特許第5814838号(P5814838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5814838
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】画像生成装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 15/08 20110101AFI20151029BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20151029BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   G06T15/08
   A61B5/00 G
   A61B6/03 360G
   A61B6/03 360M
   A61B5/00 D
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-56977(P2012-56977)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-191030(P2013-191030A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】桝本 潤
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−212219(JP,A)
【文献】 特開2008−086658(JP,A)
【文献】 特開2004−283373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00−15/87
A61B 5/00
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、
前記特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するオパシティーカーブ設定部とを備えたことを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記オパシティーカーブ設定部が、前記少なくとも一部の画素の各々に対して、当該画素の近傍領域内の画素値の代表値から前記全体領域の画素値の代表値を減算した減算値に基づいてオパシティーカーブのシフト量を求め、該求められたシフト量だけ前記ベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するものであることを特徴とする請求項1記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記オパシティーカーブ設定部が、
前記全体領域内の画素を所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値と前記全体領域の画素値の代表値との差分に基づいてオパシティーカーブのシフト量を求め、該求められたシフト量だけ前記ベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、
前記全体領域内の前記サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々に対して、該画素におけるシフト量の推定値を当該画素の近傍に位置する2つ以上の前記サンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求め、該求められた推定値だけ前記ベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブを、前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像生成装置
【請求項4】
前記近傍領域内の画素値の代表値が、前記近傍領域内の画素値の最頻値、中央値または平均値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記近傍領域内の画素値の代表値が、前記近傍領域内の画素値の全体のうち、前記近傍領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の平均値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記近傍領域内の画素値の代表値が、前記近傍領域内の画素値の全体のうち、前記近傍領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の最頻値または中央値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記画像生成部が、前記3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成するものであり、
前記特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップを設定するカラーマップ設定部を更に備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の画像生成装置
【請求項8】
3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、
前記特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップとして設定するカラーマップ設定部とを備えたことを特徴とする画像生成装置。
【請求項9】
前記所定の対象物が、血管であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の画像生成装置。
【請求項10】
3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する方法において、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定し、
前記特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定することを特徴とする画像生成方法。
【請求項11】
3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する方法であって、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定し、
前記特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップとして設定することを特徴とする画像生成方法。
【請求項12】
コンピュータを、
3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、
前記特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するオパシティーカーブ設定部
として機能させるための画像生成プログラム。
【請求項13】
コンピュータを、
3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、
前記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、
前記特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、前記特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、該近傍領域内の画素値の代表値と前記全体領域の画素値の代表値との関係に基づいて、前記設定されたベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップを前記ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップとして設定するカラーマップ設定部として機能させるための画像生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元画像において、ボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体の3次元的な構造等の把握を容易にするため、CT装置、MRI装置、超音波診断装置等により取得された被写体の3次元画像データを、コンピュータグラフィックスの技術等を用いて2次元平面上に立体的に可視化した擬似3次元画像を生成・表示する処理が行われている。このような擬似3次元画像を生成する方法としては、3次元画像を構成する各画素値(ボクセル値)に対して不透明度およびR、G、Bの色情報を設定し、観察する側から投影面の各画素へのレイキャスティングを行うことにより可視化するボリュームレンダリング法が知られている。
【0003】
この各画素値に対して設定される不透明度や色情報のセット(それぞれオパシティーカーブ、カラーマップと呼ぶ)は、1つの3次元画像に対して1つの組み合わせを与えるものが一般的である。しかし、この場合、同一信号値を持つ異なる組織を区別して表示することができないという問題が生じる。これに対し、非特許文献1には、ボリュームレンダリングにより1枚の画像で複数のオブジェクト(たとえば、骨、血管、心臓、肝臓等)を表示する画像を生成する際に、それぞれのオブジェクト範囲に異なったカラーマップおよび/またはオパシティーカーブを適用することにより、同一信号値を持つ異なった組織を違う色やオパシティで表現することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−212219号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】今井 裕著、「なるほど!!医用3次元画像―考え方と処理法の虎の巻」、秀潤社出版、2003年10月発行、第105頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、たとえば血管のCT撮影においては、造影剤という特殊な液を血管に注入して撮影を行うことにより、3次元画像において血管の画素値が他の臓器と異なった画素値になるようにして、より可視化し、かつ、その領域を抽出しやすくする方法が用いられる場合がある。しかし、この場合、撮影タイミングや造影剤の量等により、同じ血管領域でも場所によって画素値に変動が生じてしまうため、1枚の画像で広い範囲の血管領域を表示した画像を生成する場合に、血管という1つのオブジェクト組織であってもそれに対して1つのカラーマップおよび/またはオパシティーカーブを適用するだけでは、血管全体の3次元的な形態を正確に表示できないという問題がある。
【0007】
この画素値の変動による問題は、パーシャルボリューム効果により起こることもある。特に数ピクセルの直径で表される細い血管では、実際には高い画素値を持つべきものが、画像化する際に周りの画素値の影響を受けて、実際よりも低い値として画像化されることがある。これにより、たとえば図6に示すような、太い血管の画素値分布に合せて設定された1つのカラーマップおよびオパシティーカーブを適用して生成された画像では、太い血管部分はきれいに見えるが、細い血管部分は消えて見えず、図7に示すような、前記カラーマップおよびオパシティーカーブをそれぞれ細い血管の画素値分布に合せて平衡移動させてなる1つのカラーマップおよびオパシティーカーブを適用して生成された画像では、細い血管部分が見えるようになったが、(白線で囲まれた領域を参照)、太い血管部分は過剰に膨張して見えることとなる。
【0008】
なお、特許文献1には、1枚の画像毎に動的にカラーマップおよび/またはオパシティーカーブを補正する方法が提案されているが、この方法は、個々の画像による描写範囲がその範囲内における画素値の変動を無視できる程度に小さいことを前提に、その1枚の画像の生成に用いる1つのオパシティーカーブをどのように決定するかに関するものであり、より広い範囲のオブジェクト領域を表示する画像を生成する場合における上記問題を解決するものではない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、ボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する際に、所定の対象物の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる画像生成装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像生成装置は、3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いてベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するオパシティーカーブ設定部とを備えたことを特徴とするものである(第1の画像生成装置)。
【0011】
オパシティーカーブ設定部は、少なくとも一部の画素の各々に対して、当該画素の近傍領域内の画素値の代表値から全体領域の画素値の代表値を減算した減算値に基づいてオパシティーカーブのシフト量を求め、求められたシフト量だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するものであってもよい。
【0012】
ここで、「画素値方向」というのは、オパシティーカーブが一方の軸(たとえば、横軸)に画素値、他方の軸(たとえば、縦軸)に不透明度という座標系の中に設定されるものである場合に、画素値を表す軸方向を意味する。
【0013】
なお、上記減算値に基づいてシフト量を求めるに当たっては、減算値の正負の符号と同じ符号を有する値をシフト量として求める。このとき、そのシフト量の絶対値は、減算値の絶対値と同じでもよいし、それに対して1以外の所定の係数をかけて得られたものであってもよい。これにより、「シフト量だけシフトさせる」というのは、シフト量がプラスである場合には画素値を表す軸のプラス方向に、マイナスである場合には画素値を表す軸のマイナス方向にシフトさせることを意味する。
【0014】
上記本発明の画像生成装置において、オパシティーカーブ設定部は、全体領域内の画素を所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、取得された代表値と全体領域の画素値の代表値との差分に基づいてオパシティーカーブのシフト量を求め、求められたシフト量だけ前記ベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、全体領域内のサンプリングされた一部の画素以外の画素の各々に対して、該画素におけるシフト量の推定値を当該画素の近傍に位置する2つ以上のサンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求め、該求められた推定値だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブを、ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するものであってもよい。
【0015】
また、近傍領域内の画素値の代表値は、近傍領域内の画素値の最頻値、中央値または平均値であってもよいし、近傍領域内の画素値の全体のうち、近傍領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の平均値であってもよいし、近傍領域内の画素値の全体のうち、近傍領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の最頻値または中央値であってもよい。
【0016】
このとき、全体領域の画素値の代表値は、近傍領域内の画素値の代表値と同じ種類の値であってもよいし、異なる種類の値であってもよい。たとえば、近傍領域内の画素値の代表値が近傍領域内の画素値の平均値である場合に、全体領域の画素値の代表値は全体領域内の画素値の平均値であってもよいし、全体領域内の画素値の最頻値であってもよい。
【0017】
また、上記本発明の画像生成装置において、画像生成部は、3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成するものであり、特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、算出された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップを設定するカラーマップ設定部を更に備えたものであってもよい。
【0018】
本発明の画像生成装置は、3次元画像において、画素値と表示色との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する画像生成部と、3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する領域特定部と、特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、該算出された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップとして設定するカラーマップ設定部とを備えたことを特徴とするものである。(第2の画像生成装置)。
【0019】
上記第1および第2の画像生成装置において、所定の対象物が、血管であってもよい。
【0020】
本発明の第1および第2の画像処理方法は、それぞれ上記第1および第2の画像生成装置の各部が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータにより実行する方法である。
【0021】
本発明の第1および第2の画像処理プログラムは、それぞれ上記第1および第2の画像表示装置の各部が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムは、CD−ROM,DVDなどの記録メディアに記録され、またはサーバコンピュータに付属するストレージやネットワークストレージにダウンロード可能な状態で記録されて、ユーザに提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の画像生成装置、方法及びプログラムによれば、3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する際に、3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定し、特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いてベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するようにしたので、所定の対象物を表す領域内の全ての画素のそれぞれに対してその描写に適したオパシティーカーブを適用させることができ、所定の対象物の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる。この効果は、所定の対象物が血管である場合、さらに3次元画像が造影剤を血管に注入して撮影された画像である場合に、特に顕著となる。
【0023】
上記本発明の画像生成装置、方法及びプログラムにおいて、全体領域内の画素を所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、取得された代表値と全体領域の画素値の代表値との差分に基づいてオパシティーカーブのシフト量を求め、求められたシフト量だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、全体領域内のサンプリングされた一部の画素以外の画素の各々に対して、該画素におけるシフト量の推定値を当該画素の近傍に位置する2つ以上のサンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求め、該求められた推定値だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブを、ボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定するようにした場合には、演算処理を高速化させることができる。
【0024】
また、近傍領域内の画素値の代表値が、近傍領域内の画素値の最頻値または中央値である場合には、近傍領域内の画素値にノイズなどによる極端な値が存在してもその値が代表値に反映されにくくすることができる。
【0025】
また、近傍領域内の画素値の代表値が、近傍領域内の画素値の全体のうち、近傍領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の平均値、最頻値または中央値である場合には、近傍領域内の画素値の中から最大側または最小側に存在する極端な値が代表値に反映されにくくすることができる。
【0026】
また、上記本発明の画像生成装置、方法及びプログラムにおいて、特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を算出し、算出された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップを設定するようにした場合には、所定の対象物を表す領域内の全ての画素のそれぞれに対してその描写に適したカラーマップを適用させることができ、所定の対象物の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる。
【0027】
本発明の第2の画像生成装置、方法及びプログラムによれば、3次元画像において、画素値と不透明度との関係を定義するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する際に、記3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定し、特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、特定された全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、該画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するカラーマップとして設定するようにしたので、所定の対象物を表す領域内の全ての画素のそれぞれに対してその描写に適したカラーマップを適用させることができ、所定の対象物の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態における画像生成装置の概略ブロック図
図2】第1の実施形態における画像生成装置の動作を示すフローチャート
図3】第2の実施形態における画像生成装置の概略ブロック図
図4】第2の実施形態における画像生成装置の動作を示すフローチャート
図5】第2の実施形態における画像生成装置により生成された画像の一例を示す図
図6】従来の技術により生成された画像の一例を示す図
図7】従来の技術により生成された画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、画像生成装置1の概略構成を示すブロック図である。なお、図1のような画像生成装置1の構成は、補助記憶装置に読み込まれた画像生成プログラムをコンピュータ上で実行することにより実現される。このとき、この画像生成プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。画像処理プログラムは、コンピュータのCPUに実行させる処理として、画像取得処理と、画像生成処理と、領域特定処理と、オパシティーカーブ設定処理と、表示制御処理とを規定しており、この規定にしたがって、CPUが上記各処理を実行することにより、コンピュータは、後述の画像取得部11と、画像生成部12と、領域特定部13と、オパシティーカーブ設定部14と、表示制御部16として機能する。
【0030】
また、画像生成装置1には、ハードディスクドライブなどの記憶装置2およびディスプレイなどの表示装置3が接続されている。記憶装置2には、CT、MRI、PET、SPECT、超音波画像などの撮影装置により所定の対象物を撮影して得られた3次元の画像データ(3次元画像)が記憶されている。3次元画像は、3次元空間における画素データの集合であり、撮影装置により得られた複数枚の断層画像を積層して構成することができる。画像取得部11は、記憶装置2に記憶されている前記3次元画像を取得し、画像生成装置1に内蔵された、或いは画像生成装置1に接続されたハードディスクドライブなどの記憶装置に記憶する。
【0031】
領域特定部13は、画像取得部11により取得された3次元画像から所定の対象物を表す全体領域を特定する。ここで、所定の対象物を表す全体領域とは、所定の対象物を表す領域を全部含み、かつ、それ以外の領域は含んでいない領域をいう。以下、所定の対象物が血管であるとして説明を行う。領域特定部13は、3次元画像から血管を表す領域(以下、血管領域ともいう)を抽出し、その抽出された領域を全体領域として特定する。このとき、血管領域の抽出は、閾値法、Region Growing法や、Level Set法、その他の種々の画像処理を利用して行うことができる。
【0032】
領域特定部13は、たとえば、3次元画像内の局所領域ごとに、3×3のヘシアン(Hessian)行列の固有値を算出することにより線状構造の探索を行う。線状構造が含まれる領域では、ヘシアン行列の3つの固有値のうち1つは0に近い値となり、他の2つは相対的に大きな値となる。また、値が0に近い固有値に対応する固有ベクトルは、線状構造の主軸方向を示すものとなる。領域特定部13は、この関係を利用して、局所領域ごとに、ヘシアン行列の固有値に基づいて線状構造らしさを判定し、線状構造が識別された局所領域については、その中心点を候補点として検出する。そして、探索により検出された候補点を、所定のアルゴリズムに基づいて連結する。これにより、候補点および候補点同士を連結する血管枝(エッジ)からなる木構造が構築される。検出された複数の候補点の座標情報や、血管枝の方向を示すベクトル情報は、候補点や血管枝の識別子とともにメモリに記憶される。続いて、検出された候補点ごとに、周辺の画素値に基づき、血管経路に垂直な断面において、血管の輪郭(血管の外壁)を識別する。形状の識別は、Graph-Cutsに代表される公知のセグメンテーション手法を用いて行う。以上の処理により、管状構造である血管領域が抽出され、その抽出された血管領域の特定に必要な情報が生成され、メモリに記憶される。
【0033】
オパシティーカーブ設定部14は、ボリュームレンダリングにおいて領域特定部13により特定された血管領域内の各画素に適用するオパシティーカーブを設定する。オパシティーカーブは、画素値と不透明度との関係を定義するものであり、画素値を変数とする関数として表すことができる。具体的には、まず、血管領域に対してベースのオパシティーカーブを設定する。たとえば、3次元画像を参照して血管領域の画素値の分布およびその周辺の画素値の分布を調べ、その分布に基づいて血管領域とそれ以外の領域とを分ける境界となる画素値を求め、その画素値近傍において不透明度が「0」から「0」以外の値にまたは「1」から「1」以外の値に変化するオパシティーカーブを設定する。オパシティーカーブは、不透明度が「0」から「1」にステップ状に変化するものであってもよいし、画素値の増加又は減少に対して不透明度が所定の傾きで変化するものであってもよい。
【0034】
続いて、オパシティーカーブ設定部14は、血管領域内の画素を3次元的に所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々に対して、その画素の近傍領域(たとえば、上下左右前後1cm範囲の領域)内の画素値の平均値から血液領域の画素値の平均値を減算した減算値をオパシティーカーブのシフト量として求め、決定されたシフト量だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定する。つまり、オパシティーカーブ設定部14は、画素値を変数vとし、ベースのオパシティーカーブをOD(v)とし、決定された移動量をmとしたとき、前記サンプリングされた画素の各々に対してO(v)=OD(v−m)で表わされるオパシティーカーブを設定する。
【0035】
また、オパシティーカーブ設定部14は、血管領域内の前記サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々に対して、その画素におけるシフト量の推定値をその画素の近傍に位置する2つ以上の前記サンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求め、決定された推定値だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定する。
【0036】
画像生成部12は、3次元画像において、オパシティーカーブ設定部14が設定するオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する。表示制御部16は、画像生成部12により生成された擬似3次元画像を表示装置3に表示させる。
【0037】
図2は、画像生成装置1の動作を示すフローチャートである。図示のように、まず、画像取得部11が、記憶装置2に記憶されている3次元画像を取得する(S1)。次に、領域特定部13が、画像取得部11により取得された3次元画像から血管を表す全体領域を抽出し、その抽出された領域を全体領域として特定する(S2)。次いで、オパシティーカーブ設定部14が、血管領域に対してベースのオパシティーカーブを設定する(S3)。また、オパシティーカーブ設定部14は、血管領域内の画素を3次元的に所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々について、その画素の近傍領域内の画素値の平均値から血液領域の画素値の平均値を減算した減算値をオパシティーカーブのシフト量として求め、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、その画素におけるシフト量の推定値をその画素の近傍に位置する2つ以上の前記サンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求める(S4)。
【0038】
さらに、オパシティーカーブ設定部14が、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS3において決定されたシフト量だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS3において決定された推定値だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定する(S5)。
【0039】
その後、画像生成部12が、オパシティーカーブ設定部14が設定するオパシティーカーブを用いて3次元画像に対してボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する(S6)。そして、表示制御部16が、生成された擬似3次元画像を表示装置3に表示し(S7)、処理を終了する。
【0040】
本実施形態では、領域特定部13は3次元画像から血管を表す全体領域を特定し、オパシティーカーブ設定部14はその特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、その画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、取得された代表値を用いてベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、画像生成部12は、その設定されたオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成している。このようにすることで、血管を表す領域内の全ての画素のそれぞれに対してその描写に適したオパシティーカーブを適用させることができ、血管の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる。
【0041】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態の画像生成装置を示している。本実施形態の画像生成装置100は、図1に示す第1実施形態の投影画像生成装置10の構成に加えて、カラーマップ設定部15を備える。その他の点は、第1実施形態と同様である。
【0042】
カラーマップ設定部15は、ボリュームレンダリングにおいて領域特定部13により特定された血管領域内の各画素に適用するカラーマップを設定する。カラーマップは、画素値と表示色との関係を定義するものであり、画素値を変数とする関数として表すことができる。具体的には、まず、血管領域に対してベースのカラーマップを設定する。続いて、カラーマップ設定部15は、血管領域内の画素を3次元的に所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々に対して、その画素の近傍領域(たとえば、上下左右前後1cm範囲の領域)内の画素値の平均値から血液領域の画素値の平均値を減算した減算値をカラーマップのシフト量として求め、決定されたシフト量だけベースのカラーマップを画素値方向にシフトさせてなるカラーマップをその画素に適用するカラーマップとして設定する。つまり、カラーマップ設定部15は、画素値を変数vとし、ベースのカラーマップをClrMapD(v)とし、決定された移動量をmとしたとき、前記サンプリングされた画素の各々に対してClrMap(v)=ClrMapD(v−m)で表わされるカラーマップを設定する。
【0043】
また、カラーマップ設定部15は、血管領域内の前記サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々に対して、その画素におけるシフト量の推定値をその画素の近傍に位置する2つ以上の前記サンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求め、決定された推定値だけベースのカラーマップを画素値方向にシフトさせてなるカラーマップをその画素に適用するカラーマップとして設定する。
【0044】
このとき、カラーマップ設定部15は、オパシティーカーブ設定部14において前記シフト量および推定値が既に求められている場合には、それらの値を算出する処理を行うことなく、オパシティーカーブ設定部14により求められたシフト量および推定値を用いて血管領域内の各画素に適用するカラーマップを設定することができる。もちろん、オパシティーカーブ設定部14が、カラーマップ設定部15により求められたシフト量および推定値を用いて血管領域内の各画素に適用するオパシティーカーブを設定するようにしてもよい。
【0045】
画像生成部12は、3次元画像において、オパシティーカーブ設定部14が設定するオパシティーカーブおおびカラーマップ設定部15が設定するカラーマップを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する。図5に、本実施形態の画像生成装置100により生成された擬似3次元画像の一例を示す。図5では、同じ3次元画像に対して従来の技術によりボリュームレンダリングを行うことにより生成された図6および図7の画像に比べて、血管全体の3次元的な形態がより正確に描写されている。
【0046】
図4は、画像生成装置100の動作を示すフローチャートである。図示のように、まず、画像取得部11が、記憶装置2に記憶されている3次元画像を取得する(S11)。次に、領域特定部13が、画像取得部11により取得された3次元画像から血管を表す全体領域を抽出し、その抽出された領域を全体領域として特定する(S12)。次いで、オパシティーカーブ設定部14が、血管領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、カラーマップ設定部15が、血管領域に対してベースのカラーマップを設定する(S13)。
【0047】
また、オパシティーカーブ設定部14またはカラーマップ設定部15が、血管領域内の画素を3次元的に所定の間隔でサンプリングした一部の画素の各々について、その画素の近傍領域内の画素値の平均値から血液領域の画素値の平均値を減算した減算値をシフト量として求め、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、その画素におけるシフト量の推定値をその画素の近傍に位置する2つ以上の前記サンプリングされた画素のそれぞれにおけるシフト量を用いて補間により求める(S14)。
【0048】
次いで、オパシティーカーブ設定部14が、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS13において決定されたシフト量だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS13において決定された推定値だけベースのオパシティーカーブを画素値方向にシフトさせてなるオパシティーカーブをその画素に適用するオパシティーカーブとして設定する。また、カラーマップ設定部15が、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS13において決定されたシフト量だけベースのカラーマップを画素値方向にシフトさせてなるカラーマップをその画素に適用するカラーマップとして設定し、サンプリングされた一部の画素以外の画素の各々について、ステップS13において決定された推定値だけベースのカラーマップを画素値方向にシフトさせてなるカラーマップをその画素に適用するカラーマップとして設定する(S15)。
【0049】
その後、画像生成部12が、オパシティーカーブ設定部14が設定するオパシティーカーブおよびカラーマップ設定部15が設定するカラーマップを用いて3次元画像に対してボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成する(S16)。そして、表示制御部16が、生成された擬似3次元画像を表示装置3に表示し(S17)、処理を終了する。
【0050】
本実施形態では、領域特定部13は3次元画像から血管を表す全体領域を特定し、オパシティーカーブ設定部14はその特定された全体領域に対してベースのオパシティーカーブを設定し、全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、その画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、取得された代表値を用いてベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、カラーマップ設定部15はその特定された全体領域に対してベースのカラーマップを設定し、全体領域内の少なくとも一部の画素の各々に対して、その画素の近傍領域内の画素値の代表値を取得し、取得された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該画素に適用するオパシティーカーブとして設定し、画像生成部12は、それらの設定されたオパシティーカーブおよびオパシティーカーブを用いてボリュームレンダリングを行うことにより擬似3次元画像を生成している。このようにすることで、血管を表す領域内の全ての画素のそれぞれに対してその描写に適したオパシティーカーブおよびオパシティーカーブを適用させることができ、血管の3次元的な形態をより正確に描写した画像を生成できる。
【0051】
なお、本実施形態では、血管領域内の各画素に適用するオパシティーカーブおよびカラーマップを両方をそれぞれベースのオパシティーカーブまたはベースのカラーマップを変形して求めるようにした場合について説明したが、たとえば、オパシティーカーブについてはベースのオパシティーカーブをそのまま用いるようにし、カラーマップについてのみベースのカラーマップを変形して求めたものを用いるようにしてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、血管領域内の画素を3次元的に所定の間隔でサンプリングした一部の画素についてのみシフト量を算出し、それ以外の画素の各々についてはシフト量の推定値を補間により求めるようにした場合について説明したが、血管領域内の全ての画素の各々に対して、その画素の近傍領域内の画素値の代表値から血液領域の画素値の代表値を減算した減算値に基づいてシフト量を求め、その決定されたシフト量を用いてその画素に適用するオパシティーカーブおよび/またはカラーマップを設定するようにしてもよい。
【0053】
また、上記各実施形態では、画素毎にシフト量または推定値を求めるようにした場合について説明したが、2以上の画素からなる小領域毎にシフト量または推定値を求め、該求められたシフト量または推定値に基づいて求めたオパシティーカーブおよび/またはカラーマップをその小領域内の全画素に対して適用するようにしてもよい。つまり、オパシティーカーブ設定部14は、領域特定部13により特定された全体領域を構成する所定大きさの部分領域の各々に対して、該部分領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いてベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブをボリュームレンダリングにおいて当該部分領域に適用するオパシティーカーブとして設定するものであってもよいし、領域特定部13により特定された全体領域を構成する所定大きさの部分領域の各々に対して、該部分領域を含む近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いて前記設定されたベースのオパシティーカーブに変更を加えてなるオパシティーカーブを前記ボリュームレンダリングにおいて当該部分領域に適用するオパシティーカーブとして設定するものであってもよい。
【0054】
同様に、カラーマップ設定部15は、領域特定部13により特定された全体領域を構成する所定大きさの部分領域の各々に対して、該部分領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いてベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップをボリュームレンダリングにおいて当該部分領域に適用するカラーマップとして設定するものであってもよいし、領域特定部13により特定された全体領域を構成する所定大きさの部分領域の各々に対して、該部分領域を含む近傍領域内の画素値の代表値を取得し、該取得された代表値を用いて前記設定されたベースのカラーマップに変更を加えてなるカラーマップを前記ボリュームレンダリングにおいて当該部分領域に適用するカラーマップとして設定するものであってもよい。
【0055】
また、上記各実施形態では、所定の対象物が血管である場合について説明したが、所定の対象物は、腸、気管支等の管腔状構造を有する構造物であってもよいし、心臓、肝臓などの種々の臓器であってもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、近傍領域の画素値の代表値と全体領域の画素値の代表値がいずれも平均値である場合について説明したが、近傍領域の画素値の代表値および全体領域の画素値の代表値はそれぞれ、その領域内の画素値の最頻値または中央値であってもよいし、その領域内の画素値の全体のうち、その領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の平均値であってもよいし、その領域内の画素値の全体のうち、その領域内の画素値の最頻値または中央値から所定の画素値幅の範囲内に存在する画素値の最頻値または中央値であってもよい。このとき、全体領域の画素値の代表値は、近傍領域内の画素値の代表値と同じ種類の値であってもよいし、異なる種類の値であってもよい。
【0057】
また、ボリュームレンダリングによる画像生成の際に、3次元画像全体のうち所定の対象物を表す領域のみを可視化対象領域とする場合には、領域特定手段13により特定された所定の対象物を表す領域に対して1ボクセル程度Dilation処理を行い、その拡張処理後の領域を用いてボリュームレンダリングを行うようにした場合には、ボリュームレンダリングで所定の対象物の表面も描写することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像生成装置
3 の表示装置
2 記憶装置
11 画像取得部
12 画像生成部
13 領域特定部
14 オパシティーカーブ設定部
15 カラーマップ設定部
16 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7