特許第5812984号(P5812984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5812984ホワイトチョコレート含浸食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812984
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】ホワイトチョコレート含浸食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20151029BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20151029BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   A23G1/00
   A23G3/00 102
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-509385(P2012-509385)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2011056404
(87)【国際公開番号】WO2011125451
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-80307(P2010-80307)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】晴山 健史
(72)【発明者】
【氏名】黒須 充春
(72)【発明者】
【氏名】高原 光利
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−254529(JP,A)
【文献】 特開2008−237102(JP,A)
【文献】 特開平11−169079(JP,A)
【文献】 特開平05−184298(JP,A)
【文献】 特開2004−154043(JP,A)
【文献】 特開2005−192467(JP,A)
【文献】 特開2007−222103(JP,A)
【文献】 特開2009−240246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/30
A21D 2/00−17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトチョコレート生地が多孔質の食品に含浸したホワイトチョコレート含浸食品であって、ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が15重量%以上であり、かつ、ホワイトチョコレート生地の粒子のメディアン径が6μm以下であることを特徴とする、ホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項2】
ホワイトチョコレート生地の油分が35重量%以上85重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項3】
ホワイトチョコレート生地の油分が40重量%以上75重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項4】
ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が、全脂粉乳、脱脂粉乳及びチーズパウダーからなる群から選択される少なくとも1種の乳製品に由来することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項5】
多孔質の食品が焼き菓子であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項6】
ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布が単分散であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
【請求項7】
ホワイトチョコレート生地が多孔質の食品に含浸したホワイトチョコレート含浸食品の製造方法であって、
無脂乳固形分を15重量%以上含有するホワイトチョコレート生地を1次粉砕処理して1次ホワイトチョコレート生地を得る工程、
1次ホワイトチョコレート生地を湿式粉砕装置により2次粉砕処理して粒子のメディアン径が6μm以下である2次ホワイトチョコレート生地を得る工程、及び
2次ホワイトチョコレート生地を多孔質の食品に含浸させる工程を備えることを特徴とする、ホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項8】
1次又は2次ホワイトチョコレート生地の油分が35重量%以上85重量%以下であることを特徴とする、請求項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項9】
1次又は2次ホワイトチョコレート生地の油分が40重量%以上75重量%以下であることを特徴とする、請求項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項10】
1次又は2次ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が、全脂粉乳、脱脂粉乳及びチーズパウダーからなる群から選択される少なくとも1種の乳製品に由来することを特徴とする、請求項乃至のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項11】
湿式粉砕装置がビーズミルであることを特徴とする、請求項乃至10のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項12】
多孔質の食品が焼き菓子である請求項乃至11のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【請求項13】
得られる2次ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布が単分散であることを特徴とする、請求項乃至12のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトチョコレート生地が多孔質の食品に含浸した含浸食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品中に液状食材を含浸させた食品は多く知られている。例えば、焼き上げた米菓(特許文献1)、クルトン(特許文献2)、クルトンを除く含気泡食材(特許文献3)や凍結乾燥品(特許文献4)に液状食材を含浸させた含浸食品があげられる。
また、前記のような含浸食品を製造するための含浸方法としては、次のような方法が知られている。すなわち、(1)クルトンとチョコレートを混合し、減圧装置内にいれ、減圧装置内を減圧し気泡を排出した後、常圧に戻しチョコレートを含浸させる含浸方法(特許文献2)。(2)食品を液体成分と接触し減圧処理し、次いで昇圧することにより食品中に液体成分を含浸させる含浸方法(特許文献5〜6)。(3)室温での粘度が1〜7,000cpsである液体を食品に接触させた状態で、遠心力を該食品に作用させることにより、液体を該食品中に含浸させる含浸方法(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−98719号公報
【特許文献2】特開平9−308431号公報
【特許文献3】WO97/4207号公報
【特許文献4】特開2002−291415号公報
【特許文献5】特開2001−238612号公報
【特許文献6】特開2002−354988号公報
【特許文献7】特開2002−209530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは、上記(1)〜(3)の含浸方法でホワイトチョコレート生地を焼き菓子に含浸させようとしても、油分のみが含浸し、凝集した白色の乳固形分が焼き菓子の表面に止まり、均一な生地組成のまま焼き菓子の内部まで十分に含浸させることができないことを見出した。これは、ホワイトチョコレート生地は無脂乳固形分の含有割合が高いためであると考えられる。
本発明の課題は、ホワイトチョコレート生地が油分と乳固形分とに分離せずに多孔質の食品の内部まで十分に含浸したホワイトチョコレート含浸食品とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、以下に示すホワイトチョコレート含浸食品及びその製造方法を提供することができた。すなわち、
(1)ホワイトチョコレート生地が多孔質の食品に含浸したホワイトチョコレート含浸食品であって、ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が15重量%以上であり、かつ、ホワイトチョコレート生地の粒子のメディアン径が6μm以下であることを特徴とする、ホワイトチョコレート含浸食品。
(2)ホワイトチョコレート生地の油分が35重量%以上85重量%以下であることを特徴とする、(1)に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(3)ホワイトチョコレート生地の油分が40重量%以上75重量%以下であることを特徴とする、(1)に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(4)ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が、全脂粉乳、脱脂粉乳及びチーズパウダーからなる群から選択される少なくとも1種の乳製品に由来することを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(5)多孔質の食品が焼き菓子であることを特徴とする、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(6)ホワイトチョコレート生地が湿式粉砕装置で粉砕されたものであることを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(7)湿式粉砕装置がビーズミルであることを特徴とする、(6)に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(8)ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布が単分散であることを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品。
(9)ホワイトチョコレート生地が多孔質の食品に含浸したホワイトチョコレート含浸食品の製造方法であって、無脂乳固形分を15重量%以上含有するホワイトチョコレート生地を1次粉砕処理して1次ホワイトチョコレート生地を得る工程、1次ホワイトチョコレート生地を湿式粉砕装置により2次粉砕処理して粒子のメディアン径が6μm以下である2次ホワイトチョコレート生地を得る工程、及び2次ホワイトチョコレート生地を多孔質の食品に含浸させる工程を備えることを特徴とする、ホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(10)1次又は2次ホワイトチョコレート生地の油分が35重量%以上85重量%以下であることを特徴とする、(9)に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(11)1次又は2次ホワイトチョコレート生地の油分が40重量%以上75重量%以下であることを特徴とする、(9)に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(12)1次又は2次ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が、全脂粉乳、脱脂粉乳及びチーズパウダーからなる群から選択される少なくとも1種の乳製品に由来することを特徴とする、(9)乃至(11)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(13)湿式粉砕装置がビーズミルであることを特徴とする、(9)乃至(12)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(14)多孔質の食品が焼き菓子である(9)乃至(13)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
(15)得られる2次ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布が単分散であることを特徴とする、(8)乃至(13)のいずれか一項に記載のホワイトチョコレート含浸食品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、無脂乳固形分の含有割合の高いホワイトチョコレート生地が油分と乳固形分とに分離せずに、多孔質食品の内部深くまで十分に浸透した含浸食品が得られる。また、ホワイトチョコレートの風味が強すぎず、風味・食感に優れた含浸食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】1次ホワイトチョコレート生地1(白丸)と2次ホワイトチョコレート生地1(黒丸)の粒度分布をしめす。
図2】1次ホワイトチョコレート生地3(白丸)と2次ホワイトチョコレート生地3(黒丸)の粒度分布をしめす。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、多孔質の食品とは、内部に多孔質の空隙を有する食品であればよく、例えば、果実類、野菜類、魚介類、畜肉類、卵類、成型食品(各種原料を混合して成型されたもの)などの凍結乾燥品や、油で揚げたり、ペレットを熱風で膨化したり、原料をエクストルーダーによりクッキング・膨化して製造された膨化スナック等の各種膨化食品、あられ、おこし、かりんとう、ウエハーズ、クルトン、メレンゲ、ビスケット、パイ、クッキー、スポンジケーキなどの焼き菓子などが挙げられる。また、他にも、食パンやフランスパンなどのパン類、ドーナッツ、ワッフル、凍り豆腐などが挙げられる。
【0009】
本発明においてホワイトチョコレートとは、ココアバター21重量%以上、乳固形分14重量%以上、水分3重量%以下を含むチョコレートと定義する。但し、ココアバターはココアバター代用油脂も含む。
【0010】
本発明において、メディアン径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200(株式会社 島津製作所)で測定された粒度分布における積算値が50%となる粒子径をさす。モード径とは、相対粒子量が最大値となる粒子径をさす。
【0011】
また、本発明において、粘度とは、B型粘度計を用い、40℃で、ローターNo.6を用い、回転速度が4rpmの条件で測定した値である。
1次ホワイトチョコレート生地の粘度は、例えば2,000cps〜4,500cpsであり、2次ホワイトチョコレート生地の粘度は、例えば、5,000cps〜15,000cpsである。
【0012】
本発明において、ホワイトチョコレート生地の調製は、常法により行うが、例えば以下の方法により行うことができる。ホワイトチョコレート生地の原料としては、例えば、乳製品、糖分、ココアバター、乳化剤などを混合する。ここで、乳製品とは、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、チーズパウダーなどが挙げられる。無脂乳固形分とは、乳固形分から脂肪分を除いた乳固形分を指し、乳製品由来の無脂乳固形分は生地全体の15重量%以上含まれることが好ましい。ここで、糖分としては、ショ糖(砂糖、粉糖)、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、転化糖、乳糖などの単糖類及び二糖類などが挙げられる、また、糖分としては、前記以外に、スクラロース、ステビア、アスパルテート、アセスルファムK、サッカリンなどの高甘度甘味料、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、パラチノース、マンニトールなどの糖アルコール、還元水飴などが添加されてもよい。また、ココアバターに代えて、ココアバター代用油脂又はココアバターとココアバター代用油脂の混合物を用いることもある。ココアバター代用油脂としては、動物又は植物由来のテンパリング脂あるいはノンテンパリング脂が挙げられる。また、乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記成分以外にホワイトチョコレート生地に香料又は着色料が添加されてもよい。
【0013】
ここで、ホワイトチョコレート生地の油分は全配合の35重量%以上85重量%以下がよく、より好ましくは40重量%以上75重量%以下がよい。油分が35重量%未満では、粘度が高くなるため含浸が困難であり不適である。また、油分が85重量%を越える場合は、無脂乳固形分の割合が15重量%未満となり、既知の方法で油分と乳固形分が分離せずに含浸するため、本発明の課題とするところではない。また、ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分は15重量%以上である。無脂乳固形分は15重量%未満では油分と乳固形分が分離せずに含浸し、本発明の課題とするところではない。ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分の上限は特に制限されるものではないが、ホワイトチョコレート生地を液状に保つためには、一般的には65重量%以下であることが好ましい。
【0014】
次に、混合した原料をレファイナーやアトライタ型ボールミル(ボール径:5〜10mm)で微細に粉砕する。本発明ではこの粉砕処理を1次粉砕処理といい、その結果得られたホワイトチョコレート生地を1次ホワイトチョコレート生地という。1次ホワイトチョコレート生地の粒子のメディアン径は、例えば7〜20μmである。
【0015】
その後、1次ホワイトチョコレート生地を湿式粉砕装置で2次粉砕処理することにより、粒子のメディアン径が6μm以下の生地を得る。本発明では2次粉砕処理で得られたホワイトチョコレート生地を2次ホワイトチョコレート生地という。湿式粉砕装置としては、例えば、ビーズミルが挙げられる。ビーズミルにおいては、液状の1次ホワイトチョコレート生地は、粉砕室と呼ばれる容器の中に、ポンプで送り込まれる。粉砕室にはビーズが85%程度充填してある。また、ビーズの粒径は、粉砕されるものにより決定される。本発明に用いるビーズの粒子径は、例えば0.1mm〜3.0mmが挙げられるが、好ましくは、0.8mm〜2.0mmがよい。0.1mm未満では、処理した後、ビーズとホワイトチョコ生地を分離するのが困難である。また、3.0mmを越すと、ビーズが重すぎるため、生地の粉砕効率が低下する。
【0016】
粉砕室中央の回転軸を回転させることにより、充填されているビーズが運動する。粉砕室に送り込まれた1次ホワイトチョコレート生地は、ビーズと衝突することによって微細粒子化され、かつ分散される。粉砕処理物は、一度粉砕室を通過した後、連続して粉砕室を複数回通過してもよい。回転軸の回転速度は、例えば1,000〜2,800rpmが好ましい。
【0017】
ビーズの材質としては、ガラス、石英、チタニア、窒化ケイ素、アルミナ、セラミックス(ジルコニア・ジルコニア強化型アルミナ)、スチール、ステレンスなどが挙げられる。ビーズミルとしては、例えば、ターボ工業株式会社製のOBミル(商品名)や、株式会社井上製作所のマイティーミル(商品名)などが用いられる。
【0018】
湿式粉砕装置による2次粉砕処理で得られる粉砕処理物の特徴としては、粒度分布の幅が狭い、すなわち粒度分布が単分散であることが挙げられる。後述する実施例で示すように、1次ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布は多分散であり、モード径とメディアン径の差が大きいが、2次粉砕処理した2次ホワイトチョコレート生地の粒子の粒度分布は単分散であり、モード径とメディアン径の差が小さくなる。粒子径が小さくなるだけでなく、粒子同士が凝集し難くなることで、2次チョコレート生地は、多孔質の食品の内部までより含浸しやすくなる。
【0019】
また、1次又は2次チョコレート生地は、コンチェにより、コンチングされてもよい。
【0020】
本発明において、ホワイトチョコレート生地を溶融状態で多孔質の食品と接触させる際に、テンパリング処理が必要な場合には、適切な温度、例えば30〜35℃でテンパリングを行う。また、テンパリング時に高融点油脂であるBOB(1,3−ジベヘノイル−2−オレオイル−sn−グリセロール)のようなシード剤を添加してもよい。シード剤の市販品としては例えばボブスター(商品名:不二製油社製、BOB粉末50重量%と粉糖50重量%の混合物)が挙げられる。
【0021】
本発明において、多孔質の食品に2次ホワイトチョコレート生地を含浸させて含浸食品を製造する含浸方法としては、大きく2つの方法が挙げられる。すなわち、(1)圧力差を利用した含浸方法と(2)遠心力を利用した含浸方法がある。
【0022】
(圧力差を利用した含浸方法)
本発明において、圧力差を利用した含浸方法の例を示すと、(A)減圧下で多孔質の食品を前記の溶融状態のホワイトチョコレート生地に接触又は浸漬させ、常圧に戻すことにより含浸食品を製造する方法、(B)多孔質の食品を減圧処理した後、該食品をホワイトチョコレート生地に接触又は浸漬させる方法、(C)減圧下で多孔質の食品を溶融状態の前記ホワイトチョコレート生地に接触又は浸漬させた後、常圧よりも高く昇圧しホワイトチョコレート生地を含浸させる方法、(D)上記(A)の方法で製造したホワイトチョコレート生地が含浸した多孔質食品をホワイトチョコレート生地に接触又は浸漬させることなく、再度密閉系内を減圧状態とし、その後常圧に戻すことを繰り返すことにより製造する方法、が挙げられる。前記で減圧する場合には、真空ポンプで減圧し、密閉系内において到達する最低圧力を、例えば5kPa〜70kPaとする。また、常圧より高く昇圧する場合には、真空―加圧含浸タンク内をエアパージした後、続いて圧縮空気や窒素ガスなどを導入して、例えば、到達する最大圧力を200kPa〜1,000kPaとする。含浸後、エアブローアーなどで余分なホワイトチョコレート生地を表面から落とすこともできる。
【0023】
(遠心力を利用した含浸方法)
加温して液状のホワイトチョコレート生地を多孔質の食品の表面に塗布するか、多孔質の食品を液状のホワイトチョコレート生地中に浸漬する。次に、ホワイトチョコレート生地が接触した多孔質の食品を遠心分離機に収容して、通常は30〜35℃にテンパリングしながら常圧で遠心分離をおこなう。例えば、特開2002―209530に記載の方法に準じて行うが、はじめから、ホワイトチョコレート生地と多孔質の食品と接触しておいてもよいし、また、遠心分離をスタートしたのち、ホワイトチョコレート生地と多孔質の食品を接触させてもよい。食品の種類に応じて冷却下で遠心分離を行ってもよい。遠心力は特に限定されないが、大抵の場合、回転速度は、100〜4,000rpmの通常の遠心機により生じる遠心力であればよい。遠心時間は、含浸する食品及びホワイトチョコレート生地の性状、含浸程度、掛け割を考慮して設定できる。
【0024】
2次ホワイトチョコレート生地を上記の含浸方法により、多孔質の食品に含浸させたのち、15℃以下で含浸した2次ホワイトチョコレート生地を冷却固化させ、ホワイトチョコレート含浸食品を得る。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
製造例1(焼き菓子の製造)
鶏卵140重量部、砂糖100重量部、乳化剤25重量部、水85重量部をよく混合攪拌し、これに薄力粉150重量部を加えて混合し、水ダネ生地を得た。これを金属製の型に流し込み、オーブンで180℃、30分焼成後、さらに100℃で30分乾燥して、55mm×15mm×15mmの焼き菓子を得た。
【0027】
実施例1
(1次ホワイトチョコレート生地1の調製)
全脂粉乳、粉糖、ココアバター、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルを表1に示す配合で常法に従って混合し、レファイナーで粉砕し、無脂乳固形分が18重量%であり、油分が50重量%である1次ホワイトチョコレート生地1を調製した。該生地粒子のメディアン径及び粘度は、それぞれ8.1μm及び3,750cpsであった。
【0028】
【表1】
【0029】
(2次ホワイトチョコレート生地1の調製)
1次ホワイトチョコレート生地1をビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズの粒径;0.5mm)にポンプで送り、品温が62.2〜63.2℃で、回転速度が、1,000rpmの条件下で、粉砕室の中を通過させた。この操作を連続して3回繰り返し、2次ホワイトチョコレート生地1を得た。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ3.1μm及び10,000cpsであった。
【0030】
(含浸食品1の製造)
30〜35℃にテンパリングした2次ホワイトチョコレート生地1(100重量部)に、ボブスター(商品名:不二製油社製、BOB粉末50重量%と粉糖50重量%の混合物)3重量部を添加混合して、品温を30〜35℃に保持した状態で、製造例1の焼き菓子を前記BOB入り2次ホワイトチョコレート生地1に埋没させ、これを密閉容器内にいれ、10.7kPaになるまで減圧処理を施した後、直ちに常圧に戻した。その後、該ホワイトチョコレート生地から該焼き菓子を取り出し、該焼き菓子の表面に付着したホワイトチョコレート生地をブロアー(無騒音形送排風機 西村電機株式会社)により除去した後、13℃で冷却することでホワイトチョコレート生地を固化させ、ホワイトチョコレートが内部深くまで十分に含浸した含浸食品1を得た。また、含浸食品1は、ホワイトチョコレートの風味が強すぎず、風味・食感に優れた焼き菓子であった。
【0031】
実施例2
(1次ホワイトチョコレート生地2の調製)
脱脂粉乳、粉糖、ココアバター、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルを表2に示す配合で常法に従って混合し、レファイナーで粉砕し、無脂固形成分が15重量%であり、油分が54重量%である1次ホワイトチョコレート生地2を調製した。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、9.2μm及び3,900cpsであった。
【0032】
【表2】
【0033】
(2次ホワイトチョコレート生地2の調製)
1次ホワイトチョコレート生地2を実施例1と同様にビーズミルで2次粉砕処理することにより、2次ホワイトチョコレート生地2を得た。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、4.2μm及び12,000cpsであった。
【0034】
(含浸食品2の製造)
2次ホワイトチョコレート生地1の代わりに2次ホワイトチョコレート生地2を用いて、実施例1と同様の含浸方法により、製造例1の焼き菓子に含浸させたところ、ホワイトチョコレートが内部深くまで十分に含浸した含浸食品2を得ることができた。
【0035】
実施例3
(1次ホワイトチョコレート生地3の調製)
チーズパウダー、ココアバター、レシチンを表3に示す配合で常法に従って混合し、アトライタ型ボールミル(三井三池製作所製、ボール径;9.5mm)で40分粉砕処理し、無脂乳固形分が25重量%であり、油分が74重量%である1次ホワイトチョコレート生地3を調製した。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、15.5μm及び2,500cpsであった。
【0036】
【表3】
【0037】
(2次ホワイトチョコレート生地3の調製)
1次ホワイトチョコレート生地3をビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズ径;0.5mm)にポンプで送り、品温が、44.4〜49.2℃、回転速度が1,500rpmの条件で、1回通過させ、2次ホワイトチョコレート生地3を得た。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、5.2μm及び5,000cpsであった。
【0038】
(含浸食品3の製造)
2次ホワイトチョコレート生地1の代わりに2次ホワイトチョコレート生地3を用いて、実施例1と同様の含浸方法により、製造例1の焼き菓子に含浸させたところ、油分と固形分とは分離せずに、チーズペーストが内部深くまで十分に含浸した含浸食品3を得ることができた。
【0039】
比較例1(比較含浸食品1の製造)
30〜35℃にテンパリングした1次ホワイトチョコレート生地1(100重量部)にボブスター(商品名:不二製油社製、BOB粉末50重量%と粉糖50重量%の混合物)3重量部を添加混合して、30〜35℃を保持した状態で、製造例1の焼き菓子をBOB入り1次ホワイトチョコレート生地1に埋没させ、これを密閉容器内にいれ、10.7kPaになるまで減圧処理を施した後、直ちに常圧に戻した。白色固形分が焼き菓子の表面に凝集し、油分のみが含浸した比較含浸食品1を得た。従って、ホワイトチョコレートが含浸した含浸食品を得ることはできなかった。
【0040】
比較例2(比較含浸食品2の製造)
実施例2で得られた1次ホワイトチョコレート生地2を用いて比較例1と同様な含浸処理を施したが、白色固形分が焼き菓子の表面に凝集し、油分のみが含浸した比較含浸食品2を得た。従って、ホワイトチョコレートが含浸した含浸食品を得ることはできなかった。
【0041】
比較例3(比較含浸食品3の製造)
実施例3で得られた1次ホワイトチョコレート生地3を用いて比較例1と同様な含浸処理を施したが、焼き菓子の表面には固形分が凝集し、油分のみが含浸した比較含浸食品3を得た。従って、ホワイトチョコレートが含浸した含浸食品を得ることはできなかった。
【0042】
試験例1
油分の量的な変化による含浸への影響を調べるために以下の試験をした。
(油分40重量%の1次ホワイトチョコレート生地と2次ホワイトチョコレート生地の調製)
全脂粉乳、粉糖、ココアバター、レシチンを表4に示す配合で混合し、レファイナーで粉砕し、無脂乳固形分が22重量%であり、油分が40重量%である1次ホワイトチョコレート生地4(以下1次生地4と表す)を調製した。該生地のメディアン径は10.3μmであった。
更に、ビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズの粒径;2.0mm)にポンプで1次生地4を送り、品温が60〜62℃で、回転速度が、1,000rpmの条件下で、粉砕室の中を1回通過させ、2次ホワイトチョコレート生地4(以下2次生地4と表す)を得た。該生地のメディアン径は4.6μmであった。
【0043】
【表4】
【0044】
(油分40重量%以上の1次ホワイトチョコレート生地の調製)
レファイナー処理のみで得られた油分40重量%の1次生地4(100重量部)に、8、18、32、48、70、99重量部のココアバターをそれぞれ追加混合して、それぞれの油分が45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%の1次ホワイトチョコレート生地を調製した。得られた1次ホワイトチョコレート生地をそれぞれ、1次生地5、6、7、8、9、10とする。これらの1次ホワイトチョコレート生地のメディアン径は全て10.3μmであった。
【0045】
(油分40重量%以上の2次ホワイトチョコレート生地の調製)
油分40重量%でビーズの粒径が2mmのビーズミルを用いて処理して得られた2次生地4(100重量部)に、8、18、32、48、70、99重量部のココアバターをそれぞれ追加混合して、それぞれの油分が、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%の2次ホワイトチョコレート生地を調製した。得られた2次ホワイトチョコレート生地をそれぞれ、2次生地5、6、7、8、9、10とする。これらの2次ホワイトチョコレート生地のメディアン径は全て4.6μmであった。
【0046】
(油分の量的割合が、含浸に与える影響を調べる試験)
上記1次ホワイトチョコレート生地と2次ホワイトチョコレート生地を2次ホワイトチョコレート生地1の代わりに用いて、実施例1と同様の含浸方法で製造例1の焼き菓子に含浸を試みた。その結果を表5に示した。「良好」はホワイトチョコレートが内部深くまで、十分に含浸した含浸食品が得られたことを示し、「不良」は油分のみが含浸し、焼き菓子の表面に白い乳固形分が凝集し、含浸できなかったことを示す。表5から、ホワイトチョコレート生地の油分が40重量%から55重量%までではレファイナー処理後、更なるビーズミルによる2次粉砕処理をしないとホワイトチョコレート生地を含浸させることはできないが、該生地の油分が60重量%以上では無脂乳固形分が15重量%未満となり、レファイナー処理のみのでも含浸させることができた。
【0047】
【表5】
【0048】
また、1次生地4及び2次生地4を含浸させる前後で焼き菓子の重量を測定し、どれだけホワイトチョコレート生地が含浸したかを調べた。なお、含浸後の焼き菓子は、表面に付着しているホワイトチョコレート生地をティシュペーパーで拭き取った後に重量を測定した。結果を表6に示す。1次生地4は1.5gしか含浸しなかったのに対して、2次生地4は10.4g(約7倍)含浸した。
【0049】
【表6】
【0050】
実施例4
(1次ホワイトチョコレート生地11の調製)
全脂粉乳、粉糖、ココアバター、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルを表7に示す配合で常法に従って混合し、アトライタ型ボールミル(三井三池製作所製、ボール径;9.5mm)で40分粉砕処理し、無脂乳固形分が18重量%であり、油分が50重量%である1次ホワイトチョコレート生地11を調製した。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、15.5μm及び2,500cpsであった。
【0051】
【表7】
【0052】
(2次ホワイトチョコレート生地11の調製)
1次ホワイトチョコレート生地11をビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズ径;0.5mm)にポンプで送り、品温が、60.5〜62.3℃、回転速度が1,500rpmの条件で、1回通過させ、2次ホワイトチョコレート生地11を得た。該生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ、5.2μm及び5,000cpsであった。
【0053】
(含浸食品4の製造)
2次ホワイトチョコレート生地1の代わりに2次ホワイトチョコレート生地11を用いて、実施例1と同様の含浸方法により、製造例1の焼き菓子に含浸させたところ、油分と固形分とが分離せずに、ホワイトチョコレートが内部深くまで十分に含浸した含浸食品4を得ることができた。
【0054】
試験例2(粒度分布の比較)
1次ホワイトチョコレート生地と2次ホワイトチョコレート生地について、実施例1と実施例3についての各生地の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200(株式会社島津製作所)で測定した。粒度分布を図1及び図2に示した。図面の縦軸は、各粒子径の体積分布が全体の体積に占める割合を示す相対粒子量を%で示し、横軸は粒子径をμmで示した。図1では、1次ホワイトチョコレート生地1では3μmと14μm付近の2つのピークが見られるのに対し、ビーズミルで3回通して調製された2次ホワイトチョコレート生地1では3μm付近の1つの鋭いピークを示す単分散となった。なお、1次ホワイトチョコレート生地1のメディアン径とモード径はそれぞれ、8.1μmと14.0μmであるのに対し、2次ホワイトチョコレート生地1のメディアン径とモード径はそれぞれ、3.1μmと3.3μmである。また、図2では、1次ホワイトチョコレート生地3においては20μmのピークと3μm及び9μm付近に肩が認められるが、2次ホワイトチョコレート生地3においては5.5μm付近の1つの鋭いピークを示す単分散となった。なお、1次ホワイトチョコレート生地3のメディアン径とモード径はそれぞれ、15.5μmと21.2μmであるのに対し、2次ホワイトチョコレート生地3のメディアン径とモード径はそれぞれ、5.2μmと6.1μmである。
図1
図2