(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体側から順に、変倍時固定で正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、変倍時固定で正の屈折力を有する第5レンズ群からなり、
広角端から望遠端に変倍する際に、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群、前記第4レンズ群が移動し、
前記第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群と、正の屈折力を有する第1mレンズ群と、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズ、両凸の第1r2レンズ、物体側に凸面を向けた凸メニスカスの第1r3レンズにより構成され、全体として正の屈折力を有する第1rレンズ群とからなり、
前記第1fレンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、負レンズとからなることを特徴とする変倍光学系。
前記第1r1レンズと前記第1r2レンズの平均屈折率をN1r12、前記第1r3レンズの屈折率をN1r3としたとき、下記条件式(1)を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の変倍光学系。
0.20<N1r3−N1r12 …(1)
前記第1r1レンズと前記第1r2レンズの平均アッベ数をν1r12、前記第1r3レンズのアッベ数をν1r3としたとき、下記条件式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の変倍光学系。
20<ν1r12−ν1r3 …(2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜7で提案されているような、物体側から順に、変倍時固定の正の屈折力の第1レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第2レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第3レンズ群、変倍時固定の正の屈折力の第4レンズ群からなる4群構成の変倍光学系では、高い光学性能を維持したまま高倍率化しようとすると第1レンズ群の外径が大きくなり、重量が重くなるという欠点があった。逆に、小型化を達成しようとすると、第2レンズ群の負の屈折力が過大になって光学性能が低下するという欠点があった。
【0006】
それを解決する手段として、特許文献8では、物体側から順に、変倍時固定の正の屈折力の第1レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第2レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第3レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第4レンズ群、変倍時固定の正の屈折力の第5レンズ群からなる5群構成の変倍光学系が提案されている。この変倍光学系は上記4群構成の変倍光学系の第2レンズ群を分割し、分割されたレンズ群同士が広角端および望遠端において接近し、中間変倍域において遠ざかるように構成されている。詳細なレンズデータが開示されていないため不明な点が多いが、このレンズ構成では広角端、望遠端においては何ら従来の4群構成の変倍光学系と変わる点はないため、上記の問題を解消することはできない。
【0007】
また、特許文献9では、高倍率な変倍光学系が提案されているが、第1レンズ群の径が大きく重量が重くなる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小型かつ軽量でありながら、高い光学性能を有する変倍光学系および該変倍光学系を備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の変倍光学系は、物体側から順に、変倍時固定で正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、変倍時固定で正の屈折力を有する第5レンズ群からなり、広角端から望遠端に変倍する際に、第2レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群が移動し、第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群と、正の屈折力を有する第1mレンズ群と、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズ、両凸の第1r2レンズ、物体側に凸面を向けた凸メニスカスの第1r3レンズにより構成され、全体として正の屈折力を有する第1rレンズ群とからな
り、第1fレンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、負レンズとからなることを特徴とする。
【0010】
ここで、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズとは、物体側の面の曲率半径の絶対値が像面側の面の曲率半径の絶対値よりも小さいことを言う。
【0012】
また、本発明の変倍光学系の第1fレンズ群および第1rレンズ群は、それぞれに少なくとも1面の非球面を有することが好ましい。
【0013】
この場合、第1rレンズ群の非球面は、第1rレンズ群の最も像側のレンズに設けられていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の変倍光学系においては、第1r1レンズと第1r2レンズの平均屈折率をN1r12、第1r3レンズの屈折率をN1r3としたとき、下記条件式(1)を満たすように構成することが好ましい。
【0015】
0.20<N1r3−N1r12 …(1)
また、本発明の変倍光学系においては、第1r1レンズと第1r2レンズの平均アッベ数をν1r12、第1r3レンズのアッベ数をν1r3としたとき、下記条件式(2)を満たすように構成することが好ましい。
【0016】
20<ν1r12−ν1r3 …(2)
なお、上記における各レンズの屈折力の符号や面形状は、当該レンズが非球面レンズの場合は近軸領域におけるものとする。
【0017】
また、上記におけるレンズ枚数は、構成要素となるレンズの枚数である。例えば、材質の異なる複数の単レンズが接合された接合レンズがある場合は、この接合レンズを構成する単レンズの枚数で数えるものとする。
【0018】
また、凸メニスカスレンズとは正の屈折力を有するメニスカスレンズのことを意味し、凹メニスカスレンズとは負の屈折力を有するメニスカスレンズのことを意味する。
【0019】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明の変倍光学系を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の変倍光学系は、物体側から順に、変倍時固定で正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、変倍時固定で正の屈折力を有する第5レンズ群からなり、広角端から望遠端に変倍する際に、第2レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群が移動するようにしているため、小型かつ軽量でありながら、高い光学性能を実現することができる。
【0021】
さらに、第1レンズ群については、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群と、正の屈折力を有する第1mレンズ群と、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズ、両凸の第1r2レンズ、物体側に凸面を向けた凸メニスカスの第1r3レンズにより構成され、全体として正の屈折力を有する第1rレンズ群とからなるものとしたので、画角変化に伴うレンズ内部での光路の変化による収差への影響を少なくすることができ、これにより変倍時の球面収差と非点収差の変動を押さえることが可能となる。
【0022】
また、本発明の撮像装置は、本発明の変倍光学系を備えているため、小型かつ軽量でありながら、高画質の映像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(A)〜
図1(C)に、本発明の一実施形態にかかる変倍光学系の構成例の断面図を示す。
図1(A)〜
図1(C)に示す構成例は、後述の実施例1の変倍光学系の構成と共通である。
図1(A)〜
図1(C)においては、左側が物体側、右側が像側である。
【0025】
この変倍光学系は、光軸Zに沿って、物体側から順に、変倍時固定で正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、変倍時に固定されている開口絞りStと、変倍時固定で正の屈折力を有する第5レンズ群G5とからなり、広角端から望遠端に変倍する際に、広角端に較べて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が常に広がり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が常に広がり、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が変化し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が変化するように、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4が移動するように構成されている。なお、
図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0026】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群G1fと、正の屈折力を有する第1mレンズ群G1mと、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズL5、両凸の第1r2レンズL6、物体側に凸面を向けた凸メニスカスの第1r3レンズL7により構成され、全体として正の屈折力を有する第1rレンズ群G1rとからなる。
【0027】
この変倍光学系を撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、光学系と像面Simの間にカバーガラス、プリズム、赤外線カットフィルタやローパスフィルタなどの各種フィルタを配置することが好ましいため、
図1では、これらを想定した平行平板状の光学部材PP1、PP2を第5レンズ群G5と像面Simとの間に配置した例を示している。
【0028】
特許文献1〜7で提案されているような、物体側から順に、変倍時固定の正の屈折力の第1レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第2レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第3レンズ群、変倍時固定の正の屈折力の第4レンズ群からなる従来の4群構成の変倍光学系では、高い光学性能を維持したまま高倍率化しようとすると第1レンズ群の外径が大きくなり、重量が重くなるという欠点があった。逆に、小型化を達成しようとすると、第2レンズ群の負の屈折力が過大になって光学性能が低下するという欠点があった。
【0029】
それを解決する手段として、特許文献8では、物体側から順に、変倍時固定の正の屈折力の第1レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第2レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第3レンズ群、変倍時移動の負の屈折力の第4レンズ群、変倍時固定の正の屈折力の第5レンズ群からなる5群構成の変倍光学系が提案されている。この変倍光学系は上記4群構成の変倍光学系の第2レンズ群を分割し、分割されたレンズ群同士が広角端および望遠端において接近し、中間変倍域において遠ざかるように構成されている。詳細なレンズデータが開示されていないため不明な点が多いが、このレンズ構成では広角端、望遠端においては何ら従来の4群構成の変倍光学系と変わる点はないため、上記の問題を解消することはできない。この特許文献8では、中間変倍域での性能を向上させることが主目的と考えられる。
【0030】
また、特許文献9では、上記4群構成の変倍光学系の第2レンズ群を分割し、分割されたレンズ群同士の間隔が変倍中において広角端よりも望遠端の方が近い変倍位置で最小となるように構成されているが、これは変倍比を大きく取ることが主目的であると考えられ、依然として第1レンズ群の径は大きく重量が重いままである。
【0031】
本発明の実施形態にかかる変倍光学系においては、上記4群構成の変倍光学系の第2レンズ群を分割する点は同様であるが、広角端から望遠端に変倍する際に、広角端に較べて分割されたレンズ群(5群構成の変倍光学系における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3)同士の間隔が常に広がるように構成した点で異なっている。このように構成したことにより、小型化を維持したまま高倍率化する際に特に望遠側で補正過剰となりやすい球面収差を押さえることが可能となる。
【0032】
さらに、第1レンズ群G1については、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群G1fと、正の屈折力を有する第1mレンズ群G1mと、物体側に強い凸面を向けた正の屈折力を有する第1r1レンズL5、両凸の第1r2レンズL6、物体側に凸面を向けた凸メニスカスの第1r3レンズL7により構成され、全体として正の屈折力を有する第1rレンズ群G1rとからなるものとしたので、画角変化に伴うレンズ内部での光路の変化による収差への影響を少なくすることができ、これにより変倍時の球面収差と非点収差の変動を押さえることが可能となる。
【0033】
本発明の実施形態にかかる変倍光学系の第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1fレンズ群G1fと、正の屈折力を有する第1mレンズ群G1mと、正の屈折力を有する第1rレンズ群G1rとからなり、第1mレンズ群G1mを光軸方向に移動させてフォーカシングを行うように構成されている。このように構成することにより、フォーカシングによる光線高の変動を押さえることができるため、フォーカスの最至近距離を短くすることが可能になる他、フォーカシングによる撮像範囲の変化を押さえることも可能になる。
【0034】
ここで、第1fレンズ群G1fは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズL1と、負レンズL2により構成されている。このような構成とすることにより、広角側での歪曲収差の悪化や望遠端での高次の球面収差を抑えることが出来る。
【0035】
また、第1mレンズ群G1mは、物体側から順に物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズL3と両凸レンズL4とからなる接合レンズにより構成されている。このような構成とすることにより、フォーカシングレンズを軽量に押さえながらフォーカシング時の諸収差の変動を押さえることが出来る。
【0036】
また、第1r1レンズL5と第1r2レンズL6との平均屈折率をN1r12、第1r3レンズL7の屈折率をN1r3としたときに、下記条件式(1)を満たすように構成されている。この条件式(1)の下限を下回ると、広角端において周辺部の非点収差を抑えることが困難となる。
【0037】
0.20<N1r3−N1r12 …(1)
また、第1r1レンズL5と第1r2レンズL6との平均アッベ数をν1r12、第1r3レンズL7のアッベ数をν1r3としたときに、下記条件式(2)を満たすように構成されている。この条件式(2)の下限を下回ると、広角端において中間画角と周辺画角の倍率の色収差をバランスさせることが困難となる。
【0038】
20<ν1r12−ν1r3 …(2)
また、第1fレンズ群G1fと、第1rレンズ群G1rは、それぞれに少なくとも1面の非球面を有するように構成されている。第1fレンズ群G1fに非球面を用いることにより、広角端で歪曲収差が増大するのを防ぐことが出来る。また、第1rレンズ群G1rに非球面を用いることにより、望遠端の球面収差を押さえることが出来る。
【0039】
この場合、第1rレンズ群G1rの非球面は、第1rレンズ群G1rの最も像側のレンズである第1r3レンズL7に設けられていることが好ましい。その理由としては、望遠端での光線を収束させるために第1rレンズ群G1rの最も像面側のレンズである第1r3レンズL7の屈折力が最も大きくなるが、その屈折力の高い面に非球面を用いることで、望遠端での球面収差をより押さえることが可能になるからである。
【0040】
変倍時において、第1レンズ群G1および第5レンズ群G5を像面に対して固定した状態で、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3を移動させると、焦点位置が変動してしまう。このような焦点移動を補正するため、本発明の実施形態にかかる変倍光学系の第4レンズ群G4は、広角端から望遠端に変倍する際に、一旦物体側に移動してから像側に反転移動するように構成されている。
【0041】
また、本発明の実施形態にかかる変倍光学系の第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は、変倍中において望遠端より広角よりの焦点距離で最小となり、かつ、広角端での間隔が、望遠端での間隔よりも広くなるように構成されている。これにより、中間変倍域での像面湾曲の変動を押さえることが可能となる。
【0042】
また、本発明の実施形態にかかる変倍光学系は、第2レンズ群の焦点距離をf2とし、第3レンズ群の焦点距離をf3としたとき、下記条件式(3)を満たすように構成されている。この条件式(3)の下限を下回ると、第2レンズ群G2の屈折力が高くなり過ぎ、主に広角端での非点収差、歪曲収差の悪化を招く。逆に、条件式(3)の上限を上回ると、第3レンズ群G3の屈折力が高くなり過ぎ、望遠側での球面収差の悪化を招く。
【0043】
0.10<f2/f3<2.00 …(3)
また、本発明の実施形態にかかる変倍光学系の第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズL8のみから構成されている。これにより、第2レンズ群G2のレンズ長を最小限に押さえてレンズ全長を最小限に押さえつつ、第1レンズ群G1の径を小さく押さえることが可能になる。
【0044】
ここで、凹メニスカスレンズL8の屈折率をLN2としたとき、下記条件式(4)を満たすように構成されている。この条件式(4)を満たすことで、凹メニスカスレンズL8の曲率を小さくすることができ、望遠端での球面収差の拡大を抑えることができる。
【0045】
2.0≦LN2 …(4)
本変倍光学系は、上記条件式(1)、(2)、(3)それぞれに代えて下記条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)それぞれを満たすことがより好ましい。条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)それぞれを満たすことにより、条件式(1)、(2)、(3)それぞれを満たすことにより得られる効果をさらに高めることができる。なお、好ましい態様としては、必ずしも条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)全てを同時に満たす必要はなく、条件式(1−1)、(2−1)、(3−1)のいずれか1つ、または任意の組合せを満たせばよい。
【0046】
0.29<N1r3−N1r12 …(1−1)
40<ν1r12−ν1r3 …(2−1)
0.20<f2/f3<1.60 …(3−1)
本変倍光学系において、最も物体側に配置される材料としては、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。
【0047】
非球面形状が形成されるレンズの材料としては、ガラスを使用してもよいし、プラスチックを用いることも可能である。プラスチックを用いる場合には、軽量化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0048】
本変倍光学系が厳しい環境において使用される場合には、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コートを施すようにしてもよい。
【0049】
また、
図1に示す例では、レンズ系と像面Simとの間に光学部材PP1、PP2を配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0050】
次に、本発明の変倍光学系の数値実施例について説明する。
なお、以下の実施例4は参考例として示す。実施例1の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)に示す。
図1(A)〜
図1(C)においては、光学部材PPも合わせて示しており、左側が物体側、右側が像側であり、図示されている開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0051】
同様に、実施例2の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)に示し、実施例3の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)に示し、実施例4の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)に示し、実施例5の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)に示し、実施例6の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端でのレンズ配置をそれぞれ
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に示す。
【0052】
実施例1の変倍光学系の基本レンズデータを表1に、変倍に関するデータを表2に、フォーカスに関するデータを表3に、非球面データを表4、表5に示す。同様に、実施例2〜6の変倍光学系の基本レンズデータ、変倍に関するデータ、フォーカスに関するデータ非球面データをそれぞれ表6〜表30に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1のものを例にとり説明するが、実施例2〜6のものについても基本的に同様である。
【0053】
表1の基本レンズデータにおいて、Siの欄には最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄にはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。また、Ndiの欄にはi番目の面とi+1番目の面との間の媒質のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjの欄には最も物体側の光学要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線に対するアッベ数を示し、θg,fの欄には各光学要素の部分分散比を示している。
【0054】
なお、曲率半径の符号は、面形状が物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。基本レンズデータには、開口絞りSt、光学部材PPも含めて示している。開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号とともに(開口絞り)という語句を記載している。
【0055】
表1の基本レンズデータにおいて、変倍時に間隔が変化する面間隔の欄にはそれぞれDD[面番号]と記載している。DD[4]は第1fレンズ群G1fと第1mレンズ群G1mとの間隔であり、DD[7]は第1mレンズ群G1mと第1rレンズ群G1rとの間隔である。また、DD[13]は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔であり、DD[15]は第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔であり、DD[23]は第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔であり、DD[26]は第4レンズ群G4と開口絞りStとの間隔である。
【0056】
表2の変倍に関するデータに、広角端、中間焦点距離状態、望遠端それぞれにおける、ズーム倍率(変倍比)、焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、FナンバーFno.および全画角2ω、DD[13]、DD[15]、DD[23]、DD[26]の値を示す。
【0057】
表3のフォーカスに関するデータに、広角端、中間焦点距離状態、望遠端それぞれにおける、DD[4]、DD[7]の値を示す。
【0058】
基本レンズデータ、変倍に関するデータ、およびフォーカスに関するデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmmを用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。
【0059】
表1のレンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表4、表5の非球面データには、非球面の面番号Siと、これら非球面に関する非球面係数を示す。非球面係数は、以下の式(A)で表される非球面式における各係数KA、Am(m=3、4、5、…16)の値である。
【0060】
Zd=C・h
2/{1+(1−KA・C
2・h
2)
1/2}+ΣAm・h
m … (A)
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数(m=3、4、5、…16)
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【0061】
実施例1〜6の変倍光学系の条件式(1)〜(4)に対応する値を表31に示す。なお、全実施例ともd線を基準波長としており、上記の変倍におけるデータの表および下記の表31に示す値はこの基準波長におけるものである。
【表31】
【0062】
実施例1の変倍光学系の各収差図を
図7(A)〜
図7(L)に示す。
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)、
図7(D)はそれぞれ広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差を示し、
図7(E)、
図7(F)、
図7(G)、
図7(H)はそれぞれ中間焦点距離状態における球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差を示し、
図7(I)、
図7(J)、
図7(K)、
図7(L)はそれぞれ望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差を示す。
【0063】
球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)を表す各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図および倍率色収差図にはd線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)、F線(波長486.1nm)、g線(波長435.8nm)についての収差をそれぞれ実線、長破線、短破線、灰色線で示す。非点収差図にはサジタル方向、タンジェンシャル方向の収差をそれぞれ実線と破線で示す。球面収差図のFno.はFナンバー、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0064】
同様に、実施例2の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端における各収差図を
図8(A)〜
図8(L)に示し、実施例3の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端における各収差図を
図9(A)〜
図9(L)に示し、実施例4の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端における各収差図を
図10(A)〜
図10(L)に示し、実施例5の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端における各収差図を
図11(A)〜
図11(L)に示し、実施例6の変倍光学系の広角端、中間焦点距離状態、望遠端における各収差図を
図12(A)〜
図12(L)に示す。
【0065】
以上のデータから、実施例1〜6の変倍光学系は全て、条件式(1)〜(4)を満たしており、小型かつ軽量でありながら、高い光学性能を有することがわかる。
【0066】
次に、本発明の実施形態にかかる撮像装置について説明する。
図13に、本発明の実施形態の撮像装置の一例として、本発明の実施形態の変倍光学系を用いた撮像装置の概略構成図を示す。撮像装置としては、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を記録媒体とする監視カメラ、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等を挙げることができる。
【0067】
図13に示す撮像装置10は、変倍光学系1と、変倍光学系1の像側に配置されたフィルタ2と、変倍光学系によって結像される被写体の像を撮像する撮像素子3と、撮像素子3からの出力信号を演算処理する信号処理部4と、変倍光学系1の変倍とその変倍によるフォーカス調整を行うためのズーム制御部5とを備える。
【0068】
変倍光学系1は、物体側から順に、変倍時固定で正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、変倍時移動で負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、変倍時移動で負の屈折力を有する第3レンズ群G3、変倍時移動で負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、変倍時固定の開口絞りStと、変倍時固定で正の屈折力を有する第5レンズ群G5とを有するものである。
【0069】
図13では各レンズ群を概略的に示している。撮像素子3は、変倍光学系1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、その撮像面は変倍光学系の像面に一致するように配置される。撮像素子3としては例えばCCDやCMOS等を用いることができる。
【0070】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。