(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、多層プリント配線板の製造技術として、コア基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルトアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層形成には、専らプラスチックフィルム上に熱硬化性樹脂層が形成された接着フィルムが使用され、接着フィルムを内層回路基板にラミネート(積層)し、プラスチックフィルムを剥離した後、熱硬化性樹脂を熱硬化することにより絶縁層が形成されている。一方、近年の、電子機器や電子部品の小型化のニーズにより、例えば、多層プリント配線板においては、コア基板の薄型化や、省略化が要求されるなど、多層プリント配線板はますます薄型化される傾向にある。このようなコア基板の薄型化や省略化等の、多層プリント配線板の薄型化が図られる中で、多層プリント配線板の機械強度を維持するためには、層間絶縁層を形成する材料としてプリプレグの適用が有効である。
【0003】
図4(a)〜(e)および
図5(a)、(b)はガラスクロスからなるシート状の繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを用いて層間絶縁層を形成した多層プリント配線板の製造工程を示す工程別の断面図である。
【0004】
先ず、回路基板10とガラスクロス1に熱硬化性樹脂組成物2を含浸させたプリプレグ3とを用意し(
図4(a)、(b))、プリプレグ3を、回路基板10の表面の導体パターン(パッド)11を覆うように、回路基板10に積層し、熱硬化性樹脂組成物2を硬化して、絶縁層4を形成する(
図4(c))。次に、
図4(d)に示されるように、該絶縁層4に、レーザー照射によりビアホール(ブラインドビア)5を形成する。この際、ガラスクロス1と絶縁層4(熱硬化性樹脂組成物2の硬化物)との加工性の違いから、ガラスクロス1がビアホール5の壁面から突出する(
図4(d))。また、かかるレーザー加工の後、レーザー加工で生じた残渣を除去するデスミア処理を行うと、ビアホール5の壁面からガラスクロス1がさらに突出する(
図4(e))。しかし、このようなビアホールの壁面から突出したガラスクロス1をそのままにしておくと、次のめっき工程においてめっき液の液まわり(流動)を悪化させる要因となり、ビアホール内に形成するめっきが不均一になって、導通信頼性の高いビアを形成することが困難になる。このため、ビアホールの側壁面から突出したガラスクロスの処理が必要であり、例えば、 特許文献1では、フ
ッ化物等によるエッチング処理が提案されている。また、特許文献2では、上記特許文献1に記載の方法を、実際の多層回路基板製造に適用した場合に、レーザー照射によって溶融したマトリックス樹脂のガラスクロスへの付着によって、フッ化物がガラスクロスと接触せず、ガラスクロスが有効にエッチング除去されないという問題を指摘し、かかる問題を解決するために、ビアホールの形成後、アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を用いて樹脂残渣を除去し、その後、ガラスクロスのエッチング処理を行っている。そして、このようなガラスクロスのエッチング処理により、ビアホール5の壁面からガラスクロス1が突出しない状態(
図5(a))にした後は、通常、めっき等でビアホール5内にビア20を形成して(
図5(b))、層間の導通が図られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、多層プリント配線板の微細配線化により、ビアホール径も小径化する傾向にあり、小径のビアホールにおいて、その側壁面から突出したガラスクロスを十分にエッチングした場合、
図5(a)に示されるように、ガラスクロス1の表面溶解の進行によって、絶縁層4にビアホール5の壁面に開口を有する隙間Sが形成される。このため、ビア形成のためのめっき処理時に該隙間Sにもめっき液が浸透して、該隙間Sに導体膜(めっき膜)21が形成されてしまう(
図5(b)参照)、いわゆる、ガラスクロスのエッチバック現象が顕在化する。これは、絶縁層上に形成されたビアに共通する現象であり、ビア20と隣り合うビア間での絶縁信頼性が低下するなどの不具合が生じる。
【0007】
特許文献2では、スルーホールにおけるウィッキング現象(エッチバック現象)の問題が指摘されているが、ビアホールのエッチバック現象については全く言及されていない。これは特許文献2が、ビアホール径100μm(トップ径)という比較的大きな径のビアホールを対象としており、めっき液の液まわりが悪化する問題(めっき液が流動しにくく
なる問題)がそれほど顕在化せず、エッチバック現象が発生する程度まで、ガラスクロスのエッチングを行う必要がなかったためと推測される。しかしながら、本発明者らの検討によれば、より小径のビアホール、例えばトップ径75μm以下といった小径のビアホールにおいては、めっき液の液まわりが悪化する問題が顕著になるため、ビアホール壁面から突出したガラスクロスをより短くエッチングすることが必要であり、そのためにビアホールにおいてもエッチバック現象が発生することが見出された。すなわち、ガラスクロスのエッチングを十分に行った場合、ビアホールの壁内部までガラスクロスがエッチングされるので、エッチバック現象が問題となり、他方、ビアホールの壁内部までガラスクロスがエッチングされない条件では、壁面から突出したガラスクロスが十分にエッチングされず、めっき液の液まわりの悪化(流動性低下)が問題となることが分かった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み成されたもので、その解決しょうとする課題は、エッチバック現象及びビアホール壁面からのガラスクロスの突出を共に十分に抑制でき、信頼性の高いビアを形成することができる、多層プリント配線板の製造方法を提供することであり、また、該信頼性の高いビアを備えた多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグを熱硬化して形成された絶縁層にレーザー照射によってビアホールを形成し、該ビアホールの側壁面から突出するガラスクロスをエッチングした後、ビアホールに酸化剤溶液によるデスミア処理を行うと、ガラスクロスのエッチングの際にガラスクロスの表面溶解の進行によって生じたビアホール側壁面に開口を有する隙間が、デスミア処理時に酸化剤溶液によって樹脂硬化物がエッチングされることによって解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
【0010】
(1)ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグにより形成された絶縁層に、レーザー照射によりビアホールを形成し、該ビアホールにガラスエッチング溶液によるガラスエッチング処理を施した後、酸化剤溶液によるデスミア処理を施すことを含む、多層プリント配線板の製造方法。
(2)ビアホール径がトップ径で75μm以下である、上記(1)記載の方法。
(3)回路基板の少なくとも片面にプリプレグを積層し、減圧下で、加熱および加圧して、その後、該プリプレグを熱硬化することにより絶縁層が形成される、上記(1)又は(2)記載の方法。
(4)酸化剤溶液がアルカリ性過マンガン酸溶液である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)ビアホールの酸化剤溶液によるデスミア処理と同時に該酸化剤溶液による絶縁層表面の粗化処理が行われる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)粗化された絶縁層表面にめっきにより導体層を形成するめっき工程をさらに含む、上記(5)記載の方法。
(7)導体層形成後、加熱により絶縁層と導体層をアニール処理するアニール処理工程をさらに含む、上記(6)記載の方法。
(8)導体層に回路を形成する回路形成工程をさらに含む、上記(7)記載の方法。
(9)ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグにより形成された絶縁層と、
該絶縁層に形成されたビアホールと、
該ビアホール内に導体層により形成されたビアを含む回路とを有し、
前記ビアホール側壁からガラスクロスが6μm以下の長さで突出しており、
該ガラスクロスの突出部分が、ビアを形成する導体層に埋め込まれていることを特徴とする、多層プリント配線板。
(10)絶縁層が、ビルドアップ方式により形成された絶縁層であることを特徴とする上記(9)記載の多層プリント配線板。
(11)絶縁層の表面が、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1.5μmの範囲に粗化されていることを特徴とする上記(9)または(10)記載の多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、絶縁層に形成したビアホールの側壁面から突出するガラスクロスのエッチング処理後に、ビアホールに酸化剤溶液によるデスミア処理を施すようにしたことから、ガラスクロスのエッチング処理の際にビアホールの側壁面に開口を有する隙間(ガラスクロスの溶解による隙間)が形成されても、絶縁層を構成する樹脂硬化物がデスミア処理時に酸化剤によりエッチングされることによって該隙間を解消することができる。従って、ビアホール側壁面からのガラスクロスの突出し長さを十分に小さくするエッチングとエッチバック現象の抑制とを両立することができ、めっき液の液まわりの悪化(流動性低下)やエッチバック現象による不具合のない、信頼性の高いビアを形成することができる。よって、本発明では、例えばトップ径75μm以下というような小径ビアを有する高信頼性の多層プリント配線板を得ることができる。
全て包含される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に即して説明する。
本発明におけるプリプレグとは、シート状繊維基材としてガラスクロスを用い、該ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物を含浸せしめたものである。ガラスクロスとしては、プリプレグ用として使用されている公知のものを制限なく使用することができ、その形態は、織布であっても、不織布であってもよいが、薄くて、強度が高いものが市販され、入手し易いと言う観点から、織布が好ましい。また、ガラスクロスの厚みは特に限定されないが、50μm以下が好適であり、特に好ましくは10〜30μmである。織布形態のガラスクロスの具体例としては、例えば、旭シュエーベル(株)製「スタイル1027MS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m
2、厚み19μm)、旭シュエーベル(株)製「スタイル1037MS」(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m
2、厚み28μm)、(株)有沢製作所製「1037NS」(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布重量23g/m
2、厚み21μm)、(株)有沢製作所製「1027NS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量19.5g/m
2、厚み16μm)、(株)有沢製作所製「1015NS」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布重量17.5g/m
2、厚み15μm)などが挙げられ、また、不織布形態のガラスクロスの具体例としては、例えば、日本バイリーン(株)製「キュムラスEPM4025」(直径約13μm、繊維長約10μm)、「キュムラスEPM4100B」(直径約13μm、繊維長約10μm)等が挙げられる。
【0014】
熱硬化性樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層に適するものであれば、特に制限なく使用でき、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化性樹脂にその硬化剤を少なくとも配合した組成物が使用される。中でも、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する組成物が好ましく、例えば、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂および硬化剤を含有する組成物が好ましい。
【0015】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を使用しても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4032」、「HP4032D」)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本
化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0017】
プリプレグには、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で熱可塑性樹脂を配合することができ、かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。当該熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは3〜50質量%である。
【0018】
フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成(株)製のFX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製のYX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0020】
ポリイミドの具体例としては、例えば、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」、「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0021】
ポリアミドイミドの具体例としては、例えば、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」、「バイロマックスHR16NN」等が挙げられる。また、本発明におけるポリアミドイミドはポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド等の変性ポリアミドイミドを含む概念であり、ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミドの具体例としては、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルスルホンの具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。
【0023】
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0024】
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。中でも、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル樹脂が好ましい。なお、本発明において、硬化剤は1種であっても2種以上を併用してもよい。
【0025】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製のMEH−7700、MEH−7810、MEH−7851、日本化薬(株)製のNHN、CBN、GPH、東都化成(株)製のSN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395、大日本インキ化学工業(株)製のLA7052、LA7054、LA3018、LA1356等が挙げられる。
【0026】
また、シアネートエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)やビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230」、シアネート当量232)等が挙げられる。
【0027】
熱硬化性樹脂と硬化剤の配合比率は、熱硬化性樹脂、硬化剤の種類等によって適宜選択されるが、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、フェノール系硬化剤またはナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してこれら硬化剤のフェノール性水酸基当量が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。シアネートエステル樹脂の場合は、エポキシ当量1に対してシアネート当量が0.3〜3.3の範囲となる比率が好ましく、0.5〜2の範囲となる比率がより好ましい。
【0028】
熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤に加え、硬化促進剤をさらに配合することができる。このような硬化促進剤としては、イミダゾール系化合物、有機ホスフィン系化合物等が挙げられ、具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。硬化促進剤を用いる場合、硬化促進剤はエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。なお、エポキシ樹脂硬化剤にシアネートエステル樹脂を使用する場合には、硬化時間を短縮する目的で、従来からエポキシ樹脂組成物とシアネート化合物とを併用した系で硬化触媒として用いられている有機金属化合物を添加してもよい。このような有機金属化合物としては、例えば、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。有機金属化合物の添加量は、シアネートエステル樹脂に対し、金属換算で通常10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。
【0029】
また、熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物の低熱膨張化のために無機充填剤を含有させることができる。このような無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、中でも、シリカ、アルミナが好ましく、シリカが特に好ましい。なお、無機充填剤は絶縁信頼性の観点から、平均粒径が3μm以下であるのが好ましく、平均粒径が1.5μm以下であるのがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした時、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。
【0030】
また、熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤;シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系等の高分子系消泡剤又はレベリング剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0031】
本発明で使用するプリプレグは、公知のホットメルト法、ソルベント法などにより製造することができる。ホットメルト法は、硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、硬化性樹脂組成物を該組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂組成物ワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、プラスチックフィルム上に積層された熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムをシート状繊維基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的にラミネートすることで調製することもできる。ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。かかる有機溶剤はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
乾燥条件は特に限定されないが、回路基板にラミネートして用いる場合などはプリプレグの接着能力を保持するため、乾燥時に熱硬化性樹脂組成物の硬化をできる限り進行させないことが重要となる。また、プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、熱硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、熱硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60重量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、通常80〜180℃で、3〜13分程度乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0033】
プリプレグの厚み(ソルベント法で形成した場合は、乾燥後の厚み)は20〜100μmであるのが好ましい。厚みが、かかる範囲にあることで、絶縁層の平坦化及び薄型化により有利に作用する。すなわち、プリプレグの厚みが20μm未満であると、回路基板に十分に高い平坦性を有する状態に積層されにくい傾向となり、100μmを超えると、多層プリント配線板の薄型化に有利に作用しにくくなる。
【0034】
図1(a)〜(f)は上述のプリプレグを用いた本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例の工程別断面図であり、図において、
図4と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0035】
先ず、ガラスクロス1に熱硬化性樹脂組成物2を含浸させたプリプレグ3と、回路基板10を用意し(
図1(a)、(b))、プリプレグ3を、回路基板10の表面の導体回路層(パッド)11を覆うように、回路基板10の少なくとも片面に積層し、熱硬化性樹脂組成物2を硬化して、絶縁層4を形成する(
図1(c))。ここで、プリプレグ3の回路基板10への積層は、
図1(c)に示されるように、基本的にプリプレグ1枚(1層)を用いて行うが、2枚(2層)以上を積み重ねて積層してもよい。なお、絶縁層4の厚みは、基本的にプリプレグ3の厚みが踏襲される。従って、絶縁層4の厚みは、好ましくは、20〜100μmであり、より好ましくは30〜70μmである。
【0036】
また、絶縁層4におけるガラスクロスと樹脂組成物の構成比率は、プリプレグ3のガラスクロスと樹脂組成物の構成比率によって決定される。ガラスクロスの密度、布重量等によっても異なるが、回路基板10の表面の導体回路層(パッド)11を埋め込むために(すなわち、導体回路層11(パッド)の全体を包埋するために)、プリプレグには十分な樹脂量が必要であることから、通常、ガラスクロスと樹脂組成物の構成比率は、質量比率(ガラスクロス:樹脂組成物)で、好ましくは1:0.65〜9であり、より好ましくは1:4〜5である。なお、プリプレグ中の樹脂組成物の質量は、プリプレグ質量とガラスクロス質量との差より求めることができる。
【0037】
プリプレグ3(熱硬化性樹脂組成物2)を熱硬化して絶縁層4を形成する手段としては、プリプレグで回路基板の絶縁層を形成する場合の従来公知の方法を用いることができる。例えば、回路基板の片面または両面にプリプレグを重ね、離型シートを介してSUS鏡板等の金属板により、減圧下で、加熱および加圧し、積層プレスを行う。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm
2(49×10
4〜392×10
4N/m
2)、温度は好ましくは120〜200℃、プレス時間は好ましくは15〜100分で行うことができる。
【0038】
熱硬化条件は熱硬化性樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が120〜200℃程度、硬化時間が15〜100分程度が適当である。
【0039】
プリプレグ3(熱硬化性樹脂組成物2)を熱硬化して得られた絶縁層4には、
図1(d)に示されるように、レーザー照射によりビアホール(ブラインドビア)5を形成する。この際、ガラスクロス1と絶縁層4(熱硬化性樹脂組成物2の硬化物)との加工性の違いから、ガラスクロス1がビアホール5の側壁面から突出する(
図1(d))。
【0040】
上記のレーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられるが、特に加工速度、コストの観点から炭酸ガスレーザーが好ましい。
【0041】
なお、ビアホール5の径は、多層プリント配線板の高密度配線化の観点から、トップ径で75μm以下であるのが好ましく、さらには70μm以下であるのが好ましく、さらには67μm以下であるのが好ましい。トップ径で75μm以下となるような、小径ビアホールにおいては、ビアホールの側壁面からのガラスクロスの突出がより顕著な問題となり、本発明の製造方法が特に有利に作用する。
【0042】
ビアホール5の形成後、ビアホール5の壁面から突出するガラスクロス1にガラスエッチング溶液によるエッチング処理を施して、ビアホール5の壁面からガラスクロス1が突出しない状態((
図1(e))にする。この際のガラスエッチング溶液としては、フッ化水素溶液、ホウフッ化水素酸溶液、フッ化アンモニウム溶液等の公知のものを用いることができる。市販されているガラスエッチング溶液としては、例えば、メルテックス(株)製の「エンプレートMLBガラスエッチアディティブ」等を挙げることができる。なお、市販のガラスエッチング溶液は通常希釈して使用される。例えば、ガラスエッチング溶液がホウフッ化水素酸溶液の場合、ホウフッ化水素酸の濃度は約50g/Lが一般的であり、その溶液をイオン交換水、蒸留水等で5ml/L〜200mL/Lの範囲、好ましくは10mL/L〜100mL/Lの範囲で希釈して使用される。エッチングの方法は該溶液にビアホールを形成した積層体を浸漬する方法と該溶液をビアホール内へシャワー状に噴霧する方法があり、シャワー状に噴霧する方法がビアホール内への液の浸透性に優れている。これらの液を用いてのガラスクロスのエッチングは、後述のデスミア処理後のガラスクロス1の突出し長さを抑える観点から、デスミア処理によりビア側壁が削られることを考慮し、ビア側壁面から樹脂(絶縁層4)の内部までガラスクロスをエッチングするのが好ましく、一般的にはビア側壁面から2μm程度、樹脂(絶縁層4)の内部までガラスクロス1をエッチングするのが適当である。よって、かかるガラスエッチング溶液によるエッチング処理によって、ビアホール5の側壁面に開口を有する隙間Sが形成される(
図1(e)参照)。
【0043】
上記のガラスエッチング溶液によるガラスクロス1のエッチング処理を行った後、ビアホール5にデスミア処理を施す(
図1(f))。かかるデスミア処理はビアホール5を形成した積層体を酸化剤溶液に浸漬する方法と酸化剤溶液をビアホール内へシャワー状に噴霧する方法がある。酸化剤溶液としては、例えば、濃硫酸、クロム酸若しくはこれらの混酸、又は、アルカリ性過マンガン酸水溶液(過マンガン酸ナトリウム水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液)等が挙げられ、好ましくはアルカリ性過マンガン酸水溶液である。かかる酸化剤溶液はプリント配線板用薬品として市販されており、市販品をそのまま使用することができる。例えば、アルカリ性過マンガン酸水溶液としては、メルテックス(株)製「エンプレートMLB−497」等が挙げられる。デスミア処理によって、ビアホール5の側壁の熱硬化性樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)が酸化剤により削られて、ガラスクロスのエッチング処理の際に形成された、前述の、ビアホール5の側壁面に開口を有する隙間S(
図1(e)参照)が解消される。なお、かかる隙間Sを確実に無くすために、デスミア処理は十分に行うことが重要であり、ガラスクロス1の先端部分が若干突き出てくることもあるが、その突出し量は少量で済み、ビアホール5を形成するレーザー加工時(
図1(d))のそれに比べて格段に少なくなる(
図1(f))。なお、ビアホール内のめっき液の液まわりを良好にする観点から、デスミア処理後のビアホールの側壁からのガラスクロス1の突出し長さは、6μm以下が好ましく、さらには5μm以下、さらには4μm以下、さらには3μm以下がより好ましい。
【0044】
アルカリ性過マンガン酸水溶液を用いたデスミア処理では、アルカリ性過マンガン酸水溶液による処理に先立って膨潤剤液による膨潤処理を行うのが好ましく、また、アルカリ性過マンガン酸水溶液による処理後に還元剤液による後処理(中和処理)を行なうのが好ましい。なお、膨潤剤液や還元剤液はプリント配線板用薬品として市販されており、市販品をそのまま使用することができる。膨潤剤液としては、例えば、メルテックス(株)製「メルプレートMLB−6001」、同社製「メルプレートMLB−495」、同社製「メルプレートMLB−496」、等が挙げられ、還元剤液としては、メルテックス(株)製「エンプレートMLB−790M」等が挙げられる。
【0045】
ビアホールの酸化剤溶液によるデスミア処理は、絶縁層表面の粗化処理を兼ねて行ってもよい。その場合、微細配線形成及び配線の密着強度の観点から、粗化処理後の絶縁層4の表面の粗度は、表面粗さRa値で0.1μm以上、1.5μm以下であることが望ましい。表面粗さRa値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。例えばビーコインスツルメンツ株式会社製WYKO NT3300を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めることができる。
【0046】
なお、特許文献2では、レーザー照射によって溶融したマトリックス樹脂のガラスクロスへの付着により、フッ化物がガラスクロスと接触されず、有効にエッチング除去されない問題が指摘されているが、本発明者らの検討では、そのような問題は見出されなかった。これは、特許文献2に記載の方法はプリプレグと銅箔を同時に熱圧プレスにより一気に熱硬化して絶縁層と導体層を形成するのに対し、本願の実施例では、めっきにより導体層を形成するため、プリプレグを回路基板にラミネートし、プリプレグの熱硬化及び導体層形成後のアニール処理という実質的に2段階での熱硬化処理を経るプロセスが採用されており、このようなプロセスの差により生じるマトリックス樹脂の硬化状態の相違により、差異が生じたものと推定される。
【0047】
本発明における絶縁層が形成された回路基板には、必要により貫通孔(スルーホール)を形成してもよい。貫通孔形成は従来公知の方法を用いることができ、一般に機械ドリルが用いられるが、銅箔表面を化学的に加工した後、レーザーを照射する方法も用いることができる。多層プリント配線板においては、通常、貫通孔の形成は一般にコア基板において行われ、本発明における絶縁層4のようなビルドアップされた絶縁層は一般にはビアホールにより導通が行われる。
【0048】
本発明の多層プリント配線板の製造方法では、上述の絶縁層へのビアホールの形成、ガラスエッチング処理、デスミア処理の後、絶縁層表面にめっきにより導体層を形成するめっき工程、導体層形成後、加熱により回路基板をアニール処理する工程、及び導体層に回路を形成する回路形成工程をさらに含んでもよい。これらの工程は、当業者に公知である、多層プリント配線板の製造に用いられている各種方法に従って行うことができる。
【0049】
めっきにより導体層を形成するめっき工程では、絶縁層の表面が粗化処理されていれば、アンカー効果によって導体層の絶縁層への密着性が向上する。従って、前述したように、ガラスクロスのエッチング処理後のデスミア処理において、絶縁層表面の粗化処理を同時に行うのが好ましい。なお、当該めっき工程では、ビアホール内にもめっきが形成される。
【0050】
めっきによる導体層の形成は、無電解めっきと電解めっきを組み合わせた方法か、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成することもできる。なお、導体層は、一般に、銅、金、銀、ニッケル、スズ等で形成することができるが、銅が好ましい。無電解めっき層の厚みは、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.3〜2μmであり、電解めっき層の厚みは、無電解めっき層の厚みとの合計厚みが好ましくは3〜35μm、より好ましくは5〜20μmとなる厚みである。また、ビアホールには導体層形成に引き続いてめっきによりフィルドビアを形成することもできる。
【0051】
アニール処理工程は、例えば、導体層形成後、回路基板(絶縁層と導体層)を150〜200℃程度で20〜90分間程度加熱することにより行うことができる。アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
【0052】
回路形成工程は、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。ファインライン形成にはセミアディティブ法が好ましく、無電解めっき層上にパターンレジストを施し、所望の厚みの電解めっき層(パターンめっき層)を形成後、パターンレジストを剥離し、無電解めっき層をフラッシュエッチで除去することにより、回路形成することができる。
【0053】
図2(a)〜
図2(c)は導体層から回路形成までの一連の工程の一例を示している。絶縁層4の表面及びビアホール5の内面に無電解めっきによりシード層(導体層)6を形
成し(
図2(a))、該シード層6上にパターンレジスト7を施し、ビアホールを完全に埋める電解めっき層(パターンめっき層)8を形成し(
図2(b))、その後、パターンレジスト7を剥離し、その下の無電解めっき層をフラッシュエッチで除去することにより、フィルドビア9を含む回路を形成している(
図2(c))。
【0054】
このように、本発明方法では、ガラスクロス1を含む絶縁層4に形成したビアホール5の壁面からのガラスクロス1の突出し長さが十分に小さく、かつ、エッチバック現象も抑制できるため、信頼性の高いビア9を確実に形成することができる。すなわち、ガラスクロス1を含む絶縁層4がビルドアップ方式で形成され、該絶縁層4に形成されたビアホール5の側壁からガラスクロス1が6μm以下の長さで突出し、該ガラスクロス1の突出部分が、ビア9を形成する導体層(シード層6及び電解めっき層8)に埋め込まれた、ビア9を含む回路を備えた多層プリント配線板が得られる。
【0055】
本発明の多層プリント配線板の製造に用いる回路基板とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および/または導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう回路基板に含まれる。なお導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0056】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。
【実施例1】
【0057】
<プリプレグの製造>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)28部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)28部とを、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部とシクロヘキサノン15部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、ナフトール系硬化剤(東都化成(株)製「SN−485」、フェノール性水酸基当量215)の固形分50%のMEK溶液110部、硬化触媒(四国化成工業(株)製「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO−C2」)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(積水化学工業(株)製「KS−1」をエタノールとトルエンの1:1(質量比)の混合溶媒に溶解させた固形分15%(質量%)の溶液)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。
該樹脂ワニスを、旭シュエーベル(株)製の1027MSガラスクロス(厚み19μm)に含浸し、80〜120℃で6分間乾燥させて得た厚み50μmのプリプレグに、片側からポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38um、以下「PETフィルム」と略称する。)と、反対側から厚み15μmのポリプロピレンフィルム(保護フィルム)を熱ラミネートし、ロール状に巻き取った。その後、幅502mmでスリットし、50m巻きのPETフィルム付プリプレグ2本を得た(ガラスクロスと樹脂組成物の構成比率(質量比)は1:5)。
【0058】
保護フィルムを剥離したPETフィルム付きプリプレグを、回路形成(回路導体厚18μm)された厚さ0.2mmの銅張積層板(回路基板)の両面にラミネートした。次いで
PETフィルムを剥離し、熱硬化させ、上記回路基板の両面に厚み32μmの絶縁層を形成した。その後、回路基板の一方の片面に積層された絶縁層に対して、炭酸ガスレーザーにより、トップ径60μm、ボトム径50μmのビアホールを形成した。
【0059】
続いて、かかる回路基板を、ホウフッ化水素酸を約50g/Lの濃度で含有するガラスエッチング溶液(メルテックス(株)製「エンプレートMLBガラスエッチアディティブ」)をイオン交換水で希釈して濃度20mL/Lとした水溶液に、40℃で5分間浸漬して、ガラスクロスをエッチングし、次に、ビアホールのデスミア処理を行った。当該デスミア処理は絶縁層表面の粗化処理も兼ねるものであり、膨潤剤液としてのメルテックス(株)製「メルプレートMLB−6001」に温度60℃で5分間浸漬し、酸化剤溶液としてのアリカリ性過マンガン酸水溶液であるメルテックス(株)製「エンプレートMLB−479」に温度80℃で20分間浸漬し、還元剤液としてのメルテックス(株)製「エンプレートMLB−790」に温度40℃で5分間浸漬することにより行った。
【0060】
ガラスエッチング処理後とデスミア処理(粗化処理)後に、回路基板のビアホールの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製、型式「SU−1500」)により観察し、ビアホール側壁における隙間長さ(すなわち、
図1(e)に示されるビアホールの側壁面に開口を有する隙間Sの長さ)とガラスクロスの突出し長さを測定した。
測定は回路基板のガラスクロス密度の高い繊維束の交差箇所に形成したビアホールで行い、SEM写真上で最も長い隙間長さ及び突出し長さを代表値とした。
「隙間長さ」は、SEM写真上で、
図3(a)の模式図に示すように、ビアホール5の側壁5aにおける隙間Sの開口の略中心を基準点Xとし、この基準点Xから隙間S内の最も奥まった位置までの水平方向(絶縁層4の上面4aと平行な方向)の直線距離Aで定義し、「突出し長さ」は、SEM写真上で、
図3(b)の模式図に示すように、ビアホール5内の側壁5aから突出するガラスクロス1の根元の略中心を基準点Xとし、この基準点Xからガラスクロスの先端までの水平方向(絶縁層4の上面4aと平行な方向)の直線距離Bで定義した。
なお、ガラスエッチング処理後に回路基板の一部を分離して、該分離した回路基板のビアホールにて隙間長さを測定し、残りの回路基板にデスミア処理を施して、該残りの回路基板のビアホールにてガラスクロスの突出し長さを測定した。
また、絶縁層の表面粗さを以下の方法で測定したところ、Ra(算術平均粗さ)=800nmであった。
【0061】
<絶縁層表面粗さ測定>
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ株式会社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして、絶縁層表面のRa(算術平均粗さ)を求めた。
【実施例2】
【0062】
ガラスエッチング溶液(メルテックス(株)製「エンプレートMLBガラスエッチアディティブ」)をイオン交換水で希釈し、濃度35mL/Lにした水溶液を用いる以外は、全て実施例1と同様の操作及び測定を行った。なお、絶縁層表面のRa(算術平均粗さ)は800nmであった。
【実施例3】
【0063】
ガラスエッチング溶液(メルテックス(株)製エンプレートMLBガラスエッチアディティブ)をイオン交換水で希釈し、濃度50mL/Lとした水溶液を用いる以外は、全て実施例1と同様の操作及び測定を行った。なお、絶縁層表面のRa(算術平均粗さ)は800nmであった。
【0064】
<比較例1>
ガラスエッチングを省略したこと以外は、全て実施例1と同様の操作及び測定を行った。
【0065】
<比較例2>
ガラスエッチングを、デスミア処理を兼ねた絶縁層表面の粗化処理後に行う以外は、全て実施例1と同様の操作及び測定を行った。
【0066】
<比較例3>
ガラスエッチングを、デスミア処理を兼ねた絶縁層表面の粗化処理後に行う以外は、全て実施例2と同様の操作及び測定を行った。
【0067】
<比較例4>
ガラスエッチングを、デスミア処理を兼ねた絶縁層表面の粗化処理後に行う以外は、全て実施例3と同様の操作及び測定を行った。
【0068】
実施例1〜3および比較例1〜4の結果を表1にまとめた。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から明らかなように、本発明の実施例においては、ビアホールの側壁に隙間を生じることなく、ビアホール側壁から突出したガラスクロスを効果的にエッチングできていることが分かる。一方、比較例では、エッチングによりガラスクロスの突出しを減少させていくと、ビアホール側壁内までガラスクロスがエッチングされることにより隙間が生じるため、効果的なエッチングが困難となっていることが分かる。
【実施例4】
【0071】
実施例3のデスミア処理(粗化処理)後の積層体の絶縁層表面とビアホールに無電解銅めっきの触媒付与を行なった後、無電解銅めっきを行い、続いて、硫酸銅にて電解銅めっきを行って、ビアホールをフィルドビアとした。
【実施例5】
【0072】
実施例4で得られた積層体の最外層の銅(絶縁層上の銅層)にエッチングを施して回路を形成し、4層プリント配線板を得た。その後、さらに180℃で30分アニール処理を行った。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、ピール強度は0.8kgf/cmであった。ピール強度の測定は日本工業規格(JIS) C6481に準じて評価した。また、得られた多層プリント配線板は255℃×15分ベークしても反らなかった。
【0073】
本出願は特願2007−303737を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。