(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時間変化波形に出現する、帯電電位の変化量が単位期間あたりの振幅の平均値よりも大きなピークである特定ピークの数である特定ピーク数を単位期間毎に複数回計数する計数ステップを設け、
前記検知ステップでは、
前記特定ピーク数の出現頻度から当該タイヤの摩耗状態を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ摩耗状態検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、タイヤに加工を施す必要があるだけでなく、トレッドゴム層のゴムとは異なる物性のゴムがトレッド表面に露出した場合には、タイヤのグリップ力が低下してしまうなどの問題点があった。
また、特許文献2に記載の方法では、タイヤ内に送信機やアンテナ等を設ける必要があるだけでなく、加速度センサーのデータを通信によって車体側に送る構成であるため、ノイズが入りやすく、測定精度が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤ内にセンサーを設けることなく、走行中のタイヤの摩耗状態を検知する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、タイヤと路面との接触、剥離及び摩擦によってタイヤと路面との間に帯電電位が生じること自体は知られている(例えば、特開2011−225023号公報の背景技術など)。一方、車体とタイヤとは容量結合されているので、車体外表面には、タイヤと路面との間に生じた帯電電位に応じた電位が発生する。
タイヤ表面や車体外表面に分布する電界は、以下の式(1)に示す、微小ダイポールアンテナが距離rに生成する電界のうちの1つで、マックスウェル方程式による解から求められる。式(1)は、電磁界を構成する3つの要素(1/rに比例する放射電磁界、1/r
2に比例する誘導電磁界、1/r
3に比例する準静電界)を含み、第3項がタイヤ表面や車体外表面に分布する電界であり、車両の走行に伴うタイヤの転動よりに時間的に変化する。
【数1】
準静電界は磁界成分を含まず、また、電波のように伝搬する性質がなく、人や車両、物質の周りに静電気帯電電界のように分布し、その極性またはレベルが変化する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、タイヤの摩耗状態によりタイヤと路面間の接触状態及び摩擦状態が異なることから、車体外表面の帯電電位の変化を検出することで、タイヤの摩耗状態を検知できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
本発明は、走行中のタイヤの摩耗状態を検知する方法であって、タイヤと路面との接触、剥離及び摩擦により車体に分布する帯電電位を検出する検出ステップと、前記検出ステップにて検出される帯電電位の時間変化波形を監視する監視ステップと、タイヤ摩耗状態の変化に伴う前記時間変化波形の変化から当該タイヤの摩耗状態を検知する検知ステップとを備えることを特徴とする。
これにより、タイヤにセンサーを設けることなく、タイヤの摩耗状態を検知できる。
また、検知したデータを無線等で送信する必要がないので、装置を簡易化できるとともに、タイヤ摩耗状態の検知精度が向上する。
【0008】
また、本発明は、前記時間変化波形に出現する、帯電電位の変化量が単位期間あたりの振幅の平均値よりも大きなピークである特定ピークの数である特定ピーク数を単位期間毎に複数回計数する計数ステップを設け、前記検知ステップにおいて、前記特定ピーク数の出現頻度から当該タイヤの摩耗状態を検知することを特徴とする。
このように、時間変化波形に出現する特定ピークの数を単位期間毎に複数回計数して求めた特定ピーク数の出現頻度からタイヤの摩耗状態を検知すれば、タイヤ摩耗状態の検知精度を更に向上させることができる。
【0009】
また、本発明は、前記計数ステップにおいて、前記時間変化波形から単位期間あたりのRMS値を取得して、前記RMS値を単位期間あたりの振幅の平均値とすることを特徴とする。
このように、路面の凹凸状態や車速により変化するRMS値を単位期間あたりの振幅の平均値とすれは、路面の凹凸状態や車速に起因する不要なピークを確実に排除することができるので、タイヤ摩耗状態の検知精度を更に向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記計数ステップにおいて、前記時間変化波形から、正側のピークと負側のピークとを抽出して、前記正側のピークの振幅値と前記負側のピークの振幅値との差であるピーク値差を算出し、前記ピーク値差が前記RMS値を超えた場合に、前記正側のピーク又は負側のピークを特定ピークと判定して、前記判定された特定ピークの数である特定ピーク数を計数し、前記検知ステップにおいて、単位期間あたりの特定ピーク数の頻度分布を求め、前記特定ピーク数の出現頻度から当該タイヤの摩耗状態を検知することを特徴とする。
これにより、特定ピーク数の判定精度が更に向上するので、特定ピーク数の出現頻度を正確に求めることができる。
【0011】
また、本発明は、前記検知ステップにおいて、前記特定ピーク数の頻度分布をワイブル分布により近似して、前記ワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータと形状パラメータとを算出し、前記算出された形状パラメータ又は尺度パラメータ及び形状パラメータから当該タイヤの摩耗状態を検知することを特徴とする。
これにより、特定ピーク数の頻度分布の違いを数値化できるので、タイヤの摩耗状態の判定を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明は、走行中のタイヤの摩耗状態を検知する装置であって、タイヤと路面との接触、剥離及び摩擦により車体に分布する帯電電位を検出する検出部と、前記検出部により検出される帯電電位の時間変化波形を監視する監視部と、タイヤ摩耗状態の変化に伴う前記時間変化波形の変化から当該タイヤの摩耗状態を検知する検知部とを備え、前記検知部が、前記時間変化波形に出現する、帯電電位の変化量が単位期間あたりの振幅の平均値よりも大きなピークである特定ピークの数である特定ピーク数を単位期間毎に複数回計数する計数手段と、前記特定ピーク数の出現頻度から当該タイヤの摩耗状態を検知する検知手段とを備えることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、タイヤにセンサー及び無線機を設けることなく、タイヤの摩耗状態を確実に検知することのできるタイヤ摩耗状態検知装置を実現することができる。
【0013】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本実施形態に係るタイヤ摩耗状態検知装置1の構成を示す図である。
タイヤ摩耗状態検知装置1は、検知電極11と、リファレンス電極12と、センサアンプ13と、帯電波形抽出手段14と、RMS(Root Mean Square)値算出手段15と、ピーク計数手段16と、ピーク頻度分布作成手段17と、記憶手段18と、タイヤ摩耗状態検知手段19とを備える。
検知電極11〜センサアンプ13までの各手段が、タイヤ2Bと路面3との接触、剥離及び摩擦により生じる帯電電位を検出する検出部1Aを構成し、帯電波形抽出手段14が、検出部1Aにより検出される帯電電位を監視する監視部1Bを構成し、RMS値算出手段15〜タイヤ摩耗状態検知手段19までの各手段が検知部1Cを構成する。
【0017】
監視部1Bと検知部1Cとは、ROMやRAMなどの記憶装置とマイクロコンピュータのプログラムとから構成される。
具体的には、
図2に示すように、監視部1Bと検知部1Cとは、制御を司るCPU(Central Processing Unit)21に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。例えば、ROM(Read Only Memory)22、CPU21のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)23などがバス24を介して接続される。
ROMには測定するプログラムなどが格納され、RAMには測定データが記憶される。CPU21は、測定プログラムをRAM23に展開して実行する。
【0018】
検知電極11は平板状の電極で、車両2の車体2Aの外側表面に対して所定の空隙を隔てて配置され、車体2Aと容量結合される。本例では、車体2Aの外側表面と検知電極11との間の空隙に厚さが一定の板状の誘電体を介挿することで、車体2Aとの間の静電容量を大きくするとともに、前記空隙の大きさを確保するようにしている。
一方、リファレンス電極12も平板状の電極から成り、車体2Aの外側表面に設けられた防振台2a上に設けられた支持台2bの上端から突出するように取付けられたアクリル,ウレタン等の樹脂から成る棒状の支持棒2cの先端に取付けられる。支持台2bは、防振台2a側と支持棒2cに板状の木材等の絶縁部材が取付けられた筒状の部材である。
これにより、リファレンス電極12を帯電している車体2Aから遠く(例えば、100mm以上)に離すことができるとともに、リファレンス電極12と車体2Aとを電気的に絶縁できるので、リファレンス電極12を安定的に零電位に保つことができる。
【0019】
車体2Aの帯電電位は、(+)側と(−)側とに周期的に変化するので、
図3に示すように、車体2Aと容量結合されている検知電極11の電位である帯電電位も時間的に正負に変化する。
また、車体2Aの帯電電位はタイヤ2Bと路面3との間の静電容量の変化に伴って変化するので、タイヤ2Bと路面3との間の静電容量もタイヤと路面と接触状態や摩擦の大きさによって変化する。タイヤが摩耗すると溝高さが低くなりブロック剛性が変化するだけでなく、トレッドの表面状態も変化するので、タイヤと路面と接触状態や摩擦の大きさも変化する。したがって、前記帯電電位の変化を検出することで、タイヤの摩耗状態を検出することができる。
センサアンプ13は、例えば、FET(Field Effect Transistor)を備えた増幅器で、検知電極11とリファレンス電極12との間の電圧(以下、帯電電圧という)を増幅して出力する。
【0020】
帯電波形抽出手段14は、センサアンプ13で増幅されて連続的に出力される帯電電圧の時間変化波形から、単位期間毎の帯電電圧の時間変化波形(以下、帯電波形という)を順次抽出する。
本例では、単位期間をタイヤ1周分とするとともに、帯電波形抽出手段14にて順次抽出されたタイヤN周分の時間波形のデータを用いて走行中のタイヤの摩耗状態を検知する。
RMS値算出手段15は、抽出された帯電波形のRMS値を、タイヤ1周分毎に算出し、記憶手段18に記憶する。
【0021】
ピーク計数手段16は、ピーク抽出手段16aと、特定ピーク判定手段16bと、計数手段16cとを備え、帯電波形中に含まれる特定ピークの数を計数する。特定ピークについては後述する。
ピーク抽出手段16aは、帯電波形から(+)側のピークと(−)側のピークとを抽出する。
特定ピーク判定手段16bは、時間的に隣接する(+)側のピークの振幅値と(−)側のピークの振幅値との差であるピーク値差を算出するとともに、このピーク値差と記憶手段18に記憶されたRMS値とを比較し、ピーク値差がRMS値よりも大きい場合に、時間的に後ろ側にあるピークを特定ピークと判定する。
RMS値は路面の凹凸状態や車速により変化するので、本例のように、ピーク値差がRMS値よりも大きいピークを特定ピークと判定した方が、振幅値差に対して閾値を設定し、振幅値差が前記閾値よりも大きなピークを特定ピークとするよりも、不要なピークを確実に排除することができる。
図4は、
図3の拡大図で、同図の丸で囲ったピークが特定ピークである。
計数手段16cは、特定ピークの出現回数を計数する。出現回数の計数は、タイヤ1周分毎に行い、計数結果を記憶手段18に記憶する。出現回数の計数は、予め設定した回数であるN回、すなわち、N個の帯電波形についてそれぞれ行う。
【0022】
ピーク頻度分布作成手段17は、ヒストグラム作成手段17aと分布関数近似手段17bとを備える。
ヒストグラム作成手段17aは、記憶手段18に記憶されたタイヤ1回転毎の特定ピークの出現回数のデータを用いて、
図5に示すような、特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムを作成する。
【0023】
分布関数近似手段17bは、ヒストグラム作成手段17aで作成された特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムを、主に物体の破壊現象を統計的に表わす場合に利用されるワイブル分布により近似し、下記の式(2)に示すワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータηと形状パラメータmとを算出する。
【数2】
【0024】
ワイブル分布の確率密度関数の形状パラメータmは分布の形状に関するパラメータで、
図6(A)に示すように、mが小さい場合、f(x)はピークを持たずxが増加するにつれて急激に減少し、mが大きい場合には、f(x)はピークを持つ。
尺度パラメータηはピークの位置と高さとに関するパラメータで、
図6(B)に示すように、ηが小さい場合にはピークの位置の座標が小さく高さが高い。また、ηが大きい場合にはピークの位置の座標が大きく高さが低い。
本例では、後述するように、尺度パラメータηと形状パラメータmとを用いてタイヤ摩耗状態を検知する。
【0025】
記憶手段18は、ROM22及びRAM23から構成され、上述したように、RMS値算出手段15で抽出したタイヤ1周分毎の帯電波形のRMS値と、計数手段16cで計測したタイヤ1周分毎の特定ピークの出現回数を記憶するとともに、タイヤ摩耗状態と尺度パラメータη及び形状パラメータmとの関係を示すM−Wマップ18Mを記憶する。
本例では、タイヤの摩耗状態の指標を溝高さHとした。
M−Wマップ18Mは、予めタイヤの摩耗状態、すなわち、溝高さHの異なる複数種のタイヤを搭載した試験車両を走行させて特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムを作成し、溝高さH毎に作成されたヒストグラムをそれぞれワイブル分布の確率密度関数で近似して尺度パラメータη及び形状パラメータmを求めることで作成することができる。
M−Wマップ18Mとしては、例えば、x軸が尺度パラメータη、y軸が形状パラメータm、z軸がタイヤの溝高さを表わす曲面H(η,m)、もしくは、尺度パラメータηが[η−Δη/2,η+Δη/2]で、形状パラメータmが[m−Δm/2,m+Δm/2]である領域毎に溝高さHのデータを書き込んだ表を用いることができる。
【0026】
タイヤ摩耗状態検知手段19は、ピーク頻度分布作成手段17で求めたワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータη及び形状パラメータmと記憶手段18に記憶されたM−Wマップ18Mとを比較してタイヤの摩耗状態の指標である溝高さHを検知する。
図7(A),(B)は、摩耗していないタイヤ(以下、新品という)の帯電電圧の時間変化波形と特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムで、
図8(A),(B)は、摩耗したタイヤ(以下、摩耗品という)の帯電電圧の時間変化波形と特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムである。なお、新品の溝高さはH
0=7.5mmで、摩耗品の溝高さはH=2.5mmである。
新品のヒストグラムと摩耗品のヒストグラムとをそれぞれ同図の太い曲線で示すワイブル分布に近似して、確率密度関数の尺度パラメータη及び形状パラメータmを比較すると、新品では、確率密度関数の尺度パラメータηと形状パラメータmとはともに大きく(η=11.0,m=3.35)、摩耗品では、尺度パラメータηも形状パラメータmも新品よりも小さい(η=6.40,m=2.37)ことが分かる。
したがって、尺度パラメータη及び形状パラメータmと記憶手段18に記憶されたM−Wマップ18Mとを比較すれば、タイヤの摩耗状態の指標である溝高さを精度よく検知することができる。
すなわち、ピーク頻度分布作成手段17で求めたワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータ及び形状パラメータをそれぞれη
k,m
kとすると、η
k+Δη/2≧η≧η
k+Δη/2、かつ、m
k+Δm/2≧m≧m
k+Δm/2なら溝高さはH
kであると検知する。ここで、H
kは、M−Wマップ18Mに記載された尺度パラメータがη
kで、形状パラメータm
kであるときの溝高さである。
【0027】
次に、タイヤ摩耗状態検知装置1を用いてタイヤ摩耗状態を検知する方法について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、走行中の車両2のタイヤ2Bと路面3との間の静電容量の変化に伴って変化する車体2Aの帯電電位の変化を、車体2Aと容量結合されている検知電極11の帯電電圧の時間変化波形として検出(ステップS10)した後、この帯電電圧の時間変化波形から、タイヤ1周分毎の帯電電圧の時間変化波形である帯電波形を順次抽出する(ステップS11)。
次に、抽出されたタイヤ1周分の帯電波形のRMS値を算出する(ステップS12)とともに、このタイヤ1周分の帯電波形中に含まれる特定ピークの個数である特定ピークの出現回数を計数する(ステップS13)。
そして、タイヤN回転分の特定ピーク出現回数の計数が終了したか否かを調べる(ステップS14)。
【0028】
N回転分の計数が終了していない場合には、ステップS11に戻って次の帯電波形を抽出して特定ピークの出現回数を計数する操作を継続する。
N回転分の計数が終了した後には、特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムを作成(ステップS15)した後、このヒストグラムをワイブル分布により近似して、ワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータηと形状パラメータmとを算出(ステップS16)する。
そして、算出された尺度パラメータηと形状パラメータmと、前記M−Wマップ18Mとを比較して、走行中のタイヤの溝高さを検知する(ステップS17)。
このように帯電電圧の時間変化波形から特定ピークの出現回数の頻度分布を表わすヒストグラムを作成してワイブル分布の確率密度関数の尺度パラメータηと形状パラメータmとを求め、これら尺度パラメータηと形状パラメータmとを用いてタイヤの摩耗状態の指標である溝高さを検知すれば、路面凹凸の影響や車速の影響を排除することができるので、タイヤの摩耗状態を精度良く検知することができる。
【0029】
なお、前記実施の形態では、車体2Aの帯電電位の変化を検出することで、4個のタイヤ2Bの帯電電位を合成したものを検出したが、検知電極11を、例えば、各タイヤ2Bのタイヤハウス2C(
図1参照)に設けて、タイヤ2Bの帯電電位をそれぞれ検出すれば、各タイヤ2Bの摩耗状態を検知できる。
また、前記実施の形態では、帯電電圧の時間変化波形を用いて算出した尺度パラメータηと形状パラメータmとM−Wマップ18Mとを比較して、タイヤの摩耗状態を検知したが、尺度パラメータηと形状パラメータmとのそれぞれについて閾値K
1及び閾値K
2を設け、η≧K
1かつm≧K
2なら摩耗が進展していないし、η<K
1かつm<K
2なら摩耗が進展しているとしてもよい。
【0030】
また、前記実施形態では、検知電極11を車体2Aの外側表面に対して空隙を隔てて配置した車体2Aと容量結合したが、車体2Aの外側表面に配置してもよい。あるいは、車体2A自体を検知電極に相当する導体としてもよい。
また、前記実施の形態では、リファレンス電極12と車体2Aとを電気的に絶縁するとともに、リファレンス電極12を車体2Aから遠くに離して配置したが、
図10に示すような多重電極構造内部に電界が零に近い特異領域を形成し、この特異領域にリファレンス電極12を配置する構成とすれば、リファレンス電極12の電位を安定化できるとともに、リファレンス電極12を、車体2Aの内側に配置することができる。
具体的には、正方形の各頂点に4個の電極31〜34(以下、4重極子という)を配置し、各電極31〜34に一定周波数の交流信号を印加するとともに、隣り合う頂点に位置する電極31−32,32−33,33−34,34−31の位相を反転させることにより、正方形の重心位置近傍での電界の強さを0[V/m]又はそれに近似する値とすることができる。したがって、前記重心位置近傍にリファレンス電極12を配置すれば、リファレンス電極12をアースの代わりとなる基準電位(零電位)にすることができる。
なお、多重電極構造としては前記重極子に限定されるものではなく、例えば、正2n(nは2以上の偶数)角形の各頂点に電極を配置し、隣り合う頂点に配置された電極では位相の反転した交流電流を印加する構成とすれば、正2n角形の重心近傍での電界の強さを0[V/m]又はそれに近似する値とすることができる。
【0031】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 タイヤ摩耗状態検知装置、1A 検出部、1B 監視部、1C 検知部、
2 車両、2A 車体、2B タイヤ、2C タイヤハウス、3 路面、
11 検知電極、12 リファレンス電極、13 センサアンプ、
14 帯電波形抽出手段、15 RMS値算出手段、16 ピーク計数手段、
16a ピーク抽出手段、16b 特定ピーク判定手段、16c 計数手段、
17 ピーク頻度分布作成手段、17a ヒストグラム作成手段、
17b 分布関数近似手段、18 記憶手段、19 タイヤ摩耗状態検知手段、
21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 バス。