活性化用モノマーと開始剤との反応による発熱量は大きいため、通常は、加熱を施さなくても反応液の温度は初期温度より15℃以上高い最高温度にまで上昇し、その後は冷却しなくても次第に温度が低下する。初期活性化用モノマーの量が多いほど、反応熱による反応液の温度上昇は大きい。反応液の冷却は、温度が上がり過ぎる等、必要に応じて行えばよい。最高温度に達した後は、温度が低下する時間を短縮するために反応液を冷却することが好ましい。
冷却は、例えば、反応液中に冷媒が流通する冷却管を設けて熱交換する方法で行うことができる。該冷媒の温度、冷媒の流通速度および冷媒の流通タイミングによって反応液の温度を制御することができる。
【0037】
該反応液の最高温度と初期温度との差が上記範囲の下限値以上であると、分子量分布が小さいポリオール(A1)が得られやすい。該反応液の最高温度が、初期温度との差が50℃を超えて高くなると反応容器の耐圧構造上好ましくない。
該最高温度の値は、135〜180℃の範囲内であることが好ましく、145〜180℃の範囲内がより好ましく、150〜180℃の範囲内が特に好ましい。
工程(a)における反応液の温度は、初期活性化用モノマーと開始剤との反応に伴って該反応液の温度が上昇して最高温度に達した後、該初期活性化用モノマーの反応が終了するまで、初期温度以上の温度範囲に保たれることが好ましく、初期温度より15℃以上高い温度範囲に保たれることが特に好ましい。
【0038】
追加重合工程(b)
工程(a)後、アルキレンオキシドの残部を追加供給するとともに、反応液の温度を所定の重合温度に調整し、撹拌しながら重合反応させることにより、中間ポリオールを得る(追加重合工程、以下工程(b)ともいう。)。
工程(b)において、アルキレンオキシドは所定の速度で連続的または間欠的に供給することが好ましい。該アルキレンオキシドの供給速度は、得られるポリオールの10,000g当たり、100〜3,500g/時間が好ましく、150〜3,000g/時間が特に好ましい。
工程(b)において、追加供給するアルキレンオキシドが1種であればブロック鎖が形成され、2種以上のアルキレンオキシドの混合物であればランダム共重合鎖が形成される。
工程(b)では、反応容器として撹拌手段および温度調節手段を備えた耐熱反応容器を用いる。該耐熱反応容器としては、耐圧製オートクレーブ容器を用いるのがよいが、追加供給するアルキレンオキシドの沸点が高い場合は耐高圧でなくてもよい。材質は特に問わない。なお、反応容器は、上記工程(a)で用いた容器をそのまま用いることが可能である。
工程(b)における開環付加重合反応は、バッチ法が好ましい。または、上記工程(a)を終えた後の反応液(DMC触媒と開始剤とを含む混合物)およびアルキレンオキシドの供給と、生成物であるポリオール(A1)の抜き出しを同時に行う連続法で行うこともできる。特に、開始剤の水酸基1個あたりの平均分子量が300以下の場合は、連続法が好ましい。
【0039】
アルキレンオキシドが追加供給されると、直後に、未反応のアルキレンオキシドの気化に伴って反応容器の内圧が上昇する。次いで、アルキレンオキシドと開始剤との反応が生じ、反応容器の内圧が低下しはじめると同時に反応熱が生じる。追加供給されたアルキレンオキシドの全量が反応し終えると、反応容器の内圧は追加供給前と同程度にまで低下する。
追加供給されたアルキレンオキシドの反応終了は反応容器の内圧低下によって確認できる。
【0040】
追加供給したアルキレンオキシドを反応させる際の反応液の温度(重合温度)は、125〜180℃の範囲が好ましく、125〜160℃の範囲が特に好ましい。重合温度が上記範囲の下限値以上であると良好な反応速度が得られやすく、最終生成物における未反応物の残存量を低くできる。上記範囲の上限値以下であるとDMC触媒の高い活性が良好に保たれ、分子量分布が小さなりやすい。
追加供給されたアルキレンオキシドの反応が終了した後、反応液を冷却し、反応生成物の精製を行うことが好ましい。
【0041】
得られた中間ポリオールから、必要に応じて、DMC触媒の除去処理およびDMC触媒の失活処理を行ってもよい。その方法としては、例えば、合成珪酸塩(マグネシウムシリケート、アルミニウムシリケート等)、イオン交換樹脂、および活性白土等から選択される吸着剤を用いた吸着法や、アミン、水酸化アルカリ金属、リン酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸、酢酸等の有機酸およびその塩、または硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸による中和法、中和法と吸着法を併用する方法等を用いることができる。
かかるDMC触媒の除去処理およびDMC触媒の失活処理は、ポリオール(A1)を製造した後に行ってもよい。
本発明においては、中間ポリオールにエチレンオキシドを開環付加させる工程において、アルカリ金属の水酸化物を重合触媒として用いるので、かかるDMC触媒の除去処理を省略することもできる。
【0042】
[エチレンオキシドの開環付加重合工程]
得られた中間ポリオールに、重合触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用いて、所定量のエチレンオキシドを開環付加重合させてポリオール(A1)を得る。
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)が挙げられる。中でも水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが安価である点で好ましい。
重合触媒としてのアルカリ金属の水酸化物は、アルコラート化した状態で用いてもよい。アルカリ金属のアルコラート化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド(CH
3ONa)、カリウムメトキシド(CH
3OK)、ナトリウムエトキシド(C
2H
5ONa)、カリウムエトキシド(C
2H
5OK)等が挙げられる。
【0043】
具体的には、中間ポリオールが生成した反応液に、重合触媒としてアルカリ金属の水酸化物を投入し、さらにEOを投入して開環付加重合させる。これにより中間ポリオールの末端に、オキシエチレン基からなるブロック鎖(本明細書において、末端オキシエチレン基ともいう。)が付加した、いわゆるストレートキャップ構造を有するポリエーテルポリオール(A1)が得られる。
重合触媒としてのアルカリ金属水酸化物の使用量は、できるだけ少量であることが好ましい。該使用量は、例えば得ようとするポリオール(A1)の仕上がり量に対して3,000ppm程度が好ましい。
本工程におけるEOの開環付加重合温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃が好ましく、60〜150℃が特に好ましい。EOの開環付加重合反応は、撹拌下で行うことが好ましい。また前記付加重合溶媒を用いてもよい。
【0044】
本工程において、中間ポリオールに開環付加重合させるEOの量は、開始剤1モル当たりのモル数(以下、末端EO付加モル数ということもある)で、1〜23モルであり、10〜23モルが好ましく、15〜23モルが特に好ましい。該末端EO付加モル数が、上記範囲の下限値以上であるとポリイソシアネート化合物(B)との充分な反応性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、フォームの物性を損なわずに、貯蔵したポリオールシステム液の使用して得られたフォームの機械特性の低下を抑制できる。
【0045】
本工程において、EOは所定の速度で連続的または間欠的に供給することが好ましい。該EOの供給速度は、得られるポリオール10,000g当たり、100〜3,500g/時間が好ましく、150〜3,000g/時間が特に好ましい。
こうして得られたポリオール(A1)には、長期間の貯蔵時における劣化を防止するために、必要に応じて安定化剤を添加してもよい。安定化剤としてはBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0046】
中間ポリオールを製造する際に、上記特定の温度で工程(a)を行うことにより、得られるポリオール(A1)の分子量分布(Mw/Mn)をより小さくすることができる。これによりポリオール(A1)が低粘度化され取り扱い性が向上する。
特に、水酸基価が小さい、高分子量のポリオール(A1)は、分子量分布が広いほど数平均分子量(Mn)が100,000以上の高分子量体が多く含まれ、ポリオールの粘度が著しく大きくなるため、分子量分布を小さくすることによる低粘度化の効果が大きい。
【0047】
かかる分子量分布の小さいポリオール(A1)が得られる理由は明確ではないが、次のような理由であると推定している。DMC触媒は触媒製造時には、触媒活性がない凝集体としてのみ得ることができる。そこで、DMC触媒を用いた開環付加重合において、工程(a)を行うことによって、凝集体が解砕され、DMC触媒の表面積が増大し、触媒活性が発現する。このとき、開始剤とDMC触媒とアルキレンオキシドの一部を用い、初期温度よりも高い最高温度に達する条件で工程(a)を行うことにより、DMC触媒凝集体の解砕がより効率化され、触媒活性がより向上する。そして、工程(b)で追加供給されたアルキレンオキシドの開環付加重合反応が終了するまで、該DMC触媒の高い活性が良好に保たれて、分子量が均一な重合体が多く生成されるためと考えられる。
ポリオール(A1)中に存在する水酸基のうち一級水酸基の割合で表される一級化率(単位:モル%)が75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。75モル%以上であるとポリイソシアネート化合物(B)との反応性が十分となる。
【0048】
<ポリオール(A)>
本発明におけるポリオール(A)は、軟質ポリウレタンフォームの製造において、ポリイソシアネート化合物との反応に用いられるポリオールの全部を意味し、1種のポリオールでもよく、2種以上のポリオールの混合物でもよく、ポリオール中に分散されたポリマー粒子を含んでもよい。
ポリオール(A)は、ポリオール(A1)を含む。
【0049】
ポリオール(A)の全量中における、ポリオール(A1)の含有量は2〜100質量%が好ましい。上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(A1)を用いたことによる軟質ポリウレタンフォームの機械特性向上効果が充分に得られやすい。
本発明者等の知見によれば、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下は、ポリオール(A)において、DMC触媒を用いて製造したポリエーテルポリオールが占める割合が多い場合により発生しやすい。したがって、本発明は、ポリオール(A)中のポリオール(A1)の含有量が50質量%以上である場合に特に効果が大きい。ポリオール(A)中における、ポリオール(A1)のより好ましい含有量は50〜100質量%であり、60〜100質量%が特に好ましい。
【0050】
[他のポリオール(A2)]
ポリオール(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオール(A1)に該当しない、他のポリオール(A2)を含んでもよい。
他のポリオール(A2)としては、例えば、ポリオール(A1)の範疇に含まれない他のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。ただし後述の架橋剤(E)または破泡剤(F)のいずれかに含まれるものは、ポリオール(A2)には含まれないものとする。
これらは公知のものを用いることができる。ポリオール(A2)は、例えば重合触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用いて、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールである。ポリオール(A2)は1種または2種以上を用いてもよい。
【0051】
ポリオール(A2)の平均水酸基数は2〜8が好ましく、2〜6が特に好ましい。平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると軟質フォームの良好な耐久性、乗り心地性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、軟質フォームの良好な機械特性が得られやすい。
ポリオール(A2)の水酸基価は20〜160mgKOH/gが好ましく、22〜60mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると粘度が低くなり、良好な作業性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、軟質フォームの良好な機械特性が得られやすい。
ポリオール(A2)の数平均分子量(Mn)は700〜22,000が好ましく、1,500〜20,000がより好ましく、2,000〜15,000が特に好ましい。
ポリオール(A)中におけるポリオール(A2)の含有量は、98質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0052】
[ポリマー分散ポリオール]
ポリオール(A)は、ポリマー粒子(H)を含有してもよい。ポリマー粒子(H)を含有させることにより、軟質フォームの硬度、通気性、その他の物性を向上させることができる。
例えば、ポリオール(A1)をベースポリオールとし、その中にポリマー粒子(H)を分散させたポリマー分散ポリオールを、ポリオール(A)に含有させてもよく、または他のポリオール(A2)をベールポリオールとし、その中にポリマー粒子(H)を分散させたポリマー分散ポリオール(A21)を、ポリオール(A)に含有させてもよく、これらの両方を用いてもよい。他のポリオール(A2)中にポリマー粒子(H)を分散させたポリマー分散ポリオール(A21)を用いることが好ましく、該他のポリオール(A2)がアルカリ金属水酸化物触媒の存在下で、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールであることが特に好ましい。
ポリマー粒子(H)は、ビニル系モノマー(M)を重合させて得られる粒子が好ましく、縮合系モノマー(N)を重合させて得られる粒子でもよい。成形性およびフォーム物性の点で、ビニル系モノマー(M)を重合させて得られる粒子が好ましい。
【0053】
[ビニル系モノマー(M)]
ビニル系モノマー(M)としては、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル等が挙げられる。ビニル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ビニル系モノマーとして、アクリロニトリルとスチレンとの組み合わせが好ましい。
[縮合系モノマー(N)]
縮合系ポリマー(N)としては、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタンおよびメラミン等が挙げられる。
【0054】
ポリマー分散ポリオールは、ベースポリオール中でモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られる。
ポリマー分散ポリオールの水酸基価は、JIS K1557−1:2007に従い測定した値である。
ポリマー分散ポリオール全体の水酸基価はベースポリオールの水酸基価よりも一般的に低下する。
【0055】
他のポリオール(A2)中にポリマー粒子(H)を分散させたポリマー分散ポリオール(A21)を用いる場合、該ポリマー分散ポリオール(A21)の水酸基価は、15〜50mgKOH/gが好ましく、17〜40mgKOH/gが特に好ましい。
該ポリマー分散ポリオール(A21)を用いる場合、ポリオール(A)中におけるポリマー分散ポリオール(A21)の含有量(ポリマー粒子を含む)は0超〜60質量%以下が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
またポリオール(A)の全体における、ポリマー粒子(H)の含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が特に好ましい。ポリマー粒子(H)の含有量が上記範囲の上限値以下であると、ポリオール(A)の粘度が適度となり、良好な作業性が得られやすい。ポリマー粒子(H)の含有量の下限は特に限定されないが、ポリマー粒子を含有させることによる効果が充分に得られやすい点で1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0056】
<他の高分子量活性水素化合物>
ポリイソシアネート化合物(B)と反応させる化合物として、ポリオール(A)以外の活性水素を有する化合物を、ポリオール(A)と併用してもよい。ただし後述の架橋剤(E)および破泡剤(F)のいずれかに含まれるものは、当該他の高分子量活性水素化合物には含まれないものとする。
他の高分子量活性水素化合物としては、第1級アミノ基または第2級アミノ基を2以上有する高分子量ポリアミン;第1級アミノ基または第2級アミノ基を1以上、かつ水酸基を1以上有する高分子量化合物;ピペラジン系ポリオール等が挙げられる。
【0057】
該高分子量ポリアミンまたは該高分子量化合物としては、ポリエーテルポリオールの水酸基の一部または全部をアミノ基に変換した化合物;ポリエーテルポリオールと過剰当量のポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーのイソシアネート基を加水分解してアミノ基に変換した化合物が挙げられる。
【0058】
ピペラジン系ポリオールは、ピペラジン類にアルキレンオキシドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオールである。
ピペラジン類とは、ピペラジン、または、ピペラジン中の水素原子をアルキル基、アミノアルキル基等の有機基で置換した置換ピペラジンを意味する。
ピペラジン類は活性水素を少なくとも2個有する。
ピペラジン系ポリオールにおいては、ピペラジン環を構成する2個の窒素原子は3級アミンとなる。
【0059】
ピペラジン類としては、ピペラジン、環を構成する炭素原子に結合した水素原子を低級アルキル基で置換したアルキルピペラジン類(2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−ブチルピペラジン、2−ヘキシルピペラジン、2,5−、2,6−、2,3−または2,2−ジメチルピペラジン、2,3,5,6−または2,2,5,5−テトラメチルピペラジン等。)、環を構成する窒素原子に結合した水素原子をアミノアルキル基で置換したN−アミノアルキルピペラジン類(N−(2−アミノエチル)ピペラジン等。)が挙げられ、置換ピペラジン類が好ましく、アミノアルキル基等で水素を置換したピペラジンのような、窒素原子を分子中に3個以上有する置換ピペラジン類が特に好ましい。
また、置換ピペラジン類としては、N−置換ピペラジンが好ましく、N−アミノアルキルピペラジン類がより好ましく、N−(アミノエチル)ピペラジンが特に好ましい。
【0060】
ピペラジン類に開環付加重合させるアルキレンオキシドとしては、炭素数2以上のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシドおよびスチレンオキシド等が挙げられる。
【0061】
他の高分子量活性水素化合物の、官能基当たりの分子量は、400以上が好ましく、800以上が特に好ましい。該官能基当たりの分子量の上限は、5,000以下が好ましい。
他の高分子量活性水素化合物の平均官能基数は、2〜8が好ましい。
【0062】
他の高分子量活性水素化合物の割合は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)のうち、20質量部以下が好ましく、0質量部が特に好ましい。他の高分子量活性水素化合物の割合が20質量部以下であれば、ポリイソシアネート化合物(B)との反応性が大きくなりすぎず、軟質フォームの成形性等が良好となる。
【0063】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
ポリイソシアネート化合物(B)としては、イソシアネート基を2以上有する芳香族系ポリイソシアネート化合物、または、その2種類以上の混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称ポリメリックMDI)およびこれらの変性体よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。変性体としては、プレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体およびカルボジイミド変性体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(B)は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このうち、TDIまたはMDIを含むことが好ましく、得られる軟質フォームを軽量化できる点では、少なくともTDIを含むことが好ましく、TDIとMDIの混合物が好ましい。TDIとMDIの混合比(質量比)TDI/MDIは、例えば、100/0〜0/100であり、100/0〜10/90が好ましく、90/10〜50/50が特に好ましい。
【0064】
ポリイソシアネート化合物(B)は、プレポリマーであってもよい。プレポリマーとしては、TDI、MDIまたはクルードMDI(ポリメリックMDIともいう)と、天然油脂由来ポリオール、天然油脂由来ポリオールにアルキレンオキシドを開環付加重合させたポリエーテルポリオール、または石油系のポリエーテルポリオールとのプレポリマーが挙げられる。
【0065】
ポリイソシアネート化合物(B)の使用量は、イソシアネートインデックスで70〜125となる量が好ましく、80〜120がより好ましく、85〜120が特に好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリオール(A)、他の高分子量活性水素化合物、架橋剤(E)、および水等のすべての活性水素の合計に対するイソシアネート基の数の100倍で表した数値である。
【0066】
<触媒(C)>
触媒(C)は、ウレタン化反応を促進する触媒である。
触媒(C)としては、アミン化合物、有機金属化合物、反応型アミン化合物およびカルボン酸金属塩等が挙げられる。触媒(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0067】
アミン化合物としては、トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルのジプロピレングリコール溶液、モルホリン類、ピペラジン類等の脂肪族アミン類、および脂環族アミン類が挙げられる。
ウレタン化反応における初期の増粘を抑制させて成形性を向上させるためには、ピペラジン類を使用することが好ましい。
反応型アミン化合物は、アミン化合物の構造の一部をイソシアネート基と反応するように、水酸基化またはアミノ化した化合物である。
反応型アミン化合物としては、ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミノエチルエタノールアミンおよびジメチルアミノエトキシエトキシエタノール等が挙げられる。
アミン化合物触媒および反応型アミン化合物触媒の量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、2質量部以下が好ましく、0.05〜1.5質量部が特に好ましい。
【0068】
有機金属化合物としては、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。具体例としては、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズ、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズオキシド、ジ−n−オクチルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロリド、ジ−n−ブチルスズジアルキルメルカプタン、ジ−n−オクチルスズジアルキルメルカプタン等が挙げられる。
有機金属化合物の量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、2質量部以下が好ましく、0.005〜1.5質量部が特に好ましい。
【0069】
<発泡剤(D)>
発泡剤(D)としては、水および不活性ガスからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。取り扱いの簡便性と環境への負荷軽減の点から水のみが好ましい。
不活性ガスとしては、空気、窒素ガスおよび液化炭酸ガスが挙げられる。
発泡剤(D)の量は、発泡倍率等の要求に応じて適宜調整すればよい。
【0070】
本発明者等の知見によれば、DMC触媒を用いて製造したポリエーテルポリオールを使用して軟質ポリウレタンフォームを製造する場合の、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下は、発泡剤として水を用いた場合により発生しやすい。したがって、本発明は、発泡剤が水を含む場合により有効であり、発泡剤が水のみからなる場合に特に効果が大きい。
発泡剤(D)が水のみからなる場合、水の量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、10質量部以下が好ましく、0.1〜8質量部が特に好ましい。
【0071】
<架橋剤(E)>
本発明においては、必要に応じて架橋剤(E)を用いてもよい。架橋剤(E)を用いることにより、軟質フォームの硬度向上等の効果が得られる。
架橋剤(E)としては、活性水素を有する基(本明細書では活性水素基という。)を2個以上有する化合物が用いられる。活性水素基としては、水酸基、第1級アミノ基、または第2級アミノ基が挙げられる。架橋剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、前記ポリオール(A1)および後述の破泡剤(F)に含まれるものは、架橋剤(E)には含まれないものとする。
架橋剤(E)として、下記第1の架橋剤(E1)および/または第2の架橋剤(E2)を用いることが好ましい。
【0072】
[第1の架橋剤(E1)]
第1の架橋剤(E1)は、活性水素基を2個以上有する開始剤に、触媒の存在下もしくは触媒を使用しない条件下でアルキレンオキシドを開環付加重合させる工程を経て得られるポリオキシアルキレンポリオールであって、水酸基価が100〜2,500mgKOH/gである化合物からなる。
触媒としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)等の、アルカリ金属の水酸化物が好適に用いられる。
アルキレンオキシドは、ポリオール(A1)におけるアルキレンオキシドと同様のものが挙げられる。アルキレンオキシドを2種以上用いる場合、開始剤へのアルキレンオキシドの開環付加重合は、ランダム重合、ブロック重合、ランダム重合とブロック重合の併用いずれでもよい。
第1の架橋剤(E1)としては、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加して得られる、水酸基価が100〜1,500mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール(以下、架橋剤(E11)ということもある。)、またはアミン化合物を開始剤とし、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が100〜2,500mgKOH/gのポリエーテルポリオール(以下、架橋剤(E12)ということもある。)が好ましい。
【0073】
架橋剤(E11)の具体例としては、ビスフェノールA−アルキレンオキシド付加物、グリセリン−アルキレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−アルキレンオキシド付加物、ペンタエリスリトール−アルキレンオキシド付加物、ソルビトール−アルキレンオキシド付加物、シュークロース−アルキレンオキシド付加物、脂肪族アミン−アルキレンオキシド付加物、脂環式アミン−アルキレンオキシド付加物、複素環ポリアミン−アルキレンオキシド付加物および芳香族アミン−アルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
架橋剤(E11)の活性水素基の数は2〜8個が好ましく、3〜7個が特に好ましい。
架橋剤(E11)の水酸基価は100〜1,500mgKOH/gが好ましく、200〜1,000mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬度が良好な軟質フォームを得ることができる。上限値以下であると、耐久性が良好な軟質フォームを得ることができる。
【0074】
架橋剤(E11)としては、ポリオール(A1)を用いて製造される軟質フォームの硬度向上効果が大きい点でペンタエリスリトール−アルキレンオキシド付加物、ソルビトール−アルキレンオキシド付加物またはトリメチロールプロパン−アルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0075】
架橋剤(E12)の具体例としては、エチレンジアミン−アルキレンオキシド付加物、モノエタノールアミン−アルキレンオキシド付加物、ジエタノールアミン−アルキレンオキシド付加物およびトルエンジアミン−アルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
このうち、軟質フォームの硬度向上効果が大きい点で、エチレンジアミン−アルキレンオキシド付加物が好ましい。
架橋剤(E12)の活性水素基の数は2〜8個が好ましく、3〜7個が特に好ましい。
【0076】
架橋剤(E12)において、アミン化合物に開環付加重合させるアルキレンオキシドは、EOまたはPOが好ましく、アルキレンオキシドとしてPOのみを用いるか、またはPOとEOとの併用が特に好ましい。
架橋剤(E12)の水酸基価は100〜2,500mgKOH/gが好ましく、100〜1,500mgKOH/gがより好ましく、200〜1,000mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬度が良好な軟質フォームを得ることができる。上限値以下であると、耐久性が良好な軟質フォームを得ることができる。
架橋剤(E12)を用いると、ポリオール(A1)を用いて製造される軟質フォームの硬度向上効果が大きくなりやすい。
【0077】
[第2の架橋剤(E2)]
第2の架橋剤(E2)は、ポリエーテル鎖を有しない化合物であって、活性水素基を2個以上有し、水酸基価が1,000mgKOH/gより大きい化合物からなる。
第2の架橋剤(E2)としては、多価アルコールおよび水酸基価が1,000mgKOH/gより大きいアミン系架橋剤が挙げられる。アミン系架橋剤は芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、または脂環式ポリアミンが好ましい。
多価アルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのエタノールアミン類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンおよびN−アルキルジエタノール等が挙げられる。なお、エタノールアミン類は、これを製造する際に、触媒存在下でアンモニアまたは濃アンモニア水とエチレンオキシドを反応させる場合があるが、最終的に得られるエタノールアミン類はポリエーテル鎖を有しておらず、第2の架橋剤(E2)に含まれる。
【0078】
芳香族ポリアミンとしては、芳香族ジアミンが好ましい。芳香族ジアミンとしては、アミノ基が結合している芳香核にアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、電子吸引性基からなる群から選ばれた1個以上の置換基を有する芳香族ジアミンが好ましく、ジアミノベンゼン誘導体が特に好ましい。
電子吸引性基を除く前記置換基は、アミノ基が結合した芳香核に2〜4個結合していることが好ましく、アミノ基の結合部位に対してオルト位の1個以上に結合していることがより好ましく、すべてに結合していることが特に好ましい。
電子吸引性基は、アミノ基が結合している芳香核に1または2個結合していることが好ましい。電子吸引性基と他の置換基が1つの芳香核に結合していてもよい。
アルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基の炭素数は、4以下が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
電子吸引性基としては、ハロゲン原子、トリハロメチル基、ニトロ基、シアノ基またはアルコキシカルボニル基が好ましく、塩素原子、トリフルオロメチル基、またはニトロ基が特に好ましい。
【0079】
脂肪族ポリアミンとしては、炭素数6以下のジアミノアルカン、水酸基価が1,000mgKOH/gより大きいポリアルキレンポリアミン、低分子量ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基の一部ないし全部をアミノ基に変換して得られるポリアミンであって水酸基価が1,000mgKOH/gより大きいもの、アミノアルキル基を2個以上有する芳香族化合物等が挙げられる。
脂環式ポリアミンとしては、アミノ基および/またはアミノアルキル基を2個以上有するシクロアルカンが挙げられる。
【0080】
アミン系架橋剤の具体例としては、3,5−ジエチル−2,4(または2,6)−ジアミノトルエン(DETDA)、2−クロロ−p−フェニレンジアミン(CPA)、3,5−ジメチルチオ−2,4(または2,6)−ジアミノトルエン、1−トリフルオロメチル−3,5−ジアミノベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−クロロ−3,5−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、エチレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ジアミノヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられ、ジエチルトルエンジアミン[すなわち、3,5−ジエチル−2,4(または2,6)−ジアミノトルエンの1種または2種以上の混合物]、ジメチルチオトルエンジアミン、モノクロロジアミノベンゼン、トリフルオロメチルジアミノベンゼン等のジアミノベンゼン誘導体が好ましい。
【0081】
第2の架橋剤(E2)の活性水素基の数は2〜8個が好ましく、2〜6個が特に好ましい。第2の架橋剤(E2)の水酸基価は1,000超〜2,000mgKOH/gが好ましく、1,100〜1,900mgKOH/gが特に好ましい。
【0082】
架橋剤(E)の合計の使用量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜15質量部がより好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると軟質フォームに適度な硬度を付与することができ、発泡挙動が安定する。上記範囲の上限値以下であると軟質フォームに柔軟性が付与でき、引裂強さ、引張強さおよび伸び等の機械特性が良好となる。
架橋剤(E)として、第1の架橋剤(E1)と第2の架橋剤(E2)とを併用する場合、第1の架橋剤(E1)と第2の架橋剤(E2)との質量比(E1)/(E2)は、90/10〜10/90が好ましく、90/10〜50/50が特に好ましい。
【0083】
<破泡剤(F)>
本発明においては必要に応じて破泡剤(F)を用いてもよい。破泡剤(F)は、軟質フォームの気泡の一部を破裂させることで、独立気泡率を低下させるための成分である。破泡剤(F)を用いることにより、目的に応じて軟質フォームの通気性調整ができる。
破泡剤(F)としては、開始剤に、アルカリ金属水酸化物触媒の存在下で、EO、またはEOとPOとの混合物を、開環付加重合させる工程を経て得られるポリエーテルポリオールであって、平均水酸基数が2〜8、水酸基価が20〜200mgKOH/gのポリエーテルポリオールが用いられる。
破泡剤(F)としてのポリエーテルポリオールを100質量%とするとき、破泡剤(F)中に含まれるオキシエチレン基の合計は50〜100質量%であり、60〜100質量%が好ましく、65〜90質量%が特に好ましい。該オキシエチレン基の合計が、上記範囲の下限値以上であると、軟質フォームの独立気泡率を低下できる。
破泡剤(F)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
破泡剤(F)の平均水酸基数は2〜8が好ましく、2〜6が特に好ましい。該平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると、硬度が良好な軟質フォームを得ることができる。上限値以下であると、耐久性が良好な軟質フォームを得ることができる。
破泡剤(F)の水酸基価は20〜200mgKOH/gが好ましく、24〜150mgKOH/gがより好ましく、24〜100mgKOH/gがさらに好ましく、24〜60mgKOH/gが特に好ましい。該水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、ポリオールシステム液が粘度上昇しにくく取り扱いがしやすい。上限値以下であると、耐久性が良好な軟質フォームを得ることができる。
破泡剤(F)の合計の使用量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜7質量部がより好ましい。
【0085】
<整泡剤(G)>
本発明においては、必要に応じて整泡剤(G)を用いても良い。整泡剤は、良好な気泡を形成するための成分である。整泡剤(G)としては、シリコーン系整泡剤およびフッ素系整泡剤等が挙げられる。
【0086】
整泡剤(G)を用いる場合、特に下式(I)で表されるジメチルポリシロキサン(式中のnの平均値は1〜10)(以下、ジメチルポリシロキサン(I)ともいう。)を用いることが好ましい。ジメチルポリシロキサン(I)は貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下抑制に寄与する。
【0088】
なお、ジメチルポリシロキサン(I)は、ある1つの製造条件で製造された1種の化合物であっても、該1種の化合物にはnの値が異なる分子が存在するため、nは平均値で表される。
式(I)中のnの平均値が10以下であると、フォームの物性を損なわずに、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下を抑制する効果が得られやすい。軟質フォームの発泡安定性の点からは、該nの平均値の下限値は2が好ましく、3が特に好ましい。
ジメチルポリシロキサン(I)は、1種単独で用いてもよく、nの平均値が互いに異なる2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それぞれの化合物のnの平均値が上記の範囲内であればよい。
【0089】
ジメチルポリシロキサン(I)は市販品から入手可能である。
【0090】
整泡剤(G)を用いる場合の使用量は、ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜3質量部がより好ましく、0.01〜2質量部が特に好ましい。
整泡剤(G)の使用量が上記範囲の上限値以下であると、耐久性が良好な軟質フォームを得ることができる。上記範囲の下限値以上であると、発泡を安定に行うことができる。
【0091】
<他の配合剤>
その他、任意に用いる配合剤としては、充填剤、安定剤、着色剤、および難燃剤等が挙げられる。これらは公知のものを適宜用いることができる。
【0092】
<軟質ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、触媒(C)、発泡剤(D)および必要に応じて配合される他の成分を反応させる発泡工程を有する。
好ましい配合の組み合わせは以下である。
ポリオール(A1):ポリオール(A)中の50〜100質量%、
ポリオール(A21):ポリオール(A)中の1〜50質量%、
架橋剤(E):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して1〜15質量部、触媒(C):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜1質量部、発泡剤(D):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜5質量部、ポリイソシアネート化合物(B):イソシアネートインデックスで90〜110。
【0093】
または、
ポリオール(A1):ポリオール(A)中の50〜100質量%、
ポリオール(A21):ポリオール(A)中の1〜50質量%、
架橋剤(E):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して1〜15質量部、破泡剤(F):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜7質量部、触媒(C):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜1質量部、発泡剤(D):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜5質量部、ポリイソシアネート化合物(B):イソシアネートインデックスで90〜110。
【0094】
または、
ポリオール(A1):ポリオール(A)中の50〜100質量%、
ポリオール(A2):ポリオール(A)中の5〜50質量%、
ポリオール(A21):ポリオール(A)中の1〜50質量%、
架橋剤(E):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して1〜15質量部、破泡剤(F):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜7質量部、触媒(C):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜1質量部、発泡剤(D):ポリオール(A)および他の高分子量活性水素化合物の合計(100質量部)に対して0.1〜5質量部、ポリイソシアネート化合物(B):イソシアネートインデックスで90〜110。
【0095】
発泡工程の方法としては、密閉された金型内で、該ポリオール(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、触媒(C)、発泡剤(D)および必要に応じて配合される他の成分を含む液(反応性混合物)を発泡成形する方法(モールド法)、開放系で反応性混合物を発泡させる方法(スラブ法)が挙げられる。
【0096】
[モールド法]
モールド法としては、反応性混合物を直接密閉された金型内に直接注入する方法(反応射出成形法)、または反応性混合物を開放状態の金型内に注入した後に密閉する方法が好ましい。後者の方法としては、低圧発泡機または高圧発泡機を用いて反応性混合物を金型に注入する方法が好ましい。
高圧発泡機としては、2液を混合するタイプが好ましい。2液のうち、一方の液はポリイソシアネート化合物(B)であり、他方の液はポリイソシアネート化合物(B)以外の全成分の混合物である。場合によっては、触媒(C)または破泡剤(F)(通常、他のポリオールに分散または溶解して用いる。)を別成分とする、3液を混合するタイプであってもよい。
【0097】
発泡工程に用いる反応性混合物の温度は10〜40℃が好ましい。該温度が10℃以上であれば、反応性混合物の粘度が高くなりすぎず、液の混合性が良好となる。該温度が40℃以下であれば、反応性が高くなりすぎず、成形性等が良好となる。
金型温度は、10℃〜80℃が好ましく、30℃〜70℃が特に好ましい。
キュアー時間は、1〜20分が好ましく、3〜10分がより好ましく、3〜8分が特に好ましい。キュアー時間が1分以上であれば、キュアーが充分に行える。キュアー時間が20分以下であれば、生産性が良好となる。
【0098】
[スラブ法]
スラブ法としては、ワンショット法、セミプレポリマー法およびプレポリマー法等の公知の方法が挙げられる。軟質フォームの製造には、公知の製造装置を用いることができる。
【0099】
本発明の製造方法によれば、重合時に複合金属シアン化物錯体触媒を用いたポリオール(A1)を用いることにより、軟質フォームの引裂強さ、引張強さおよび伸びが良好で機械特性に優れた軟質フォームが得られる。したがって、自動車用シートクッションまたは家具用クッション等として用いたときに、人の動きによる軟質フォームの劣化が良好に抑制される。
【0100】
また、本発明者等の知見によれば、DMC触媒を用いて製造したポリエーテルポリオールの中でも、DMC触媒を用いて製造した中間ポリオールの末端に、アルカリ金属水酸化物触媒を用いて、EOを23モルより多く開環重合付加したポリエーテルポリオールを用いた場合に、貯蔵したポリオールシステム液の使用による軟質フォームの機械特性の低下が生じ、該中間ポリオールの末端に付加させるEOを1〜23モルとしたポリエーテルポリオール(A1)を用いれば、軟質フォームの良好な物性が得られるとともに、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下を効果的に抑えることができる。
かかる効果が得られる理由は明らかではないが、かかる貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下が生じる場合には、セルの粗大化が見られることから、ポリエーテルポリオール(A1)の末端EO付加モル数を、開始剤1モル当たり23モル以下とすることによって、ポリオールシステム液中での整泡剤や発泡剤の分散状態が変化し、その結果、セルの粗大化を抑制すると考えられる。
【0101】
本発明の製造方法により製造される軟質フォームは、自動車の内装材(シートクッション、シートバックレスト、ヘッドレスト、アームレスト等。)、鉄道車両の内装材、寝具用および家具用クッション(マットレス、ソファー、イス用クッション)等に利用できる。
特に、硬度および機械特性に優れることから、自動車用シートクッションまたは家具用クッションとして好適である。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
測定は以下の方法で行った。
[水酸基価]
ポリオールの水酸基価は、JIS K1557(2007年版)にしたがって測定した(滴定法)。
【0103】
[数平均分子量および質量平均分子量]
数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)は、下記の方法で測定した。
分子量測定用の標準試料として市販されている重合度の異なる数種の単分散ポリスチレン重合体についてのGPCを、市販のGPC測定装置(東ソー社製、HLC−8220GPC)を用いて測定し、ポリスチレンの分子量と保持時間(リテンションタイム)との関係をもとに検量線を作成した。
試料をテトラヒドロフランで0.5質量%に希釈し、0.5μmのフィルターに通過させた後、該試料についてのGPCを前記GPC測定装置を用いて測定した。
前記検量線を用いて、試料のGPCスペクトルをコンピュータ解析することにより、該試料の数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を求めた。
[一級化率]
ポリオールの分子末端の水酸基のうちの一級水酸基の割合(一級化率)の測定は、日本電子社製α−600(600MHz)超伝導核磁気共鳴(NMR)装置を用い、重クロロホルムを溶媒として使用した。ポリオールの
13C−NMRスペクトルをとり、一級水酸基に結合したメチル基と二級水酸基が結合したメチル基とのシグナル比から一級水酸基の割合(一級化率、単位:モル%)を求めた。
【0104】
表1〜3に記載した各成分について説明する。
[調製例1:TBA−DMC触媒の調製]
tert−ブチルアルコール(以下、TBAと記す。)が配位した亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(DMC触媒)を下記のようにして調製した。
500mLのフラスコに塩化亜鉛の10.2gと水の10gとからなる水溶液を入れた。塩化亜鉛水溶液を毎分300回転の回転速度で撹拌しながら、カリウムヘキサシアノコバルテート(K
3Co(CN)
6)の4.2gと水の75gとからなる水溶液を、30分間かけて塩化亜鉛水溶液に滴下した。この間、フラスコ内の混合溶液を40℃に保った。カリウムヘキサシアノコバルテート水溶液の滴下が終了した後、フラスコ内の混合物をさらに30分撹拌した後、tert−ブチルアルコールの80g、水の80g、およびポリオールPの0.6gからなる混合物を添加し、40℃で30分間、さらに60℃で60分間撹拌した。
ポリオールPは、KOH触媒の存在下に、プロピレングリコールにPOを開環付加重合させ、脱アルカリ精製して得られた、一分子当たりの平均水酸基数が2、数平均分子量(Mn)が2,000のポリオキシプロピレンジオールである。
【0105】
得られた混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製、No.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)でろ過し、複合金属シアン化物錯体を含む固体(ケーキ)を得た。
該ケーキをフラスコに移し、TBAの36gと水の84gとからなる混合液を添加して30分撹拌した後、前記と同じ条件で加圧ろ過を行ってケーキを得た。
該ケーキをフラスコに移し、さらにTBAの108gと水の12gとからなる混合液を添加して30分間撹拌し、TBA−水混合液に複合金属シアン化物錯体触媒が分散されたスラリーを得た。該スラリーにポリオールPの120gを添加した後、減圧下、80℃で3時間、さらに115℃で3時間、揮発性成分を留去して、スラリー状のDMC触媒(TBA−DMC触媒)を得た。該スラリー中に含まれるDMC触媒(固体触媒成分)の濃度(有効成分濃度)は、5.33質量%であった。
【0106】
[製造例1:ポリオール(比較1)の製造]
本例で用いた開始剤(a1)は、KOH触媒を用いてグリセリンにPOを開環付加重合し、さらにキョーワド600S(製品名、合成吸着剤、協和化学工業社製)を用いて精製して製造した。数平均分子量(Mn)が1,500、水酸基価が112mgKOH/gのポリオキシプロピレントリオールである。
耐圧反応容器としては、アンカー翼1組と、45°傾斜2枚羽根のパドル翼2組を取り付けた撹拌機を備えるとともに、冷却水が流通する冷却管が容器内部に設けられたステンレス鋼製(JIS−SUS−316)の耐圧反応器(容量10L、直径200mm、高さ320mm)を用いた。
反応液の温度測定は、耐圧反応容器内部の下部に設置した温度計で液温を測定した。
【0107】
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a1)の1,000gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、反応液中におけるTBA−DMC触媒の金属の濃度(以下、初期触媒金属濃度という。)が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの120g(開始剤の100質量部に対して12質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
POを耐圧反応容器内に供給すると(初期活性化工程の開始)、耐圧反応容器の内圧が一旦上昇し、その後漸次低下して、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことを確認した(初期活性化工程の終了)。この間、内圧の低下が始まると、それに続いて反応液の温度が一旦上昇し、その後漸次低下した。反応液の最高温度は165℃であった。本例では、反応液の温度上昇が止まった後に冷却を行った。
【0108】
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの4,728gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの950gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、キョーワド600S(製品名、合成吸着剤、協和化学工業社製)を用いて触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(比較1)の平均水酸基数は3、水酸基価は16.8mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は13,228、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.045、オキシエチレン基含有量は14質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は31.8モルであった。
【0109】
[製造例2:ポリオール(A1−1)の製造]
製造例1において、追加重合工程の後に、KOH触媒を用いて末端に付加させるEOの量を変更した。
すなわち、製造例1と同様にして初期活性化工程までを行い、反応液の温度上昇が止まった後に冷却を行った。反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,069gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの611gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−1)の平均水酸基数は3、水酸基価は16.8mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は13,077、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.089、オキシエチレン基含有量は9質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は20.5モルであった。また、一級化率は88モル%であった。
【0110】
[製造例3:ポリオール(A1−2)の製造]
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a1)の833gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの117g(開始剤の100質量部に対して14質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は167℃であった。
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。
反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,339gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの533gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−2)の平均水酸基数は3、水酸基価は14.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は14,403、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.074、オキシエチレン基含有量は8質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は21.8モルであった。また、一級化率は88モル%であった。
【0111】
[製造例4:ポリオール(A1−3)の製造]
本例で用いた開始剤(a2)は、KOH触媒を用いてペンタエリスリトールにPOを開環付加重合し、さらにキョーワド600S(製品名、合成吸着剤、協和化学工業社製)を用いて精製して製造した。数平均分子量(Mn)が1,200、水酸基価が187mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオールである。
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a2)の800gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの96g(開始剤の100質量部に対して12質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は166℃であった。
【0112】
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,274gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの612gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−3)の平均水酸基数は4、水酸基価は22.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は12,791、不飽和度は0.006meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.071、オキシエチレン基含有量は9質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は20.5モルであった。また、一級化率は82モル%であった。
【0113】
[製造例5:ポリオール(A1−4)の製造]
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a2)の667gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの93g(開始剤の100質量部に対して14質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は165℃であった。
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,588gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの550gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−4)の平均水酸基数は4、水酸基価は19.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は15,029、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.072、オキシエチレン基含有量は8質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は21.8モルであった。また、一級化率は83モル%であった。
【0114】
[製造例6:ポリオール(A1−5)の製造]
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a2)の571gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの91g(開始剤の100質量部に対して16質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は166℃であった。その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液の温度上昇が止まった後に冷却を行った。反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,794gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、水酸化カリウムの20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの451gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−5)の平均水酸基数は4、水酸基価は16.0、数平均分子量(Mn)は17,267、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.071、オキシエチレン基含有量は6.5質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は20.7モルであった。また、一級化率は84モル%であった。
【0115】
[製造例7:ポリオール(A1−6)の製造]
本例で用いた開始剤(a3)は、KOH触媒を用いてソルビトールにPOを開環付加重合し、さらにキョーワド600S(製品名、合成吸着剤、協和化学工業社製)を用いて精製して製造した。数平均分子量(Mn)が2,900、水酸基価が116mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオールである。
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a3)の967gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの116g(開始剤の100質量部に対して12質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は167℃であった。
【0116】
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの5,812gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの330gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−6)の平均水酸基数は6、水酸基価は17.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は20,716、不飽和度は0.007meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.510、オキシエチレン基含有量は4.5質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は20.5モルであった。また、一級化率は80モル%であった。
【0117】
[製造例8:ポリオール(A1−7)の製造]
耐圧反応容器は製造例1と同じものを用いた。
まず、耐圧反応容器内に、開始剤(a1)の1,427gと、調製例1で製造したTBA−DMC触媒スラリーを投入して反応液とした。TBA−DMC触媒スラリーの投入量は、初期触媒金属濃度が46ppmとなる量とした。
次いで、耐圧反応容器内を窒素置換した後、反応液を撹拌しながら加熱し、135℃(初期温度)に達したら加熱を止め、撹拌を続けながら、POの143g(開始剤の100質量部に対して10質量部)を耐圧反応容器内に供給して反応させた。
製造例1と同様に、POを供給する直前の耐圧反応容器の内圧と同じになったことで初期活性化工程の終了を確認した。この間の反応液の最高温度は164℃、本初期活性化工程にかかった時間は30分であった。
その後、POを供給して反応させ、続いてKOH触媒を用いて末端にEOを付加させた(追加重合工程)。すなわち、反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの4,383gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの816gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(A1−7)の平均水酸基数は3、水酸基価は24.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は10,193、不飽和度は0.012meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.057、オキシエチレン基含有量は12.0質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は19.1モルであった。また、一級化率は86モル%であった。
【0118】
[製造例9:ポリオール(比較2)の製造]
製造例8において、追加重合工程の後に、KOH触媒を用いて末端に付加させるEOの量を変更した。
製造例1と同様にして初期活性化工程までを行い、反応液の温度上昇が止まった後に冷却を行った。反応液を撹拌しながら、135℃まで冷却したことを確認し、135℃を保ちながら、POの4,179gを耐圧反応容器内に供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、水酸化カリウムの20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)を添加して、120℃で2時間の脱水によるアルコラート化を行った。続いて、反応液を120℃に保ちながら、EOの1,020gを耐圧反応容器内に追加供給した。内圧の変化がなくなり、反応終了したことを確認した後、製造例1と同様にして触媒中和、除去作業を行った。
こうして得られたポリオール(比較2)の平均水酸基数は3、水酸基価は24.0mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は9,506、不飽和度は0.013meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.031、オキシエチレン基含有量は15.0質量%、開始剤1モル当たりの末端EO付加モル数は23.9モルであった。
【0119】
[製造例10:ポリオール(A2−1)の製造]
本例では、開始剤(a2)に、KOH触媒の存在下で、POを開環付加重合させた後、EOを開環付加重合させた。
すなわち、製造例1と同じ反応容器に、開始剤(a2)の1,000g、KOH触媒の120g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)、およびPOの5,664gを投入し、120℃で10時間撹拌して開環付加重合させた。その後、さらにEOの1,023gを投入し、110℃で1.5時間撹拌して開環付加重合させて、ポリオール(A2−1)を得た。
得られたポリオール(A2−1)の平均水酸基数は4、水酸基価は28mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は11,029、不飽和度は0.065meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.040、オキシエチレン基含有量は13質量%であった。
【0120】
[製造例11:ポリオール(A2−2)の製造方法]
本例で用いた開始剤(a4)は、KOH触媒を用いてグリセリンにPOを開環付加重合した、数平均分子量(Mn)が1,000、水酸基価が168mgKOH/gのポリオキシプロピレントリオールである。
製造例1と同じ反応容器に、開始剤(a4)の953g、CsOH触媒の120g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)、およびPOの4,996gを投入し、120℃で10時間撹拌して開環付加重合させた。その後、さらにEOの1,060gを投入し、110℃で1.5時間撹拌して開環付加重合させて、ポリオール(A2−2)を得た。
得られたポリオール(A2−2)の平均水酸基数は3、水酸基価は24mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は10、037、不飽和度は0.035meq/g、分子量分布(Mw/Mn)は1.025、オキシエチレン基含有量は15質量%であった。
【0121】
[ポリマー分散ポリオール(A21−1)]
平均水酸基数が3、水酸基価が34mgKOH/gで、末端にオキシエチレン基を14.5質量%含有しているベースポリオール中で、アクリルニトリルとスチレンとをそれぞれ77.5質量%、22.5質量%で重合させて得られる、水酸基価24mgKOH/gのポリマー分散ポリオール(A21−1)を用いた。ポリマー分散ポリオール(A21−1)におけるポリマー粒子の含有量は35質量%であった。
ベースポリオールは、開始剤に、KOH触媒の存在下で、POを開環付加重合させた後、EOを開環付加重合させたものである。開始剤は、KOH触媒を用いてグリセリンにPOを開環付加重合させて得られた、数平均分子量(Mn)が1,300のポリエーテルポリオールである。
すなわち、製造例1と同じ反応容器に、開始剤の1,767g、KOH触媒の20g(最終製品に対して有効成分濃度0.3%)、およびPOの4,641gを投入し、120℃で8時間撹拌して開環付加重合させた。その後、さらにEOの1,141gを投入し、110℃で1.5時間撹拌して開環付加重合させて、得られるポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオールをベースポリオールとした。
【0122】
[架橋剤(E11−1)]
ペンタエリスリトールに、KOH触媒の存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価562mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E11−2)]
ソルビトールに、KOH触媒の存在下で、POを開環付加重合させ、続いてEOを開環付加重合させて得られた、水酸基価450mgKOH/g、オキシエチレン基含有量28質量%のポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E11−3)]
ソルビトールに、KOH触媒の存在下で、POとEOとの混合物を開環付加重合させて得られた、水酸基価450mgKOH/g、オキシエチレン基含有量10質量%のポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E11−4)]
トリメチロールプロパンに、KOH触媒の存在下で、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価860mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E11−5)]
ソルビトールに、KOH触媒の存在下で、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E12−1)]
エチレンジアミンに、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[架橋剤(E2−1)]
ジエタノールアミン。
[架橋剤(E2−2)]
グリセリン(水酸基価1,829mgKOH/g)。
【0123】
[破泡剤(F−1)]
グリセリンに、KOH触媒の存在下で、POとEOとの混合物を開環付加重合させて得られた、水酸基価48mgKOH/g、オキシエチレン基含有量が80質量%のポリエーテルポリオール。
[破泡剤(F−2)]
ジプロピレングリコールにKOH触媒の存在下で。POとEOとの混合物を開環付加重合させて得られた、水酸基価56mgKOH/g、オキシエチレン基含有量が80質量%のポリエーテルポリオール。
[触媒(C−1)]
トリエチレンジアミンを33質量%含有するジプロピレングリコール(DPG)溶液(東ソー社製、商品名:TEDA L33)。
[触媒(C−2)]
ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを70質量%含有するDPG溶液(東ソー社製、商品名:TOYOCAT ET)。
[触媒(C−3)]
N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン(東ソー社製、商品名:TOYOCAT NP)。
[整泡剤(G−1)]
東レ・ダウコーニング社製、商品名:SZ−1325。
[整泡剤(G−2)]
東レ・ダウコーニング社製、商品名:SZ−1327。
[整泡剤(G−3)]
東レ・ダウコーニング社製、商品名:SF−2962。
[整泡剤(G1−1)]
信越化学工業社製、商品名:KF−96A−6cs、上式(I)で表され、nの平均値が7.3であるジメチルポリシロキサン(I)。25℃のときの動粘度は6mm/s。
【0124】
[発泡剤(D−1)]
水。
[ポリイソシアネート化合物(B−1)]
TDI−80(2,4−TDI80質量%と2,6−TDI20質量%の異性体比)80質量%と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称ポリメリックMDI)20質量%との混合物。商品名:コロネート1021(日本ポリウレタン工業社製)。
[ポリイソシアネート化合物(B−2)]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)50質量部と2,4’−MDI50質量部との混合物である商品名:LUPRANATE MI(BASF社製)の75質量%と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)である商品名:ミリオネート MR−200(日本ポリウレタン工業社製)の25質量%の混合物。
【0125】
<軟質ポリウレタンフォームの製造>
[例1〜6、例11〜14、例21〜34、例41〜46、例51〜52]
表1〜3の配合で軟質ポリウレタンフォームを製造した。例1〜6、21〜34、41〜46および例51〜52は実施例、例11〜14は比較例である。
表における配合量の単位は、ポリイソシアネート化合物(B)はイソシアネートインデックス(表には[INDEX]と記載する。)で表した。それ以外は質量部である。
【0126】
まず、表に示す配合のうち、ポリイソシアネート化合物(B)を除く各成分の所定量を容量2Lのプラスチック製容器に量りとり、撹拌羽根付のミキサーを用い、毎分3,000回転の回転速度で30秒間攪拌・混合し、ポリオールシステム液を調製した。
次に、ポリイソシアネート化合物(B)の所定量を容量500ccのプラスチック容器に量り取った。
(貯蔵前)
上記で調製した、調製直後のポリオールシステム液を液温30℃、ポリイソシアネート化合物(B)を液温25℃に調整後、ポリイソシアネート化合物(B)をポリオールシステム液に投入し、上記ミキサーを用い、毎分3,000回転の回転速度で5秒間撹拌・混合して反応性混合物を調製した。調製直後の反応性混合物を、型温を60℃に調整した縦横400mm、厚さ100mm、70mm、50mm、または40mmの、上型が解放された状態のアルミニウム製金型に注入し、素早く上型を閉じ密閉状態で発泡・成形を行った。成形開始6分経過後、上型を開放し軟質ポリウレタンフォームを取り出し、クラッシングをした後に室内(温度23℃、相対湿度50%)に24時間放置して評価を行った。クラッシングとは、軟質ポリウレタンフォームを金型から取り出した後、フォーム厚さに対して75%まで連続的に圧縮する工程のことである。なお、成形開始とは、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(B)とを撹拌・混合を開始した時点を示す。
【0127】
(6日間貯蔵後)
上記で調製したポリオールシステム液を、50℃の雰囲気中に静置した状態で6日間(144時間)保存した後、該ポリオールシステム液を用いて上記と同条件で軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0128】
[評価方法]
貯蔵前のポリオールシステム液を用いて得られた軟質ポリウレタンフォームについて、全密度、コア密度、25%ILD硬度、50%ILD硬度、65%ILD硬度、コア部の通気性、全体の反発弾性率、コア部の反発弾性率、引裂強さ、引張強さ、伸び、圧縮永久歪み、湿熱圧縮永久歪み(耐久性)およびヒステリシスロス率(直径200mm加圧盤)を、JIS K6400(1997年版)に準拠して測定した。
応力緩和率は、314cm
2円盤における、196N加圧した5分後の応力緩和率(%)を測定した。
コア密度、およびコア部の反発弾性率に関しては、得られたフォームの中心部から縦横100mm×所定の高さ(金型厚みが100mmの場合は高さ50mm、金型厚みが70〜50mmの場合は高さ30mm、金型厚み40mmの場合は高さ20mm)の寸法にて切り出したサンプルを用いて評価した。
ILD硬度の測定において5Nの荷重を加えた時のフォーム厚みである初期厚みを測定した。
25%ILD硬度に対する65%ILD硬度の比であるSAG−FACTORを求めた。この値が小さいほど得られる軟質ポリウレタンフォーム底付き感が発生しにくい。
振動特性として、共振振動数、共振倍率(絶対変位測定)、6Hz共振伝達率および10Hz共振伝達率はJASO B8407−82に準拠した方法で測定した。振動特性の測定条件としては、加圧盤として鉄研形(490N)を用い、加振全振幅を5mmとした。
圧縮永久歪みおよび湿熱圧縮永久歪みは、値が小さいほど耐久性が良いことを表す。
共振振動数の値が5Hz以下であれば、自動車用シートクッション用フォームとして用いたときに、人が敏感な周波数域の振動が効率良く減衰されて良好な乗り心地が得られる。共振伝達率、6Hzまたは10Hzの伝達率も小さいほうが、乗り心地が良好である。
【0129】
6日間貯蔵したポリオールシステム液を用いて製造した軟質ポリウレタンフォームについて、IDL硬度における初期厚み、25%ILD硬度、機械特性(引裂強さ、引張強さ、伸び)を、上記と同様にして測定した。
機械特性の各測定値について、貯蔵前を基準とする機械特性の割合(単位:%)を下式に基づいて求めた。
機械特性の割合(%)={(6日間貯蔵後の測定値)/(貯蔵前の測定値)}×100
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
表4の結果に示されるように、DMC触媒を用いて製造した中間ポリオールに、アルカリ金属水酸化物触媒を用いてEOを開環付加重合させたポリエーテルポリオールであって、末端EO付加モル数が23モル以下であるポリオール(A1)を用いた例1〜6は、末端EO付加モル数が23モルを超えるポリオール(比較1および2)を用いた例11〜14とそれぞれ比べて、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下が小さい。また例1〜6で得られた軟質ポリウレタンフォームの物性は良好であった。
表5および6の結果に示されるように、本発明におけるポリオール(A1)を用いた例21〜34、例41〜46および例51〜52は、貯蔵したポリオールシステム液の使用による機械特性の低下が小さく、フォーム物性も良好であった。
また、表5および表6の結果に示されるように、ポリオール(A1)を用いて製造された軟質フォームは、フォーム厚みを60mm以下にしても、共振周波数を低く抑えることが可能であり、自動車シート用ウレタンフォームの薄肉化に最適である。自動車シート用ウレタンフォームを薄肉化することで、車内空間の確保や車両デザインの自由度を高めることが可能となる。一方で、ウレタンフォームの熱貫流率が大きくなり、熱を伝えやすくなることから、エアコン等の電力消費量削減につながり、燃費向上への効果が期待できる。