(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準パターンのエッジの異なる位置の複数の計測点と、電子デバイスの回路パターンの前記複数の計測点に対応する複数の対応点との間の寸法を計測する半導体計測装置において、
所定の計測領域内に存在する前記回路パターンと前記基準パターンの間隔を計測し、前記計測領域内の複数箇所の計測値からなる第一の計測値群から、前記計測点に対する対応点の方向に応じて、第二の計測値群を選択し、前記第二の計測値群に基づいて前記基準パターンと回路パターンとの間の寸法を求める演算装置を備えたことを特徴とする半導体計測装置。
基準パターンのエッジの異なる位置の複数の計測点と、電子デバイスの回路パターンの前記複数の計測点に対応する複数の対応点との間の寸法を計測する半導体計測装置において、
所定の計測領域内に存在する前記回路パターンと前記基準パターンの間隔を計測し、前記計測領域内の複数箇所の計測値からなる第一の計測値群から、前記基準パターンの内部に位置する対応点の計測値に基づく第1の統計量と、前記基準パターンの外部に位置する対応点の計測値に基づく第2の統計量を求め、当該第1の統計量と第2の統計量の大きい方を、前記基準パターンと回路パターンとの間の寸法とする演算装置を備えたことを特徴とする半導体計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、基準パターンと撮像画像より抽出されるパターンとの比較、或いはずれの評価を行う半導体計測装置、及びコンピュータープログラムについて、説明する。
【0014】
本実施例では、基準パターンと撮像画像により抽出されるパターンとの比較、或いはずれの評価を以下のようにして実行する。まず、検査オペレータが好ましい形状の回路パターンを基準パターンとして定義する。基準パターンとしては、設計データに基づいて形成されるパターンの輪郭線を示す図形や実際に製造される回路パターンをシミュレーションによって生成した回路パターンや、製造した回路パターンの中から検査オペレータが選択したゴールデンパターン等を利用する。次にエッジ検出処理等を用いて、撮影画像から回路パターンを抽出する。次に基準パターンと回路パターンを重ね合わせる。重ね合わせは手動調整やパターンマッチングによる自動調整によって行う。
【0015】
回路パターンの形状は、半導体の製造条件や回路レイアウトによって様々な形に変形するため、それらの変形の程度を的確に捉える目的で、検査座標を含む二次元の領域に計測領域を設定し、計測領域に含まれた基準パターンと回路パターンのエッジ間の距離を所定の間隔で網羅的に計測する。次に計測領域から得た複数の計測値の平均化を行って、その結果を計測領域の測定値とする。
【0016】
しかしながら、複数の計測値の平均値を計測領域の測定値とすると、計測領域のサイズに対して著しく小さい欠陥の情報が測定値に反映されず、測定値を用いた欠陥の判定が困難になる場合がある。欠陥の発生状態を事前に正確に推測することが難しいため、計測領域は余裕のあるサイズで設定することが望ましいが、その分、部分的に発生する欠陥やパターンの変形を正確に測定することが困難となる。
【0017】
本実施例では、欠陥やパターンの変形を適正に評価するための一態様として、電子デバイスの回路パターンと基準パターンの比較によって、前記回路パターンの測定値を生成する半導体計測装置であって、所定の計測領域内に存在する前記回路パターンと前記基準パターンの間隔を計測し、前記計測領域内の複数箇所の計測値からなる第一の計測値群から、所定のサンプリング条件に基づいて、第二の計測値群を選択し、前記第二の計測値群に基づいて前記測定値を求める半導体計測装置、当該計測をコンピューターに実行させるコンピュータープログラム、及び当該コンピュータープログラムを記憶する記憶媒体を提案する。
【0018】
また、以下に説明する実施例では、前記測定値と所定の閾値を比較し、前記回路パターンの欠陥を判定する例についても説明する。
【0019】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、前記第二の計測値群の数を制限するためのデータに基づいて設定する例についても説明する。
【0020】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、前記第一の計測値群の相対比較によって、第二の計測値群の候補となる計測値の優先順位付けをするためのデータに基づいて設定する例についても説明する。
【0021】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、測定値の生成に利用する計測方向に基づいて設定する例についても説明する。
【0022】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、第一の計測値群から、回路パターンの計測値を網羅的に選択するためのデータに基づいて設定する例についても説明する。
【0023】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、回路パターンの種類を特定するためのデータに基づいて設定する例についても説明する。
【0024】
また、以下に説明する実施例では前記サンプリング条件を、前記基準パターンに対する前記回路パターンの膨張部位の計測値もしくは、前記基準パターンに対する前記回路パターンの収縮部位の計測値もしくは、前記膨張部位の計測値と前記収縮部位の計測値の大小関係に基づき計測値を特定するためのデータに基づいて設定する例についても説明する。
【0025】
また、以下に説明する実施例では、電子ビームを電子デバイス上に走査することによって得られる電子に基づいて、画像データを形成する走査電子顕微鏡を備えた半導体計測装置について説明する。
【0026】
また、以下に説明する実施例では、前記測定値や欠陥判定結果を表示する画面を有する表示装置を備えた半導体計測装置について説明する。
【0027】
また、上記表示装置に前記測定値や欠陥判定結果を表示する例を説明する。
【0028】
また、上記画面から前記記載のデータを1つ以上入力することができる表示装置について説明する。
【0029】
また、上記画面から前記記載のサンプリング条件に関わるデータを1つ以上入力する表示装置を備えた半導体計測システムについて説明する。
【0030】
更に、他にも基準パターンのエッジと、撮像画像より抽出されるパターンのエッジとの間の異なる複数の位置の測定結果に基づいて、両エッジ間の寸法測定に供する測定結果を選択、或いは新たに測定すべき位置を選択し、当該選択された測定結果、或いは新たに選択された測定位置の測定結果に基づいて、両エッジ間のずれを求める例について説明する。
【0031】
所定の計測領域内に存在する前記回路パターンと前記基準パターンの間隔を計測し、前記計測領域内の複数箇所の計測値からなる第一の計測値群から、所定のサンプリング条件に基づいて、第二の計測値群を選択し、前記第二の計測値群に基づいて前記測定値を求めることにより、計測領域のサイズに依存することなく、回路パターンの異常、欠陥を正確に反映した測定値を求めることができる。
【0032】
以下、図面を参照しながら基準パターンと撮像画像より抽出されるパターンとの比較、或いはずれの評価を行う半導体計測装置、及びコンピュータープログラムについて、説明する。
【0033】
図2は、半導体計測システムの概略構成図である。半導体計測システムは回路パターンの画像データを取得する走査型電子顕微鏡201(Scanning Electron Microscope:以下、SEM)と画像データの分析によって回路パターンを検査する制御装置220で構成されている。
【0034】
SEM201は電子デバイスが製造されたウエハ等の試料203に電子線202を照射し、試料203から放出された電子を二次電子検出器204や反射電子検出器205、206で捕捉し、A/D変換器207でデジタル信号に変換する。デジタル信号は制御装置220に入力されてメモリ208に格納され、CPU209やASICやFPGA等の画像処理ハードウェア210で目的に応じた画像処理が行われ、回路パターンが検査される。
【0035】
更に制御装置(演算装置)220は、入力手段を備えたディスプレイ211と接続され、ユーザに対して画像や検査結果等を表示するGUI(Graphical User Interface)等の機能を有する。なお、制御装置220における制御の一部又は全てを、CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。また、制御装置220は、検査に必要とされる電子デバイスの座標、検査位置決めに利用するパターンマッチング用のテンプレート、撮影条件等を含む撮像レシピを手動もしくは、電子デバイスの設計データ213を活用して作成する撮像レシピ作成装置212とネットワークまたはバス等を介して接続される。
【0036】
図8は、半導体パターンの計測工程を示すフローチャートである。まず、オペレータが撮像レシピ作成装置212を利用して検査(測定)条件を設定する(ステップ801)。検査条件とは、SEM201の撮影倍率や回路パターンの座標(以下、検査座標とする)、計測領域、検査方法(後述する検査法や、寸法の計測など)、検査に必要なパラメータ等であり、検査対象の回路パターンの撮影画像をSEM201で取得し、検査するための情報である。検査座標とは、光学シミュレーションによって求めた欠陥の発生が予測されるレチクルやウエハの座標や、外観検査装置等で欠陥の発生が認められたレチクルやウエハの座標である。このような検査座標は、光学シミュレーションを用いて欠陥の予測を行う装置214(EDAシステム)やウエハの外観検査装置215などから撮像レシピ作成装置212に供給される。計測領域は検査座標を取り囲むように設定された二次元領域の座標情報であり、検査オペレータが決定する。
【0037】
次に撮影レシピを生成する(ステップ802)。撮影レシピはSEM201を制御するためのデータであり、検査オペレータ等が設定した検査条件や、撮影画像から検査ポイントを特定するためのテンプレートが定義される。
【0038】
次にレシピに基づき、SEM201で回路パターンを撮影する(ステップ803)。次にパターンマッチングを行って、撮影画像内の検査ポイントを特定する(ステップ804)。次に後述する手法を用いた計測を行う(ステップ805)。最後に測定値を用いて回路パターンの良否を判定する(ステップ806)。良品の判定は、本発明の検査による測定値と検査オペレータが決定した所定の閾値を比較することによって行われる。
【0039】
図11に検査結果のGUI画面1100を示す。このGUI画面1100はディスプレイ211や、撮像レシピ作成装置212や、制御装置220における制御の一部又は全てが割り振られたCPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機の画面にGUIプログラムを用いて表示される。GUIプログラムは半導体計測装置のメモリに格納されており、半導体計測装置のCPUによる処理で実行される。
【0040】
半導体計測装置は検査結果に基づき、GUI画面1100の回路パターン表示ウィンドウ1101に基準パターン1102、回路パターン1103、計測領域1104を表示する。また、検査結果表示ウィンドウ1105に測定値や判定結果を表示する。
【0041】
図1および
図3を用いてより詳細な回路パターンの計測手順を説明する。
図1はその計測手順を示すフローチャートである。まず、基準パターンと回路パターンの重ね合わせを行う(ステップ101)。基準パターンは製造目標となる形状の回路パターンであり、例えば、設計データや、実際に製造される回路パターンをシミュレーションによって生成した回路パターンや、製造した回路パターンの中から検査オペレータが選択したゴールデンパターンである。基準パターンは、撮影レシピや、半導体計測装置内に設けられたメモリに格納されているものとする。基準パターンと撮影された画像に含まれる回路パターンの形状を比較するため、両者の重ね合わせを行う。
図3に基準パターン301と回路パターン302を重ね合わせた結果を示す。重ね合わせ位置は検査前段で実施したパターンマッチングの結果を利用して決定する。
【0042】
次に、計測領域303内に位置する基準パターン301と回路パターン302の距離304を計測する(ステップ102)。様々な形状変形を的確に捉えるため、ピクセル単位やサブピクセル単位の間隔で計測点305を基準パターン上(もしくは回路パターン上)に設定し、両者の間隔を網羅的に計測する。
【0043】
以上のようなパターンマッチングや測定処理等は、専用のハードウェアによって実行するようにしても良いし、汎用のコンピューターに上述、或いは後述するような処理を実行させるようにしても良い。
【0044】
なお、計測点305は所定、或いは任意の間隔で設定されており、当該計測点305から所定の方向(例えば一定方向、パターンの部位毎に割り当てられた方向、基準パターン301のエッジに対して垂直な方向等)や、計測点305に最も近い回路パターン302上の点、又は計測点305から最も近い回路パターン302上の点であって、他の計測点とその対応点間を結ぶ直線に交差しないように設定される対応点に向かって測定方向を設定する。また、測定方向は上記のものに限らず、上記とは異なる所定の条件に従って測定方向を設定するようにしても良い。測定方向の設定は上記条件等に従って自動的に設定することができる。
【0045】
なお、基準パターンと回路パターン間の距離を測定する目的の1つは、両者の形状差を求めることにあるため、変形前後の対応点間の距離を求めることが望ましく、そのためには、基準パターン301に設けられた計測点305に最も近い回路パターン302上の点を対応点として測定方向を設定することが望ましい。但し、予期し得ない回路パターンの変形やノイズの影響によって、誤った対応点を検出することのないよう、所定の制約(例えば測定方向が所定の角度範囲内に含まれるように設定)を設けて測定方向を設定することもできる。
【0046】
次に計測領域303内の複数個所の距離計測によって得られた第一の計測値群から、後述するサンプリング条件に基づき測定値の生成に用いる第二の計測値群を選択する(ステップ103)。サンプリング条件は検査パラメータとして検査オペレータが撮影レシピに登録しても良いし、計測サンプリング時に指定する検査パラメータとしても良い。
【0047】
図4を用いて種々のサンプリング条件に基づくサンプリング方法を説明する。なお、サンプリング方法も検査パラメータとして指定できるものとする。
【0048】
(1)計測値の大きさに基づくサンプリング
本サンプリングでは、サンプリング条件の検査パラメータとして、サンプリング数、計測値の優先情報、ノイズ判定閾値を用いる。
【0049】
図4(a)は第一の計測値群について、それぞれの計測値を比較し、その大小関係に基づいて第二の計測値群となる所定数の計測値を選択する手順を示したものである。
図5は計測領域501と基準パターン502と回路パターン503の一例を示したものである。回路パターン503の一部に小さな欠陥504が含まれている。計測領域501内に図示したs点から基準パターン402と回路パターン403の距離を反時計周りに計測し、その計測値をグラフ化したものが
図5(a)である。これが第一の計測値群である。
【0050】
これら第一の計測値群に存在する一部の欠陥による計測値を測定値に反映させるため、まず、
図5(a)に示したように第一の計測値群について、それぞれの計測値を比較し、
図5(b)のように第一の計測値群の計測値を大きい順に並べ替えたデータを生成する(ステップ401)。この並び替えの優先順位は、検査パラメータ(計測値の優先情報)として設定される。次に検査パラメータとして設定されたサンプリング数に基づき、第二の計測値群505を作成する(ステップ402)。
【0051】
このように、計測値の大きさの情報(所定の条件を満たす寸法値情報の1つ)を利用してサンプリングすることにより、例えば計測領域が
図5のように回路パターン全体に設定されている場合や、欠陥504のみを取り囲むように設定されている場合でも、ほぼ同一の結果を測定値として算出することができる。なお、計測値に大きなノイズが含まれるようなケースでは、例えば第一の計測値群の計測値を大きい順に並べ替えたデータの上位M(ノイズ判定閾値の検査パラメータ)個を除外して第二の計測値群の計測値を選択するといったことも可能である。
【0052】
(2)計測方向に基づくサンプリング
本サンプリングでは、サンプリング条件の検査パラメータとして、サンプリング数、計測値の優先情報、計測方向の情報を用いる。
【0053】
図4(b)は第一の計測値群について、それぞれの計測値の算出に用いた基準パターンと回路パターンの計測方向に基づき、第二の計測値群となる所定数の計測値を選択する手順を示したものである。
図6は計測領域601と基準パターン602と配線の終端の回路パターン603の一例を示したものである。配線の終端は後退欠陥が生じやすい。このため、ラインエンドの後退方向に基準パターン602と回路パターン603の距離を計測した値を測定値に反映することで、ラインエンドの後退量を正確に数値化できる。
図6の例では、ラインエンドの後退方向は縦方向なので、
図6(b)に示した、0度+/−α(任意)方向に計測された値の集団g1ではなく、90度+/−α(任意)方向に計測された値の集団g2を測定値の生成対象とする。このように、まず、第一の計測群から、計測方向毎に計測値のグループを作る(ステップ403)。以上のように、回路パターン上の対応点の位置に応じて変化する計測方向に応じて、寸法値を分類する。即ち計測値の種類(本例の場合、方向)に応じて寸法値を分類する。
【0054】
次に検査パラメータとして設定された計測方向に対応する計測値のグループを選択する(ステップ404)。次に検査パラメータとして設定されたサンプリング数に基づき、例えば計測値の大きいほうからサンプリング数分の計測値を選択し、第二の計測値群を作成する(ステップ405)。これにより、検査対象の回路パターンに生じうる欠陥の発生方向が推測可能なものである場合は、計測方向の情報を利用して計測値をサンプリングすることで、正確な欠陥の状態を測定値として算出することができる。なお、説明では計測点数の制約にサンプリング数を用いたが、検査パラメータとして設定される情報は、回路パターンの長さや面積など、計測点数の制約に利用可能な情報であればよい。
【0055】
以上のように、回路パターン上の対応点の位置に応じて変化する計測方向に応じて、寸法値を分類する。即ち計測値の種類(本例の場合、方向)に応じて寸法値を分類すれば、特定の傾向を持つずれを選択的に抽出することが可能となる。
【0056】
(3)計測点の間隔に基づくサンプリング
本サンプリングでは、サンプリング条件の検査パラメータとして、サンプリング間隔を決定するためのサンプリング数、計測値の優先情報、計測数の情報を用いる。
【0057】
図4(c)は第一の計測値群について、第一の計測値群の数と計測順番に基づき、第二の計測値群となる所定数の計測値を選択する手順を示したものである。
図7は計測領域701と基準パターン702とホールの回路パターン703の例を示したものである。ホールパターンについては全体的な形状の収縮や歪みの検査が望まれるため、ホールの全周囲の計測値を満遍なく採用して測定値を生成する。このため、まず、
図7の計測領域701に図示した計測点sから反時計周りに計測点sまでの計測点数をカウントする(ステップ406)。なお、
図7(a)(b)は計測点数sから反時計回りに計測点s点までの計測値をグラフ化したものである。
【0058】
次に検査パラメータとして設定されたサンプリング数と計測点数に基づき、計測点をグループ分けする(ステップ407)。例えば、
図7に示したホールパターンの測定値をサンプリング数5点で生成する場合、第一の計測点群の数を5分割し、グループを決定する。
図7(a)の(0)〜(4)がグループ分けされた第一の計測点群である。次にそれぞれのグループの中から、例えば最も計測値の大きい値を選択し、第二の計測値群を作成する(ステップ408)。このように計測数、計測順番の情報を利用してサンプリングを行うことで、計測領域内の計測値を満遍なく利用した測定値が生成できる。
【0059】
また
図7(b)のように(0)(2)(4)については各グループ内の最小の計測値を選択し、(1)(3)については各グループの最大の計測値を選択するといったこともできる。例えば、ホールパターンの歪みを検査したい場合は、この手順で得られた第二の計測値群の標準偏差を測定値とする。これにより、第一の計測値群に含まれた歪み評価に有効な情報を利用した測定値の生成が可能になる。
【0060】
(4)回路パターン種に基づくサンプリング
図4(d)は第一の計測値群について、計測対象の回路パターンの種類に応じて、第二の計測値群となる所定数の計測値を選択する手順を示したものである。前述したサンプリング条件(2)(3)のように、検査対象となる回路パターンの情報が既知で、回路パターンの種別が検査パラメータとして設定された場合は、例えば配線の終端であれば前述した(2)のサンプリングを実施し、ホールであれば(3)のサンプリングを実施して、それぞれの第二の計測値群を作成する(ステップ409)。これにより、回路パターンに適切な条件の測定値を生成できる。
【0061】
(5)回路パターンの収縮/膨張/全体変化の情報に基づくサンプリング
本サンプリングでは、サンプリング条件の検査パラメータとして、回路パターンの収縮/膨張/全体変化量に関する情報を用いる。回路パターンは製造条件の変化に伴って
図12のように収縮(
図12(a))、膨張(
図12(b))、変形(
図12(c))するため、これらの状態を識別できるような測定値を生成することが望まれる。このため、基準パターンと回路パターンの誤差を計測する際に、
図12(c)で示したように測定部位が基準パターンの抜き部に存在する場合と残し部に存在する場合で異なる識別情報を計測値に付加して第一の計測値群を生成する。
【0062】
次に、第二計測値群のサンプリングの際に識別情報を参照し、検査パラメータ(収縮量/膨張量/全体変化量)に応じて第二の計測値群を決定する。具体的には、
図4(e)に示したように、第一の計測値群から第二の計測値群をサンプリングする際に、前記識別情報を参照し、検査パラメータとして収縮量が指定されている場合には、残し部で測定された計測値群を第二の計測値群として選択する。また、検査パラメータとして膨張量が指定されている場合には、抜き部で測定された計測値群を第二の計測値群として選択する。また、検査パラメータとして全体変化量が指定されている場合には、
図4(f)に示したように第二の計測値群を選択する。まず、抜き部で測定された計測値群の平均値を算出する(ステップ411)。次に残し部で測定された計測値群の平均値を算出する(ステップ412)。次に抜き部と残し部の平均値を比較し(ステップ413)、大きいほうの計測値群を第二の計測値群として選択する(ステップ414)。これにより、
図12(c)のように計測領域に膨張部位と収縮部位が混在している場合でも変形が大きい部位の変化量にフォーカスした測定値が生成できる。この平均値が大きい側の部位は、当該領域の代表的な欠陥の程度と見做すことができるため、他の変動要因によらず、最も本質的な欠陥の同定が可能となる。このように、パターン内部の計測値の統計量とパターン外部の計測値の統計量の大小を比較し、大きい方を計測値とすることによって、複数の要因が混合する変形要因の中から、最も注視すべきずれを選択的に検出することが可能となる。また、統計量演算は単なる加算平均ではなく、必要に応じて重み付け平均のような他の統計量演算を適用することも可能である。
【0063】
なお、基準パターンに対する回路パターン上の対応点が、抜き部(基準パターンのエッジ外部)に属するのか、残し部(基準パターンのエッジの内部)に属するのかを判定するために、例えば
図15に例示するような基準パターン画像の各領域に属性データを付加しておき、当該基準パターンと回路パターンの重ね合わせの後、回路パターン上の対応点が位置する領域の属性データを参照することによって、測定結果にその属性データを付加するようにしても良い。
図15の例では、領域1501にはパターン内部であることを示す属性データが付加されており、領域1502には、パターン外部であることを示す属性データが付加されている。このように基準パターンデータに予め属性データを付加しておけば、容易に測定結果の分類を行うことができる。
【0064】
また、
図15に例示する基準パターンデータには、更に基準パターンの各線分に識別情報が付加されている。具体的には、凸部の属性データ領域1503と、平坦部の属性データ領域1504、1505が基準パターンデータに付加されている。このように基準パターンデータに、各線分情報とパターンの内部外部の情報を併せて持たせることによって、より詳細な分類を行うことができる。
【0065】
このように複数の属性データを重畳し、測定結果を識別可能とすることによって、その測定結果が持つ意味を正確に特定することが可能となる。例えば、ある組み合わせ(例えば凸部であってパターン内部に対応点が存在する)のずれの測定結果が所定値以上となったときに、欠陥と判定する等の判定を行うアルゴリズムを設けておけば、経験的に欠陥と判断できる対象を選択的に抽出することが可能となる。
【0066】
また、例えば平坦部の属性データ領域1504、1505に属する計測点の測定結果が、基準パターンの内部方向に向かって所定値以上であって、凸部の属性データ領域1503に属する計測点の測定結果が、パターン外部に向かって所定値以上である場合、回路パターン全体としては収縮方向にあるのにも拘らず、凸部を突出させる作用だけが顕著に働いていることになる。このような組み合わせが検出されたときに欠陥、或いは他の測定結果と識別可能な識別情報を付加するようなアルゴリズムを設けることによって、効率良く所望の測定結果を選択することが可能となる。
【0067】
なお、基準パターンの各線分に属性データを付加するのに半導体パターンの設計データ(例えばGDSデータ)を用いることができる。設計データは、例えば閉図形を形成する線分ごとに識別情報を持っているため、輪郭線との対応を検出することによって、輪郭線の線分に識別情報を付加することができる。
図19はその一例を示す図であり、設計データに基づくエッジ1901と、輪郭線1902との間で、パターンマッチングを行うことによって、両者の対応点を検出する例を示している。このように対応点を検出することによって、設計データに基づくエッジ1291が持つ識別情報(
図19では、線分情報L1〜L6)を輪郭線1902に付加する。例えば、領域1903に含まれる輪郭線の対応点には、L2という識別情報が付加され、領域1903に含まれる対応点にはL5という識別情報が付加される。なお、識別情報は線分単位の識別情報であっても良いし、Top, Right, Left, Bottomのような線分が属する位置情報のようなものであっても良い。
【0068】
最後にサンプリングによって選択された第二の計測値群から測定値を生成する(ステップ104)。なお、第二の計測値群が2つ以上の場合は平均や標準偏差などの統計演算処理によって測定値を生成するが、測定値の生成処理についてこれを限定するものではない。
【0069】
また、測定値の出力に基づいて欠陥の種類を同定するようにしても良い。例えば、
図13に例示するように、凸型パターンの変形の類型は大別すると、
図13(a)〜(d)に分類できる。特に、
図13(c)は「凸部縮小、周辺部膨張」であり、
図13(d)は「凸部膨張、周辺部縮小」と定義できる。予め欠陥の類型と測定値の対応関係をデータベース化しておき、当該データベースに基づいて欠陥を分類すると共に、上述の「変形が大きい部位の変化量にフォーカスした測定値」と併せて測定結果として記憶し、その結果を表示可能としておくことによって、出力された測定結果が持つ意味をより正確に把握することが可能となる。
【0070】
図10にサンプリング条件を設定するGUI画面1000を示す。このGUI画面1000はディスプレイ211や、撮像レシピ作成装置212や、制御装置220における制御の一部又は全てが割り振られたCPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機の画面にGUIプログラムを用いて表示される。GUIプログラムは半導体計測装置のメモリに格納されており、半導体計測装置のCPUによる処理で実行される。
【0071】
半導体計測装置は検査オペレータの指示に従ってGUI画面1000の基準パターン表示ウィンドウ1001に基準パターン1002を表示する。基準パターンの表示は検査ポイント一点でもよいし、
図9の(a)(b)(c)のような複数の検査ポイントを表示させることもできる。次に検査ポイント毎、もしくは複数の検査ポイント毎に計測領域1003と、前述したサンプリングに必要な検査パラメータ(サンプリング数、サンプリング点の選択方法)を検査パラメータ設定ウィンドウ1004に入力する。半導体計測装置は、入力された計測領域1003や検査パラメータを用いて半導体計測を行う。
【0072】
図18は、計測工程の一例を示すフローチャートである。まず、撮像レシピ作成装置212によって作成されたレシピに従って、所望の位置の画像を取得する(ステップ1801)ように、制御装置220はSEM201を制御する。次に画像から回路パターンの輪郭線を抽出し、必要に応じて輪郭線の各線分と設計データとの対応を検出することによって、輪郭線の各線分に識別情報を付加する(ステップ1802)。次に、回路パターンと基準パターン間でパターンマッチングを実行する(ステップ1803)。次に、基準パターンに予め設定された計測点に対する対応点を、回路パターン上で検出する(ステップ1804)。
【0073】
ここで各対応点が位置する領域の情報(例えばパターンの内部、或いは外部のどちらに属するか)を各対応点に付加すると共に、対応点と計測点間の距離を測定する(ステップ1805)。最後に測定結果と対応点の属性情報に基づいて、パターンの状態を判定する(ステップ1806)。この判定は例えば所望の情報の組み合わせが検出できたときに、欠陥、或いは再評価点として選択するようなアルゴリズムに基づいて判定を行う。最後にこれらの情報を登録する(ステップ1807)。
【0074】
このような工程によれば、複数の要因が複合するパターン変形であっても、適正な評価を行うことが可能となる。
【0075】
上記実施例によれば、所定の計測領域内に存在する前記回路パターンと前記基準パターンの間隔を計測する手段と、前記計測領域内の複数箇所の計測値からなる第一の計測値群から、所定のサンプリング条件に基づいて、第二の計測値群を選択する手段と、前記第二の計測値群に基づいて前記測定値を求める手段により、計測領域のサイズに依存することなく、回路パターンの異常、欠陥を正確に反映した測定値を求めることができる。
【0076】
次に、第一の計測値群に基づいて第二の計測値群を選択する他の例を説明する。
図14は、基準パターンのエッジ1401と、回路パターンのエッジ1402との間のずれの測定に基づいて、欠陥を同定する手法を説明する図である。
図14の例では、基準パターンのエッジ1401に、複数の計測点1403、1405、1408が設定されており、基準パターンのエッジ1401に対し、垂直な方向であって、回路パターンのエッジ1402上に、複数の計測点に対応する対応点1404、1406、1409が設定されている。
【0077】
図17は、測定工程を示すフローチャートである。まず、撮像レシピ作成装置212によって作成されたレシピに従って、所望の位置の画像を取得する(ステップ1701)ように、制御装置220はSEM201を制御する。次に画像から回路パターンの輪郭線を抽出し、必要に応じて輪郭線の各線分と設計データとの対応を検出することによって、輪郭線の各線分に識別情報を付加する(ステップ1702)。次に、回路パターンと基準パターン間でパターンマッチングを実行する(ステップ1703)。マッチングが行われた回路パターンと基準パターンとの間の距離を測定すべく、サンプリングを実行する(ステップ1704)。本例ではまず、
図14の丸印の計測点と対応点間の距離を測定する。
図16(a)はそのときの計測値をプロットしたグラフであり、
図14の紙面上部を始点として、下部に向かって順に測定したときの測定結果を示すものである。この複数の測定結果の内、所定の閾値1604を超える計測点が存在するか否かを判定(ステップ1705)し、存在しない場合はその旨の情報を計測情報に付加し、データ登録を行う(ステップ1708、1709)。
【0078】
一方、所定の閾値1604を超える計測結果が得られた場合には、抽出されたサンプリング点の近傍(例えば所定範囲、或いは所定のサンプリング数と間隔)について、より狭い間隔でサンプリングを実行する(ステップ1706)。例えば
図16の2倍のサンプリングレートでサンプリングを行うと、
図16(c)のような測定結果(丸、四角)が得られ、4倍のサンプリングレートでサンプリングを行うと、
図16(e)のような測定結果(丸、四角、三角)が得られる。更に、最大値を示すサンプリング点の近傍(例えば所定数のサンプリング点)の計測値の平均値が、「サンプリング点が多い場合>サンプリング点が少ない場合」となる場合(或いは「サンプリング点が多い場合の平均値が、サンプリング点が少ない場合の平均値より大きく、且つ所定値以上の乖離がある場合」)、
図14に例示するように、部分的にパターンが括れて形成されている場合があり、欠陥である可能性があるので、その旨の識別情報を付加して、データ登録を行う。
【0079】
図16(b)(d)(f)に例示するように、回路パターンに括れが存在する場合、上位n点の計測点の計測値(1601、1602、1603)を比較すると、サンプリング点が多い方がn点の加算値、平均値、或いは積分値等が増加することが判る。即ち括れが発生していると考えられる部位について、サンプリング点を増減させることによって得られる値が所定の条件を満たす場合に、その部分の欠陥の種類を同定することが可能となる。本例の場合、部分的に大きく発生するずれが局所的に発生するノイズに起因するものなのか、所定の大きさを持つ括れなのかを識別することが可能となる。
【0080】
また、このようなアルゴリズムに基づけば、最初低いサンプリングレートで計測した第一の計測値群に基づいて、高いサンプリングレートの第二の計測値群の取得領域を選択することができるため、サンプリング点の増加を抑制しつつ、必要な情報を高いサンプリングレートに基づいて得ることが可能となる。また、最初から高いサンプリングレートで測定を行い、欠陥の識別のみに上記のアルゴリズムを適用するようにしても良い。この場合であっても、複数の情報のアンド条件に基づいて、欠陥或いはパターン変形状態を判定することが可能となるため、高精度な分類を行うことが可能となる。