特許第5815422号(P5815422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5815422
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/22 20060101AFI20151029BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20151029BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B24B47/22
   B24B49/10
   B24B7/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-5077(P2012-5077)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-144327(P2013-144327A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】高澤 徹
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−87104(JP,A)
【文献】 特開平2−281102(JP,A)
【文献】 特開2005−114403(JP,A)
【文献】 米国特許第4629957(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 47/22
B24B 7/00
B24B 49/10
B23Q 17/00
G01B 5/00
G01B 7/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有した保持テーブルと、該保持テーブルに対向して配設され該保持テーブルで保持された被加工物を研削する研削面を有した研削砥石を有する研削ホイールと該研削ホイールが装着されるとともに該研削ホイールを回転せしめるスピンドルとを含む研削手段と、該研削手段を該保持テーブルに対して近接離反移動させる加工送り手段と、を備えた研削装置であって、
前記保持テーブルの前記保持面と前記研削砥石の前記研削面との間に挿入されて該研削砥石の該研削面が当接する上端部と、該保持テーブルの該保持面に当接する下端部と、を有し、該下端部は、前記研削手段が該保持テーブルに近接移動することで該研削砥石が該上端部を押圧して該下端部が該保持面に当接したことを検出する接触センサを備え、該上端部が該研削砥石の該研削面に当接するとともに該接触センサが該保持テーブルの該保持面に当接することで該保持面に対する該研削面の高さ位置を検出するための所定の厚さを有した検出部と、該検出部を該保持テーブルの該保持面と該研削砥石の該研削面との間の検出位置と退避位置とにそれぞれ位置付ける位置付け手段と、を有したセットアップ機構を備え、
前記検出部の前記上端部は、前記研削砥石の前記研削面が当接する当接面を有し該当接面が突出するよう筐体に収容された当接板と、
前記筐体から前記当接板が飛び出すことを規制する規制部と、
前記筐体内に収容されて前記当接板の下で該当接面が前記研削面に倣って傾斜するように該当接板を支持する支持球と、
から少なくとも構成されることを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を研削する研削装置に係り、特に、載置された被加工物を保持する保持テーブルの保持面と研削砥石の研削面とが接触する原点位置を自動的に検出可能なセットアップ機構を備えた研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、シリコンやガリウムヒ素等の半導体材料からなるウェーハの表面に格子状の分割予定ラインが設定され、この分割予定ラインで囲まれた多数の矩形状領域に、ICやLSI等の電子回路を有するデバイスが形成される。そしてこのウェーハは、裏面が研削されて設定厚さに薄化されるなどの所定の工程を経てから、分割予定ラインに沿って切断されることにより、多数のチップ状のデバイスに分割される。このようにして得られたデバイスは、樹脂やセラミックでパッケージングされ、各種電子機器に実装される。
【0003】
上記ウェーハの裏面研削は、デバイスの小型化や軽量化、放熱特性の向上等を目的として行われる。ウェーハを研削する研削装置としては、ウェーハが載置される保持面を有し、その保持面に載置されたウェーハを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持されたウェーハを研削する複数の研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削手段と、研削手段を保持テーブルに対して接近・離反する方向に移動させる加工送り手段等を備えたものが一般的な構成となっている。このような研削装置では、通常鉛直方向である加工送り方向において、保持テーブルの保持面と研削砥石の研削面とが接触する位置を原点位置とし、被加工物の研削量(仕上げ厚さ)を制御している。
【0004】
研削するにあたっては、被加工物を研削するに伴い研削砥石は磨耗する上、保持テーブルもセルフグラインド(研削砥石で保持テーブルの保持面を研削することで、保持面と研削砥石の研削面とを平行にする作業)によって削られるため、上記原点位置を改めて検出するセットアップと称される原点位置出しを実施しないと、高精度に被加工物を研削することができない。
【0005】
そのセットアップは、作業者が研削砥石を保持テーブルに接近する方向に加工送りし、研削砥石が保持テーブルの保持面に接触した位置を検出してその位置を原点位置とするマニュアルセットアップが行われていた(特許文献1等参照)。ところが、マニュアルセットアップは時間がかかるという問題があった。そこで本出願人は、マニュアルセットアップに代え、セットアップ機構を用いて自動でセットアップを行うことができる手法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−001261号公報
【特許文献2】特開2008−087104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2では、セットアップ機構の検出部(セットアップセンサ)を研削ホイールと保持テーブルとの間に配置し、検出部の上端部が研削ホイールに接触し下端部が保持テーブルに接触したときの研削ホイールの高さ位置と、予め認識している検出手段の高さとに基づいて、原点位置を算出してセットアップを行う手法が開示されている。このような手法では、研削ホイールの下面(例えば研削砥石の研削面)に対して、該下面に当接する検出部の上端部の当接面が平行な場合に、検出部の厚さが適切に反映されて正確なセットアップが実施される。すなわち、セットアップを行う際には、研削ホイールの下面と検出部の上端部の当接面との平行度が重要とされる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示される検出部の上端部の当接面を研削ホイールの下面に対して平行度の高い状態に組み付けて設定することは、非常に難しいという問題が生じている。
【0009】
特に近年では様々な種類の被加工物を研削すべく研削ホイールの形態も多様化しており、例えば、複数の研削砥石が環状に配設された研削ホイールでは研削砥石の間隔が大きいものもある。このような研削ホイールをセットアップする場合には、検出部の上端部の当接面を従来より大きく設定する必要がある。その場合には、上記平行度を高精度に出すことが難しくなってきている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な技術的課題は、研削砥石の研削面に対するセットアップ機構の検出部の当接面を平行な状態に容易に設定可能な研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の研削装置は、被加工物を保持する保持面を有した保持テーブルと、該保持テーブルに対向して配設され該保持テーブルで保持された被加工物を研削する研削面を有した研削砥石を有する研削ホイールと該研削ホイールが装着されるとともに該研削ホイールを回転せしめるスピンドルとを含む研削手段と、該研削手段を該保持テーブルに対して近接離反移動させる加工送り手段とを備えた研削装置であって、前記保持テーブルの前記保持面と前記研削砥石の前記研削面との間に挿入されて該研削砥石の該研削面が当接する上端部と、該保持テーブルの該保持面に当接する下端部とを有し、該下端部は、前記研削手段が該保持テーブルに近接移動することで該研削砥石が該上端部を押圧して該下端部が該保持面に当接したことを検出する接触センサを備え、該上端部が該研削砥石の該研削面に当接するとともに該接触センサが該保持テーブルの該保持面に当接することで該保持面に対する該研削面の高さ位置を検出するための所定の厚さを有した検出部と、該検出部を該保持テーブルの該保持面と該研削砥石の該研削面との間の検出位置と退避位置とにそれぞれ位置付ける位置付け手段とを有したセットアップ機構を備え、前記検出部の前記上端部は、前記研削砥石の前記研削面が当接する当接面を有し該当接面が突出するよう筐体に収容された当接板と、前記筐体から前記当接板が飛び出すことを規制する規制部と、前記筐体内に収容されて前記当接板の下で該当接面が前記研削面に倣って傾斜するように該当接板を支持する支持球とから少なくとも構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明では、セットアップ機構の検出部が位置付け手段で検出位置に位置付けられた状態で、加工送り手段により研削手段を保持テーブルに接近させ、研削砥石の研削面が、検出部の上端部における当接板の当接面に接触して押圧すると、検出部の下端部が保持テーブルの保持面に接触すると、接触センサが作動する。このときの、研削手段の高さ位置と予め認識している検出部の厚さとから、原点位置を算出してセットアップを自動的に行うことができる。
【0013】
本発明によれば、研削砥石の研削面が検出部の上端部における当接板の当接面に当接すると、該当接面が研削面に倣って傾斜し、これによって研削砥石の研削面に対し検出部の当接面が平行な状態となる。すなわち、研削砥石の研削面を検出部の当接板の当接面に当接させるだけで、研削砥石の研削面に対し検出部の当接面を平行な状態に設定することができる。したがってこの状態を保持して上記セットアップを行うことにより、高い精度でセットアップを実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、研削砥石の研削面に対するセットアップ機構の検出部の当接面を平行な状態に容易に設定可能な研削装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る研削装置の斜視図である。
図2】同研削装置が具備する研削手段で被加工物を研削している状態を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
図3】同研削装置が具備するセットアップ機構の側面図である。
図4】同セットアップ機構の検出部を示す一部断面側面図である。
図5】同検出部の上端部の分解斜視図である。
図6】同セットアップ機構の設定方法を示す側面図である。
図7】同セットアップ機構によるセットアップ方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]研削装置の基本的な構成および動作
図1は、一実施形態の研削装置10の全体を示している。この研削装置10は、例えばシリコンウェーハ等の円板状の半導体ウェーハを被加工物(図2のWで示す)とし、その被加工物Wの例えば裏面を研削するものである。
【0017】
研削装置10は、上面が水平な直方体状の基台11を備えている。図1では、基台11の長手方向、幅方向および鉛直方向を、それぞれY方向、X方向およびZ方向(鉛直方向)で示している。基台11のY方向一端部には、X方向に並ぶコラム12が一対の状態で立設されている。基台11上には、Y方向のコラム12側に被加工物Wを研削加工する加工エリア11Aが設けられ、コラム12とは反対側には、加工エリア11Aに研削前の被加工物Wを搬入し、かつ、研削後の被加工物Wを搬出する搬入・搬出エリア11Bが設けられている。
【0018】
加工エリア11Aには、回転軸がZ方向と平行で上面が水平とされた円板状のターンテーブル13が回転可能に設けられている。ターンテーブル13は、図示せぬ回転駆動機構によって矢印R方向に回転させられる。ターンテーブル13上の外周部には、回転軸がZ方向と平行で上面が水平とされた複数(この場合は3つ)の円板状の保持テーブル20が、周方向に等間隔をおいて回転可能に配置されている。
【0019】
これら保持テーブル20は一般周知の真空チャック式であり、上面に載置される被加工物Wを真空吸引作用で吸着して保持する。図2に示すように、保持テーブル20は、ステンレス等の金属からなる枠体21の上面にセラミック等の多孔質部材22が嵌め込まれた構成のもので、多孔質部材22の上面が被加工物Wの保持面22aとなっている。保持面22aと、保持面22aの周囲の枠体21の環状の上面21aは、後述する研削手段30で上述したセルフグラインドされることにより、水平、かつ、面一の状態に削られる。各保持テーブル20は、それぞれがターンテーブル13内に設けられた図示せぬ回転駆動機構によって、一方向、または両方向に独自に回転すなわち自転するようになっており、ターンテーブル13が回転すると公転の状態になる。
【0020】
図1に示すように、2つの保持テーブル20がコラム12側でX方向に並んだ状態において、それら保持テーブル20の直上には、研削手段30がそれぞれ配されている。各保持テーブル20は、ターンテーブル13の回転によって、各研削手段30の下方の研削位置と、搬入・搬出エリア11Bに最も近付いた搬入・搬出位置との3位置にそれぞれ位置付けられる。
【0021】
研削位置は2箇所あり、これら研削位置ごとに研削手段30が配備されている。この場合、ターンテーブル13の回転による保持テーブル20の矢印Rで示す搬送方向上流側(図1で奥側)の研削位置が一次研削位置であり、下流側の研削位置が二次研削位置とされている。そして、一次研削位置では粗研削が行われ、二次研削位置では仕上げ研削が行われる。
【0022】
各研削手段30は、コラム12に昇降自在に取り付けられたスライダ40に固定されている。スライダ40は、Z方向に延びるガイドレール41に摺動自在に装着されており、サーボモータ42によって駆動されるボールねじ式の加工送り手段43によってZ方向に移動可能とされている。各研削手段30は、加工送り手段43によってZ方向に昇降し、下降によって保持テーブル20に接近する加工送り動作により、保持テーブル20に保持された被加工物Wの露出した被研削面を研削する。
【0023】
研削手段30は、図2に示すように、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドル31を有している。スピンドル31は、内部にスピンドルシャフト32を回転可能に支持し、スピンドルシャフト32を回転駆動するモータ33を備えている。スピンドルシャフト32の下端には、円板状のホイールマウント34が固定され、ホイールマウント34の下面には、ねじ止め等の固定手段によって研削ホイール35が着脱可能に固定されている。
【0024】
研削ホイール35は、環状のホイールベース36の下面に複数の研削砥石37が等間隔をおいて配列されて固着されたものである。研削砥石37は、被加工物Wに応じて選択され、例えばビトリファイド等の結合材中にダイヤモンド砥粒を混合して成形したもの等が用いられる。
【0025】
一次研削位置の上方に配置された一次研削用の研削手段30のホイールマウント34には、粗研削用の研削砥石(例えば♯320〜♯400の砥粒を含む砥石)が固着された研削ホイール35が取り付けられる。また、二次研削位置の上方に配された二次研削用の研削手段30のホイールマウント34には、仕上げ研削用の研削砥石(例えば♯2000以上の砥粒を含む砥石)が固着された研削ホイール35が取り付けられる。ホイールマウント34および研削ホイール35には、研削部分の冷却や潤滑あるいは研削屑の排出のための研削水を供給する研削水供給機構(図示省略)が設けられている。
【0026】
図1に示すように、基台11上のターンテーブル13の周囲における一次研削位置および二次研削位置の近傍には、揺動可能な一対のハイトゲージで構成される接触式の厚さ測定器50がそれぞれ配設されている。
【0027】
図2に示すように、一対のハイトゲージは、上下方向に揺動するプローブ51a,52aをそれぞれ備えた基準側ハイトゲージ51と可動側ハイトゲージ52である。基準側ハイトゲージ51はプローブ51aの先端が被加工物Wで覆われない保持テーブル20の枠体21の上面21aへ接触する状態にセットされ、可動側ハイトゲージ52はプローブ52aの先端が被加工物Wの被研削面へ接触する状態にセットされる。この厚さ測定器50によれば、基準側ハイトゲージ51により、基準面となる枠体21の上面21aの高さ位置が検出され、可動側ハイトゲージ52により、研削される被加工物Wの被研削面の高さ位置が検出され、両者の検出値を比較することで、被加工物Wの厚さが研削中に随時測定される。
【0028】
上記研削手段30は、研削ホイール35が回転しながら所定速度(例えば0.3〜0.5μm/秒程度)で下降して加工送りされることにより、研削ホイール35の研削砥石37が被加工物Wの被研削面を押圧し、これによって被研削面が研削される。研削の際、保持テーブル20は例えば研削ホイール35と同じ方向に回転し、被加工物Wは自転させられる。研削ホイール35による研削外径は保持面22aの半径よりも大きく、研削砥石37による研削外周縁が保持テーブル20の回転中心すなわち被加工物Wの中心を通過することにより、被加工物Wの全面が研削砥石37で一様に研削される。研削手段30による研削量は、厚さ測定器50で被加工物Wの厚さを測定することにより制御される。
【0029】
被加工物Wは、最初に一次研削位置で研削手段30により粗研削された後、ターンテーブル13が図1に示すR方向に回転することにより二次研削位置に搬送され、ここで研削手段30により仕上げ研削される。粗研削は、例えば仕上げ厚さの数十μm程度手前まで研削され、残りの研削量が仕上げ研削で研削される。
【0030】
図1に示すように、搬入・搬出エリア11Bの中央にはピックアップロボット70が設置されており、ピックアップロボット70の周囲には、上から見て反時計回りに、供給カセット71、位置合わせ台72、供給アーム73、回収アーム74、スピンナ式洗浄装置75、回収カセット76が、それぞれ配置されている。カセット71,76には複数の被加工物Wが上下方向に間隔を空けた積層状態で収容される。これらカセット71,76は、基台11上の所定位置に着脱可能にセットされる。
【0031】
研削加工される被加工物Wは、はじめにピックアップロボット70によって供給カセット71内から取り出され、位置合わせ台72上に被研削面を上に向けて載置されて一定の搬入開始位置に位置決めされる。次いで被加工物Wは、供給アーム73によって位置合わせ台72から取り上げられ、搬入・搬出位置で待機している保持テーブル20上に被研削面を上に向けて載置される。被加工物Wはターンテーブル13のR方向への回転によって一次研削位置と二次研削位置にこの順で搬送され、これら研削位置で、研削手段30により上記のようにして被研削面が研削される。
【0032】
二次研削が終了した被加工物Wは、さらにターンテーブル13がR方向に回転することにより搬入・搬出位置に戻される。搬入・搬出位置に戻された被加工物Wは回収アーム74によって取り上げられ、洗浄装置75に移されて水洗、乾燥される。そして、洗浄装置75で洗浄処理された被加工物Wは、ピックアップロボット70によって回収カセット76内に収容される。
【0033】
以上が、被加工物Wを実際に研削加工するにあたっての研削装置10の基本的な構成および動作である。さて、本実施形態の研削装置10には、実際に研削加工を行う前にセットアップを行うためのセットアップ機構100が、一次研削側および二次研削側の各研削手段30に対して設けられている。セットアップ機構100は、図1に示すように、基台11上のターンテーブル13の周囲であって、各厚さ測定器50のコラム12側にそれぞれ配設されている。以下、セットアップ機構100について説明する。
【0034】
[2]セットアップ機構の構成
セットアップ機構100は、図3に示すように、水平に延びる上下一対の板ばね101と、板ばね101の先端に支持された検出部110と、板ばね101を水平旋回させて、検出部110を、保持テーブル20の保持面22aと研削砥石37の研削面37aとの間の検出位置と、保持テーブル20上から外れ、かつ、加工送りされる研削手段30と干渉しない退避位置(図1の破線で示している)とにそれぞれ位置付ける位置付け手段140とを備えている。板ばね101は上下方向に撓んで弾性変形可能なもので、これにより検出部110は上下方向への移動が可能となっている。なお、板ばね101に替えて平行リンクを利用して検出部110を上下動可能に支持する構成としてもよい。
【0035】
位置付け手段140は、基台11上に垂直に、かつ、回転自在に支持されたポスト141と、このポスト141を回転させる回転駆動機構142とから構成されている。回転駆動機構142は、ポスト141の下端面から同軸的に下方に延び、ギヤ143aが一体に設けられたシャフト143と、ギヤ143aにピニオンギヤ144aを介して連結されたモータ144とを有するもので、ポスト141の上端部の外周面に板ばね101の基端部が固定されている。
【0036】
位置付け手段140によれば、モータ144の動力がピニオンギヤ144a、ギヤ143a、シャフト143を介しポスト141に伝わってポスト141が回転し、これによって板ばね101が往復旋回して検出部110が上記検出位置または退避位置に位置付けられる。
【0037】
検出部110は、研削砥石37の研削面37aが当接可能な上端部120と、上端部120の下方に間隔を空けて配設され、保持テーブル20の保持面22aに当接可能な下端部130とを有している。これら上端部120および下端部130は、ブラケット111を介して板ばね101の先端に固定されている。
【0038】
検出部110の下端部130は、図4に示すように、ブラケット111に固定される支持体131を有しており、この支持体131に、下面に物体(この場合、保持テーブル20)が接触可能に配設された接触プローブ132と、この接触プローブ132が下方の物体に接触したことを検知する接触センサ133とが支持されている。
【0039】
検出部110の上端部120は、図4および図5に示すように、ブラケット111に固定された直方体状の筐体121を有している。筐体121は、四方を囲む側壁部122の上面に上板部123が形成された筐体本体124の下面に、下側の開口を塞ぐ底板125が着脱可能に取り付けられて構成され、側壁部122の一面がブラケット111に固定されている。筐体本体124の上板部123の中央には円形孔123aが形成されており、上板部123は円形孔123aを囲繞する縁部を構成している。
【0040】
筐体本体124内には下側の開口から当接板126、支持球127およびワッシャ128が収容され、底板125を筐体本体124の下面に取り付けることで、上端部120が構成される。底板125は、ブラケット111から離れた2箇所の角部に形成された挿通孔125aに通したねじ129を、筐体本体124に形成されたねじ孔にねじ込むことで筐体本体124に取り付けられる。
【0041】
当接板126は、半球体の頂点側を底面と平行に切り取ったような形状を有しており、底面側である円形状の下面126aと、下面126aよりも小径で下面と同心状の平坦な当接面126bを有している。当接板126の下面126aの中心には、支持球127の一部が入り込むことが可能な円錐状の凹部126cが形成されており、また、底板125の中心には、支持球127の一部が入り込むことが可能な支持孔125cが形成されている。
【0042】
底板125を上記2箇所の角部に通したねじ129で筐体本体124に取り付けた状態で、筐体121内には、当接板126の上端部120が円形孔123aから突出し、支持球127の上端部120が当接板126の下面126aの凹部126cに入り込み、支持球127の下端部130がワッシャ128内および底板125の支持孔125c内に入り込んだ状態で、これら当接板126、支持球127およびワッシャ128が、上板部123と底板125に挟まれた状態で収容されている。当接板126は当接面126bから下面126aにわたる球面(規制部)126dの下部が上板部123の縁に当接することで、円形孔123aから飛び出すことが規制されるようになっている。
【0043】
このような上端部120においては、ねじ129の締め付け力を緩めると、底板125が支持球127を介して当接板126を上板部123の縁に押し付ける力が弱まり、このとき、当接板126は支持球127を支点として全方向に揺動可能となる。すなわち、筐体121の上方に突出する平坦な当接面126bがあらゆる方向に傾斜可能となる。支持球127は、当接板126の凹部126cと底板125の支持孔125cに入り込んでいることにより転動不能な状態が維持される。検出部110の厚さ、すなわち上端部120の当接板126の当接面126bから下端部130の接触プローブ132の下端までの距離は所定サイズに設定され、その厚さは検出部110の厚さとして予め認識されている。
【0044】
[3]セットアップ機構の設定
以上がセットアップ機構100の構成であり、続いて、セットアップ機構100の設定について説明する。セットアップ機構100は、一次研削側と二次研削側の各研削手段30に対してそれぞれ設けられており、これらセットアップ機構100の設定は、例えば当該装置10の組み立て時や初めて使用する前に行われる。
【0045】
セットアップ機構100の設定の方法を図6を参照して説明すると、はじめに、検出部110の上端部120のねじ129を緩め、当接板126が揺動可能な状態としておく。次いで位置付け手段140によって板ばね101を旋回させ、検出部110を、保持テーブル20の保持面22aと研削砥石37の研削面37aとの間の検出位置に位置付ける。検出部110は検出位置において下端部130の接触プローブ132が保持面22aからある程度上方に離れた状態となるようになされている。次に、加工送り手段43によって研削手段30を下降させ、研削砥石37の研削面37aを当接板126の当接面126bに当接させる。この状態からさらに僅かに研削手段30を下降させ、板ばね101が若干撓む程度に上端部120を押圧する。
【0046】
すると、板ばね101の弾発力によって検出部110は上方の研削砥石37側に押圧され、その押圧力により、研削砥石37の研削面37aに当接している当接板126が揺動して当接面126bが研削面37aに密着する。すなわち当接面126bが研削面37aに倣って傾斜し、当接面126bが研削面37aと平行になった状態となる。次に、ねじ129を筐体本体124にねじ込んで底板125を筐体本体124に締結する。これにより当接板126は筐体121内に固定され、当接面126bが研削面37aと平行になった状態が保持される。以上で、研削砥石37の研削面37aが当接する検出部110の当接面126bを研削面37aと平行に調整するセットアップ機構100の設定作業が完了する。セットアップ機構100の設定後は、位置付け手段140によって検出部110を退避位置に退避させる。なお、当接板126の球面126dの曲率半径は、上記のように当接面126bが研削砥石37の研削面37aと平行になった状態において、支持球127の中心から球面126dまでの距離に設定されている。
【0047】
[4]セットアップ機構によるセットアップ
次に、上記のようにして研削面37aに対する当接面126bの平行度設定がなされたセットアップ機構100により、セットアップを行う方法を説明する。なお、セットアップは、装置の立ち上げ時や、上述したセルフグラインドを行った後、あるいは研削砥石37が磨耗したときや保持テーブル20を交換したときなど、必要に応じて随時行われる。
【0048】
セットアップの方法を図7を参照して説明すると、位置付け手段140によって検出部110を退避位置から検出位置に移動させる。そして、加工送り手段43によって研削手段30を下降させ、研削砥石37の研削面37aを当接板126の当接面126bに当接させて上端部120を押し下げる。すると接触プローブ132の下端が保持面22aに接触して接触センサ133がONとなる。このときの、研削手段30の高さ位置と予め認識している検出部110の厚さとから、原点位置を算出してセットアップが自動的になされる。
【0049】
[5]セットアップ機構の作用効果
上記実施形態のセットアップ機構100によれば、セットアップ機構100の設定を行うにあたり、研削手段30を下降させて研削砥石37の研削面37aを検出部110の上端部120における当接板126の当接面126bに当接させ、かつ、押圧することにより、当接面126bが研削面37aに倣って傾斜して密着し、これによって研削砥石37の研削面37aに対し検出部110の当接面126bを平行に設定することができる。
【0050】
この当接面126bの平行度設定は、研削砥石37の研削面37aを検出部110の当接板126の当接面126bに当接させるだけで達成することができ、この後、ねじ129を締めて当接板126を筐体121内に保持することで、その平行度を保持することができる。したがって、研削砥石37の研削面37aに対し検出部110の当接面126bを平行な状態に容易に設定可能である。その結果、高い精度でセットアップを実施することができる。
【0051】
また、本実施形態では、検出部110の上端部120において、底板125を筐体本体124に固定して当接板126を筐体121内に固定状態で保持するためのねじ129が、底板125におけるブラケット111から離れた2箇所の角部に配置されこの部分をねじ止めする構成となっており、ブラケット111側の2箇所の角部をねじ止めしていない。これは、当接板126が動かない程度の適度な力で固定すれば十分であるからである。またこの他には、支持球127や当接板126に過剰な圧力がかからず損傷させにくいという利点も得られる。さらには、ブラケット111側にはねじ締めのためのスペースを取りにくいが、ブラケット111から離れた側ではそのようなスペースを確保することができ、セットアップ機構100の設定作業をしやすいという面もある。なお、底板125を、適度に撓んで、なおかつ剛性を有する材質のものとすると、仮にねじ129を強く締め付けても底板125が撓むことにより、支持球127や当接板126を一層損傷させにくくすることができ、好適である。
【符号の説明】
【0052】
20…保持テーブル、22a…保持面、30…研削手段、31…スピンドル、35…研削ホイール、37…研削砥石、37a…研削面、43…加工送り手段、100…セットアップ機構、110…検出部、120…上端部、121…筐体、126…当接板、126b…当接面、126d…球面(規制部)、127…支持球、130…下端部、133…接触センサ、140…位置付け手段、W…被加工物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7