特許第5809479号(P5809479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

<>
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000002
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000003
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000004
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000005
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000006
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000007
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000008
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000009
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000010
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000011
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000012
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000013
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000014
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000015
  • 特許5809479-電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809479
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   G01D5/245 110Q
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-170510(P2011-170510)
(22)【出願日】2011年8月3日
(65)【公開番号】特開2013-36758(P2013-36758A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
(72)【発明者】
【氏名】川床 修
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254783(JP,A)
【文献】 特開2004−309435(JP,A)
【文献】 特開2006−85453(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060465(WO,A1)
【文献】 特開2004−309419(JP,A)
【文献】 特開2009−186200(JP,A)
【文献】 特表2006−503282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール上に、測定方向に沿って互いに異なるスケールピッチで多数配列された本体コイルを有する2列以上のスケールコイルと、
前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上に、前記スケールコイルと対向するように配設された送信コイル及び受信コイルとを備え、
前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールに対する前記グリッドの絶対位置測定を可能とする2つ以上のトラックを有する電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダにおいて、
少なくとも1つのトラックの前記本体コイルの間に、ループ状のスケールコイルを少なくとも1つ追加し、この追加したスケールコイルの誘導電流によって、前記送信コイルを励磁した時の前記受信コイルでの信号検出強度を増加すると共に、クロストーク磁界による誘導電流を低減したことを特徴とする電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ。
【請求項2】
前記受信コイルの形状が、前記本体コイルと前記追加したスケールコイルの両方をカバーする、測定方向に長い8の字型であることを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダに係り、特に、ノギス、インジケータ、リニアスケール、マイクロメータ等に用いるのに好適な、S/N向上による測定の高精度化、及び/又は、スケール幅、ひいてはエンコーダ幅の小型化を図ることが可能な、電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や2に記載されている如く、図1に特許文献2の例を示すように、測定方向に沿ってスケール10上に多数配列されたスケールコイル14、16と、前記スケール10に対して測定方向に相対移動自在なグリッド(スライダとも称する)12上に配設された送信コイル24、26及び受信コイル20、22とを備え、送信コイルを励磁した時に、スケールコイルを経由して受信コイルで検出される磁束の変化から、スケール10とグリッド12の相対移動量を検出する電磁誘導式エンコーダが知られている。図において、28は送信制御部、30は受信制御部である。
【0003】
このような電磁誘導式エンコーダで、余分な信号であるオフセットを低減しようとした場合、図2に示す如く、送信コイル24が発生する磁界がキャンセルされ、正味零となる部分(図2の例では、両側の送信コイルの間の中央部分)に受信コイル20を配置することでオフセットを低減していた。なお、特許文献2では、図2の第1の送信コイル24と第1の受信コイル20でなる構成に加えて、図3に示す如く、第2の送信コイル26の両側に第2の受信コイル22も配設されている。
【0004】
しかしながら、この構成は、スケールコイルが3列必要となり、スケールコイルの配線が長くなるため、発生する誘導電流が、スケールコイル自身のインピーダンスによって減衰してしまい、強い信号が得難いという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するべく、出願人は特許文献3で、その図6に対応する本願の図4に示す如く、送信コイル24A、24B、受信コイル20A、20Bとスケールコイル14A、14Bを、スケール10の中心に対して対称に複数セット配置し、スケール中心に関して対称な位置にあるスケールコイルの一方(例えば14A)を、他方のスケールコイル(例えば14B)に対し、スケールピッチλの1/2位相がずれた関係となるようにすることを提案している。
【0006】
更に、図5に示す如く、スケールコイル、送信コイル及び受信コイルを有するトラックを、異なるスケールピッチλ1、λ2でスケール幅方向(グリッド幅方向)に2組(図の下側の送信コイル24−1と図の上側のスケールコイル14−1a、受信コイル20−1でなるスケールピッチλ1の組と、図の上側の送信コイル24−2と図の下側のスケールコイル14−2a、受信コイル20−2でなるスケールピッチλ2の組)配置して、絶対位置測定を可能とすることが考えられる。図において、14−3は、スケールコイル14−1aと14−2aを接続するコイル(接続コイルと称する)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−318781号公報
【特許文献2】特開2003−121206号公報(図1図2図3
【特許文献3】特開2009−186200号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら図5の構成では、グリッド12上における送信コイル24−1、24−2から受信コイル20−2、20−1への直接のクロストーク量を低減するため、受信コイル20−1(20−2)と送信コイル24−1(24−2)を離した位置に配置する必要があるので、スケール10上のスケールコイルの長さ(スケールコイル14−1aの長さ+スケールコイル14−2aの長さ+接続コイル14−3の長さ)が長くなり、発生する誘導電流Iaがスケールコイル自身のインピーダンスによって減衰してしまい、強い信号が得難いという問題点を有していた。
【0009】
また、図5の構成で、スケールコイル14−1aと14−2aとの間隔を短くする等してエンコーダ幅の小型化を図ろうとすると、送信コイルの駆動によって発生する磁界が、直接、受信コイルに正対しているスケールコイルにも影響を与えるため、本来のスケールコイルに流れる誘導電流とは逆方向の誘導電流成分が発生する事で、スケールコイルに発生する誘導電流が減少することになり、受信コイルで検出する信号が減少してしまう不都合が起こる。
【0010】
以下に、その説明を示す。
【0011】
図5上側のスケールピッチλ1のスケールコイル14−1aを受信コイル20−1で検出する動作を図6に示す。図に示すように、本来、駆動電流IDによる送信コイル24−1の駆動によって発生する磁界により、スケールコイル14−2aに誘電電流Iaが発生し、接続コイル14−3を介してスケールコイル14−1aに流れる誘導電流Iaによって発生する磁界を受信コイル20−1で検出する原理であるが、送信コイル24−1にスケールコイル14−1aが接近するに従って、送信コイル24−1の駆動により発生する磁界によってスケールコイル14−1aには、誘導電流Iaと逆方向の誘導電流成分Idが発生するため、スケールコイル14−1aの全誘導電流は(Ia−Id)となり、Id分だけ減少する。言い換えると、スケールコイル14−1aには、スケールコイル14−2a経由の誘導電流成分Iaと、送信コイル24−1からスケールコイル14−1aに直接入る磁界により発生する誘導電流成分Id(Iaとは逆方向)の差分の誘導電流(Ia−Id)が発生する。
【0012】
一方、図5下側のスケールピッチλ2のスケールコイル14−2aを受信コイル20−2で検出する動作を図7に示す。図に示すように、本来、駆動電流IDによる送信コイル24−2の駆動によって発生する磁界により、スケールコイル14−1aに誘導電流Iaが発生し、接続コイル14−3を介してスケールコイル14−2aに流れる誘導電流Iaによって発生する磁界を受信コイル20−2で検出する原理であるが、送信コイル24−2にスケールコイル14−2aが接近するに従って、送信コイル24−2の駆動により発生する磁界によってスケールコイル14−2aには、誘導電流Iaと逆方向の誘導電流成分Idが発生するため、スケールコイル14−2aの全誘導電流は(Ia−Id)となり、Id分だけ減少する。言い換えると、スケールコイル14−2aには、スケールコイル14−1a経由の誘導電流成分Iaと、送信コイル24−2からスケールコイル14−2aに直接入る磁界により発生する誘導電流成分Id(Iaとは逆方向)の差分の誘導電流(Ia−Id)が発生する。
【0013】
更に、図5の構成で、スケールコイル14−1aとスケールコイル14−2aとの間隔を短くする等してエンコーダ幅の小型化を図ろうとすると、次のような不都合も発生する。
【0014】
即ち図8に示す如く、スケールコイル14−2aに流れる誘導電流Ia−Idにより発生する磁界が、直接、受信コイル20−1に影響を与え、受信コイル20−1にクロストーク電流成分Ic(図8の左のスケール左端側ではIc1)が流れる。
【0015】
図5のように、スケールピッチが異なる2トラック構成のスケールの場合、受信コイル20−1に発生するクロストーク電流成分はスケールの位置で変化する(図8の右のスケール右端側ではIc2)ことにより、本来の位置検出信号に、スケールの位置で変化するクロストーク電流成分が重畳するので、スケール全長に渡って測定精度(特に広範囲精度)に影響を与えてしまう不都合が起こる。
【0016】
図5のスケールピッチλ1とスケールピッチλ2のトラックをもつスケール(例では、λ1<λ2)において、図8の例のように、スケールピッチλ1のスケールを受信コイル20−1で検出(測定)する場合、スケールピッチλ2のスケールの影響で、広範囲精度が図9に示す如くプラス方向の誤差を生じる。その反対に、スケールピッチλ2のスケールを受信コイル20−2で検出(測定)する場合、上記と同様な原因でスケールピッチλ1のスケールの影響で、広範囲精度が図9に示す如くマイナス方向の誤差を生じる。
【0017】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、送信コイルを励磁した時の、スケールコイルでの誘導電流を増加することによって、受信コイルでの検出信号強度を向上して、S/Nの向上による測定の高精度化、及び/又は、スケール幅、ひいてはエンコーダ幅の縮小によるエンコーダの小型化を図ると共に、クロストーク磁界による誘導電流を低減して、広範囲精度の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、スケール上に、測定方向に沿って互いに異なるスケールピッチで多数配列された本体コイルを有する2列以上のスケールコイルと、前記スケールに対して測定方向に相対移動自在なグリッド上に、前記スケールコイルと対向するように配設された送信コイル及び受信コイルとを備え、前記送信コイルを励磁した時に、前記スケールコイルを経由して前記受信コイルで検出される磁束の変化から、前記スケールに対する前記グリッドの絶対位置測定を可能とする2つ以上のトラックを有する電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダにおいて、少なくとも1つのトラックの前記本体コイルの間に、ループ状のスケールコイルを少なくとも1つ追加し、この追加したスケールコイルの誘導電流によって、前記送信コイルを励磁した時の前記受信コイルでの信号検出強度を増加すると共に、クロストーク磁界による誘導電流を低減することにより、前記課題を解決したものである。
【0019】
ここで、前記受信コイルの形状を、前記本体コイルと前記追加したスケールコイルの両方をカバーする、測定方向に長い8の字型とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、図5の構成に比べ、スケールコイル間に追加したスケールコイルの誘導電流によって、送信コイルを励磁した時の受信コイルでの信号検出強度を増加すると共にクロストーク磁界による誘導電流を低減することができる。従って、(1)2つ以上のトラック間の間隔を狭めることが可能となり、スケール幅、ひいてはエンコーダ幅を縮小してエンコーダを小型化できる、(2)S/N向上により測定精度を向上できる、(3)グリッドとスケール間のギャップを拡大できる、(4)スケールコイルの幅を縮小することが可能となり、スケール幅、ひいてはエンコーダ幅を縮小してエンコーダを小型化できる、(5)クロストーク磁界による影響を低減して、広範囲精度を向上することができる、等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】特許文献2に記載された従来の電磁誘導式エンコーダの全体構成を示す斜視図
図2】同じくグリッド上のコイルの配置及び第1の作用を示す平面図
図3】同じくグリッド上のコイルの配置及び第2の作用を示す平面図
図4】特許文献3に記載された従来の電磁誘導式エンコーダのグリッドとスケールの平面図
図5】発明者が検討中の電磁誘導式絶対位置測定用エンコーダの基本的な構成を示すグリッドとスケールの平面図
図6図5の下側の送信コイルを駆動して上側の受信コイルで検出する様子を示す要部平面図
図7図5の上側の送信コイルを駆動して下側の受信コイルで検出する様子を示す要部平面図
図8】従来例におけるクロストーク磁界による誘導電流の発生状況を示す要部平面図
図9】同じく広範囲誤差の例を示す図
図10】本発明の第1実施形態を示すスケールの平面図
図11図10の下側の送信コイルを駆動して上側の受信コイルで検出する様子を示す要部平面図
図12図10の上側の送信コイルを駆動して下側の受信コイルで検出する様子を示す要部平面図
図13】第1実施形態におけるクロストーク磁界による誘導電流の発生状況を示す要部平面図
図14】同じく広範囲誤差の例を示す図
図15】本発明の第2実施形態を示すスケールの平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態は、図10に示す如く、図5と同様の元からあるスケールコイル本体14−1a(本体コイルとも称する)の間に、図中に破線で示すスケールコイル(追加コイルとも称する)14−1bを追加してスケールコイル14−1とすると共に、同じく図5と同様の元からあるスケールコイル本体14−2a(本体コイルとも称する)の間に、図中に破線で示すスケールコイル(追加コイルとも称する)14−2bを追加してスケールコイル14−2としたものである。
【0024】
上記の構成により、スケールコイル14−1aと14−2aとの間隔を短くする等してエンコーダ幅を小型化しても、受信コイルで検出する信号強度が増加することを以下に説明する。
【0025】
まず、図10上側のスケールピッチλ1のスケールコイル14−1を受信コイル20−1で検出する時は、図11に示す如く、駆動電流IDによる送信コイル24−1の駆動によって発生する磁界により、本体コイル14−1aには、本体コイル14−2a経由の誘導電流成分Iaと、送信コイル24−1から本体コイル14−1aに直接入る磁界により発生する誘導電流成分Id(Iaとは逆方向)の差分の誘導電流(Ia−Id)が発生する。又、追加コイル14−1bには、送信コイル24−1から直接入る磁界により発生する誘導電流Ib(本体コイル14−1aの誘導電流(Ia−Id)とは逆方向)が発生する。誘導電流Idと誘導電流Ibの大きさを比較すると、スケールコイル(14−1a+14−2a+14−3)のコイル長は、追加コイル14−1bのコイル長の2倍以上あるため、(誘導電流Id)<(誘導電流Ib/2)となる。
【0026】
受信コイル20−1は、本体コイル14−1aと追加コイル14−1bの両方をカバーする8の字型のコイル形状をしているため、受信コイル20−1の検出信号電流は、本体コイル14−1aの電流(Ia−Id)による受信コイル20−1の誘導信号電流に、追加コイル14−1bの電流Ibによる受信コイル20−1の誘導信号電流が加わることになる。
【0027】
よって、次式に示す如く、受信コイル20−1で検出する信号強度Aは、追加コイル14−1bを追加しない場合の信号強度Bに比べ、(Ia+Id)/(Ia−Id)倍以上増加する。
【0028】
A∝(Ia−Id+Ib)≒(Ia−Id+2Id)=(Ia+Id)
B∝(Ia−Id)
∴A/B≒(Ia+Id)/(Ia−Id)
【0029】
一方、図10下側のスケールピッチλ2のスケールコイル14−2を受信コイル20−2で検出する時は、図12に示す如く、駆動電流IDによる送信コイル24−2の駆動によって発生する磁界により、本体コイル14−2aには、本体コイル14−1a経由の誘導電流成分Iaと、送信コイル24−2から本体コイル14−2aに直接入る磁界により発生する誘導電流成分Id(Iaとは逆方向)の差分の誘導電流(Ia−Id)が発生する。又、追加コイル14−2bには、送信コイル24−2から直接入る磁界により発生する誘導電流Ib(本体コイル14−2aの誘導電流(Ia−Id)とは逆方向)が発生する。誘導電流Idと誘導電流Ibの大きさを比較すると、スケールコイル(14−2a+14−1a+14−3)のコイル長は、追加コイル14−2bのコイル長の2倍以上あるため、(誘導電流Id)<(誘導電流Ib/2)となる。
【0030】
受信コイル20−2は、本体コイル14−1aと追加コイル14−1bの両方をカバーする8の字型のコイル形状をしているため、受信コイル20−2の検出信号電流は、本体コイル14−2aの電流(Ia−Id)による受信コイル20−2の誘導信号電流に、追加コイル14−2bの電流Ibによる受信コイル20−2の誘導信号電流が加わることになる。
【0031】
よって、上記説明と同様に、次式に示す如く、受信コイル20−2で検出する信号強度Cは、追加コイル14−2bを追加しない場合の信号強度Bに比べ、(Ia+Id)/(Ia−Id)倍以上増加する。
【0032】
C∝(Ia−Id+Ib)≒(Ia−Id+2Id)=(Ia+Id)
B∝(Ia−Id)
∴C/B≒(Ia+Id)/(Ia−Id)
【0033】
更に、ループ状のスケールコイル(14−1b、14−2b)を付加することにより、図13に示すように、図10上側のスケールピッチλ1のスケールコイル14−1を受信コイル20−1で検出する時、スケールコイル14−2から受信コイル20−1へのクロストーク磁界がスケール位置によらないで、ほぼ均一になるため、クロストーク磁界による誘導電流の差が小さく(Ic1≒Ic2)なるため、図14に示すように、広範囲精度の向上も図られる。図10下側のスケールピッチλ2のスケールコイル14−2を受信コイル20−2で検出する時も、同様の作用で、図14に示すように広範囲精度の向上が図られる。特に受信コイルが8の字型では、クロストーク磁界による誘導電流が打ち消し合うため、受信コイル20−1に発生する誘導電流が大幅に低減することになり、一層の広範囲精度の向上も図られる。
【0034】
付加したスケールコイル(14−1b、14−2b)の配線の太さを調整することにより、上記の誘導電流を完全に打ち消すことも可能であるし、スケール位置によってコイルの配線の太さを変えることによりIc1=Ic2にすることも可能となり、より高精度にすることもできる。
【0035】
本発明の適用対象は、図10に示した2列のトラックを有するものに限定されず、図15に示す第2実施形態のように、例えばスケールピッチλ2のスケールコイル14−2の上下両側にスケールピッチλ1のスケールコイル14−1を配置した3列のトラックを有するものにも適用することができる。
【0036】
この第2実施形態においては、上下両側のスケールコイル14−1の本体コイル14−1aの間のみにスケールコイル14−1bが追加されており、中央のスケールコイル14−2にはスケールコイルが追加されていない。このように一部のスケールコイルの追加を省略することもできる。
【0037】
尚、前記実施形態においては、いずれも、スケールコイルの形状が矩形の枠状とされていたが、スケールコイルの形状は、これに限定されず、例えば、矩形内に電極が存在する板状、あるいは逆に矩形部分を抜いた板状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…スケール
12…グリッド
14−1、14−2…スケールコイル
14−1a、14−2a…本体コイル
14−1b、14−2b…追加コイル
14−3…接続コイル
20−1、20−2…受信コイル
24−1、24−2…送信コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15