特許第5816232号(P5816232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許5816232液晶組成物およびその製造方法ならびにフィルム
<>
  • 特許5816232-液晶組成物およびその製造方法ならびにフィルム 図000042
  • 特許5816232-液晶組成物およびその製造方法ならびにフィルム 図000043
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816232
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】液晶組成物およびその製造方法ならびにフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20151029BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20151029BHJP
   C09K 19/22 20060101ALI20151029BHJP
   C09K 19/28 20060101ALI20151029BHJP
   C09K 19/24 20060101ALI20151029BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20151029BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/20
   C09K19/22
   C09K19/28
   C09K19/24
   C09K19/38
   G02B5/30
【請求項の数】20
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2013-172608(P2013-172608)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-198813(P2014-198813A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2014年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210376(P2012-210376)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-51318(P2013-51318)
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 将
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−083947(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035733(WO,A1)
【文献】 国際公開第1998/047979(WO,A1)
【文献】 国際公開第1996/004351(WO,A1)
【文献】 国際公開第1997/000600(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/006570(WO,A1)
【文献】 特開2011−213614(JP,A)
【文献】 特開2005−206579(JP,A)
【文献】 特開2001−019661(JP,A)
【文献】 米国特許第04370366(US,A)
【文献】 特開2013−076052(JP,A)
【文献】 特表2001−521538(JP,A)
【文献】 特開2000−098133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00− 19/60
G02B 5/00− 5/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(III)で表される化合物を、
下記一般式(IV)で表されるカルボン酸および下記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることにより、
下記一般式(I)で表される液晶化合物および下記一般式(II)で表される液晶化合物を同時に得ることを特徴とする液晶組成物の製造方法。ただし、一般式(IV)で表されるカルボン酸と、一般式(V)で表されるカルボン酸は、異なる種類のカルボン酸である。
1−Sp1−T1−A1−B−A2−T1−Sp1−P1 一般式(I)
1−Sp1−T1−A1−B−A3−T2−X 一般式(II)
HY1−B−Y2H 一般式(III)
1−Sp1−T1−COOH 一般式(IV)
X−T2−COOH 一般式(V)
(一般式(I)〜(V)中、
1は重合性基を表す。
Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。
1は1,4−フェニレン基を表す。
2は単結合または環状構造を有する二価の基を表す。
1は−COO−、−CONR1−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−COS−を表す。
2およびA3はそれぞれ独立して−OCO−、−NR1CO−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−SCO−を表す。
Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表す。
Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基、ビニル基、ホルミル基、−OC(=O)R(Rは炭素数1〜12のアルキル基)、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または下記式(V−I)で表される構造を表す。
1およびY2はそれぞれ独立してO、NR1(R1は水素原子またはメチル基を表す)またはSを表す。)
−A4−T4−Sp2−P2 式(V−I)
(式(V−I)中、P2は重合性基または水素原子を表し、A4、T4、Sp2はそれぞれ独立して前記A2、T2、Sp1と同義である。)
【請求項2】
一般式(I)〜(V)中、Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基またはビニル基を表す、請求項1に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項3】
さらに前記一般式(IV)で表されるカルボン酸および前記一般式(V)で表されるカルボン酸を、混合酸無水物または酸ハロゲン化物に導くことによって活性化する工程を含み、
前記活性化工程の後に塩基の存在下にて前記一般式(III)で表される化合物を、活性化された前記一般式(IV)で表されるカルボン酸および前記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させる請求項1または2に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(IV)で表されるカルボン酸と前記一般式(V)で表されるカルボン酸の仕込み比が、モル比で75対25から99対1の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物の生成比が、モル比で50対50から98対2の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項6】
液晶組成物中における前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物の組成比が、質量比で50対50から95対5の範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項7】
前記Bが、下記連結基群(VI)に含まれる連結基のいずれかである請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【化1】
(一般式群(VI)中、R2〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基を表す。)
【請求項8】
前記T2が、下記連結基群(VII)に含まれる連結基のいずれかである請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【化2】
【請求項9】
前記Bが、下記連結基群(VIII)に含まれる連結基のいずれかである請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【化3】
【請求項10】
前記Xが、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状の炭素数1または2のアルコキシ基、あるいは、フェニル基を表す請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項11】
前記Y1およびY2がOであり、
前記A1が−COO−であり、
前記A2およびA3が−OCO−である請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶組成物の製造方法で製造された液晶組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶組成物中の前記液晶化合物の配向を固定してなる光学異方性層を有するフィルム。
【請求項14】
前記光学異方性層が前記液晶化合物のコレステリック配向を固定してなる請求項13に記載のフィルム。
【請求項15】
選択反射特性を示すことを特徴とする請求項14に記載のフィルム。
【請求項16】
赤外線波長域に選択反射特性を示すことを特徴とする請求項14または15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記光学異方性層が前記液晶化合物のホモジニアス配向を固定してなる、請求項13に記載のフィルム。
【請求項18】
前記光学異方性層が前記液晶化合物のホメオトロピック配向を固定してなる、請求項13に記載のフィルム。
【請求項19】
請求項17または18に記載のフィルムと、偏光膜とを含む偏光板。
【請求項20】
請求項19に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、様々な用途に有用な液晶組成物およびその製造方法ならびに液晶組成物を用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学異方性膜の作成に用いられる重合性液晶は、しばしば塗布工程や乾燥後の工程で結晶化することが問題となっている。
これに対し、目的の重合性液晶に対して、他の重合性液晶と混合することで、結晶化を抑制できることが知られている。例えばこれまでに、(メタ)アクリロイル基を分子の末端に2つ有する(メタ)アクリレート化合物を他の重合性液晶化合物と併用した組成物や、重合性液晶の製造時に(メタ)アクリロイル基とアルキル基を分子の両末端に有するランダム混合物として調製した組成物を用いることで結晶化を抑制した例が知られているが、結晶化抑制効果は十分ではなかった。
【0003】
また、2種以上の重合性液晶を含む液晶組成物を製造する方法として、2種類以上の原料を用いて2種以上の重合性液晶を含む液晶組成物を一挙に製造する方法は報告されている。例えば、特許文献1には、ヒドロキシル基またはその誘導体を有する化合物と、非カルボキシル基系の脱離基および重合性基を有する求核性の化合物を用いて、2種以上の重合性液晶を含む液晶混合物を合成する方法が記載されており、短時間かつ低コストで液晶性が高い液晶組成物を製造できると記載されている。特許文献2には、ヒドロキシル基などを有する化合物と、カルボキシル基誘導体および重合性基を有する化合物を反応させて2種以上の重合性液晶を含む組成物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−521538号公報
【特許文献2】国際公開WO96/04351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または2に記載の方法は、経済的に、または、製造した組成物の性能的に満足できるものではなかった。さらに、特許文献1に記載の方法は、合成法は1種類(コアを先につくり、側鎖をつける方法)のみが記載されており、側鎖とコアの結合様式が限られた範囲の重合性液晶の混合組成物しか作れない方法であった。また、特許文献2にも、重合性基を1つのみ有する単官能の重合性液晶と重合性基を2つ有する2官能の重合性液晶とを一挙に合成して液晶組成物を製造する方法は記載されていなかった。また、そのような液晶組成物を製造する方法は示唆されていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、異なる2種以上のカルボン酸を原料の一種として用いて、結晶化抑止能、溶解性および液晶性が高い液晶組成物を一挙に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者が鋭意検討したところ、特定の構造を有し、かつ、異なる2種以上のカルボン酸(重合性基を有するものと有さないもの)と、特定の構造を有し、かつ、ヒドロキノンなどを原料に用いて反応させることで、結晶化抑止能、溶解性および液晶性が高い液晶組成物を一挙に製造することができることを見出すに至った。
【0008】
上記課題を解決するための手段である本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(III)で表される化合物を、下記一般式(IV)で表されるカルボン酸および下記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることにより、下記一般式(I)で表される液晶化合物および下記一般式(II)で表される液晶化合物を同時に得ることを特徴とする液晶組成物の製造方法。
1−Sp1−T1−A1−B−A2−T1−Sp1−P1 一般式(I)
1−Sp1−T1−A1−B−A3−T2−X 一般式(II)
HY1−B−Y2H 一般式(III)
1−Sp1−T1−COOH 一般式(IV)
X−T2−COOH 一般式(V)
(一般式(I)〜(V)中、
1は重合性基を表す。
Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。
1は1,4−フェニレン基を表す。
2は単結合または環状構造を有する二価の基を表す。
1は−COO−、−CONR1−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−COS−を表す。
2およびA3はそれぞれ独立して−OCO−、−NR1CO−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−SCO−を表す。
Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表す。
Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基、ビニル基、ホルミル基、−OC(=O)R(Rは炭素数1〜12のアルキル基)、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または下記式(V−I)で表される構造を表す。
1およびY2はそれぞれ独立してO、NR1(R1は水素原子またはメチル基を表す)またはSを表す。)
−A4−T4−Sp2−P2 式(V−I)
(式(V−I)中、P2は重合性基または水素原子を表し、A4、T4、Sp2はそれぞれ独立してA2、T2、Sp1と同義である。)
[2] [1]に記載の液晶組成物の製造方法は、一般式(I)〜(V)中、Xが、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基またはビニル基を表すことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の液晶組成物の製造方法は、さらに一般式(IV)で表されるカルボン酸および一般式(V)で表されるカルボン酸を、混合酸無水物または酸ハロゲン化物に導くことによって活性化する工程を含み、活性化工程の後に塩基の存在下にて一般式(III)で表される化合物を、活性化された一般式(IV)で表されるカルボン酸および一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、一般式(IV)で表されるカルボン酸と一般式(V)で表されるカルボン酸の仕込み比が、モル比で75対25から99対1の範囲であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の生成比が、モル比で50対50から98対2の範囲であることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、液晶組成物中における一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の組成比が、質量比で50対50から95対5の範囲であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、Bが、下記連結基群(VI)に含まれる連結基のいずれかであることが好ましい。
【化1】
(一般式群(VI)中、R2〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基を表す。)
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、T2が、下記連結基群(VII)に含まれる連結基のいずれかであることが好ましい。
【化2】
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、Bが、下記連結基群(VIII)に含まれる連結基のいずれかであることが好ましい。
【化3】
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、Xが、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状の炭素数1または2のアルコキシ基、あるいは、フェニル基を表すことが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法は、Y1およびY2がOであり、A1が−COO−であり、A2およびA3が−OCO−であることが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の液晶組成物の製造方法で製造された液晶組成物。
[13] [12]に記載の液晶組成物中の液晶化合物の配向を固定してなる光学異方性層を有するフィルム。
[14] [13]に記載のフィルムは、光学異方性層が液晶化合物のコレステリック配向を固定してなることが好ましい。
[15] [14]に記載のフィルムは、選択反射特性を示すことが好ましい。
[16] [14]または[15]に記載のフィルムは、赤外線波長域に選択反射特性を示すことが好ましい。
[17] [13]に記載のフィルムは、光学異方性層が液晶化合物のホモジニアス配向を固定してなることが好ましい。
[18] [13]に記載のフィルムは、光学異方性層が液晶化合物のホメオトロピック配向を固定してなることが好ましい。
[19] [17]または[18]に記載のフィルムと、偏光膜とを含む偏光板。
[20] [19]に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる2種以上のカルボン酸を原料の一種として用いて、結晶化抑止能、溶解性および液晶性が高い液晶組成物を一挙に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の液晶性組成物と比較例1の液晶性組成物のX線回折スペクトルである。
図2】実施例6の液晶性組成物と比較例2の液晶性組成物のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[液晶組成物の製造方法]
本発明の液晶組成物の製造方法は、下記一般式(III)で表される化合物を、下記一般式(IV)で表されるカルボン酸および下記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることにより、下記一般式(I)で表される液晶化合物および下記一般式(II)で表される液晶化合物を同時に得ることを特徴とする液晶組成物の製造方法。
1−Sp1−T1−A1−B−A2−T1−Sp1−P1 一般式(I)
1−Sp1−T1−A1−B−A3−T2−X 一般式(II)
HY1−B−Y2H 一般式(III)
1−Sp1−T1−COOH 一般式(IV)
X−T2−COOH 一般式(V)
(一般式(I)〜(V)中、P1は重合性基を表す。Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。T1は1,4−フェニレン基を表す。T2は単結合または環状構造を有する二価の基を表す。A1は−COO−、−CONR1−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−COS−を表す。A2およびA3はそれぞれ独立して−OCO−、−NR1CO−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−SCO−を表す。Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表す。Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基、ビニル基、ホルミル基、−OC(=O)R(Rは炭素数1〜12のアルキル基)、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または下記式(V−I)で表される構造を表す。Y1およびY2はそれぞれ独立してO、NR1(R1は水素原子またはメチル基を表す)またはSを示す。)
−A4−T4−Sp2−P2 式(V−I)
(式(V−I)中、P2は重合性基または水素原子を表し、A4、T4、Sp2はそれぞれ独立して上記A2、T2、Sp1と同義である。)
このような構成により、本発明の製造方法によれば、異なる2種以上のカルボン酸を原料の一種として用いて、結晶化抑止能、溶解性および液晶性が高い液晶組成物を一挙に製造する方法を提供することができる。
【0013】
<合成スキーム・合成順序・反応条件>
上記一般式(I)で表される液晶化合物および上記一般式(II)で表される液晶化合物を「同時に」得るとは、両方の液晶化合物が同じタイミングで合成されることに限定されるものではなく、上記一般式(III)で表される化合物を上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることによりワンポットで得ることを意味する。
以下に本発明の液晶組成物の製造方法の合成スキームの例を示す。なお、本明細書中、化合物(I)〜(V)は、それぞれ上記一般式(I)〜(V)で表される化合物を表す。
【0014】
合成スキーム
【化4】
【0015】
本発明の液晶組成物の製造方法は、合成順序に特に制限はなく、上記合成スキーム以外の合成順序であってもよい。
上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸の添加順序は特に制限はない。
【0016】
本発明の液晶組成物の製造方法は、さらに上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸を、混合酸無水物または酸ハロゲン化物に導くことによって活性化する工程を含み、上記活性化工程の後に塩基の存在下にて上記一般式(III)で表される化合物を、活性化された上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させることが好ましい。
上記活性化工程に用いる活性化剤としては特に制限はないが、メタンスルホニルクロリドやトルエンスルホニルクロリドなどを用いることができる。上記塩基としては、特に制限はなく、3級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)、無機塩などを用いることができる。上記活性化工程は、氷冷下で行うことが好ましい。
上記活性化工程の後に上記一般式(III)で表される化合物を添加することが、上記一般式(III)で表される化合物が活性化剤によって悪影響を受けないようにする観点から好ましい。上記活性化工程の後に塩基の存在下にて上記一般式(III)で表される化合物を、活性化された上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸に対して氷冷下で添加することが好ましい。上記一般式(III)で表される化合物を、活性化された上記一般式(IV)で表されるカルボン酸および上記一般式(V)で表されるカルボン酸と反応させるときの条件については特に制限はないが、0〜30℃であることが好ましく、10〜25℃であることがより好ましい。
【0017】
<一般式(III)で表される化合物>
本発明の液晶組成物の製造方法は、下記一般式(III)で表される化合物を原料の一種として用いる。
HY1−B−Y2H 一般式(III)
一般式(III)中、Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表す。Y1およびY2はそれぞれ独立してO、NR1(R1は水素原子またはメチル基を表す)またはSを示す。
【0018】
Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、下記連結基群(VI)に含まれる連結基のいずれかであることが好ましい。
【化5】
一般式群(VI)中、R2〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基を表す。
2〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、直鎖状の炭素数1または2のアルキル基であることが特に好ましい。
上記Bは、下記連結基群(VIII)に含まれる連結基のいずれかであることがより特に好ましい。
【化6】
【0019】
1およびY2はそれぞれ独立して、O、NR1(R1は水素原子またはメチル基を表す)またはSを表し、Oであることがより好ましい。
【0020】
以下に一般式(III)で表される化合物の例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0021】
【化7】
【0022】
<一般式(IV)で表されるカルボン酸>
本発明の液晶組成物の製造方法は、下記一般式(IV)で表されるカルボン酸を原料の一種として用いる。
1−Sp1−T1−COOH 一般式(IV)
上記一般式(IV)中、P1は重合性基を表す。Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。T1は1,4−フェニレン基を表す。
【0023】
上記P1は重合性基を表し、重合性基としては特に制限はなく、重合性基の詳細や好ましい範囲については、特開2002−129162号公報の[0161]〜[0171]を参照することができる。上記P1はエチレン性不飽和二重結合基であることが好ましく、メタクリロイル基またはアクリロイル基であることがより好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。
【0024】
上記Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。
Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価のアルキレン基を表し、より好ましくは炭素数3〜8のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数3〜6のアルキレン基であり、アルキレン中の隣接しないメチレン基は−O−で置換されていてもよい。アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
【0025】
以下に一般式(IV)で表されるカルボン酸の例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0026】
【化8】
【0027】
<一般式(V)で表されるカルボン酸>
本発明の液晶組成物の製造方法は、下記一般式(V)で表されるカルボン酸を原料の一種として用いる。
X−T2−COOH 一般式(V)
上記一般式(V)中、T2は単結合または環状構造を有する二価の基を表す。Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基ビニル基、ホルミル基、−OC(=O)R(Rは炭素数1〜12のアルキル基)、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または下記式(V−I)で表される構造を表す。
−A4−T4−Sp2−P2 式(V−I)
(式(V−I)中、P2は重合性基または水素原子を表し、A4、T4、Sp2はそれぞれ独立して上記A2、T2、Sp1と同義である。)
【0028】
上記T2は単結合または環状構造を有する二価の基を表し、単結合または二価の芳香族炭化水素基もしくは二価の複素環基を有する二価の基であることが好ましく、二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基であることがより好ましい
上記芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、6であることがさらにより好ましい。上記二価の芳香族炭化水素気の炭素数が6である場合は、メタ位またはパラ位に結合手を有することが好ましく、パラ位に結合手を有することが特に好ましい。
上記二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。
上記二価の芳香族炭化水素基もしくは二価の複素環基は、さらに二価の連結基を有していてもよい。上記二価の連結基としては、炭素数2〜4のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2のアルケニル基であることがより好ましい。
本発明の液晶組成物の製造方法は、上記T2が、下記連結基群(VII)に含まれる連結基のいずれかであることが好ましい。
【化9】
【0029】
上記Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基またはビニル基を表し、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状の炭素数1または2のアルコキシ基、あるいは、フェニル基を表すことが好ましく、分岐または直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状の炭素数1または2のアルコキシ基、あるいは、フェニル基を表すことがより、直鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基であることが特に好ましい。
また上記Xは、ホルミル基、アセトキシ基、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または上記式(V−I)で表される構造を表す。
中でも、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アリルオキシカルバモイル基、または式(V−I)で表される構造が好ましく、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、または式(V−I)で表される構造がより好ましい。
式(V−I)について、P2は重合性基または水素原子を表し、重合性基であることが好ましい。好ましい重合性基の範囲は前述のP1と同義である。A4、T4、Sp2はそれぞれ独立して上記A2、T2、Sp1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(V−I)として特に好ましくは、上記P2がメタクリロイル基またはアクリロイル基であり、Sp2が炭素数1〜12の2価の分岐のないアルキレンであり、アルキレン基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2が、−O−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよく、T4が1,4−フェニレン基であり、A4が−OCO−である。
【0030】
以下に一般式(V)で表されるカルボン酸の例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
本発明の液晶組成物の製造方法は、上記一般式(IV)で表されるカルボン酸と上記一般式(V)で表されるカルボン酸の仕込み比が、モル比で75対25から99対1の範囲であることが好ましく、77対33から95対5の範囲であることがより好ましく、80対20から90対10の範囲であることが特に好ましい。
【0034】
<一般式(I)で表される液晶化合物および一般式(II)で表される化合物>
本発明の液晶組成物の製造方法は、下記一般式(I)で表される液晶化合物および下記一般式(II)で表される液晶化合物を同時に得ることを特徴とする。
1−Sp1−T1−A1−B−A2−T1−Sp1−P1 一般式(I)
1−Sp1−T1−A1−B−A3−T2−X 一般式(II)
上記一般式(I)および(II)中、P1は重合性基を表す。Sp1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2または隣接していない2以上のCH2は、−O−、−S−、−OCO−、−COO−または−OCOO−で置換されていてもよい。T1は1,4−フェニレン基を表す。T2は単結合または環状構造を有する二価の基を表す。A1は−COO−、−CONR1−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−COS−を表す。A2およびA3はそれぞれ独立して−OCO−、−NR1CO−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−SCO−を表す。Bは置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表す。
Xは、水素原子、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルキル基、分岐または直鎖状の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アセチル基、ビニル基、ホルミル基、−OC(=O)R(Rは炭素数1〜12のアルキル基)、N−アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜4であるN−アルキルオキシカルバモイル基、アリルオキシカルバモイル基、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N−(2−アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基または上記式(V−I)で表される構造を表す。
上記一般式(I)および(II)中、P1、Sp1、T2、BおよびXの好ましい範囲は、上記一般式(III)〜(V)におけるP1、Sp1、T2、BおよびXの好ましい範囲と同様である。
【0035】
上記一般式(I)および(II)中、A1は−COO−、−CONR1−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−COS−を表し、−COO−であることがより好ましい。
上記一般式(I)および(II)中、A2およびA3はそれぞれ独立して−OCO−、−NR1CO−(R1は水素原子またはメチル基を表す)または−SCO−を表し、−OCO−であることがより好ましい。
上記一般式(I)および(II)中、上記A1が−COO−であり、かつ、上記A2およびA3が−OCO−であることが特に好ましい。
【0036】
以下に、上記一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
以下に、上記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の例によって限定的されるものではない。
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
【化21】
【0048】
<液晶組成物の組成>
本発明の液晶組成物の製造方法は、上記一般式(I)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物の生成比が、モル比で50対50から98対2の範囲であることが好ましく、60対40から96対4の範囲であることがより好ましく、70対30から94対6の範囲であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の液晶組成物の製造方法は、液晶組成物中における上記一般式(I)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物の組成比が、質量比で50対50から95対5の範囲であることが好ましく、60対40から95対5の範囲であることがより好ましく、70対30から92対8の範囲であることが特に好ましい。
【0050】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、本発明の液晶組成物の製造方法で製造されたことを特徴とする。このような液晶組成物は、本発明の液晶組成物の製造方法で製造されていない液晶組成物とは、液晶構造が異なり、その結果、溶解性や結晶化抑制能が高い。
本発明の液晶組成物のネマチック−Iso相転移温度は80〜160℃であることが好ましく、90〜150℃であることがより好ましい。
【0051】
[フィルムの構成]
本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物中の液晶化合物の配向(例えば、水平配向、垂直配向、コレステリック配向、ハイブリッド配向等)を固定してなり、光学異方性を示すフィルムである。このとき、本発明の液晶組成物中の液晶化合物の配向を固定してなる光学異方性層は2層以上有していてもよい。当該フィルムは、例えばTNモード、IPSモードなどの液晶表示装置の光学補償フィルムや1/2波長フィルム、1/4波長フィルム、位相差フィルムとしての利用、さらにはコレステリック配向の選択反射を利用した反射フィルムに利用できる。
【0052】
(反射フィルム)
本発明のフィルムは、反射フィルムとして使用することができる。本発明のフィルムとして好ましくは、本発明の液晶組成物中の液晶化合物のコレステリック配向を固定してなるフィルムである。
【0053】
(他の添加剤)
本発明の液晶組成物を、例えば、コレステリック配向の選択反射を利用した反射フィルムに利用する場合、液晶組成物は、重合性液晶の他、必要に応じて溶媒、不斉炭素原子を含む化合物、あるいは重合性開始剤(後述)や他の添加剤(例えば、セルロースエステル)を含むことができる。
【0054】
光学活性化合物(キラル剤):
上記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであってもよく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。上記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0055】
上記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623号公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0056】
(溶媒)
液晶組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0057】
また、本発明の液晶組成物を、液晶表示装置の光学補償フィルムに利用する場合、重合性開始剤(後述)、上述した溶媒の他に、配向制御剤、界面活性剤、フッ素系ポリマー等を含むことができる。
【0058】
(配向制御剤)
本発明における配向制御剤とは、例えば、本発明の液晶組成物の塗布液に添加され、塗布後に液晶組成物の層の表面、つまり、空気界面側に偏在することによって、空気界面側での液晶組成物の配向を制御することができる化合物(空気界面配向剤)を表す。もしくは、塗布後に液晶組成物の層と基板との界面に偏在することによって、基板界面側での液晶組成物の配向を制御することができる化合物、例えばオニウム塩を表す。
空気界面側の配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤や高分子の配向制御剤を用いることができる。低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002−20363号公報の段落0009〜0083の記載や、特開2006−106662号公報の段落0111〜0120、特開2012−211306号公報の段落0021〜0029を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004−198511号公報の段落0021〜0057の記載や、特開2006−106662号公報の段落0121〜0167を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
配向制御剤の使用量は、本発明の液晶組成物の塗布液の固形分の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがさらに好ましい。
この様な配向制御剤や配向膜を用いることで本発明の液晶化合物は層の表面と並行に配向したホモジニアス配向状態とすることができる。
【0059】
また、基板界面側での配向制御剤としてオニウム塩等を用いると液晶化合物の界面におけるホメオトロピック配向を促進させることができる。この垂直配向剤として作用するオニウム塩としては、例えば、特開2006−106662号公報の段落0052〜0108の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
オニウム塩の使用量は、本発明の液晶組成物の塗布液の固形分の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、特開2001−330725号公報の段落0028〜0056に記載の化合物および特開2006−106662号公報の段落0199〜0207に記載の化合物を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
界面活性剤の使用量は、本発明の液晶組成物の塗布液の固形分の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
(光学補償フィルム用途のその他の添加剤)
光学補償フィルム用途のその他の添加剤としては、例えば、特開2005−97377号公報の段落0099〜0101に記載の化合物を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明の液晶組成物を塗布等の方法により製膜することにより本発明の反射フィルムを形成することができる。本発明のフィルムの作成方法としては、本発明の液晶組成物を少なくとも含有する組成物を、支持体の表面またはその上に形成された配向膜表面に塗布し、液晶組成物を所望の配向状態とし、重合により硬化させ、液晶組成物の配向状態を固定して形成することが好ましい。
液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、スピンコート法)により実施できる。液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。
【0063】
重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)が含まれる。
【0064】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。ディスコィック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0065】
液晶組成物からなる光学異方性層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。
特に、液晶化合物のコレステリック配向を固定してなるフィルムにおいて選択反射性を利用する場合は、1〜30μmであることがさらに好ましく、2〜20μmであることが最も好ましい。液晶層中の上記一般式(I)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物の合計塗布量(液晶配向促進剤の塗布量)は、0.1〜500mg/m2であることが好ましく、0.5〜450mg/m2であることがより好ましく、0.75〜400mg/m2であることがさらに好ましく、1.0〜350mg/m2であることが最も好ましい。
一方、光学補償フィルム(例えば、ホモジニアス配向状態を固定したA−プレートやホメオトロピック配向状態を固定したC−プレート)として用いる場合、光学異方性層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。
【0066】
上記配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。配向膜に使用するポリマーの種類は、液晶性分子の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。液晶性分子を水平(平均傾斜角:0〜50゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向膜用ポリマー)を用いる。液晶性分子を垂直(平均傾斜角:50〜90゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させるポリマーを用いる。配向膜の表面エネルギーを低下させるためには、ポリマーの側鎖に炭素数が10〜100の炭化水素基を導入することが好ましい。
【0067】
具体的なポリマーの種類については、様々な表示モードに対応する液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。
配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。なお、配向膜を用いて、光学異方性層の液晶性分子を配向させてから、液晶層を透明支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。また、平均傾斜角が5゜未満の配向の場合は、ラビング処理をする必要はなく、配向膜も不要である。ただし、液晶性分子と透明支持体との密着性を改善する目的で、界面で液晶性分子と化学結合を形成する配向膜(特開平9−152509号公報記載)を用いてもよい。密着性改善の目的で配向膜を使用する場合は、ラビング処理を実施しなくてもよい。二種類の液晶層を透明支持体の同じ側に設ける場合、透明支持体上に形成した液晶層を、その上に設ける液晶層の配向膜として機能させることも可能である。
【0068】
本発明のフィルムや本発明のフィルムを有する光学異方性素子は、透明支持体を有していてもよい。透明支持体として、ガラス板またはポリマーフィルム、好ましくはポリマーフィルムが用いられる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明支持体として、一般には、光学等方性のポリマーフィルムが用いられている。光学等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。また、光学等方性透明支持体では、厚み方向のレターデーション(Rth)も、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。
【0069】
(選択反射特性)
本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなり、選択反射特性を示すことが好ましく、赤外線波長領域に選択反射特性を示すことがより好ましい。コレステリック液晶相を固定してなる光反射層については、特開2011−107178号公報および特開2011−018037号公報に記載の方法に詳細が記載されており、本発明でも好ましく用いることができる。
【0070】
(積層体)
本発明のフィルムは、本発明の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなる層を複数積層してなる積層体とすることも好ましい。本発明の液晶組成物は積層性も良好であるため、このような積層体を容易に形成することができる。
【0071】
(光学補償フィルム)
本発明のフィルムは、光学補償フィルムとしても使用することができる。
本発明のフィルムを光学補償フィルムとして使用する場合、光学補償フィルムにおける上記光学異方性層の光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には表示モードの違いに応じて決定する。本発明の液晶組成物を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学異方性層を製造することができる。
例えば、TNモードの液晶セル用光学異方性層は、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、米国特許5646703号およびドイツ特許公報3911620A1号の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学異方性層は、特開平9−292522号公報および特開平10−54982号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。また、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学異方性層は、米国特許5805253号および国際特許出願WO96/37804号の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。また、STNモードの液晶セル用光学異方性層は、特開平9 −26572号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。また、VAモードの液晶セル用光学異方性層は、特許第2866372号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
特に、本発明では、IPSモードの液晶セル用光学異方性層として好適に用いることができる。
例えば、本発明の液晶化合物をホモジニアス配向させた光学異方性層を有するフィルムは、Aプレートとして使用することができる。ここで、Aプレートとは、遅相軸の屈折率が厚さ方向の屈折率より大きい1軸性の複屈折層のことを意味する。本発明のフィルムがAプレートである場合、550nmにおける面内の位相差(Re)が200nm〜350nmとした光学異方性層により単層で補償を行うことができる。
また、本発明の液晶化合物をホメオトロピック配向させた光学異方性層を有するフィルムは、正のCプレートとして使用することができ、2軸フィルム等と組み合わせて用いることができる。ここで、正のCプレートとは、厚さ方向の屈折率が面内の屈折率よりも大きい1軸性の複屈折層のことを意味する。本発明のフィルムが正のCプレートである場合、組合せる2軸フィルムの光学特性によるが、例えば、550nmにおける面内の位相差(Re)が−10nm〜10nm、550nmにおける厚さ方向の位相差(Rth)が−250〜−50nmであることがそれぞれ好ましい。
【0072】
[偏光板]
本発明は、上記光学異方性層を有するフィルム(光学補償フィルム)と、偏光膜とを少なくとも有する偏光板にも関する。上記光学異方性層は、偏光膜とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
また、偏光板の構成として、偏光膜の両面に保護フィルムを配置する形態においては、上記光学異方性層は、一方の保護フィルムとして用いることもできる。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
偏光膜の厚みについては、特に制限はないが、偏光膜の厚みが薄いほうが、偏光板およびそれを組み込む液晶表示装置をさらに薄型化することができる。この観点では、偏光膜の厚みは10μm以下であるのが好ましい。偏光膜の膜厚の下限値は、偏光膜内での光路が光の波長より大きいことが必要であるため、0.7μm以上、実質的には1μm以上であり、一般的には、3μmより厚いことが好ましい。
【0073】
[液晶表示装置]
本発明は、上記偏光板を有する液晶表示装置にも関する。液晶表示装置の配向モードについては、特に制限はなく、例えば、TNモード、IPSモード、FLCモード、OCBモード、HANモード、VAモードを利用した液晶表示装置であってもよい。例えば、VAモードを利用した液晶表示装置については、特開2005−128503号公報の段落0109〜0129の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。また、IPSモードを利用した液晶表示装置については、特開2006−106662号公報の段落0027〜0050の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明の液晶表示装置には、例えば、上述したAプレートやCプレートを用いることができる。
上記光学異方性層は、偏光膜と貼合した偏光板の状態で液晶表示装置に組み込まれていてもよい。また、上記光学異方性層単独で、もしくは他の位相差層との積層体として、視野角補償フィルムとして組み込まれていてもよい。組み合わせる他の位相差層は、視野角補償の対象である液晶セルの配向モード等に応じて選択することができる。
上記光学異方性層は、液晶セルと視認側偏光膜との間に配置されても、液晶セルとバックライト側偏光膜との間に配置されていてもよい。
【0074】
なお、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の式(1)および式(2)よりRthを算出することもできる。
【0075】
【数1】
式(2)
Rth={(nx+ny)/2 − nz} × d
上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわし、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0076】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書では、特に付記がない限りは屈折率の測定波長は550nmとする。
【実施例】
【0077】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0078】
[実施例1]
化合物(IV−1)(21g、80mmol)と、化合物(V−1)(1.3g、8.9mmol)を、酢酸エチル(24mL)、テトラヒドロフラン(22mL)およびトリエチルアミン(13mL)と混合した。得られた溶液を、メタンスルホニルクロリド(10g、89mmol)の酢酸エチル溶液に氷冷下でゆっくりと滴下した。このとき、化合物(IV−1)と化合物(V−1)の仕込み比はモル比で90対10であった。
次に、氷冷下で1時間攪拌し、化合物(III−1)の酢酸エチル溶液を氷冷下で滴下し、次いでトリエチルアミン(14mL)を氷冷下でゆっくりと滴下した。
その後、反応温度を20℃にて2時間攪拌し、水(60g)を加えて有機層を抽出し、さらに2%塩酸水溶液、10%食塩水の順に有機層を洗浄した。
この有機層の一部をサンプリングしてHPLC測定を行い、その面積比から化合物(I−1)と化合物(II−1)の生成比を見積もったところ、生成比はモル比で82対18であった。得られた結果を下記表1に記載した。
次に、有機層を吸引ろ過したのちに、メタノール/水を加えて結晶を析出させ、生じた結晶をろ過して、化合物(I−1)と化合物(II−1)を含む液晶組成物を得た。(収量 21.6g)
得られた液晶組成物をサンプリングしてHPLC測定を行い、その面積比から化合物(I−1)と化合物(II−1)の組成比を見積もったところ、組成比は質量比で89対11であった。得られた結果を下記表1に記載した。
この液晶組成物のネマチックーIso相転移温度は115℃であった。
なお、化合物(I−1)と化合物(II−1)の生成比および組成比は、別途合成した化合物(I−1)と化合物(II−1)の標準サンプルをHPLCにて分析し、面積比から求めた検量線を用いて算出した。
【0079】
[実施例2〜13]
一般式(III)で表される化合物、一般式(IV)で表される化合物および一般式(V)で表される化合物の種類、ならびに一般式(IV)で表される化合物および一般式(V)で表される化合物の仕込み比を変えた以外は実施例1と同様の実験操作で、一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物を含む液晶組成物の合成、得られた液晶組成物中の一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物の生成比の測定、ならびに、得られた液晶組成物中の一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物の組成比の測定を行った。
得られた結果を下記表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
[実施例84]
カルボン酸(V−29)の合成
メタンスルホニルクロリド(33.0mmol、2.6mL)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(17mL)にヒドロキノンモノメチルエーテル(37mg)を加え、内温を−5℃まで冷却した。そこに、化合物(IV−1)(31.5mmol、8.33g)とジイソプロピルエチルアミン(33.0mmol、5.75mL)のTHF溶液(16mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。−5℃で30分撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(33.0mmol、5.75mL)、p−ヒドロキシベンズアルデヒドのTHF溶液(20mL)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(スパチュラ一杯)を加えた。その後、室温で4時間撹拌した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、アセトニトリル(67mL)の溶液とした後、これに、亜塩素酸ナトリウム(42.0mmol、3.80g)の水溶液(2mL)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(6.0mmol、0.94g)の水溶液(8.2mL)、過酸化水素水(4.0mL)を加え、室温で12時間撹拌した。1N 塩酸水溶液を100mL加えた後に、ろ過した。残渣をメタノールで少量のアセトニトリルで洗浄することにより、カルボン酸(V−29)を得た。このカルボン酸(V−29)は、上述した一般式(V)で表される化合物の例示化合物(V−29)である。
【0082】
液晶組成物の合成
化合物(IV−1)(54g、204mmol)と、化合物(V−29)(6.8g、17.7mmol)を、酢酸エチル(50mL)、THF(45mL)およびジイソプロピルエチルアミン(41.8mL)と混合した。得られた溶液を、メタンスルホニルクロリド(25.5g、223mmol)の酢酸エチル溶液に氷冷下でゆっくりと滴下した。このとき、化合物(IV−1)と化合物(V−1)の仕込み比はモル比で92対8であった。
次に、氷冷下で1時間攪拌し、化合物(III−1)(13.5g、109mmol)の酢酸エチル溶液を氷冷下で滴下し、さらにN−メチルイミダゾール(0.5g)を加えた後、トリエチルアミン(33.7mL)を氷冷下でゆっくりと滴下した。
その後、反応温度を20℃にて2時間攪拌し、水(140mL)を加えて有機層を抽出し、さらに2%塩酸水溶液、10%食塩水の順に有機層を洗浄した。
この有機層の一部をサンプリングしてHPLC測定を行い、その面積比から化合物(I−1)と化合物(II−53)の生成比を見積もったところ、生成比はモル比で88対12であった。得られた結果を下記表2に記載した。
次に、有機層を吸引ろ過したのちに、メタノール/水を加えて結晶を析出させ、生じた結晶をろ過して、化合物(I−1)と化合物(II−53)を含む液晶組成物を得た。(収量 60g)
得られた液晶組成物をサンプリングしてHPLC測定を行い、その面積比から化合物(I−1)と化合物(II−53)の組成比を見積もったところ、組成比は質量比で87対113であった。得られた結果を下記表2に記載した。
この液晶組成物のネマチックーIso相転移温度は140℃であった。
なお、化合物(I−1)と化合物(II−53)の生成比および組成比は、別途合成した化合物(I−1)と化合物(II−53)の標準サンプルをHPLCにて分析し、面積比から求めた検量線を用いて算出した。
【0083】
また、一般式(III)で表される化合物、一般式(IV)で表される化合物および一般式(V)で表される化合物の種類、ならびに一般式(IV)で表される化合物および一般式(V)で表される化合物の仕込み比を下記表のように変えた以外は実施例84と同様の実験操作で、一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物を含む液晶組成物の合成、得られた液晶組成物中の一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物の生成比の測定、ならびに、得られた液晶組成物中の一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物の組成比の測定を行った。
得られた結果を下記表2に示した。
【0084】
【表2】
【0085】
[比較例1]
化合物(II−1)を、以下のスキームに従って合成した。
【化22】
【0086】
メタンスルホニルクロリド(10.22g)のTHF溶液(20mL)にBHT(37mg)を加え、内温を−5℃まで冷却した。そこに、化合物(IV−1)(31.5mmol、8.33g)とジイソプロピルエチルアミン(17.6mL)のTHF溶液(50mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。−5℃で30分撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(16.7mL)、化合物(III−1)のTHF溶液(20mL)、DMAP(スパチュラ一杯)を加えた。その後、室温で4時間撹拌した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより生成し化合物(VI−1)を得た。
メタンスルホニルクロリド(3.5g)のTHF溶液(10mL)にBHT(3mg)を加え、内温を−5℃まで冷却した。そこに、化合物(V−1)(4.4g)とジイソプロピルエチルアミン(4.7mL)のTHF溶液(20mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。−5℃で30分撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(4.7mL)、化合物(VI−1)(10g)のTHF溶液(20mL)、DMAP(スパチュラ一杯)を加えた。その後、室温で2時間撹拌した。メタノール(50mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、化合物(II−1)の粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによる生成を行い、化合物(II−1)を59%の収率で得た。
化合物(I−1)8.9gと、化合物(II−1)1.1gと、メチルエチルケトン20gを25℃で混合した。得られた液晶組成物を比較例1の液晶組成物とした。
【0087】
[比較例2]
化合物(V−1)の代わりに化合物(V−4)を用いる以外は比較例1の化合物(II−1)の合成と同じ合成法により、化合物(II−4)を得た。
化合物(I−1)8.6gと、化合物(II−4)1.4gと、メチルエチルケトン20gを25℃で混合した。得られた液晶組成物を比較例2の液晶組成物とした。
【0088】
<溶解性試験>
(溶解性試験1)
実施例1で製造した液晶組成物10gとメチルエチルケトン20gを25℃で混合した。2分以内にすべての固体が完溶し、良好な溶解性を示した。
一方、比較例1の液晶組成物を調製した直後から2分後の溶液は、若干の溶け残りの固体があることを目視で確認した。なお、その後、5分後のすべての固体が完溶することを確認した。
【0089】
(溶解性試験2)
実施例6で合成した液晶組成物10gとメチルエチルケトン20gを25℃で混合した。5分以内に完溶し、良好な溶解性であった。
一方、比較例2の液晶組成物を調製した直後から5分後の溶液は若干の溶け残りの結晶があることを目視で確認した。
【0090】
(その他の溶解性試験)
その他の実施例2〜5および7〜12で製造した液晶組成物についても同様に溶解性試験を行うと、溶解性が向上したことがわかった。
【0091】
<粉末X線回折試験>
(X線回折試験1)
実施例1で得られた液晶組成物と、比較例1で用いた2種類の液晶化合物を十分に混合した固体について、リガク社製 RINT2000を用いて、測定範囲が2Θ=5°〜55°、入射X線がCuKα線にてそれぞれ粉末X線回折測定を行った。
【0092】
図1に示すように、実施例1の液晶性組成物のX線回折スペクトルは、比較例1の液晶性組成物とは異なるX線回折スペクトルであった。
【0093】
以上の試験を行った結果、実施例1で得られた液晶組成物は、比較例1で用いた2種類の液晶化合物を混合した固体とは結晶構造が異なっていることがわかった。
【0094】
(X線回折試験2)
実施例6で得られた液晶組成物と、比較例2で用いた2種類の液晶化合物を十分に混合した固体について、X線回折試験1と同様の方法でそれぞれ粉末X線回折測定を行った。
【0095】
図2に示すように、実施例6の液晶性組成物のX線回折スペクトルは、比較例2の液晶性組成物とは異なるX線回折スペクトルであった。
【0096】
以上の試験を行った結果、実施例6で得られた液晶組成物は、比較例2で用いた2種類の液晶化合物を混合した固体とは結晶構造が異なっていることがわかった。
【0097】
[実施例16]
<重合性組成物の調製>
実施例1の組成物を用いて、下記組成の液晶性組成物塗布液(A)を調製した。
実施例1の組成物 100質量部
MEK 233質量部
【0098】
<塗布サンプルの作成>
次に、得られた液晶性組成物を用いて実施例16のフィルムを製造した。
洗浄したガラス基板上に日産化学社製ポリイミド配向膜SE−130をスピンコート法により塗布し、乾燥後に250℃で1時間焼成した。これをラビング処理して配向膜付き基板を作製した。この基板の配向膜のラビング処理面上に、液晶性組成物塗布液(A)をスピンコート法により室温で塗布し、室温で30分静置した。
【0099】
(結晶析出抑制の評価)
偏光顕微鏡を用いて、得られた実施例16の塗布膜の液晶膜表面の任意の領域について、結晶析出率を目視で測定したところ、10%であった。
【0100】
[実施例16〜26および比較例3〜7]
実施例1の組成物の代わりに下記表3に記載される組成物を用いた点を変更して、実施例16と同じ方法により液晶性組成物塗布液を調製し、結晶析出率を測定した。結果は、下記表3に示すとおりであった。
【0101】
【表3】
【0102】
上記表3中、結晶析出性は、目視の塗布膜上の結晶析出面積が0〜20%は3、20〜50%は2、それ以上は1とした。
【0103】
[実施例96]
<重合性組成物の調製>
実施例84の組成物を用いて、下記組成の液晶性組成物塗布液(A)を調製した。
実施例84の組成物 100質量部
MEK 233質量部
【0104】
(結晶析出抑制の評価)
偏光顕微鏡を用いて、得られた実施例96の塗布膜の液晶膜表面の任意の領域について、結晶析出率を目視で測定したところ、5%であった。
【0105】
[実施例97〜107]
実施例1の組成物の代わりに下記表4に記載される組成物を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により液晶性組成物塗布液を調製し、結晶析出率を測定した。結果は、下記表4に示すとおりであった。
【0106】
【表4】
【0107】
上記表4中、結晶析出性は、目視の塗布膜上の結晶析出面積が0〜20%は3、20〜50%は2、それ以上は1とした。
【0108】
【化23】
【0109】
実施例16〜26および比較例3〜7の結果から、各実施例で得られた液晶組成物は、従来の重合性液晶化合物を用いた液晶組成物と比較して、結晶化抑止能にも優れることがわかった。
【0110】
[実施例51]
<選択反射膜の作成>
実施例6の組成物を用いて、下記の方法にしたがって、液晶性組成物塗布液(B)を調製した。
実施例6の組成物 100質量部
キラル剤Paliocolor LC756 (BASF社製) 3質量部
空気界面配向剤(X1−1) 0.04質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
溶媒 クロロホルム 300質量部
【0111】
【化24】
【0112】
実施例16と同様にして製作した配向膜付き基板の配向膜表面に液晶性組成物塗布液(B)をスピンコート法により室温で塗布し、120℃で3分間配向熟成を行った後に、室温でUVの短波長成分を除去した高圧水銀ランプを用いて10秒間光照射して配向を固定し選択反射膜を得た。塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜に結晶の析出は見られなかった。
得られた選択反射膜を偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。さらにこの膜を島津社製の分光光度計UV−3100PCで透過スペクトルを測定したところ赤外領域に選択反射ピークがあった。
【0113】
[実施例52〜61]
実施例6の組成物の代わりに実施例1〜実施例5および実施例7〜実施例11の組成物を用いた以外は、実施例51と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例51と同様にして選択反射膜をそれぞれ形成した。これらの選択反射膜はいずれも良好な配向性を示した。また、分光光度計UV−3100PCで透過スペクトルを測定したところ赤外領域に選択反射ピークがあった。
【0114】
[実施例108〜119]
実施例6の組成物の代わりに実施例84〜実施例95の組成物を用いた以外は、実施例51と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例51と同様にして選択反射膜をそれぞれ形成した。これらの選択反射膜はいずれも良好な配向性を示した。また、分光光度計UV−3100PCで透過スペクトルを測定したところ赤外領域に選択反射ピークがあった。
【0115】
[実施例62]
<光学補償フィルムの作成(1)>
実施例1の組成物を用いて、下記の方法にしたがって、液晶性組成物塗布液(C)を調製した。
実施例1の組成物 100質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
空気界面配向剤(X1−2) 0.1質量部
溶媒 メチルエチルケトン 400質量部
【0116】
【化25】
【0117】
洗浄したガラス基板上に日産化学社製ポリイミド配向膜SE−130をスピンコート法により塗布し、乾燥後に250℃で1時間焼成した。これをラビング処理して配向膜付き基板を作製した。この基板表面に液晶性組成物塗布液(C)をスピンコート法により室温で塗布し、60℃で1分間配向熟成を行った後に、室温でUVの短波長成分を除去した高圧水銀ランプを用いて10秒間光照射して配向を固定し光学補償フィルムを形成した。なお、塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜に結晶の析出は見られなかった。
得られた光学補償フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。
次に、AXOMETRICS社のAxoScan(ミュラーマトリクス・ポラリメータ)を用いて得られた光学補償フィルムのレターデーション(Re)を測定したところ、550nmにおけるRe(550)は156.2nmであった。
【0118】
[実施例63〜72]
実施例1の組成物の代わりに実施例2〜実施例11の組成物を用いた以外は、実施例62と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例62と同様にして光学補償フィルムをそれぞれ形成した。得られた光学補償フィルムをそれぞれ偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。また、光学補償フィルムの550nmにおけるReの測定値および膜厚は以下のとおりであった。
【0119】
【表5】
【0120】
[実施例120〜131]
実施例1の組成物の代わりに実施例84〜実施例95の組成物を用いた以外は、実施例62と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例62と同様にして光学補償フィルムをそれぞれ形成した。得られた光学補償フィルムをそれぞれ偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。また、光学補償フィルムの550nmにおけるReの測定値および膜厚は以下のとおりであった。
【0121】
【表6】
【0122】
[実施例73]
<光学補償フィルムの作成(2)>
実施例1の組成物を用いて、下記の方法にしたがって、液晶性組成物塗布液(D)を調製した。
実施例1の組成物 100質量部
重合開始剤IRGACURE907(BASF社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
空気界面配向剤(X1−3) 0.11質量部
オニウム塩(X1−4) 1.5質量部
溶媒 メチルエチルケトン 300質量部
【0123】
【化26】
【化27】
【0124】
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0125】
【化28】
【0126】
洗浄したガラス基板上に上記の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜付き基板を作製した。この基板表面に液晶性組成物塗布液(D)をスピンコート法により室温で塗布し、60℃で1分間配向熟成を行った後に、50℃でUVの短波長成分を除去した高圧水銀ランプを用いて10秒間光照射して配向を固定し光学補償フィルムを形成した。なお、塗布後に加熱するまでの間に、塗布膜に結晶の析出は見られなかった。
得られた光学補償フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。
次に、AXOMETRICS社のAxoScan(ミュラーマトリクス・ポラリメータ)を用いて得られた光学補償フィルムのRthを測定したところ、550nmにおけるRthは−123.1nmであった。
【0127】
[実施例74〜83]
実施例1の組成物の代わりに実施例2〜実施例11の組成物を用いた以外は、実施例73と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例73と同様にして光学補償フィルムをそれぞれ形成した。得られた光学補償フィルムをそれぞれ偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。また、光学補償フィルムの550nmにおけるRthの測定値および膜厚は以下のとおりであった。
【0128】
【表7】
【0129】
[実施例132〜143]
実施例1の組成物の代わりに実施例84〜実施例95の組成物を用いた以外は、実施例73と同様にして、液晶性組成物塗布液をそれぞれ調製した。これらの塗布液をそれぞれ用いて、実施例73と同様にして光学補償フィルムをそれぞれ形成した。得られた光学補償フィルムをそれぞれ偏光顕微鏡で観察したところ配向欠陥が無く均一に配向していることを確認した。また、光学補償フィルムの550nmにおけるRthの測定値および膜厚は以下のとおりであった。
【0130】
【表8】
図1
図2