【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0046】
(例1:
参考例1〜15、18、21〜43、実施例16、17、19、20、44)
(銅箔又は銅層への被覆層の形成)
参考例1〜15、18、21〜28、実施例16、17、19、20の銅箔基材として、厚さ8μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を用意した。圧延銅箔の表面粗さ(Rz)は0.7μmであった。また、
参考例29〜37の銅箔基材として、厚さ9又は18μmのSn添加圧延銅箔(JX日鉱日石金属製HS1200)を用意した。また、
参考例38〜43、実施例44の銅箔基材として、厚さ8μmのメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm
2、Cr360μg/dm
2)を用意した。
【0047】
銅箔の表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Au、Pd、Pt、Co、Ni、Cr、Mo、Sn、V、Zn又はこれらの合金のターゲットを以下の装置及び条件でスパッタリングすることにより、銅箔基材表面に第1層、銅箔基材表面又は第1層上に第2層(被覆層)、第2層上に第3層をそれぞれ形成した。第1〜第3層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。スパッタリングに使用した各種金属の単体は純度が3Nのものを用いた。また合金ターゲットは、Au−50wt%Cu、Pd−50wt%Cu、Pd−50wt%Ni、Ni−20wt%Cr、Ni−7wt%V、Ni−25wt%Zn、Ni−20wt%Snを用いた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10
-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
【0048】
ロール to ロール式を採用する場合、銅箔表面の薄い酸化膜をイオンガン(LIS)により取り除いた後、被覆層を形成してもよい。第1〜第3層の厚さはスパッタリング電力を調整することにより変化させた。
・装置:ロール to ロール式スパッタリング装置(神港精機社)
・到達真空度:1.0×10
-5Pa
・スパッタリング圧:0.25Pa
・搬送速度:15m/min
・イオンガン電力:225W
・スパッタリング電力:200〜3000W
【0049】
上述の第1〜第3層が形成された表面の反対側の銅箔基材表面に対して、以下の条件であらかじめ銅箔基材表面に付着している薄い酸化膜を逆スパッタにより取り除き、Ni及びCr単層のターゲットをスパッタリングすることにより、Ni層及びCr層を順に成膜した。Ni層及びCr層の厚さは成膜時間を調整することにより変化させた。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
・到達真空度:1.0×10
-5Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
Ni層用=Ni(純度3N)
Cr層用=Cr(純度3N)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間約0.2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単位時間当たりのスパッタレートを算出した。
【0050】
銅箔基材のNi層及びCr層形成側表面に以下の手順により、ポリイミドフィルムを接着した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い、宇部興産製Uワニス−A(ポリイミドワニス)を乾燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機で130℃30分で乾燥。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において、350℃120分でイミド化。
【0051】
<付着量の測定>
被覆層のAu、Pd、Pt、Co、Ni、Cr、Mo、Sn、V及びZnの付着量測定は、王水で表面処理銅箔サンプルを溶解させ、その溶解液を希釈し、原子吸光分析法で行った。
【0052】
(自然電位の測定)
表面処理銅箔および積層体の自然電位は、1cm×1cmの範囲の測定部を除いて全てマスキングし、下記条件の腐食液中に浸漬して測定した。自然電位はガルバノ・ポテンショスタットを用いて測定し、その変化を経過時間で追った。
・塩化第二鉄水溶液(濃度:3.2mol/L、ボーメ度:40度)
・液温:50℃
・攪拌:なし
・測定電極:Ag/AgCl電極
【0053】
(エッチングによる回路形状)
銅箔の被覆層が形成された面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の33μm幅および25μm幅の回路を印刷し、銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を以下の条件で実施した。
【0054】
<エッチング条件>
エッチングは、下記の条件でスプレーエッチング装置を用いて行った。
・塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
スプレー圧:0.25MPa
・液温:50℃
(50μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=33μm/17μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:25μm
・エッチング時間:10〜130秒
(30μmピッチ回路形成)
・レジストL/S=25μm/5μm
・仕上がり回路ボトム(底部)幅:15μm
・エッチング時間:20〜70秒
・エッチング終点の確認:時間を変えてエッチングを数水準行い、光学顕微鏡で回路間に銅が残存しなくなるのを確認し、これをエッチング時間とした。
エッチング後、45℃のNaOH水溶液(100g/L)に1分間浸漬させてレジストを剥離した。
【0055】
<エッチングファクターの測定条件>
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。
図1に、回路パターンの一部の表面写真と、当該部分における回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このaは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。さらに、傾斜角θは上記手順で測定したa及び銅箔の厚さbを用いてアークタンジェントを計算することにより算出した。これらの測定範囲は回路長600μmで、12点のエッチングファクター、その標準偏差及び傾斜角θの平均値を結果として採用した。
【0056】
上記手順で形成した回路の断面を、日本電子株式会社製の断面試料作製装置SM−09010で加工した。この回路断面のSEM写真から、任意に選択した3本の回路の被覆層形成側表面から1μmの深さの範囲で最も広い回路幅W1(μm)、回路断面全体で最も狭い回路幅W2(μm)を測定し、これらの平均値を算出した。また、当該平均値を用いてW2/W1を算出した。
【0057】
(例2:比較例45〜50)
比較例45及び46(ブランク材)として、8μm厚又は17μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を準備した。また、比較例47及び48(ブランク材)として、9μm厚又は18μm厚のSn添加圧延銅箔(JX日鉱日石金属製HS1200)を準備した。さらに、比較例49及び50として、3μm厚又は8μm厚のメタライジングCCL(JX日鉱日石金属製マキナス、銅層側Ra0.01μm、タイコート層の金属付着量Ni1780μg/dm
2、Cr360μg/dm
2)を準備した。次に、それぞれの銅箔に例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に反対面に感光性レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
【0058】
(例3:比較例51〜57)
8μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属製C1100)を準備し、例1と同じ手順でポリイミドフィルムを接着した。次に、銅箔表面に例1と同様に種々の金属で構成された第2層(被覆層)をスパッタリングで形成し、エッチングで回路を形成した。
例1〜3の各測定条件及び測定結果を表1〜6に示す。なお、表4〜6の「電位低下時間」は、それぞれの実施例及び比較例の自然電位が、対応するブランク材(比較例45〜50)の測定開始時電位まで低下するまでに経過した時間を示している。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
なお、回路の断面形状は、正確には斜辺が直線である台形ではない。表には実施例及び比較例の回路の傾斜角が記載されているが、これはあくまで
図1に示した定義式によって算出した値である。
【0066】
(評価)
参考例1〜15、18、21〜43、実施例16、17、19、20、44は、いずれもエッチングファクターが大きく且つバラツキもなく、矩形方に近い断面の回路を形成することができた。
比較例45〜50は、ブランク材であり、良好な形状の回路が形成できなかった。
比較例51〜56は、測定開始時の電位は高いが、電位が240秒以内に低下しなかったために、良好な形状の回路が形成できなかった。
比較例57は、被覆層を形成しているものの、測定開始の電位が低い(ブランク材と同等)ために、良好な形状の回路が形成できなかった。
図3に、(1)
参考例2の腐食液中の自然電位、(2)比較例46の自然電位、(3)比較例52の自然電位を測定した結果のグラフをそれぞれ示す。