特許第5816755号(P5816755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816755
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】偏光板及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20151029BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】8
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2014-526975(P2014-526975)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2013070056
(87)【国際公開番号】WO2014017541
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-167653(P2012-167653)
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】実藤 竜二
(72)【発明者】
【氏名】三戸部 史岳
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−107499(JP,A)
【文献】 特表2008−529038(JP,A)
【文献】 特開2009−198666(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/69474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2GPa〜2.5GPaであり、下記式(1)で表されるTD方向の湿度寸法変化率が0.1%以下であり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である、偏光板。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
【請求項2】
前記第2の保護フィルムが、セルロースアシレートを含んでなるフィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第1の保護フィルムに含まれる合成ポリマーがシクロオレフィン系ポリマーである、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記式(2)で表される評価値が9.0〜10.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが20μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが5.7〜9.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
【請求項6】
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが25μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが6.5〜10.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
【請求項7】
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが30μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが7.0〜11.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
【請求項8】
液晶セルと、請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚有する液晶表示装置であって、前記偏光板における前記第1の保護フィルムが、前記液晶セル側に配置された液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力が小さく、省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。従来、液晶表示装置は表示画像の視野角依存性が大きいことが大きな欠点であったが、VAモード、IPSモード等の広視野角液晶モードが実用化されており、これによってテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
【0003】
液晶表示装置の用途拡大につれ、液晶表示装置に対して大サイズかつ高品位な質感が求められてきている。画面周辺部分にベゼルと呼ばれる額縁に相当する部分があり、高品位な質感にするためにこの幅が狭くなってきている。ベゼルは、偏光板の端部を隠してディスプレイを美的に仕上げる役割を持つが、ベゼルの狭幅化に伴い、液晶セルと偏光板の貼り合わせ精度にも高いレベルが要求されるようになってきた。
【0004】
液晶表示装置に用いられる偏光板は、一般にヨウ素や染料を吸着配向させたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子と、その偏光子の表裏両側に透明な保護フィルム(偏光板保護フィルム)を貼り合わせた構成となっている。偏光板保護フィルムとしては、セルロースアセテートに代表されるセルロースアシレート系の偏光板保護フィルムが、透明性が高く、偏光子に使用されるポリビニルアルコールとの密着性を容易に確保できることから広く使用されてきた。密着性は一般に、保護フィルムを鹸化処理し、表面に親水性を付与することで得られる。
【0005】
また、偏光板保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム以外にも、合成ポリマーフィルムも用いられている。
【0006】
特許文献1には、偏光子の保護フィルムとして、偏光子の片側にシクロオレフィン系ポリマーフィルムを有し、他方の片側にセルロースアシレートフィルムを有する偏光板が開示されている。
特許文献2には、偏光子の保護フィルムとして、偏光子の片側にアクリル系フィルムを有し、他方の片側にセルロースアシレートフィルムを有する偏光板が開示されている。
特許文献3には、偏光子の保護フィルムとして、偏光子の片側にアクリル系フィルム、ポリイミド系フィルム、又はノルボルネン系フィルムを有し、他方の片側にセルロースアシレートフィルムを有する偏光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特表2008−529038号公報
【特許文献2】日本国特開2009−292869号公報
【特許文献3】日本国特開2008−203400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シクロオレフィン系ポリマーのような合成ポリマーを含むフィルム(合成ポリマーフィルム)は、セルロースアシレートフィルムに対して吸水性が低く、かつ光弾性係数が小さいという性質を有する。したがって、合成ポリマーフィルムを偏光板保護フィルムとして用いると、光弾性ムラが抑えられる一方で、従来から一般に行われているポリビニルアルコール糊を用いた方法で偏光板を作製する場合に水分の乾燥が不十分となり、偏光性能が低下してしまうという問題を有していた。
特許文献1の偏光板は、偏光子の保護フィルムとして、偏光子の一方の側にシクロオレフィン系ポリマー、他方の側にセルロースアシレートフィルムを有する構成であるため、偏光板製造後の乾燥が十分に行われ、かつシクロオレフィン系ポリマーの特徴が生かせると考えられる。
【0009】
しかしながら、偏光板の厚みが従来使用されていたものよりも薄くなると、特許文献1の偏光板は、平板上に、セルロースアシレートフィルムを該平板側(下側)、シクロオレフィン系ポリマーフィルムを上側となるように置いて、偏光板の反り(カール)を観察した場合、偏光板の4隅が浮き上がるようにカールが発生する場合がある。このようなカールを「マイナスカール」と呼ぶこととする。マイナスカールした偏光板を、シクロオレフィン系ポリマーフィルムをインナー側フィルムとして液晶セルに貼り付けると、インナー側フィルムと液晶セルとの間に気泡が入り、液晶表示装置の性能が低下してしまうという問題がある。更に、偏光板を液晶パネルに貼り合わせる工程でエラー(位置ズレ)が発生して歩留まりが劇的に悪化する。そのためフラット又は反対側にカールする方(平板上に、シクロオレフィン系ポリマーフィルムを該平板側、セルロースアシレートフィルムを上側となるように置いて、偏光板の反りを観察した場合、偏光板の4隅が浮き上がるようにカールが発生する場合)が好ましい(これをプラスカールと呼ぶ)。しかしプラスカールの場合でも、カール量が大きすぎると液晶セルに貼り付ける際の位置合わせが難しくなり、こちらも好ましくない。
偏光板のカールはMD方向に発生するものも、TD方向に発生するものも、どちらも問題となり、重要である。しかし偏光板を構成する材料を設計する場合、特にTD方向に発生するカールの対策が重要である。この理由は、偏光板を作成するプロセスによるカールの調整のしやすさの違いによる。MD方向のカールについては、偏光板を構成するインナー側フィルム、偏光子、アウター側フィルムを貼合、乾燥するために搬送する時の搬送方向へのテンションを変えることでカールを調整できる幅が広い。しかしTD方向のカールについては、乾燥条件を変えることで僅かに調整できるだけで、制御する手段がない。そのため特にTD方向について、好ましいフィルムの組み合わせを設計することが重要となる。
ここでインナー側フィルムとは偏光子を挟む二枚の保護フィルムの内、液晶セル側に配置されるフィルムを指す。また、液晶セルの反対側に配置されるフィルムをアウター側フィルムと呼ぶ。
特許文献1に記載された偏光板においては、厚みが60μm以上の保護フィルムを用いているが、近年では更に薄膜の保護フィルムが求められている。また、保護フィルムを薄くすると、よりカールが発生しやすくなるという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、偏光板加工適性に優れ、かつ、薄膜であってもカールの観点で液晶表示装置の製造適性に優れた偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが検討した結果、偏光子の一方の側に、厚さが30μm以下の合成ポリマーフィルムを第1の保護フィルムとして使用した偏光板におけるカールが、偏光子の他方の側の第2の保護フィルムの厚み、弾性率、及び湿度寸法変化率によって大きく変化することに気がついた。その傾向として、弾性率が小さく、湿度寸法変化率も小さい合成ポリマーフィルムに対し、弾性率が高く、同時に湿度寸法変化率が大きいフィルムを用いた場合にカールが小さいことが分かった。これは特許文献1でカールの原因と推定された弾性率のバランスの崩れだけでは説明できない。この物性値依存性の原因は十分に明らかになっていないが、カールの発生原因が表裏の保護フィルムの弾性率や湿度変化時の寸法変化のバランスに加えて、偏光子の収縮がカールに影響しているためと考えられる。保護フィルムの厚み、弾性率が増えることで、反りの支点が保護フィルム側にシフトし、結果として偏光子の収縮量が引き起こすカールの量が増加すると推定される。この偏光子の引き起こす収縮とバランスするように保護フィルムに収縮を付与することで、カールの少ない、パネル貼合に適した偏光板を得ることができると考えられる。この考え方に基づいて検討を進めた結果、第2の保護フィルムとしてTD方向の弾性率、厚み、及びTD方向の湿度寸法変化率の関係を特定の範囲に設定することでカールを低減できることを見出した。
すなわち、偏光子の保護フィルムとして、偏光子の一方の側に合成ポリマーフィルムを含む第1の保護フィルム、他方の側に第2の保護フィルムを有する構成の偏光板において、偏光板がその断面図において第1の保護フィルムを内側に有する円弧形状をなすようにカール(マイナスカール)することを抑制するためには、第2の保護フィルムの厚み、TD方向の弾性率、及びTD方向の湿度寸法変化率を好適に設計する必要があることがわかった。
【0012】
すなわち、上記課題は、以下の構成の本発明によって解決される。
<1>
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2GPa〜2.5GPaであり、下記式(1)で表されるTD方向の湿度寸法変化率が0.1%以下であり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である、偏光板。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
<2>
前記第2の保護フィルムが、セルロースアシレートを含んでなるフィルムである、<1>に記載の偏光板。
<3>
前記第1の保護フィルムに含まれる合成ポリマーがシクロオレフィン系ポリマーである、<1>又は<2>に記載の偏光板。
<4>
前記式(2)で表される評価値が9.0〜10.0である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の偏光板。
<5>
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが20μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが5.7〜9.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
<6>
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが25μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが6.5〜10.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
<7>
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有し、厚みが80μm以下の偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが30μmであり、
前記第2の保護フィルムが、厚さ10〜25μmであり、下記式(2’)で表される評価値Aが7.0〜11.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))

液晶セルと、<1>〜<>のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚有する液晶表示装置であって、前記偏光板における前記第1の保護フィルムが、前記液晶セル側に配置された液晶表示装置。
本発明は、前記<1>〜<>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記[1]〜[9])についても記載している。
【0013】
[1]
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
上記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2GPa〜2.5GPaであり、下記式(1)で表されるTD方向の湿度寸法変化率が0.1%以下であり、
上記第2の保護フィルムが、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である、偏光板。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
[2]
上記第2の保護フィルムが、セルロースアシレートを含んでなるフィルムである、[1]に記載の偏光板。
[3]
上記第1の保護フィルムに含まれる合成ポリマーがシクロオレフィン系ポリマーである、[1]又は[2]に記載の偏光板。
[4]
上記式(2)で表される評価値が9.0〜10.0である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の偏光板。
[5]
偏光板の厚みが、80μm以下である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の偏光板。
[6]
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
上記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
上記偏光子の厚みが20μmであり、
上記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが5.7〜9.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
[7]
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
上記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
上記偏光子の厚みが25μmであり、
上記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが6.5〜10.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
[8]
第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
上記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
上記偏光子の厚みが30μmであり、
上記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが7.0〜11.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
[9]
液晶セルと、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚有する液晶表示装置であって、上記偏光板における上記第1の保護フィルムが、上記液晶セル側に配置された液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、偏光板加工適性に優れ、かつ、薄膜であってもカールの観点で液晶表示装置の製造適性に優れた偏光板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の偏光板の一例を示す概略図である。
図2】本発明の偏光板の一例を示す概略図である。
図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図4】第2の保護フィルムの湿度寸法変化率と偏光板のカール浮き量との関係を示す図である。
図5】第2の保護フィルムの湿度寸法変化率、及び第2の保護フィルムの弾性率と偏光板のカール浮き量の等高線との関係を示す図である。
図6】評価値1と偏光板のカール浮き量との関係を示す図である。
図7】評価値2と偏光板のカール浮き量との関係を示す図である。
図8】偏光子の膜厚を変化させた場合の評価値2と偏光板のカール浮き量との関係を示す図である。
図9】本発明における式(2)で表される評価値と偏光板のカール浮き量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」との記載は、「アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂の少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0017】
本発明の偏光板は、第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2GPa〜2.5GPaであり、下記式(1)で表されるTD方向の湿度寸法変化率が0.1%以下であり、
前記第2の保護フィルムが、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である、偏光板である。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
【0018】
TD方向とは、フィルム製造時のフィルム搬送方向(MD方向)に直交する方向である。
また、偏光板においては、通常、偏光子の吸収軸に直交する方向がTD方向である。
【0019】
本発明の偏光板は、第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する。本発明の偏光板の一例を図1に示す。図1における偏光板10は、第1の保護フィルム1と、偏光子3と、第2の保護フィルム2とをこの順に有している。
以下、本発明の偏光板を構成する偏光子、及び保護フィルムについて説明する。
【0020】
[偏光子]
本発明の偏光板における偏光子としては、特に制限はなく、公知の偏光子を用いることができるが、ポリビニルアルコール系樹脂と、二色性色素とを含有することが好ましい。
【0021】
(ポリビニルアルコール系樹脂)
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA」とも言う)としては、ポリ酢酸ビニルを鹸化したポリマー素材が好ましいが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のような酢酸ビニルと共重合可能な成分とを含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
この他、本発明における偏光子には、特許第3021494号公報に記載されている1、2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPVAフィルム、特開2001−316492号公報に記載されている5μm以上の光学的異物が100cm2当たり500個以下であるPVAフィルム、特開2002−030163号に記載されているフィルムのTD方向の熱水切断温度斑が1.5℃以下であるPVAフィルム、更にグリセリンなどの3〜6価の多価アルコ−ルを1〜100質量%混合した溶液や、特開平06−289225号公報に記載されている可塑剤を15質量%以上混合した溶液から製膜したPVAフィルムを好ましく用いることができる。
これらの中でも、本発明における偏光子に用いる前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニルをけん化したものが製造コストの観点から好ましい。なお、前記ポリ酢酸ビニルのけん化度については特に制限はないが、例えば、けん化度90%以上とすることが好ましく、95%以上とすることがより好ましく、99%以上とすることが特に好ましい。
【0022】
本発明における偏光子に用いる前記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量については特に制限はないが、100000〜300000であることが好ましく、140000〜260000であることがより好ましく、150000〜200000であることが特に好ましい。
【0023】
(二色性色素)
本発明における偏光子は、二色性色素を含むことが好ましい。ここで、二色性色素とは、本明細書においては、方向により吸光度の異なる色素のことを言い、例えば、ヨウ素イオン、ジアゾ系色素、キノン系色素、その他公知の二色性染料などが含まれる。前記二色性色素としては、I3-やI5-などの高次のヨウ素イオン若しくは二色性染料を好ましく使用することができる。
本発明では高次のヨウ素イオンが特に好ましく使用される。高次のヨウ素イオンは、「偏光板の応用」永田良編、CMC出版や工業材料、第28巻、第7号、p.39〜p.45に記載されているようにヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液及びホウ酸水溶液の少なくとも一方にPVAを浸漬し、PVAに吸着・配向した状態で生成することができる。
【0024】
[偏光子の製造方法]
本発明における偏光子の製造方法としては、特に制限はない。
例えば、PVAとヨウ素とを含有する偏光子の製造方法としては、前記PVAをフィルム化した後、ヨウ素を導入して偏光子を構成することが好ましい。PVAフィルムの製造は、特開2007−86748号公報の〔0213〕〜〔0237〕に記載の方法、特許登録第3342516号明細書、特開平09−328593号公報、特開2001−302817号公報、特開2002−144401号公報等を参考にして行うことができる。
【0025】
その中でも、本発明における偏光子の製造方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂を含有するポリビニルアルコール系樹脂溶液をフィルム状に製膜する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程と、二色性色素により延伸後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを染色する工程を含むことが好ましい。
【0026】
具体的には、前記偏光子の製造方法を、PVA系樹脂溶液の調製工程、流延工程、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程をこの順序で遂次行うことが特に好ましい。また、前述の工程中あるいは後にオンライン面状検査工程を設けてもよい。
【0027】
(PVA系樹脂溶液の調製)
前記PVA系樹脂溶液の調製工程では、水に対して攪拌しながらPVA系樹脂を添加し、PVA系樹脂を水又は有機溶媒に溶解した原液を調製することが好ましい。原液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、好ましくは5〜20質量%である。また、得られたスラリーを脱水し、含水率40%程度のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを一度調製してもよい。更にその後添加剤を加える場合は、例えば、PVAのウェットケーキを溶解槽に入れ、可塑剤、水を加え、槽底から水蒸気を吹き込みながら攪拌する方法が好ましい。内部樹脂温度は50〜150℃に加温することが好ましく、系内を加圧してもよい。
【0028】
(流延)
前記流延工程は、上記にて調製したPVA系樹脂溶液原液を流延して成膜する方法が一般に好ましく用いられる。流延の方法としては、特に制限はないが、加熱した前記PVA系樹脂溶液原液を2軸押し出し機に供給し、ギアポンプにより排出手段(好ましくはダイ、より好ましくはT型スリットダイ)から支持体上に流涎して製膜することが好ましい。また、ダイからの排出される樹脂溶液の温度については特に制限はない。
前記支持体としては、キャストドラムが好ましく、ドラムの直径、幅、回転速度、表面温度については、特に制限はない。その中でも、前記キャストドラムの直径(R1)は2000〜5000mmであることが好ましく、2500〜4500mmであることが特に好ましく、3000〜3500mmであることが特に好ましい。
前記キャストドラムの幅は2〜6mであることが好ましく、3〜5mであることが特に好ましく、4〜5mであることが特に好ましい。
前記キャストドラムの回転速度は2〜20m/分であることが好ましく、4〜12m/分であることが特に好ましく、5〜10m/分であることが特に好ましい。
前記キャストドラムのキャストドラム表面温度は40〜140℃であることが好ましく、60〜120℃であることが特に好ましく、80〜100℃であることが特に好ましい。
前記T型スリットダイ出口の樹脂温度は40〜140℃であることが好ましく、60〜120℃であることが特に好ましく、80〜100℃であることが特に好ましい。
その後、得られたロールの裏面と表面とを乾燥ロールに交互に通過させながら乾燥を行なうことが好ましい。前記乾燥ロールの直径、幅、回転速度、表面温度については、特に制限はない。その中でも、前記乾燥ロールの直径の直径(R2)は200〜450mmであることが好ましく、250〜400mmであることが特に好ましく、300〜350mmであることが特に好ましい。
また、得られたフィルムの長さについても特に制限はなく、2000m以上、好ましくは4000m以上の長尺のフィルムとすることができる。フィルムの幅についても、特に制限はないが、2〜6mであることが好ましく、3〜5mであることが好ましい。
【0029】
(膨潤)
前記膨潤工程は、水のみで行うことが好ましいが、特開平10−153709号公報に記載されているように、光学性能の安定化及び、製造ラインでのポリビニルアルコール系樹脂フィルムのシワ発生回避のために、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液により膨潤させて、偏光板基材の膨潤度を管理することもできる。
また、膨潤工程の温度、時間は、任意に定めることができるが、10℃〜60℃、5秒〜2000秒が好ましい。
なお、膨潤工程のときにわずかに延伸を行ってもよく、例えば1.05倍〜1.5倍に延伸する態様が好ましく、1.3倍程度に延伸する態様がより好ましい。
【0030】
(染色)
前記染色工程は、特開2002−86554号公報に記載の方法を用いることができる。また、染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。また、特開2002−290025号公報に記載されているように、ヨウ素の濃度、染色浴温度、浴中の延伸倍率、及び浴中の浴液を攪拌させながら染色させる方法を用いてもよい。
前記二色性色素として高次のヨウ素イオンを用いる場合、高コントラストの偏光板を得るためには、染色工程はヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液を用いることが好ましい。この場合のヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液のヨウ素とヨウ化カリウムの質量比については特開2007−086748号公報に記載の態様を用いることができる。
また、特許第3145747号公報に記載されているように、染色液にホウ酸、ホウ砂等のホウ素系化合物を添加してもよい。
【0031】
(硬膜)
前記硬膜工程は、PVAフィルムを架橋剤溶液に浸漬、又は溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。また、特開平11−52130号公報に記載されているように、硬膜工程を数回に分けて行うこともできる。
前記架橋剤としては米国再発行特許第232897号明細書に記載のものが使用でき、特許第3357109号公報に記載されているように、寸法安定性を向上させるため、架橋剤として多価アルデヒドを使用することもできるが、ホウ酸類が最も好ましく用いられる。硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加してもよい。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512号公報に記載されているように、塩化亜鉛の変わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
また、塩化亜鉛を添加したホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液を作製し、PVAフィルムを浸漬させて硬膜を行ってもよく、特開2007−086748号公報に記載の方法を用いることができる。
【0032】
(延伸)
前記延伸工程は、米国特許2,454,515号明細書などに記載されているような、縦一軸延伸方式、若しくは特開2002−86554号公報に記載されているようなテンター方式を好ましく用いることができる。好ましい延伸倍率は2倍〜12倍であり、更に好ましくは3倍〜10倍である。また、延伸倍率と原反厚さと偏光子厚さの関係は特開2002−040256号公報に記載されている(保護フィルム貼合後の偏光子膜厚/原反膜厚)×(全延伸倍率)>0.17としたり、最終浴を出た時の偏光子の幅と保護フィルム貼合時の偏光子幅の関係は特開2002−040247号公報に記載されている0.80≦(保護フィルム貼合時の偏光子幅/最終浴を出た時の偏光子の幅)≦0.95としたりすることも好ましく行うことができる。
【0033】
(乾燥)
前記乾燥工程は、特開2002−86554号公報で公知の方法を使用できるが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特許第3148513号公報に記載されているように、水中退色温度を50℃以上とするような熱処理を行ったり、特開平07−325215号公報や特開平07−325218号公報に記載されているように温湿度管理した雰囲気でエージングしたりすることも好ましく行うことができる。
【0034】
(塗布型偏光子)
また膜厚が薄い偏光子は、特許第4691205号公報や特許第4751481号公報に記載の塗布法を用いた製造方法により形成する事ができる。なお、膜厚の制御は、公知の方法で制御することができ、例えば前記流延工程におけるダイスリット幅や、延伸条件を適切な値に設定することで制御できる。
【0035】
(偏光子の膜厚)
偏光子の膜厚は、特に限定されないが、偏光度と反りの観点から5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。偏光子の膜厚が30μm以下であれば偏光子の収縮力が増加せず、これを貼合した液晶パネルの反りが大きくならないため好ましい。一方、偏光子の膜厚が5μm以上であれば、偏光子を透過する一方の偏光の光を十分に吸収することができ、偏光度が低下しないため好ましい。
【0036】
<保護フィルム>
次に、本発明の偏光板に用いられる保護フィルム(「偏光板保護フィルム」とも言う)について説明する。
本発明の偏光板は、第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する。
前記第1の保護フィルムは、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2GPa〜2.5GPaであり、下記式(1)で表されるTD方向の湿度寸法変化率が0.1%以下である。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
前記第2の保護フィルムは、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である。
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
【0037】
[第1の保護フィルム]
第1の保護フィルムは、合成ポリマーを含んでなるフィルムである。
前記合成ポリマーとしては、ノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、(メタ)アクリル系樹脂などが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマーがより好ましく、湿度に対する安定性の観点からシクロオレフィン系ポリマーが最も好ましい。
【0038】
<シクロオレフィン系ポリマーフィルム>
シクロオレフィン系ポリマーについて詳しく説明する。
(シクロオレフィン系付加重合体)
シクロオレフィン系ポリマーは下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(2)で表される構造単位(b)を適度の比率で含む環状オレフィン系付加重合体が好ましい。
【0039】
【化1】
【0040】
一般式(1)のA1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。また、A1〜A4には、A1とA2、A1とA3又はA2とA4から形成されるアルキレン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。
【0041】
このような構造単位(a)は下記一般式(3)で表される環状オレフィン化合物(以下、「特定の単量体(1)」という。)を付加重合することにより、形成される。
【0042】
【化2】
【0043】
[一般式(3)のA1,A2,A3,A4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、炭素数4〜15のシクロアルキル基、ハロゲン原子である。またA1〜A4には、A1とA2、A1とA3又はA2とA4から形成されるアルキレン基、アルキリデン基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
【0044】
一般式(3)で表される「特定の単量体(1)」の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘプチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ドデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロオクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、1−メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、6−メチルトリシクロ[4.2.0.15,8]ノナ−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、4−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、1−メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、3−メチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、1−エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、3−エチルトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、1−メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、5−メチルトリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0045】
また、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−ブテニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、1−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、1−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエンなどの環状ジオレフィン系化合物を付加重合し、しかる後、側鎖に存在する環状オレフィン性不飽和結合を水素化することにより、構造単位(a)とすることができる。
【0046】
これらの「特定の単量体(1)」のうち好ましいものは、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン又はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンである。なお、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンには、endo体及びexo体の立体異性体が存在するが、本発明においては、endo体を使用した方が最終的に得られるフィルムの靱性が高まるため好ましく、少なくともendo体含量が80%以上のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンを使用することが好ましい。また、endo体のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエンを用いて付加重合し、しかる後側鎖に残存する環状オレフィン性不飽和結合を水素化する方法も同様に好ましい。この場合でも、endo体含量は80%以上であることが好ましい。これらを用いて得られる環状オレフィン系重合体は、透明性、耐熱性が優れるだけでなく、低吸水性、低誘電性、及び高い靭性を有する重合体となる。なお、「特定の単量体(1)」は1種又は2種以上、用いることができる。
【0047】
下記一般式(2)で表される構造単位(b)は、下記一般式(4)で表される環状オレフィン(以下、「特定の単量体(2)」という。)を付加重合することにより、形成される。
【0048】
【化3】
【0049】
[一般式(2)中、B1〜B4はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリ−ル基、ハロゲン化アルキル基、加水分解性シリル基又は−(CH2jXで表される極性基を示し、B1〜B4の少なくとも一つは加水分解性シリル基又は−(CH2jXで表される極性基を含む。ここで、Xは−C(O)OR1又は−OC(O)R2であり、R1,R2は炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらのハロゲン置換体よりなる群から選ばれた置換基、jは0〜3の整数である。また、B1〜B4には、B1とB3又はB2とB4から形成されるアルキレン基、B1とB2又はB3とB4から形成されるアルキリデニル基も含まれる。rは0〜2の整数を示す。]
【0050】
【化4】
【0051】
[一般式(4)中、B1〜B4は一般式(2)と同一である。rは0〜2の整数を示す。]
【0052】
このような「特定の単量体(2)」の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−トリフルオロメトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イルメチルカルボン酸エチル、アクリル酸−1−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−3−エン、メタクリル酸−1−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−3−エン、5,6−ジ(メトキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシクロロメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシヒドリドメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメトキシヒドリドシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジエトキシクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシクロロメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジエトキシヒドリドシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシジエチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロポキシジメチルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリプロポキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリフェノキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメトキシシリルメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメチルクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルジクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジエチルクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルジクロロシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−トリメトキシシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ジメトキシクロロシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−トリメトキシシリル)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−トリメトキシシリル)プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−トリメトキシシリル)プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリエトキシシリルエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ジメトキシメチルシリルメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメトキシプロピルシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(3−トリエトキシシリル)プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−トリエトキシシリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチルジメトキシシリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
【0053】
5−[1’−メチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−3’,3’,4’,4’−テトラフェニル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−3’,3’,4’,4’−テトラメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−フェニル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−エチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’,3’−ジメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−3’,4’−ジメチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−エチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’,3’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−フェニル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’−スピロ−シクロヘキシル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’−エチル−4’−ブチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−3’,3’−ジメチル−5’−メチレン−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−3’−フェニル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[1’−メチル−2’,7’−ジオキサ−1’−シラシクロヘプチル]−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−[1’−メチル−4’,4’−ジメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどが挙げられる。これらの「特定の単量体(2)」は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体に含まれる構造単位(b)の割合は、全構造単位中、30〜99モル%、好ましくは40〜95モル%、更に好ましくは50〜90モル%である。上記環状オレフィン系重合体の構造単位(b)の割合が上記範囲であると、偏光子に使用されるポリビニルアルコールとの接着・密着性が良好であり、また、吸湿性が大きくならず寸法安定性に優れる。なお、構造単位(b)の配列は、環状オレフィン系重合体中にランダム状、ブロック状など制限はないが、好ましくはランダム状である。更に、側鎖置換基として加水分解性シリル基、エステル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの反応性置換基を有する構造単位(b)を含む環状オレフィン系付加重合体は、後述する架橋剤を用いることによって本発明の環状オレフィン系重合体のフィルムを架橋体とすることができる。
【0055】
本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体には、更に、「特定のα−オレフィン化合物」を付加重合して得られる構造単位(c)を導入することができる。
【0056】
このような「特定のα−オレフィン化合物」の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルシリルエチレン、トリエチルシリルエチレン、スチレンなどが挙げられるが好ましくはエチレンである。
【0057】
「特定のα−オレフィン化合物」に由来する繰り返し単位(c)を重合体に導入することにより、本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度を制御することができる。本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体に含まれる繰り返し単位(c)の割合は、0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%である。なお、繰り返し単位(c)の割合が上記範囲であると、本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度が170℃以下にならず、耐熱性が低下せず好ましい。
【0058】
本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体の分子量は、ポリスチレン換算で表され、数平均分子量が好ましくは10,000〜300,000、重量平均分子量が好ましくは20,000〜700,000、より好ましくは数平均分子量が20,000〜200,000、重量平均分子量が50,000〜500,000、更に好ましくは数平均分子量が50,000〜150,000、重量平均分子量が100,000〜300,000である。数平均分子量、重量平均分子量が上記の範囲であると、フィルムとしたときに靭性に優れ割れにくく、また、溶液粘度が高くならず、溶液キャスト法による製膜の作業性や得られたフィルムの表面などが良好である。
【0059】
また、本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度は、未架橋の状態で180〜450℃、好ましくは200〜400℃である。該重合体のガラス転移温度が上記範囲であると、耐熱性が十分であり、また、フィルムとして靭性が優れ割れにくい。
【0060】
本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体は、「特定の単量体(1)」を主として用い、必要に応じて架橋形成又は接着・密着付与のために「特定の単量体(2)」を用い、更に必要に応じてガラス転移温度の制御のために「特定のα−オレフィン化合物」を用いて製造される。以下、その製造法について説明する。
【0061】
重合触媒としては、[1]Pd、Niなどの単一錯体触媒、[2]σ又はσ,π結合を有するパラジウム錯体と有機アルミニウム又は超強酸塩の組み合わせによる多成分系触媒、[3]1)ニッケル化合物、コバルト化合物、チタン化合物又はジルコニウム化合物から選ばれた遷移金属化合物、2)超強酸、ルイス酸及びイオン性ホウ素化合物から選ばれた化合物、並びに3)有機アルミニウム化合物を含む多成分系触媒が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの重合触媒については、特表2008−529038号公報の〔0132〕〜〔0139〕に記載され、本発明においても参照できる。
【0062】
これら単一錯体触媒又は多成分系触媒の成分は、以下の範囲の使用量で用いるのが好ましい。ニッケル化合物、パラジウム化合物、コバルト化合物、チタニウム化合物及びジルコニウム化合物などの遷移金属化合物は単量体1モルに対して、0.02〜100ミリモル原子、有機アルミニウム化合物は遷移金属化合物1モル原子に対して1〜5,000モル、また超強酸、ルイス酸、イオン性ホウ素化合物は遷移金属化合物の1モル原子に対して0〜100モルであるのが好ましい。
【0063】
本発明に用いることのできる環状オレフィン系重合体は、上記成分からなる単一錯体触媒又は多成分系触媒を用い、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などから、1種又は2種以上選ばれた溶媒中で、−20〜120℃の温度範囲で重合を行うことにより得られる。
【0064】
(シクロオレフィン系開環重合体)
本発明に用いることのできるシクロオレフィン系ポリマーとしては、下記一般式(5)及び(6)のモノマーユニットを有する開環重合体も好ましく用いることができる。
【0065】
【化5】
【0066】
[一般式(5)中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、Xは、ビニレン基(−CH=CH−)又はエチレン基(−CH2CH2−)を示し、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を示す。
更に、R1とR2、R3とR4又はR2とR3は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環又は複素環を形成していてもよく、形成される炭素環又は複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0067】
【化6】
【0068】
[一般式(6)中、Yは、ビニレン基(−CH=CH−)又はエチレン基(−CH2CH2−)を示し、R5〜R8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を示す。更に、R5とR6、R7とR8又はR6とR7は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環又は複素環(但し、一般式(5)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環又は複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
上記一般式(5)及び(6)のポリマーは下記の(イ)〜(ニ)に示す単量体の(共)重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)として合成される。(イ)下記一般式(7)で表される化合物(以下、「特定単量体d」ともいう。)の開環重合体。(ロ)特定単量体dと、当該特定単量体dと共重合可能な化合物(以下、「共重合性単量体」ともいう。)との開環重合体。(ハ)上記(イ)の開環重合体又は(ロ)の開環重合体の水素添加物。(ニ)上記(イ)の開環重合体又は(ロ)の開環重合体をフリーデルクラフト反応により環化して得られた化合物若しくはその水素添加物。
【0069】
【化7】
【0070】
[一般式(7)中、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であり、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を示す。更に、R1とR2、R3とR4又はR2とR3は、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環又は複素環を形成していてもよく、形成される炭素環又は複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0071】
特定重合体は、共重合性単量体として下記一般式(8)で表される化合物(以下、「特定単量体e」ともいう。)を用い、特定単量体dと、特定単量体eとを共重合して得られるものであることが好ましい。このような構成の特定重合体によれば、最終的に得られる特定位相差フィルムが靱性等の機械的な特性が一層優れたものとなり、また、延伸加工により特定位相差フィルムに必要とされる所望の位相差を得やすくなる。
【0072】
【化8】
【0073】
[一般式(8)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;又は極性基を示す。更に、RとR、RとR又はRとRは、互いに結合して、単環構造若しくは他の環が縮合して多環構造を有する炭素環又は複素環(但し、一般式(5)で表される構造を除く)を形成してもよく、形成される炭素環又は複素環は芳香環であってもよいし非芳香環であってもよい。]
【0074】
更に、特定重合体は、特定単量体dと特定単量体eとの開環重合体であって、上記一般式(5)で表される特定単量体dに由来の構造単位(以下、「構造単位d」ともいう。)と、上記一般式(6)で表される特定単量体eに由来の構造単位(以下、「構造単位e」ともいう。)とを有するものであることが好ましい。このような構成の特定重合体は、耐熱性と延伸加工等による加熱加工性とのバランスを図ることができる点で好ましい。
【0075】
一般式(5)〜一般式(8)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0076】
また、一般式(5)〜一般式(8)における置換又は非置換の炭化水素基は、直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。
連結基としては、例えば炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基〔例えば、−(CH2q−(式中、qは1〜10の整数)で表されるアルキレン基〕;酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基〔例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R92−(式中、R9はメチル、エチル等のアルキル基))〕、あるいはこれらの2種以上が結合されたものなどが挙げられる。
【0077】
極性基としては、例えば水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド環含有基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル含有基、及びカルボキシル基などが挙げられる。更に具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0078】
特定単量体dの具体例としては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10.04,8]−12−ペンタデセン、ペンタシクロ[9.2.1.15,8.02,10.04,9]−12−ペンタデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
【0079】
8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、1,2−(2H、3H−[1,3]エピシクロペンタ)−1,2−ジヒドロアセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体などを挙げることができるが、特定単量体dは、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて特定単量体dとして用いることができる。
【0080】
これらの中では、分子内に少なくとも1つの極性基を有する化合物が好ましく、特に、一般式(7)において、R1及びR3が水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2及びR4が水素原子又は一価の有機基に相当するものであって、かつR2及びR4の少なくとも一つが水素原子及び炭化水素基以外の極性基であるものが、他素材との密着性・接着性を高めるので好ましい。
【0081】
ここに、得られる特定重合体中の極性基の含有量は、最終的に得られる特定位相差フィルムに要求される所望の機能等により決定されるものであり、特に限定はされないが、特定単量体dに由来する全構造単位中に極性基を有する特定単量体dに由来の構造単位が、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、特定単量体dに由来する全構造単位が極性基を有するものであってもよい。
【0082】
また、特定単量体dとしては、一般式(7)において、R2及びR4の少なくとも一つが一般式(9)で表される極性基を有するものであることが、得られる特定重合体のガラス転移温度と吸水性を制御しやすい点で好ましい。
【0083】
【化9】
【0084】
〔一般式(9)中、nは0〜5の整数であり、R10は一価の有機基である。〕
【0085】
一般式(9)においてR10で表される一価の有機基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニリル基等のアリール基;この他にもジフェニルスルホン、テトラヒドロフルオレン等のフルオレン類等の芳香環やフラン環、イミド環等の複素環を有する一価の基等が挙げられる。
また、一般式(9)において、nは0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0である。nの値が小さいものほど得られる特定重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、特にnが0である特定単量体dは、その合成が容易である点で好ましい。
【0086】
更に、特定単量体dは、一般式(7)において、一般式(9)で表される極性基が結合した炭素原子に更にアルキル基が結合したものであることが好ましく、これにより、得られる特定重合体の耐熱性と吸水性のバランスを図ることができる。ここで、アルキル基の炭素原子数は1〜5であることが好ましく、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
また、特定単量体dとしては、一般式(7)においてmが1でありpが0であるものは、ガラス転移温度の高い特定重合体が得られる点で好ましい。
【0087】
特定単量体eの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(α体及びβ体)、5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0088】
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−フェニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0089】
4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)フェニルスルホニルベンゼン、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニルカルボニルオキシプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(2−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(3−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(3−ビフェニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0090】
5−メチル−5−(1−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(2−ナフチルカルボニルオキシメチル)メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(9−アントラセニルカルボニルオキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(9−アントラセニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、アセナフチレンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加体などを挙げることができるが、特定単量体eは、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて特定単量体eとして用いることができる。
【0091】
特定単量体dと特定単量体eとを共重合させることによって得られる特定重合体は、当該特定単量体d及び特定単量体e以外の他の共重合性単量体と共に共重合されてなるものであってもよい。
他の共重合性単量体としては、例えばシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素原子数としては、4〜20が好ましく、更に好ましくは5〜12である。更にポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体d及び必要に応じて特定単量体eを重合させてもよく、このようにして得られる特定重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
【0092】
特定重合体の30℃クロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は、0.2〜5dl/gであることが好ましい。更に好ましくは0.3〜4dl/g、特に好ましくは0.5〜3dl/gである。上記範囲であると、溶液粘度が高くならないため、加工性が良好であり、また、フィルム強度が十分である。
【0093】
特定重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常は8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、更に好ましくは20,000〜100,000、特に好ましくは30,000〜100,000、また、重量平均分子量(Mw)が、通常は20,000〜3,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、更に好ましくは40,000〜500,000、特に好ましくは40,000〜300,000の範囲である。
また、特定重合体の分子量分布は、上記のMw/Mnが通常1.5〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは2.5〜5、特に好ましくは2.5〜4.5である。
【0094】
特定重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば特定重合体の構造単位d及び構造単位eの種類若しくは構造単位dと構造単位eとの比の調整、あるいは添加剤の添加等により適宜変えることが可能であるが、通常は100〜250℃、好ましくは110〜200℃、更に好ましくは120〜180℃である。Tgが100℃以上の場合は、熱変形温度が低くならず、耐熱性に問題が生じるおそれがなく、また、最終的に得られるフィルムの光学特性が温度により影響をほとんど受けないため好ましい。また、Tgが250℃以下であると、延伸加工等にTg近辺まで加熱して加工する場合に熱可塑性シクロオレフィン系樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂が熱劣化する可能性が低いため好ましい。
【0095】
構造単位d及び構造単位eを有する特定重合体においては、構造単位dと構造単位eとの比(d/e)は、好ましくは、モル比ではd/e=95/5〜5/95、更に好ましくは95/5〜60/40である。構造単位dの割合が上記範囲であると靱性改良の効果や所望の光学特性が十分期待でき、ガラス転移温度が低くならず、耐熱性に問題が生じないため好ましい。
【0096】
更に、構造単位d及び構造単位eを有する特定重合体において、当該重合体中の構造単位dと構造単位eの比率(組成比)は、分子量分布全範囲においてバラツキが小さいことが好ましい。具体的には、重合反応に供した特定単量体dと特定単量体eとの比率に対して、任意の分子量における組成比を、±50%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内のバラツキ範囲に収めることで、より一層均一な特定位相差フィルムを得ることができる。また、こうした範囲に収めることで、延伸配向した際に、位相差のより一層の均一性を得ることが可能となる。
【0097】
以下に、特定単量体d、及び必要に応じて特定単量体eあるいはその他の共重合性単量体を開環共重合することにより、あるいはこれらの単量体を開環共重合した後、得られる開環共重合体を水素添加することにより得られる特定重合体を製造するための条件について説明する。
【0098】
開環重合触媒:
単量体の開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、Mo及びReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えばMg、Caなど)、IIB族元素(例えばZn、Cd、Hgなど)、IIIB族元素(例えばB、Alなど)、IVA族元素(例えばTi、Zrなど)あるいはIVB族元素(例えばSi、Sn、Pbなど)の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。またこの場合に触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0099】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。
【0100】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体d及び特定単量体e(以下、双方を併せて「特定単量体」という。)とのモル比で(a)成分:特定単量体が、通常1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲である。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
【0101】
分子量調節剤:
特定重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類及びスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0102】
開環重合反応用溶媒:
開環重合反応において用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチルなどの飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、上記芳香族炭化水素類が好ましい。
溶媒の使用量としては、溶媒:特定単量体(重量比)が、通常1:1〜10:1となる量、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
【0103】
水素添加:
以上の開環重合により得られる開環共重合体は、そのまま特定重合体として使用することもできるが、当該開環共重合体において残留するオレフィン性不飽和結合を水素添加された水素添加物とすることが好ましい。
【0104】
この水素添加物は、優れた熱安定性を有するものとなり、フィルム製膜加工時及び延伸加工時、あるいは製品としての使用時において、加熱によってその特性が劣化しにくくなる。このような水素添加物において、オレフィン性不飽和結合に対する水素添加率は、50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上である。また、水素添加に供される開環共重合体が分子内に芳香環を有するものである場合には、水素添加後において、当該芳香環が実質的に水素添加されていないことが好ましい。
【0105】
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環共重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
【0106】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒及び均一系触媒が公知である。なお、芳香環を有する置換基を分子内に有する開環重合体を水素添加する場合には、芳香環の不飽和結合が実質的に水素添加されない条件を選択することが好ましい。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属類を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、開環重合体:水素添加触媒(質量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0107】
(モノマーユニットの平均logP)
更に本発明のシクロオレフィン系ポリマーフィルムはモノマーユニットの親水性を下記式(G)の範囲にすることにより、弾性率の湿度依存性を調節できる。0≦logP(i)×Mi≦4.5 (G)
ここでlogP(i)はi番目の構造単位のオクタノール/水分配係数、Miはi番目の構造単位のモル分率である。オクタノール/水分配係数は実測あるいは計算により求めることができる。
更に好ましくは、1≦logP(i)×Mi≦4であり、最も好ましくは2≦logP(i)×Mi≦3.5である。
logP(i)×Miが上記範囲であると、吸水による光学特性変化、寸度変化が小さく、また、偏光子のポリビニルアルコールとの密着が十分である。
【0108】
(フィルム製造)
本発明においては、特定重合体よりなる熱可塑性シクロオレフィン系樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂は溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルムに成形することができるが、厚みの均一性が高く、表面平滑性が良好な加工前フィルムが得られる点で、溶剤キャスト法を利用することが好ましい。溶剤キャスト法としては、例えば、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂を溶媒に溶解又は分散させることにより、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂が適度の濃度で含有されてなるフィルム形成液を調製し、このフィルム形成液を適当なキャリヤー上に注ぐか又は塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0109】
熱可塑性シクロオレフィン樹脂を溶媒に溶解又は分散させる際には、当該シクロオレフィン樹脂の濃度を、通常0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは10〜35重量%にする。この濃度が上記範囲であると、所要の厚みを有する加工前フィルムを得ることができ、乾燥により溶媒を除去する際に、当該溶媒の蒸発に伴って発泡等が生じにくく、表面平滑性が良好な加工前フィルムを得ることができ、また、フィルム形成液の溶液粘度が高くならないため、厚みや表面状態が均一なフィルムを得ることができる。
【0110】
また、フィルム形成液の粘度は、室温で、通常1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、更に好ましくは100〜50,000(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜40,000(mPa・s)である。
【0111】
フィルム形成液の調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、エチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒、1,2−ジメチルシクロヘキサンを挙げることができる。
【0112】
また、上記の溶媒以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が、通常10〜30(MPa1/2)、好ましくは10〜25(MPa1/2)、更に好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特性の良好な加工フィルムを得ることができる。
【0113】
上記の溶媒は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒を2種以上組み合わせて用いる場合には、得られる混合溶媒のSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合溶媒のSP値の値は、当該混合溶媒を構成する各溶媒の重量比から求めることができ、例えば2種の溶媒から得られる混合溶媒においては、各溶媒の重量分率をW1及びW2とし、また、SP値をSP1及びSP2とすると、混合溶媒のSP値は式:SP値=W1・SP1+W2・SP2により算出することができる。
【0114】
フィルム形成液における溶媒として混合溶媒を用いる場合において、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂に対して良溶媒となるものと貧溶媒となるものとを組み合わせることにより、光拡散機能を有する加工前フィルムを得ることができる。具体的には、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂のSP値をSPx、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂の良溶媒のSP値をSPy、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂の貧溶媒のSP値をSPzとしたとき、SPxとSPyとの差が好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下であり、SPxとSPzとの差が好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは9以上であり、SPyとSPzとの差が好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは7以上とすることにより、得られる加工前フィルムに光拡散機能を付与することができ、その結果、最終的に得られる特定位相差フィルムを光拡散機能を有するものとすることができる。
また、混合溶媒中に占める貧溶媒の割合は、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。また、貧溶媒の沸点と良溶媒の沸点との差は好ましくは1℃以上、更に好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、特に貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高いことが好ましい。
【0115】
熱可塑性シクロオレフィン系樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂を溶媒に溶解又は分散させる際の温度は、室温でも高温でもよく、十分に撹拌することにより、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂が均一に溶解又は分散したフィルム形成液が得られる。また、必要に応じてフィルム形成液に染料、顔料等の着色剤を適宜添加することができ、これにより、着色された加工前フィルムを得ることができる。
また、得られる加工前フィルムの表面平滑性を向上させることを目的として、フィルム形成液にレベリング剤を添加してもよい。かかるレベリング剤としては、一般的なものであれは種々のものを用いることができ、その具体例としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
【0116】
フィルム形成液の液層を形成するためのキャリヤーとしては、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等よりなるポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどを用いることができる。フィルム形成液を塗布する方法としては、ダイスやコーターを使用する方法、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などを利用することができる。
また、フィルム形成液を繰り返し塗布することにより、得られる加工前フィルムの厚みや表面平滑性を制御することもできる。
【0117】
また、キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。
表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーテイングやラミネートにより積層する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
【0118】
溶剤キャスト法において、液層中の溶媒を除去するための具体的な方法としては、特に限定されず、一般的に用いられる乾燥処理法、例えば多数のローラーによって乾燥炉中を通過させる方法を利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、最終的に得られる特定位相差フィルムの特性を著しく低下させるので、これを回避するために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を制御することが好ましい。
【0119】
このようにして得られる加工前フィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、加工前フィルム中の残留溶媒量が上記範囲であると、当該加工前フィルムを延伸加工することによって得られる特定位相差フィルムを実際に使用したときに経時による寸法変化が小さく好ましい。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くならず、耐熱性も低下しないため好ましい。
【0120】
また、後述する延伸加工を好適に行うためには、加工前フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが必要となる場合がある。具体的には、延伸配向処理によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、加工前フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、更に好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。加工前フィルム中に微量の溶媒を残留させることにより、延伸配向処理が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
【0121】
本発明において、加工前フィルムの厚みは、通常1〜30μm(1,000〜60,000nm)、好ましくは5〜30μm(500〜30,000nm)、更に好ましくは10〜20μm(10,000〜20,000nm)である。この厚みが上記範囲であると、当該加工前フィルムをハンドリングすることが容易であり、また、当該加工前フィルムをロール状に巻き取った際に、いわゆる「巻きぐせ」がつかず、後加工等における取扱いが容易である。
加工前フィルムの厚み分布は、平均値に対して通常±20%以内、好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。加工前フィルムの厚み分布を上記の範囲内に制御することにより、当該加工前フィルムに対して延伸配向処理を行う際に、位相差ムラが発生することを防止することができる。
【0122】
特定位相差フィルムを製造するための延伸加工法としては、具体的に、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法を挙げることができる。
すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、延伸後のフィルムの屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、更に好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0123】
延伸配向処理における処理温度は、特に限定されるものではないが、用いられる熱可塑性シクロオレフィン系樹脂、好ましくは熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常Tg±30℃、好ましくはTg±15℃、更に好ましくはTg−5℃〜Tg+15℃の範囲である。処理温度を上記の範囲内とすることにより、位相差ムラの発生を抑制することが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、更に好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が上記範囲であると、位相差の制御が容易である。
【0124】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、更に好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0125】
特定位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂の原料である、例えば特定単量体a、特定単量体bあるいはその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法によりコントロールすることが可能である。
なお、延伸配向処理を施していない状態の加工前フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0126】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向していることにより、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、原料として用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の種類、延伸倍率、延伸処理温度あるいは延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚み等を調整することにより制御することができる。例えば、延伸倍率については、延伸前の厚みが同じフィルムであっても、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与えるフィルムを得ることができる。また、延伸前のフィルム(加工前フィルム)の厚みについては、延伸倍率が同じであっても、延伸前のフィルムの厚みが大きいほど透過光に与える位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚みを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、延伸処理温度については、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
【0127】
また、特定位相差フィルムの厚みを調整するためには、加工前フィルムの厚み、延伸倍率等を調整することにより制御することができる。具体的には、例えば加工前フィルムの厚みを小さくすること、あるいは延伸倍率を大きくすることにより位相差フィルムの厚みを小さくすることができる。
【0128】
このような特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2当たりに換算したときの輝点の数は、10個以下、好ましくは7個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0又は1とされる。
ここに、「輝点」とは、特定位相差フィルムをクロスニコル状態の偏光板に挟んで観察したときに肉眼で確認される部分的な光の漏れであり、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)のものを計測する。
もちろん、要求される性能によっては、これよりも小さいものを輝点として計測する場合がある。また、かかる輝点は、微小領域における位相差の部分的なムラが原因と考えられている。すなわち、加工前フィルム中に異物や泡等が存在すると、それらが肉眼では確認できないような大きさであっても、延伸加工した際に、異物や泡等が存在する部分に応力が集中し、この応力が集中した部分の位相差が周辺部分の位相差と異なってしまうことがあり、係る位相差の違いにより光が漏れてしまうと考えられている。
【0129】
また、特定位相差フィルムにおいては、フィルム面上における1m2当たりに換算したときの異物の数が、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0又は1とされる。
ここでいう「異物」とは、特定位相差フィルムに光を透過させた場合に、実質的に光の透過を妨げるものである。このような異物が特定位相差フィルム中に存在する場合には、透過光強度に影響を与え、液晶表示素子等に用いた場合、画素抜けや特性の低下を招くおそれがある。
なお、計測すべき異物の大きさは、通常外径1μm以上(円形のものであればその直径、その他の形状のものであれば長手方向の長さ)であるが、要求される性能によっては、これよりも小さいものを異物として計測する場合がある。
【0130】
<フィルムの表面処理>
第1の保護フィルムは偏光子との密着を確保するため、少なくとも一方の表面が親水化処理されていることが好ましい。
表面処理方法としては、例えば特開2000−24167号、特開平10−130402号、特開2002−148436号、特開2002−90546号、特開2001−350017号に記載の接着層を設ける方法、また、特開2001−350018号に記載のコロナ放電処理等の表面処理により親水性を付与することもできる。
【0131】
第1の保護フィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムのいずれでもよい。延伸フィルムである場合は、1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸フィルムである場合は、同時2軸延伸フィルム又は逐次2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸した場合は、機械的強度が向上し、フィルム性能が向上する。合成ポリマーフィルムは、他の熱可塑性樹脂を混合することにより、延伸しても位相差の増大を抑制することができ、光学的等方性を保持することができる。
延伸温度は、フィルム原料である熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)、より好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内である。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、充分な延伸倍率が得られないおそれがある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+100℃)超えると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えないおそれがある。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍、より好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸に伴う靭性の向上につながらないおそれがある。延伸倍率が25倍を超えると、延伸倍率を上げるだけの効果が認められないおそれがある。
延伸速度は、一方向で、好ましくは10〜20,000%/min、より好ましく100〜10,000%/minである。延伸速度が10%/min未満であると、充分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるおそれがある。延伸速度が20,000%/minを超えると、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがある。
【0132】
第1の保護フィルムは、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うことができる。熱処理の条件は、任意の適切な条件を採用し得る。
【0133】
(第1の保護フィルムの膜厚)
第1の保護フィルムの厚さは、ムラの発生しにくさの観点から30μm以下であり、好ましくは1〜30μm、より好ましくは5〜30μm、更に好ましくは10〜20μmである。厚さが30μmを超えると、透明性が低下するだけでなく、透湿性が小さくなり、水系接着剤を用いた場合、その溶剤である水の乾燥速度が遅くなるおそれがある。また高温高湿の耐久試験を掛けた時に液晶表示装置の画面内に光漏れのムラが発生するおそれがある。厚さが1μm以上であると、強度が向上し、偏光板の耐久性試験を行うと捲縮が大きくならず好ましい。
前記第1の保護フィルムの厚さは、フィルム断面の光学顕微鏡観察により測定される平均膜厚である。
【0134】
(第1の保護フィルムの湿度寸法変化率)
第1の保護フィルムは、TD方向の下記式(1)で表される湿度寸法変化率が、光学特性の安定性の観点から、0.1%以下であることが好ましく、0%以上0.1%以下がより好ましく、0%以上0.05%以下が更に好ましい。
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
・・・式(1)
【0135】
第1の保護フィルムは、前記偏光子の吸収軸に平行な方向(フィルム製造時のフィルム搬送方向:MD方向)の前記式(1)で表される湿度寸法変化率もTD方向と同様に、光学特性の安定性の観点から、0.5%以下が好ましく、0.25%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。第1の保護フィルムの湿度寸法変化率が小さいほど、湿度変化が生じた際に生じる第1の保護フィルムの収縮若しくは拡張が低減する。これによって液晶セルを構成するガラスや液晶セルに偏光板を貼合するための粘着剤にかかる力が低減し、結果として光弾性に起因する光漏れが低減する。
【0136】
第1の保護フィルムの表面の濡れ張力は、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が少なくとも40mN/m以上であると、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと偏光子との接着強度が更に向上する。表面の濡れ張力を調整するために、任意の適切な表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、コロナ放電処理、プラズマ処理である。
【0137】
第1の保護フィルムのTD方向の弾性率は、2.0GPa〜2.5GPaである。TD方向の弾性率が2.5GPa以下であると光弾性に起因したムラの発生が少なくなる。
【0138】
前記第1の保護フィルムは、本発明の偏光板が液晶表示装置に組み込まれる際に、液晶セル側(インナー側)に配置されることが好ましい。
前記第1の保護フィルムをインナー側フィルムとすることで、高温高湿下で長期使用した場合のムラ発生が抑えられるという観点で好ましい。
【0139】
{第2の保護フィルム}
第2の保護フィルムは、下記式(2)で表される評価値が7.0〜11.0である。
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
なお、第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率は、下記式(1)で表される。
式(1):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるTD方向のフィルム長さ)−(25℃、相対湿度10%におけるTD方向のフィルム長さ)}/(25℃、相対湿度60%におけるTD方向のフィルム長さ)]×100
【0140】
前記第2の保護フィルムの厚さと、TD方向の弾性率と、TD方向の湿度寸法変化を前記のように特定の範囲とすることで、カールの観点で液晶表示装置の製造適性に優れた偏光板とすることができる。
【0141】
本発明において、前記式(2)の導出過程について説明する。
まず、偏光板のカール浮き量と第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率についての関係を図4に示す。図4より、第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率と偏光板のカール浮き量については、関係性を見出すことはできない。
次に、カール浮き量について、第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率、及び第2の保護フィルムのTD方向の弾性率との関連性を調べた。第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率、及び第2の保護フィルムのTD方向の弾性率とカール浮き量の等高線を示したカールマップを図5に示す。
図5より、カールの等高線はTD方向の弾性率とTD方向の湿度寸法変化率が同時に上下する方向に現れることが分かった。これより、TD方向の弾性率とTD方向の湿度寸法変化率の比に好ましい範囲があると推察される。
そこで、下記式(3)で表される評価値1とカール浮き量の関係を調べた。
式(3):
評価値1=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)
図6には、偏光子のポリビニルアルコールの膜厚が30μmであり、第1の保護フィルムであるシクロオレフェン系ポリマーフィルムの膜厚が25μmである場合に、第2の保護フィルムであるセルロースアシレートフィルムの膜厚が15μm、20μm、及び25μmの場合のカール浮き量と評価値1の関係を示した。
図6より、セルロースアシレートフィルムの厚みが一定である場合は、評価値1とカール浮き量の関係が直線に乗るが、厚みが異なる場合は対応しないことが分かる。
そこで、厚みの補正を加えた下記式(4)で表される評価値2とカール浮き量との関係について検討した。
式(4):
評価値2=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
図7に、偏光子のポリビニルアルコールの膜厚が30μmである場合のカール浮き量と評価値2の関係を示した。
図7より、カール浮き量と評価値2とは対応が良いことが分かる。
次に、偏光子の厚みを変化させた場合について、評価値2とカール浮き量との関係について検討した。
図8に、偏光子のポリビニルアルコールの膜厚が30μmである場合、及び20μmである場合のカール浮き量と評価値2の関係を示した。
図8より、偏光子の厚みが変わると評価値2の好ましい領域が変化することが分かった。より詳細には、偏光子の厚みが減少するとカール浮き量と評価値2の対応関係を示す直線の傾きが低減することが分かった。
そして、偏光子の厚みの補正を加えた評価値として、下記式(2)で表される評価値としたものである。
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
図9に、式(2)による評価値(評価値3)とカール浮き量との関係を示した。
図9より、式(2)による評価値とカール浮き量とは直線に乗っており、対応が良いことが分かる。
【0142】
式(2)で表される評価値は、液晶セルへの偏光板貼合時における泡の巻き込み、位置ずれ等のエラー発生の頻度の少なさの観点から、7.0〜11.0が好ましく、9.0〜10.0がより好ましく、9.0〜9.8が特に好ましく、9.0〜9.6が最も好ましい。
【0143】
前記第2の保護フィルムを構成する材料は特に限定されない。
前記第2の保護フィルムは、樹脂を含んでなることが好ましく、前記樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、セルロースアシレート、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を挙げることができ、セルロースアシレートが好ましい。
【0144】
(セルロースアシレート)
以下、第2の保護フィルムに用いることができるセルロースアシレートについて、詳しく説明する。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度(アシル化度)は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。本発明において、セルロース体の置換度はセルロース体を重水素置換されたジメチルスルフォキシド等の溶剤に溶解して13C−NMRスペクトルを測定し、アシル基中のカルボニル炭素のピーク強度比から求めることにより算出することができる。セルロースアシレートの残存水酸基をセルロースアシレート自身が有するアシル基とは異なる他のアシル基に置換したのち、13C−NMR測定により求めることができる。測定方法の詳細については、手塚他(Carbohydrate.Res.,273(1995)83−91)に記載がある。
【0145】
セルロースアシレートの全アシル置換度は2.0〜2.97であることが好ましく、2.2〜2.95であることがより好ましく、2.3〜2.95であることが特に好ましい。
セルロースアシレートのアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が特に好ましく、アセチル基がより特に好ましい。
【0146】
2種類以上のアシル基からなる混合脂肪酸エステルも本発明においてセルロースアシレートとして好ましく用いることができる。この場合も、アシル基としてはアセチル基と炭素数が3〜4のアシル基が好ましい。また、混合脂肪酸エステルを用いる場合、アセチル基の置換度は2.5未満が好ましく、1.9未満が更に好ましい。一方、炭素数が3〜4のアシル基の置換度は0.1〜1.5であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましく、0.5〜1.1であることが特に好ましい。
本発明においては、置換基及び/又は置換度の異なる2種のセルロースアシレートを併用、混合して用いてもよいし、後述の共流延法などにより、異なるセルロースアシレートからなる複数層からなるフィルムを形成してもよい。
【0147】
更に特開2008−20896号公報の〔0023〕〜〔0038〕に記載の脂肪酸アシル基と置換若しくは無置換の芳香族アシル基とを有する混合酸エステルも本発明に好まく用いることができる。
【0148】
セルロースアシレートは、250〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、300〜600の質量平均重合度を有することが更に好ましい。
またセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することが更に好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
【0149】
セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。前記アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。また、触媒として、硫酸のようなプロトン性触媒を用いることができる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物を用いることができる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
【0150】
前記方法においては、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖(β)1,4−グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフィルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
【0151】
(添加剤)
第2の保護フィルムは、有機酸やその他の偏光板保護フィルムに用いられる公知の添加剤を、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、含んでいてもよい。これによって湿度寸法変化率の制御の一助とすることができる。添加剤の分子量は特に制限されないが、後述の添加剤を好ましく用いることができる。
添加剤を加えることによって、湿度寸法変化率の制御に加えて、フィルムの熱的性質、光学的性質、機械的性質の改善、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
【0152】
例えば機械的な性質の制御としては、フィルムへの可塑剤添加が挙げられ、参考となる可塑剤の事例としては、リン酸エステル、クエン酸エステル、トリメリット酸エステル、糖エステルなどの既知の各種エステル系可塑剤や国際公開第2011/102492パンフレットの段落番号0042から0068のポリエステル系ポリマーの記載を参考にすることができる。
【0153】
また、光学的な性質の制御として、紫外線や赤外線の吸収能の付与には、国際公開第2011/102492号の段落番号0069から0072の記載を参考にすることができ、フィルムの位相差の調整や発現性制御のためには既知のレターデーション調整剤を用いることができる。これによって湿度寸法変化率の制御の一助とすることができる。添加剤の分子量は特に制限されないが、後述の添加剤を好ましく用いることができる。
【0154】
(第2の保護フィルムの厚み)
第2の保護フィルムの厚みは5〜30μmが好ましく、10〜30μmより好ましく、15〜25μmが特に好ましい。厚みが30μm以下であると、液晶ディスプレイのスリム化の観点で好ましい。一方、厚みが5μm以上であると、偏光板加工時の搬送時に破断しにくく、偏光板の表面に傷が付きにくい。
前記第2の保護フィルムの厚さは、フィルム断面の光学顕微鏡観察により測定される平均膜厚である。
添加剤の添加量としては、上記種々の効果を発現させる観点から、セルロースアシレートに対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。上限としては、80質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることが好ましい。添加剤を2種類以上用いた場合には、その合計量が上記範囲にあることが好ましい。
【0155】
(透湿度)
第2の保護フィルムの透湿度は、偏光板製造時の乾燥速度の観点から、10g/m2・day以上であることが好ましい。第2の保護フィルムの透湿度は、10〜500g/m2・dayであることがより好ましく、100〜500g/m2・dayであることが更に好ましく、200〜450g/m2・dayであることがより特に好ましい。
本明細書中における透湿度の値は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて、温度40℃、相対湿度92%の雰囲気中、面積1m2の試料を24時間に通過する水蒸気の質量(g)を測定した値である。
【0156】
<第2の保護フィルムの製造方法>
前記第2の保護フィルムの製造方法について、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いたフィルムの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂と、その他の重合体や添加剤等を、任意の適切な混合方法で充分に混合し、予め熱可塑性樹脂組成物としてから、これをフィルム成形することができる。あるいは、樹脂と、その他の重合体や添加剤等を、それぞれ別々の溶液にしてから混合して均一な混合液とした後、フィルム成形してもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物を製造するには、例えば、オムニミキサー等、任意の適切な混合機で上記のフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する。この場合、押出混練に用いられる混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、任意の適切な混合機を用いることができる。
上記フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
第2の保護フィルムの製造方法について、第2の保護フィルムがセルロースアシレートを含むフィルム(「セルロースアシレートフィルム」とも言う)である場合を例として詳細に説明する。
セルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造することができる。以下、前記有機酸を含む偏光板保護フィルムの製造方法について、基材としてセルロースアシレートを用いた態様を例に挙げて説明するが、その他の樹脂を用いた場合も同様に前記偏光板保護フィルムを製造することができる。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
【0157】
前記有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
前記エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。また、前記エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、前記有機溶媒として用いることができる。前記有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上述の好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0158】
前記炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
前記炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
前記炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
また、2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0159】
炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることが更に好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
また、2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0160】
セルロースアシレート溶液(ドープ)は、0℃以上の温度(常温又は高温)で処理することからなる一般的な方法で調製することができる。セルロースアシレート溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
【0161】
セルロースアシレート溶液中におけるセルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0162】
セルロースアシレート溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で撹拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、更に好ましくは80〜110℃である。
【0163】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は撹拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
【0164】
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
【0165】
撹拌は、容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて行うことが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
【0166】
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0167】
冷却溶解法により、セルロースアシレート溶液を調製することもできる。冷却溶解法の詳細については、特開2007−86748号公報の〔0115〕〜〔0122〕に記載されている技術を用いることができる。
【0168】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープにはレターデーション発現剤を添加することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0169】
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号の各公報に記載がある。バンド又はドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行なうことができる。
【0170】
また、得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、更に100℃〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して、残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0171】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて2層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40質量%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0172】
2層以上の複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能であり、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。これらは、例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによっても、フィルム化することもできる。これは、例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。更に特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高・低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
【0173】
また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0174】
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を2種以上用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。更に本発明におけるセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0175】
(有機酸の添加)
セルロースアシレート溶液に対し、有機酸を添加する場合、その添加のタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
【0176】
(その他の添加剤の添加)
第2の保護フィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。また、前記劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることが更に好ましい。添加量が0.01質量%以上であれば、劣化防止剤の効果が十分に発揮されるので好ましく、添加量が1質量%以下であれば、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)などが生じにくいので好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0177】
また、第2の保護フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0178】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmが更に好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0179】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0180】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0181】
2次平均粒子径の小さな粒子を有する偏光板保護フィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、更にメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤微粒子の添加量は1m3あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0182】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明における偏光板保護フィルムの製造に用いる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0183】
(延伸処理)
第2の保護フィルムには、延伸処理を行うこともできる。延伸処理により偏光板保護フィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。セルロースアシレートフィルムの延伸方向は幅方向、長手方向のいずれでも好ましい。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。
【0184】
第2の保護フィルムの延伸は、加熱条件下で実施することが好ましい。フィルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0185】
第2の保護フィルムの延伸は、フィルムのガラス転移温度Tgを用いて、(Tg−5℃)〜(Tg+40℃)の温度で行うことが好ましく、Tg〜(Tg+35℃)であることがより好ましく、(Tg+10℃)〜(Tg+30℃)であることが特に好ましい。乾膜の場合、130℃〜200℃が好ましい。
また、流延後にドープ溶剤が残存した状態で延伸を行う場合、乾膜よりも低い温度で延伸が可能となり、この場合、100℃〜170℃が好ましい。
【0186】
第2の保護フィルムの延伸倍率(延伸前のフィルムに対する伸び率)は、1%〜200%が好ましく、5%〜150%が更に好ましい。とくに、幅方向に1%〜200%で延伸するのが好ましく、更に好ましくは5%〜150%、特に好ましくは30〜45%である。
延伸速度は1%/分〜300%/分が好ましく、10%/分〜300%/分が更に好ましく、30%/分〜300%/分が最も好ましい。
【0187】
また、第2の保護フィルムは、最大延伸倍率まで延伸したのちに、最大延伸倍率より低い延伸倍率で一定時間保持する工程(以下、「緩和工程」と称することがある。)を経て製造されることが好ましい。緩和工程における延伸倍率は最大延伸倍率の50%〜99%が好ましく、70%〜97%が更に好ましく、90%〜95%が最も好ましい。また、緩和工程の時間は1秒〜120秒が好ましく、5秒〜100秒が更に好ましい。
【0188】
更に、前記偏光板保護フィルムは幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程を含むことにより好ましく製造することができる。
フィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向(長手方向)に収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする製造方法においてはパンタグラフ式あるいはリニアモーター式のテンターによって保持し、フィルムの幅方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることが出来る。
【0189】
前記で説明した方法は、延伸工程と収縮工程の少なくとも一部が、同時に行われているということができる。
【0190】
なお、上記のようなフィルムの長手方向又は幅方向のいずれか一方を延伸し、同時にもう一方を収縮させ、同時にフィルムの膜厚を増加させる延伸工程を具体的に行う延伸装置として、市金工業社製FITZ機などを望ましく用いることができる。この装置に関しては(特開2001−38802号公報)に記載されている。
【0191】
延伸工程における延伸倍率及び収縮工程における収縮率としては目的とする面内のレターデーション(Re)及び厚さ方向のレターデーション(Rth)の値により、任意に適切な値を選択することができるが、延伸工程における延伸倍率が10%以上であり、かつ収縮工程における収縮率を5%以上とすることが好ましい。
特に、フィルムの幅方向に10%以上延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながらフィルムの搬送方向を5%以上収縮させる収縮工程とを含むことが好ましい。
なお、本発明でいう収縮率とは、収縮方向における収縮前のフィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
収縮率としては5〜40%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。
【0192】
前記第2の保護フィルムは、本発明の偏光板が液晶表示装置に組み込まれる際に、アウター側(液晶セルの反対側)に配置されることが好ましい。
前記第2の保護フィルムをアウター側フィルムとすることは、液晶表示装置表面への傷の付きにくさの観点で好ましい。
【0193】
[偏光板の製造方法]
以下、本発明の偏光板の製造方法について、偏光板保護フィルムと偏光子の積層方法、偏光板の機能化の順に説明する。
【0194】
(鹸化処理)
前記偏光板保護フィルム(第1の保護フィルム、及び第2の保護フィルム)はアルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。
鹸化の方法については、特開2007−86748号公報の〔0211〕と〔0212〕に記載される方法を用いることができる。
【0195】
例えば前記偏光板保護フィルムに対するアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。前記アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1〜5.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜4.0mol/Lの範囲にあることが更に好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることが更に好ましい。
【0196】
アルカリ鹸化処理の代わりに、特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
【0197】
<偏光子と偏光板保護フィルムの積層方法>
本発明の偏光板の製造方法は、上記にて得られた本発明の偏光子の両面に、2枚の偏光板保護フィルムを積層する工程を含むことが好ましい。
【0198】
本発明の偏光板の製造方法では、偏光板保護フィルムをアルカリ処理し、偏光子の両面に、接着剤を用いて貼り合わせる方法により作製することが好ましい。
前記偏光板保護フィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0199】
本発明の偏光板は、ロールツーロールでの製造適性の観点から、偏光子の吸収軸と、偏光板保護フィルム(第1の保護フィルム、及び第2の保護フィルム)の製造時のフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)とが、実質的に直交するように積層されることが好ましい。ここで、実質的に直交するとは、偏光子の吸収軸と偏光板保護フィルムのTD方向の成す角が85°〜95°であり、89°〜91°であることが好ましい。直交からのずれが5°以内(好ましくは1°以内)であれば、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下しにくく、光抜けが生じにくく好ましい。
図2に本発明の偏光板の一例を示す。図2において、偏光子3の吸収軸13と、第1の保護フィルム1のフィルム製造時のTD方向11及び第2の保護フィルム2のフィルム製造時のTD方向12とは直交している。
【0200】
[偏光板]
<偏光板の性能>
本発明の偏光板の好ましい光学特性等については特開2007−086748号公報の〔0238〕〜〔0255〕に記載されており、これらの特性を満たすことが好ましい。
【0201】
<形状・構成>
本発明の偏光板の形状は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
偏光板の厚みは、40μm以上80μm以下が好ましく、45μm以上70μm以下がより好ましく、50μm以上60μm以下が更に好ましい。偏光板の厚みが80μm以下であれば、偏光板の収縮による液晶ディスプレイの反りが発生しにくいため好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。一方、偏光板の厚みが40μm以上であれば、偏光板加工において搬送中にたわみが発生しにくく、加工ラインを通しやすいため好ましい。
【0202】
本発明の偏光板は、偏光子と該偏光子の両面に積層されている偏光板保護フィルムを含む。前述したように、二枚の偏光板保護フィルムのうち、液晶セルに貼合したときに液晶セル側に来る側のフィルムをインナー側フィルム、反対側のフィルムをアウター側フィルムと呼ぶ。前記第1の保護フィルムがインナー側フィルムとなり、前記第2の保護フィルムがアウター側フィルムとなることが好ましい。本発明の偏光板は、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成されることも好ましい。
前記プロテクトフィルム及び前記セパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0203】
<偏光板の機能化>
本発明の偏光板は、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板としても好ましく使用される。機能化のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、他の機能性光学フィルム、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア層については、特開2007−86748号公報の〔0257〕〜〔0276〕に記載され、これらの記載を基に機能化した偏光板を作成することができる。
【0204】
本発明の偏光板は、以下のいずれかの態様であることが好ましい。
(1) 第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが20μmであり、
前記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが5.7〜9.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
(2) 第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが25μmであり、
前記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが6.5〜10.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
(3) 第1の保護フィルムと、偏光子と、第2の保護フィルムとをこの順に有する偏光板であって、
前記第1の保護フィルムが、合成ポリマーを含んでなるフィルムであり、厚さが30μm以下であり、TD方向の弾性率が2.0GPa〜2.5GPaであり、
前記偏光子の厚みが30μmであり、
前記第2の保護フィルムが、下記式(2’)で表される評価値Aが7.0〜11.0である、偏光板。
式(2’):
評価値A=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))
【0205】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の偏光板を、バックライト側偏光板、及び視認側偏光板の少なくとも一方として有する。
特に、本発明の偏光板における、(メタ)アクリル系樹脂を含んでなる第1の保護フィルムを、液晶セル側(インナー側)となるように含むことが好ましい。
本発明の液晶表示装置の好ましい一例の模式図を図3に示す。
図3に示した液晶表示装置100は、液晶セル20の両側に、第1の保護フィルム1、偏光子3、及び第2の保護フィルム2を有する本発明の偏光板10を有する。液晶表示装置100は、液晶セル20側(インナー側)に第1の保護フィルム1が配置されるように偏光板10を有している。
ノーマリーブラックの液晶表示装置とするためには、2枚の偏光板10における偏光子3の吸収軸は、互いに直交するように配置されることが好ましい。
【実施例】
【0206】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0207】
〔インナー側フィルムの作製〕
[フィルム1]
【0208】
以下の実施例中の「部」の表示は「質量部」を示す。
<樹脂a−1の合成>
窒素置換した反応容器に、特定単量体dとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 227部と、特定単量体eとして5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 26部と、分子量調節剤として1−ヘキセン 17部と、溶媒としてトルエン 753部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノール及びメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.8部とを添加し、この系を85℃で3時間加熱撹拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
この重合反応における重合転化率は96%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh)を測定したところ、0.64dl/gであった。
【0209】
得られた開環共重合体溶液4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C65330.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で3時間加熱撹拌することにより水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂(a−1)」)を得た。
【0210】
得られた樹脂(a−1)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
また、樹脂(a−1)における5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来の構造単位eの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルを測定し、約3.7ppm付近に出現する、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに由来の構造単位dのメチルエステルのメチルのプロトンの吸収ピークと、0.15〜3ppmに出現する構造単位d及び構造単位eの脂環構造のプロトンの吸収ピークとに基づいて算出したところ、19.5%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量Mwが1万以下のもの、1万を超えて3万以下の範囲のもの、及び3万を超えたものを分取し、それぞれの構造単位eの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより確認したところ、樹脂(a−1)全体における割合である19.5%の値に対するバラツキは、いずれも15%以内であった。
【0211】
樹脂(a−1)をトルエンに濃度が30%となるように溶解した。得られた溶液の室温における溶液粘度は30,000mPa・sであった。
この溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、樹脂(a−1)100重量部に対して0.1重量部を添加し、得られた溶液を日本ポール製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した後、クラス1000のクリーンルーム内に設置した井上金属工業製の「INVEXラボコーター」を用い、アクリル酸系表面処理剤によって親水化(易接着性化)処理された、厚みが100μmのPETフィルム(東レ(株)製の「ルミラーU94」)に塗布した。
次いで、得られた液層に対して、50℃で一次乾燥処理を行い、更に、90℃で二次乾燥処理を行った後、PETフィルムから剥離させることにより、厚さ25μmのフィルム1を形成した。得られたフィルム1の残留溶媒量は0.5重量%であり、光線透過率は93%以上であった。
【0212】
[フィルム2]
フィルム1と同様の方法で、PETフィルムへの塗布量を調整し、厚さ20μmのフィルム2を形成した。
【0213】
[フィルム25]
【0214】
<樹脂a−2の合成>
窒素置換した反応容器に、特定単量体dとして8−メチル−8−メトキシカルボニル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 225部と、特定単量体eとしてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン 18部と、溶媒としてトルエン 753部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノール及びメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.8部とを添加し、この系を85℃で3時間加熱撹拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
この重合反応における重合転化率は95%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh)を測定したところ、0.68dl/gであった。
【0215】
得られた開環共重合体溶液4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C65330.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で3時間加熱撹拌することにより水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂(a−2)」)を得た。
得られた樹脂(a−2)について、水素添加率を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより測定したところ、99.9%であった。
また、樹脂(a−2)におけるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに由来の構造単位eの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルを測定し、約3.7ppm付近に出現する、8−メチル−8−メトキシカルボニル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに由来の構造単位dのメチルエステルのメチルのプロトンの吸収ピークと、0.15〜3ppmに出現する構造単位d及び構造単位eの脂環構造のプロトンの吸収ピークとに基づいて算出したところ、19.4%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量Mwが1万以下のもの、1万を超えて3万以下の範囲のもの、及び3万を超えたものを分取し、それぞれの構造単位eの割合を、400MHz 1H−NMRスペクトルにより確認したところ、樹脂(a−2)全体における割合である19.4%の値に対するバラツキは、いずれも15%以内であった。
【0216】
樹脂(a−1)の代わりに樹脂(a−2)を用いた以外は同様にして、上記フィルム1と同様の手法により、残留溶媒量が0.4重量%の樹脂フィルム(a−2)を作製した。
【0217】
更に、樹脂フィルム(a−2)をテンター内で、120℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.2倍に延伸し、その後、90℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、フィルム25を得た。厚みは25μmであった。
【0218】
[フィルム26]
樹脂フィルム(a−2)をテンター内で、120℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルム面内方向の縦方向に1.05倍に延伸した後、フィルム面内方向の横方向に1.2倍に延伸し、その後、90℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、フィルム26を得た。厚みは25μmであった。
【0219】
〔アウター側フィルムの作製〕
[フィルム3〜24、27]
【0220】
(アセチル置換度)
セルロースアシレートのアセチル置換度については以下の方法で測定した。
アセチル置換度は、ASTM D−817−91に準じて測定した。
【0221】
(TD方向の弾性率)
フィルムの弾性率はJIS K7127に記載の方法に従って測定した。
フィルムロールの巻き方向を長手方向(MD方向)、長手方向と直交する幅手方向(TD方向)とする。該幅手方向を測定方向として、該測定方向に15cmの長さで、幅1cmのフィルム試料を切り出した。該試料を東洋精機製のストログラフV10−Cに、長手方向のチャック間隔が10cmとなるように設置し、延伸速度10mm/分でチャック間隔が広がるように加重を加えて、その時の力を測定した。予めマイクロメーターで測定していたフィルムの厚み、力、伸び量から弾性率を算出した。
【0222】
(TD方向の湿度寸法変化率)
フィルムの湿度寸法変化率は以下の方法で測定した。
フィルムロールの巻き方向を長手方向(MD方向)、長手方向と直交する幅手方向(TD方向)とする。該幅手方向を測定方向として、該測定方向に12cmの長さで、幅3cmのフィルム試料を切り出した。該試料に測定方向に沿って10cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した。次に25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した。これらの測定値を用いて前記式(1)に対応する下記式(1’)によりTD方向の湿度寸法変化率を算出した。
式(1’):
TD方向の湿度寸法変化率(%)=[{(25℃、相対湿度80%におけるピン孔の間隔)−(25℃、相対湿度10%におけるピン孔の間隔)}/(25℃、相対湿度60%におけるピン孔の間隔)]×100
【0223】
(フィルム3の作製)
(1)中間層用ドープの調製
下記組成の中間層用ドープ1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ドープ1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(アセチル化度2.86、重合度370)
100質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
・メタノール(第2溶媒) 83質量部
・1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
・トリフェニルフォスフェート 7.6質量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0224】
具体的には、以下の方法で調製した。
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス性溶解タンクに、上記混合溶媒をよく攪拌・分散しつつ、セルロースアセテート粉体(フレーク)、トリフェニルフォスフェート及びビフェニルジフェニルフォスフェートを徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。まず、セルロースアセテートの粉末は、分散タンクに粉体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×10kgf/m/sec)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10kgf/m/sec)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとして更に100分間攪拌し、セルロースアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.5質量%以下であることを確認し、具体的には0.3質量%であった。
【0225】
膨潤した溶液をタンクからジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。
次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させドープを得た。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
【0226】
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶剤は調製工程の溶剤として再利用すべく回収工程に回された(回収は蒸留工程と脱水工程などにより実施されるものである)。フラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。このドープを採集して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(sec−1)で450(Pa・s)であった。
【0227】
次に、このドープに弱い超音波照射することで泡抜きを行った。その後、1.5MPaに加圧した状態で、最初に公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。それぞれの一次圧は、1.5、1.2MPaであり、二次圧は1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.3m/secで常時攪拌することで、中間層用ドープ1を得た。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
【0228】
続いてストックタンク内のドープ1を1次増圧用のギアポンプで高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプは容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.5MPaであった。
【0229】
(2)支持体層用ドープ2の調製
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))と剥離促進剤(クエン酸エチルエステル(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物))と前記中間層用ドープ1を、静止型混合器を介して混合させて支持体層用ドープ2を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.05質量%,剥離促進剤濃度が0.03質量%となるように行った。
【0230】
(3)エアー層用ドープ3の調製
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))を静止型混合器を介して前記中間層用ドープ1に混合させて、エアー層用ドープ3を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.1質量%となるように行った。
【0231】
(4)共流延による製膜
流延ダイとして、幅が1.8mであり共流延用に調整したフィードブロックを装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体層と称し、反対側の面をエアー層と称する。なお、ドープの送液流路は、中間層用、支持体層用、エアー層用の3流路を用いた。
【0232】
上記中間層用ドープ1、支持体層用ドープ2、及びエアー層用ドープ3を流延口から0℃ に冷却したドラム上に共流延した。このとき、厚みの比がエアー層/中間層/支持体層=4/73/3となるように各ドープの流量を調整した。流延したドープ膜をドラム上で30℃の乾燥風により乾燥させ、残留溶剤が150%の状態でドラムより剥離した。剥離の際、搬送方向(長手方向)に20%の延伸を行なった。更に、熱処理装置のロール間を搬送することにより更に乾燥し、フィルム3を製造した。作製したセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、厚みは25μmであった。
各ドープの流量を調整し、また搬送方向の延伸強度、幅手方向の延伸倍率を調整して、その他はフィルム3と同様にして、厚み、TD方向の弾性率、TD方向の湿度寸法変化率が異なるフィルム4〜24、27を製造した。フィルム1〜27の厚み、TD方向の弾性率、TD方向の湿度寸法変化率を表1に示す。
【0233】
【表1】
【0234】
〔鹸化処理〕
作製したインナー側フィルム及びアウター側フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。このようにして、各フィルムについて表面の鹸化処理を行った。
【0235】
〔偏光子1の作成〕
500Lのタンクに18℃の水200kgを入れ、攪拌しながら、重量平均分子量165000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂42kgを加え、15分間攪拌した。得られたスラリーを脱水し、含水率40%のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを得た。
【0236】
得られたポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ70kg(樹脂分42kg)を溶解槽に入れ、可塑剤としてグリセリン4.2kg、水10kgを加え、槽底から水蒸気を吹き込んだ。内部樹脂温度が50℃になった時点で攪拌(回転数:5rpm)を行い、内部樹脂温度が100℃になった時点で系内を加圧し、150℃まで昇温した後、水蒸気の吹き込みを停止した(水蒸気の吹き込み量は計75kg)。30分間攪拌(回転数:20rpm)を行い均一に溶解した後、濃度調整により水に対するポリビニルアルコール系樹脂濃度23%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。
【0237】
次にポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温147℃)をギアポンプ1より2軸押し出し機に供給し、脱泡した後、ギアポンプ2により排出した。排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、T型スリットダイ(ストレートマニホールダイ)よりキャストドラムに流延して製膜した。流延製膜の条件は以下の通りである。
【0238】
キャストドラム直径(R1):3200mm、
キャストドラム幅4.3m、
キャストドラム回転速度:8m/分、
キャストドラム表面温度:90℃、
T型スリットダイ出口の樹脂温度:95℃
得られた膜の表面と裏面とを下記の条件にて複数の乾燥ロールを交互に通過させながら乾燥を行った。
【0239】
乾燥ロール直径(R2):320mm、
乾燥ロール幅:4.3m、
乾燥ロール本数(n):10本、
乾燥ロール回転速度:8m/分、
乾燥ロール表面速度:50℃
【0240】
上記で作製したポリビニルアルコールフィルム(長さ4000m、幅4m、厚み75μm)を40℃の温水に2分間浸漬し、膨潤処理した後、1.30倍に延伸した。得られたフィルムを、ホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a社製)28.6g/L、ヨウ素(純正化学社製)0.25g/L、ヨウ化カリウム(純正化学社製)1.0g/Lを含有した水溶液中で30℃、2分浸漬してヨウ素及びヨウ化物による染色処理を行なった。染色処理して得られたフィルムを5.0倍に一軸延伸しながらホウ酸30.0g/L含有した50℃の水溶液中で5分間処理を行った。得られたフィルムを70℃で9分間乾燥処理を行った。これにより厚み30μmの偏光子を得た。
【0241】
〔偏光子2の作成〕
偏光子1と同様の作り方で、長さ4000m、幅4m、厚み63μmのポリビニルアルコールフィルムを作製し、このフィルムを40℃の温水に2分間浸漬し、膨潤処理した後、1.30倍に延伸した。得られたフィルムを、ホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a社製)28.6g/L、ヨウ素(純正化学社製)0.25g/L、ヨウ化カリウム(純正化学社製)1.0g/Lを含有した水溶液中で30℃、2分浸漬してヨウ素及びヨウ化物による染色処理を行なった。染色処理して得られたフィルムを5.0倍に一軸延伸しながらホウ酸30.0g/L含有した50℃の水溶液中で5分間処理を行った。得られたフィルムを70℃で9分間乾燥処理を行った。これにより厚み25μmの偏光子を得た。
【0242】
〔偏光子3の作成〕
偏光子1、2と同様の作り方で、長さ4000m、幅4m、厚み50μmのポリビニルアルコールフィルムを作製し、このフィルムを40℃の温水に2分間浸漬し、膨潤処理した後、1.30倍に延伸した。得られたフィルムを、ホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a社製)28.6g/L、ヨウ素(純正化学社製)0.25g/L、ヨウ化カリウム(純正化学社製)1.0g/Lを含有した水溶液中で30℃、2分浸漬してヨウ素及びヨウ化物による染色処理を行なった。染色処理して得られたフィルムを5.0倍に一軸延伸しながらホウ酸30.0g/L含有した50℃の水溶液中で5分間処理を行った。得られたフィルムを70℃で9分間乾燥処理を行った。これにより厚み20μmの偏光子を得た。
【0243】
[接着剤の調製]
ポリエステル系ウレタン(三井武田ケミカル社製、タケラックXW−74―C154)10質量部及びイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製、タケネートWD−725)1質量部を、水に溶解し、固形分を20質量%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いた。
【0244】
〔偏光板の作製〕
上記方法にて製造し、鹸化処理したインナー側フィルムを、上記接着剤を用いて、上記方法にて製造した偏光子の片側に貼り付けた。次に上記方法にて製造し、鹸化処理したアウター側フィルムを、上記接着剤を用いて、インナー側の偏光板保護フィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に貼り付けた。
この際、作成した偏光子の吸収軸と、インナー側及びアウター側の両方の保護フィルムのTD方向とは直交するように配置した。
このようにして偏光板試料1〜30を作製した。作製した偏光板の構成を表2に示す。表中に下記式(2)で求める評価値の値を記した。
式(2):
評価値=第2の保護フィルムのTD方向の弾性率(GPa)/第2の保護フィルムのTD方向の湿度寸法変化率(%)×(第2の保護フィルムの厚み(μm)/第1の保護フィルムの厚み(μm))×{(30/偏光子の厚み(μm))}1/2
ここで、インナー側フィルムとして用いたフィルム1、2、25、26が第1の保護フィルムであり、アウター側フィルムとして用いたフィルム3〜24、27が第2の保護フィルムである。
【0245】
[カール評価]
このようにして作製した偏光板を15cm×15cmの大きさに裁断し、25℃、相対湿度60%の温度湿度環境に4時間置いた後、4隅の浮き上がり量を計測した。その結果を表2に示す。この際、アウター側を上向きに置いた時の浮き上がり量をプラス方向とする。作製したサンプルがインナー側に反っている時は、アウター側を上向きに置いても浮き上がり量を計測できないため、フィルムの上下を引っくり返してインナー側を上向きに置いて浮き上がり量を計測し、マイナス符号を付与する。
4隅の平均の浮き上がり量の良し悪しは、−2mm以上4mm未満が特に好ましくAとし、−8mm以上−2mm未満又は4mm以上16mm未満が次に好ましくBとし、−8mm未満、又は16mm以上は好ましくなくCとした。
【0246】
【表2】
【0247】
本実施例はアウター側の表面にハードコート層の無い形態についてのものであるが、表面にハードコート層がある場合においても同様の傾向になると考えられる。
【0248】
[ロールツーロールによる偏光板試料の作製]
前記の方法で長尺状の光学フィルム1、2、25、26を作製し、表面にコロナ処理を施した。次いで、長尺状の光学フィルム3〜24、27にけん化処理を施した。コロナ処理した光学フィルムとけん化処理したタックフィルムとで偏光子を挟持するように、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、ロール機によるロールツーロールで偏光子の両面に貼り合わせ、70℃で10分以上乾燥した。このときエア側(視認側)保護フィルムとセル側保護フィルムとして表2に記載の光学フィルムの組み合わせを選択し、偏光板試料を作成した。これにより、フィルム長さ500m、吸収軸は長手方向、遅相軸は長手と直交方向であり、両面が光学フィルムによって保護された偏光板試料を得た。
【0249】
(ラミネートフィルムの貼り合わせ)
作製した各偏光板試料に、粘着剤の付いたポリエチレンテレフタレートを主成分とするラミネートフィルム(膜厚38μm)をロール機によるロールツーロールで、エア側保護フィルム側に貼り合わせた。
【0250】
(粘着剤層の形成)
(粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸イソオクチル100質量部、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル0.085質量部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を酢酸エチルと共に加えて溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、60℃で4時間反応させて、重量平均分子量175万のアクリル系ポリマーPAを含有する溶液を得た。更に、このアクリル系ポリマーPAを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30質量%に調整したアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0251】
前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネートL」)を2.5質量部と、シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KBM−403」)0.02質量部とをこの順に配合して、粘着剤溶液を調製した。
【0252】
(粘着剤層の形成)
上記粘着剤溶液を、作製した偏光板試料のセル側保護フィルム側にスロットダイコーターで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温槽を5分間通過させ、偏光板表面に、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の上に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするセパレートフィルム(膜厚38μm)をロール機でロールツーロールで貼り合わせた。
【0253】
(偏光板の打ち抜き)
作製した偏光板を42インチの液晶表示装置に貼合するため、下記のサイズで打ち抜いた。
・フロント側
MD方向 929.8mm
TD方向 523.0mm
・リア側
MD方向 523.0mm
TD方向 929.8mm
上記サイズで打ち抜いた偏光板を、アルミ防湿袋(エーディーワイ株式会社製)に投入し、温度を180℃に設定したヒートシーラーで密封した。偏光板を封入したアルミ防湿袋は温度25℃の環境で保管した。
【0254】
〔液晶表示装置の作製〕
市販のIPS型液晶テレビ(LG電子製42LA6900)からフロント側、リア側の各偏光板をはがし、実験用の液晶セルを用意した。その後、偏光板からセパレートフィルムを剥がし、用意した液晶セルのフロント側及びリア側に偏光板を一枚ずつ貼り付けた。この時、フロント側の偏光板の吸収軸が長手方向(左右方向)に、そして、リア側の偏光板の透過軸が長手方向(左右方向)になるように、クロスニコル配置とした。またこの時の環境は温度25℃相対湿度60%だった。表2においてカールが良好だった偏光板を液晶セルに貼り合わせて作製した液晶表示装置は偏光板の端部への気泡の混入が少なく美観が良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0255】
本発明によれば、偏光板加工適性に優れ、かつ、薄膜であってもカールの観点で液晶表示装置の製造適性に優れた偏光板が得られる。
【0256】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2012年7月27日出願の日本特許出願(特願2012−167653)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0257】
1 第1の保護フィルム
2 第2の保護フィルム
3 偏光子
10 偏光板
11 第1の保護フィルムのTD方向
12 第2の保護フィルムのTD方向
13 偏光子の吸収軸
20 液晶セル
100 液晶表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9