(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インサート部材ならびに少なくとも2種のプラスチック成分からなるプラスチック外被を含んでなる構成部材であって、前記インサート部材は第1のプラスチック成分A1(ここで、前記第1のプラスチック成分A1は以下
A11:成分A11およびA12の総質量を基準として、5〜80質量%の、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとした少なくとも1種の部分芳香族ポリエステル;
A12:成分A11およびA12の総質量を基準として、20〜95質量%の、ポリラクチド(PLA)と、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエートと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択された少なくとも1種のホモポリエステルまたはコポリエステル;
A13:成分A11およびA12の総質量を基準にして、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基を含有する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によって、または第1のプラスチック成分A2(ここで、前記第1のプラスチック成分A2は以下
A21:成分A21およびA22の総質量を基準として、10〜100質量%の少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマー、
A22:成分A21およびA22の総質量を基準として、0〜90質量%の少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステル、
A23:成分A21およびA22の総質量を基準として、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基を含有する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によって包囲され、前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2はさらに第2のプラスチック成分B(ここで、前記第2のプラスチック成分Bは以下
B1:10〜99.99質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル、
B2:0.01〜50質量%の
B21:OH価1〜600mgKOH/g(ポリカーボネート)(DIN 53249,パート2に準拠)を有する少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリカーボネート
または
B22:xは少なくとも1.1、かつ、yは少なくとも2.1のAxBy型の少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリエステル
またはそれらの混合物
から構成される)によって包囲され、前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2および/または前記第2のプラスチック成分Bはさらに以下
C:0〜60質量%のさらに別の少なくとも1種の添加剤を含んでいてよい前記構成部材。
前記プラスチック成分Bは、さらに、前記プラスチック成分Bの総質量を基準として、1〜30質量%のコンビネーション難燃剤G(ここで、前記コンビネーション難燃剤は以下
G1: 20〜99質量%のハロゲン含有難燃剤、
G2: 1〜80質量%の酸化アンチモン
からなる)を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の構成部材。
前記プラスチック成分Bは、さらに、リン含有または窒素含有化合物またはP−N−縮合物またはそれらの混合物の群から選択された1〜40質量%のハロゲン不含難燃剤Hを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の構成部材。
前記のさらに別の少なくとも1種の添加剤Cは、加工助剤、安定剤、酸化遅延剤、熱分解および紫外光分解防止剤、滑剤および離型剤、着色剤、成核剤、可塑剤および繊維状または粒子状充填剤からなる群から選択されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の構成部材。
前記粒子状充填剤は、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質ケイ酸、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白墨、石英粉末、雲母、硫酸バリウム、長石ならびにこれらの物質の2種以上の物質の混合物のうちから選択されていることを特徴とする請求項6記載の構成部材。
前記第1のプラスチック成分Aは、前記第1のプラスチック成分Aの総質量を基準として、0.1〜40質量%のガラスビーズを含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の構成部材。
前記インサート部材は、銅、銅含有合金、アルミニウム、アルミニウム含有合金、チタン、特殊鋼、鉛不含金属および鉛不含金属合金または錫めっきされた材料から製造されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の構成部材。
前記構成部材は、エレクトロニクス技術分野で使用される類のプラスチック部品、メカトロニクス構成部材または差込み接点付きプラスチックハウジングであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の構成部材。
前記第1のプラスチック成分Aによる前記インサート部材の前記包被および前記第2のプラスチック成分Bからなる前記包被は射出成形法によって製造されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部材および、少なくとも2種のプラスチック成分からなるプラスチック外被を含んでなる構成部材であって、前記インサート部材は1プラスチック成分Aによって包囲され、前記第1のプラスチック成分Aはさらに第2のプラスチック成分Bによって包囲されるように構成した構成部材に関する。本発明はさらに、この種の構成部材の製造方法に関する。
【0002】
インサート部材およびプラスチック外被を含んでなる構成部材は、たとえば、たとえば自動車技術分野または航空・宇宙技術分野においてエレクトロニクス・パーツの統合に金属製インサート部材が用いられる場合に使用される。この場合、構成部材には、湿気ないし液体の侵入、したがって、エレクトロニクス素子の損傷を防止するために、媒質侵入封止結合ないし物質接合封止結合が必要である。構成部材の封止性は、当該構成部材が温度変動下にあっても、確保されていなければならない。プラスチック外被を具えた金属製インサート部材からなる複合構造物の物質接合の封止欠陥の原因は、たとえば、プラスチック成分による金属成分の湿潤不良、したがって、プラスチック成分と金属成分との接着不良から生じ得る。また、金属成分とプラスチック成分との熱膨張率の相違も、亀裂の原因となる応力をもたらす。
【0003】
金属製インサート部材がプラスチック外被によって包囲されたプラグの形の構成部材は、たとえば欧州特許第0249975号明細書から公知である。プラスチック・金属間の封止結合を達成すべく、外側プラスチック材料と金属製インサート部材の間には柔軟なプラスチック材料が挿入されている。この柔軟なプラスチック材料は、たとえば、無強化熱可塑性エラストマーである。
【0004】
欧州公開第1496587号パンフレットから、プラスチック材料からなる封止された構造物からフラットケーブルが引き出される複合構成部材が公知である。ケーブルがプラスチック材料から突き出る隙間を封止するために、穴には液状ゴムが充填され、この液状ゴムは続いて硬化される。
【0005】
ドイツ特許第10053115号明細書にも、プラスチック外被からなるケーブルブシュが開示されている。この場合、封止は、管材料にも導線被覆材料にも粘着性を有するシール材によって行われる。適切なシール材として、油脂、ワックス、樹脂、瀝青等が挙げられている。
【0006】
欧州公開第0245975号明細書からも、プラスチック材料からなる強固なジャケット内に金属製のピンが収容されたさらに別のプラグコネクターが公知である。金属ピンと外側ジャケットの間には、封止結合を達成すべく、柔軟なプラスチック材料が挿入される。
【0007】
インサート部材がプラスチック層によって被覆された構成部材は国際公開第2008/099009号パンフレットからも公知である。この構成部材においては、金属製インサート部材は、先ず、低粘度プラスチックコンパウンドによって包被され、第2段階で、この包被の周囲に硬質プラスチック成分が吹き付けられる。低粘度の適切なプラスチックとして、ポリアミド、脂肪族ポリエステルまたは、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとしたポリエステルが挙げられている。
【0008】
ハウジングによって電気的接触が行われて、ハウジングブシュは望ましくない物質の侵入を防止すべく封止されている構造のさらに別のハウジングブシュがドイツ特許公告第102005033912号明細書からも公知である。封止のため、電気めっきによって封止領域の導線部の粗さ深度が高められる。
【0009】
従来の技術から公知のすべてのインサート部材のプラスチック包被の短所は、それらが温度変動下で使用される場合に十分な媒質侵入封止を実現しないことである。
【0010】
そこで、本発明の目的は、インサート部材ならびにプラスチック外被からなる構成部材であって、当該プラスチック外被が温度変動下貯蔵保管に際しても十分な媒質侵入封止を実現する構成部材を提供することである。
【0011】
上記目的は、インサート部材ならびに少なくとも2種のプラスチック成分からなるプラスチック外被を含んでなり、当該インサート部材は第1のプラスチック成分A1(ここで、前記第1のプラスチック成分A1は以下すなわち
A11:成分A11およびA12の総質量を基準として、5〜80質量%の、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとした少なくとも1種のポリエステル;
A12:成分A11およびA12の総質量を基準として、20〜95質量%の、
ポリラクチド(PLA)と、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエートと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択された少なくとも1種のホモポリエステルまたはコポリエステル;
A13:成分A11およびA12の総質量を基準にして、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によってまたは第1のプラスチック成分A2(ここで、前記第1のプラスチック成分A2は以下すなわち
A21:成分A21およびA22の総質量を基準として、10〜100質量%の少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマー、
A22:成分A21およびA22の総質量を基準として、0〜90質量%の少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステル、
A23:成分A21およびA22の総質量を基準として、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によって包囲され、前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2はさらに第2のプラスチック成分B(ここで、前記第2のプラスチック成分Bは以下すなわち
B1:10〜99.99質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル、
B2:0.01〜50質量%の
B21:OH価1〜600mgKOH/g(ポリカーボネート)(DIN 53249,パート2に準拠)を有する少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリカーボネート
または
B22:xは少なくとも1.1、かつ、yは少なくとも2.1のA
xB
y型の少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリエステル
またはそれらの混合物
から構成され、前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2および/または前記第2のプラスチック成分Bはさらに以下すなわち
C:0〜60質量%のさらに別の少なくとも1種の添加物
を含んでいてよい)によって包囲されるように構成した構成部材によって解決される。
【0012】
本発明による前記第2のプラスチック成分Bを、前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2(ここで、前記第1のプラスチック成分A1は、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとした少なくとも1種のポリエステルならびに、
ポリラクチドと、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエートと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択された少なくとも1種のホモポリエステルまたはコポリエステルで構成され、前記第1のプラスチック成分A2は、少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーと、場合により、少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステルとで構成されている)と組み合わせて使用することにより、従来の技術から公知のプラスチック外被に比較して、特に当該構成部材を温度変動下で使用する際に著しく改善された媒質侵入封止性が達成される。さらに別途の改善が前記第1のプラスチック成分A1ないしA2の内側吹付け被覆および前記第2のプラスチック成分Bの外側吹付け被覆によって達成される。
【0013】
成分Bを使用する利点は、この成分が高度分岐または超分岐ポリカーボネートないし高度分岐または超分岐ポリエステルの配合によって第1のプラスチック成分A1ないしA2に対する粘着力が改善され、こうして、結合体の媒質侵入封止性が向上することである。また、流動性が改善されると共に、加工性が向上する点も有利である。さらに別途の利点は、高度分岐または超分岐ポリカーボネートないしポリエステルの使用は、添加剤配合量が高まっても、機械的特性の低下を招来しないことである。また、高度分岐または超分岐ポリカーボネートないし高度分岐または超分岐ポリエステルの構造は熱可塑性プラスチックの使用要件に容易に適合させることができる。さらに、高度分岐または超分岐ポリカーボネートないし高度分岐または超分岐ポリエステルは、それらの所定の構成によって、有利な特性たとえば高官能価、高反応性、低粘度および優れた溶解性を一体的に兼ね備えている。
【0014】
第1のプラスチック成分A1
本発明により、上記第1のプラスチック成分A1は、以下すなわち
A11:成分A11およびA12の総質量を基準として、5〜80質量%の、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとした少なくとも1種の部分芳香族ポリエステル;
A12:成分A11およびA12の総質量を基準として、20〜95質量%の、
ポリラクチド(PLA)と、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエートと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択された少なくとも1種のホモポリエステルまたはコポリエステル;
A13:成分A11およびA12の総質量を基準にして、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている。
【0015】
特に好ましい部分芳香族ポリエステルA11に数え入れられるものは、基本成分として以下すなわち
1)酸成分(これは以下すなわち
1a)30〜99モル%の少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸または少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体またはそれらの混合物
1b)1〜70モル%の少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体またはそれらの混合物
1c)0〜5モル%のスルホネート基含有化合物からなる)、
2)少なくとも1種のC
2〜C
12−アルカンジオールおよび少なくとも1種のC
5〜C
10−シクロアルカンジオールまたは、それらの混合物から選択されたジオール成分および、
場合により、さらに、以下から選択された1種以上の成分、つまり
3)以下から選択された成分(ここで、当該成分は以下すなわち
3a)エーテル機能を含んだ式(I)
HO−[(CH
2)
n−O]
m−H (I)
[式中、
nは2、3または4を表し、
mは2〜250までのいずれか1整数を表す]の少なくとも1種のジヒドロキシ化合物、
3b)式(IIa)または(IIb)
【化1】
[式中、
pは1〜1500までのいずれか1整数を意味し、
rは1〜4までのいずれか1整数を意味し、
Gは、フェニル基と、−(CH
2)
q−(ここで、qは1〜5までのいずれか1整数を意味する)と、−C(R)H−および−C(R)HCH
2(ここで、Rはメチル基またはエチル基を表す)とからなる群から選択された基を表す]の少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸、
3c)少なくとも1種のアミノ−C
2〜C
12−アルカノールまたは少なくとも1種のアミノ−C
5〜C
10−シクロアルカノールまたはそれらの混合物、
3d)少なくとも1種のジアミノ−C
1〜C
8−アルカン、
3e)一般式(III)
【化2】
[式中、
R
1は単結合、(CH
2)
z−アルキル基(ここで、z=2、3または4である)またはフェニレン基を意味する]の少なくとも1種の2,2′−ビスオキサゾリン、
3f)天然アミノ酸と、ポリアミドと、4〜6個のC原子を有するジカルボン酸と4〜10個のC原子を有するジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドと、式(IVa)および(IVb)
【化3】
[式中、
sは1〜1500までのいずれか1整数を意味し、
Tは、フェニレン基と、−(CH
2)
u−(ここで、uは1〜12までのいずれか1整数を意味する)と、−C(R
2)H−および−C(R
2)HCH
2(ここで、R
2はメチル基またはエチル基を表す)とからなる群から選択された基をあらわす]の化合物と、以下の反復単位V
【化4】
[式中、
R
3は水素、C
1〜C
6−アルキル、C
5〜C
8−シクロアルキル、非置換またはC
1〜C
4−アルキル基で三置換まで置換されたフェニル基またはテトラヒドロフリル基を表す]を有するポリオキサゾリンと、3a)〜3f)からなる混合物とからなる群から選択された少なくとも1種のアミノカルボン酸、
のうちから選択されている)
および
4)以下から選択された成分(ここで、前記成分は以下すなわち
4a)エステル形成能を有する少なくとも3個の基を有する少なくとも1種の化合物、
4b)少なくとも1種のイソシアネート化合物、
4c)少なくとも1種のジビニルエーテル化合物、
または4a)〜4c)からなる混合物のうちから選択されている)を含んだポリエステルである。
【0016】
上記の部分芳香族ポリエステルA11の上記の酸成分1)は、好ましい一実施形態において、30〜70モル%、特に、40〜60モル%の1a)および30〜70モル%、特に、40〜60モル%の1b)を含んでいる。
【0017】
脂肪酸および相応した誘導体1a)としては、一般に、2〜10個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するものが適切と考えられる。これらは直鎖であっても、分岐であってもよい。本発明の範囲で使用可能な脂環式ジカルボン酸は、通例、7〜10個の炭素原子を有するもの、特に、8個の炭素原子を有するものである。ただし、より多くの炭素原子たとえば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸の使用も基本的に可能である。
【0018】
一例として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグルコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸が挙げられる。
【0019】
同じく使用可能な、上記の脂肪族または脂環式ジカルボン酸のエステル形成誘導体として、特に、ジ−C
1〜C
6−アルキルエステルたとえばジメチル−、ジエチル−、ジ−n−プロピル−、ジ−イソプロピル−、ジ−n−ブチル−、ジ−イソ−ブチル−、ジ−t−ブチル−、ジ−n−ペンチル−、ジ−イソ−ペンチル−またはジ−n−ヘキシルエステルが挙げられる。ジカルボン酸の無水物も同じく使用可能である。
【0020】
その際、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体は単独もしくは上記の2以上の物質からなる混合物として使用することができる。
【0021】
好ましくは、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸またはそれらのそれぞれエステル形成誘導体またはそれらの混合物が使用される。特に好ましくは、コハク酸、アジピン酸またはセバシン酸またはそれらのそれぞれエステル形成誘導体またはそれらの混合物が使用される。特に好ましくは、アジピン酸またはそれらのエステル形成誘導体たとえばそれらのアルキルエステルまたはそれらの混合物が使用される。脂肪族ジカルボン酸としては、“硬質”ないし“脆性”成分A12を有するポリマー混合物たとえばポリヒドロキシブチレートまたは特に
ポリラクチドが製造される場合に、好ましくは、セバシン酸または、セバシン酸とアジピン酸との混合物が使用される。脂肪族ジカルボン酸としては、“軟質”ないし“靭性”成分A12を有するポリマー混合物たとえばポリヒドロキシブチレートコバレリエートが製造される場合に、好ましくは、コハク酸または、コハク酸とアジピン酸との混合物が使用される。
【0022】
コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸およびブラシル酸は、さらに、それらが再生可能な原材料として利用可能であるという利点を有する。
【0023】
芳香族ジカルボン酸1b)としては、一般に、8〜12個の炭素原子を有するもの、好ましくは8個の炭素原子を有するものが挙げられる。一例として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸ならびにそれらのエステル形成誘導体に触れておくこととする。この場合、特に、ジ−C
1−C
6−アルキルエステルたとえばジメチル−、ジエチル−、ジ−n−プロピル−、ジ−イソプロピル−、ジ−n−ブチル−、ジ−イソ−ブチル−、ジ−t−ブチル−、ジ−n−ペンチル−、ジ−イソ−ペンチル−またはジ−n−ヘキシルエステルが挙げられる。ジカルボン酸1b)の無水物も同じく使用可能である。
【0024】
ただし、より多くの炭素原子たとえば20個までの炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸1b)の使用も基本的に可能である。
【0025】
上記の芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体1b)は単独もしくは上記の2種以上の物質からなる混合物として使用することができる。特に好ましくは、テレフタル酸またはそれらのエステル形成誘導体たとえばジメチルテレフタレートが使用される。
【0026】
スルホネート基含有化合物としては、通例、スルホネート基含有ジカルボン酸またはそれらのエステル形成誘導体のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、好ましくは、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩またはそれらの混合物、特に好ましくは、ナトリウム塩が使用される。
【0027】
好ましい一実施形態において、上記の酸成分1)は40〜60モル%の1a)、40〜60モル%の1b)および0〜2モル%の1c)を含んでいる。さらに別の好ましい実施形態において、上記の酸成分1)は40〜59.9モル%の1a)、40〜59.9モル%の1b)および0.1〜1モル%の1c)、特に、40〜59.8モル%の1a)、40〜59.8モル%の1b)および0.2〜0.5モル%の1c)を含んでいる。
【0028】
一般に、ジオール2)は、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する分岐または直鎖のアルカンジオールまたは、5〜10個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールのうちから選択される。
【0029】
適切なアルカンジオールの例として、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、特に、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールが挙げられる。特に好ましいのは、特に成分a1)としてのアジピン酸と組み合わされた1,4−ブタンジオールおよび、特に成分a1)としてのセバシン酸と組み合わされた1,3−プロパンジオールである。1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールは、さらに、それらが再生可能な原材料として利用可能であるという利点を有する。種々相違したアルカンジオールの混合物も使用可能である。
【0030】
過剰な酸末端基またはOH末端基が所望されるか否かに応じて、成分Aまたは成分Bを過剰に使用することができる。好ましい一実施形態において、使用される成分AとBのモル比は0.4:1〜1.5:1、好ましくは0.6:1〜1.1:1であってよい。
【0031】
成分1)および2)の他に、本発明によるポリエステル混合物がベースとするポリエステルはさらにその他の成分を含んでいてよい。
【0032】
ジヒドロキシ化合物3a)としては、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラヒドロフラン(ポリ−THF)、特に好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールが使用され、その際、それらの混合物または、種々異なった変数nを有する化合物(式(I)参照)たとえば、たとえばそれ自体公知の方法で先ずエチレンオキシド、続いてプロピレンオキシドとの重合によって得られるポリエチレングリコール、特に好ましくは、種々異なった変数nを有するポリエチレングリコールをベースとしたポリマー(この場合、エチレンオキシドから形成された単位が主である)が使用される。上記のポリエチレングリコールの分子量(Mn)としては、通例250〜8000、好ましくは600〜3000g/molが選択される。
【0033】
好ましい一実施形態において、部分芳香族ポリエステルの製造には、2)および3a)のモル量を基準として、たとえば15〜98モル%、好ましくは60〜99.5モル%のジオール2)および0.2〜85モル%、好ましくは0.5〜30モル%のジヒドロキシ化合物3a)が使用可能である。
【0034】
好ましい一実施形態において、ヒドロキシカルボン酸3b)としては、以下すなわちグリコール酸、D−、L−、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、それらの環状誘導体たとえばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、p−ヒドロキシ安息香酸ならびにそれらのオリゴマーおよびポリマーたとえば3−ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシバレリアン酸、
ポリラクチド(たとえばNatureWorks[登録商標](Fa.Cargill)として入手可能)ならびに、3−ポリヒドロキシ酪酸およびポリヒドロキシバレリアン酸からなる混合物(後者は商品名Biopol[登録商標]にてZenecaより入手可能)が使用され、特に好ましくは部分芳香族ポリエステルの製造にそれらの低分子量環状誘導体が使用される。
【0035】
上記のヒドロキシカルボン酸は、たとえば、1)および2)の量を基準として、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%の量にて使用可能である。
【0036】
アミノ−C
2〜C
12−アルカノールまたはアミノ−C
5〜C
10−シクロアルカノール(成分3c)(ここで、4−アミノメチルシクロヘキサンメタノールも含まれることとする)としては、好ましくは、アミノ−C
2〜C
6−アルカノールたとえば2−アミノメタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノールならびにアミノ−C
5〜C
6−シクロアルカノールたとえばアミノシクロペンタノールおよびアミノシクロヘキサノールまたはそれらの混合物が使用される。
【0037】
ジアミノ−C
1〜C
8−アルカン(成分3d)としては、好ましくは、ジアミノ−C
4〜C
6−アルカンたとえば1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタンおよび1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン、"HMD")が使用される。
【0038】
好ましい一実施形態において、部分芳香族ポリエステルの製造には、2)のモル量を基準として、0.5〜99.5モル%、好ましくは0.5〜50モル%の3c)および、2)のモル量を基準として、0〜50モル%、好ましくは0〜35モル%の3d)が使用可能である。
【0039】
上記一般式(III)の2,2′−ビスオキサゾリン3e)は、一般に、Angew.Chem.Int.Edit.,Vol.11(1972),p.287−288から既知の方法によって得られる。特に好ましいビスオキサゾリンは、R
1が単結合、(CH
2)
z−アルキル基(ここで、z=2、3または4である)たとえばメチレン、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、またはフェニレン基を意味するそれである。特に好ましいビスオキサゾリンとして、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニル)メタン、1,2−ビス(2−オキサゾリニル)エタン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル)プロパンまたは1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ブタン、特に、1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼン、1,2−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼンまたは1,3−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼンを挙げておくこととする。
【0040】
部分芳香族ポリエステルA11の製造には、それぞれ成分2)、3c)、3d)および3e)のモル量の総和を基準として、たとえば70〜98モル%の2)、30モル%までの3c)および0.5〜30モル%の3d)および0.5〜30モル%の3e)が使用可能である。さらに別の好ましい実施形態において、1)および2)の総質量を基準として、0.1〜5質量パーセント、好ましくは0.2〜4質量%の3e)の使用が可能である。
【0041】
成分3f)としては、天然のアミノカルボン酸が使用可能である。これには、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパルテーム酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チオシン、アスパラギンまたはグルタミンが数え入れられる。
【0042】
一般式(IVa)および(IVb)の好ましいアミノカルボン酸は、sが1〜1000までのいずれか1整数を意味し、tが1〜4までのいずれか1整数、好ましくは、1または2を意味し、Tがフェニレン基と−(CH
2)
u−(ここで、uは1、5または12を意味する)とからなる群から選択されているそれである。
【0043】
さらに、3f)は一般式(V)のポリオキサゾリンであってもよい。3f)はまた、種々異なったアミノカルボン酸および/またはポリオキサゾリンの混合物であってもよい。
【0044】
好ましい一実施形態において、3f)は、成分1)および2)の総量を基準として、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%の量にて使用可能である。
【0045】
エステル形成能を有する少なくとも3個の基を含んだ化合物4a)は部分芳香族ポリエステルの製造に場合により使用可能なその他の成分として数え入れられる。
【0046】
上記の化合物4a)は、好ましくは、エステル結合を形成し得る3〜10個の官能基を含んでいる。特に好ましい化合物4a)は、分子中に3〜6個のこの種の官能基特に3〜6個のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を有する。例として以下を挙げておくこととする:
酒石酸、クエン酸、リンゴ酸:
トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;
ペンタエリトリット;
ポリエーテルトリオール;
グリセリン;
トリメシン酸;
トリメリット酸、無水トリメリット酸;
ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物および
ヒドロキシイソフタル酸。
【0047】
上記の化合物4a)は、通例、成分1)を基準として、0.01〜15モル%、好ましくは0.05〜10モル%、特に好ましくは0.1〜4モル%の量にて使用可能である。
【0048】
成分4b)としては、イソシアネートまたは種々異なったイソシアネートの混合物が使用される。芳香族または脂肪族ジイソシアネートが使用可能である。ただし、高官能価のイソシアネートも使用可能である。
【0049】
本発明の範囲において、芳香族ジイソシアネート4b)として理解されるのは、特に、トルイレン−2,4−ジイソシアネート、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネートまたはキシリレン−ジイソシアネートである。
【0050】
上記のうち、2,2′−、2,4′−ならびに4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが成分4b)として特に好ましい。一般に、残余のジイソシアネートは混合物として使用される。
【0051】
三核ジイソシアネート4b)としてはトリ(4−イソシアノフェニル)メタンも適切と考えられる。多核芳香族ジイソシアネートは、たとえば、単核または二核ジイソシアネートの製造時に生ずる。
【0052】
成分4b)は、たとえば、ジイソシアネート基をキャッピングするために、成分4b)の総質量を基準として、たとえば5質量%までの下位量にてウレチオン基も含んでいてよい。
【0053】
本発明の範囲において、脂肪族ジイソシアネート4b)として理解されるのは、特に、炭素原子数2〜20個、好ましくは炭素原子数3〜12個の直鎖または分岐アルキレンジイソシアネートまたはシクロアルキレンジイソシアネートたとえば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)である。特に好ましい脂肪族ジイソシアネート4b)は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートである。
【0054】
好ましいイソシアヌレートには、炭素原子数2〜20個、好ましくは炭素原子数3〜12個のアルキレンジイソシアネートまたはシクロアルキレンジイソシアネートたとえばイソホロンジイソシアネートまたはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)から誘導される脂肪族イソシアヌレートが数え入れられる。この場合、上記のアルキレンジイソシアネートは直鎖であっても、分岐であってもよい。特に好ましいのは、n−ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレート、たとえば、n−ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体、五量体または高オリゴマーである。
【0055】
一般に、成分4b)は、1)および2)のモル量の総和を基準として、0.01〜5モル%、好ましくは0.05〜4モル%、特に好ましくは0.1〜4モル%の量にて使用される。
【0056】
ジビニルエーテル4c)としては、一般に、市販の通例のすべてのジビニルエーテルが使用可能である。好ましくは、1,4−ブタンジオール−ジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジビニルエーテルまたは1,4−シクロヘキサンジメタノール−ジビニルエーテルまたはそれらの混合物が使用される。
【0057】
好ましくは、ジビニルエーテルは、1)および2)の総質量を基準として、0.01〜5質量%、特に、0.2〜4質量%の量にて使用される。
【0058】
好ましい部分芳香族ポリエステルの例は、以下に挙げる成分つまり
1)、2)、4a)
1)、2)、4b)
1)、2)、4a)、4b)
1)、2)、4c)
1)、2)、3a)
1)、2)、3a)、4c)
1)、2)、3c)、3d)
1)、2)、3c)、3d)、3e)
1)、2)、4a)、3c)、3e)
1)、2)、3c)、4c)
1)、2)、3c)、4a)
1)、2)、3a)、3c)、4c)
1)、2)、3b)
をベースとしている。
【0059】
上記のうち、1)、2)、4a)または1)、2)、4b)をベースとするまたは1)、2)、4a)、4b)をベースとする部分芳香族ポリエステルが特に好ましい。さらに別の好ましい実施形態において、部分芳香族ポリエステルは1)、2)、3c)、3d)、3e)または1)、2)、4a)、3c)、3e)をベースとしている。
【0060】
部分芳香族ポリエステルA11としては、テレフタル酸(10〜40モル%)、1,4−ブタンジオール(50モル%)およびアジピン酸またはセバシン酸(10〜40モル%)からなるランダム・コポリエステル(この場合、モノマーの総和は100質量%である)が好ましい。特に好ましいのは、テレフタル酸(15〜35モル%)、1,4−ブタンジオール(50モル%)およびアジピン酸(15〜35モル%)からなるランダム・コポリエステル(この場合、モノマーの総和は100質量%である)である。
【0061】
上記のホモポリエステルまたはコポリエステルA12は、好ましくは、
ポリラクチド(PLA)と、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエート、たとえばPHBまたはPHB/Vと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択されている。
【0062】
好ましい一実施形態において、上記のプラスチック成分A1に含まれている少なくとも1種のポリエステルは、上記第2のプラスチック成分BのポリエステルB1よりも低い融点を有している。
【0063】
低融点温度の利点は、上記第2のプラスチック成分Bの吹付け被覆に際して上記第1のプラスチック成分A1の溶融によって特に密な結合が可能になることである。
【0064】
加えて、上記第1のプラスチック成分A1は1種以上の添加剤を含んでいてよい。この場合、これらの添加剤は、通例、靭性改質剤と、難燃剤と、成核剤と、ススと、顔料と、染料と、離型剤と、熱分解安定剤と、酸化防止剤と、加工安定剤と、滑剤およびブロック防止剤と、ワックスと、可塑剤と、界面活性剤と、静電防止剤および防曇剤とからなる群から選択されている。プラスチック成分A1の質量を基準とした上記添加剤の割合は、好ましくは、0〜15質量%である。
【0065】
さらにまた、繊維状または粒子状充填剤も含まれていてよい。適切な繊維状または粒子状充填剤は無機質または有機質であってよい。適切なものは、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、カオリン、焼成カオリン、タルク、白墨、ケイ酸塩、雲母、ウォラストナイト、モンモリロナイト、セルロース含有繊維たとえば木綿、亜麻、麻、イラクサ繊維等、非晶質ケイ酸、石英粉末である。繊維状または粒子状充填剤のうち、特に好ましいのは粒子状充填剤である。なかんずく特に好ましいのは鉱物およびガラス球、特にガラス球である。プラスチック成分A1の質量を基準とした繊維状または粒子状添加剤の割合は、好ましくは、0〜50質量%である。上記第1のプラスチック成分A1がガラス球を含んでいる場合、当該ガラス球の割合は、上記第1のプラスチック成分A1の総質量を基準として、好ましくは0.1〜40質量%である。
【0066】
上記第1のプラスチック成分A1との相溶性を改善するために、上記充填剤はそれらの表面がたとえば有機化合物またはシラン化合物で処理されていてよい。
【0067】
上記第1のプラスチック成分A1の靭性改質剤としては、たとえば、エチレンと、プロピレンと、ブタジエンと、イソブテンと、イソプレンと、クロロプレンと、ビニルアセテートと、スチレンと、アクリルニトリルと、アルコール成分中に1〜18個のC原子を有するアクリル−ないしメタクリル酸エステルとからなる群から選択された少なくとも2モノマー単位から構成された共重合体が適当である。適切な靭性改質剤は、たとえば、国際公開第2007/009930号パンフレットから公知である。
【0068】
上記第1のプラスチック成分A1には、上記第1のプラスチック成分A1の総質量を基準として、0〜50質量%の量にて難燃剤が含まれていてよい。適切な難燃剤は、たとえば、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン無含有難燃剤、メラミンシアヌレートをベースとした難燃剤、リン含有難燃剤または膨張黒鉛含有難燃剤である。
【0069】
本発明により、上記プラスチック成分A1には、少なくとも1種の相溶化剤A13が含まれている。この少なくとも1種の相溶化剤の割合は、上記プラスチック成分A1の総質量を基準としてそれぞれ、好ましくは、0.05〜5質量%特に0.1〜3質量%である。
【0070】
使用される相溶化剤は、部分芳香族ポリエステルA11母材への成分A12の組み入れを改善し得ると共に、上記第1のプラスチック成分A1と上記第2のプラスチック成分Bとの接着促進剤としても使用可能である。相溶化剤として適しているのは、たとえばMacromol.Symp.2006,233,p.17−25に記載されている類の、たとえば、グリシジルメタクリレートでグラフトされたスチレン(コ)ポリマーである。また、イソシアネート基でグラフトされたスチレン(コ)ポリマー、ポリ[メチレン(フェニレンイソシアネート)]、ビスオキサゾリン、オキサゾリン基でグラフトされたスチレンコポリマーまたは無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマーも適している。特に適しているのは、エポキシ官能価を具えた、メタクリル酸成分を有するスチレンコポリマーである。好ましいのは、3000〜8500g/molの分子量M
wと、分子鎖当たり2エポキシ基超の官能基化度とを有するランダム・エポキシ官能スチレン−アクリル酸−コポリマーである。特に好ましいのは、5000〜7000g/molの分子量M
wと、分子鎖当たりエポキシ基4個超の官能基化度とを有するランダム・エポキシ官能スチレン−アクリル酸−コポリマーである。
【0071】
第1のプラスチック成分A2
本発明により、上記第1のプラスチック成分A2は、以下すなわち
A21:成分A21およびA22の総質量を基準として、10〜100質量%の少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマー、
A22:成分A21およびA22の総質量を基準として、0〜90質量%の少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステル、
A23:成分A21およびA22の総質量を基準として、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている。
【0072】
好ましい一実施形態において、上記第1のプラスチック成分A2は、50〜100質量%、特に70〜100質量%の少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーを含んでいる。相応して、少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステルの割合は、好ましくは、0〜50質量%、なかんずく0〜30質量%である。特に好ましいのは、70〜90質量%の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーと10〜30質量%の熱可塑性(コ)ポリエステルが含まれている実施形態である。
【0073】
上記の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーA21は、好ましくは、スチレン−ブタジエン−コポリマーと、スチレン−アクリルニトリル−コポリマー(SAN)と、α−メチルスチレン−スチレン−アクリルニトリル−コポリマーと、ジエン重合体またはアルキルアクリレートからなる粒子状ゴム相を有するスチレン−アクリルニトリル−コポリマーと、ジエン重合体またはアルキルアクリレートからなる粒子状ゴム相を有するα−メチルスチレン−スチレン−アクリルニトリル−コポリマー(ここで、スチレンとは異なるモノマー単位はコポリマー中にそれぞれ15〜40質量%の割合で含まれている)とからなる群から選択されている。
【0074】
上記成分A21は、通例、15〜60質量%、好ましくは25〜55質量%、なかんずく30〜50質量%の粒子状グラフトゴムおよび、40〜85質量%、好ましくは45〜75質量%、なかんずく50〜70質量%の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーを含み、この場合、当該質量%はそれぞれ粒子状グラフトゴムと熱可塑性(コ)ポリマーとからなる総質量を基準としており、合計して100質量%である。
【0075】
さらに、上記の熱可塑性スチレン(コ)ポリマーA21は、0〜70質量%の割合でα−メチルスチレンまたはn−フェニルマレインイミドを含んでいてよい。
【0076】
この場合、スチレンとは異なるモノマー単位の質量割合ないしα−メチルスチレンまたはn−フェニルマレインイミドの割合はそれぞれ熱可塑性スチレン(コ)ポリマーA21の質量を基準としている。
【0077】
好ましい一実施形態において、上記のスチレン成分A21はゴム相としてブタジエン・ベースの粒子状グラフトゴムおよび、熱可塑性硬質相として、ビニル芳香族モノマーとビニルシアニド(SAN)特にスチレンとアクリルニトリル、特に好ましくは、スチレンと、α−メチルスチレンと、アクリルニトリルとからなる共重合体を含んでいる。
【0078】
好ましくは、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン−重合体(ABS)が、粒子状グラフトゴムで衝撃靭性改質されたSANとして使用される。ABS重合体とその製造は当業者には公知であり、文献たとえば2003年2月版のDIN EN ISO2580−1DE、国際公開第02/00745号および国際公開第2008/020012号パンフレット、ならびに、Modern Styrenic Polymers,Edt.J.Scheirs,Wiley & Sons 2003,pp.305−338に述べられている。
【0079】
ABS重合体としては、一般に、ジエン重合体特に1,3−ポリブタジエンが特にスチレンおよび/またはα−メチルスチレンとアクリルニトリルとからなるコポリマー母材中に存在している衝撃靭性改質されたSAN重合体が理解される。
【0080】
上記の熱可塑性ポリエステルA22は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートと、ポリトリメチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレートと、1種以上のジオールおよび場合により1種以上のラクトンを有する1種以上の二塩基酸からなるコポリエステルならびにこれらのうちの少なくとも2種のポリエステルからなる混合物とからなる群から選択されている。
【0081】
コポリエステルを構成している適切な二塩基酸は、たとえば、テレフタル酸と、アジピン酸と、イソフタル酸と、2,6−ナフタリンジカルボン酸と、アゼライン酸と、セバシン酸と、ドデカン二塩基酸と、シクロヘキサンジカルボン酸と、それらの混合物とからなる群から選択されている。
【0082】
コポリエステルを構成している適切なジオールは、たとえば、1,2−エタンジオールと、1,3−プロパンジオールと、1,4−ブタンジオールと、ペンタンジオールと、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ヘキサンジオールと、1,4−シクロヘキサンジオールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、ネオペンチルグリコールと、ポリテトラヒドロフランと、それらの混合物とからなる群から選択されているものである。
【0083】
さらに、1種以上のラクトンがコポリエステルの構成に使用される場合、それらは、好ましくは、ε−カプロラクトンと、ヘキサノ−4−ラクトンと、γ−ブチロラクトンと、γ−バレロラクトンとからなる群から選択されている。
【0084】
熱可塑性ポリエステルA22としては、テレフタル酸(10〜40モル%)、1,4−ブタンジオール(50モル%)およびアジピン酸またはセバシン酸(10〜40モル%)からなるランダム・コポリエステル(この場合、モノマーの総和は100質量%である)が好ましい。特に好ましいのは、テレフタル酸(15〜35モル%)、1,4−ブタンジオール(50モル%)およびアジピン酸(15〜35モル%)からなるランダム・コポリエステル(この場合、モノマーの総和は100質量%である)である。
【0085】
好ましい一実施形態において、上記のプラスチック成分A2に含まれている少なくとも1種のポリエステルは、上記第2のプラスチック成分BのポリエステルB1よりも低い融点を有している。
【0086】
低融点温度の利点は、上記第2のプラスチック成分Bの吹付け被覆に際して上記第1のプラスチック成分A2の溶融によって特に密な結合が可能になることである。
【0087】
加えて、上記第1のプラスチック成分A2は1種以上の添加剤を含んでいてよい。この場合、これらの添加剤は、通例、繊維状または粒子状充填剤と、靭性改質剤と、難燃剤と、成核剤と、ススと、顔料と、染料と、離型剤と、熱分解安定剤と、酸化防止剤と、加工安定剤と、相溶化剤とからなる群から選択されている。
【0088】
適切な繊維状充填剤は、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維である。通例使用される粒子状充填剤は、たとえば、カオリン、焼成カオリン、タルク、白墨、非晶質ケイ酸、石英粉末である。繊維状または粒子状充填剤のうち、特に好ましいのは粒子状充填剤である。なかんずく特に好ましいのは、鉱物およびガラス球、特にガラス球である。上記第1のプラスチック成分A2がガラス球を含んでいる場合、当該ガラス球の割合は、上記第1のプラスチック成分A2の総質量を基準として、好ましくは0.1〜40質量%である。
【0089】
上記第1のプラスチック成分A2との相溶性を改善するために、上記充填剤はそれらの表面がたとえば有機化合物またはシラン化合物で処理されていてよい。
【0090】
上記第1のプラスチック成分A2の靭性改質剤としては、たとえば、エチレンと、プロピレンと、ブタジエンと、イソブテンと、イソプレンと、クロロプレンと、ビニルアセテートと、スチレンと、アクリルニトリルと、アルコール成分中に1〜18個のC原子を有するアクリル−ないしメタクリル酸エステルとからなる群から選択された少なくとも2モノマー単位から構成された共重合体が適当である。適切な靭性改質剤は、たとえば、国際公開第2007/009930号パンフレットから公知である。
【0091】
上記第1のプラスチック成分A2には、上記第1のプラスチック成分A2の総質量を基準として、0〜50質量%の量にて難燃剤が含まれていてよい。適切な難燃剤は、たとえば、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン不含難燃剤、メラミンシアヌレートをベースとした難燃剤、リン含有難燃剤または膨張黒鉛含有難燃剤である。
【0092】
特に好ましい一実施形態において、上記プラスチック成分A2には、少なくとも1相溶化剤が含まれている。この少なくとも1相溶化剤の割合は、上記プラスチック成分A2の総質量を基準としてそれぞれ、好ましくは、0.05〜5質量%特に1〜3質量%の範囲内にある。
【0093】
使用される相溶化剤は、スチレン(コ)ポリマーA21母材への成分A22の組み入れを改善し得ると共に、上記第1のプラスチック成分A2と上記第2のプラスチック成分Bとの接着促進剤としても使用可能である。相溶化剤として適しているのは、たとえばMacromol.Symp.2006,233,p.17−25に記載されている類の、たとえば、グリシジルメタクリレートでグラフトされたスチレン(コ)ポリマーである。また、イソシアネート基でグラフトされたスチレン(コ)ポリマー、ポリ[メチレン(フェニレンイソシアネート)]、ビスオキサゾリン、オキサゾリン基でグラフトされたスチレンコポリマーまたは無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマーも適している。特に適しているのは、エポキシ官能価を具えた、メタクリル酸成分を有するスチレンコポリマーである。好ましいのは、3000〜8500g/molの分子量M
wと、分子鎖当たりエポキシ基2個超の官能基化度とを有するランダム・エポキシ官能スチレン−アクリル酸−コポリマーである。特に好ましいのは、5000〜7000g/molの分子量M
wと、分子鎖当たりエポキシ基4個超の官能基化度とを有するランダム・エポキシ官能スチレン−アクリル酸−コポリマーである。
【0094】
第2のプラスチック成分B
本発明によるこの成形コンパウンドは、成分B1として、10〜99.99質量%、好ましくは30〜97.99質量%特に30〜95質量%の、B22とは異なる少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを含んでいる。
【0095】
一般に、芳香族ジカルボン酸および脂肪族または芳香族ジヒドロキシ化合物をベースとしたポリエステルB1が使用される。
【0096】
好ましいポリエステルの第1のグループはポリアルキレンテレフタレート、特に、アルコール部分に2〜10個のC原子を有するそれである。
【0097】
この種のポリアルキレンテレフタレートはそれ自体公知に属し、文献中に記載されている。これらは主鎖中に、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族環を含んでいる。この芳香族環は、たとえば、ハロゲンたとえば塩素および臭素によるまたはC
1−C
4−アルキル基たとえばメチル基、エチル基、i−ないしn−プロピル基およびn−、i−ないしt−ブチル基によって置換されていてもよい。
【0098】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸、それらのエステルまたはその他のエステル形成誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応により、それ自体公知の方法で製造可能である。
【0099】
好ましいジカルボン酸としては、2,6−ナフタリンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸またはそれらの混合物が挙げられる。30モル%以下、好ましくは10モル%以下の芳香族ジカルボン酸を、脂肪族または脂環式ジカルボン酸たとえばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸およびシクロヘキサンジカルボン酸によって置換することができる。
【0100】
上記の脂肪族ジヒドロキシ化合物については、炭素原子数2〜6のジオール、特に、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコールまたはそれらの混合物が好ましい。
【0101】
特に好ましいポリエステルB1としては、2〜6個のC原子を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。これらのうち、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。その他に好ましいのは、1質量%、好ましくは0.75質量%までの1,6−ヘキサンジオールおよび/または2−メチル−1,5−ペンタンジオールをその他のモノマー単位として含んだPETおよび/またはPBTである。
【0102】
ポリエステルB1の粘度数は、一般に、50〜220、好ましくは80〜160である(0.5質量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(質量比1:1、25℃)溶液中にて測定、ISO1628に準拠)。
【0103】
特に好ましいのは、そのカルボキシル末端基含有量が100mval/kg(ポリエステル)以下、好ましくは50mval/kg(ポリエステル)以下、なかんずく40mval/kg(ポリエステル)以下のポリエステルである。この種のポリエステルは、たとえば、ドイツ公開第4401055号明細書開示の方法によって製造可能である。このカルボキシル末端基含有量は、通例、滴定法(たとえば電位差測定法)によって測定される。
【0104】
特に好ましい成形コンパウンドは、成分B1として、PBTと、PBTとは異なるポリエステルたとえばポリエチレンテレフタレート(PET)との混合物を含んでいる。たとえば、この混合物中のポリエチレンテレフタレートの割合は、100質量%B1を基準として、好ましくは50質量%以下、特に、10〜35質量%である。
【0105】
さらに、PETリサイクレート(スクラップPETとも称される)を、場合により、ポリアルキレンテレフタレートたとえばPBTとの混合物にて使用するのが有利である。
【0106】
リサイクレートとしては、一般に、以下が理解される:
1)工業的利用後廃材:これは、重縮合時または加工時の生産廃棄物、たとえば、射出成形加工時のスプルー、射出成形加工時または押出し成形加工時の当初廃棄物または押出し成形板またはシートの切れ端などである。
2)消費後廃棄物:これは、最終消費者による使用後に回収、処理されるプラスチック製品である。量的に見て圧倒的に多い製品は、ミネラルウォーター、ソフトドリンクおよびジュース用の吹込み成形PETボトルである。
【0107】
上記双方の種類のリサイクレートは粉砕物としてまたは粒質物の形で存在していてよい。後者においては、原料としてのリサイクレートは、分別および浄化の後に、押出し機中で溶解されて、造粒される。これによって、爾後の加工ステップのためのハンドリング、流動性化および計量は大幅に簡易化される。
【0108】
リサイクレートは、粒質物としても、粉砕物としても使用可能であるが、その際、それらの最大辺長はせいぜい10mm、好ましくはせいぜい8mmとする必要があろう。
【0109】
加工時にポリエステルは(微量水分によって)加水分解分裂されることから、リサイクレートを前もって乾燥しておくことが推奨される。乾燥後の残留水分は、好ましくは最高0.2%、特に、最高0.05%である。
【0110】
さらにその他のグループとしては、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される全芳香族ポリエステルが挙げられる。
【0111】
芳香族ジカルボン酸として適しているのは、すでにポリアルキレンテレフタレートのところで述べた化合物である。好ましくは、5〜100モル%のイソフタル酸と0〜95モル%のテレフタル酸とからなる混合物、特に、約80%のテレフタル酸と20%のイソフタル酸との混合物から、これら双方の酸のほぼ等量の混合物までが使用される。
【0112】
上記の芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、一般式(VI)
【化5】
[式中、
Zは8個までのC原子を有するアルキレン基またはシクロアルキレン基、12個までのC原子を有するアリレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子またはイオウ原子または1化学結合を表し、mは0〜2の値を有する]を有している。これらの化合物はフェニレン基に、置換基として、C
1〜C
6−アルキル基またはアルコキシ基およびフッ素、塩素または臭素を担持していてもよい。
【0113】
これらの化合物の基幹体として、たとえば以下すなわち
ジヒドロキシジフェニル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ−(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α、α′−ジ−(ヒドロキシフェニル)−ジアルキルベンゼン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ−(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン
レゾルシンおよび
ヒドロキノンならびにそれらの核アルキル化または核ハロゲン化誘導体を挙げておくこととする。
【0114】
これらのうち、
4,4′−ジヒドロキシジフェニル、
2,4−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α、α′−ジ−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、
2,2−ジ−(3′−メチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび
2,2−ジ−(3′−クロロ−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ならびに、特に、
2,2−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ジ−(3′,5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよび
2,2−ジ−(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン
またはそれらの混合物が好ましい。
【0115】
言うまでもなく、ポリアルキレンテレフタレートおよび全芳香族ポリエステルの混合物も使用可能である。これらは、一般に、20〜98質量%のポリアルキレンテレフタレートおよび2〜80質量%の全芳香族ポリエステルを含んでいる。
【0116】
言うまでもなく、ポリエステルブロックコポリマーならびにコポリエーテルエステルも使用可能である。この種の製品はそれ自体公知に属し、文献たとえば米国特許第3651014号明細書に記載されている。同様な製品は市販されている。たとえば、Hytrel[登録商標](DuPont)。
【0117】
本発明によれば、ハロゲン不含ポリカーボネートもポリエステルとして理解されることとする。適切なハロゲン不含ポリカーボネートは、一般式(VII)
【化6】
[式中、
Qは単結合、C
1〜C
8−アルキレン基、C
2〜C
3−アルキリデン基、C
3〜C
6−シクロアルキリデン基、C
6〜C
12−アリレン基ならびに−O−、−S−または−SO
2−を意味し、mは0〜2までの1整数である]のジフェノールをベースとしたそれである。
【0118】
これらのジフェノールはフェニレン基に置換基たとえばC
1〜C
6−アルキル基またはC
1〜C
6−アルコキシ基を有していてもよい。
【0119】
上記の式(VII)の好ましいジフェノールは、たとえば、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンである。特に好ましいのは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンならびに、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0120】
ホモポリカーボネートならびにコポリカーボネートはいずれも成分B1として適しており、ビスフェノールA−単独重合体と並んで、ビスフェノールAのコポリカーボネートが好ましい。
【0121】
適切なポリカーボネートは公知のように、しかも好ましくは、使用されるジフェノールの総和を基準として、0.05〜2.0質量%の少なくとも三官能価化合物たとえば3個以上のフェノールOH基を有する化合物の組み入れによって分岐していてよい。
【0122】
1.10〜1.50、特に、1.25〜1.40の相対粘度数η
relを有するポリカーボネートが特に適切であることが判明した。これは10000〜200000g/mol、特に、20000〜80000g/molの平均分子量M
w(重量平均値)に相当している。
【0123】
上記一般式(VII)のジフェノールはそれ自体公知に属するまたは公知の方法によって製造可能である。
【0124】
ポリカーボネートの製造は、たとえば、界面法によるジフェノールとホスゲンとの反応によるまたは均一相法(いわゆるピリジン法)によるホスゲンとの反応によって実施可能であり、その際、それぞれ設定される分子量は公知のように相応した量の公知の連鎖停止剤によって達成される。(ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネートについては、たとえば、ドイツ特許出願公開公報第3334782号明細書参照のこと)。
【0125】
適切な連鎖停止剤は、たとえば、フェノール、p−t−ブチルフェノールであり、また長鎖アルキルフェノールたとえば4−(1,3−テトラメチル−ブチル)−フェノール(ドイツ特許出願公開公報第2842005号明細書による)もそうであり、または、アルキル置換基に合計8〜20個のC原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール(ドイツ公開第3506472号明細書による)たとえばp−ノニルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチル−ヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。
【0126】
本発明の趣旨のハロゲン不含ポリカーボネートは、当該ポリカーボネートがハロゲン不含ジフェノールと、ハロゲン不含連鎖停止剤と、場合により、ハロゲン不含分岐剤とから構成されていることを意味しており、その際、たとえば界面法によるホスゲンでのポリカーボネートの製造から生ずる下位ppm量の鹸化性塩素含有量は本発明の趣旨においてハロゲンを含有しているとは見なされない。ppm含有量の鹸化性塩素を有するこの種のポリカーボネートは本発明の趣旨のハロゲン不含ポリカーボネートである。
【0127】
その他の適切な成分B1として非晶質ポリエステルカーボネートを挙げておくこととするが、この場合、製造に際して、ホスゲンは芳香族ジカルボン酸単位たとえばイソフタル酸および/またはテレフタル酸単位に置換された。詳細については欧州公開第711810号パンフレットを参照されたい。
【0128】
モノマー単位としてシクロアルキル基を有するその他の適切なコポリカーボネートは欧州公開第365916号パンフレットに記載されている。
【0129】
さらに、ビスフェノールAはビスフェノールTMCによって置換可能である。この種のポリカーボネートは商品名APEC HT[登録商標]にてBayer社から入手可能である。
【0130】
本発明による成形コンパウンドは成分B2として、0.01〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、なかんずく0.7〜10質量%にて、以下に述べるように、OH価1〜600mgKOH、好ましくは10〜550mgKOH、なかんずく50〜550mgKOH/g(ポリカーボネート)(DIN 53240,パート2に準拠)を有する少なくとも1高度分岐または超分岐ポリカーボネートを成分B21として、または、少なくとも1超分岐ポリエステルを成分B22として、または、それらの混合物を含んでいる。
【0131】
本発明の趣旨において、超分岐ポリカーボネートB21として理解されるのは、ヒドロキシル基およびカーボネート基を有する、構造的にも分子的にも共に不均一な非架橋巨大分子である。これらは一方で、中心分子から出発して、デンドリマーと同様に、ただし、不均一な分岐鎖長を有して構成されていてよい。これらは他方で、直鎖状で、官能性側基を有するように構成されていてもよく、または、双方の極端の組み合わせとして、直鎖および分岐分子部分を有していてよい。デンドリマーおよび超分岐ポリマーの定義についてはP.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,No.14,2499も参照されたい。
【0132】
本発明との関連で"超分岐"とは、分岐度(Degree of Branching、DB)つまり分子当たりの樹枝状結合の平均数+末端基の平均個数が10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは20〜95%であることと理解される。
【0133】
本発明との関連で"デンドリマー"とは、分岐度が99.9〜100%であることと理解される。"Degree of Branching"の定義についてはH.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30を参照されたい。本発明の範囲において、"高度分岐"なる用語は"デンドリマー"と同義に用いられる。
【0134】
好ましくは、上記成分B21は、100〜15000g/mol、好ましくは200〜12000g/mol、なかんずく500〜10000g/mol(GPC、PMMA標準物質)の数平均分子量M
nを有する。
【0135】
ガラス転移温度Tgは特に−80℃〜−140℃、好ましくは−60〜120℃(DSCに準拠、DIN 53765)である。
【0136】
特に、粘度(mPas)は、23℃(DIN 53019に準拠)にて、50〜200000、特に100〜150000、なかんずく特に好ましくは200〜100000である。
【0137】
上記成分B21は、好ましくは、少なくとも以下のステップすなわち
a)少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1種の脂肪族アルコール(BB)を有する一般式RO(CO)ORの少なくとも1種の有機カーボネート(BA)を、アルコールROHの脱離下で反応させ、1以上の縮合物(BK)を得るステップ(ここで、Rは、それぞれ互いに独立に、1〜20個のC原子を有する直鎖または分岐脂肪族、芳香脂肪族または芳香族炭化水素基である)ならびに、
b)上記縮合物(BK)を分子間反応させ、高官能価の、高度または超分岐ポリカーボネートを得るステップ
(ここで、反応混合物中のOH基とカーボネートとの質量比は、上記縮合物(BK)が平均にて1個のカーボネート基と1個以上のOH基を有するまたは1個のOH基と1個以上のカーボネート基を有するように選択される)
を含んでなる方法によって得られる。
【0138】
出発材料として使用される上記一般式RO(CO)ORの有機カーボネート(BA)の基は、それぞれ互いに独立に、1〜20個のC原子を有する直鎖または分岐脂肪族、芳香脂肪族または芳香族炭化水素基である。2個の基Rは、環の形成下で、互いに結合されていてもよい。好ましいのは脂肪族炭化水素基、なかんずく好ましいのは1〜5個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。
【0139】
ジアルキル−またはジアリールカーボネートは、たとえば、脂肪族、芳香脂肪族または芳香族アルコール、好ましくはモノアルコールとホスゲンとの反応から製造可能である。これらは、さらに、貴金属、酸素またはNO
xの存在において、COによるアルコールまたはフェノールの酸化カルボニル化を経て製造することもできる。ジアリール−またはジアルキルカーボネートの製造方法については"Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry",6th edition,2000 Electronic Release,Verlag Wiley−VCHも参照されたい。
【0140】
適切なカーボネートの例には、脂肪族または芳香族カーボネートたとえばエチレンカーボネート、1,2−または1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネートまたはジドデシルカーボネートが含まれる。
【0141】
好ましくは、脂肪族カーボネートなかんずく、基が1〜5個のC原子を含んだもの、たとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートが使用される。
【0142】
上記有機カーボネートは、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1種の脂肪族アルコール(BB)または2種以上の異なったアルコールの混合物と反応させる。
【0143】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例には、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリット、ビス(トリメチロールプロパン)または糖たとえばグルコース、トリ−または高官能価アルコールをベースとしたトリ−または高官能価ポリエーテロールおよびエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドまたはポリエステロールが含まれる。その際、グリシン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリットならびにそれらの、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドをベースとしたポリエーテロールが特に好ましい。
【0144】
これらの多官能価アルコールは、使用されたすべてのアルコールの平均OH官能価が総じて2超であることを条件として、二官能価アルコール(BB′)との混合物でも使用可能である。2個のOH基を有する適切な化合物の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−および1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、二官能価ポリエーテロールまたはポリエステロールが含まれる。
【0145】
通例、カーボネート分子からの一官能価アルコールまたはフェノールの脱離下でカーボネートと上記アルコールまたはアルコール混合物を反応させて本発明による高官能価の高度分岐ポリカーボネートは得られる。
【0146】
本発明による方法で形成された高官能価の高度分岐ポリカーボネートは、反応後に、したがってさらなる改質なしで、ヒドロキシル基および/またはカーボネート基を末端基としている。これらはさまざまな溶媒中、たとえば水、アルコールたとえばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水−混合物、アセトン、2−ブタノン、酢酸エステル、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシエチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートに良好に溶解する。
【0147】
本発明の範囲において、高官能価ポリカーボネートとして理解されるのは、ポリマー骨格を形成するカーボネート基のほか、末端位または側位に、さらに少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の官能基を有する生成物である。これらの官能基はカーボネート基および/またはOH基である。末端位または側位に位置する官能基の数には基本的に上限はないが、非常に多くの官能基を有する生成物は望ましくない性質たとえば高粘度または低溶解性を有し得る。本発明の高官能価ポリカーボネートは、大半の場合、500個以下の末端位または側位官能基、好ましくは100個以下の末端位または側位官能基を有する。
【0148】
上記の高官能価ポリカーボネートB21の製造においては、OH基含有化合物とカーボネートとの比を調整し、結果する最も単純な縮合物(以下、縮合物(BK)と称する)が平均1個のカーボネート基と1個超のOH基を有するまたは1個のOH基と1個超のカーボネート基を含むようにする必要がある。その際、カーボネート(BA)とジ−またはポリアルコール(BB)とからなる最も単純な構造の縮合物(BK)は配位XY
nまたはY
nX(ここで、Xはカーボネート基を表し、Yはヒドロキシル基を表し、nは通例1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3の1個の数を表している)を生ずる。その際、個々の基として生ずる反応基は、以下、一般に"焦点基"と称される。
【0149】
たとえば、カーボネートと二価アルコールとから上記の最も単純な縮合物(BK)を製造する際に、反応比が1:1である場合には、平均して、一般式1
【化7】
によって具体的に示されるXY型の分子が生ずる。
【0150】
反応比1:1にてカーボネートと三価アルコールとから上記縮合物(BK)を製造する際には、平均して、一般式2
【化8】
によって具体的に示されるXY
2型の分子が生ずる。この場合、焦点基はカーボネート基である。
【0151】
同じく反応比1:1にてカーボネートと四価アルコールとから上記の縮合物(BK)を製造する際には、平均して、一般式3
【化9】
によって具体的に示されるXY
3型の分子が生ずる。この場合、焦点基はカーボネート基である。
【0152】
上記の式1〜3において、Rは上記に有機カーボネート(BA)に関して定義した意味を有し、R
1は脂肪族基を表している。
【0153】
さらに、上記縮合物(BK)の製造は、一般式4で具体的に示されるように、たとえば、カーボネートと三価アルコールとからも実施可能であり、その際、モル反応比は2:1である。この場合には、平均して、X
2Y型の分子が生じ、この場合、焦点基はOH基である。式4において、RおよびR
1は式1〜3の場合と同じ意味を有している。
【0154】
【化10】
【0155】
これらの成分にさらに二官能価化合物たとえばジカーボネートまたはジオールが付与される場合、これは、たとえば一般式5で具体的に示されるように、鎖の延長を招来する。またも、平均して、XY
2型の分子が生じ、焦点基はカーボネート基である。
【0156】
【化11】
【0157】
式5において、R
2は有機基、好ましくは脂肪族基を意味し、RおよびR
1は上述したように定義されている。
【0158】
式1〜5に例示的に述べた上記の単純な縮合物(BK)は、本発明により、好ましくは分子間反応して、高官能価重縮合物(以下、重縮合物(BP)と称する)を形成する。縮合物(K)および重縮合物(BP)生成反応は、通例、0〜250℃、好ましくは60〜160℃の温度にて、物質中または溶液中で行われる。その際、一般に、それぞれの出発材料に対して不活性なあらゆる溶媒が使用可能である。好ましくは、有機溶媒たとえばデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはソルベントナフサが使用される。
【0159】
好ましい一実施形態において、上記縮合反応は物質中にて実施される。反応時に遊離する一官能価アルコールROHまたはフェノールは、反応を促進するために、蒸留により、場合により減圧下で、反応平衡系から除去可能である。
【0160】
蒸留除去が予定されている場合、一般に、反応時に沸点140℃未満のアルコールROHを遊離するカーボネートを使用するのが好適である。
【0161】
反応を促進するために、触媒または触媒混合物を加えることもできる。適切な触媒は、エステル化反応またはエステル交換反応を触媒する化合物、たとえば、好ましくはナトリウム、カリウムまたはセシウムのアルカリ水酸化物、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、第三アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、有機アルミニウム−、有機スズ−、有機亜鉛−、有機チタン−、有機ジルコン−または有機ビスマス化合物、さらに、たとえばドイツ特許第10138216号明細書またはドイツ特許第10147712号明細書に記載されている類のいわゆる二重金属シアン化物(DMC)触媒である。
【0162】
好ましくは、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、イミダゾール類たとえばイミダゾール、1−メチルイミダゾールまたは1,2−ジメチルイミダゾール、チタンテトラブチレート、チタンテトライソプロピレート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート、錫ジオクエート、ジルコンアセチルアセトネートまたはそれらの混合物が使用される。
【0163】
上記の触媒の付加は、一般に、使用されるアルコールまたはアルコール混合物の量を基準として、50〜10000質量ppm、好ましくは100〜5000質量ppmで行われる。
【0164】
さらにまた、適切な触媒の付加ならびに適切な温度の選択のいずれによっても、分子間重縮合反応は制御可能である。さらに、出発成分の組成および滞留時間によって、上記ポリマー(BP)の平均分子量を調整することができる。
【0165】
高温にて製造された上記縮合物(BK)ないし重縮合物(BP)は、室温にて通例比較的長時間にわたり安定である。
【0166】
上記縮合物(BK)の性状により、分岐しているが架橋されていない異なった構造の重縮合物(BP)を生じさせることができる。さらに、これらの重縮合物(BP)は、理想的なケースにおいて、焦点基としての1個のカーボネート基と2個超のOH基または焦点基としての1個のOH基と2個超のカーボネート基を有している。この場合、反応基の数は、使用される縮合物(BK)の性状および重縮合度から結果する。
【0167】
たとえば、一般式2の縮合物(BK)を3回の分子間縮合によって反応させ、一般式6および7で表される2種の異なった重縮合物(BP)を生成することができる。
【0168】
【化12】
【0169】
式6および7において、RおよびR
1は上記の式1〜5と同様に定義されている。
【0170】
分子間重縮合反応を停止させるには、さまざまな方法が存在する。たとえば、反応が停止して、生成物(BK)または重縮合物(BP)が保存安定性を有する範囲にまで温度を低下させることができる。
【0171】
さらに別の実施形態において、縮合物(BK)の分子間反応により所望の重縮合度を有する重縮合物(BP)が生じた直後に、当該生成物(BP)に、(BP)の焦点基に対して反応性を示す基を有する生成物を加え、こうして、反応を停止させることができる。一例として、カーボネート基が焦点基である場合には、たとえばモノ−、ジ−またはポリアミンを加えることができる。ヒドロキシル基が焦点基である場合には、当該生成物(BP)に、たとえば、モノ−、ジ−またはポリイソシアネート、エポキシ基を含有した化合物またはOH基と反応する酸誘導体を加えることができる。
【0172】
本発明による高官能価ポリカーボネートの製造は、大半の場合、0.1mbar〜20bar、好ましくは1mbar〜5barの圧力範囲で、バッチ式、半連続式または連続式に運転される反応器または多段式反応器中で行われる。
【0173】
上述した反応条件の設定と、場合により、適切な溶媒の選択とによって、本発明による生成物を製造後、さらに精製することなく、再加工することができる。
【0174】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明によるポリカーボネートは、すでに反応によって得られた官能基のほかに、さらに別の官能基を含んでいてよい。その際、この官能化は、分子量造成中に行われ得るまたは事後的に、つまり、本来の重縮合の完了後に行われ得る。
【0175】
分子量造成前または造成中に、ヒドロキシル基またはカーボネート基以外にさらにその他の官能基または官能要素を有する成分が加えられる場合には、カーボネート基またはヒドロキシル基とは異なる官能基がランダムに分布したポリカーボネート・ポリマーが得られる。
【0176】
この種の効果は、重縮合中に、たとえば、ヒドロキシル基またはカーボネート基の他にさらにその他の官能基または官能要素たとえばメルカプト基、第1、第2または第3アミノ基、エーテル基、カルボン酸の誘導体、スルホン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基または長鎖アリール基を担持する化合物を加えることによって達成することができる。カルバメート基による改質には、たとえば、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2′−アミノエトキシ)エタノールまたはアンモニアの高級アルキル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはイソホロンジアミンを使用することができる。
【0177】
メルカプト基による改質には、たとえば、メルカプトエタノールを使用することができる。第3アミノ基は、たとえば、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミンまたはN,N−ジメチルエタノールアミンの組み入れによって生成させることができる。エーテル基は、たとえば、二官能価またはそれ以上の官能価を有するポリエーテロールの共縮合によって生成させることができる。長鎖アルカンジオールとの反応によって長鎖アルキル基を導入することができ、アルキルジイソシアネートまたはアリールジイソシアネートとの反応によって、アルキル基、アリール基またはウレタン基を有するポリカーボネートを生成させることができる。
【0178】
事後的な官能化は、得られた高官能価の、高度または超分岐ポリカーボネートを付加的な方法ステップ(ステップC)において、ポリカーボネートのOH基および/またはカーボネート基と反応し得る適切な官能化試薬と反応させることによって達成可能である。
【0179】
ヒドロキシル基を含んだ高官能価の、高度また超分岐ポリカーボネートは、たとえば、酸基またはイソシアネート基を含んだ分子を付加することによって改質可能である。たとえば、酸基を含んだポリカーボネートは、無水物基を含んだ化合物との反応によって得られる。
【0180】
さらに、ヒドロキシル基を含んだ高官能価ポリカーボネートは、アルキレンオキシドたとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとの反応によって、高官能価ポリカーボネート・ポリエチレンポリオールに変換することもできる。
【0181】
この方法の大きな利点はその経済性にある。縮合物(BK)または重縮合物(BP)生成反応ならびに、(BK)または(BP)を他の官能基または官能要素と反応させてポリカーボネートを得る反応のいずれも1つの反応装置で実施可能であり、これは技術的にも経済的にも有利である。
【0182】
本発明による成形コンパウンドは成分B22として、A
xB
y型の少なくとも1種の超分岐ポリエステルを含んでいてよく、この場合、
xは少なくとも1.1、好ましくは少なくとも1.3、なかんずく少なくとも2であり、
yは少なくとも2.1、好ましくは少なくとも2.5、なかんずく少なくとも3である。
【0183】
単位AないしBとして混合物も使用し得ることは言うまでもない。
【0184】
A
xB
y型のポリエステルとして理解されるのは、x官能価分子Aとy官能価分子Bとから構成される縮合物である。一例として、分子A(x=2)としてのアジピン酸と分子B(y=3)としてのグリセリンとからなるポリエステルを挙げておくこととする。
【0185】
本発明の範囲において、超分岐ポリエステルB22として理解されるのは、構造的にも分子的にも共に不均一な、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する非架橋巨大分子である。これらは一方で、中心分子から出発して、デンドリマーと同様に、ただし、不均一な分岐鎖長を有して構成されていてよい。これらは他方で、直鎖状で、官能性側基を有するように構成されていてもよく、または、双方の極端の組み合わせとして、直鎖および分岐分子部分を有していてよい。デンドリマーおよび超分岐ポリマーの定義についてはP.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,No.14,2499も参照されたい。
【0186】
本発明との関連で "超分岐"とは、分岐度(Degree of Braching、DB)つまり分子当たりの樹枝状結合の平均数+末端基の平均個数が10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは20〜95%であることと理解される。
【0187】
本発明との関連で"デンドリマー"とは、分岐度が99.9〜100%であることと理解される。"Degree of Branching"の定義についてはH.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30を参照されたい。本発明の範囲において、"高度分岐"なる用語は"デンドリマー"と同義に用いられる。
【0188】
上記成分B22は、好ましくは300〜30000g/mol、なかんずく400〜25000g/mol、なかんずく特に500〜20000g/molのM
nを有している(GPCにより、PMMA標準物質、ジメチルアセトアミド溶離剤を用いて測定)。
【0189】
好ましくはB22は、OH価0〜600mg/KOH、好ましくは1〜500mg/KOH、なかんずく20〜500mgKOH/g(ポリエステル)(DIN 53240に準拠)を有すると共に、好ましくはCOOH価0〜600mgKOH、好ましくは1〜500mgKOH、なかんずく2〜500mgKOH/g(ポリエステル)を有している。
【0190】
T
gは好ましくは−50℃〜140℃、なかんずく−50℃〜100℃である(DSCによる、DIN 53765に準拠)。
【0191】
とりわけ、少なくともOH価ないしCOOH価が0超、好ましくは0.1超、なかんずく0.5超である成分B22が好ましい。
【0192】
本発明による成分B22は、なかんずく以下に述べる方法により、つまり、溶媒の存在において、場合により、無機触媒、有機金属触媒または低分子有機触媒または酵素の存在において、
(a)1種以上のジカルボン酸またはそれらの1種以上の誘導体を1種以上の少なくとも三官能価アルコールと反応させる
または
(b)1種以上のトリカルボン酸またはより多価のポリカルボン酸またはそれらの1種以上の誘導体が1種以上のジオールと反応させること
によって得られる。溶媒中での反応が好ましい製造方法である。
【0193】
本発明の趣旨の高官能価超分岐ポリエステルB22は分子的ならびに構造的に不均一である。これらはその分子的不均一性によってデンドリマーとは相違しており、したがって、かなり低コストで製造可能である。
【0194】
上記の方法(a)によって反応可能なジカルボン酸に属するものは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α,ω−ジカルボン酸、ドデカン−α,ω−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−およびトランス−シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ならびにシス−およびトランス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸であり、
その際、上述したジカルボン酸は以下すなわち
C
1〜C
10−アルキル基たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基またはn−デシル基、
C
3〜C
12−シクロアルキル基たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基およびシクロドデシル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基が好ましい)、
アルキレン基たとえばメチレン基またはエチレン基、あるいは
C
6〜C
14−アリール基たとえばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基および9−フェナントリル基、好ましくはフェニル基、1−ナフチル基および2−ナフチル基、特に好ましくはフェニル基
のうちから選択された1個以上の基で置換されていてよい。
【0195】
置換ジカルボン酸の代表的な例として以下を挙げておくこととする:2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸、3.3−ジメチルグルタル酸。
【0196】
さらに、上記の方法(a)によって反応可能なジカルボン酸に属するものは、エチレン不飽和酸たとえばマレイン酸およびフマル酸ならびに芳香族ジカルボン酸たとえばフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸である。
【0197】
さらに、上述した代表例のうちの2種以上の混合物を使用することもできる。
【0198】
上記のジカルボン酸はそのままの形、もしくは誘導体の形で使用することができる。
【0199】
誘導体として理解されるのは、好ましくは、以下のものである:
−モノマーまたはポリマーの形の当該無水物、
−モノアルキルエステルまたはジアルキルエステル、好ましくはモノメチルエステルまたはジメチルエステルまたは当該モノエチルエステルまたはジエチルエステル、また、高級アルコールたとえばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールから誘導されたモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、
−さらにモノビニルエステルおよびジビニルエステルならびに
−混合エステル、好ましくはメチルエチルエステル。
【0200】
また、好ましい製造法の一環として、1種のジカルボン酸とその1種以上の誘導体とからなる混合物を使用することもできる。同じく、1種以上のジカルボン酸の複数の異なった誘導体の混合物を使用することもできる。
【0201】
特に好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはそれらのモノ−またはジメチルエステルが使用される。なかんずく特に好ましくはアジピン酸が使用される。
【0202】
少なくとも三官能価アルコールとして反応可能なものは以下の通りである:グリセリン、ブタン−1,2,4−トリオール、n−ペンタン−1,2,5−トリオール、n−ペンタン−1,3,5−トリオール、n−ヘキサン−1,2,6−トリオール、n−ヘキサン−1,2,5−トリオール、n−ヘキサン−1,3,6−トリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパンまたはジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリット;糖アルコールたとえばメソエリトリット、トレイトール、ソルビット、マンニットまたは上述した少なくとも三官能価アルコールの混合物。好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリトリットが使用される。
【0203】
上記の方法(b)によって反応可能なトリカルボン酸またはポリカルボン酸は、たとえば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ならびにメリト酸である。
【0204】
本発明による反応において、トリカルボン酸またはポリカルボン酸は、それ自体または誘導体の形で使用することができる。
【0205】
誘導体として理解されるものは、好ましくは、以下の通りである:
−モノマーまたはポリマーの形の当該無水物、
−モノ−、ジ−またはトリアルキルエステル、好ましくはモノ−、ジ−またはトリメチルエステルまたは当該モノ−、ジ−またはトリエチルエステル、また、高級アルコールたとえばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールから誘導されたモノ−、ジ−およびトリエステル、さらに、モノ−、ジ−またはトリビニルエステル、
−ならびに、混合メチルエチルエステル。
【0206】
本発明の範囲において、また、1種のトリ−またはポリカルボン酸とその1種以上の誘導体とからなる混合物を使用することもできる。同じく、本発明の範囲において、1種以上のトリ−またはポリカルボン酸の複数の異なった誘導体の混合物を使用して成分B22が得られる。
【0207】
本発明の上記の方法(b)のために使用されるジオールの例は以下の通りである:
エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、シクロペンタンジオール類、シクロヘキサンジオール類、イノシトールおよび誘導体、(2)−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CH
2CH
2O)
n−HまたはポリプロレングリコールHO(CH[CH
3]CH
2O)
n−Hまたは上記化合物を代表する2種以上の化合物の混合物(式中、nは1個の整数であり、n≦4である)。ここで、上述したジオール中の1個または双方のヒドロキシル基はSH基によって置換されてもよい。エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールならびにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールが好ましい。
【0208】
上記の方法(a)および(b)に際するA
xB
y型ポリエステル中の分子Aと分子Bとのモル比は4:1〜1:4、なかんずく2:1〜1:2である。
【0209】
上記の方法(a)によって反応可能な少なくとも三官能価アルコールは、それぞれ反応性が等しいヒドロキシル基を有していてよい。この場合、そのOH基が最初は等しい反応性を有するが、少なくとも1種の酸基との反応により、立体的影響または電子的影響に起因して、残りのOH基に反応性低下が誘起され得る少なくとも三官能価アルコールも好ましい。たとえば、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリットを使用する場合がこれに該当する。
【0210】
ただし、上記の方法(a)によって反応可能な少なくとも三官能価アルコールは、少なくとも2つの異なる化学反応性を有するヒドロキシル基を有していてもよい。
【0211】
この場合、官能基の反応性の相違は、化学的原因(たとえば、第1/第2/第3OH基)にまたは立体的原因に基づいていてよい。
【0212】
たとえば、トリオールは第1および第2ヒドロキシル基を有するトリオールであってよく、好ましい例としてグリセリンが挙げられる。
【0213】
上記の方法(a)による本発明による反応は、好ましくは、ジオールおよび一官能価アルコールの不在下で実施される。
【0214】
上記の方法(b)による本発明による反応は、好ましくは、モノ−またはジカルボン酸の不在下で実施される。
【0215】
本発明による方法は溶媒の存在において実施される。たとえば、炭化水素たとえばパラフィンまたは芳香族炭化水素が適切である。特に適切なパラフィンはn−ヘプタンおよびシクロヘキサンである。特に適切な芳香族炭化水素は、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、異性体混合物としてのキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンおよびオルト−ジクロロベンゼン、メタ−ジクロロベンゼンである。さらに、酸性触媒の不在において、溶媒としてとりわけ適切なものは以下の通りである:エーテルたとえばジオキサンまたはテトラヒドロフランおよびケトンたとえばメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン。
【0216】
本発明によれば、添加される溶媒の量は、使用される被反応出発材料の質量を基準として、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%である。また、使用される被反応出発材料の質量を基準として、過剰量、たとえば1.01〜10倍までの量の溶媒も使用可能である。ただし、使用される被反応出発材料の質量を基準として、100倍超の量の溶媒は有利ではない。というのも、反応相手の濃度が著しく低い場合、反応速度は著しく低下し、これによって、経済的に不適な長い反応時間が招来されるからである。
【0217】
本発明による好ましい方法を実施するため、反応開始時に加える添加剤として脱水剤を添加し、作業を実施することができる。たとえば、分子ふるい、特に、4Å分子ふるい、MgSO
4およびNa
2SO
4が適切である。また、反応中に、さらに脱水剤を添加するまたは脱水剤を新しい脱水剤と交換することもできる。また、反応中に形成された水ないしアルコールを蒸留除去すること、たとえば水分離器を使用することもできる。
【0218】
酸性触媒の不在下で方法の実施が可能である。作業は、酸性無機触媒、有機金属触媒または有機触媒の存在下、または複数の酸性無機触媒、有機金属触媒または有機触媒からなる混合物の存在下で実施されるのが好ましい。
【0219】
本発明の趣旨の酸性無機触媒として、たとえば、硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、明礬、酸性シリカゲル(pH=6、なかんずく=5)および酸性酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、たとえば、一般式Al(OR)
3のアルミニウム化合物および一般式Ti(OR)
4のチタン酸塩も酸性無機触媒として使用可能であり、上記式中、Rはそれぞれ同一または異なっていてよく、かつ、互いに独立に以下すなわち
C
1〜C
10−アルキル基たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基またはn−デシル基、
C
3〜C
12−シクロアルキル基たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基およびシクロドデシル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基が好ましい)
のうちから選択されている。
【0220】
Al(OR)
3ないしTi(OR)
4中の基Rはそれぞれ等しく、かつ、イソプロピル基または2−エチルヘキシル基から選択されているのが好ましい。
【0221】
好ましい酸性有機金属触媒は、たとえば、ジアルキル錫オキシド類R
2SnO(式中、Rは上記と同様に定義されている)から選択されている。酸性有機金属触媒を代表する特に好ましい例として、いわゆるオキソ錫として市販のジ−n−ブチル錫オキシドまたは、ジ−n−ブチル錫ジラウレートが挙げられる。
【0222】
好ましい酸性有機触媒は、たとえば、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基またはホスホン酸基を具有する酸性有機化合物である。特に好ましいのは、スルホン酸基たとえばパラ−トルエンスルホン酸である。また、酸性イオン交換体たとえば約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸基含有ポリスチレン樹脂も酸性有機触媒として使用可能である。
【0223】
上記の触媒のうちの2種以上の触媒の組み合わせも使用可能である。また、不連続的な分子の形で存在する固定化された形のこれらの有機触媒または有機金属触媒または無機触媒も使用可能である。
【0224】
酸性の無機触媒、有機金属触媒または有機触媒の使用が所望される場合、本発明により、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の触媒が使用される。
【0225】
本発明による方法は、不活性ガス雰囲気下すなわちたとえば二酸化炭素、窒素または、なかんずくアルゴンが挙げられる、希ガス雰囲気下で実施される。
【0226】
本発明による方法は60〜200℃の温度にて実施される。130〜180℃、なかんずく150℃以下の温度にて作業が行われるのが好ましい。145℃までの最高温度が特に好ましく、なかんずく特に好ましいのは135℃までの最高温度である。
【0227】
本発明による方法の圧力条件自体は特に問題ではない。たとえば10〜500mbarという著しい低圧で実施することも可能である。本発明による方法は、また、500mbar超の圧力でも実施可能である。簡便性の点から、大気圧での反応が好ましいが、やや高い圧力たとえば最大1200mbarまでの圧力でも実施可能である。また、著しく高い圧力下たとえば最大10barまでの圧力でも実施可能である。ただし、好ましいのは大気圧での反応である。
【0228】
本発明による方法の反応時間は、通例、10分〜25時間、好ましくは30分〜10時間、特に好ましいのは1〜8時間である。
【0229】
反応終了後、高官能価超分岐ポリエステルは、たとえば、触媒の濾別および濃縮によって、容易に単離することができ、その際、濃縮は通例、減圧下で実施される。さらにその他の好適な精製法は水添加後の沈殿と続いての洗浄および乾燥である。
【0230】
さらに、成分B22は酵素または酵素の分解生成物の存在において製造可能である(ドイツ公開第10163163号による)。本発明によって反応させられるジカルボン酸は本発明の趣旨の酸性有機触媒には属していない。
【0231】
リパーゼまたはエステラーゼの使用が好ましい。好適なリパーゼおよびエステラーゼは、Candida cylindracea、Candida lipolytica、Candida rugosa、Candida antarctica、Candida utilis、Chromobacterium viscosum、Geotrichum viscocum、Geotrichum candidum、Mucor javanicus、Mucor miehei、豚すい臓、pseudomonas菌類、pseudomonas fluorescens、pseudmonas cepacia、Rhizopus arrhizus、Rhizopus delemar、Rhizopus niveus、 Rhizopus oryzae、Aspergillus niger、Penicillium roquefortii、Penicillium camembertiまたはBacillus類のエステラーゼおよびBacillus thermoglucosidasiusである。Candida antarcticaリパーゼBが特に好ましい。上記の酵素は、たとえばNovozymes Biotech Inc.,(デンマーク)、から市販されている。
【0232】
好ましくは、たとえばシリカゲルまたはLewatit[登録商標]上に固定された形の酵素が使用される。酵素の固定化方法はそれ自体公知に属し、たとえば、Kurt Faber,"Biotransformations in organic chemistry",3rd Edition 1997,Springer Verlag,Chapter 3.2"Immobilization"p.345−356に記載されている。固定化酵素は、たとえば、Novozymes Biotech Inc.,(デンマーク)から、市販されている。
【0233】
固定化されて使用される酵素の量は、総じて使用される被反応出発材料の総量を基準として、0.1〜20質量%、なかんずく10〜15質量%である。
【0234】
本発明による方法は60℃超の温度にて実施される。ただし、好ましくは、100℃以下の温度にて実施される。好ましい温度は80℃以下、なかんずく特に好ましいのは62〜75℃であり、さらに好ましいのは65〜75℃の温度である。
【0235】
本発明による方法は溶媒の存在において実施される。たとえば、炭化水素たとえばパラフィンまたは芳香族炭化水素が適切である。特に適切なパラフィンはn−ヘプタンおよびシクロヘキサンである。特に適切な芳香族炭化水素は、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、異性体混合物としてのキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンおよびオルト−ジクロロベンゼン、メタ−ジクロロベンゼンである。さらに、溶媒としてとりわけ適切なものは以下の通りである:エーテルたとえばジオキサンまたはテトラヒドロフランおよびケトンたとえばメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン。
【0236】
添加される溶媒の量は、使用される被反応出発材料の質量を基準として、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも100質量%である。ただし、10000質量%を上回る量の溶媒は望ましくない。というのも、濃度が著しく低い場合、反応速度は著しく低下し、これによって、経済的に不適な長い反応時間が招来されるからである。
【0237】
本発明による方法は、500mbar超の圧力で実施される。大気圧またはそれよりやや高い圧力たとえば最大1200mbarまでの圧力で反応が実施されるのが好ましいが、また、著しく高い圧力下たとえば最大10barまでの圧力でも実施可能である。ただし、好ましいのは大気圧での反応である。
【0238】
本発明による方法の反応時間は、通例、4時間〜6日間、好ましくは5時間〜5日間、特に好ましいのは8時間〜4日間である。
【0239】
反応終了後、高官能価超分岐ポリエステルは、たとえば、酵素の濾別および濃縮によって、単離することができ、その際、濃縮は通例、減圧下で実施される。さらにその他の好適な精製法は水添加後の沈殿と続いての洗浄および乾燥である。
【0240】
本発明によって得られる高官能価超分岐ポリエステルは、変色および樹脂化の割合が特に低いことを特徴としている。超分岐ポリマーの定義については、P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびA.Sunder et al.,Chem.Eur.J.2000,6,No.1,1−8も参照のこと。ただし、本発明との関連で、"高官能価超分岐"とは、分岐度(Degree of branching)すなわち、分子当たりの樹枝状結合の平均数+末端基の平均個数が10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは30〜90%であることと理解される(これについては、H.Frey et al.Acta Polym.1997,48,30、参照のこと)。
【0241】
本発明によるポリエステルは、500〜50000g/mol、好ましくは1000〜20000g/mol、特に好ましくは1000〜19000g/molの分子量M
wを有している。多分散性は1.2〜50、好ましくは1.4〜40、特に好ましくは1.5〜30、なかんずく特に好ましくは1.5〜10である。これらは通例、溶解性が非常に優れており、換言すれば、テトラヒドロフラン(THF)、n−酢酸ブチル、エタノールおよび数多くのその他の溶媒中に本発明によるポリエステルを50質量%、場合により80質量%まで溶解しても、肉眼にてゲル粒子を検出することのできない透明な溶液が得られる。
【0242】
本発明による高官能価超分岐ポリエステルは、カルボキシ基、カルボキシ−およびヒドロキシル基、好ましくはヒドロキシル基を末端基としている。
【0243】
成分B21とB22との比は、これらが混合物で使用される場合、好ましくは1:20〜20:1、特に1:15〜15:1、なかんずく特に1:5〜5:1である。
【0244】
使用される超分岐ポリカーボネートB21/ポリエステルB22は、粒度20〜500nmの粒子である。これらのナノ粒子はポリマーブレンド中に微細に分布して存在しており、コンパウンド中の粒子サイズは20〜500nm、好ましくは50〜300nmである。
【0245】
この種のコンパウンドは、Ultradur[登録商標]high speedとして、市販されている。
【0246】
衝撃靭性改質されたポリマーD
プラスチック成分Bは、成分Dとして、1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の衝撃靭性改質性ポリマー(しばしば、ゴム弾性重合体またはエラストマーとも称される)を含んでいてよい。
【0247】
好ましいゴム弾性重合体は、たとえばポリエチレンによっては同等な有利な効果は達成されないために、成分Dはオレフィン単独重合体ではないという条件で、以下の成分すなわち
D1 2〜8個のC原子を有する40〜100質量%、好ましくは55〜79.5質量%の少なくとも1種のα−オレフィン、
D2 0〜90質量%のジエン、
D3 0〜45質量%、好ましくは20〜40質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のC
1〜C
12−アルキルエステルまたはこの種のエステルの混合物、
D4 0〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%のエチレン不飽和モノ−またはジカルボン酸またはこれらの酸の官能性誘導体、
D5 0〜40質量%のエポキシ基含有モノマー、
D6 0〜5質量%のその他のラジカル重合性モノマー
から構成されたオレフィンをベースとした重合体である。
【0248】
第1の好ましいグループとしては、エチレン単位とプロピレン単位との比が好ましくは40:60〜90:10である、いわゆるエチレン−プロピレン−(EPM)ゴムないしエチレン−プロピレン−ジエン−(EPDM)ゴムが挙げられる。
この種の好ましくは非架橋EPMゴムないしEPDMゴム(ゲル含有量は一般に1質量%未満)のムーニー粘度(ML
1+4/100℃)は好ましくは25〜100、なかんずく35〜90(100℃にて回転開始4分後に大ロータにて測定、DIN 53523に準拠)である。
【0249】
EPMゴムは実際には一般にもはや二重結合を有していないが、EPDMゴムは100個のC原子当たり1〜20個の二重結合を有し得る。
【0250】
EPDMゴムのためのジエン−モノマーD2として、たとえば、共役ジエンたとえばイソプレンおよびブタジエン、C原子数5〜25個の非共役ジエンたとえばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,4−ジ−メチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環式ジエンたとえばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエンならびにアルケニルノルボルネンたとえば5−エチレデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンおよびトリシクロジエンたとえば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエンまたはそれらの混合物を挙げておくこととする。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデン−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含有量は、オレフィン重合体の総質量を基準として、好ましくは0.5〜50質量%、特に2〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。
【0251】
EPM−ないしEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸またはそれらの誘導体でグラフトされていてよい。ここで、特に、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体ならびに無水マレイン酸を挙げておくこととする。
【0252】
特に好ましい成分Dは、たとえば、MBSゴムであり、これは
D2 90〜100質量%のジエン、0〜10質量%のさらに別の架橋性モノマー
からなる65〜99質量%の核ならびに、
以下すなわち
D7 1〜30質量%のスチレンまたは不飽和スチレンまたはそれらの混合物および
D8 70〜100質量%の少なくとも1種の不飽和ニトリルからなる
1〜35質量%の殻
から構成されている。
【0253】
適切なモノマーD7は一般式(VIII)
【化13】
[式中、
Rは、C
1〜C
8−アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基または水素を意味し、
R
1は、C
1〜C
8−アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を表し、
nは1、2または3の値を有する]のスチレンもしくは置換スチレンまたはそれらの混合物である。
【0254】
好ましいオレフィン重合体のさらに別のグループは、C原子数2〜8個のα−オレフィン特にエチレンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸のC
1〜C
18−アルキルエステルとのコポリマーである。
【0255】
基本的に、アクリル酸またはメタクリル酸の第1、第2および第3C
1〜C
18−アルキルエステルはすべて適しているが、C原子数1〜12個特にC原子数2〜10個のエステルが好ましい。
【0256】
これに関する例は、メチル−、エチル−、プロピル−、n−、i−ブチル−およびt−ブチル−、2−エチルヘキシル−、オクチル−およびデシルアクリレートないしメタクリル酸の当該エステルである。これらのうち、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
【0257】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルD3がオレフィン重合体に占める割合は0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、なかんずく30〜45質量%である。
【0258】
エステルD3に代えて、またはさらに加えて、オレフィン重合体中には、エチレン不飽和モノ−またはジカルボン酸の酸官能性および/または酸潜官能性モノマーD4またはエポキシ基を有するモノマーD5も含まれていてよい。
【0259】
モノマーD4の例として、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第3アルキルエステル特にt−ブチルアクリレートおよび、ジカルボン酸たとえばマレイン酸およびフマル酸またはこれらの酸の誘導体ならびにそれらのモノエステルを挙げておくこととする。
【0260】
酸潜官能性モノマーとして理解されるのは、重合条件下ないし成形コンパウンドへのオレフィン重合体組み入れ時に遊離酸基を形成する化合物である。そうした例として、C原子数20個以下のジカルボン酸の無水物、特に、無水マレイン酸および上述した酸の第3C
1〜C
12−アルキルエステル特に第3ブチルアクリレートおよび第3ブチルメタクリレートを挙げておくこととする。
【0261】
酸官能性ないし酸潜官能性モノマーおよびエポキシ基含有モノマーは、好ましくは、モノマー混合物に、一般式(IX)〜(XII)
【化14】
[式中、
基R
1〜R
9は、水素またはC原子数1〜6個のアルキル基を表し、
mは0〜20までのいずれか1整数であり、nは0〜10までのいずれか1整数である]の化合物を加えることにより、オレフィン重合体に組み入れられる。
【0262】
好ましくは、R
1〜R
7は水素であり、mは0または1であり、nは1である。当該化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、D4ないしアルケニルグリシジルエーテルまたはビニルグリシジルエーテル、D5である。
【0263】
式(IX)、(X)、(XI)および(XII)の好ましい化合物は、成分D4としてのマレイン酸および無水マレイン酸および、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステルであり、その際、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートは(成分D5として)特に好ましい。
【0264】
成分D4ないしD5の割合は、オレフィン重合体の総質量を基準として、それぞれ0.07〜40質量%、特に0.1〜20質量%、なかんずく好ましくは0.15〜15質量%である。
【0265】
特に好ましいのは、以下すなわち
50〜98.9質量%、特に55〜65質量%のエチレン、
0.1〜20質量%、特に0.15〜10質量%のグリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、アクリル酸および/または無水マレイン酸、
1〜45質量%、特に25〜40質量%のn−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートならびに
0〜10質量%、特に0.1〜3質量%の無水マレイン酸またはフマル酸またはそれらの混合物
からなるオレフィン重合体である。
【0266】
アクリル酸および/またはメタクリル酸のその他の好ましいエステルは、メチル−、エチル−、プロピル−およびi−ないしt−ブチルエステルである。
【0267】
その他のモノマーD6として適切と考えられるのは、たとえば、ビニルエステルおよびビニルエーテルである。
【0268】
こうしたオレフィン重合体を使用する場合、それらの割合は、すべての成分の総質量を基準として、好ましくは0〜20質量%、なかんずく4〜18質量%、なかんずく特に5〜15質量%である。
【0269】
上述したエチレンコポリマーの製造は、それ自体公知の方法により、好ましくは、高圧および高温下でのランダム共重合によって実施可能である。
【0270】
エチレンコポリマーのメルトインデックスは、一般に、1〜80g/10minである(190℃、荷重2.16kgにて測定)。
【0271】
さらに、アクリレートゴムDは以下すなわち
a)70〜90質量%、好ましくは75〜85質量%の架橋エラストマー核
(これは、
1)アルキル基が5〜12個の炭素原子、好ましくは5〜8個の炭素原子を有するn−アルキルアクリレートまたは、直鎖または分岐アルキル基の炭素原子数が2〜12個、好ましくは4〜8個のアルキルアクリレートの混合物と、多官能価架橋剤(この分子は不飽和基(そのうち少なくとも1個はビニル型の基CH
2=C<である)を有する)と、場合により、多官能価グラフト剤(この分子は不飽和基(そのうち少なくとも1個はアリル型の基CH
2=CH−CH
2−である)を有する)とのコポリマー(I)からなる20〜90質量%の核(この場合、核は、0.05〜5%のモル量、好ましくは0.5〜1.5質量%の架橋剤および場合によりグラフト剤を含んでいる)と
2)アルキル基が4〜12個の炭素原子、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するn−アルキルアクリレートまたは1)に記載した定義のアルキルアクリレートの混合物と、多官能価グラフト剤(この分子は不飽和基(そのうち少なくとも1個はアリル型の基CH
2=CH−CH
2−である)を有する)とのコポリマー(II)からなる80〜10質量%の殻(この場合、殻は、0.05〜2.5のモル量、好ましくは0.5〜1.5質量%のグラフト剤を含んでいる)とで構成されている)
および
b)30〜10質量%、好ましくは25〜15質量%の、核にグラフトされた殻(これは、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートポリマーからなり、または、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートとアルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートとのランダム・コポリマーからなり、アルキルアクリレートは5〜40%のモル量、好ましくは10〜20%のモル量にて含有されている)
から構成されているのが好ましい:
本発明により上記コポリマー(I)の形成に使用可能なn−アルキルアクリレートについては、一例として、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレートおよび、特に、n−オクチルアクリレートが使用可能である。
【0272】
本発明により上記コポリマー(II)の形成に使用可能なn−アルキルアクリレートの例として、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレートおよび、特に、n−オクチルアクリレートが挙げられる。
【0273】
上記コポリマー(I)および/または(II)の形成に使用可能なn−アルキルアクリレートは同一であっても異なっていてもよい。
【0274】
本発明により上記コポリマー(I)および/または(II)においてアルキルアクリレートの混合物の形成に使用可能な直鎖または分岐アルキルアクリレートの一例として、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレートおよび3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0275】
上記コポリマー(I)および/または(II)の形成にアルキルアクリレートの混合物が使用される場合、n−アルキルアクリレートはアルキルアクリレートの混合物の少なくとも10質量%の質量比で使用される必要があり、この量は20〜80質量%であるのが好ましい。
【0276】
上述したように、上記コポリマー(I)および/または(II)の製造には、同一または異なったアルキルアクリレート混合物を使用することができる。
【0277】
本発明によれば、好ましくはn−アルキルアクリレート、特に、n−オクチルアクリレートが上記コポリマー(I)および(II)の製造に使用される。
【0278】
上記コポリマー(I)および/または(II)を形成するためにアルキルアクリレートの混合物が使用される場合、好ましくは20〜80質量%のn−オクチルアクリレートおよび好ましくは80〜20質量%のn−ブチルアクリレートが使用される。
【0279】
本発明により架橋エラストマー核にグラフトされた殻を形成するために使用可能なアルキルメタクリレートの例として、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび、特に、メチルメタクリレートが挙げられる。
【0280】
本発明によれば、上記コポリマー(I)の形成に使用される架橋剤は、特に、ビニル型の少なくとも2個の二重結合またはビニル型の1個以上の二重結合またはアリル型の少なくとも1個の二重結合を有する誘導体のうちから選択することができる。好ましくは、分子中に主としてビニル型の二重結合を含んだ化合物が使用される。
【0281】
この種の架橋剤の一例として、ジビニルベンゼン、ポリアルコールの(メタ)アクリレートたとえばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アルキレン鎖に2〜10個の炭素原子を有するアルキレングリコールのジアクリレートまたはメタクリレートおよび、特に、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタン−1,4−ジオールジアクリレート、ブタン−1,4−ジジメタクリレート、ヘキセン−1,6−ジオールジアクリレート、ヘキサン−1,6−ジメタクリレート、以下の一般式
【化15】
[式中、
Xは、水素またはメチル基を意味し、
nは、2〜4までのいずれか1整数を意味し、
pは、2〜20までのいずれか1整数を意味する]のポリオキシアルキレングリコールのジアクリレートまたはジメタクリレートおよび、特に、ポリオキシエチレングリコール(ここで、ポリオキシエチレン基は約400のモル質量を有する)(上記の式、n=2およびp=9)のジアクリレートまたはジメタクリレートを挙げることができる。
【0282】
本発明によれば、上記コポリマー(II)の製造に使用されるグラフト剤は、特に、アリル型の少なくとも2個の二重結合またはアリル型の1個以上の二重結合およびビニル型の少なくとも1個の二重結合を含んだ誘導体のうちから選択することができる。
【0283】
好ましくは、分子中に主としてアリル型の二重結合を含んだ化合物が使用される。
【0284】
この種のグラフト剤の適切な例として考えられるものは、ジアリルマレエート、ジアリルイタコネート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレートおよびトリアリルトリメセートである。
【0285】
熱可塑性ポリマー中に組み入れられる靭性改質剤量の好ましい割合は、使用される熱可塑性ポリマーを100質量%として、1〜30質量%、好ましくは、5〜10質量%である。
【0286】
靭性改質剤のモル質量を判定するために、同程度に変化する溶融状態粘度を求めることができる。溶融状態粘度は、改質剤を有する合成樹脂の使用作業時に靭性改質剤の良好な分散が保証されていることを条件として、かなり大きい範囲内にあってよい。この溶融状態粘度を表す代表的な値としては、50gの靭性改質剤を含み、200℃の温度にて、40回転/minの回転体回転速度で稼動されるブラベンダー−レオメーターの抵抗モーメントの値が適しており、この場合、トルクの求値は200℃にて20min後に実施される。靭性改質剤の溶融状態粘度の好適な値は、600〜4000Nmの範囲の上記トルクの値に相当している。熱可塑性ポリマーが少なくとも80質量%の重合された塩化ビニルを有するポリマーである合成樹脂については、溶融状態における靭性改質剤粘度の好適な値は、800〜3000Nm特に1000〜2500Nmのトルク値に相当している。
【0287】
この種の成分Dの製造方法は欧州公開第776915号パンフレットから公知である。
【0288】
グラフト重合体E
一実施形態において、上記プラスチック成分Bには、1種のグラフト共重合体または異なったグラフト共重合体の混合物が成分Eとして、すべての成分の総和を基準として、1〜60質量%の量にて使用される。本発明による好ましい成形コンパウンドは、2〜50質量%、特に好ましくは3〜40質量%の、靭性改質剤Dとして使用されるゴム弾性重合体とは異なる少なくとも1種のグラフト共重合体Eを含んでいる。
【0289】
グラフト重合体Eは以下すなわち
E1 アルキル基に1〜8個のC原子を有し、ガラス転移温度が0℃未満のアルキルアクリレートをベースとしたゴム弾性ポリマーからなる20〜80質量%、好ましくは50〜70質量%のグラフトベースおよび、
E2 20〜80質量%、好ましくは30〜50質量%のグラフトベース(これは以下すなわち
E21 60〜95質量%、好ましくは70〜85質量%の一般式(XIII)
【化16】
[式中、
Rは、C
1〜C
8−アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基または水素を意味し、
R
1は、C
1〜C
8−アルキル基、好ましくはメチル基もしくはエチル基を表し、
nは1、2または3の値を有する]のスチレンもしくは置換スチレンまたはそれらの混合物と、
E22 5〜40質量%、好ましくは15〜30質量%の少なくとも1種の不飽和ニトリル、好ましくはアクリルニトリルまたはメタクリルニトリルまたはそれらの混合物
とからなっている)
から構成されている。
【0290】
ガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満の重合体がグラフトベースE1に適切であると考えられる。これは、たとえば、アクリル酸のC
1〜C
8−アルキルエステルをベースとし、場合によりその他のコモノマーを含んでいてよいエラストマーである。
【0291】
好ましいのは、以下すなわち
E11 70〜99.9質量%、好ましくは99質量%の、アルキル基に1〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルアクリレート、好ましくはn−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート、特にn−ブチルアクリレート(単独アクリレートとして)、
E12 0〜30質量%、なかんずく20〜30質量%のさらに別の共重合性モノエチレン不飽和モノマーたとえばブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリルニトリル、メチルメタクリレートまたはビニルメチルエーテルまたはそれらの混合物、
E13 0.1〜5質量%、好ましくは1〜4質量%の1種の共重合性多官能価、好ましくは二官能価または三官能価の架橋性モノマー
から構成されたグラフトベースE1である。上記のこうした二官能価または多官能価架橋モノマーE13として適しているのは、好ましくは2個、場合により3個以上の共重合性エチレン二重結合を含み、1,3位で非共役のモノマーである。適切な架橋モノマーは、たとえば、ジビニルベンゼン、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートである。特に好適な架橋モノマーとして判明しているのはトリシクロデセニルアルコールのアクリル酸エステルである(ドイツ公開第1260135号明細書、参照)。
【0292】
これらの類のグラフトベースはそれ自体公知に属し、文献たとえばドイツ公開第3149358号明細書に記載されている。
【0293】
グラフトベースE2については、E21がスチレンまたはα−メチルスチレンまたはそれらの混合物を意味すると共にE22がアクリルニトリルまたはメタクリルニトリルを意味しているものが好ましい。好ましいモノマー混合物としては、なかんずく、スチレンおよびアクリルニトリルまたは、α−メチルスチレンおよびアクリルニトリルが使用される。グラフトベースは成分E21およびE22の共重合によって得られる。
【0294】
成分E11、場合によりE12、およびE13から構成されるグラフト重合体EのグラフトベースE1はASAゴムとも称される。その製造はそれ自体公知であり、たとえば、ドイツ公開第2826925号、ドイツ公開第3149358号、ドイツ公開第3414118号の各明細書に記載されている。
【0295】
グラフト重合体Eの製造は、たとえば、ドイツ特許公報第1260135号明細書記載の方法によって実施可能である。
【0296】
グラフト重合体のグラフトコート(グラフト外皮)の造成は単段または2段で行うことができる。
【0297】
グラフト外皮の単段造成が行われる場合、モノマーE21およびE22の混合物が95:5〜50:50、好ましくは90:10〜65:35の所望の質量比で、エラストマーE1の存在において、それ自体公知の方法(たとえば、ドイツ公開第2826925号明細書、参照)で、好ましくはエマルジョン中で重合される。
【0298】
グラフト外皮E2の2段造成が行われる場合、第1段の質量%は一般に、E2を基準として、20〜70質量%、好ましくは、25〜50質量%である。その製造には、好ましくはもっぱらスチレンもしくは置換スチレンまたはそれらの混合物(E11)が使用される。
【0299】
グラフト外皮の第2段の質量%は一般に、それぞれE2を基準として、30〜80質量%、なかんずく50〜75質量%である。その製造には、モノマーE21およびニトリルE22からなる混合物が一般に質量比E21/E22 90:10〜60:40、なかんずく80:20〜70:30にて使用される。
【0300】
グラフト重合の条件は、好ましくは、50〜700nm(積分質量分布のd
50値)の粒子サイズが生ずるように選択される。そのための対策は公知に属し、たとえばドイツ公開第2826925号明細書に記載されている。
【0301】
シードラテックス法により、直接、粗粒ゴム分散液が製造可能である。
【0302】
できるだけ靭性のある生成物を得るには、多くの場合、粒子サイズの異なる少なくとも2種のグラフト重合体の混合物を使用するのが有利である。
【0303】
これを達成するため、ゴムの粒子は公知の方法たとえば凝集によって拡大され、2相(50〜180nmおよび200〜700nm)のラテックスが造成される。
【0304】
好ましい一実施形態において、粒子径(積分質量分布のd
50値)が50〜180nmないし200〜700nmの2種のグラフト重合体からなる混合物が質量比70:30〜30:70にて使用される。
【0305】
双方のグラフト重合体の化学構造は、たとえ粗粒グラフト重合体の外皮がなかんずく2段で造成可能であっても、好ましくは同一である。
【0306】
複数の成分(この場合、後者は粗粒および微粒グラフト重合体を有する)からなる混合物は、たとえば、ドイツ公開第3615607号明細書に記載され、複数の成分(この場合、後者は2段グラフト外皮を有する)からなる混合物は欧州公開第111260号パンフレットから公知である。
【0307】
本発明による成形コンパウンドは、成分Fとして、すべての成分の総和を基準として、0〜60質量%の、スチレンまたは置換スチレンおよび不飽和ニトリルをベースとした少なくとも1種の共重合体を含んでいてよい。本発明による好ましい成形コンパウンドは、すべての成分の総和を基準として、1〜45質量%、なかんずく2〜40質量%の割合で成分Fを含んでいる。
【0308】
本発明によれば、共重合体Fは以下すなわち
F1 60〜95質量%、好ましくは70〜85質量%の一般式(XIII)のスチレンもしくは置換スチレンまたはそれらの混合物および
F2 5〜40質量%、好ましくは15〜30質量%の少なくとも1種の不飽和ニトリル、好ましくはアクリルニトリルまたはメタクリルにトリルまたはそれらの混合物
から構成されている。
【0309】
共重合体Fは、樹脂状で、熱可塑性を有し、ゴム不含である。特に好ましい共重合体Fは、スチレンおよびアクリルニトリルからなる、またはα−メチルスチレンおよびアクリルニトリルからなる、または、スチレン、α−メチルスチレンおよびアクリルニトリルからなるそれである。複数のこれらのコポリマーも同時に使用可能である。
【0310】
コポリマーFはそれ自体公知に属し、ラジカル重合、特に、エマルジョン重合、懸濁重合、溶液重合および塊状重合によって製造することができる。これらは粘度数40〜160を有しており、これは平均分子量M
w(重量平均値)40000〜2000000に相当する。
【0311】
ハロゲン化難燃剤G
プラスチック成分A1、A2および/またはBは、成分Gとして、1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%、なかんずく5〜20質量%の、以下すなわち
G1 20〜99質量%、好ましくは50〜85質量%のハロゲン含有難燃剤、
G2 1〜80質量%、好ましくは15〜50質量%の酸化アンチモン
からなるコンビネーション難燃剤を含んでいてよい。
【0312】
好ましい酸化物G2は、三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモンである。分散を向上させるため、酸化物G2はいわゆるバッチ(縮合物)でポリマーA1、A2またはBに組み入れ可能であり、その際、縮合物中で、たとえば、成分A1、A2またはBに等しいまたはそれぞれの成分A1、A2またはBとは異なるポリマーが使用可能である。好ましいのは、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンによるG2の縮合物である。
【0313】
適切な難燃剤G1は、好ましくは、臭素化化合物たとえば臭素化ジフェニルエーテル、臭素化トリメチルフェニルインダン(DSBのFR1808)、テトラブロモビスフェノール−Aおよびヘキサブロモシクロドデカンである。
【0314】
適切な難燃剤G1は、好ましくは、臭素化化合物たとえば下記構造式
【化17】
[式中、
n<3である]の臭素化オリゴカーボネート(Firma Great LakesのBC 52またはBC 58)である。
【0315】
さらに、n>4のポリペンタブロモベンジルアクリレート(たとえば、Dead Sea Bromine(DSB)の下記の式
【化18】
のFR 1025)が適している。
【0316】
好ましい臭素化化合物は、さらに、テトラブロモ−ビス−フェノール−Aと、下記の式
【化19】
のエポキシド(たとえば、Firma DSBのFR 2300および2400)とから得られるオリゴマー反応生成物(n>3)である。
【0317】
好ましくは難燃剤として使用される臭素化オリゴスチレンは、トルエン中での蒸気圧オスモメトリー測定にて、3〜90、好ましくは5〜60の平均重合度(数平均)を有している。環式オリゴマーも同じく適している。本発明の好ましい一実施形態において、使用される臭素化オリゴマースチレンは以下の式(XIV)
【化20】
[式中、
Rは、水素または、脂肪族基特にアルキル基たとえばCH
2またはC
2H
5を意味し、
nは、反復する鎖単位の数を意味し、
R
1は、Hであっても、臭素であっても、さらに通例のラジカル生成剤の断片であってもよい]を有する。
【0318】
nの値は1〜88、好ましくは3〜58であってよい。臭素化オリゴスチレンは、40〜80質量%、好ましくは55〜70質量%の臭素を含んでいる。好ましいのは、主としてポリジブロモスチレンからなる生成物である。これらは分解されずに溶融可能であり、たとえば、テトラヒドロフランに可溶である。これらは、たとえばスチレンの熱重合によって得られる(ドイツ公開第2537385号明細書による)類の、場合により脂肪族水素化されたスチレンオリゴマーの核臭素化によって、または、適切な臭素化スチレンのラジカル・オリゴマー化によって製造可能である。また、この難燃剤の製造はスチレンのイオン・オリゴマー化と続いての臭素化によっても実施可能である。ポリアミドの難燃化に必要とされる臭素化オリゴスチレンの量は臭素含有量に依存している。本発明による成形コンパウンドの臭素含有量は2〜20質量%、好ましくは5〜12質量%である。
【0319】
本発明による臭素化ポリスチレンは、通例、欧州公開第47549号パンフレット記載の方法によって得られる:
【化21】
【0320】
この方法により、市販の臭素化されたポリスチレンは、主として、核置換三臭化生成物である。n′(XVI、参照)は一般に125〜1500の値を有しており、これは、42500〜235000、好ましくは130000〜135000の分子量に相当している。
【0321】
(核置換臭素の含有量を基準とした)臭素含有量は、一般に、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、なかんずく65質量%である。
【0322】
市販の粉末状生成物は、一般に、160〜200℃のガラス転移温度を有し、たとえばHP 7010の名称でFirma Albemarle und PyrocheckまたはPB 68の名称でFirma Ferro Corporationから市販されている。
【0323】
臭素化オリゴスチレンと臭素化ポリスチレンとの混合物も本発明による成形コンパウンドに使用可能であり、この場合、混合比は任意である。
【0324】
さらに、塩素含有難燃剤D1も適切であり、この場合、Firma OxychemのDeklorane[登録商標]plusが好ましい。
【0325】
ハロゲン不含難燃剤H
プラスチック成分A1、A2および/またはBは、成分Hとして、1〜40、好ましくは2〜30質量%、なかんずく5〜20質量%の、窒素含有またはリン含有化合物またはP−N−縮合物またはそれらの混合物の群から選択されたハロゲン不含難燃剤を含んでいてよい。
【0326】
本発明によりハロゲン不含難燃剤Hとして好適なメラミンシアヌレートは、好ましくは等モル量のメラミン(式(XVI))とシアヌル酸ないしイソシアヌル酸(式(XVIa)および(XVIb))から得られる反応生成物である:
【化22】
【0327】
これは、たとえば、90〜100℃での出発化合物の水溶液の反応によって得られる。市販の生成物は1.5〜7μmの平均粒度d
50を有する白色粉末である。
【0328】
その他の適切な化合物(しばしば塩または付加化合物とも称される)は、メラミン、メラミンボレート、メラミンオキサレート、メラミンホスフェートprim.、メラミンホスフェートsec.、およびメラミンピロホスフェートsec.、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミンならびに重合メラミンホスフェート(CAS−No.56386−64−2)である。
【0329】
適切なグアニジン塩は以下の通りである:
【表1】
【0330】
本発明の趣旨の化合物としては、たとえば、ベンゾグアナミン自体およびその付加化合物ないし塩類ならびに窒素置換誘導体およびその付加化合物ないし塩類が理解されることとする。
【0331】
さらに、ポリリン酸アンモニウム(NH
4PO
3)
n(nは約200〜1000、好ましくは600〜800)、および式(XVII)
【化23】
のトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)
または、それと芳香族カルボン酸Ar(COOH)
m[式中、Arは単核、二核または三核の芳香族6員環を意味し、mは2、3または4である]との反応生成物(両者は場合により互いに混合物で存在していてよい)が適している。
【0332】
適切なカルボン酸は、たとえば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5−ベンゾトリカルボン酸、1,2,4−ベンゾトリカルボン酸、ピロメリット酸、メロファン酸、プレーナイト酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、ナフタリンジカルボン酸およびアントラセンカルボン酸である。
【0333】
製造は、欧州公開第584567号パンフレット記載の方法による、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと、酸、そのアルキルエステルまたはそのハロゲン化物との反応によって行われる。
【0334】
この種の反応生成物は、モノマーエステルおよびオリゴマーエステルの混合物であり、架橋されていてもよい。オリゴマー化度は、通例、2〜約100、好ましくは2〜20である。好ましくは、THEICおよび/またはそれとリン含有窒素化合物との反応生成物特に(NH
4PO
3)
nまたはメラミンピロホスフェートまたは重合メラミンホスフェートとの混合物が使用される。たとえば、(NH
4PO
3)
nとTHEICとの混合比は、この種の成分Hの混合物を基準として、好ましくは90〜50:10〜50質量%、なかんずく80〜50:50〜20質量%である。
【0335】
さらに、式(XVIII)
【化24】
[式中、
R,R′は、1〜10個のC原子を有する直鎖または分岐アルキル基、好ましくは水素を意味し、特に、リン酸、ホウ酸および/またはピロリン酸との付加化合物を意味する]のベンゾグアナミン化合物が適している。
【0336】
さらに、式(XIX)
【化25】
[式中、
R,R′は、式(XVIII)に述べた意味を有すると共に、リン酸、ホウ酸および/またはピロリン酸との塩ならびに式(XX)
【化26】
[式中、
Rは、式(XVIII)に挙げた意味を有する]のグリコルリルまたはそれと上記の酸との塩を意味する]のアラントイン化合物が好ましい。
【0337】
適切な生成物は市販され、ドイツ公開第19614424明細書に基づいて得られる。
【0338】
本発明によって使用可能なシアングアニジン(式XXI)は、石灰窒素(カルシウムシアナミド)と炭酸との反応によって得られ、その際、発生するシアナミドはpH9〜10で二量体化してシアングアニジンを生ずる。
【0339】
【化27】
【0340】
市販の生成物は、融点209℃〜211℃の白色粉末である。
【0341】
リン含有無機化合物としては、式(XXII)のホスフィン酸塩および/または式(XXIII)のジホスフィン酸塩および/またはそれらのポリマーが好ましい。
【0342】
【化28】
式中、
置換基は以下の意味を有する:
R
1、R
2 = 水素、C
1〜C
6−アルキル基、好ましくは、線状または枝分かれしたC
1〜C
4−アルキル基たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基;
フェニル基;この場合、好ましくは少なくとも1個の基R
1またはR
2、特に、R
1およびR
2は水素である;
R
3 = 線状または分岐C
1〜C
10−アルキレン基たとえばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基;
アリレン基たとえばフェニレン基、ナフチレン基;
アルキルアリレン基たとえばメチル−フェニレン基、エチル−フェニレン基、t−ブチル−フェニレン基、メチル−ナフチレン基、エチル−ナフチレン基、t−ブチル−ナフチレン基;
アリールアルキレン基たとえばフェニル−メチレン基、フェニル−エチレン基、フェニル−プロピレン基、フェニル−ブチレン基;
M = アルカリ土類金属、アルカリ金属、Al,Zn,Fe,ホウ素;
m = 1〜3までのいずれか1整数;
n = 1〜3までのいずれか1整数;
x = 1または2。
【0343】
特に好ましいのは、式(XXIII)[式中、R
1およびR
2は水素であり、Mは好ましくはZnまたはAlであり、ホスフィン酸カルシウムがなかんずく特に好ましい]の化合物である。
【0344】
この種の生成物は、たとえばホスフィン酸カルシウムとして市販されている。
【0345】
1個の基R
1またはR
2のみが水素を意味する式(XXII)または(XXIII)の適切な塩は、たとえば、フェニルホスフィン酸の塩であり、その際、そのナトリウム塩および/またはカルシウム塩が好ましい。
【0346】
成分Hのリン含有化合物は、好ましくは、リンの価数段階が−3〜+5までの有機および無機のリン含有化合物である。価数段階としては、無機化学のテキスト、A.F.Hollemann & E.Wiberg,Walter des Gruyter und Co.(1964,57−70th Edition),p.166−177に述べられている"酸化段階"の概念が理解されることとする。価数段階−3〜+5までのリン化合物は、ホスフィン(−3)、ジホスフィン(−2)、ホスフィンオキシド(−1)、リン元素(+0)、次亜リン酸(+1)、亜リン酸(+3)、次二リン酸(+4)およびリン酸(+5)から誘導される。
【0347】
多数に及ぶリン含有化合物のうち、若干の例のみに触れておくこととする。
【0348】
価数段階が−3のホスフィン・クラスのリン化合物の例として芳香族ホスフィンたとえばトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリナフチルホスフィンおよびトリスノニルフェニルホスフィンが挙げられる。トリフェニルホスフィンが特に適切である。
【0349】
価数段階が−2のジホスフィン・クラスのリン化合物の例として、テトラフェニルジホスフィン、テトラナフチルジホスフィンが挙げられる。テトラナフチルジホスフィンが特に適切である。
【0350】
価数段階−1のリン化合物はホスフィンオキシドから誘導される。
【0351】
適切なのは、一般式(XXIV)
【化29】
[式中、
R
1、R
2およびR
3は同一または異なったアルキル基、アリール基、アルキルアリール基または、8〜40個のC原子を有するシクロアルキル基を意味する]のホスフィンオキシドである。
【0352】
ホスフィンオキシドの例として、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシド、トリスノニルフェニルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリス−(n−ブチル)−ホスフィンオキシド、トリス−(n−ヘキシル)−ホスフィンオキシド、トリス−(n−オクチル)−ホスフィンオキシド、トリス−(シアノエチル)−ホスフィンオキシド、ベンジルビス−(シクロヘキシル)−ホスフィンオキシド、ベンジルビスフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス−(n−ヘキシル)−ホスフィンオキシドが挙げられる。さらに、ホスフィンとアルデヒドからの酸化反応生成物、特に、t−ブチルホスフィンとグリオキサルからの酸化反応生成物が好ましい。特に好ましくは、トリフェニル−ホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリス−(n−オクチル)−ホスフィンオキシドおよびトリス−(シアノエチル)−ホスフィンオキシドが使用される。
【0353】
トリフェニルホスフィンスルフィドおよびそれの、上述したホスフィンオキシドの誘導体と同様な誘導体も同じく適切である。
【0354】
価数段階+0のリンはリン元素である。赤リンおよび黒リンが考えられる。赤リンが好ましい。
【0355】
"酸化段階"+1のリン化合物は、たとえば、純有機性の次亜リン酸塩たとえば有機次亜リン酸塩たとえばセルロース次亜リン酸塩エステル、次亜リン酸とジオールたとえば1,10−ドデシルジオールとのエステルである。また、置換ホスフィン酸とその無水物たとえばジフェニルホスフィン酸も使用可能である。そのほかに、ジフェニルホスフィン酸、ジ−p−トリルホスフィン酸、ジ−クレジルホスフィン酸無水物も考えられる。ただしまた、ヒドロキノン−、エチレングリコール−、プロピレングリコール−ビス(ジフェニルホスフィン酸)−エステル等の化合物も考えられる。さらに、アリール(アルキル)ホスフィン酸アミドたとえばジフェニルホスフィン酸−ジメチルアミドおよびスルホンアミドアリール(アルキル)ホスフィン酸−誘導体たとえばp−トリルスルホンアミドジフェニルホスフィン酸も適している。好ましくは、ヒドロキノン−およびエチレングリコール−ビス−(ジフェニルホスフィン酸)エステルおよび、ヒドロキノンのビスジフェニルホスフィネートが使用される。
【0356】
酸化段階+3のリン化合物は亜リン酸から誘導される。ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコールまたはカテコールから誘導される、たとえば式
【化30】
[式中、
Rは、C
1〜C
4−アルキル基、好ましくはメチル基を意味し、
x=0または1を意味する]の環式ホスホン酸塩(Firma Albright & WilsonのAmgard[登録商標]P 45)が適切である。
【0357】
さらに、価数段階+3のリンは、亜リン酸トリアリール(アルキル)たとえば亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(4−デシルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)または亜リン酸フェニルジデシル等に含まれている。ただしまた、二亜リン酸塩たとえばプロピレングリコール−1,2−ビス(二亜リン酸塩)または、ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコールまたはカテコールから誘導される環式亜リン酸塩も考えられる。
【0358】
メチルネオペンチルグリコールホスホン酸塩およびメチルネオペンチルグリコール亜リン酸塩ならびにジメチルペンタエリトリット二ホスホン酸塩およびジメチルペンタエリトリット二亜リン酸塩が特に好ましい。
【0359】
酸化段階+4のリン化合物として考えられるのは、なかんずく、次二リン酸塩たとえばテトラフェニル次二リン酸塩またはビスネオペンチル次二リン酸塩である。
【0360】
酸化段階+5のリン化合物としては、なかんずく、アルキル−およびアリール置換リン酸塩が考えられる。一例として、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルエチル水素ホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニル−ホスフェート、2−エチルヘキシルジ(トリル)ホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、ジ(ノニル)フェニルホスフェート、フェニルメチル水素ホスフェート、ジ(ドデシル)−p−トリルホスフェート、p−トリル−ビス(2,5,5−トリメチルヘキシル)ホスフェートまたは2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートが挙げられる。特に適しているのは、いずれの基もアリールオキシ基であるリン化合物である。なかんずく特に適しているのは、トリフェニルホスフェートおよびレゾルシン−ビス−(ジフェニルホスフェート)およびそれの核置換された、一般式(XXVI)(RDP)
【化31】
[式中、
置換基は以下の意味を有する:
R
4〜R
7 = 6〜20個のC原子を有する芳香族基、好ましくは(1〜4個のC原子を有するアルキル基、好ましくは、メチル基で置換されていてよい)フェニル基;
R
8 = 2価のフェノール基、好ましくは
【化32】
n = 0.1〜100、好ましくは0.5〜50、特に0.8〜10、なかんずく特に1〜5の間の平均値である]の誘導体である。
【0361】
商品名Fyroflex[登録商標]またはFyrol[登録商標]−RDP(Akzo)ならびにCR 733−S(Daihachi)として市販されているRPD生成物は、当該製造方法に制約されて、約85%のRDP(n=1)、約2.5%のトリフェニルホスフェートならびに約12.5%のオリゴマー成分(そのオリゴマー化度はほとんどの場合10未満である)からなる混合物である。
【0362】
さらに、環式リン酸塩も使用可能である。この場合、特に適しているのは、ジフェニルペンタエリトリット二リン酸塩およびフェニルネオペンチルホスフェートである。
【0363】
上述した低分子リン化合物以外に、なお、オリゴマーおよびポリマー・リン化合物も考えられる。
【0364】
ポリマー鎖中にリンを有するこの種のポリマー・ハロゲン不含有機リン化合物は、たとえば、たとえばドイツ公開第2036173号明細書に記載の5環性不飽和二ハロゲン化ホスフィンの製造時に発生する。ジメチルホルムアミド中で蒸気圧オスモメトリー測定によって測定したポリホスホリンオキシドの分子量は500〜7000、好ましくは700〜2000である必要がある。
【0365】
この場合、リンは酸化段階−1を有している。
【0366】
さらに、アリール(アルキル)−ホスフィン酸の無機配位重合体たとえばポリ−β−ナトリウム(I)−メチルフェニルホスフィネートが使用可能である。その製造はドイツ公開第3140520号明細書に挙げられている。リンは酸化数+1を有している。
【0367】
さらに、こうしたハロゲン不含ポリマー・リン化合物は、ホスホン酸塩化物たとえばフェニル−、メチル−、プロピル−、スチリル−およびビニルホスホン酸塩化物と二官能価フェノールたとえばヒドロキノン、レゾルシン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、ビスフェノール−A、テトラメチルビフェノール−Aとの反応によって生成させることができる。
【0368】
本発明による成形コンパウンドに含まれていてよいその他のハロゲン不含ポリマー・リン化合物は、酸化三塩化リンまたは二塩化リン酸エステルと、一官能価、二官能価および三官能価フェノールおよびヒドロキシル基を担持するその他の化合物からなる混合物との反応によって製造される(Houben−Wey−Mueller,Thieme−Verlag Stuttgart,Organische Phosphorverbindungen TeilII(1963)、参照のこと)。さらに、ポリマー・ホスホン酸塩は、ホスホン酸エステルと二官能価フェノールとのエステル交換反応(ドイツ公開第2925208号明細書、参照)により、または、ホスホン酸エステルとジアミンまたはジアミドまたはヒドラジドとの反応(米国特許第4403075号明細書、参照)により製造可能である。ただし、無機ポリ(アンモニウムホスフェート)も考えられる。
【0369】
また、欧州特許第8486号明細書によるオリゴマー・ペンタエリトリット亜リン酸塩、−リン酸塩およびホスホン酸塩たとえばMobil Antiblaze[登録商標]19(Firma Mobil Oilの登録商標)も使用可能である。
【0370】
さらに、一般式(XXVII)
【化33】
[式中、
置換基は以下の意味を有する:
R
1〜R
20 = 互いに独立に、水素、C原子6個までの線状または分岐アルキル基;
n = 0.5〜50の平均値および
X = 単結合、C=O、S、SO
2、C(CH
3)
2]のリン化合物が好ましい。
【0371】
好ましい化合物Hは、R
1〜R
20が互いに独立に水素および/またはメチル基を意味する化合物である。R
1〜R
20が互いに独立にメチル基を意味する場合、リン酸基の酸素に対してオルト位にある基、R
1、R
5、R
6、R
10、R
11、R
15、R
16、R
20が少なくとも1個のメチル基を表す化合物Hが好ましい。さらに、芳香族環当たり1個のメチル基が好ましくはオルト位に存在し、その他の基は水素を意味する化合物Hが好ましい。
【0372】
上記の式(XXVII)のXについては、置換基としてのSO
2およびSが特に好ましく、なかんずく特にC(CH
3)
2が好ましい。
【0373】
nは好ましくは平均値として、0.5〜5、特に0.7〜2、なかんずくほぼ1である。
【0374】
平均値としてのnの値は上述した化合物の製造方法から結果するため、オリゴマー化度はほとんどの場合10未満であり、僅かな割合(ほとんどの場合<5質量%)のトリフェニルホスフェートが含まれているが、これはバッチごとに相異している。化合物HはFirma DaihachiのCR−741として市販されている。
【0375】
さらに、P−N−縮合物、特に、国際公開第2002/96976号パンフレットに述べられている類のそれが適している。
【0376】
特に好ましいコンビネーションのHは、リン含有および窒素含有化合物の混合物であり、その際、1:10〜10:1、好ましくは1:9〜9:1の混合比が好ましい。
【0377】
添加剤C
プラスチック成分A1、A2および/またはBは、成分Cとして、D、E、F、GおよびHとは異なる0〜60質量%、特に50重量%までのその他の添加剤および加工助剤を含んでいてよい。
【0378】
本発明による成形コンパウンドは、成分Cとして、0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、なかんずく0.1〜2質量%の、10〜40個、好ましくは16〜22個のC原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸の少なくとも1種のエステルまたはアミドを、2〜40個、好ましくは2〜6個のC原子を有する脂肪族飽和アルコールまたはアミンと共に含んでいてよい。
【0379】
カルボン酸は1価または2価であってよい。一例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン酸、ベヘン酸および、特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸ならびにモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)を挙げておくこととする。
【0380】
脂肪族アルコールは1〜4価であってよい。こうしたアルコールの例として、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットが挙げられ、この場合、グリセリンおよびペンタエリトリットが好ましい。
【0381】
脂肪族アミンは1〜3価であってよい。その例として、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンが挙げられ、この場合、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステルまたはアミドは、相応して、グリセリンステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミトレート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノべへネートおよびペンタエリトリットテトラステアレートである。
【0382】
異なったエステルの混合物またはアミドまたはアミドとのエステルも組み合わせて使用可能であり、その際、混合比は任意である。
【0383】
繊維状または粒子状充填剤Cとしては、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質ケイ酸、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白墨、石英粉末、雲母、硫酸バリウムおよび長石を挙げておくこととし、これらは50質量%以下、特に40質量%以下で使用される。
【0384】
好ましい繊維状充填剤としては、炭素繊維、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維を挙げておくこととし、この場合、Eガラスとしてのガラス繊維が特に好ましい。これらは、取引通例の形のロービングまたは粉砕ガラスとして使用可能である。
【0385】
繊維状の充填剤は、熱可塑性プラスチックとの相溶性を改善するために、シラン化合物で予備的に表面処理されていてよい。
【0386】
適切なシラン化合物は、一般式
(X−(CH
2)
n)
k−Si−(O−C
mH
2m+1)
2-k
[式中、置換基は以下の意味を有する:
【化34】
n = 2〜10、好ましくは3〜4のいずれか1整数;
m = 1〜5、好ましくは1〜2のいずれか1整数;
k = 1〜3までのいずれか1整数、好ましくは1]のそれである。
【0387】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランならびに、置換基Xとしてグリシジル基を含んだ当該シランである。
【0388】
シラン化合物は、一般に、(Cを基準として)0.05〜5質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%、なかんずく0.8〜1質量%にて表面コーティングのために使用される。
【0389】
また、針状の鉱物充填剤も適している。
【0390】
本発明の趣旨において、針状鉱物充填剤として理解されるのは、極めて顕著な針状特性を有する鉱物充填剤である。一例として、針状珪灰石を挙げておくこととする。好ましくは、この鉱物は、8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ/直径)比を有する。この鉱物充填剤は、場合により、上述したシラン化合物で予備処理されていてよい;ただし、この予備処理は絶対に必要というものではない。
【0391】
その他の充填剤としては、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、タルクおよび白墨を挙げておくこととする。
【0392】
本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、成分Cとして、通例の加工助剤たとえば
安定剤、酸化遅延剤、熱分解および紫外光分解防止剤、滑剤および離型剤、着色剤たとえば染料および顔料、成核剤、可塑剤等を含んでいてよい。
【0393】
酸化遅延剤および熱安定剤の例として、熱可塑性成形コンパウンドの質量を基準として1質量%までの濃度の立体障害フェノールおよび/または亜リン酸塩、ヒドロキノン、芳香族第二アミンたとえばジフェニルアミン、これらの基の種々の置換代表物およびそれらの混合物を挙げておくこととする。
【0394】
成形コンパウンドを基準として一般に2質量%までの量で使用される紫外線安定剤としては、種々の置換レゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンを挙げておくこととする。
【0395】
無機顔料たとえば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄およびスス、さらに、有機顔料たとえばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンならびに染料たとえばニグロシンおよびアントラキノンを着色剤として添加することができる。
【0396】
成核剤としては、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素ならびに好ましくはタルクが使用可能である。
【0397】
その他の滑剤および離型剤は、通例、1質量%以下の量で使用される。これらは、好ましくは、長鎖脂肪酸(たとえばステアリン酸またはベヘン酸)、それらの塩類(たとえばステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛)またはモンタンワックス(C原子28〜32個の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸からなる混合物)ならびにモンタン酸カルシウムまたはモンタン酸ナトリウムならびに低分子ポリエチレンワックスないしポリプロピレンワックスである。
【0398】
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドを挙げておくこととする。
【0399】
本発明による成形コンパウンドはさらに0〜2質量%のフッ素含有エチレン重合体を含んでいてよい。これは、55〜76質量%、好ましくは70〜76質量%のフッ素含有量を有するエチレンの重合体である。
【0400】
その例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロ−プロピレン−共重合体または、相対的に少ない割合(通例、50質量%以下)の共重合性エチレン不飽和モノマーとのテトラフルオロエチレン−共重合体が挙げられる。これらは、たとえば、Schildknecht"Vinyl and Related Polymers",Wiley−Verlag,1952,p.484−494およびWall"Fluorpolymers"(Wiley Interscience,1972)に記載されている。
【0401】
これらのフッ素含有エチレン重合体は成形コンパウンド中に均一に分布し、好ましくは、0.05〜10μm、なかんずく0.1〜5μmの粒度d
50(数平均値)を有している。こうした低い粒度は、特に好ましくは、フッ素含有エチレン重合体の水性分散液を使用し、それをポリエステル溶融物に混入することによって達成することができる。
【0402】
本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、出発成分を通例の混合装置たとえばスクリュー押出し機、ブラベンダー−ミルまたはバンバリ−ミルで混合し、続いて押出すことにより、それ自体公知の方法で製造可能である。押出し後、押出し物は冷やされて、粉砕される。また、個々の成分を予備混合し、その後、残りの出発物質を個々におよび/または同じく混合して付加することもできる。混合温度は、通例、230〜290℃である。
【0403】
構成部材および製造方法
構成部材は、たとえば、電気技術分野で使用される類のプラスチック部品、メカトロニクス構成部材または差込み接点を有するプラスチックハウジングである。
【0404】
プラスチック外被によって包囲されるインサート部材は、たとえばリードフレームである。この場合、構成部材はたとえば差込みコネクターとして利用することができる。さらに、インサート部材は、ワイヤー、丸導線、平導線、フレキシブルフィルムまたは回路板であってもよい。
【0405】
自動車工業分野で構成部材が使用される場合、インサート部材は、キャッチストラップ、ドアラッチ、ロック、ブッシング、ベアリング、薄板、スタビライザー用ワイヤーまたはドア固定装置用の亜鉛ダイカスト製またはアルミダイカスト製部品であってもよい。さらに、構成部材は、ナイフ、ハサミ、外科用メスまたはねじ回し用の刃であり得る。
【0406】
インサート部材は好ましくは金属製である。インサート部材の製造に適した金属は、たとえば、銅および銅含有合金たとえばCuSn
6、CuSn
0.15、CuBe、CuFe、CuZn
37、CuSn
4Zn
6Pb
3−C−GC(ガンメタル)またはCuZn
39Pb
3(真鍮)、アルミニウムおよびアルミニウム含有合金たとえばAlSi
12Cu
1、AlSi
10Mg、チタン、特殊鋼、鉛不含金属および鉛不含金属合金または錫めっきされた材料である。
【0407】
本発明は、さらに、インサート部材ならびに少なくとも2種のプラスチック成分からなるプラスチック外被を含んでなる構成部材の製造方法に関し、その際、前記方法は以下のステップすなわち
(a)インサート部材を第1のプラスチック成分A1(この場合、前記プラスチック成分A1は以下すなわち
A11:成分A11およびA12の総質量を基準として、5〜80質量%の、脂肪族および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとした少なくとも1種のポリエステル;
A12:成分A11およびA12の総質量を基準として、20〜95質量%の、
ポリラクチド(PLA)と、ポリカプロラクトンと、ポリヒドロキシアルカノエートと、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールからなるポリエステルとからなる群から選択された少なくとも1種のホモポリエステルまたはコポリエステル;
A13:成分A11およびA12の総質量を基準として、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によって、または第1のプラスチック成分A2(この場合、前記第1のプラスチック成分A2は以下すなわち
A21:成分A21およびA22の総質量を基準として、10〜100質量%の少なくとも1種の熱可塑性スチレン(コ)ポリマー、
A22:成分A21およびA22の総質量を基準として、0〜90質量%の少なくとも1種の熱可塑性(コ)ポリエステル、
A23:成分A21およびA22の総質量を基準として、0.05〜15質量%の、a)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとしたエポキシ基含有コポリマー、b)ビスフェノール−A−エポキシドまたはc)エポキシ基
を含有
する天然油、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド
から構成されている)によって包被するステップと、
(b)第2のプラスチック成分B(この場合、前記第2のプラスチック成分Bは以下すなわち
B1:10〜99.99質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル、
B2:0.01〜50質量%の
B21:OH価1〜600mgKOH/g(ポリカーボネート)(DIN 53249,パート2に準拠)を有する少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリカーボネート
または
B22:xは少なくとも1.1、かつ、yは少なくとも2.1のA
xB
y型の少なくとも1種の高度分岐または超分岐ポリエステル
またはそれらの混合物
から構成されている)からなる外側包被を成形するステップと
を含んでなり、
前記第1のプラスチック成分A1または前記第1のプラスチック成分A2および/または前記第2のプラスチック成分Bはさらに以下すなわち
C:0〜60質量%のさらに別の少なくとも1種の添加剤
を含んでいてよく、
最初に前記インサート部材が前記第1のプラスチック成分A1またはA2によって包被され、続いて、前記第2のプラスチック成分Bが被着され、または、最初に前記外側包被Bが成形され、続いて、前記第2のプラスチック成分Bからなる前記外側包被と前記インサート部材の間に形成された空洞に前記第1のプラスチック成分A1またはA2が充填され、こうして、前記インサート部材の包被が形成されるように構成されている。
【0408】
第1のプラスチック成分A1、第1のプラスチック成分A2および第2のプラスチック成分Bとして適切かつ好ましいポリマーはすでに以上に説明した。
【0409】
好ましい実施形態において、ステップ(a)における第1のプラスチック成分A1またはA2によるインサート部材の包被は射出成形法によって行われる。そのため、インサート部材は射出成形金型内に装入される。インサート部材を装入した後、金型は閉じられ、プラスチック成形コンパウンドが金型中に射出される。プラスチック成形コンパウンドはインサート部材を少なくとも部分的に包被して、インサート部材との密な接着結合を形成する。こうして、インサート部材とプラスチック成分A1またはA2の間に媒質侵入封止結合が生ずる。この場合、プラスチック成形コンパウンドの射出は、一般に、射出成形に通例の圧力にて行われる。ただし、たとえば不均一な封入包被のせいで、インサート部材の変形が生じ得る場合には、成分A1またはA2の射出は金型内の最大圧力が900bar未満、より好ましくは600bar未満で行われるようにするのが好ましい。こうした低い射出圧力によって、封入包被時にインサート部材が変形するのが防止される。インサート部材が封入包被された後、第1のプラスチック成分A1またはA2は凝固し、硬化する。第1のプラスチック成分A1またはA2でインサート部材を封入包被するもう1つの利点は、インサート部材がこうしたプラスチック包被によって安定化されることである。
【0410】
第1のプラスチック成分A1またはA2によるインサート部材の封入包被に際しては、極めて多様なジオメトリーの実現が可能である。それゆえ、たとえば、長方形、菱形、五角形、八角形、円形または楕円形の断面が実現可能である。第1のプラスチック成分A1またはA2からなるプラスチック包被が角を有する場合、こうした角は丸められていてもよい。
【0411】
第1のプラスチック成分A1またはA2からなる封入包被面間の移行部は、鈍角、鋭角であってもまたは丸められていてもよい。また、溶融リップが突き出ていてもよく、つまり、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる薄い突き出し領域が生じていてもよい。これらは、その後、第2のプラスチック成分Bでのオーバーモールドによって溶融され、変形される。こうして、物質接合封止結合がつくり出される。
【0412】
また、第1のプラスチック成分A1またはA2からなるインサート部材封入包被に突き出した領域が形成されていてもよい。たとえば、第1のプラスチック成分A1またはA2は、たとえば、ダブルT形の断面のインサート部材を包囲することができる。第1のプラスチック成分A1またはA2でのこうした封入包被の突き出した領域によって相補係合を達成することができる。第1のプラスチック成分A1またはA2は第2のプラスチック成分Bでのオーバーモールドによって一般に溶融されることから、第2のプラスチック成分Bの加工温度が第1のプラスチック成分A1またはA2の融点または軟化点を上回っていれば、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる事前封入包被のジオメトリーは全体として変化し得る。また、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる事前封入包被は第2のプラスチック成分Bによる封入包被時の射出溶融体の圧力によっても変形され得る。したがって、たとえば第1のプラスチック成分A1またはA2からなる事前封入包被の鋭い角は丸められ得る。
【0413】
第1のプラスチック成分A1またはA2でのインサート部材の包被後、こうして包被されたインサート部材はさらに第2のプラスチック成分Bで包被される。第2のプラスチック成分Bによる包被は、好ましくは、同じく射出成形法によって行われる。その際、射出成形法は、一般に、射出成形に通例の圧力にて実施される。プラスチック成形コンパウンドが低い射出圧力で射出された場合、その際の金型内の圧力は、一般に、ステップ(a)における金型内の最大圧力よりも高い。第2のプラスチック成分Bの射出時、すでに凝固した第1のプラスチック成分A1またはA2は好ましくはそれらの表面が溶融されるために、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bの間に特に良好な付着が生ずる。
【0414】
ステップ(a)における第1のプラスチック成分A1またはA2によるインサート部材の包被と、ステップ(b)における第2のプラスチック成分Bからなる外側包被の成形とは、同一の射出成形金型で実施可能である。そのために、射出成形金型は先ず、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被を具えたインサート部材の形に一致した空洞を包囲する必要がある。続いて、金型は開かれ、その際、空の形は完成構成部材の形に一致していなければならない。当該金型は当業者には公知である。
【0415】
ただし、別法として、ステップ(a)における第1のプラスチック成分A1またはA2によるインサート部材の包被は第1の金型で行い、ステップ(b)における第2のプラスチック成分Bからなる外側包被の成形は第2の金型で行うこともできる。この場合、第1のプラスチック成分A1またはA2で包被されたインサート部材は第1の金型から取り出され、第2のプラスチック成分Bによる封入包被が行われる前に第2の金型に挿入される必要がある。第1のプラスチック成分A1またはA2からなるインサート部材の包被の変形を回避することが所望される場合、第1のプラスチック成分A1またはA2は流入する第2のプラスチック成分Bの溶融体に対して十分な機械的抵抗を呈する必要がある。そのために、第1のプラスチック成分A1またはA2の凝固度と第2のプラスチック成分Bの射出圧力とに相応した十分な剛性と強度が必要である。
【0416】
材料を交換するために射出成形機がそれぞれの射出プロセス後のクリーニングの必要性を回避するには、第1のプラスチック成分A1またはA2用と、第2のプラスチック成分B用と、2台の異なった射出成形機ないし可塑化装置を使用するのが好ましい。ステップ(a)における包被と、ステップ(b)における外側包被の成形とが同一の金型で行われる場合、金型を2台の射出成形機と同時に連結することができる。別法として、金型を先ず、第1のプラスチック成分A1またはA2が射出される射出成形機と連結し、続いて、第2のプラスチック成分Bが第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被を具えたインサート部材の周囲に吹付け被覆される射出成形機に連結することもできる。このために使用される通例の射出成形機は、たとえば、ターンテーブル金型付き射出成形機である。こうした射出成形機では、たとえば、シリンダーは対向して配置され、金型はそれぞれ次に射出されるシリンダーに向かって回転させられる。2つの異なった金型が使用される場合、それらはそれぞれ1台の射出成形機に連結されているのが好ましい。射出成形機としては、当業者に公知の任意のあらゆる射出成形機が適している。
【0417】
ステップ(b)において、第1のプラスチック成分A1またはA2で包被されたインサート部材の一部のみが第2のプラスチック成分Bで包被されることも可能である。この場合、第2のプラスチック成分Bでの包被によって成形品寸法精度が保証されるために、外側面を有する領域が第2のプラスチック成分Bによって吹付け被覆されるのが好ましい。別法として、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被を具えたインサート部材全体が第2のプラスチック成分Bによって吹付け被覆されることも可能であることは言うまでもない。
【0418】
最初に、第2のプラスチック成分Bからなる外側包被が成形され、その際、インサート部材の領域は包被されずに、第2のステップにおいて、包被されなかったインサート部材領域が第1のプラスチック成分A1またはA2で包被される方法変種において、第2のプラスチック成分Bによるインサート部材の包被は、好ましくは、このプラスチック成分が外側面の存在するインサート部材領域を包被するようにして行われる。第1のプラスチック成分A1またはA2が流し込まれる領域は、好ましくは、外側を向いた面を有していない。こうして製造される構成部材は、このようにして、形態および寸法安定性を有することが保証される。
【0419】
第2のプラスチック成分Bによるインサート部材の包被は、好ましくは、射出成形法によって行われる。そのために、インサート部材は射出成形金型内に装入され、続いて、第2のプラスチック成分Bによって封入包被される。第2のプラスチック成分Bが空所とされておかれなければならない領域に侵入するのを防止するため、金型はこれらの領域においてインサート部材に密着している。インサート部材が第2のプラスチック成分Bで包被された後、第1のプラスチック成分A1またはA2で包被される領域は開放される。そのために、金型内に(先ず空所を形成し、その後に第1のプラスチック成分A1またはA2を流し込むために当該空所を解放する)可動部分が設けられる、または、第2のプラスチック成分Bで封入包被されたインサート部材が金型から取り出され、次いで、第1のプラスチック成分A1またはA2で包被される領域が空所とされている第2の金型に装入されることが可能である。
【0420】
第1のプラスチック成分A1またはA2による包被は、好ましくは、同じく射出成形法で行われる。これは、一般に、射出成形法に通例の圧力にて実施される。たとえば不均一な封入包被のせいで、インサート部材の変形が生じ得る場合、第1のプラスチック成分A1またはA2の射出成形は、好ましくは、第2のプラスチック成分Bがインサート部材を封入包被する射出成形時よりも低い圧力で実施される。この場合、第1のプラスチック成分A1またはA2によるインサート部材の包被に使用される圧力は、好ましくは、900bar未満、有利には600bar未満である。
【0421】
第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bの間の媒質侵入封止結合は、好ましくは、プラスチック成分Bが第1のプラスチック成分A1またはA2の表面溶融によって溶着されるため、たとえば相互拡散によって、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bの間に特に良好な付着が生ずることによって達成される。さらに、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bとの化学的および/または機械的結合も可能である。化学的結合は、たとえば、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bとのポリマー成分の反応によって、第1のプラスチック成分A1またはA2または第1のプラスチック成分A1またはA2のいずれか1成分と第2のプラスチック成分Bまたは第2のプラスチック成分Bのいずれか1成分の間に共有結合が生ずるようにして生み出すことができる。この方法はまたいつでも、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bの間に良好な付着のみならず相補係合も生ずるようにして実施可能である。
【0422】
インサート部材の第1の封入包被に際する第1のプラスチック成分A1またはA2の溶融温度は、好ましくは、基本となるポリマーの射出成形に通例の加工温度の範囲内にある。第1のプラスチック成分A1またはA2が2種のポリマーからなる混合物である場合、双方の成分が液状で存在するよう高い溶融温度が選択される。
【0423】
相対的に高い加工温度により、インサート部材表面の湿潤が改善される流動性の高い溶融体が生ずるため、インサート部材の材料と第1のプラスチック成分A1またはA2の間に高い結合強度が達成可能である。ただし、溶融温度が高すぎる場合、第1のプラスチック成分A1またはA2ないしそれらの成分A11またはA12ないしA21またはA22のいずれか1成分の熱分解が生じ得る。
【0424】
続いて構成部材が第2のプラスチック成分Bで封入包被される際の第2のプラスチック成分Bの溶融温度は、基本となるポリマーの射出成形に通例の加工温度の範囲内にあるのが好ましい。第2のプラスチック成分Bが2種のポリマーからなる混合物である場合、双方の成分が液状で存在するよう高い溶融温度が選択される。
【0425】
相対的に高い加工温度により、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被の表面の湿潤の改善および/または溶融をもたらす流動性の高い溶融体が生ずるため、第2のプラスチック成分Bと第1のプラスチック成分A1またはA2の間に高い結合強度が達成可能である。双方の成分の熱力学的相溶性に応じ、プラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bとの物質接合封止結合を表す(多少の程度の相違はあるにしても)厚い境界層が生じ、これが相互拡散によって媒質侵入封止を改善する。第2のプラスチック成分Bの溶融温度は、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被が完全に溶融して流されてしまうほどに高くは選択されないのが好ましい。また、第2のプラスチック成分Bの射出圧力も、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被の過度の変形あるいは、最悪の場合、包被の押流しが回避されるように選択されるのが好ましい。
【0426】
本発明による構成部材は、たとえば、電気技術分野で使用される類のプラスチック部品である。また、この構成部材はメカトロニクス構成部材または差込み接点を有するプラスチックハウジングであってもよい。この種の構成部材は、たとえば、センサーたとえばオイルセンサー、車輪回転数センサー、圧力センサー等として、また、たとえば自動車のABS−、ESP−、トランスミッション−、エアバッグ−またはエンジン制御分野における電子デバイスハウジング、制御デバイスハウジングとして使用される。また、こうした構成部材は、ウィンドウレギュレーターモジュールとして、またはヘッドライト制御に使用することができる。また、本発明による構成部材は、自動車工業以外の分野でも、たとえばセンサーとして、液面計としてあるいは導管ユニットとして使用可能である。本発明による構成部材のその他の適切な使用は、たとえば、家庭用機器のエレクトロニクス部品である。適切な構成部材は、たとえば、リレー、コイルボビン、スイッチ部品、電磁弁、電動手工具、差込み装置または差込みコネクターである。
【0427】
第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被と第2のプラスチック成分Bからなる外側包被との2つの包被を具えたインサート部材からなる本発明による構成部材は、それが2つの界面、つまり、インサート部材と、第1のプラスチック成分A1またはA2からなる包被の間の界面および、第1のプラスチック成分A1またはA2と第2のプラスチック成分Bの間の界面、に沿って媒質侵入封止されていることを特徴とする。この場合、媒質侵入封止結合とは、検査される構成部材が−40℃と+150℃とに交互に曝露される少なくとも200サイクルに及ぶ耐候テスト後の漏洩率が0.5cm
3/min未満であることを意味している。漏洩率は、通例、差圧法により0.5barの試験圧力にて測定される。
【0428】
実施例
第1のプラスチック成分Aと第2のプラスチック成分Bによって包被されるCuSn
6製インサート部材からなる試験品が製造される。この場合、第1のプラスチック成分Aは先に説明したプラスチック成分A1またはA2である。
【0429】
試験品を製造するために、先ず、プレスダイを用いて、CuSn
6ストリップからインサート部材が打ち抜きされる。このインサート部材は長方形のフレームを有し、このフレームの対向する短辺はさらに中央の1本のバーによって互いに連結されている。こうして製造されたインサート部材は、長さ30mm、幅10.5mm、高さ0.5mmを有している。外側フレームバーと中央バーの間のスリットの長さは25mmであり、スリットの幅は3mmである。
【0430】
打ち抜き後、打ち抜き品からアセトンを用いて油および不純物が洗浄除去される。試験品を製造するため、スクリュー直径が18mmの射出機(Firma ArburgのAllrounder 270S)が使用される。金型の閉鎖圧力は500kN、射出圧力は1500barである。3本のバーを有するインサート部材の中央領域の周囲に直方体状の吹付け包被が形成され、その際、第2のプラスチック成分Bからなる包被は第1のプラスチック成分Aを完全に包囲している。第1のプラスチック成分Aからなる包被は、長さ15mm、幅4.5mm、厚さ1.5mmであり、第1のプラスチック成分Aを完全に包囲する第2のプラスチック成分Bからなる包被は、長さ20mm、幅13mm、厚さ4.5mmである。第1のプラスチック成分Aによるインサート部材の吹付け包被と、第1のプラスチック成分Aで吹付け包被されたインサート部材の第2のプラスチック成分Bによる吹付け包被とはほぼ金型分割面で行われる。
【0431】
材料試験のために、第1のプラスチック成分Aからなる包被と、第2のプラスチック成分Bからなる包被とを具えた構成部材は、500サイクルまでに及ぶ熱衝撃ストレスに曝露される。この場合、1回の熱衝撃サイクルは以下の手順で行われた:150℃にて15分間保存、10秒以内に−40℃に温度低下、−40℃にて15分間保存、10秒以内に150℃に温度上昇。熱衝撃処理はFirma Voetschの熱衝撃ボックスVT 7030S2中で行われる。差圧法による封止性測定は、ストレスを加える前ならびに100、200および場合により500サイクル後に行われた。
【0432】
差圧測定のために、2つのスペース(試験スペースと比較スペース)に同一の圧力が加えられる。試験スペースに漏洩があれば、直接に測定可能な圧力差が生ずる。別法として、単位時間当たりの圧力降下を測定することもできる。本実施例において、試験品はホルダーに張設されて外周がシーリングされ、下側から圧力が加えられた。シーリングはゴム製シールリングによって行われた。インサート部材の方向にのみ生ずる、インサート部材と第1のプラスチック成分Aからなる包被の間の漏洩または第1のプラスチック成分Aからなる包被と第2のプラスチック成分Bからなる包被の間の漏洩は、成分B1からなる固体試験品での対照試験で示されたように、試験スペースの漏洩を結果する。使用された媒質は空気であった。試験スペースV
試験は36mlであった。試験圧力0.5barによるスペース充填時間は5秒であった。10秒間の鎮静時間後、Δt
試験=5秒につき、圧力降下が測定された。続いて、スペースは2秒以内に排気された。圧力降下の差から、ボイル・マリオットの法則に基づいて、漏洩率が計算された:
【数1】
【0433】
結果は以下の第1表にまとめられている。
【0434】
第1表:試験結果
【表2】
【0435】
上記の表中、成分A1〜A4は成分Aの組成全体が異なっていることを表している。
【0436】
成分B1ないしB2は異なった封入包被であり、成分B1は従来の技術による外被であり、B2は本発明による成分Bを表している。
【0437】
TSZは熱衝撃サイクルを意味している。
【0438】
成分A1は、スチレン(40質量%)、α−メチルスチレン(30質量%)および、ブタジエン相(10質量%)を含有するアクリルニトリル(20質量%)の各モノマーからなる、E−モジュラス2400MPa、ビカー軟化温度115℃のコポリマーである。
【0439】
成分A2は、90質量%の成分A1ならびに、テレフタル酸(25モル%)と1,4−ブタンジオール(50モル%)とアジピン酸(25モル%)とからなる10質量%のランダム・コポリマーからなるブレンドであり、融点110〜120℃(ISO11357−3に準拠したDSC測定)、ショアーD硬度32(ISO868に準拠して測定)を有する。ビカー軟化温度は91℃(EN ISO306:2004に準拠して測定)である。
【0440】
成分A3は、97質量%の成分A1ならびに、分子量M
w6800g/molと分子当たりエポキシ基4個超の官能基価度とを有する3質量%のエポキシ官能スチレン−アクリル酸−コポリマーからなる混合物である。ガラス転移温度は54℃である。
【0441】
成分A4は、45質量%の
ポリラクチド(PLA)と、テレフタル酸(25モル%)とアジピン酸(25モル%)とブタンジオール(45モル%)とから製造された45質量%のランダム脂肪族−芳香族コポリエステルとからなるブレンドである。このブレンドは、2つの融点110〜120℃および140〜155℃(DSCによって測定)、68℃のビカー軟化温度(VST A50)(ISO306:2004に準拠して測定)、ショアーD硬度59(ISO868に準拠して測定)およびE−モジュラス750MPa(ISO527に準拠し、厚さ50μmのインフレーションフィルムで測定)を有する。
【0442】
成分B1は、粘度数102g/ml(ISO1628に準拠し、フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1)中0.5%溶液にて測定)を有する、30質量%のガラス繊維を含んだポリブチレンテレフタレートである。これは、さらに、平均粒度10〜35nm(CILAS)、BET表面積110〜120m
2g(ISO9277)を有する0.1質量%の炉ススならびに潤滑剤としての0.5質量%のペンタエリトリトールテトラステアレートを含んでいる。この材料は、E−モジュラス10000MPa(ISO527−2)および融点範囲220〜225℃(ISO11357−3に準拠したDSC測定)を有する。ガラス繊維は10μmの直径を有している。
【0443】
成分B2は、99.5質量%の成分B1と0.5質量%の超分岐ポリカーボネートとを含んだ混合物である。超分岐カーボネートを製造するため、攪拌機、還流冷却器および内部温度計を装備した三つ口フラスコ中、多官能価アルコールとしてのトリメチルプロパン×3エチレンオキシドが等モル量のジエチルカーボネートと混合され、(アルコールの量を基準として)250ppmのK
2CO
3が触媒として加えられた。続いて、この混合物は攪拌下で100℃に加熱され、2時間この温度にて攪拌された。その際、反応混合物の温度は、反応時間が進行するにつれ、遊離されたモノアルコールの蒸発冷却の開始に起因して低下した。ここで、還流冷却器は下降冷却器と交換され、エタノールは蒸留除去され、反応混合物の温度は緩慢に160℃に引き上げられた。
【0444】
蒸留除去されたエタノールは冷却された丸底フラスコに回収され、計量され、理論的に可能な完全変換率に比較した変換率が百分率にて求められた。蒸留物中のエタノール量は完全変換率を基準として90モル%であった。
【0445】
反応生成物は、続いて、ゲル浸透クロマトグラフィーで分析された。溶離剤はジメチルアセトアミドであり、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)が使用された。
【0446】
超分岐ポリカーボネートは数平均分子量M
n2500g/molおよび重量平均分子量M
w4100g/molを有する。23℃の粘度は4020mPas、DIN 53240,パート2によるOH価は310mgKOH/gである。
【0447】
従来の技術による成分Bの外側包被を有する実施例と本発明による成分Bによる外側包被を有する実施例とから、熱処理後には常に、高度分岐または超分岐ポリカーボネートないし高度分岐または超分岐ポリエステルを含まない外側包被を有する実施例よりも優れた封止性すなわち低い漏洩率が測定される旨看取することができる。
【0448】
また、封入包被直後の、つまり、熱処理が実施されなかった、部品についても(A2およびBのコンビネーションを別として)主封入包被としての本発明による成分Bにつき、同じく、等しいもしくは低い漏洩率が測定された。