(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
3段の偏向器を用いて試料上の所望の位置に照射されるようにショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させて前記所望の位置にパターンを描画するためのショットデータの作成方法であって、
前記ショットデータは、それぞれ所定のビット数で構成される3ワードで定義される第1から第3のデータ領域を備え、
第1のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、それぞれ定義され、
第2のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、前記第2ワード目と前記第3ワード目の一方に、さらに、ショットされる荷電粒子ビームの図形コードが、それぞれ定義され、
第3のデータ領域の第1ワード目に照射時間が、第2ワード目に第3の偏向器が偏向する2次元で示す座標データが、第3ワード目にショットされる荷電粒子ビームの図形サイズが、それぞれ定義されるフォーマットでショットデータを作成することを特徴とするショットデータの作成方法。
3段の偏向器を用いて試料上の所望の位置に照射されるようにショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させて前記所望の位置にパターンを描画するためのショットデータの作成方法であって、
前記ショットデータは、所定のビット数で構成される複数のワードで共に定義された、第1の偏向器によって偏向される座標データを含む第1のデータ領域と、第2の偏向器によって偏向される座標データを含む第2のデータ領域と、第3の偏向器によって偏向される座標データを含む第3のデータ領域と、備え、
前記第1から第3のデータ領域において、共に、同じレイアウト同士であれば変動しない不変データが定義されるワードと、同じレイアウト同士であっても変動する場合がある可変データが定義されるワードと、を区別したフォーマットでショットデータを作成することを特徴とするショットデータの作成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述したように、ショットデータのデータ量が増加してしまうといった問題があった。また、パターンの位置情報等の変動しないデータのチェックが容易にできないといった問題があった。
【0008】
図9は、ショットデータフォーマットの一例を示す図である。なお、
図9に示すショットデータのフォーマットは公知ではないと思われる。
図9では、成形されたビームを主副2段の2段偏向によって試料上の所望する位置へと各ショットのビームを照射する場合のショットデータの一例を示している。主副2段の2段偏向では、試料をサブフィールド(SF)と呼ばれるメッシュ状の領域に仮想分割し、主偏向器によって、描画対象となるSFの基準位置へと成形ビームを偏向し、副偏向器にて、SFの基準位置からSF内の所定の位置までの相対距離だけ成形ビームを偏向する。
図9に示すフォーマットでは、SFを特定するデータが定義されたデータ領域A’と、当該SF内の各ショットを特定するデータが定義されたデータ領域B’とが示されている。各データ領域は、1ワードあたり32ビット(4バイト)の4ワードで構成され、それぞれ16バイトのデータ量となる。
図9において、データ領域A’の1ワード目には、主偏向データヘッダ(MH)とSFカウンタを含む任意パラメータが定義される。2ワード目には、SFのX座標が定義される。3ワード目には、SFのY座標が定義される。4ワード目には、任意パラメータが定義される。データ領域B’の1ワード目には、副偏向データヘッダ(SH)とSFエンドフラグ等を示すC−codeとショット位置のX座標が定義される。2ワード目には、ショット図形の図形コード(k−code)とショット位置のY座標が定義される。3ワード目には、ショット図形の図形サイズ(L1,L2)が定義される。4ワード目には、照射時間が定義される。かかるフォーマットでは、SF内のショット数が1つ増えるごとに16バイトのデータ量が増加していくことになる。一般に、1つのSF内には、数百個の成形ビームがショットされる。今後はさらに増加することが予想される。そのため、ショットデータのデータ量がますます増加してしまう。よって、データの転送時間がさらに増加してしまうといった問題があった。また、データ領域A’の1ワード目には、同じパターンレイアウト同士であっても内容が変動する場合のある可変データとなる任意パラメータが、データ領域B’の1ワード目には、同じパターンレイアウト同士であれば変動しない不変データとなるショット位置のX座標が定義される。よって、1ワード目のワード同士の総和は、同じパターンレイアウト同士であっても同じ値になるとは限らず、同じパターンレイアウトのショットデータ同士間で、かかる総和をもってパターン位置情報のチェックを行うことはできない。よって、パターンの位置情報等の変動しないデータのチェックが容易にできないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、パターンの位置情報等の同じパターンレイアウト間で変動しないデータのチェックを容易にできるフォーマットのショットデータを作成可能な方法および装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の一態様は、さらに、ショットデータのデータ量の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のショットデータの作成方法は、
3段の偏向器を用いて試料上の所望の位置に照射されるようにショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させて所望の位置にパターンを描画するためのショットデータの作成方法であって、
ショットデータは、それぞれ所定のビット数で構成される3ワードで定義される第1から第3のデータ領域を備え、
第1のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、それぞれ定義され、
第2のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、第2ワード目と第3ワード目の一方に、さらに、ショットされる荷電粒子ビームの図形コードが、それぞれ定義され、
第3のデータ領域の第1ワード目に照射時間が、第2ワード目に第3の偏向器が偏向する2次元で示す座標データが、第3ワード目にショットされる荷電粒子ビームの図形サイズが、それぞれ定義されるフォーマットでショットデータを作成することを特徴とする。
【0011】
かかる構成により、パターンの位置情報等の変動しないデータと、変動する可変データとを異なるワード目に定義できる。よって、可変データのデータを変動させた場合でもパターンの位置情報等の変動しないデータのチェックが可能となる。
【0012】
また、ショットデータを作成する際、第1から第3のデータ領域と共にさらに所定のビット数で構成される3ワードで定義される第4のデータ領域が作成され、
第4のデータ領域の第1ワード目に第1〜第3のデータ領域の各第1ワード目のデータのワードをすべて加算した総数が第1ワード目のデータの誤り検出のための値として定義され、第2ワード目に第1〜第3のデータ領域の各第2ワード目のデータのワードをすべて加算した総数が第2ワード目のデータの誤り検出のための値として定義され、第3ワード目に第1〜第3のデータ領域の各第3ワード目のデータのワードをすべて加算した総数が第3ワード目のデータの誤り検出のための値として定義されると好適である。
【0013】
本発明の他の態様のショットデータの作成方法は、
3段の偏向器を用いて試料上の所望の位置に照射されるようにショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させて所望の位置にパターンを描画するためのショットデータの作成方法であって、
ショットデータは、所定のビット数で構成される複数のワードで共に定義された、第1の偏向器によって偏向される座標データを含む第1のデータ領域と、第2の偏向器によって偏向される座標データを含む第2のデータ領域と、第3の偏向器によって偏向される座標データを含む第3のデータ領域と、備え、
第1から第3のデータ領域において、共に、同じレイアウト同士であれば変動しない不変データが定義されるワードと、同じレイアウト同士であっても変動する場合がある可変データが定義されるワードと、を区別したフォーマットでショットデータを作成することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
試料上の所望の位置に照射されるように各ショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させる第1から第3の偏向器と、
それぞれ所定のビット数で構成される3ワードで定義される第1から第
3のデータ領域を備え、第1のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、それぞれ定義され、第2のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、第2ワード目と第3ワード目の一方に、さらに、ショットされる荷電粒子ビームの図形コードが、それぞれ定義され、第3のデータ領域の第1ワード目に照射時間が、第2ワード目に第3の偏向器が偏向する2次元で示す座標データが、第3ワード目にショットされる荷電粒子ビームの図形サイズが、それぞれ定義されたフォーマットでショットデータを生成するショットデータ生成部と、
ショットデータを転送する転送部と、
転送されたショットデータを入力する入力部と、
入力されたショットデータを用いて、第1から第3の偏向器で偏向させる偏向量を演算する偏向量演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
それぞれ所定のビット数で構成される3ワードで定義される第1から第
3のデータ領域を備え、第1のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第1の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、それぞれ定義され、第2のデータ領域の第1ワード目に任意パラメータが、第2ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの一方が、第3ワード目に第2の偏向器が偏向する2次元で示す座標データの他方が、第2ワード目と第3ワード目の一方に、さらに、ショットされる荷電粒子ビームの図形コードが、それぞれ定義され、第3のデータ領域の第1ワード目に照射時間が、第2ワード目に第3の偏向器が偏向する2次元で示す座標データが、第3ワード目にショットされる荷電粒子ビームの図形サイズが、それぞれ定義されたフォーマットでショットデータを生成する工程と、
生成されたショットデータを転送する工程と、
転送されたショットデータを入力する工程と、
入力されたショットデータを用いて、第1から第3の偏向器で偏向させる偏向量を演算する工程と、
第1から第3の偏向器を用いて、それぞれ演算された偏向量で試料上の所望の位置に照射されるように各ショット用の荷電粒子ビームを3段偏向させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、パターンの位置情報等の変動しないデータのチェックを容易にできるフォーマットのショットデータを作成できる。また、本発明の他の一態様は、さらに、ショットデータのデータ量の低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランカー212、ブランキングアパーチャ214、第1の成形アパーチャ203、投影レンズ204、第1の成形偏向器220、第2の成形偏向器222、第2の成形アパーチャ206、対物レンズ207、第1の対物偏向器232、第2の対物偏向器230、及び第3の対物偏向器234が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0020】
制御部160は、制御計算機ユニット110、偏向制御回路ユニット120、デジタル・アナログ変換(DAC)ユニット130,132,134,136,137,138、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機ユニット110、偏向制御回路ユニット120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0021】
制御計算機ユニット110内には、ショットデータ生成部112、メモリ等の記憶装置114,118、及び転送処理部116が配置される。ショットデータ生成部112、及び転送処理部116といった各機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。ショットデータ生成部112、及び転送処理部116に入出力される情報および演算中の情報は記憶装置118にその都度格納される。
【0022】
偏向制御回路ユニット120内には、入力部122、メモリ等の記憶装置124,129、チェックサム処理部126、及び偏向量演算部128が配置される。入力部122、チェックサム処理部126、及び偏向量演算部128といった各機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。入力部122、チェックサム処理部126、及び偏向量演算部128に入出力される情報および演算中の情報は記憶装置129にその都度格納される。
【0023】
DACユニット130は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となるブランキング信号を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧をブランカー212に印加する。
【0024】
DACユニット132は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となる第1の成形偏向信号(図形種信号)を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧を第1の成形偏向器220に印加する。
【0025】
DACユニット134は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となる第2の成形偏向信号(サイズ信号)を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧を第2の成形偏向器222に印加する。
【0026】
DACユニット136は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となる副偏向データ信号を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧を第2の対物偏向器230に印加する。
【0027】
DACユニット137は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となる主偏向データ信号を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧を第1の対物偏向器232に印加する。
【0028】
DACユニット138は、偏向制御回路ユニット120からデジタル信号となる第3の偏向データ信号を入力し、アナログ信号に変換し、増幅の上、偏向電圧として出力電圧を第3の対物偏向器234に印加する。
【0029】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図1の例では、3段の対物偏向器を使って、3段偏向することにより試料101上の所望の位置へとビームを照射する。
【0030】
記憶装置140(記憶部)には、複数の図形パターンから構成される描画データ(レイアウトデータ)が外部から入力され、格納されている。
【0031】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、ブランカー212(ブランキング偏向器)内を通過する際にブランカー212によって、ビームONの状態では、ブランキングアパーチャ214を通過するように制御され、ビームOFFの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ214で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでにブランキングアパーチャ214を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランカー212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧を印加せず、ビームOFFの際にブランカー212に電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間で試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0032】
以上のようにブランカー212とブランキングアパーチャ214を通過することによって生成された各ショットの電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1の成形アパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206上に投影される。その際、第1の成形偏向器220、及び第2の成形偏向器222によって、かかる第2の成形アパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれる。かかる可変成形は、一般に、ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。実施の形態1では、後述するように、同一の第3の偏向領域(TF)用としてショットデータが生成されたショット間では、各ショットは同一の図形種に成形され、そのサイズはショット毎に異なる場合がある。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、第1の対物偏向器232、第2の対物偏向器230、及び第3の対物偏向器234によって3段偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
【0033】
図2は、実施の形態1におけるビーム成形を説明するための概念図である。第1の成形アパーチャ203には、電子ビーム200を成形するための矩形例えば長方形或いは正方形の開口32が形成されている。また、第2の成形アパーチャ206には、第1の成形アパーチャ203の開口32を通過した電子ビーム200を所望の矩形形状に成形するための可変成形開口34が形成されている。可変成形開口34は、開口32の辺に対して平行および直交した辺と、開口32の辺に対して45度のn倍(nは、1〜4)回転した辺とが組み合わされて形成される。言い換えれば、可変成形開口34は、6角形の1辺が削除されて開口し、長方形の1辺が削除されて開口し、削除された開口する辺の部分同士を繋げた形状になっている。電子銃201から照射され、第1の成形アパーチャ203の開口32を通過した電子ビーム200は、第1の成形偏向器220と第2の成形偏向器222により偏向され、第2の成形アパーチャ206の可変成形開口34の一部を通過して、所定の一方向(例えば、X方向とする)に連続的に移動するXYステージ105上に搭載された試料101に照射される。すなわち、第1の成形アパーチャ203の開口32と第2の成形アパーチャ206の可変成形開口34との両方を通過できる形状が、X方向に連続的に移動するXYステージ105上に搭載された試料101の描画領域に描画される。
図2の例では、第1の成形アパーチャ203の開口32を通過することでまず矩形に成形される。次に、開口32で成形された成形ビームが、例えば、第2の成形アパーチャ206の可変成形開口34の135度の辺を跨ぐように偏向される。その結果、開口32で成形された矩形の1角を含む2辺と可変成形開口34の135度の辺で囲まれたビームの一部が、第2の成形アパーチャ206で遮断されずに可変成形開口34を通過する。これにより、電子ビーム200は、直角2等辺三角形に可変成形され、直角2等辺三角形のショットビーム36が試料101上に照射される。
【0034】
図3は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図3において、試料101の描画領域10は、第1の対物偏向器232の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20(第1の小領域)に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、第2の対物偏向器230の偏向可能サイズで、メッシュ状に複数のサブフィールド(SF)30(第2の小領域)に仮想分割される。そして、各SF30は、第3の対物偏向器234の偏向可能サイズで、メッシュ状に複数のアンダーサブフィールドとなる第3フィールド(TF:Tertiary Field)40(第3の小領域)に仮想分割される。そして、各TF40内の各ショット位置にショット図形52,54,56が描画される。各SF内のTF分割数は、例えば、縦横10個以下が望ましい。より好適には、縦横5個以下が望ましい。
【0035】
成形された電子ビーム200を試料101に描画する際、まず、第1の対物偏向器232がショットされるSF30の基準位置に成形された電子ビーム200を偏向する。SF30の基準位置として、例えば、SF30の中心位置が好適である。或いは、その他の位置を基準位置にしても構わない。XYステージ105は移動しているため、第1の対物偏向器232はXYステージ105の移動に追従するように電子ビーム200を偏向する。そして、第2の対物偏向器230が当該SF30の基準位置から当該SF30内のショットされるTF40の基準位置に成形された電子ビーム200を偏向する。TF40の基準位置として、例えば、TF40の中心位置が好適である。或いは、その他の位置を基準位置にしても構わない。そして、第3の対物偏向器234により、TF40内の各位置に照射される。実施の形態1では、以上のように3段偏向を行う。以上のような描画動作を行うために、まずは、ショットデータを生成する。
【0036】
ショットデータ生成工程として、ショットデータ生成部112は、上述した3段の偏向器を用いて試料101上の所望の位置に照射されるようにショット用の電子ビームを3段偏向させて所望の位置にパターンを描画するためのショットデータを生成する。具体的には、ショットデータ生成部112は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部112は、実際に描画するために、各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショット用のデータを生成する。実施の形態1では、ショット数の増加によるショットデータのデータ量の増加を低減すべく、以下のようなフォーマットでショットデータを生成する。
【0037】
図4は、実施の形態1におけるショットデータのフォーマットの一例を示す図である。
図4では、1つのSF30における1つのTF40内に照射されるショットビームについてのショットデータを一例として示している。ショットデータは、それぞれ所定のビット数で構成される3ワードで定義されるデータ領域A(第1のデータ領域)、データ領域B(第2のデータ領域)、データ領域C(第3のデータ領域)、及びデータ領域D(第4のデータ領域)を備えている。ここでは、1ワードあたり、32ビットで構成される。8ビットを1バイトとした場合、1ワードあたり4バイトのデータ量で構成される。よって、各データ領域は、それぞれ、12バイトのデータ量で構成される。
【0038】
データ領域Aの第1ワード目に主偏向データヘッダ(MH)及び任意パラメータが定義される。データ領域Aの第2ワード目に第1の対物偏向器232が偏向する2次元で示すSF30の座標データの一方が定義される。データ領域Aの第3ワード目に第1の対物偏向器232が偏向する2次元で示すSF30の座標データの他方が定義される。このように、データ領域Aには、第1の対物偏向器232によって偏向される座標データを含む。
図4の例では、第2ワード目に当該SF30のX座標が定義され、第3ワード目に当該SF30のY座標が定義される。なお、SF30の(X,Y)座標は、同じパターンレイアウト間では変動しない不変データとなる。一方、第1ワード目の任意パラメータは、同じパターンレイアウト間で変動する場合がある可変データとなる。
【0039】
データ領域Bの第1ワード目に副偏向データヘッダ(SH)及び任意パラメータが定義される。データ領域Bの第2ワード目にSFエンドフラグ等のC−code、ショットされる電子ビームの図形コードであるK−code、及び第2の対物偏向器230が偏向する2次元で示すTF40の座標データの一方が定義される。データ領域Bの第3ワード目にTF40のデータ情報を示すTD情報及び第2の対物偏向器230が偏向する2次元で示TF40のす座標データの他方が定義される。このように、データ領域Bには、第2の対物偏向器230によって偏向される座標データを含む。
図4の例では、データ領域Bの第2ワード目にC−code及びK−codeが、データ領域Bの第3ワード目にTD情報が定義されているが、これに限るものではない。C−code、K−code、及びTD情報は、それぞれデータ領域Bの第2ワード目或いは第3ワード目に定義されていればよい。また、
図4の例では、第2ワード目に当該TF40のX座標が定義され、第3ワード目に当該TF40のY座標が定義される。なお、TF40の(X,Y)座標は、同じパターンレイアウト間では変動しない不変データとなる。また、C−code、K−code、及びTD情報は、共に同じパターンレイアウト間では変動しない不変データとなる。一方、第1ワード目の任意パラメータは、同じパターンレイアウト間で変動する場合がある可変データとなる。
【0040】
データ領域Cの第1ワード目に第3偏向データヘッダ(TH)、第3の対物偏向器234用のDACユニット138のセトリング時間、及びショットビームの照射時間が定義される。データ領域Cの第2ワード目に第3の対物偏向器234が偏向する2次元で示すTF40内の照射位置(ショット位置)の(X,Y)座標を示す座標データが定義される。データ領域Cの第3ワード目に当該TF40内へのショットの最初と最後のフラグとなるTC−code及びショットされる電子ビームの図形サイズ(L1,L2)が定義される。このように、データ領域Cには、第3の対物偏向器234によって偏向される座標データを含む。なお、ショット位置の(X,Y)座標、及びショットされる電子ビームの図形サイズ(L1,L2)は、同じパターンレイアウト間では変動しない不変データとなる。また、TC−codeも、同じパターンレイアウト間では変動しない不変データとなる。一方、第1ワード目のセトリング時間、及び照射時間は、同じパターンレイアウト間で変動する場合がある可変データとなる。1つのTF40内には、複数の電子ビームがショットされるので、データ領域Cと同様のフォーマットで、以下、当該TF40内に照射される各ショットビーム用のデータが順に定義される。そして、当該TF40内のすべてのショット用のデータが続いた後、当該TF40用の最後に次のデータ領域Dが定義される。
【0041】
データ領域Dの第1ワード目にデータ領域A〜Cの各第1ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を示すチェックサム1(第1ワード目のチェックサム値)が第1ワード目のデータの誤り検出のための値として定義される。データ領域Dの第2ワード目にデータ領域A〜Cの各第2ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を示すチェックサム2(第2ワード目のチェックサム値)が第2ワード目のデータの誤り検出のための値として定義される。データ領域Dの第3ワード目にデータ領域A〜Cの各第3ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を示すチェックサム3(第3ワード目のチェックサム値)が第3ワード目のデータの誤り検出のための値として定義される。続いて、当該SF30内の次のTF40用のデータがデータ領域B〜Dのフォーマットで定義される。そして、当該SF30内のすべてのTF40用のデータが定義された後に、次のSF30用のデータがデータ領域A〜Dのフォーマットで定義される。同様に、各ストライプ領域20内のSF30用のデータが順に定義される。
【0042】
実施の形態1では、以上のようなフォーマットでショットデータを作成する。かかるフォーマットでは、各データ領域A〜Dが、1ワードあたり32ビット(4バイト)の3ワードで構成され、それぞれ12バイトのデータ量となる。よって、
図9に示したフォーマットに比べて各データ領域のデータ量を低減できる。また、
図9のフォーマットでショットデータを生成する場合でも、昨今のショット数の増加に伴い、SFサイズは小さくする必要がある。
図9のフォーマットのSFサイズと
図4のTFサイズとを仮に同じサイズに分割した場合、例えば、TF40あたりのショット数が3ショット以上であれば、
図9に示したフォーマットに比べて、ショットデータ全体のデータ量を低減できる。通常、1つのSFあたり数100ショットになるので、
図9のフォーマットのSFサイズより
図4のTFサイズが小さい場合でも、ショットデータ全体のデータ量を大幅に低減できる。また、実施の形態1では、ショットデータ生成時に、データ領域Dで示したチェックサム値を定義する。従来、ショットデータ生成時にはチェックサム値を定義していないが、仮に、ショットデータ生成時に定義した場合、
図9のフォーマットのSFサイズと
図4のTFサイズとが仮に同じサイズであれば、TF40内のショット数が2ショット以上であれば、
図9に示したフォーマットに比べて、ショットデータ全体のデータ量を低減できる。以上のように、ショットデータ全体のデータ量を大幅に低減できるので、生成以降のショットデータの転送時間を大幅に低減できる。
【0043】
さらに、
図4に示したフォーマットでは、データ領域A〜Cのいずれにおいても第1ワード目に可変データが集約され、第2,第3ワード目に不変データが集約される。このように、データ領域A〜Cにおいて、共に、同じパターンレイアウト同士であれば変動しない不変データが定義されるワードと、同じレイアウト同士であっても変動する場合がある可変データが定義されるワードとを区別したフォーマットでショットデータが作成される。よって、第2,第3ワード目のチェックサム値はショットデータ生成時以降、同じ値を維持することができる。よって、ショットデータ生成時以降において、同じパターンレイアウト同士であれば、ショットデータの内容をチェックできる。例えば、位置データだけを特定の領域に配置することで、照射時間等の変動があったとしても、パターン位置情報のチェックが可能となる。
図4の例では、第1ワード目に可変データが集約されているが、これに限るものではない。第2或いは第3ワード目に可変データが集約されるフォーマットであっても構わない。さらに、可変データと不変データが同じワード内に混在しなければよく、データ領域A〜Cにおいて、そのうちの1つでは、例えば、第nワード目に可変データが集約され、他のデータ領域では、第nワード以外のワード目に可変データが集約されるようにしてもよい。かかる場合には、チェックサム値を計算する際、可変データが定義されたワード同士で総和を計算し、不変データが定義されたワード同士で総和を計算すればよい。
【0044】
以上のように実施の形態1によれば、パターンの位置情報等の変動しないデータのチェックを容易にできるフォーマットのショットデータを作成できる。また、さらに、ショットデータのデータ量の低減できる。
【0045】
次に、生成されたショットデータは、メモリ等の記憶装置114に格納(記憶)される。そして、転送処理部116は、記憶装置114からショットデータを読み出し、まず、ショットデータにおけるデータ領域A〜Cの各第1ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第2ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第3ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。そして、転送処理部116は、演算されたデータ領域A〜Cの第1ワード目の総数がデータ領域Dの第1ワード目に定義されたチェックサム1の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、転送処理部116は、演算されたデータ領域A〜Cの第2ワード目の総数がデータ領域Dの第2ワード目に定義されたチェックサム2の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、演算されたデータ領域A〜Cの第3ワード目の総数がデータ領域Dの第3ワード目に定義されたチェックサム3の値と一致するかどうかをチェックする。かかる処理動作により、記憶装置114に格納されたショットデータに誤りが無いかどうかを検証できる。そして、検証の結果、誤りが無いショットデータを偏向制御回路ユニット120に転送する。このように、ショットデータ生成時にチェックサム値が定義されているので、転送前の記憶装置114へ格納されたショットデータの誤りの有無を検証できると共に、転送時のショットデータの誤りの有無を検証できる。また、上述したようにショットデータ全体のデータ量が
図9で示したフォーマットに比べ低減しているので、格納速度、及び転送速度を高速化できる。検証の結果、誤りがあれば、転送を中止し、図示しないモニタ等にその結果を出力すればよい。
【0046】
偏向制御回路ユニット120内では、入力部122が、転送されたショットデータを入力する。そして、入力部122は、入力されたショットデータにおけるデータ領域A〜Cの各第1ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第2ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第3ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。そして、入力部122は、演算されたデータ領域A〜Cの第1ワード目の総数がデータ領域Dの第1ワード目に定義されたチェックサム1の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、入力部122は、演算されたデータ領域A〜Cの第2ワード目の総数がデータ領域Dの第2ワード目に定義されたチェックサム2の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、入力部122は、演算されたデータ領域A〜Cの第3ワード目の総数がデータ領域Dの第3ワード目に定義されたチェックサム3の値と一致するかどうかをチェックする。かかる処理動作により、転送されたショットデータに誤りが無いかどうかを検証できる。そして、検証の結果、誤りが無いショットデータを記憶装置124に格納(記憶)する。以上により、転送されたショットデータの誤りの有無を検証できる。検証の結果、誤りがあれば、以降の処理を一旦中止し、図示しないモニタ等にその結果を出力すればよい。
【0047】
次に、チェックサム処理部126は、記憶装置124からショットデータを読み出し、まず、ショットデータにおけるデータ領域A〜Cの各第1ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第2ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。同様に、データ領域A〜Cの各第3ワード目のデータのワードをすべて加算した総数を演算する。そして、チェックサム処理部126は、演算されたデータ領域A〜Cの第1ワード目の総数がデータ領域Dの第1ワード目に定義されたチェックサム1の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、チェックサム処理部126は、演算されたデータ領域A〜Cの第2ワード目の総数がデータ領域Dの第2ワード目に定義されたチェックサム2の値と一致するかどうかをチェックする。同様に、チェックサム処理部126は、演算されたデータ領域A〜Cの第3ワード目の総数がデータ領域Dの第3ワード目に定義されたチェックサム3の値と一致するかどうかをチェックする。かかる処理動作により、記憶装置124に格納されたショットデータに誤りが無いかどうかを検証できる。そして、検証の結果、誤りが無いショットデータを偏向量演算部128に送信(出力)する。以上の処理により、記憶装置124へ格納されたショットデータの誤りの有無を検証できると共に、偏向量演算直前のショットデータの誤りの有無を検証できる。また、上述したようにショットデータ全体のデータ量が
図9で示したフォーマットに比べ低減しているので、格納速度、及び送信速度を高速化できる。検証の結果、誤りがあれば、転送を中止し、図示しないモニタ等にその結果を出力すればよい。
【0048】
次に、偏向量演算部128は、入力されたショットデータを用いて、第1の対物偏向器232、第2の対物偏向器230、及び第3の対物偏向器234で偏向させる偏向量をそれぞれ演算する。同様に、偏向量演算部128は、入力されたショットデータを用いて、ブランカー212で所定の照射時間になるようにするためのタイミング信号を生成する。同様に、偏向量演算部128は、入力されたショットデータを用いて、第1の成形偏向器220、及び第2の成形偏向器222で偏向させる偏向量をそれぞれ演算する。
【0049】
ブランカー212用のタイミング信号は、DACユニット130に出力される。第1の成形偏向器220用の偏向量を示すデジタル信号は、DACユニット132に出力される。第2の成形偏向器222用の偏向量を示すデジタル信号は、DACユニット134に出力される。第2の対物偏向器230用の偏向量を示すデジタル信号は、DACユニット136に出力される。第1の対物偏向器232用の偏向量を示すデジタル信号は、DACユニット137に出力される。第3の対物偏向器234用の偏向量を示すデジタル信号は、DACユニット138に出力される。そして、描画部150は、第1の対物偏向器232、第2の対物偏向器230、及び第3の対物偏向器234を用いて、それぞれ演算された偏向量で試料101上の所望の位置に照射されるように各ショット用の電子ビームを3段偏向させる。
【0050】
ここで、
図4に示したショットデータのフォーマットでは、TF40の位置データを定義するデータ領域Bにおいて、図形コード(K−code)を定義し、TF40内の各ショットの位置データやサイズを定義するデータ領域Cでは定義していない。言い換えれば、1つのTF40用のデータ内のショットビームは同じ図形種に成形される。
【0051】
図5は、実施の形態1における偏向時間の一例を説明するための概念図である。
図5(a)では、ビーム成形時の偏向にかかる時間を説明している。データ領域Bの図形コードによって、第1の成形偏向器220が偏向すべき偏向量が決定される。例えば、正方形或いは長方形といった矩形にビームを成形させる位置から直角2等辺三角形にビームを成形させる位置へとビームを移動(偏向)させるには時間t2が必要となる。一方、データ領域Cの図形サイズ(L1,L2)によって、第2の成形偏向器222が偏向すべき偏向量が決定される。例えば、同じ正方形或いは長方形といった矩形内で寸法だけを変化させるようにビームを移動(偏向)させるには時間t1が必要となる。同様に、同じ直角2等辺三角形内で寸法だけを変化させるようにビームを移動(偏向)させるには時間t1が必要となる。偏向量が大きい方が、対応するDACユニットで必要なセトリング時間が長くなる。よって、
図5(a)からも明らかなように移動(偏向)量の大きい時間t2の方が、時間t1よりも長い。このように、
図1の例では、第1の成形偏向器220で図形種を第2の成形偏向器222で図形サイズを決定している。
【0052】
図5(b)には、1つのTF40から次のTF40まで第2の対物偏向器230でビームを移動(偏向)させる時間を説明している。同じTF40内のショット位置間の移動(偏向)に図示しない時間t1’かかるとすると、1つのTF40−1から次のTF40−2までビームを移動(偏向)させるには時間t2’かかる。上述したように偏向量が大きい方が、対応するDACユニットで必要なセトリング時間が長くなる。よって、
図5(b)からも明らかなように移動(偏向)量の大きい時間t2’の方が、時間t1’よりも長い。
【0053】
ここで、ビーム成形と対物偏向について、偏向量の少ない偏向器のDACユニット同士を同程度の分解能に設定した場合、時間t1と時間t1’は同程度にできる。同様に、偏向量の大きい偏向器のDACユニット同士を同程度の分解能に設定した場合、時間t2と時間t2’は同程度にできる。
【0054】
以下、
図9で示したショットデータのフォーマットのように各ショットにそれぞれ図形コードを定義した場合と、
図4で示した実施の形態1のショットデータのフォーマットのように1つのTF40用データ内で1つの図形コードだけを定義した場合とでの偏向速度の違いについて説明する。
【0055】
図6は、各ショットにそれぞれ図形コードを定義した場合の偏向時間を説明するための概念図である。
図6(a)に示すように、1つのTF40内に三角形パターン50を描画する場合について説明する。ここでは、三角形パターン50を3つの矩形と3つの三角形のショット図形にショット分割して描画する場合を示している。また、
図6(a)では、ショット図形のショット順序について番号で示している。通常、ショットの順序は、x方向に各ショット図形を描画した後に、y方向に1段進み、同様にx方向に各ショット図形を描画することを繰り返す。よって、
図6(a)に示す各ショットにそれぞれ図形コードを定義した場合、
図6(b)に示すように、矩形、矩形、三角形、矩形、三角形、三角形の順でショット動作が進む。かかる場合、1番目の矩形から2番目の矩形に移動する時間がt1かかる。2番目の矩形から3番目の三角形に移動する時間は図形種が異なるのでt2かかる。3番目の三角形から4番目の矩形に移動する時間は図形種が異なるのでt2かかる。4番目の矩形から5番目の三角形に移動する時間は図形種が異なるのでt2かかる。5番目の三角形から6番目の三角形に移動する時間がt1かかる。よって、三角形パターン50を描画する場合、t2が3回、t1が1回の時間が必要となる。
【0056】
図7は、実施の形態1における1つのTF用データ内で1つの図形コードだけを定義した場合の偏向時間を説明するための概念図である。
図7(a)に示すように、1つのTF40内に三角形パターン50を描画する場合、
図6(a)と同様、3つの矩形と3つの三角形のショット図形にショット分割される。実施の形態1では、1つのTF40用データ内で1つの図形コードだけを定義するので、2種の図形にショット分割された場合には、TF40用データを図形種の数だけ分割する。
図7(a)の例では、図形種が矩形と三角形の2種類なので、TF40−1とTF40−2に分割して、それぞれのデータを生成する。TF40−1では、3つの三角形51がショットされる場合のデータが生成され、TF40−2では、3つの矩形53がショットされる場合のデータが生成される。かかるTF40−1とTF40−2を順に描画した場合、次のような時間がかかる。
図7(b)に示すように、TF40−1について、三角形、三角形、三角形と描画した後、TF40−2に移動して、矩形、矩形、矩形の順でショット動作が進む。かかる場合、1番目の三角形から2番目の三角形に移動する時間がt1かかる。同様に、2番目の三角形から3番目の三角形に移動する時間がt1かかる。その後、TF移動にt2’かかる。そして、4番目の矩形から5番目の矩形に移動する時間がt1かかる。同様に、5番目の矩形から6番目の矩形に移動する時間がt1かかる。t2’=t2とすると、三角形パターン50を描画する場合、t2が1回、t1が4回の時間が必要となる。よって、実施の形態1における1つのTF用データ内で1つの図形コードだけを定義した場合の方が、各ショットにそれぞれ図形コードを定義した場合よりも偏向時間を短縮できる。以上のように、
図4に示すフォーマットでショットデータを生成することで、偏向用のDACユニット(偏向アンプ)の特性を生かして、より描画スループットを向上させることができる。
【0057】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0058】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0059】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのショットデータのフォーマット、ショットデータの作成方法、荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。