【実施例】
【0114】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
【0115】
(実施例1)
本発明の電解液を以下のとおり製造した。
【0116】
有機溶媒である1,2−ジメトキシエタン約5mLを、撹拌子及び温度計を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中の1,2−ジメトキシエタンに対し、リチウム塩である(CF
3SO
2)
2NLiを溶液温度が40℃以下を保つように徐々に加え、溶解させた。約13gの(CF
3SO
2)
2NLiを加えた時点で(CF
3SO
2)
2NLiの溶解が一時停滞したので、上記フラスコを恒温槽に投入し、フラスコ内の溶液温度が50℃となるよう加温し、(CF
3SO
2)
2NLiを溶解させた。約15gの(CF
3SO
2)
2NLiを加えた時点で(CF
3SO
2)
2NLiの溶解が再び停滞したので、1,2−ジメトキシエタンをピペットで1滴加えたところ、(CF
3SO
2)
2NLiは溶解した。さらに(CF
3SO
2)
2NLiを徐々に加え、所定の(CF
3SO
2)
2NLiを全量加えた。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまで1,2−ジメトキシエタンを加えた。これを実施例1の電解液とした。得られた電解液は容積20mLであり、この電解液に含まれる(CF
3SO
2)
2NLiは18.38gであった。実施例1の電解液における(CF
3SO
2)
2NLiの濃度は3.2mol/Lであった。実施例1の電解液においては、(CF
3SO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.6分子が含まれている。
【0117】
なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0118】
(実施例2)
16.08gの(CF
3SO
2)
2NLiを用い、実施例1と同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が2.8mol/Lである実施例2の電解液を製造した。実施例2の電解液においては、(CF
3SO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン2.1分子が含まれている。
【0119】
(実施例3)
有機溶媒であるアセトニトリル約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のアセトニトリルに対し、リチウム塩である(CF
3SO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(CF
3SO
2)
2NLiを全量で24.11g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでアセトニトリルを加えた。これを実施例3の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。実施例3の電解液においては、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が4.2mol/Lであり、(CF
3SO
2)
2NLi1分子に対しアセトニトリル1.9分子が含まれている。
【0120】
(実施例4)
リチウム塩として13.47gの(FSO
2)
2NLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が3.6mol/Lである実施例4の電解液を製造した。実施例4の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.9分子が含まれている。
【0121】
(実施例5)
14.97gの(FSO
2)
2NLiを用い、実施例4と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が4.0mol/Lである実施例5の電解液を製造した。実施例5の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン1.5分子が含まれている。
【0122】
(実施例6)
リチウム塩として16.83gの(FSO
2)
2NLiを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が4.5mol/Lである実施例6の電解液を製造した。実施例6の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しアセトニトリル2.4分子が含まれている。
【0123】
(実施例7)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で14.64g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを実施例7の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0124】
実施例7の電解液における(FSO
2)
2NLiの濃度は3.9mol/Lであった。実施例7の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しジメチルカーボネート2分子が含まれている。
【0125】
(実施例8)
有機溶媒であるエチルメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のエチルメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で12.81g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでエチルメチルカーボネートを加えた。これを実施例8の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0126】
実施例8の電解液における(FSO
2)
2NLiの濃度は3.4mol/Lであった。実施例8の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しエチルメチルカーボネート2分子が含まれている。
【0127】
(実施例9)
有機溶媒であるジエチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジエチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で11.37g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジエチルカーボネートを加えた。これを実施例9の電解液とした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0128】
実施例9の電解液における(FSO
2)
2NLiの濃度は3.0mol/Lであった。実施例9の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しジエチルカーボネート2分子が含まれている。
【0129】
(実施例10)
18.71gの(FSO
2)
2NLiを用い、実施例6と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が5.0mol/Lである実施例10の電解液を製造した。実施例10の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しアセトニトリル2.1分子が含まれている。
【0130】
(実施例11)
実施例7の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSO
2)
2NLiの濃度が2.9mol/Lの実施例11の電解液とした。実施例11の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しジメチルカーボネート3分子が含まれている。
【0131】
(比較例1)
5.74gの(CF
3SO
2)
2NLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が1.0mol/Lである比較例1の電解液を製造した。比較例1の電解液においては、(CF
3SO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン8.3分子が含まれている。
【0132】
(比較例2)
5.74gの(CF
3SO
2)
2NLiを用い、実施例3と同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が1.0mol/Lである比較例2の電解液を製造した。比較例2の電解液においては、(CF
3SO
2)
2NLi1分子に対しアセトニトリル16分子が含まれている。
【0133】
(比較例3)
3.74gの(FSO
2)
2NLiを用い、実施例4と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が1.0mol/Lである比較例3の電解液を製造した。比較例3の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対し1,2−ジメトキシエタン8.8分子が含まれている。
【0134】
(比較例4)
3.74gの(FSO
2)
2NLiを用い、実施例6と同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が1.0mol/Lである比較例4の電解液を製造した。比較例4の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しアセトニトリル17分子が含まれている。
【0135】
(比較例5)
実施例7の電解液にジメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSO
2)
2NLiの濃度が1.1mol/Lの比較例5の電解液とした。比較例5の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しジメチルカーボネート10分子が含まれている。
【0136】
(比較例6)
実施例8の電解液にエチルメチルカーボネートを加えて希釈し、(FSO
2)
2NLiの濃度が1.1mol/Lの比較例6の電解液とした。比較例6の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しエチルメチルカーボネート8分子が含まれている。
【0137】
(比較例7)
実施例9の電解液にジエチルカーボネートを加えて希釈し、(FSO
2)
2NLiの濃度が1.1mol/Lの比較例7の電解液とした。比較例7の電解液においては、(FSO
2)
2NLi1分子に対しジエチルカーボネート7分子が含まれている。
【0138】
表2に実施例及び比較例の電解液の一覧を示す。
【0139】
【表2】
LiTFSA:(CF
3SO
2)
2NLi、LiFSA:(FSO
2)
2NLi、AN:アセトニトリル、DME:1,2−ジメトキシエタン、DMC:ジメチルカーボネート、EMC:エチルメチルカーボネート、DEC:ジエチルカーボネート
【0140】
(評価例1:粘度)
実施例1〜11、及び比較例1〜7の電解液の粘度を以下の条件で測定した。結果を表3に示す。
【0141】
粘度測定条件
落球式粘度計(AntonPaar GmbH(アントンパール社)製 Lovis 2000 M)を用い、Ar雰囲気下、試験セルに電解液を封入し、30℃の条件下で粘度を測定した。
【0142】
【表3】
【0143】
実施例1〜11の電解液の粘度は、比較例1〜7の電解液の粘度と比較して、著しく高かった。よって、本発明の電解液を用いた電池であれば、仮に電池が破損したとしても、電解液漏れが抑制される。
【0144】
(評価例2:イオン伝導度)
実施例1〜11の電解液のイオン伝導度を以下の条件で測定した。結果を表4に示す。
【0145】
イオン伝導度測定条件
Ar雰囲気下、白金極を備えたセル定数既知のガラス製セルに、電解液を封入し、30℃、1kHzでのインピーダンスを測定した。インピーダンスの測定結果から、イオン伝導度を算出した。測定機器はSolartron 147055BEC(ソーラトロン社)を使用した。
【0146】
【表4】
【0147】
実施例1〜11の電解液は、いずれもイオン伝導性を示した。よって、本発明の電解液は、いずれも各種の電池の電解液として機能し得ると理解できる。特に、実施例4〜6の電解液は、いずれも優れたイオン伝導性を示した。
【0148】
(評価例3:IR測定)
実施例3、実施例6の電解液、並びに、アセトニトリル、(CF
3SO
2)
2NLi、(FSO
2)
2NLiにつき、以下の条件でIR測定を行った。2100〜2400cm
−1の範囲のIRスペクトルをそれぞれ
図1〜
図5に示す。図の横軸は波数(cm
−1)であり、縦軸は吸光度(反射吸光度)である。
さらに、実施例7、実施例11の電解液、比較例5の電解液、ジメチルカーボネート、実施例8の電解液、比較例6の電解液、エチルメチルカーボネート、実施例9の電解液、比較例7の電解液、ジエチルカーボネートにつき、以下の条件でIR測定を行った。1900〜1600cm
−1の範囲のIRスペクトルをそれぞれ
図6〜
図15に示す。また、(FSO
2)
2NLiにつき、1900〜1600cm
−1の範囲のIRスペクトルを
図16に示す。図の横軸は波数(cm
−1)であり、縦軸は吸光度(反射吸光度)である。
【0149】
IR測定条件
装置:FT−IR(ブルカーオプティクス社製)
測定条件:ATR法(ダイヤモンド使用)
測定雰囲気:不活性ガス雰囲気下
【0150】
図3で示されるアセトニトリルのIRスペクトルの2250cm
−1付近には、アセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。なお、
図4で示される(CF
3SO
2)
2NLiのIRスペクトル及び
図5で示される(FSO
2)
2NLiのIRスペクトルの2250cm
−1付近には、特段のピークが観察されなかった。
【0151】
図1で示される実施例3の電解液のIRスペクトルには、2250cm
−1付近にアセトニトリル由来のピークが観察されず、2250cm
−1付近から高波数側にシフトした2280cm
−1付近にアセトニトリルのC及びN間の三重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
図2で示される実施例6の電解液のIRスペクトルについても、
図1のIRチャートと同様の強度のピークが同様の波数に観察された。
【0152】
図9で示されるジメチルカーボネートのIRスペクトルの1750cm
−1付近には、ジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。なお、
図15で示される(FSO
2)
2NLiのIRスペクトルの1750cm
−1付近には、特段のピークが観察されなかった。
【0153】
図6で示される実施例7の電解液のIRスペクトルには、1750cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに観察された。さらに
図6のIRスペクトルには、1750cm
−1付近から低波数側にシフトした1717cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。
【0154】
図7で示される実施例11の電解液のIRスペクトルには、1750cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに観察された。さらに
図7のIRスペクトルには、1750cm
−1付近から低波数側にシフトした1717cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0155】
図8で示される比較例5の電解液のIRスペクトルには、1750cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。さらに
図8のIRスペクトルには、1750cm
−1付近から低波数側にシフトした1717cm
−1付近にジメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0156】
図12で示されるエチルメチルカーボネートのIRスペクトルの1745cm
−1付近には、エチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0157】
図10で示される実施例8の電解液のIRスペクトルには、1745cm
−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに観察された。さらに
図10のIRスペクトルには、1745cm
−1付近から低波数側にシフトした1711cm
−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。
【0158】
図11で示される比較例6の電解液のIRスペクトルには、1745cm
−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。さらに
図11のIRスペクトルには、1745cm
−1付近から低波数側にシフトした1711cm
−1付近にエチルメチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0159】
図15で示されるジエチルカーボネートのIRスペクトルの1742cm
−1付近には、ジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0160】
図13で示される実施例9の電解液のIRスペクトルには、1742cm
−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークがわずかに観察された。さらに
図13のIRスペクトルには、1742cm
−1付近から低波数側にシフトした1706cm
−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。
【0161】
図14で示される比較例7の電解液のIRスペクトルには、1742cm
−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが強く観察された。さらに
図14のIRスペクトルには、1742cm
−1付近から低波数側にシフトした1709cm
−1付近にジエチルカーボネートのC及びO間の二重結合の伸縮振動に由来する特徴的なピークが観察された。
【0162】
上記結果から、本発明の電解液の有機溶媒は金属塩と配位していることが示唆される。
【0163】
(評価例4:揮発性)
実施例2、3、6、7、11、比較例1、2、4、5の電解液の揮発性を以下の方法で測定した。
【0164】
約10mgの電解液をアルミニウム製のパンに入れ、熱重量測定装置(TAインスツルメント社製、SDT600)に配置し、室温での電解液の重量変化を測定した。重量変化(質量%)を時間で微分することで揮発速度を算出した。揮発速度のうち最大のものを選択し、表5に示した。
【0165】
【表5】
【0166】
実施例2、3、6、7、11の電解液の最大揮発速度は、比較例1、2、4、5の最大揮発速度と比較して、著しく小さかった。よって、本発明の電解液を用いた電池は、仮に損傷したとしても、電解液の揮発速度が小さいため、電池外への有機溶媒の急速な揮発が抑制される。
【0167】
(評価例5:燃焼性)
実施例3、比較例2の電解液の燃焼性を以下の方法で試験した。
【0168】
電解液をガラスフィルターにピペットで3滴滴下し、電解液をガラスフィルターに保持させた。当該ガラスフィルターをピンセットで把持し、そして、当該ガラスフィルターに接炎させた。
【0169】
実施例3の電解液は15秒間接炎させても引火しなかった。他方、比較例2の電解液は5秒余りで燃え尽きた。
【0170】
本発明の電解液は燃焼しにくいことが裏付けられた。
【0171】
(実施例12)
実施例6の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
【0172】
活物質である平均粒径10μmの黒鉛90質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、活物質層が形成された銅箔を得た。これを作用極とした。
【0173】
対極は金属Liとした。
【0174】
作用極、対極、両極の間に挟装した厚さ400μmのセパレータ(Whatman製ガラス繊維ろ紙)及び実施例6の電解液を電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しでハーフセルを構成した。これを実施例12のハーフセルとした。
【0175】
(比較例8及び9)
有機溶媒としてエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3:7)を用い、リチウム塩として3.04gのLiPF
6を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、LiPF
6の濃度が1.0mol/Lである比較例8の電解液を製造した。
【0176】
比較例8の電解液を用いた以外は、実施例12と同様の方法で、比較例9のハーフセルを製造した。
【0177】
(評価例6:レート特性)
実施例12、比較例9のハーフセルのレート特性を以下の方法で試験した。
【0178】
ハーフセルに対し、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cレート(1Cとは一定電流において1時間で電池を完全充電または放電させるために要する電流値を意味する。)で充電を行った後に放電を行い、それぞれの速度における作用極の容量(放電容量)を測定した。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。0.1Cレートでの作用極の容量に対する他のレートにおける容量の割合(レート特性)を算出した。結果を表6に示す。
【0179】
【表6】
【0180】
実施例12のハーフセルは、0.2C、0.5C、1C、2Cのいずれのレートにおいても、比較例9のハーフセルと比較して、容量の低下が抑制されており、優れたレート特性を示した。本発明の電解液を使用した二次電池は、優れたレート特性を示すことが裏付けられた。
【0181】
(評価例7:急速充放電の繰り返しに対する応答性)
実施例12、比較例9のハーフセルに対し、1Cレートで充放電を3回繰り返した際の、容量と電圧の変化を観察した。結果を
図17に示す。
【0182】
比較例9のハーフセルは充放電を繰り返すに伴い、1Cレートで電流を流した場合の分極が大きくなる傾向があり、2Vから0.01Vに到達するまでに得られる容量が急速に低下した。他方、実施例12のハーフセルは充放電を繰り返しても、
図17において3本の曲線が重なっている様からも確認できるように分極の増減がほとんどなく、好適に容量を維持した。比較例9において分極が増加した理由として、急速に充放電を繰り返した際の電解液中に生じたLi濃度ムラに因り、電極との反応界面に十分な量のLiを電解液が供給できなくなったこと、つまり、電解液のLi濃度の偏在が考えられる。実施例12では、Li濃度が高い本発明の電解液を用いたことで、電解液のLi濃度の偏在を抑制できたものと考えられる。本発明の電解液を使用した二次電池は、急速充放電に対し、優れた応答性を示すことが裏付けられた。
【0183】
(実施例13)
実施例6の電解液を用いたリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
【0184】
正極活物質であるLiNi
5/10Co
2/10Mn
3/10O
2で表される層状岩塩構造のリチウム含有金属酸化物94質量部、導電助剤であるアセチレンブラック3質量部、および結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。正極集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去した。その後、このアルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を得た。これを正極とした。
【0185】
負極活物質である天然黒鉛98質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース1質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で100℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極とした。
【0186】
セパレータとして、実験用濾紙(東洋濾紙株式会社、セルロース製、厚み260μm)を準備した。
【0187】
正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに実施例6の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を得た。この電池を実施例13のリチウムイオン二次電池とした。
【0188】
(比較例10)
電解液として比較例8の電解液を用いた以外は、実施例13と同様の方法で、比較例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0189】
(評価例8:熱安定性)
実施例13、比較例10のリチウムイオン二次電池の充電状態の正極に対する電解液の熱安定性を以下の方法で評価した。
【0190】
リチウムイオン二次電池に対し、充電終始電圧4.2V、定電流定電圧条件で満充電した。満充電後のリチウムイオン二次電池を解体し、正極を取り出した。当該正極3mg及び電解液1.8μLをステンレス製のパンに入れ、該パンを密閉した。密閉パンを用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/min.の条件で示差走査熱量分析を行い、DSC曲線を観察した。示差走査熱量測定装置としてRigaku DSC8230を使用した。実施例13のリチウムイオン二次電池の充電状態の正極と電解液を共存させた場合のDSCチャートを
図18に、比較例10のリチウムイオン二次電池の充電状態の正極と電解液を共存させた場合のDSCチャートを
図19にそれぞれ示す。
【0191】
図18及び
図19の結果から明らかなように、実施例13のリチウムイオン二次電池における充電状態の正極と電解液を共存させた場合のDSC曲線はほとんど吸発熱ピークが観察されなかったのに対し、比較例10のリチウムイオン二次電池の充電状態の正極と電解液を共存させた場合のDSC曲線においては300℃付近に発熱ピークが観察された。この発熱ピークは、正極活物質と電解液とが反応した結果、生じたものと推定される。
【0192】
これらの結果から、本発明の電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、従来の電解液を用いたリチウムイオン二次電池と比較して、正極活物質と電解液との反応性が低く、熱安定性に優れていることがわかる。
【0193】
(評価例9:Li輸率)
実施例2、6及び比較例4、8の電解液のLi輸率を以下の条件で測定した。結果を表7に示す。
【0194】
Li輸率測定条件
電解液を入れたNMR管をPFG−NMR装置(ECA−500、日本電子)に供し、
7Li、
19Fを対象として、スピンエコー法を用い、磁場パルス幅を変化させながら、各電解液中のLiイオン及びアニオンの拡散係数を測定した。Li輸率は以下の式で算出した。
Li輸率=(Liイオン拡散係数)/(Liイオン拡散係数+アニオン拡散係数)
【0195】
【表7】
【0196】
実施例2、6の電解液のLi輸率は、比較例4、8の電解液のLi輸率と比較して、著しく高かった。ここで、電解液のLiイオン伝導度は、電解液に含まれるイオン伝導度(全イオン電導度)にLi輸率を乗じて算出することができる。そうすると、本発明の電解液は、同程度のイオン伝導度を示す従来の電解液と比較して、リチウムイオン(カチオン)の輸送速度が高いといえる。
【0197】
また、実施例6の電解液につき、温度を変化させた場合のLi輸率を、上記Li輸率測定条件に準じて測定した。結果を表8に示す。
【表8】
【0198】
表8の結果から、本発明の電解液は、温度に因らず、好適なLi輸率を保つことがわかる。本発明の電解液は、低温でも液体状態を保っているといえる。
【0199】
(実施例14)
実施例6の電解液を用いた実施例14のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
【0200】
正極は、実施例13のリチウムイオン二次電池の正極と同様に製造した。
【0201】
負極活物質である天然黒鉛98質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース1質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で100℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極とした。
【0202】
セパレータとして、厚さ20μmのセルロース製不織布を準備した。
【0203】
正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに実施例6の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を得た。この電池を実施例14のリチウムイオン二次電池とした。
【0204】
(実施例15)
実施例6の電解液を用いた実施例15のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
【0205】
正極は、実施例13のリチウムイオン二次電池の正極と同様に製造した。
【0206】
負極活物質である天然黒鉛90質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極とした。
【0207】
セパレータとして、厚さ20μmのセルロース製不織布を準備した。
【0208】
正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに実施例6の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を得た。この電池を実施例15のリチウムイオン二次電池とした。
【0209】
(比較例11)
比較例8の電解液を用いた以外は、実施例14と同様に、比較例11のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0210】
(比較例12)
比較例8の電解液を用いた以外は、実施例15と同様に、比較例12のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0211】
(評価例10:リチウムイオン二次電池の入出力特性)
実施例14、15、比較例11、12のリチウムイオン二次電池の出力特性を以下の条件で評価した。
【0212】
(1)0℃又は25℃、SOC80%での入力特性評価
評価条件は、充電状態(SOC)80%、0℃又は25℃、使用電圧範囲3V―4.2V、容量13.5mAhとした。入力特性の評価は、2秒入力と5秒入力について電池毎にそれぞれ3回行った。
【0213】
また、各電池の体積に基づき、25℃、2秒入力における電池出力密度(W/L)を算出した。
【0214】
入力特性の評価結果を表9に示す。表9の中の「2秒入力」は、充電開始から2秒後での入力を意味し、「5秒入力」は充電開始から5秒後での入力を意味している。
【0215】
表9に示すように、温度の違いに関わらず、実施例14の電池の入力は、比較例11の電池の入力に比べて、著しく高かった。同様に、実施例15の電池の入力は、比較例12の電池の入力に比べて、著しく高かった。
【0216】
また、実施例14の電池の電池入力密度は、比較例11の電池の電池入力密度に比べて、著しく高かった。同様に、実施例15の電池の電池入力密度は、比較例12の電池の電池入力密度に比べて、著しく高かった。
【0217】
(2)0℃又は25℃、SOC20%での出力特性評価
評価条件は、充電状態(SOC)20%、0℃又は25℃、使用電圧範囲3V―4.2V、容量13.5mAhとした。SOC20%、0℃は、例えば、冷蔵室などで使用する場合のように出力特性が出にくい領域である。出力特性の評価は、2秒出力と5秒出力について電池毎にそれぞれ3回行った。
【0218】
また、各電池の体積に基づき、25℃、2秒出力における電池出力密度(W/L)を算出した。
【0219】
出力特性の評価結果を表9に示す。表9の中の「2秒出力」は、放電開始から2秒後での出力を意味し、「5秒出力」は放電開始から5秒後での出力を意味している。
【0220】
表9に示すように、温度の違いに関わらず、実施例14の電池の出力は、比較例11の電池の出力に比べて、著しく高かった。同様に、実施例15の電池の出力は、比較例12の電池の出力に比べて、著しく高かった。
【0221】
また、実施例14の電池の電池出力密度は、比較例11の電池の電池出力密度に比べて、著しく高かった。同様に、実施例15の電池の電池出力密度は、比較例12の電池の電池出力密度に比べて、著しく高かった。
【0222】
【表9】
【0223】
(評価例11:低温試験)
実施例7、8、9、11の各電解液をそれぞれ容器に入れ、不活性ガスを充填して密閉した。これらを−30℃の冷凍庫に2日間保管した。保管後に各電解液を観察した。いずれの電解液も固化せず液体状態を維持しており、塩の析出も観察されなかった。
【0224】
(実施例16)
実施例6の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
【0225】
活物質である平均粒径10μmの黒鉛90質量部、及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、活物質層が形成された銅箔を得た。これを作用極とした。なお、銅箔1cm
2あたりの活物質の質量は1.48mgであった。また、プレス前の黒鉛及びポリフッ化ビニリデンの密度は0.68g/cm
3であり、プレス後の活物質層の密度は1.025g/cm
3であった。
【0226】
対極は金属Liとした。
【0227】
作用極、対極、両極の間に挟装した厚さ400μmのセパレータ(Whatman製ガラス繊維ろ紙)及び実施例6の電解液を、径13.82mmの電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しハーフセルを構成した。これを実施例16のハーフセルとした。
【0228】
(実施例17)
電解液として実施例7の電解液を用いた以外は、実施例16と同様の方法で、実施例17のハーフセルを製造した。
【0229】
(実施例18)
電解液として実施例8の電解液を用いた以外は、実施例16と同様の方法で、実施例18のハーフセルを製造した。
【0230】
(実施例19)
電解液として実施例9の電解液を用いた以外は、実施例16と同様の方法で、実施例19のハーフセルを製造した。
【0231】
(比較例13)
電解液として比較例8の電解液を用いた以外は、実施例16と同様の方法で、比較例13のハーフセルを製造した。
【0232】
(評価例12:レート特性)
実施例16〜19、比較例13のハーフセルのレート特性を以下の方法で試験した。ハーフセルに対し、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cレート(1Cとは一定電流において1時間で電池を完全充電または放電させるために要する電流値を意味する。)で充電を行った後に放電を行い、それぞれの速度における作用極の容量(放電容量)を測定した。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。0.1Cレートでの作用極の容量に対する他のレートにおける容量の割合(レート特性)を算出した。結果を表10に示す。
【0233】
【表10】
【0234】
実施例16〜19のハーフセルは0.2C、0.5C、1Cのレートにおいて、さらに、実施例16〜17は2Cのレートにおいても比較例13のハーフセルと比較して、容量低下が抑制されており、優れたレート特性を示すことが裏付けられた。
【0235】
(評価例13:容量維持率)
実施例16〜19、比較例13のハーフセルの容量維持率を以下の方法で試験した。
【0236】
各ハーフセルに対し、25℃、電圧2.0VまでCC充電(定電流充電)し、電圧0.01VまでCC放電(定電流放電)を行う2.0V−0.01Vの充放電サイクルを、充放電レート0.1Cで3サイクル行い、その後、0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10Cの順で各充放電レートにつき3サイクルずつ充放電を行い、最後に0.1Cで3サイクル充放電を行った。各ハーフセルの容量維持率(%)は以下の式で求めた。
容量維持率(%)=B/A×100
A:最初の0.1C充放電サイクルにおける2回目の作用極の放電容量
B:最後の0.1Cの充放電サイクルにおける2回目の作用極の放電容量
結果を表11に示す。なお、ここでの記述は、対極を負極、作用極を正極とみなしている。
【0237】
【表11】
【0238】
いずれのハーフセルも、良好に充放電反応を行い、好適な容量維持率を示した。特に、実施例17〜19のハーフセルの容量維持率は著しく優れていた。
【0239】
(評価例14:充放電の可逆性)
実施例16〜19、比較例13のハーフセルに対し、25℃、電圧2.0VまでCC充電(定電流充電)し、電圧0.01VまでCC放電(定電流放電)を行う2.0V−0.01Vの充放電サイクルを、充放電レート0.1Cで3サイクル行った。各ハーフセルの充放電曲線を
図20〜24に示す。
【0240】
図20〜24に示されるように、実施例16〜19のハーフセルは、一般的な電解液を用いた比較例13のハーフセルと同様に、可逆的に充放電反応することがわかる。
【0241】
(評価例15:ラマンスペクトル測定)
実施例6、実施例10、比較例4、並びに、実施例7、実施例11、比較例5の電解液につき、以下の条件でラマンスペクトル測定を行った。各電解液の金属塩のアニオン部分に由来するピークが観察されたラマンスペクトルをそれぞれ
図25〜
図30に示す。図の横軸は波数(cm
−1)であり、縦軸は散乱強度である。
【0242】
ラマンスペクトル測定条件
装置:レーザーラマン分光光度計(日本分光株式会社NRSシリーズ)
レーザー波長:532nm
不活性ガス雰囲気下で電解液を石英セルに密閉し、測定に供した。
【0243】
図25〜27で示される実施例6、実施例10、比較例4の電解液のラマンスペクトルの700〜800cm
−1には、アセトニトリルに溶解したLiFSAの(FSO
2)
2Nに由来する特徴的なピークが観察された。ここで、
図25〜27から、LiFSAの濃度の増加に伴い、上記ピークが高波数側にシフトするのがわかる。電解液が高濃度化するに従い、塩のアニオンに該当する(FSO
2)
2NがLiと相互作用する状態になる、換言すると、濃度が低い場合はLiとアニオンはSSIP(Solvent−separated ion pairs)状態を主に形成しており、高濃度化に伴いCIP(Contact ion pairs)状態やAGG(aggregate)状態を主に形成していると推察される。そして、かかる状態の変化がラマンスペクトルのピークシフトとして観察されたと考察できる。
【0244】
図28〜
図30で示される実施例7、実施例11、比較例5の電解液のラマンスペクトルの700〜800cm
−1には、ジメチルカーボネートに溶解したLiFSAの(FSO
2)
2Nに由来する特徴的なピークが観察された。ここで、
図28〜
図30から、LiFSAの濃度の増加に伴い、上記ピークが高波数側にシフトするのがわかる。この現象は、前段落で考察したのと同様に、電解液が高濃度化するに従い、塩のアニオンに該当する(FSO
2)
2NがLiと相互作用する状態になり、そして、かかる状態の変化がラマンスペクトルのピークシフトとして観察されたと考察できる。
【0245】
(実施例20)
実施例6の電解液を用いたハーフセルを以下のとおり製造した。
径13.82mm、面積1.5cm
2、厚み20μmのアルミニウム箔(JIS A1000番系)を作用極とし、対極は金属Liとした。セパレータは、厚み400μmのWhatmanガラスフィルター不織布:品番1825−055を用いた。
作用極、対極、セパレータおよび実施例6の電解液を電池ケース(宝泉株式会社製 CR2032型コインセルケース)に収容しハーフセルを構成した。これを実施例20のハーフセルとした。
【0246】
(実施例21)
実施例7の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、実施例21のハーフセルを作製した。
【0247】
(実施例22)
実施例8の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、実施例22のハーフセルを作製した。
【0248】
(実施例23)
実施例9の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、実施例23のハーフセルを作製した。
【0249】
(実施例24)
実施例11の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、実施例24のハーフセルを作製した。
【0250】
(比較例14)
比較例8の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、比較例14のハーフセルを作製した。
【0251】
(比較例15)
比較例5の電解液を用いた以外は、実施例20のハーフセルと同様にして、比較例15のハーフセルを作製した。
【0252】
(評価例16:作用極Alでのサイクリックボルタンメトリー評価)
実施例20〜23および比較例14のハーフセルに対して、3.1V〜4.6V、1mV/sの条件で5サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行い、その後、3.1V〜5.1V、1mV/sの条件で5サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行った。実施例20〜23および比較例14のハーフセルに対する電位と応答電流との関係を示すグラフを
図31〜
図39に示す。
【0253】
また、実施例21、24及び比較例15のハーフセルに対して、3.0V〜4.5V、1mV/sの条件で、10サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行い、その後、3.0V〜5.0V、1mV/sの条件で、10サイクルのサイクリックボルタンメトリー評価を行った。実施例21、24及び比較例15のハーフセルに対する電位と応答電流との関係を示すグラフを
図40〜
図45に示す。
【0254】
図39から、比較例14のハーフセルでは、2サイクル以降も3.1Vから4.6Vにかけて電流が流れ、高電位になるに従い電流が増大しているのがわかる。また、
図44および
図45から、比較例15のハーフセルにおいても同様に、2サイクル以降も3.0Vから4.5Vにかけて電流が流れ、高電位になるに従い電流が増大している。この電流は、作用極のアルミニウムが腐食したことによるAlの酸化電流と推定される。
【0255】
他方、
図31〜
図38から、実施例20〜23のハーフセルでは2サイクル以降は3.1Vから4.6Vにかけてほとんど電流が流れていないことがわかる。4.3V以上では電位上昇に伴いわずかに電流の増大が観察されるものの、サイクルを繰り返すに従い、電流の量は減少し、定常状態に向かった。特に、実施例21〜23のハーフセルは、高電位である5.1Vまで電流の顕著な増大が観察されず、しかも、サイクルの繰り返しに伴い電流量の減少が観察された。
【0256】
また、
図40〜
図43から、実施例21、24のハーフセルにおいても同様に、2サイクル以降は3.0Vから4.5Vにかけてほとんど電流が流れていないことがわかる。特に3サイクル目以降では4.5Vに至るまで電流の増大はほぼない。そして、実施例24のハーフセルでは高電位となる4.5V以降に電流の増大がみられるが、これは比較例15のハーフセルにおける4.5V以降の電流値に比べると遙かに小さい値である。実施例21のハーフセルについては、4.5V以降も5.0Vに至るまで電流の増大はほぼなく、サイクルの繰り返しに伴い電流量の減少が観察された。
【0257】
サイクリックボルタンメトリー評価の結果から、5Vを超える高電位条件でも、実施例6〜9、11の各電解液のアルミニウムに対する腐食性は低いといえる。すなわち、実施例6〜9、11の各電解液は、集電体などにアルミニウムを用いた電池に対し、好適な電解液といえる。
【0258】
(実施例25)
電解液として実施例10の電解液を用いた以外は、実施例12と同様の方法で、実施例25のリチウムイオン二次電池を得た。
【0259】
(比較例16)
電解液として比較例8の電解液を用いた以外は、実施例25と同様の方法で、比較例16のリチウムイオン二次電池を得た。
【0260】
(評価例17:低温でのレート特性)
実施例25と比較例16のリチウムイオン二次電池を用い、−20℃でのレート特性を以下のとおり評価した。結果を
図46及び
図47に示す。
(1) 負極(評価極)へのリチウム吸蔵が進行する向きに電流を流す。
(2) 電圧範囲:2V→0.01V(v.s.Li/Li
+)
(3) レート:0.02C、0.05C、0.1C、0.2C、0.5C (0.01V到達後に電流を停止)
なお、1Cは、一定電流において1時間で電池を完全充電、又は放電させるために要する電流値を示す。
【0261】
図46及び
図47から、各電流レートにおける実施例25のリチウムイオン二次電池の電圧カーブは、比較例16のリチウムイオン二次電池の電圧カーブと比較して、高い電圧を示しているのがわかる。本発明の電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、低温環境においても優れたレート特性を示すことが裏付けられた。
【0262】
(実施例26)
実施例6の電解液を用いた実施例26のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
【0263】
正極活物質であるLiNi
5/10Co
2/10Mn
3/10O
2で表される層状岩塩構造のリチウム含有金属酸化物90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック8質量部、および結着剤であるポリフッ化ビニリデン2質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。正極集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去した。その後、このアルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を得た。これを正極とした。
【0264】
負極活物質である天然黒鉛98質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース1質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で100℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極とした。
【0265】
セパレータとして、厚さ20μmのセルロース製不織布を準備した。
【0266】
正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに実施例6の電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたリチウムイオン二次電池を得た。この電池を実施例26のリチウムイオン二次電池とした。
【0267】
(実施例27)
電解液として実施例7の電解液を用いた以外は、実施例26と同様の方法で、実施例27のリチウムイオン二次電池を得た。
【0268】
(実施例28)
電解液として実施例11の電解液を用いた以外は、実施例26と同様の方法で、実施例28のリチウムイオン二次電池を得た。
【0269】
(比較例17)
電解液として比較例8の電解液を用いた以外は、実施例26と同様の方法で、比較例17のリチウムイオン二次電池を得た。
【0270】
(評価例18:電池の内部抵抗)
実施例26〜28および比較例17のリチウムイオン二次電池を準備し、電池の内部抵抗を評価した。
各リチウムイオン二次電池について、室温、3.0V〜4.1V(vs.Li基準)の範囲でCC充放電、つまり定電流充放電を繰り返した。そして、初回充放電後の交流インピーダンス、および、100サイクル経過後の交流インピーダンスを測定した。得られた複素インピーダンス平面プロットを基に、電解液、負極および正極の反応抵抗を各々解析した。
図48に示すように、複素インピーダンス平面プロットには、二つの円弧がみられた。図中左側(つまり複素インピーダンスの実部が小さい側)の円弧を第1円弧と呼ぶ。図中右側の円弧を第2円弧と呼ぶ。第1円弧の大きさを基に負極の反応抵抗を解析し、第2円弧の大きさを基に正極の反応抵抗を解析した。第1円弧に連続する
図48中最左側のプロットを基に電解液の抵抗を解析した。解析結果を表12および表13に示す。なお、表12は、初回充放電後の電解液の抵抗(所謂溶液抵抗)、負極の反応抵抗、正極の反応抵抗を示し、表13は100サイクル経過後の各抵抗を示す。
【0271】
【表12】
【0272】
【表13】
【0273】
表12および表13に示すように、各リチウムイオン二次電池において、100サイクル経過後の負極反応抵抗および正極反応抵抗は、初回充放電後の各抵抗に比べて低下する傾向にある。そして、表13に示す100サイクル経過後では、実施例26〜28のリチウムイオン二次電池の負極反応抵抗および正極反応抵抗は、比較例17のリチウムイオン二次電池の負極反応抵抗および正極反応抵抗に比べて低い。
【0274】
なお、実施例26、28および比較例17のリチウムイオン二次電池における電解液の溶液抵抗はほぼ同じであり、実施例27のリチウムイオン二次電池における電解液の溶液抵抗は、実施例26、28および比較例17に比べて高い。また、各リチウムイオン二次電池における各電解液の溶液抵抗は初回充放電後も100サイクル経過後も同等である。このため、各電解液の耐久劣化は生じていないと考えられ、上記した比較例および実施例において生じた負極反応抵抗および正極反応抵抗の差は、電解液の耐久劣化に関係するものでなく電極自体に生じているものであると考えられる。
【0275】
リチウムイオン二次電池の内部抵抗は、電解液の溶液抵抗、負極の反応抵抗および正極の反応抵抗から総合的に判断できる。表12および表13の結果を基にすると、リチウムイオン二次電池の内部抵抗増大を抑制する観点からは、実施例27、28のリチウムイオン二次電池が最も耐久性に優れ、次いで実施例26のリチウムイオン二次電池が耐久性に優れていると言える。
【0276】
(評価例19:電池のサイクル耐久性)
実施例26〜28および比較例17のリチウムイオン二次電池について、室温、3.0V〜4.1V(vs.Li基準)の範囲でCC充放電を繰り返し、初回充放電時の放電容量、100サイクル時の放電容量、および500サイクル時の放電容量を測定した。そして、初回充放電時の各リチウムイオン二次電池の容量を100%とし、100サイクル時および500サイクル時の各リチウムイオン二次電池の容量維持率(%)を算出した。結果を表14に示す。
【0277】
【表14】
【0278】
表14に示すように、実施例26〜28のリチウムイオン二次電池は、SEIの材料となるECを含まないにも拘わらず、ECを含む比較例17のリチウムイオン二次電池と同等の100サイクル時の容量維持率を示した。これは、実施例26〜28のリチウムイオン二次電池における正極および負極には、本発明の電解液に由来する皮膜が存在するためだと考えられる。そして、実施例27のリチウムイオン二次電池については、500サイクル経過時にも極めて高い容量維持率を示し、特に耐久性に優れていた。この結果から、電解液の有機溶媒としてDMCを選択する場合には、ANを選択する場合に比べて、より耐久性が向上するといえる。
【0279】
本発明の電解液として、以下の電解液を具体的に挙げる。なお、以下の電解液には、既述のものも含まれている。
【0280】
(電解液A)
本発明の電解液を以下のとおり製造した。
【0281】
有機溶媒である1,2−ジメトキシエタン約5mLを、撹拌子及び温度計を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中の1,2−ジメトキシエタンに対し、リチウム塩である(CF
3SO
2)
2NLiを溶液温度が40℃以下を保つように徐々に加え、溶解させた。約13gの(CF
3SO
2)
2NLiを加えた時点で(CF
3SO
2)
2NLiの溶解が一時停滞したので、上記フラスコを恒温槽に投入し、フラスコ内の溶液温度が50℃となるよう加温し、(CF
3SO
2)
2NLiを溶解させた。約15gの(CF
3SO
2)
2NLiを加えた時点で(CF
3SO
2)
2NLiの溶解が再び停滞したので、1,2−ジメトキシエタンをピペットで1滴加えたところ、(CF
3SO
2)
2NLiは溶解した。さらに(CF
3SO
2)
2NLiを徐々に加え、所定の(CF
3SO
2)
2NLiを全量加えた。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまで1,2−ジメトキシエタンを加えた。得られた電解液は容積20mLであり、この電解液に含まれる(CF
3SO
2)
2NLiは18.38gであった。これを電解液Aとした。電解液Aにおける(CF
3SO
2)
2NLiの濃度は3.2mol/Lであり、密度は1.39g/cm
3であった。密度は20℃で測定した。
【0282】
なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0283】
(電解液B)
電解液Aと同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が2.8mol/Lであり、密度が1.36g/cm
3である、電解液Bを製造した。
【0284】
(電解液C)
有機溶媒であるアセトニトリル約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のアセトニトリルに対し、リチウム塩である(CF
3SO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。所定の(CF
3SO
2)
2NLiを加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでアセトニトリルを加えた。これを電解液Cとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0285】
電解液Cは、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が4.2mol/Lであり、密度が1.52g/cm
3であった。
【0286】
(電解液D)
電解液Cと同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が3.0mol/Lであり、密度が1.31g/cm
3である、電解液Dを製造した。
【0287】
(電解液E)
有機溶媒としてスルホランを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が3.0mol/Lであり、密度が1.57g/cm
3である、電解液Eを製造した。
【0288】
(電解液F)
有機溶媒としてジメチルスルホキシドを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(CF
3SO
2)
2NLiの濃度が3.2mol/Lであり、密度が1.49g/cm
3である、電解液Fを製造した。
【0289】
(電解液G)
リチウム塩として(FSO
2)
2NLiを用い、有機溶媒として1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は、電解液Cと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が4.0mol/Lであり、密度が1.33g/cm
3である、電解液Gを製造した。
【0290】
(電解液H)
電解液Gと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が3.6mol/Lであり、密度が1.29g/cm
3である、電解液Hを製造した。
【0291】
(電解液I)
電解液Gと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が2.4mol/Lであり、密度が1.18g/cm
3である、電解液Iを製造した。
【0292】
(電解液J)
有機溶媒としてアセトニトリルを用いた以外は、電解液Gと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が5.0mol/Lであり、密度が1.40g/cm
3である、電解液Jを製造した。
【0293】
(電解液K)
電解液Jと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が4.5mol/Lであり、密度が1.34g/cm
3である、電解液Kを製造した。
【0294】
(電解液L)
有機溶媒であるジメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で14.64g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジメチルカーボネートを加えた。これを電解液Lとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0295】
電解液Lにおける(FSO
2)
2NLiの濃度は3.9mol/Lであり、電解液Lの密度は1.44g/cm
3であった。
【0296】
(電解液M)
電解液Lと同様の方法で、(FSO
2)
2NLiの濃度が2.9mol/Lであり、密度が1.36g/cm
3である、電解液Mを製造した。
【0297】
(電解液N)
有機溶媒であるエチルメチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のエチルメチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で12.81g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでエチルメチルカーボネートを加えた。これを電解液Nとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0298】
電解液Nにおける(FSO
2)
2NLiの濃度は3.4mol/Lであり、電解液Nの密度は1.35g/cm
3であった。
【0299】
(電解液O)
有機溶媒であるジエチルカーボネート約5mLを、撹拌子を備えたフラスコに入れた。撹拌条件下にて、上記フラスコ中のジエチルカーボネートに対し、リチウム塩である(FSO
2)
2NLiを徐々に加え、溶解させた。(FSO
2)
2NLiを全量で11.37g加えたところで一晩撹拌した。得られた電解液を20mLメスフラスコに移し、容積が20mLとなるまでジエチルカーボネートを加えた。これを電解液Oとした。なお、上記製造は不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で行った。
【0300】
電解液Oにおける(FSO
2)
2NLiの濃度は3.0mol/Lであり、電解液Oの密度は1.29g/cm
3であった。
【0301】
表15に上記電解液の一覧を示す。
【0302】
【表15】