特許第5815038号(P5815038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5815038
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】放射線画像表示方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20151029BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/02 353Z
   A61B6/00ZDM
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-535935(P2013-535935)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2012006231
(87)【国際公開番号】WO2013046709
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】61/541,270
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】桑原 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】八尋 靖子
(72)【発明者】
【氏名】大田 恭義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 玲
【審査官】 大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−187916(JP,A)
【文献】 特開2000−350722(JP,A)
【文献】 特開2010−233875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮影角をなす2つの撮影方向からの被写体へ放射線の照射によって撮影された2つの放射線画像を取得するとともに、前記第1の撮影角よりも小さい第2の撮影角をなす2つの撮影方向の前記被写体の2つの放射線画像を取得する放射線画像取得部と、
前記第1の撮影角の放射線画像を2次元画像として表示するとともに、前記第2の撮影角の放射線画像を立体視画像として表示する表示部と、
前記2次元画像として表示された前記第1の撮影角の放射線画像内の所定の位置の指定を受け付ける位置指定受付部と、
該位置指定受付部により受け付けられた位置情報を取得する第1の位置情報取得部と、
該第1の位置情報取得部により取得された前記第1の撮影角の放射線画像内の位置情報に基づいて、該位置情報を前記第2の撮影角の放射線画像内に投影した立体位置情報を取得する第2の位置情報取得部とを備え、
前記表示部が、前記第2の位置情報取得部によって取得された立体位置情報に基づいて、前記立体視画像として表示した前記第2の撮影角の放射線画像上に立体指標を表示するものであることを特徴とする放射線画像表示装置。
【請求項2】
前記第2の撮影角の放射線画像が、前記第2の撮影角をなす2つの撮影方向からの前記被写体へ放射線の照射によって撮影されたものであることを特徴とする請求項記載の放射線画像表示装置。
【請求項3】
前記第1の撮影角の放射線画像を用いて前記第2の撮影角の放射線画像を生成する画像変換部を備え、
前記放射線画像取得部が、前記画像変換部によって生成された第2の撮影角の放射線画像を取得するものであることを特徴とする請求項記載の放射線画像表示装置。
【請求項4】
第1の撮影角をなす2つの撮影方向からの被写体へ放射線の照射によって撮影された2つの放射線画像を取得するとともに、前記第1の撮影角よりも小さい第2の撮影角をなす2つの撮影方向の前記被写体の2つの放射線画像を取得し、
前記第1の撮影角の放射線画像を2次元画像として表示するとともに、前記第2の撮影角の放射線画像を立体視画像として表示し、
前記2次元画像として表示された前記第1の撮影角の放射線画像内の所定の位置の指定を受け付け、該受け付けた位置情報を取得し、
該取得した前記第1の撮影角の放射線画像内の位置情報に基づいて、該位置情報を前記第2の撮影角の放射線画像内に投影した立体位置情報を取得し、
該取得した立体位置情報に基づいて、前記立体視画像として表示した前記第2の撮影角の放射線画像上に指標を表示することを特徴とする放射線画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、互いに異なる撮影方向の放射線画像を用いて病変などの位置を特定するステレオバイオプシ装置などに用いられる放射線画像表示方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】

病院の検査では病変周辺の組織片を採取することがあるが、近年、患者に大きな負担をかけずに組織片を採取する方法として、中が空洞の組織採取用の針(以下、生検針と称する)を患者に刺し、針の空洞に埋め込まれた組織を採取するバイオプシが注目されている。そして、このようなバイオプシを行うための装置としてステレオバイオプシ装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】

このステレオバイオプシ装置においては、被検者に対して互いに異なる撮影方向から放射線を照射して複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像を2次元画像として表示する。
【0004】

そして、その表示された複数の2次元画像上でターゲティングが行われてその位置情報がそれぞれ取得され、その位置情報に基づいて病変位置の3次元位置情報が算出され、生検針の先端をその3次元位置に到達するよう制御することによって所望の位置から組織片が採取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特表2000−500031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

しかしながら、上記のように2次元表示された2枚の放射線画像上で別個にターゲティングを行うようにしたのでは、2枚の放射線画像上でそれぞれ同一の病変をターゲティングすることは困難である。特に、乳房の放射線画像において多数の石灰化が存在している場合、2枚の放射線画像で正しく対応する石灰化を選択するのが困難である上、左右で異なる石灰化を選択してしまうと、間違ったところにバイオプシの針を刺してしまうおそれもある。このような理由から、従来のステレオバイオプシ装置においては、30分から1時間ほどの時間を必要とし、診断効率の低下を招いていた。
【0007】

本発明は、上記の事情に鑑み、ステレオバイオプシ装置などで行われる病変のターゲティングが正しく行われたか否かを即座に確認することができ、診断効率を向上することができる放射線画像表示方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】

本発明の放射線画像表示装置は、第1の撮影角をなす2つの撮影方向からの被写体へ放射線の照射によって撮影された2つの放射線画像を取得するとともに、第1の撮影角とは異なる第2の撮影角をなす2つの撮影方向の被写体の2つの放射線画像を取得する放射線画像取得部と、第1の撮影角の放射線画像を2次元画像として表示するとともに、第2の撮影角の放射線画像を立体視画像として表示する表示部と、2次元画像として表示された第1の撮影角の放射線画像内の所定の位置の指定を受け付ける位置指定受付部と、位置指定受付部により受け付けられた位置情報を取得する第1の位置情報取得部と、第1の位置情報取得部により取得された第1の撮影角の放射線画像内の位置情報に基づいて、その位置情報を第2の撮影角の放射線画像内に投影した立体位置情報を取得する第2の位置情報取得部とを備え、表示部が、第2の位置情報取得部によって取得された立体位置情報に基づいて立体視画像として表示した第2の撮影角の放射線画像上に立体指標を表示するものであることを特徴とする。
【0009】

また、上記本発明の放射線画像表示装置においては、上記第1の撮影角を上記第2の撮影角よりも大きくすることができる。
【0010】

また、第2の撮影角の放射線画像として、上記第2の撮影角をなす2つの撮影方向からの被写体へ放射線の照射によって撮影されたものを用いることができる。
【0011】

また、第1の撮影角の放射線画像を用いて第2の撮影角の放射線画像を生成する画像変換部を設け、放射線画像取得部を、画像変換部によって生成された第2の撮影角の放射線画像を取得するものとできる。
【0012】

本発明の放射線画像表示方法は、第1の撮影角をなす2つの撮影方向からの被写体へ放射線の照射によって撮影された2つの放射線画像を取得するとともに、第1の撮影角とは異なる第2の撮影角をなす2つの撮影方向の被写体の2つの放射線画像を取得し、第1の撮影角の放射線画像を2次元画像として表示するとともに、第2の撮影角の放射線画像を立体視画像として表示し、2次元画像として表示された第1の撮影角の放射線画像内の所定の位置の指定を受け付け、その受け付けた位置情報を取得し、その取得した第1の撮影角の放射線画像内の位置情報に基づいて、その位置情報を第2の撮影角の放射線画像内に投影した立体位置情報を取得し、その取得した立体位置情報に基づいて立体視画像として表示した第2の撮影角の放射線画像上に指標を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】

本発明の放射線画像表示方法および装置によれば、第1の撮影角をなす2つの撮影方向から撮影された2つの放射線画像を取得して2次元画像として表示するとともに、第1の撮影角とは異なる第2の撮影角をなす2つの撮影方向の2つの放射線画像を取得して立体視画像として表示し、2次元画像として表示された第1の撮影角の放射線画像内の所定の位置の指定を受け付け、その受け付けた位置情報を第2の撮影角の放射線画像内に投影した立体位置情報を取得し、その取得した立体位置情報に基づいて立体視画像として表示した第2の撮影角の放射線画像上に立体指標を表示するようにしたので、2次元画像として表示された第1の撮影角の放射線画像上でターゲティングが正しく行われたか否かを立体視画像として表示された第2の撮影角の放射線画像上の立体指標によって即座に確認することができ、診断効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】

図1】本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
図2図1に示す乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図
図3図1に示す乳房画像撮影表示システムの撮影台を上方から見た図
図4図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
図5】本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの作用を説明するためのフローチャート図
図6】表示部に2次元画像として表示された第1の撮影角の放射線画像の一例を示す模式図
図7】表示部にステレオ画像として表示された第2の撮影角の放射線画像と立体カーソルの一例を示す模式図
図8】本発明の放射線画像表示装置のその他の実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】

以下、図面を参照して本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムについて説明する。本実施形態の乳房画像撮影表示システムは、着脱可能なバイオプシユニットを取り付けることにより乳房用のステレオバイオプシ装置としても動作するシステムである。まず、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成について説明する。図1は、バイオプシユニットが取り付けられた状態の乳房画像撮影表示システムの概略構成を示す図である。
【0016】

本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ3と、コンピュータ3に接続された表示部4および入力部5とを備えている。
【0017】

そして、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0018】

アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0019】

撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0020】

また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0021】

放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができる。また、間接型の放射線画像検出器としては、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いたものや、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)を用いたものを利用するようにしてもよい。
【0022】

放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0023】

また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。図3は、図1に示す圧迫板18を上方から見た図であるが、同図に示すように、圧迫板18は、撮影台14と圧迫板18により乳房を固定した状態でバイオプシを行えるよう、約10×10cm四方の大きさの開口部6を備えている。
【0024】

バイオプシユニット2は、その基体部分が圧迫板18の支持部20の開口部に差し込まれ、基体部分の下端がアーム部13に取り付けられることによって、乳房画像撮影表示システム1と機械的、電気的に接続されるものである。
【0025】

そして、バイオプシユニット2は、乳房に穿刺される生検針21を有し、着脱可能に構成された生検針ユニット22と、生検針ユニット22を支持する針支持部23と、針支持部23をレールに沿って移動させ、あるいは針支持部23を出し入れさせることにより、生検針ユニット22を図1から図3に示すX、YおよびZ方向に移動させる移動機構24とを備える。生検針ユニット22の生検針21の先端の位置は、移動機構24が備える針位置コントローラ35により、3次元空間における位置座標(x、y、z)として認識され、制御される。なお、図1における紙面垂直方向がX方向、図2における紙面垂直方向がY方向、図3における紙面垂直方向がZ方向である。
【0026】

コンピュータ3は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような放射線画像記憶部40、制御部41、第1の位置情報取得部42および第2の位置情報取得部43が構成されている。
【0027】

放射線画像記憶部40は、放射線画像検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像信号を記憶するものである。
【0028】

制御部41は、各種のコントローラ31〜35に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。また、制御部41は、放射線画像記憶部40に記憶された放射線画像信号に基づいて表示部4に放射線画像を表示させる放射線画像表示制御部41aと、放射線画像とともに立体カーソルを表示部4に表示させるカーソル表示制御部41bとを備えたものである。
【0029】

そして、特に、本実施形態の制御部41は、後述する第1の撮影角(±15°)で2枚の放射線画像を撮影し、その放射線画像を2次元画像として表示部4に表示させるよう制御するとともに、後述する第2の撮影角(±2°)で2枚の放射線画像を撮影し、その放射線画像をステレオ画像として表示部4に表示させるよう制御するものである。なお、制御部41の具体的な制御方法については後で詳述する。
【0030】

第1の位置情報取得部42は、第1の撮影角(±15°)によって撮影されて2次元画像として表示された放射線画像内において観察者によって指定された異常陰影などの位置情報を取得し、その取得した位置情報を第2の位置情報取得部43に出力するものである。
【0031】

第2の位置情報取得部43は、第1の位置情報取得部42により取得された2次元画像表示の放射線画像内で指定された位置情報に基づいて、その位置情報を第2の撮影角(±2°)によって撮影されたステレオ画像表示用の2枚の放射線画像上に投影した立体位置情報を取得するものである。第2の位置情報取得部43によって取得された立体位置情報は、制御部41のカーソル表示制御部41bに出力され、カーソル表示制御部41bは、入力された立体位置情報に基づいて、ステレオ画像上に立体カーソルを表示するものである。
【0032】

入力部5は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、表示部4に2次元画像として表示された放射線画像内および表示部4に表示されたステレオ画像内における異常陰影などの位置をカーソルによって指定可能に構成されたものである。また、入力部5は、撮影者による撮影条件などの入力や操作指示の入力などを受け付けるものである。
【0033】

表示部4は、コンピュータ3から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示するとともに、その2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ2次元画像として表示するように構成されたものである。ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。また、ステレオ画像を表示するモニタと2次元画像を表示するモニタとは別個に構成するようにしてもよいし、同じ画面上で表示できる場合には同じモニタとして構成するようにしてもよい。
【0034】

次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0035】

まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(S10)。
【0036】

次に、入力部5において、撮影者によって種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。なお、このとき生検針ユニット22は、上方に待避しており、まだ乳房には穿刺されていないものとする。
【0037】

そして、入力部5において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影が行われる。具体的には、まず、制御部41が、予め設定された第1の撮影角と第2の撮影角とを読み出し、その読み出した第1および第2の撮影角の情報をアームコントローラ31に出力する。
【0038】

第1の撮影角は、異常陰影などのターゲティングを行う際に用いられる2枚の放射線画像の2つの撮影方向がなす角であり、本実施形態においては、上述したように第1の撮影角として±15°が予め設定されているものとする。ただし、第1の撮影角はこの角に限らず、たとえば±10°〜±30°程度の角を採用することができる。
【0039】

第2の撮影角は、ステレオ画像を表示する際に用いられる2枚の放射線画像の2つの撮影方向がなす角であり、本実施形態においては、上述したように第2の撮影角として±2°が予め設定されているものとする。ただし、第2の撮影角はこの角に限らず、たとえば±2°〜±5°程度の角を採用することができる。さらに、第2の撮影角をなす2つの撮影方向は必ずしも対称である必要はなく、たとえば2つの撮影方向として0°と4°とを設定するようにしてもよい。
【0040】

なお、第2の撮影角は第1の撮影角よりも小さい角であることが望ましい。このように第2の撮影角を比較的小さい角とすることによってステレオ画像の立体視を容易にすることができ、また第1の撮影角を比較的大きい角とすることによって放射線画像のZ方向の解像度を上げることができるのでターゲティングの精度を向上させることができる。
【0041】

そして、制御部41から出力された第1および第2の撮影角の情報がアームコントローラ31によって受け付けられ、アームコントローラ31は、まず、第1の撮影角の情報に基づいてアーム部13に制御信号を出力する(S12)。
【0042】

具体的には、アームコントローラ31からアーム部13に対して、撮影台14に垂直な方向から+15°回転するように制御信号が出力され、アーム部13はこの制御信号に応じて+15°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を+15°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0043】

次に、アームコントローラ31からアーム部13に対して、撮影台14に垂直な方向から−15°回転するように制御信号が出力され、アーム部13はこの制御信号に応じて垂直な方向に一旦戻された後、−15°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を−15°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0044】

上述したように第1の撮影角での撮影が終了した後、次に、アームコントローラ31は、第2の撮影角の情報に基づいてアーム部13に制御信号を出力する(S14)。
【0045】

具体的には、アームコントローラ31からアーム部13に対して、撮影台14に垂直な方向から+2°回転するように制御信号が出力され、アーム部13はこの制御信号に応じて+2°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を+2°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0046】

次に、アームコントローラ31からアーム部13に対して、撮影台14に垂直な方向から−2°回転するように制御信号が出力され、アーム部13はこの制御信号に応じて垂直な方向に一旦戻された後、−2°回転する。続いて制御部41は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を−2°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ3の放射線画像記憶部40に記憶される。
【0047】

そして、上述したようにして第1の撮影角と第2の撮影角とでの放射線画像の撮影の後、まず、放射線画像表示制御部41aによって第1の撮影角で撮影された2つの放射線画像信号が放射線画像記憶部40から読み出され、所定の信号処理が施されて表示部4に出力される。そして、表示部4において、第1の撮影角で撮影された2つの放射線画像信号に基づいて、+15°の放射線画像と−15°の放射線画像とがそれぞれ2次元画像として表示される(S16)。図6は、2次元画像表示を模式的に示した図である。
【0048】

次に、上述したようにして乳房の2次元画像が表示された後、観察者によって、乳房における石灰化や腫瘤などが発見され、引き続いてバイオプシユニット2によってそれらの組織を採取したい場合などには、表示部4に表示された+15°の放射線画像と−15°の放射線画像とのそれぞれにおいて、観察者によって石灰化や腫瘤などのターゲットが指定される(S18)。
【0049】

ターゲットの指定については、たとえば、入力部5におけるマウスなどポインティングデバイスによって行うようにすればよい。具体的には、たとえば、図6に示すようにターゲティング用のカーソルM1を表示させ、このカーソルM1を観察者が入力部5を用いて所望のターゲットの位置まで移動させることによってターゲットの指定を行うようにすればよい。
【0050】

そして、観察者によって指定されたカーソルM1の2枚の放射線画像上における位置情報は、第1の位置情報取得部42によってそれぞれ取得される。そして、第1の位置情報取得部42は、カーソルM1の2枚の放射線画像上における位置情報を第2の位置情報取得部43に出力する。
【0051】

第2の位置情報取得部43は、入力された2枚の放射線画像上におけるターゲットの位置情報に基づいて、その2つの位置情報を第2の撮影角(±2°)によって撮影されたステレオ画像表示用の2枚の放射線画像上に投影した立体位置情報を取得する(S20)。そして、第2の位置情報取得部43において取得された立体位置情報は、カーソル表示制御部41bに出力される。
【0052】

なお、この立体位置情報は、2枚の放射線画像上におけるターゲットの位置情報と、第1の撮影角をなす2つの撮影方向、第2の撮影角をなす2つの撮影方向、および放射線源17と放射線画像検出器15の検出面との距離などに基づいて、三角法を用いて算出することができる。
【0053】

次に、観察者によって入力部5を用いてステレオ画像表示の指示が入力される。そして、その指示入力に応じて放射線画像表示制御部41aによって第2の撮影角で撮影された2つの放射線画像信号が放射線画像記憶部40から読み出され、所定の信号処理が施されて表示部4に出力される。そして、表示部4において、第2の撮影角で撮影された2つの放射線画像信号に基づいて右目用放射線画像と左目用放射線画像とが表示されることによってステレオ画像が表示される(S22)。図7は、ステレオ画像表示を模式的に示した図である。なお、このときステレオ画像は、先に表示された2次元表示の2枚の放射線画像とともに同時に表示してもよいし、2次元表示の放射線画像から切り替えて表示するようにしてもよい。
【0054】

そして、さらにカーソル表示制御部41bにおいて、入力された立体位置情報に基づいて、その立体位置情報に応じた視差量を有する右目用カーソル画像信号と左目用カーソル画像信号とが生成され、これらのカーソル画像信号が表示部4に出力される。表示部4は、入力されたカーソル画像信号に基づいて、奥行量を有する立体カーソルM2(図7参照)をステレオ画像上に表示する(S24)。なお、立体カーソルM2については、白黒のステレオ画像とは異なるカラー画像で表示するようにしてもよいし、また点滅表示させるようにしてもよい。もしくは、入力部5から所定の入力指示によって表示と非表示とを切り替えるようにしてもよい。
【0055】

そして、上述したようにステレオ画像上に表示された立体カーソルM2が、ステレオ画像内の所望のターゲットの位置に適切に表示されているか否かが観察者によって確認される。
【0056】

このとき立体カーソルM2がステレオ画像内の所望のターゲットの位置に適切に表示されていない場合には(S26,NO)、S18に戻り、第1の撮影角で撮影した±15°の放射線画像上において再びターゲティングが行われる。そして、ステレオ画像内の所望のターゲットの位置に立体カーソルM2が表示されるまで、S18〜S24までの処理が繰り返して行われる。
【0057】

一方、ステレオ画像内の所望のターゲットの位置に立体カーソルM2が表示された場合には、観察者によって入力部5を用いてその旨を示す信号入力が行われる。そして、制御部41は、その信号入力が行われた時点において第1の位置情報取得部42によって取得されている位置情報または第2の位置情報取得部43によって取得されている立体位置情報を取得し、その取得した位置情報に基づいてステレオ画像上でのターゲットの位置情報(x1、y1、z1)を取得し、その取得したターゲットの位置情報(x1、y1、z1)をバイオプシユニット2の針位置コントローラ35に出力する。
【0058】

この状態で、入力部5において所定の操作ボタンが押されると、制御部41から針位置コントローラ35に対し、生検針21を移動させる制御信号が出力される。針位置コントローラ35は、先に入力された位置情報(x1、y1、z1)の値に基づき、生検針21の先端が、座標(x1、y1、z1+α)が示す位置に配置されるように、生検針21を移動する。ここでαは、生検針21が乳房に刺さらない程度に十分大きな値とする。これにより、生検針21がターゲットの上方にセットされる。
【0059】

その後、観察者により、生検針21の穿刺を指示する所定の操作が入力部5において行われると、制御部41と針位置コントローラ35の制御の下で、生検針21の先端が座標(x1、y1、z1)が示す位置に配置されるように生検針21が移動させられて、生検針21による乳房の穿刺が行われる(S28)。
【0060】

なお、上記実施形態の乳房画像撮影表示システムにおいては、第1の撮影角をなす2つの撮影方向と第2の撮影角をなす2つの撮影方向とで合計4枚の放射線画像を撮影するようにしたが、第2の撮影角をなす2つの撮影方向の放射線画像については、必ずしも撮影しなくてもよく、第1の撮影角をなす2つの撮影方向から撮影された2つの放射線画像を用いて第2の撮影角をなす2つの撮影方向の放射線画像を生成するようにしてもよい。
【0061】

具体的には、たとえば、図8に示すようにコンピュータ3に画像変換部44を設け、この画像変換部44において、+15°の放射線画像と−15°の放射線画像とを用いて+2°の放射線画像と−2°の放射線画像とを生成するようにしてもよい。±15°の放射線画像から±2°の放射線画像を生成する方法としては、たとえば±15°の放射線画像をX方向について7.5分の1だけ縮小する処理を施すようにしてもよいし、±15°の放射線画像内に含まれる乳腺や腫瘤や石灰化などのオブジェクトを、そのX方向の位置に応じたシフト量だけシフトするような処理を施すようにしてもよいし、±15°の放射線画像全体をシフトすることによって2つの画像の視差量を小さくするようにしてもよい。要するに、±2°の放射線画像をステレオ画像として表示した際の立体感に近づける処理であれば如何なる処理でもよい。
【0062】

上述したように第1の撮影角をなす2つの撮影方向から撮影された2つの放射線画像を用いて第2の撮影角をなす2つの撮影方向の放射線画像を生成するようにすることによって被検者の被曝量を軽減することができる。
【0063】

また、上記説明は、本発明の放射線画像撮影表示システムの一実施形態を乳房画像撮影表示システムに適用したものであるが、本発明の被写体としては乳房に限らず、たとえば、胸部や頭部などを撮影する放射線画像撮影表示システムにも本発明を適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8