特許第5814843号(P5814843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5814843
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】フレキシブル有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20151029BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   H01L31/04 166
   H01L31/04 120
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-69122(P2012-69122)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-65814(P2013-65814A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-191689(P2011-191689)
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】東 耕平
(72)【発明者】
【氏名】前原 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】塚原 次郎
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−082421(JP,A)
【文献】 特開2009−076668(JP,A)
【文献】 特開2011−171214(JP,A)
【文献】 特開2010−034158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機無機積層バリア層、プラスチック支持体、透明電極層、有機の活性層、金属電極層、および上部封止部材で構成され、かつ、強酸性ポリマーを含有する有機電子デバイスにおいて、
前記プラスチック支持体、前記透明電極層、前記有機の活性層および前記金属電極層がこの順に配置されており、
前記透明電極層がストライプ状に配置された複数の導電性ラインからなる導電ストライプと透明導電材料の組み合わせからなるものであり、
前記強酸性ポリマーがポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸複合体であり、前記強酸性ポリマーが前記透明導電材料として前記透明電極層中に設置されており、
前記金属電極層に隣接して、該金属電極層の前記プラスチック支持体側にn型酸化物半導体層が設置されてなることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項2】
前記n型酸化物半導体が酸化チタンまたは酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1記載の有機電子デバイス。
【請求項3】
前記導電性ラインが銀または銅からなるものであることを特徴とする請求項1または2記載の有機電子デバイス。
【請求項4】
前記有機無機積層バリア層が前記プラスチック支持体と前記透明電極層との間に設置されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項5】
前記有機無機積層バリア層の前記透明電極層と隣接する層が有機層であることを特徴とする請求項4記載の有機電子デバイス。
【請求項6】
前記有機の活性層が光電変換層であり、
有機薄膜太陽電池として機能するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
前記光電変換層がバルクヘテロ層であることを特徴とする請求項6記載の有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機無機積層型のバリア層を有する、有機薄膜太陽電池などのフレキシブル有機薄膜電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトマターとしてのフレキシブル電子デバイスが注目されている。なかでも軽量、低コスト化が期待できるフレキシブル有機電子デバイス、特に有機薄膜太陽電池、フレキシブル有機ELデバイス(有機エレクトロルミネッセンスデバイス、有機電界発光デバイスとも言う)への期待が高まっている。
フレキシブル有機電子デバイスの構成としては、少なくとも一方が透明な2つの異種電極間に、電子伝導性および/またはホール伝導性の有機薄膜を配置してなるものが一般的である。このようなフレキシブル有機電子デバイスは、シリコン等を用いてなる無機デバイスに比べて製造が容易であり、低コストに製造しうるという利点があり、実用化が望まれている。
有機電子デバイスは、一般に空気中の水蒸気や酸素により劣化する。フレキシブル有機電子デバイスを実現するには、デバイスを空気中の水蒸気や酸素から保護するガスバリア性の基板とガスバリア性の封止手段が必要となる。一般にプラスチックフイルムはガスバリア性が低く、フレキシブル有機電子デバイスの基板には適さない。
【0003】
特許文献1には、有機層と無機層を積層したガスバリア層(以下有機無機積層バリア層と表記する)を設置したプラスチックフイルムを基板とすることで、保存安定性の改善された有機薄膜太陽電池が開示されている。
一方、有機電子デバイスにはホール輸送材料として、あるいは導電材料として、強酸性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸複合体(以後PEDOT−PSSと表記)がしばしば用いられ、良好なデバイス特性(例えば、発光効率が高い、発電効率が高いなど)を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−87339公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機無機積層バリア層を設置したプラスチックフイルムを基板とし、ホール輸送材料もしくは導電材料として強酸性ポリマー(例えば、PEDOT−PSS)を含有するものとして両者を組み合わせた有機電子デバイスは、本来期待される良好なデバイス特性を与えないという問題点があった。
【0006】
このため、強酸性ポリマーを含有し、有機無機積層バリア層を備え、良好なデバイス特性と、保存安定性の両立した有機電子デバイスの開発が望まれていた。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、強酸性ポリマーを含有すると共に、有機無機積層バリア層を有し、良好なデバイス特性と、保存安定性の両立した有機電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意検討を行った結果、PEDOT−PSSなどの強酸性ポリマーを含有する層と負極との間にn型の酸化物半導体層を設置することによって、本発明の課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は以下に示すとおりである。
【0009】
本発明の有機電子デバイスは、少なくとも有機無機積層バリア層、プラスチック支持体、透明電極層、有機の活性層、金属電極層、および上部封止部材で構成され、かつ、強酸性ポリマーを含有する有機電子デバイスにおいて、
前記金属電極層に隣接して、該金属電極層の前記プラスチック支持体側にn型酸化物半導体層が設置されてなることを特徴とするものである。
【0010】
前記n型酸化物半導体が酸化チタンまたは酸化亜鉛であることが好ましい。
【0011】
前記強酸性ポリマーがポリスチレンスルホン酸であることが好ましい。
【0012】
あるいは、前記強酸性ポリマーがポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸複合体であることが好ましい。
【0013】
前記強酸性ポリマーが前記透明電極層中、もしくは該透明電極層に隣接して設置されていることが好ましい。
【0014】
前記透明電極層がストライプ状に配置された複数の導電性ラインからなる導電ストライプと透明導電材料の組み合わせからなるものであることが好ましい。
【0015】
前記導電性ラインが銀からなるものであることが好ましい。
【0016】
あるいは、前記導電性ラインが銅からなるものであることが好ましい。
【0017】
前記有機無機積層バリア層が前記プラスチック支持体と前記透明電極層との間に設置されていることが好ましい。
【0018】
前記有機無機積層バリア層の前記透明電極層と隣接する層が有機層であることが好ましい。
【0019】
本発明の有機電子デバイスにおいて、前記有機の活性層が光電変換層であれば、有機薄膜太陽電池として機能するものとすることができる。
【0020】
前記光電変換層はバルクヘテロ層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機電子デバイスは上記構成を有するために、デバイス特性と保存安定性が良好である。
このため、本発明の有機電子デバイスは、軽量フレキシブルな有機薄膜太陽電池や有機ELデバイスに有用である。本発明を用いた有機ELデバイスは発光効率にすぐれ、有機薄膜太陽電池は、発電効率に優れる。
【0022】
ここで、支持体として光透過性でフレキシブルな樹脂フィルムを用いることで、フレキシブルな有機電子デバイスが得られ、このようなフレキシブルな有機電子デバイスにより、軽量、且つ、フレキシブルな電子デバイスを簡易に製造しうる。
【0023】
本発明によれば、デバイス特性と保存安定性が良好な有機電子デバイス、たとえば保存安定性と発光効率の高い有機ELデバイスや、保存安定性と発電効率が高い有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の有機電子デバイスの第1の実施形態を示す概略断面図である。
図2】本発明の有機電子デバイスの第2の実施形態を示す概略断面図である。
図3】本発明の有機電子デバイスの適用される透明電極層の好ましい形態の概略断面図である。
図4】本発明の有機電子デバイスの適用される透明電極層の好ましい形態の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0026】
〔有機電子デバイス〕
本発明の有機電子デバイスは、少なくとも有機無機積層バリア層、プラスチック支持体、透明電極層、有機の活性層、金属電極層、および上部封止部材で構成され、かつ、強酸性ポリマーを含有する有機電子デバイスであって、前記金属電極層に隣接して、前記金属電極層のプラスチック支持体側にn型酸化物半導体層が設置された有機電子デバイスである。
【0027】
図1に本発明の有機電子デバイスの第1の実施形態の層構成を模式的に示す断面図を示す。第1の実施形態の有機電子デバイス1は、有機無機積層バリア層11/プラスチック支持体12/透明電極層13/有機の活性層20/n型酸化物半導体層25/金属電極層26/上部封止部材30が順次積層されてなる構成を有している。
【0028】
図2に本発明の有機電子デバイスの第2の実施形態の層構成を模式的に示す断面図を示す。第2の実施形態の有機電子デバイス2は、プラスチック支持体12/有機無機積層バリア層11/透明電極層13/有機の活性層20/n型酸化物半導体層25/金属電極層26/上部封止部材30が順次積層されてなる構成を有している。
【0029】
第1および第2の実施形態の有機電子デバイスにおいて、透明電極層13および/または有機の活性層中20には、強酸性ポリマーが含まれている。
【0030】
第1および第2の実施形態の有機電子デバイスは、その各層間やデバイスの外側に、さらに各種の機能層や別の支持体を有しても良い。機能層の例としては、後述のプラスチック支持体の項で述べるものと同様の層が好ましく用いられる。
【0031】
以下、本発明の有機電子デバイスを構成する各層について詳述する。
【0032】
〔有機無機積層バリア層〕
有機無機積層バリア層は少なくとも1層の有機領域もしくは有機層と、少なくとも1層の無機領域もしくは無機層の積層体である。
有機領域と無機領域より構成される場合、各領域が膜厚方向に連続的に変化するいわゆる傾斜材料層であってもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(20005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層と無機層が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。
【0033】
有機層もしくは有機領域、または、無機層もしくは無機領域が複数の場合、通常、有機層と無機層が交互に積層した構成であることが好ましい。
これらのうち、明確な界面を持つ有機層と無機層で構成されることが好ましい。
有機層、無機層の具体的な例や積層方法については、特開2010−87339公報に記載されている。なお、同公報における「有機ポリマー層」の用語が本発明における有機層の用語に該当する。
【0034】
有機無機積層バリア層は、有機電子デバイスの支持体上に設置してもよく、他の支持体上に設置して貼り合せても良い。有機電子デバイスの支持体上に有機無機積層バリア層を設置した場合、バリア層側の面に電子デバイスを作製してもよいし、バリア層の反対側の面に有機電子デバイスを作製しても良い。
【0035】
〔プラスチック支持体〕
プラスチック支持体としては、透明性、強度、ハンドリング性が良好で比較的安価なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
支持体として用いられるプラスチックフィルムは、後述する導電ストライプ、バスライン及び透明導電材料層等を保持できるものであれば、材質、厚み等に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
支持体に用いうるプラスチックフィルムの素材としては、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0037】
プラスチックフィルム基板は、耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下のうち、少なくともいずれかの物性を満たす耐熱性を有し、さらに、前記したように露光波長に対し高い透明性を有する素材により成形された基板であることが好ましい。
なお、プラスチックフィルムのTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定され、本発明においては、プラスチックフィルムのTg及び線膨張係数は、この方法により測定した値を用いている。
【0038】
プラスチックフィルムのTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:65℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられる(以上、括弧内において、略称などと併記した数値は、当該樹脂のTgをそれぞれ示す)。ここに記載した樹脂はいずれも本発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0039】
本発明においてプラスチックフィルムは、光に対して透明であることが求められる。より具体的には、400nm〜1000nmの波長範囲の光に対する光透過率は、通常80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
なお、光透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光透過率測定装置を用いて全光透過率及び散乱光量を測定し、全光透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。本明細書においては、光透過率は、この方法を用いた値を採用している。
【0040】
プラスチックフィルムの厚みに関して特に制限はないが、典型的には1μm〜800μmであり、好ましくは10μm〜300μmである。
プラスチックフィルムの裏面(導電ストライプを設置しない側の面)には、公知の機能性層を設けてもよい。機能性層の例としては、ガスバリア層、マット剤層、反射防止層、ハードコート層、防曇層、防汚層等が挙げられる。このほか、機能性層に関しては特開2006−289627号公報の段落番号〔0036〕〜〔0038〕に詳しく記載されている。
【0041】
(易接着層/下塗り層)
プラスチックフィルム基板は、易接着層もしくは下塗り層を有していてもよい。
易接着層はバインダーポリマーを含有することが必須であるが、必要に応じてマット剤、界面活性剤、帯電防止剤、屈折率制御のための微粒子などを含有してもよい。
易接着層に用いうるバインダーポリマーには特に制限はなく、以下に記載のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ゴム系樹脂などから適宜選択して用いることができる。
【0042】
アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。
【0043】
ポリウレタン樹脂とは主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI(Tolylene Diisocyanate)、MDI(Methyl Diphenyl Isocyanate)、HDI(Hexylene diisocyanate)、IPDI(Isophoron diisocyanate)などがあり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。さらに、本発明のイソシアネートとしてはポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用できる。
【0044】
ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリカルボン酸とポリオールの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えば、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、ポリオールとしては例えば前述のものがある。
本発明のゴム系樹脂とは合成ゴムのうちジエン系合成ゴムをいう。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレンなどがある。
【0045】
易接着層もしくは下塗り層の乾燥後の塗布膜厚は、50nm〜2μmの範囲であることが好ましい。重層構成の場合、複数層の膜厚の合計が上記範囲にあることが好ましい。
なお、支持体を仮支持体として用いる場合には、支持体表面に易剥離性処理を施すことも可能である。
【0046】
〔透明電極層〕
本発明における透明電極層は少なくとも透明導電材料を含む層である。透明電極層は、通常、有機ELデバイスにおいては陽極であり、有機薄膜太陽電池においては正極である。透明電極層13は、適用しようとする有機電子デバイスの発光スペクトルもしくは作用スペクトル範囲において透明であることを要し、通常、可視光から近赤外光の光透過性に優れることを要する。具体的には、透明導電材料により膜厚0.1μmの層を形成したとき、波長400nm〜800nm領域における形成された層の平均光透過率が50%以上であり、75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0047】
透明電極層に用いる透明導電材料は、導電性が高いことが要求され、成膜後の比抵抗が8×10−3Ω・cm以下である事が好ましい。
このような比抵抗を実現する透明導電材料としては、透明導電材料は金属酸化物(インジウム−スズ酸化物、アンチモンースズ酸化物、アルミニウムー亜鉛酸化物、ホウ素ー亜鉛酸化物、スズフッ化酸化物など)、導電性ナノ材料(例えば、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)のアクリルポリマー等への分散物、導電性ポリマー(例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジアゾール等や、これら導電骨格を複数種有するポリマー等)が挙げられる。
【0048】
これらのなかではポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。これらのポリチオフェンは導電性を得るために、通常、部分酸化されている。導電性ポリマーの導電性は部分酸化の程度(ドープ量)で調節することができ、ドープ量が多いほど導電性が高くなる。部分酸化によりポリチオフェンはカチオン性となるので、電荷を中和するための対アニオンを有する。そのようなポリチオフェンの例としては、ポリスチレンスルホン酸を対イオンとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)が挙げられる。
【0049】
PEDOT−PSSは導電性を高める目的で高沸点の有機溶媒を含有しても良い。高沸点有機溶媒の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
前記比抵抗を実現するPEDOT−PSSの商品例としては、アグファ社製、Orgacon(オルガコン)S−305やH.C.シュタルク社製 クレヴィオスPH500,PH510等が挙げられる。
【0050】
ポリスチレンスルホン酸は強酸性ポリマーである。すなわち、フレキシブル有機電子デバイスにとって特に好ましい高導電性のPEDOT−PSSは、強酸性ポリマーを含有する。PEDOT−PSSは水分散物として塗布され、100℃〜140℃の温度で脱水アニールされる。ガラス支持体上では強酸性ポリマーが拡散してデバイスに悪影響を及ぼすことは無い。
【0051】
ところが、本発明者らが検討したところ、プラスチック支持体上では、脱水アニール後にもフイルム中に微量の水分が残存するため、強酸性ポリマーもしくは強酸性ポリマーと接触した酸性の水が金属電極まで拡散し、金属電極の内側表面を腐食させることでデバイス特性が劣化することが判明した。
プラスチック支持体の有機無機積層バリア層側の面に有機電子デバイスを設置することは、前記デバイス特性の劣化に対してある程度有効だが、前記デバイス特性の劣化を完全に無くすには至らなかった。一方、金属電極層に隣接して、前記金属電極層のプラスチック支持体側にn型酸化物半導体層を設置すると、デバイス特性の劣化を大幅に改善することができることが分かった。
【0052】
透明導電材料には、所望の導電性を損なわない範囲であれば、他のポリマーが添加されてもよい。他のポリマーは塗布性を向上させる目的や膜強度を高める目的で添加される。
他のポリマーの例としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂や、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール等の親水性ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは膜強度を高めるために架橋構造を形成したものであってもよい。
【0053】
透明導電材料のうち、金属酸化物はスパッタ法もしくは蒸着法によって成膜される。導電ポリマー、導電性ナノ粒子は塗布法によって成膜される。
【0054】
透明電極層は、導電性を高めるために比抵抗が1×10−5Ω・cm以下の金属または合金を含む導電パターンを有するのが好ましい。導電パターンを構成する金属の例としては、金、白金、鉄、銅、銀、アルミニウム、及びこれら金属を含む合金等が挙げられる。より好ましい例としては、銅、銀、及びこれらを含む合金が挙げられる。金属材料自体の低コスト化の観点や耐マイグレーションの観点では銅が好ましい。
導電パターンの形状は特に制限は無く、ストライプ、メッシュ、ハニカム、菱形など、任意に設計できる。導電パターンによって規定される開口率は70%以上であり、80%以上がより好ましい。また、一定の間隔で集電のためのバスラインを有しても良い。
【0055】
導電パターンの設置方法には、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法などがあり、適宜選択される。導電パターンを印刷法やインクジェット法で形成する場合、所望の導電性を損なわない範囲で、バインダーが添加されてもよい。バインダーの例としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂や、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール等の親水性ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは膜強度を高めるために架橋構造を形成したものであってもよい。
【0056】
形成順序は、導電パターンを形成した後に透明導電材料を成膜する事が、導電パターンにより生じた段差を透明導電材料が平滑化されるため、好ましい。
【0057】
本発明の有機電子デバイスに適用される透明電極層の好ましい構成例を図3および図4に示す。図3は支持体12上に形成された透明電極層13を示す概略断面図であり、図4図3に示す透明電極層13の概略平面図である。なお、支持体12と透明電極層13とからなる膜を透明導電フィルム10と称する。
図3に示す透明電極層13は、複数の導電性ライン14aからなる導電ストライプ14とこの導電ストライプ14に直交するように設けられているバスライン16と、導電ストライプ14およびバスライン16を覆うように形成された透明導電材料層18とから構成されている。
【0058】
導電ストライプ14とバスライン16とからなる導電パターンを形成した後、それを覆うように導電ポリマー層を塗布することによって透明電極層を形成することが好ましい。
【0059】
(導電ストライプ)
導電ストライプ14は、導電性ライン(以下において、導電ストライプラインと称することがある。)14aの膜厚が50nm以上500nm以下であり、平面視による線幅が0.1mm以上1mm以下であり、そのライン14aの間隔が3mm以上30mm以下である。
導電ストライプを構成する導電性ラインの1本当たりの抵抗値としては、50Ω/cm以下であり、好ましくは20Ω/cm以下であり、より好ましくは10Ω/cm以下である。このような導電性(低抵抗であること)を実現するには、導電ストライプラインの断面積が大きいことが必要である。開口率を大きくするには、断面の形状として、フイルム平面方向の長さ(線幅)が短く膜厚方向の長さ(膜厚)が大きいことが有利である。
ところが、このような断面を有する導電ストライプを設置すると大きな段差が生じる。有機電子デバイスでは活性層(有機層)の膜厚が50〜500nmと薄いため、導電ストライプにより生じた段差が大きいと、導電ストライプライン凸部の角で短絡(故障)しやすい。
このため、導電ストライプ起因の段差を小さくし、導電ストライプライン凸部の角を鈍角化することは、開口率を高めるよりも重要な課題であり、開口率をある程度犠牲にした設計を採らざるを得ない。すなわち、断面の形状として、線幅が長く膜厚が薄い設計が選択される。線幅と膜厚の比率は20000:1〜200:1の範囲である。ここで、膜厚とは線幅の中で最も厚い部分の値を用いる。
【0060】
導電性ラインの断面の形状は、ストライプの設置方法によって、長方形、等脚台形、鈍角二等辺三角形、半円形、円弧と弦で囲まれる図形、これらを変形した図形などが可能である。このとき、長方形のようにライン凸部の角が直角である断面よりも、テーパのある等脚台形や鈍角二等辺三角形の方が、短絡が起きにくく好ましい。また、明確に角がある断面よりも、曲線やスロープによって段差を滑らかにしたような断面形状の方が、短絡が起きにくく好ましい。
導電ストライプ14の導電性ライン14aの厚みと有機の活性層の厚みとの関係は、例えば、前者が後者の5倍を越えないことが好ましく、2倍を超えないことがより好ましい。
【0061】
導電ストライプ14のライン14a同士の間隔(ピッチ)は細かい方がデバイス特性(電流電圧特性など)の上では有利である。しかしながらピッチが細かいと開口率が低下するので、妥協点が選ばれる。ピッチは金属細線の線幅に応じて、好ましい開口率を与えるように決定される。
【0062】
透明電極層は、有機電子デバイス用であるために、導電ストライプラインの膜厚と線幅の関係では開口率を犠牲にする設計を採る関係上、ピッチについては最大限の開口率が求められる。すなわち、導電ストライプラインの線幅が1mmとなっても開口率75%を確保するには3mm以上のピッチであることが求められる。
【0063】
本発明者らの検討では、少なくとも有機薄膜太陽電池用途に供するには、導電ストライプ上に塗布形成される透明導電材料層としては、比抵抗の値が4×10−3Ω・cm以下である高導電性の透明導電材料が必要である。透明導電材料の具体例については先に述べた通りである。
【0064】
(バスライン)
図3に示す透明導電フィルム10は、支持体12に、導電ストライプ14と交差するバスライン(太線導電層)16を有している。バスラインは必ずしも備えていなくてもよい。
バスライン16は、動作面全体にとって必要な導電性を確保するといった観点から、平面視による線幅1mm以上5mm以下の金属材料を含んで形成される配線である。バスラインの好ましい線幅は、1mm以上3mm以下である。
バスライン16の線幅は、必ずしも均一である必要はない。バスラインと導電ストライプは同一材料であっても、異なる材料であってもよい。バスラインは通常、導電ストライプと直交するように設置されるが、90度以外の角度で交差するものであってもよい。バスラインの厚み、断面形状、材質については、導電ストライプと同様のプリファレンスが適用される。
【0065】
バスラインの間隔(ピッチ)は導電ストライプと同様に、大面積の導電性と光透過率の妥協点としての最適条件が選ばれる。具体的には、隣り合うバスラインを接続する導電ストライプの導電性で決定される。典型的には、隣り合う2本のバスラインを接続する導電ストライプの抵抗値が、一本につき50Ω以下となる間隔が選ばれる。前記抵抗値は20Ω以下が好ましく、10Ω以下が特に好ましい。
バスラインのピッチは、好ましくは40mm以上200mm以下である。
【0066】
(バスラインの形成)
バスライン16は蒸着法で形成してもよいし、印刷法、インクジェット法などの方法で形成しても良い。導電ストライプ14とバスライン16とを同一の組成の材料を用いて同時に形成することが、コストの観点で有利である。導電ストライプ14とバスライン16とをロールで同時に作製する場合、ストライプを作製するための固定マスクと、バスラインを作製するための可動式マスクを有する設備が必要となる。
【0067】
〔有機の活性層〕
本発明において、有機の活性層とは有機電子デバイスの機能を担う有機材料の層を意味する。有機の活性層の例としては、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、発光層、光電変換層等が挙げられる。有機ELデバイスは発光層を含み、有機薄膜太陽電池は光電変換層を含む。なお、ホール輸送層と電子輸送層の積層体が発光層もしくは光電変換層を兼ねることがある。
以下、有機薄膜太陽電池を例にとり、有機の活性層の詳細について記述する。
【0068】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は透明電極層と光電変換層の間に位置し、光電変換層から透明電極層へ電子が移動するのをブロックする機能を有するホール輸送層である。電子が移動するのをブロックする機能を有する材料としては、HOMO準位が5.5eV以下で、かつ、LUMO準位が3.3eV以下である有機化合物である。
このような有機化合物の具体例としては、芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体、縮合芳香環化合物、カルバゾール誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等が挙げられる。このほか、Chem.Rev.2007年,第107巻,953−1010頁にHole Transport materialとして記載されている化合物群も適用可能である。
なかでもポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンは体積抵抗率が10Ωcmを下回らない程度にドープ(部分酸化)されていてもよい。このとき、電荷中和のために過塩素酸、ポリスチレンスルホン酸などに由来する対アニオンを有してもよい。
【0069】
すなわち、電子ブロック層としては、高抵抗のPEDOT−PSSが特に好ましい。このため、インジウム−スズ酸化物を透明電極層とするデバイス構成であっても、特に好ましい電子ブロック層材料であるPEDOT−PSSを使用すると、透明導電材料の項で述べた金属電極層の腐食が問題となる。ここでも、解決方法は、前記n型酸化物半導体層の設置が有効である。
【0070】
以上の事実に鑑み、PEDOT−PSSに限らず、何らかの強酸性材料(特に強酸性ポリマー)が添加されたプラスチック基板上の有機電子デバイスは、金属電極層に隣接して、前記金属電極層のプラスチック支持体側にn型酸化物半導体層を設置することが有効であると推論できる。
【0071】
電子ブロック層の膜厚は、0.1nm以上50nm以下であることが好ましい。より好ましい厚みは1nm〜20nmの範囲である。
【0072】
(ホール輸送層)
ホール輸送層はホール輸送材料を含有する。
ホール輸送材料は、HOMO準位が4.5eV〜6.0eVのπ電子共役化合物であり、具体的には、各種のアレーン(例えば、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンなど)をカップリングさせた共役ポリマー、フェニレンビニレン系ポリマー、ポルフィリン類、フタロシアニン類等が例示される。このほか、Chem.Rev.2007,107,953−1010にHole Transport materialとして記載されている化合物群やジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のポルフィリン誘導体も適用可能である。
【0073】
これらの中では、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンからなる群より選ばれた構成単位をカップリングさせた共役ポリマーが特に好ましい。具体例としてはポリ3−ヘキシルチオフェン、ポリ3−オクチルチオフェン、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、3020頁(2008年)に記載の各種ポリチオフェン誘導体、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2295頁(2007年)に記載のPCDTBT、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、732頁(2008年)に記載のPCDTQx、PCDTPP、PCDTPT、PCDTBX、PCDTPX、ネイチャー フォトニクス第3巻、649頁(2009年)に記載のPBDTTT−E、PBDTTT−C、PBDTTT−CF、アドバンスト マテリアルズ第22巻1−4頁(2010年)に記載のPTB7等が挙げられる。
【0074】
ホール輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
なお、ホール注入層はホール輸送層の概念に含まれる。
【0075】
(電子輸送層)
電子輸送層は電子輸送材料からなる。電子輸送材料は、LUMO準位が3.5eV〜4.5eVであるようなπ電子共役化合物であり、具体的にはフラーレンおよびその誘導体、フェニレンビニレン系ポリマー、ナフタレンテトラカルボン酸イミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸イミド誘導体等が挙げられる。これらの中では、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体の具体例としてはC60、フェニル−C61−酪酸メチル(文献等でPCBM、[60]PCBM、あるいはPC61BMと称されるフラーレン誘導体)、C70、フェニル−C71−酪酸メチル(多くの文献等でPCBM、[70]PCBM、あるいはPC71BMと称されるフラーレン誘導体)、およびアドバンスト ファンクショナル マテリアルズ第19巻、779−788頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体SIMEF等が挙げられる。
【0076】
電子輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
なお、電子注入層、ホールブロック層は電子輸送層の概念に含まれる。
【0077】
(光電変換層)
光電変換層はホール輸送層と電子輸送層からなる平面ヘテロ構造でもよいし、ホール輸送材料と電子輸送材料を混合したバルクヘテロ構造でもよい。平面ヘテロ構造をとる場合、正極側がホール輸送層、負極側が電子輸送層である。また、平面ヘテロ構造の中間層としてバルクヘテロ層を有するハイブリッド構造であってもよい。
【0078】
バルクヘテロ層はホール輸送材料と電子輸送材料が混合された光電変換層である。バルクヘテロ層に含まれる、ホール輸送材料と電子輸送材料の混合比は、変換効率が最も高くなるように調整される。ホール輸送材料と電子輸送材料の混合比は、通常は、質量比で、10:90〜90:10の範囲から選ばれる。このような混合有機層の形成方法としては、例えば、真空蒸着による共蒸着方法が挙げられる。あるいは、ホール輸送材料と電子輸送材料、両方の有機材料が溶解する溶媒を用いて溶剤塗布することによって混合有機層を作製することも可能である。溶剤塗布法の具体例については後述する。
【0079】
バルクヘテロ層24の膜厚は10nm〜500nmが好ましく、20nm〜300nmが特に好ましい。
バルクヘテロ層におけるホール輸送材料と電子輸送材料は完全に均一に混合していてもよいし、1nm乃至1μmのドメインサイズとなるように相分離していてもよい。層分離構造は、不規則構造でも規則構造でもよい。規則構造を形成する場合、ナノインプリント法等のトップダウンによる規則構造でもよいし、自己組織化等のボトムアップによるものでもよい。ここで用いられるホール輸送材料と電子輸送材料としては、既述のホール輸送層、電子輸送層において説明したものが同様に挙げられる。
【0080】
〔n型酸化物半導体層〕
本発明において無機酸化物層は電子輸送層であり、その材料はn型無機酸化物半導体(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン等)である。これらの中では、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。
n型酸化物半導体(無機電子輸送層)の膜厚は1nm〜30nmであり、好ましくは2nm〜15nmである。n型酸化物半導体からなる電子輸送層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても好適に形成することができる。とりわけ、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー C 第114巻、6849〜6853頁(2010年)に記載の酸化亜鉛層の形成方法や、シン ソリッド フィルム 第517巻、3766〜3769頁(2007)、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2445〜2449頁(2007年)に記載の酸化チタン層の形成方法が特に好適である。
【0081】
〔金属電極層〕
金属電極層は、通常、負極である。負極は、通常、仕事関数の比較的小さい金属であり、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、銀−マグネシウム合金等が例示される。金属電極層のn型酸化物半導体層側には、0.1〜5nmの、フッ化リチウム、酸化リチウムなどの電子注入層を有しても良い。
【0082】
負極の膜厚は10nm〜500nmであり、好ましくは50nm〜300nmである。酸化物半導体層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても形成することができる。これらの中で、印刷法、インクジェット法、蒸着法が好ましい。
【0083】
負極を形成するに際してのパターニングは、印刷、インクジェット等の方法が例示される。フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよい。
本発明において、負極形成位置は特に制限はなく、有機層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0084】
〔上部封止部材〕
有機電子デバイスは、プラスチック基板側の有機無機積層バリア層と、ここで述べる上部封止部材とによって、外界の雰囲気から隔離されることを要する。上部封止部材はガスバリア層を含む。上部封止部材は、保護層、接着剤層、あるいはプラスチック支持体を含んでも良い。
上部封止部材の好ましい構成例としては、金属電極側から、保護層、接着剤層、ガスバリア層、プラスチック支持体の順である。
【0085】
(保護層)
保護層は、通常、MgO、SiO、SiO、Al、Y、TiO等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物、SiN等の金属窒化酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリパラキシリレン等のポリマー等が挙げられる。これらのうち、金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物が好ましく、珪素、アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物が特に好ましい。保護層は単層でも上記から選ばれる異なる材料の多層構成であってもよい。
【0086】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、真空紫外CVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0087】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、ガスバリア性を有する層であれば、特に制限はない。通常、ガスバリア層は無機物の層(無機層と称することがある)である。無機層に含まれる無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、複数組成からなる混合物や傾斜材料層でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物、又は珪素の酸化物、窒化物若しくは酸窒化物が好ましい。
【0088】
ガスバリア層としての無機層は単層でも、複数層の積層でもよい。ガスバリア層が積層構造を有する場合、無機層と有機層との積層でもよく、複数の無機層と複数の有機層の交互積層でもよい。有機層、無機層の定義はすでに示したものと同じである。
ガスバリア層としての無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように、無機層とそれに隣接する有機ポリマー層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0089】
(接着剤層)
接着剤としては、特に制限はないが、例えば、エマルジョンタイプの接着剤、ワックスホットメルトラミネーション用接着剤、およびドライラミネーション用接着剤などが好ましい。
エマルジョンタイプの接着剤の例としては、熱可塑性エラストマー、LDPE、IO(アイオノマー)、PVDC、PE(ポリエチレン)ワックスなどを分散したコーティング剤等が挙げられる。
ワックスホットメルトラミネーション用接着剤の例としては、PVDC(ポリ塩化ビニリデン樹脂をコートしたOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム、PVAフィルムなどが挙げられる。
ドライラミネーション用接着剤の例としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、アイオノマー共重合体、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ニトロセルロース、酢酸セルロース、およびシリコーンなどが挙げられる。
【0090】
(プラスチック支持体)
プラスチック支持体の定義はすでに述べたものと同様である。
【0091】
(上部封止部材の設置方法)
まず、金属電極層上に保護層を設ける。プラスチック支持体上にガスバリア層を設置した封止フイルムを作製し、前記保護層上に前記封止フイルムを接着剤を介して接着する。上部に透明性が必要とされない場合、前記保護層上に金属箔をラミネートしたガスバリア性フイルムを接着する方法をとってもよい。
【0092】
〔その他〕
本発明の有機電子デバイスの厚さは、100μm〜2mmであることが好ましく、200μm〜1μmであることがより好ましい。
【0093】
本発明の有機薄層太陽電池を用いて太陽電池モジュールを作製する場合、濱川圭弘著、太陽光発電、最新の技術とシステム(出版:株式会社 シーエムシー)等の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0095】
<実施例1>
プラスチック支持体である厚み180μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフイルムと略す)12の一面上に有機無機積層バリア層11を形成し、PETフィルム12の他面上に透明電極層13、光電変換層(有機の活性層)20、n型酸化物半導体層25、負極(金属電極層)26、パッシベーション層と接着剤層とバリアフイルムとからなる上部封止部材30を積層することにより、実施例1の有機薄膜太陽電池を作製した(層構成は図1参照。)。
【0096】
〔バリア層11の形成〕
PETフィルム上に、重合性組成物(ダイセルサイテック社製EB−3702(13g)、共栄社化学製ライトアクリレートTMP−A(6g)、日本化薬製KAYAMER PM−21(1g)、Lamberti社製紫外線重合開始剤ESACURE KTO−46(0.5g)、2−ブタノン190gの混合溶液)をワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥後、窒素置換法により酸素濃度が0.1%となったチャンバー内にて高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量1J/cm2)して有機層を硬化させ、膜厚が1.5μmの有機層を形成した。
スパッタリング装置を用いて、前記有機層の上に無機層(酸化アルミニウム層)を形成した。ターゲットとしてアルミニウムを、放電ガスとしてアルゴンを、反応ガスとして酸素を用いた。製膜圧力は0.1Pa、到達膜厚は40nmであった。
得られた積層体上に前記重合性組成物を前記同様の方法で塗布、硬化させ、膜厚が1.5μmの有機層を形成した。
このようにしてPETフイルム上に有機層、無機層、有機層の3層からなるバリア層を形成した。このバリア層を有するPETフイルムの40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定器(MOCON社製、PERMATRAN−W3/31)を用いて測定したところ、この測定の検出限界値(0.005g/m2/day)以下であった。
【0097】
〔透明電極層13の形成〕
スパッタリング装置を用いて、前記PETフイルム12のバリア層11とは反対側の面上に透明電極層13としてITO層を形成した。膜厚は300nmで、シート抵抗が30Ω/sqあった。
なお、上記で作製した透明電極層の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(H.C.Starck社製、P.VP.AI4083)をスピンコートした。次に、このフィルムを100℃で20分間加熱乾燥して、電子ブロック層を形成した。このとき、電子ブロック層の膜厚は40nmであった。
【0098】
〔光電変換層20の塗布〕
光電変換層20としてバルクヘテロ層を形成した。P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン、Lisicon SP−001(商品名)、メルク社製)20mg、及び、PCBM([6,6]−phenyl C61−butyric acid methyl ester、ナノムスペクトラE−100H(商品名)、フロンティアカーボン社製)14mgをクロロベンゼン1mlに溶解させ、バルクヘテロ層塗布液とした。これを前記透明導電フィルムの表面にスピンコートし、バルクヘテロ層を形成した。スピンコーターの回転速度は500rpm、乾燥膜厚は180nmであった。
【0099】
〔アニール〕
その後、この試料をホットプレートを用いて130℃で15分間加熱した。
【0100】
〔酸化物半導体層25の塗布〕
チタンテトライソプロポキシド20μl、脱水エタノール4mlを混合した塗布液をバルクヘテロ層上にスピンコート塗布した。スピンコーターの回転速度は2000rpmであった。この膜を大気中1時間乾燥させることで、膜厚7nmのアモルファス酸化チタンからなるn型酸化物半導体層(電子輸送層)が得られた。
【0101】
〔負極26の蒸着〕
n型酸化物半導体層25の上にアルミニウムを100nmの厚さとなるように蒸着し、負極26を形成した。このとき、光電変換の有効面積が25cmとなるようにマスク蒸着した。
【0102】
〔上部封止部材の設置〕
負極形成後の試料の上に東セロ製、太陽電池封止用EVA(熱硬化剤の混合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、0.5mm厚、商品名ソーラーエバ)を接着剤として、前記バリア層を有するPETフイルムを重ね合わせ、140℃で真空ラミネートした。このとき、バリア層がEVAの側となるように貼り合せた。
以上のようにして、実施例1の有機薄膜太陽電池(P−1)を完成させた。
【0103】
<実施例2>
実施例2の有機薄膜太陽電池は、層構成自体は実施例1と同様であるが、透明電極層13の構成が実施例1と異なるものとした。本実施例の透明導電層13は、導電ストライプと透明導電材料層とからなるものとした。透明導電層13の作製方法以外は実施例1と同様の作製方法を用いて実施例2の有機薄膜太陽電池(P−2)を作製した。実施例2の透明電極層13の形成方法は以下の通りである。
【0104】
〔透明導電層13の形成〕
100mm角のPETフイルム12のバリア層11とは反対側の面上にマスク蒸着法により線幅が0.3mm、線の長さ90mm、間隔4mmで配置された複数の導電性ラインからなる導電ストライプ、および、前記導電ストライプと直交する線幅2mm、線の長さ90mm、線の間隔が50mmの2本のバスラインを同時に作製した。導電性ライン及びバスラインの材質は銀、膜厚は100nmであった。
上記で作製したフィルムの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(アグファ社製、オルガコンS−305をスピンコートした。次に、このフィルムを100℃で20分間加熱乾燥して、導電性ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は100nmであった。なお、本例では、電子ブロック層を備えていない。
【0105】
<実施例3>
実施例3の有機薄膜太陽電池は、バリア層11が支持体12と透明電極層13との間に配置された構成(図2参照)とした点以外は実施例2と同様の構成とした。透明電極層13をバリア層11上に作製したこと以外は実施例2と同様の作製方法で実施例3の有機薄膜太陽電池(P−3)を作製した。
【0106】
<実施例4>
実施例4の有機薄膜太陽電池は、層構成自体は実施例3と同様であるが、透明電極層13の構成が実施例3と異なるものとした。本実施例の透明導電層13は、導電ストライプと透明導電材料層とからなるものとした。透明導電層13の作製方法以外は実施例3と同様の作製方法を用いて実施例4の有機薄膜太陽電池(P−4)を作製した。実施例4の透明電極層13の作製方法は以下の通りである。
【0107】
〔透明導電層13の形成〕
100mm角のPETフイルム12のバリア層11上にマスク蒸着法により線幅が0.3mm、線の長さ90mm、間隔4mmで配置された複数の導電性ラインからなる導電ストライプ、および、前記導電ストライプと直交する線幅2mm、線の長さ90mm、線の間隔が50mmの2本のバスラインを同時に作製した。導電性ライン及びバスラインの材質は銀、膜厚は100nmであった。
上記で作製したフィルムの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンス
ルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(アグファ社製、オルガコンS−30
5をスピンコートした。次に、このフィルムを120℃で20分間加熱乾燥して、導電性
ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は100nmであった。
この上にポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(H.C.Starck社製、P.VP.AI4083)をスピンコートした。次に、このフィルムを100℃で20分間加熱乾燥して、電子ブロック層を形成した。このとき、電子ブロック層の膜厚は40nmであった。
【0108】
<実施例5>
実施例5の有機薄膜太陽電池は、層構成自体は実施例4と同様であるが、導電ストライプの材質が実施例4と異なるものとした。本実施例の導電ストライプは銅からなるものとした。導電ストライプの材質以外は実施例4と同様の作製方法を用いて実施例5の有機薄膜太陽電池(P−5)を作製した。
【0109】
<比較例1>
比較例1の有機薄膜太陽電池は、実施例1の層構成において、n型酸化物半導体層を備えていないものとした。すなわち、厚み180μmのPETフィルムの一面上にバリア層を形成し、PETフィルムの他面上に透明導電層、光電変換層、負極、パッシベーション層と接着剤層とバリアフイルムとからなる上部封止部材を積層することにより、比較例1の有機薄膜太陽電池(S−1)を作製した。
作製方法はほぼ実施例1と同様である。但し、実施例1では光電変換層形成後のn型半導体層形成前にアニール処理を行ったが、比較例1では、光電変換層形成後にはアニール処理をせず、光電変換層上に負極を形成し、負極形成後の試料に対してアニール処理としてホットプレートを用いて130℃で15分間加熱した。この点以外は、全て実施例1と同様とした。
【0110】
<比較例2>
比較例2の有機薄膜太陽電池は、層構成自体は比較例1と同様であるが、透明電極層の構成が比較例1と異なるものとした。本比較例の透明導電層は、実施例2と同様に導電ストライプと透明導電材料層とからなるものとした。すなわち、比較例2の有機薄膜太陽電池は、実施例2の有機薄膜太陽電池の構成において、n型酸化物半導体層を備えていないものである。比較例1と同様の製造方法において、透明電極層は実施例2と同様の方法で作製して比較例2の有機薄膜太陽電池(S−2)を作製した。
【0111】
<比較例3>
比較例3の有機薄膜太陽電池は、バリア層11が支持体12と透明電極層13との間に配置された構成(図2参照)とした点以外は比較例2と同様の構成とした。すなわち、比較例3の有機薄膜太陽電池は、実施例3の有機薄膜太陽電池の構成において、n型酸化物半導体層を備えていないものである。透明電極層をバリア層上に作製したこと以外は比較例2と同様の作製方法で比較例3の有機薄膜太陽電池(S−3)を作製した。
【0112】
<比較例4>
比較例4の有機薄膜太陽電池は、実施例4の有機薄膜太陽電池の構成において、n型酸化物半導体層を備えていないものである。比較例3と同様の製造方法において、透明電極層は実施例4と同様の方法で比較例4の有機薄膜太陽電池(S−4)を作製した。
【0113】
<比較例5>
比較例5の有機薄膜太陽電池は、実施例5の有機薄膜太陽電池の構成において、n型酸化物半導体層を備えていないものである。導電ストライプの材質以外は比較例4と同様の作製方法を用いて比較例5の有機薄膜太陽電池(S−5)を作製した。
【0114】
<比較例6>
比較例6の有機薄膜太陽電池は、有機無機積層バリア層を備えていない点を除き、実施例1と同様の層構成とした。実施例1と同様の方法で厚み180μmのPETフィルム上に透明導電層、光電変換層、n型酸化物半導体層、負極、パッシベーション層と接着剤層とバリアフイルムとからなる上部封止部材を積層することにより、比較例6の有機薄膜太陽電池(S−6)を作製した。
【0115】
<比較例7>
比較例7の有機薄膜太陽電池は、支持体として、厚み0.7mmのガラスを用いた点、有機無機積層バリア層およびn型酸化物半導体層を備えていない点以外は実施例1と同様の構成とした。すなわち、比較例7は、厚み0.7mmのガラスの上に、透明導電層、光電変換層、負極、パッシベーション層と接着剤層とバリアフイルムとからなる上部封止層を積層してなるものとした。バリア層形成工程を含まないことを除き、比較例1と同様の製造方法により比較例7の有機薄膜太陽電池(S−7)を作製した。
【0116】
〔発電効率の測定〕
実施例1〜5及び比較例1〜7にて得られた有機薄膜太陽電池に、ペクセルテクノロジーズ社L12型ソーラシミュレーターを用いて、AM1.5G、80mW/cmの模擬太陽光を照射しながら、ソースメジャーユニット(SMU2400型、KEITHLEY社製)を用いて電圧範囲−0.1Vから1.0Vにて、発生する電流値を測定した。得られた電流電圧特性をペクセルテクノロジーズ社I−Vカーブアナライザーを用いて評価し、特性パラメーターとして初期電池特性である変換効率(%)を算出した。測定結果を下記表1に示す。
【0117】
〔保存安定性の測定〕
次に、各素子を40℃・相対湿度90%の高温高湿室内に100時間静置した後、AM1.5、80mW/cmの模擬太陽光を照射しながら電流電圧特性を測定し、下記式により保存安定性を示す指標として変換効率の維持率を測定した。
変換効率の維持率(%)=
{(高温高湿経時後の変換効率)÷(素子作製直後の変換効率)}×100
表1に結果を記す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1の結果より、本発明の実施例有機薄膜太陽電池(P−1〜P−5)は、高い変換効率(発電効率)を発現し、効率維持率も高い(保存安定性が高い)ことがわかる。
【符号の説明】
【0120】
1、2 有機電子デバイス
10 透明導電フィルム
11 有機無機積層バリア層
12 プラスチック支持体
13 透明電極層
14 導電ストライプ
16 バスライン
18 透明導電材料層
20 有機の活性層
25 n型酸化物半導体層
26 金属電極層
30 上部封止部材
図1
図2
図3
図4