(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816260
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/65 20060101AFI20151029BHJP
C07C 47/565 20060101ALI20151029BHJP
C07C 47/575 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
C07C45/65
C07C47/565
C07C47/575
【請求項の数】28
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-501811(P2013-501811)
(86)(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公表番号】特表2013-523685(P2013-523685A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011054851
(87)【国際公開番号】WO2011120980
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】10158910.9
(32)【優先日】2010年4月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(72)【発明者】
【氏名】エーベル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】リューデナウアー,シュテファン
【審査官】
土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
西独国特許出願公開第02904315(DE,A)
【文献】
特開2005−154385(JP,A)
【文献】
REN X,FIRST ENANTIOSELECTIVE SYNTHESIS OF DAPHNETICIN AND ITS REGIOISOMER,TETRAHEDRON ASYMMETRY,英国,PERGAMON PRESS LTD.,2002年 8月27日,V13 N16,P1799-1804
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/65
C07C 47/565
C07C 47/575
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、R
1、R
3及びR
5の群からの一つ、二つ、又は三つ全ての基がヒドロキシルであり、R
1、R
3及びR
5の群からのヒドロキシルではない一つ又は複数の基がそれぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル又はC
6〜C
14-アリールであり、R
2及びR
4はそれぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル(ここでC
1〜C
8-アルキルは置換されていてもよい)、C
1〜C
8-アルコキシ又はC
6〜C
14-アリールである]のアルデヒドの調製方法であって、式(II)
【化2】
[式中、R'
1、R'
3及びR'
5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はC
1〜C
8-アルコキシであり、R'
1、R'
3及びR'
5の群からのC
1〜C
8-アルコキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル又はC
6〜C
14-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ式(I)に定義された通りである]のアルデヒドを(C
1〜C
4-アルキル)
2-アミンの存在下で
、40〜300℃の間の温度及び1〜100barの間の圧力で転換すること、及びその後、式(I)の反応生成物を単離することを含む、前記方法。
【請求項2】
転換が60〜250℃の間の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転換が80〜160℃の間の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
転換が2〜60barの間の圧力で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
転換が2〜20barの間の圧力で行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応時間が1〜48時間の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応時間が2〜18時間の間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応時間が6〜15時間の間である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
転換が、ジメチルアミン又はジエチルアミンの存在下で行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
転換が、ジメチルアミンの存在下で行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
転換が水溶液中の(C1〜C4-アルキル)2-アミンの存在下で行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
転換が水溶液中のジメチルアミンの存在下で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(II)[式中、R'1、R'3及びR'5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はC1〜C4-アルコキシであり、R'1、R'3及びR'5の群からの、C1〜C4-アルコキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C1〜C4-アルキル又はC6〜C10-アリールであり、R2及びR4は、それぞれ請求項1の式(I)に定義された通りである]のアルデヒドが使用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
式(II)[式中、R'1、R'3及びR'5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はC1〜C4-アルコキシであり、R'1、R'3及びR'5の群からの、C1〜C4-アルコキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C1〜C4-アルキル又はC6〜C10-アリールであり、R2及びR4は、それぞれ、水素、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ又はC6〜C10-アリールである]のアルデヒドが使用される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
式(II)[式中、R'1、R'3及びR'5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はメトキシであり、R'1、R'3及びR'5の群からの、メトキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C1〜C4-アルキル又はC6〜C10-アリールであり、R2及びR4は、それぞれ、水素、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ又はC6〜C10-アリールである]のアルデヒドが使用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(IIa)
【化3】
[式中、R'
1及びR'
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールであり、XはC
1〜C
4-アルキ
ルである]のアルデヒドが、式(Ia)
【化4】
[式中、R
1及びR
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールである]のアルデヒドに転換される、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
式(IIb)
【化5】
[式中、R'
3及びR'
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールであり、XはC
1〜C
4-アルキ
ルである]のアルデヒドが、式(Ib)
【化6】
[式中、R
3及びR
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールである]のアルデヒドに転換される、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
式(IIb)において、Xがメチルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(IIa)[式中、R'1、R'5、R2及びR4はそれぞれ水素であり、XはC1〜C4-アルキルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素である]のアルデヒドに転換される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
式(IIa)[式中、R'1、R'5及びR4はそれぞれ水素であり、R2はC1〜C4-アルコキシであり、XはC1〜C4-アルキルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R1、R4及びR5はそれぞれ水素であり、R2はC1〜C4-アルコキシである]のアルデヒドに転換される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
式(IIa)及び式(Ia)において、R2がメトキシである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式(IIa)において、Xがメチルである、請求項16及び19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
式(IIa)[式中、R'1及びR'5はそれぞれ水素であり、R2及びR4はそれぞれC1〜C4-アルコキシであり、Xはメチルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R1及びR5はそれぞれ水素であり、R2及びR4はそれぞれC1〜C4-アルコキシである]のアルデヒドに転換される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
式(IIa)及び式(Ia)において、R2及びR4がそれぞれメトキシである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式(IIc)
【化7】
[式中、R
2及びR
4はそれぞれ独立に、水素又はC
1〜C
4-アルコキ
シであり、XはC
1〜C
4-アルキ
ルである]のアルデヒドが、式(Ic)
【化8】
[式中、R
2及びR
4はそれぞれ式(IIc)に定義された通りである]のアルデヒドに転換される、請求項
16に記載の方法。
【請求項26】
式(IIc)において、R2及びR4が水素、メトキシ又はエトキシである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式(IIc)において、Xがメチルである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
転換が連続的に行われる、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香環上に少なくとも一つのヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドを調製するための、文献に記載された手順の一例には、芳香族メチルエーテルのO-脱メチル化がある。しかし、O-脱メチル化をするための既知の方法を工業規模で使用するには制限がある。例えば、使用する試薬は高価であり、腐食を促進し、且つ/又はきわめて厳しい反応条件、例えばジメチルホルムアミド中150℃でナトリウムチオエトキシドによって反応させること、又は液体アンモニア中ナトリウムで反応させることなどを必要とするためである。高反応性の試薬、例えば三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム又は三塩化ホウ素での反応は、転換が実に迅速であるが、二つ又は三つの芳香族メトキシ基が芳香環上に存在すると途端に、選択性は著しく低くなる。芳香族がさらなる官能基、例えばアルデヒド、ケト又はベンジル型アルコールの基を含む場合、この配列において副反応がより頻発しうるため、強ルイス酸又はルイス塩基の使用も困難になる。
【0003】
ポリ-メトキシ置換ベンズアルデヒドの位置選択的なO-脱メチル化が文献から知られている。例えば以下の通りである。
【0004】
Demyttenaere他、Tetrahedron 2002、58、2163〜2166ページは、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化にAlCl
3を使用している。この脱メチル化は、オルト及びパラ位で、大いに過剰なAlCl
3の存在下で行われる。
【0005】
Ren他、Tetrahedron Asymm. 2002、13、1799〜1804ページは、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化にピペリジン-水混合物を使用している。不利な点は、反応時間が長いこと、及び、電子がきわめて豊富な化合物のみに対するこの反応の適用可能性がわずかに低いことである。
【0006】
Bhattacharya他、Tetrahedron Lett. 2006、565〜567ページは、3,4-ジメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化にNaSCN及びTriton-X405を使用している。この転換には、比較的高温が必要である。
【0007】
Fang他、J. Mol. Cat. A: Chemical 2007、16〜23ページは、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒド及び3,4-ジメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化に、マイクロ波照射下で、ジメチルホルムアミドに溶解したLiClを使用している。この転換は、高価なLiClの存在下で行われ、有毒な塩化メチルも形成する。
【0008】
Prager及びTan、Tetrahedron Lett. 1967、38、3661〜3664ページは、3,4-ジメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化に、ルイス酸、例えばAlCl
3を使用している。この手順の不利な点は、この試薬に腐食問題があること、及びモル比の厳密な設定が必要とされることである。
【0009】
Pearl他、J. Am. Chem. Soc. 1952、74、4262〜4263ページは、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒドの脱メチル化に硫酸を使用している。不利な点は、この試薬に腐食問題があること、及び、この手順を3,4-ジメトキシベンズアルデヒドに適用する場合、2,3,4-トリメトキシベンズアルデヒドと比較して逆位置選択的に転換されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来技術に端を発し、プロセス技術による管理が容易な方法で実施することができ、全収率が高く、位置選択性が工業規模では最大である、ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドの調製方法を提供することが本発明の目的である。回収が容易で再利用性の良好である安価な出発化合物及び試薬を利用することが可能なはずである。
【0011】
驚くべきことに、高温高圧でアルコキシベンズアルデヒドをジアルキルアミンと反応させると、迅速且つ位置選択的でもあるO-脱アルキル化が起こることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、式(I)
【化1】
【0013】
[式中、R
1、R
3及びR
5の群からの一つ、二つ、又は三つ全ての基がヒドロキシルであり、R
1、R
3及びR
5の群からのヒドロキシルではない一つ又は複数の基がそれぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル又はC
6〜C
14-アリールであり、R
2及びR
4はそれぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル、C
1〜C
8-アルコキシ又はC
6〜C
14-アリールである]のアルデヒドの調製方法であって、式(II)
【化2】
【0014】
[式中、R'
1、R'
3及びR'
5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はC
1〜C
8-アルコキシであり、R'
1、R'
3及びR'
5の群からのC
1〜C
8-アルコキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル又はC
6〜C
14-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ式(I)に定義された通りである]のアルデヒドを(C
1〜C
4-アルキル)
2-アミンの存在下で高温高圧で転換すること、及びその後、式(I)の反応生成物を単離することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明による方法は、驚くほど位置選択性が高いことで注目に値する。例えば、本発明による方法によって、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドは、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒドに、きわめて選択的に転換される。
【0016】
C
1〜C
8-アルキルとしてのR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R'
1、R'
3及びR'
5基に有用な基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-へキシル又はn-オクチルが含まれ、この場合、上記C
1〜C
8-アルキル基は、例えば、塩素、フッ素若しくは臭素などのハロゲン、又はヒドロキシルで置換されてもよい。好ましくはC
1〜C
4-アルキル基であり、特に好ましくはC
1〜C
3-アルキル基である。きわめて特に好ましいアルキル基はメチル及びエチルである。
【0017】
C
6〜C
14-アリールとしてのR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R'
1、R'
3及びR'
5基に有用な好ましい基は、フェニル又はナフチル基であり、これらの基は、芳香族系上で、例えば、ハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素、C
1〜C
4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル及びイソブチル、C
1〜C
4-アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ及びtert-ブトキシでさらに置換されてもよい。
【0018】
C
1〜C
8-アルコキシとしてのR
2、R
4、R'
1、R'
3及びR'
5基に有用な基の例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ及びn-オクチルオキシが含まれる。好ましくはC
1〜C
4-アルコキシ基であり、特に好ましい基はメトキシ及びエトキシである。R'
1、R'
3及びR'
5基については、メトキシ基がきわめて特に好ましい。R
2及びR
4基について、きわめて特に好ましいC
1〜C
4-アルコキシ基はメトキシ及びエトキシである。
【0019】
本発明の転換を行う温度は、40〜300℃の間の範囲が好ましく、60〜250℃の間の範囲がより好ましく、80〜160℃の間の範囲が最も好ましい。
【0020】
本発明による方法は、1〜100barの間の圧力下で実施し、2〜60barの間の圧力が好ましい。2〜20barの間の圧力がきわめて特に好ましい。
【0021】
反応は長時間にわたって実施することができ、転換の反応時間は1〜48時間の間の範囲である。反応時間は、2〜18時間の間が好ましく、6〜15時間の間が最も好ましい。
【0022】
本発明による方法は、(C
1〜C
4-アルキル)
2アミンの存在下で実施する。特に有用なジアルキルアミンには、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミンが含まれる。アミンは、ジメチルアミン及びジエチルアミンがより好ましく、ジメチルアミンがきわめて特に好ましい。
【0023】
本発明による方法の同様に好ましい構成において、転換は水溶液中のジアルキルアミンの存在下で行われる。ジメチルアミンの水溶性はきわめて良好である。したがって、水に溶解したジメチルアミンの市販水溶液を使用することが可能である。水に溶解したジメチルアミンの市販溶液は、約35〜65mol%のジメチルアミンを含む。ジエチルアミンは液体であり、同様に水溶液として使用することができる。ジ-n-プロピルアミン及びジイソプロピルアミンも、同様に水溶液として使用することができる。本発明による方法の好ましい実施形態において、ジメチルアミンは水溶液中で使用する。水溶液のジメチルアミン含有量は、40〜60mol%が好ましい。
【0024】
本発明による方法は、さらなる実施形態において、一つ又は複数のさらなる溶媒の存在下で実施することができる。有用なさらなる溶媒には、特に、極性溶媒、例えばアセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、又は他のアルコール、例えばメタノール、エタノールが含まれる。
【0025】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態において、式(II)[式中、R'
1、R'
3及びR'
5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はC
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシであり、R'
1、R'
3及びR'
5の群からの、C
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
8-アルキル、C
1〜C
8-アルコキシ又はC
6〜C
14-アリールである]のアルデヒドが使用される。
【0026】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、式(II)[式中、R'
1、R'
3及びR'
5の群からの一つ、二つ又は三つ全ての基はメトキシであり、R'
1、R'
3及びR'
5の群からのメトキシではない一つ又は複数の基は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4はそれぞれ水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールである]のアルデヒドが使用される。
【0027】
本発明による方法のきわめて特に好ましい実施形態において、式(IIa)
【化3】
【0028】
[式中、R'
1及びR'
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールであり、XはC
1〜C
4-アルキル、特にメチルである]のアルデヒドが、式(Ia)
【化4】
【0029】
[式中、R
1及びR
5はそれぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールである]のアルデヒドに転換される。
【0030】
本発明による方法の同様にきわめて特に好ましい実施形態において、式(IIb)
【化5】
【0031】
[式中、R'
3及びR'
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールであり、XはC
1〜C
4-アルキル、特にメチルである]のアルデヒドが、式(Ib)
【化6】
【0032】
[式中、R
3及びR
5は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル又はC
6〜C
10-アリールであり、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
4-アルキル、C
1〜C
4-アルコキシ又はC
6〜C
10-アリールである]のアルデヒドに転換される。
【0033】
本発明による方法のさらにより好ましい実施形態において、式(IIa)[式中、R'
1、R'
5、R
2及びR
4はそれぞれ水素であり、XはC
1〜C
4-アルキル、特にメチルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R
1、R
2、R
4及びR
5はそれぞれ水素である]のアルデヒドに転換される。
【0034】
本発明による方法のさらに一層より好ましい実施形態において、式(IIa)[式中、R'
1、R'
5及びR
4はそれぞれ水素であり、R
2はC
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシであり、XはC
1〜C
4-アルキル、特にメチルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R
1、R
4及びR
5はそれぞれ水素であり、R
2はC
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシである]のアルデヒドに転換される。
【0035】
本発明による方法の同様にさらにより好ましい実施形態において、式(IIa)[式中、R'
1及びR'
5はそれぞれ水素であり、R
2及びR
4はそれぞれC
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシであり、Xはメチルである]のアルデヒドが、式(Ia)[式中、R
1及びR
5はそれぞれ水素であり、R
2及びR
4はそれぞれC
1〜C
4-アルコキシ、特にメトキシである]のアルデヒドに転換される。
【0036】
本発明による方法のさらに一層より好ましい実施形態において、式(IIc)
【化7】
【0037】
[式中、R
2及びR
4はそれぞれ独立に、水素又はC
1〜C
4-アルコキシ、好ましくは水素、メトキシ又はエトキシであり、XはC
1〜C
4-アルキル、好ましくはメチルである]のアルデヒドが、式(Ic)
【化8】
【0038】
[式中、R
2及びR
4はそれぞれ式(IIc)に定義された通りである]のアルデヒドに転換される。この転換は、ジメチルアミンの存在下で、130〜150℃の間の範囲の温度、5〜15barの圧力で行われることが好ましい。12〜15時間の反応時間の後に、転換は終了する。
【0039】
本発明による方法に有用な出発化合物には、例えば、以下の式(II)の化合物が含まれる。2-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、3,4-ジエトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、3-メチル-4-メトキシベンズアルデヒド、3-エチル-4-メトキシベンズアルデヒド、2-メチル-5-メトキシベンズアルデヒド、2,5-ジメチル-4-メトキシベンズアルデヒド、2-フェニル-4-エトキシベンズアルデヒド。
【0040】
本発明の転換は圧力下で行われるため、耐圧性の装置を使用しなければならない。有用な耐圧性の装置には、市販のオートクレーブ又は他の連続式耐圧性の装置、例えば管型反応器が含まれる。
【0041】
オートクレーブは、比較的高圧に耐えることが可能でなければならない。一般的な実験室用オートクレーブは約150barに耐える。腐食を防止し、充填物を汚染しないように、外壁は厚く、ステンレス鋼からなるものが多い。高反応性の化学物質での反応を実施するにあたって、内部をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブが入手可能である。特定の設計によって、圧力を7000barまでに、温度を600℃超にすることが可能である。実験室用では、数ミリリットルから数リットルまでの容積のオートクレーブが普及しており、一般的に、圧力計、温度計及びガス弁を備えている。
【0042】
本発明による方法によって得られる反応生成物は、通例のプロセス、例えば抽出、蒸留及び/又は結晶化により、反応混合物を後処理することによって回収される。例えば、過剰なジメチルアミン及び水を減圧下で除去する。次に、水非混和性の溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテルなどを添加し、この混合物を、酸、例えば水に溶解した30%のHClで酸性化し、相分離の後、及び有機相の全ての揮発性成分の除去の後、場合によっては蒸留又は結晶化の後で、生成物を良好な収率で得ることができる。
【0043】
本発明に従って実施される転換は、バッチ式又は連続式のいずれかで実施することができる。例えばバッチ式の場合、転換は次のように行うことができる。式(II)のアルデヒド、及び、例えばジアルキルアミンの水溶液を、任意選択でさらなる溶媒、例えばメタノールの存在下で、好適な反応容器、例えばオートクレーブの中に最初に充填し、高温高圧下で転換を行う。既述の通り、反応の完了後に、過剰なジアルキルアミン及び水を減圧下で除去し、水不溶性の溶媒、例えばメチルtert-ブチルエーテルを添加し、例えば水に溶解した30%のHClで混合物を酸性化し、相分離の後、及び有機相の全ての揮発性成分を除去した後、得られた反応混合物から、好適な分離方法で式(I)の反応生成物を単離する。個々の反応成分の接触順序は重要ではなく、個別のプロセス技術構成によって様々でありうる。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明に従って実施される脱アルキル化、特にジアルキルアミンの存在下での式(II)のアルデヒドの脱メチル化は、連続的に、例えば連続式管型反応器中で高温高圧で実施される。このため、例えば転換対象の出発材料、式(II)のアルデヒドとジアルキルアミンとの混合物を、場合によっては水溶液として調製し、この混合物を連続的に相互接触させることが可能である。このため、選択した出発成分、式(II)のアルデヒドとジアルキルアミンとを管型反応器内に導入することができ、出発材料をその中に連続的に導入することができ、反応混合物を連続的に排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を以下の実施例によって詳細に例示するが、これらの例には限定しない。実施例において、%で表す全ての数字は重量%である。
【実施例1】
【0046】
100mlのガラス製オートクレーブに8.84g(65.0mmol)の4-メトキシベンズアルデヒド及び51.2g(455mmol)のジメチルアミン(水に溶解した40%溶液)を充填する。オートクレーブを閉め、二相性の反応混合物を140℃(自己圧力(autogenous pressure)7.5bar)で15時間攪拌する。過剰なジメチルアミン及び水を減圧下で除去し、メチルtert-ブチルエーテルを添加し、この混合物を、水に溶解した30%塩酸で酸性化する。相分離し、有機相の全ての揮発性成分を除去した後で、6.5g(0.53mmol、81%収率)の4-ヒドロキシベンズアルデヒドが得られる。
【実施例2】
【0047】
金属製オートクレーブに14.0g(84.0mmol)の3,4-ジメトキシベンズアルデヒド及び120g(1.0mol)のジメチルアミン(水に溶解した40%溶液)を充填する。オートクレーブを閉め、二相性の反応混合物を140℃(自己圧力14bar)で10時間攪拌する。過剰なジメチルアミン及び水を減圧下で除去し、メチルtert-ブチルエーテルを添加し、この混合物を、水に溶解した30%塩酸で酸性化する。相分離し、有機相の全ての揮発性成分を除去した後で、8.5g(56.0mmol、67%収率)の4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドが得られる。
【実施例3】
【0048】
100mlのガラス製オートクレーブに11.8g(60.0mmol)の3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド及び47.2g(420mmol)のジメチルアミン(水に溶解した40%溶液)を充填する。オートクレーブを閉め、二相性の反応混合物を140℃(自己圧力10bar)で18時間攪拌する。過剰なジメチルアミン及び水を減圧下で除去し、メチルtert-ブチルエーテルを添加し、この混合物を、水に溶解した30%塩酸で酸性化する。相分離し、有機相の全ての揮発性成分を除去した後で、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒドが収率72%で得られる。