(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812022
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】含フッ素オルガノシロキサン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 30/08 20060101AFI20151022BHJP
C07F 7/21 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
C08F30/08
C07F7/21
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-24262(P2013-24262)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-152284(P2014-152284A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−185595(JP,A)
【文献】
特開昭63−185989(JP,A)
【文献】
特開2007−145884(JP,A)
【文献】
特開2011−241190(JP,A)
【文献】
特開2009−014977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 30/08
C07F 7/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素オルガノシロキサン。
【化1】
[式中、R
1及びR
3はそれぞれ同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
2は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基であり、Xは下記一般式
【化2】
(式中、R
4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
5は結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、R
6は水素原子又はアルキル基である。)
で表される基である。kは1又は2、mは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす。]
【請求項2】
下記一般式(2)で示される含フッ素環状シロキサンと、下記一般式(3)で示される(メタ)アクリル基含有シラノール化合物とを脱水素反応させる下記一般式(1)で示される含フッ素オルガノシロキサンの製造方法。
【化3】
[式中、R
1及びR
3はそれぞれ同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
2は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基であり、Xは下記一般式
【化4】
(式中、R
4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
5は結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、R
6は水素原子又はアルキル基である。)
で表される基である。kは1又は2、pは2〜5の整数で、かつ4≦k+p≦6を満たし、またmは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文献未載の新規なアクリル基含有の含フッ素オルガノシロキサン及びその製造方法に関するものであり、特には、紫外光(UV光)で硬化させるハードコート材の添加剤等として有用な含フッ素オルガノシロキサン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル基を含有する含フッ素オルガノシロキサンは、UV光で硬化させるハードコート材の添加剤等の用途に使用されている。
特許第4873666号公報(特許文献1)等に記載されているアクリル基含有の含フッ素オルガノシロキサンに加えて、その添加効果に優れたアクリル基含有含フッ素オルガノシロキサンが更に要望されている。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4873666号公報
【特許文献2】特許第2849043号公報
【特許文献3】特公平3−49910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、UV光で硬化させるハードコート材の添加剤等として有用な、新規な含フッ素オルガノシロキサン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特許第2849043号公報(特許文献2)に準じた方法により合成した下記一般式(2)で示される含フッ素環状シロキサンと、特公平3−49910号公報(特許文献3)の方法により合成した下記一般式(3)で示される(メタ)アクリル基含有シラノール化合物とを脱水素反応させて得られる下記一般式(1)で示される新規な含フッ素オルガノシロキサンが、UV光で硬化させるハードコート材の添加剤等として有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記の含フッ素オルガノシロキサン及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で示される含フッ素オルガノシロキサン。
【化1】
[式中、R
1及びR
3はそれぞれ同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
2は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基であり、Xは下記一般式
【化2】
(式中、R
4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
5は結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、R
6は水素原子又はアルキル基である。)
で表される基である。kは1又は2、mは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす。]
〔2〕
下記一般式(2)で示される含フッ素環状シロキサンと、下記一般式(3)で示される(メタ)アクリル基含有シラノール化合物とを脱水素反応させる下記一般式(1)で示される含フッ素オルガノシロキサンの製造方法。
【化3】
[式中、R
1及びR
3はそれぞれ同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
2は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基であり、Xは下記一般式
【化4】
(式中、R
4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
5は結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、R
6は水素原子又はアルキル基である。)
で表される基である。kは1又は2、pは2〜5の整数で、かつ4≦k+p≦6を満たし、またmは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規な含フッ素オルガノシロキサンは、UV光で硬化させるハードコート材の添加剤等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で得られた化合物の
1H−NMRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例2で得られた化合物の
1H−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の新規な含フッ素オルガノシロキサンは、下記一般式(1)で示されるものである。
【化5】
[式中、R
1及びR
3はそれぞれ同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
2は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基であり、Xは下記一般式
【化6】
(式中、R
4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基であり、R
5は結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい非置換又は置換二価炭化水素基であり、R
6は水素原子又はアルキル基である。)
で表される基である。kは1又は2、mは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす。]
【0010】
上記式(1)中、R
1,R
3及びR
4の非置換又は置換一価炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜12、特に炭素数1〜8の、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子などで置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等が例示され、中でも好ましくはメチル基である。
【0011】
また、R
6は水素原子又はアルキル基であり、R
6のアルキル基として、好ましくは炭素数1〜8、特に炭素数1〜6の、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が例示され、R
6として、好ましくは水素原子、メチル基である。
【0012】
R
2の非置換又は置換二価炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜12、特に炭素数1〜8の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのアルキレン基、フェニレン基、トリレン基などのアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)、あるいはこれらの基の結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上が結合している基、具体的には、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基等から選ばれる1種又は2種以上の構造を介在させた基、更にこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子などで置換された基等が例示され、中でも好ましくは
【化7】
である。
【0013】
R
5の非置換又は置換二価炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜12、特に炭素数1〜8の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのアルキレン基、フェニレン基、トリレン基などのアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)、あるいはこれらの基の結合途中に酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1種又は2種以上が結合している基、具体的には、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合等から選ばれる1種又は2種以上の構造を介在させた基、更にこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子などで置換された基等が例示され、中でも好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基である。
【0014】
Xとして、具体的には、下記式で表される基を例示することができる。
【化8】
【0015】
Rfは炭素数3以上の一価パーフロロアルキル基又は一価パーフロロアルキルエーテル基である。Rfの一価パーフロロアルキル基としては、炭素数3〜12のものが好ましく、具体的には、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基などが例示され、中でも好ましくはトリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基である。また、一価パーフロロアルキルエーテル基としては、下記一般式(i)、(ii)
F−(C
3F
6O)
a−(C
2F
4O)
b−(CF
2O)
c− (i)
(式中、aは0〜100の整数、bは0〜300の整数、cは0〜300の整数であり、好ましくはaは0〜50の整数、bは0〜100の整数、cは0〜100の整数である。なお、上記各セグメントの配列はブロックであってもランダムであっても構わない。)
F−(C
dF
2dO)
e−C
fF
2f− (ii)
(式中、dは2又は3、eは1〜300の整数、好ましくは1〜100の整数であり、fは1〜3の整数である。)
で示されるパーフロロアルキルエーテル基などが例示される。
【0016】
上記式(i)、(ii)で示されるパーフロロアルキルエーテル基として、具体的には、下記に示すものを例示することができる。
【化9】
(式中、a,b,c,eは上記と同じであり、b’,c’は0〜299の整数、好ましくは0〜99の整数であり、各セグメントの配列はブロックであってもランダムであっても構わない。)
【0017】
kは1又は2、mは0,1又は2、nは1〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6を満たす数である。好ましくはkは1、mは0又は1、nは2〜4の整数で、かつ4≦k+m+n≦6である。
【0018】
次に、本発明の含フッ素オルガノシロキサンを例示するが、これらは代表例であり、本発明の含フッ素オルガノシロキサンはこれらに限定されるものではない。
【化10】
【0021】
本発明の含フッ素オルガノシロキサンは、下記一般式(2)で示される含フッ素環状シロキサンと、下記一般式(3)で示される(メタ)アクリル基含有シラノール化合物との脱水素反応により合成することができる。
【化13】
(式中、R
1〜R
3、Rf、kは上記と同じである。pは2〜5の整数で、かつ4≦k+p≦6を満たす。)
【化14】
(式中、R
4〜R
6は上記と同じである。)
【0022】
この脱水素反応は、含フッ素環状シロキサン(2)に、ジエチルヒドロキシルアミン、又は白金もしくはパラジウムをカーボンに担持させたものや白金化合物、パラジウム化合物などの白金族金属系触媒を触媒量添加した後、アクリル基含有シラノール化合物(3)を添加することによってシロキサン(2)中のSi−H基とシラノール化合物(3)中のSi−OH基との間で脱水素反応が起こり、20〜40℃、好ましくは25〜35℃で2〜24時間、好ましくは4〜12時間反応させることにより、本発明の含フッ素オルガノシロキサンを合成することができる。
また、上記反応において、テトラヒドロフランやジグライム、トルエン等の溶剤を用いると、本反応を効率良く進めることができるため好ましい。
【0023】
本発明の含フッ素オルガノシロキサンは、UV光により硬化するハードコート材の添加剤等として有用である。
ここで、本発明の含フッ素オルガノシロキサンを添加し得る紫外線(UV)硬化型アクリル系ハードコート材としては、(メタ)アクリル系化合物として、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類、アクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等の多官能(メタ)アクリレート混合物等を使用することができ、これにベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の光重合開始剤を配合して用いる。
【0024】
なお、紫外線硬化型アクリル系ハードコート材としては、市販品を使用することができ、(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、EBECRYL40、(4官能アクリレート、ダイセルサイテック社製)、PETIA(3官能アクリレート、ダイセルサイテック社製)、A−TMPT(3官能アクリレート、新中村化学工業製)、A−DPH(6官能アクリレート、新中村化学工業製)、UA−306H(6官能アクリレート、協栄社化学製)、UN−952(15官能アクリレート、根上工業製)等を用いることができる。また、光重合開始剤としては、例えば、イルガキュアー184、イルガキュアー127、イルガキュアー651、ダロキュアー1173(BASF製)等を用いることができる。
【0025】
紫外線(UV)硬化型アクリル系ハードコート材への添加に関しては、ハードコート材は溶剤により希釈されている場合が多いが、ハードコート材固形分に対して本発明の含フッ素オルガノシロキサンを0.2〜5質量%添加することにより、ハードコート材表面の撥水、撥油性、滑り性等が向上し、ハードコート層表面に防汚性、耐指紋性等を付与することができる。これによって、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等が付着しても目立ちにくくなり、汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れたハードコート表面を与える。このため、本発明の含フッ素オルガノシロキサンを添加したハードコート材は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に施与される、塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用される硬化性組成物として有用である。
【0026】
このような物品としては、例えば、光磁気ディスク、CD・LD・DVD・ブルーレイディスクなどの光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッシプロジェクションディスプレイ、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示機器、特にPC、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、及びその操作も行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置;携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、リモートコントローラ、コントローラ、キーボード等、車載装置用パネルスイッチなどの入力装置;携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機などの筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石などの塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製又は透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]
温度計、ジムロートを付した100ml三口フラスコに、下記式(I)のシクロシロキサン19.6gとテトラヒドロフラン20.0gを仕込み、この混合物にジエチルヒドロキシルアミン0.013gを添加し、5分間電磁攪拌すると、水素ガスが発生した。この混合物に下記式(II)の含フッ素シラノールの50質量%トルエン溶液13.2gを25℃で滴下すると水素ガスが発生し、発熱した。33℃まで内温が上昇したが、その後、内温が低下し、25℃で4時間攪拌したところ、水素ガス発生も収まった。テトラヒドロフラン等の揮発成分を減圧留去することにより、透明な液体を32.8g得ることができた。
【化15】
【0029】
この液体を
1H−NMRにより分析したところ、
図1に示すチャートとなり、また、IR分析により、下記吸収があったことより、下記式(III)の化合物が得られたことがわかった。
1H−NMR
δ0.1〜0.2(Si−CH
3)
δ0.53(Si−CH
2)
δ1.62(CH
2−CH
2−CH
2)
δ3.50(O−CH
2−CH
2)
δ3.81(Si−CH
2−O)
δ3.94(O−CH
2−CF
2)
δ5.7〜6.4(アクリル基)
IR
νC=O : 1,729cm
-1
νCH=CH : 1,621、1,637cm
-1
【0030】
【化16】
【0031】
[実施例2]
温度計、ジムロートを付した100ml三口フラスコに、下記式(IV)のシクロシロキサン45.6gとテトラヒドロフラン45.0gを仕込み、この混合物にジエチルヒドロキシルアミン0.005gを添加し、5分間電磁攪拌すると、水素ガスが発生した。この混合物に下記式(II)の含フッ素シラノールの50質量%トルエン溶液10.6gを25℃で滴下すると水素ガスが発生した。25℃で28時間攪拌したところ、水素ガス発生も収まった。テトラヒドロフラン等の揮発成分を減圧留去することにより、透明な液体を32.8g得ることができた。
【化17】
【0032】
この液体を
1H−NMRにより分析したところ、
図2に示すチャートとなり、また、IR分析により、下記吸収があったことより、下記式(V)の化合物が得られたことがわかった。
1H−NMR
δ0.1〜0.2(Si−CH
3)
δ0.44(Si−CH
2)
δ0.68(Si−CH
2)
δ3.33(N−CH
3)
δ3.81〜3.88(Si−CH
2−O)
δ4.66(Si−H)
δ5.8〜6.4(アクリル基)
IR
νC=O : 1,729cm
-1
νCH=CH : 1,621、1,637cm
-1
νSi−H : 2,167cm
-1
【0033】
【化18】