特許第5817610号(P5817610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817610
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 13/00 20060101AFI20151029BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20151029BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20151029BHJP
   C08F 236/12 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   C08L13/00
   C08K5/17
   C08K3/20
   C08F236/12
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-66493(P2012-66493)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-194234(P2013-194234A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 順二
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−221468(JP,A)
【文献】 特開2001−055471(JP,A)
【文献】 特開2006−290858(JP,A)
【文献】 特開2001−151973(JP,A)
【文献】 特開2002−179845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08L 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、ポリアミン架橋剤(B)および水酸化アルミニウムゲル(C)を含有してなり、 前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対する、前記水酸化アルミニウムゲル(C)の含有量が1〜15重量部である架橋性ゴム組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位0〜50重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項4】
シール材である請求項に記載のゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできる架橋性ゴム組成物、および該架橋性ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)は、耐油性、機械的特性、耐薬品性等を活かして、ホースやチューブなどの自動車用ゴム部品の材料として使用されており、また、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化した水素化ニトリルゴム(水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)はさらに耐熱性に優れるため、ベルト、ホース、ダイアフラム等のゴム部品に使用されている。
【0003】
かかる状況に対して、特許文献1は、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有する水素化ニトリルゴム、ポリアミン系架橋剤及び塩基性架橋促進剤を含有する架橋性ゴム組成物を提案している。該組成物により耐熱性及び耐圧縮永久歪み性がそれなりに改善されたゴム架橋物が得られるものの、耐圧縮永久歪み性を更に改善することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−55471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできる架橋性ゴム組成物、および該架橋性ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムに、ポリアミン架橋剤および水酸化アルミニウムゲルを配合してなる架橋性ゴム組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、ポリアミン架橋剤(B)および水酸化アルミニウムゲル(C)を含有してなる架橋性ゴム組成物が提供される。
【0008】
本発明のゴム組成物において、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位0〜50重量%を含有することが好ましい。
そして、本発明の架橋性ゴム組成物は、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対し、前記水酸化アルミニウムゲル(C)を0.1〜50重量部含有することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明によれば、上記架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供され、該ゴム架橋物は、シール材が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできる架橋性ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該架橋性ゴム組成物を架橋することにより得られ、耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
架橋性ゴム組成物
本発明の架橋性ゴム組成物は、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、ポリアミン架橋剤(B)および水酸化アルミニウムゲル(C)を含有してなる。
【0012】
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)
まず、本発明で用いるヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)について説明する。本発明で用いるヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)(以下、単に「カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)」ということがある。)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体および必要に応じてα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体を共重合することにより得られる、ヨウ素価が120以下のゴムである。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0014】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0015】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。カルボキシル基含有単量体を用いることにより、ニトリルゴムに、カルボキシル基を導入することができる。
【0016】
本発明で用いるカルボキシ基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0020】
カルボキシル基含有単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2〜8が好ましい。
【0021】
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、ゴム組成物のスコーチ安定性が悪化したり、得られるゴム架橋物の耐疲労性が低下するおそれがある。
【0022】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、得られる架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位をも含有することが好ましい。
【0023】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0024】
共役ジエン単量体単位(水素化されている部分も含む)の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20〜89.9重量%、より好ましくは30〜89.8重量%、さらに好ましくは30〜84.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0025】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、カルボキシル基含有単量体単位、並びに、共役ジエン単量体単位に加えて、さらにα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有していても良い。
【0026】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;などが挙げられるが、耐圧縮永久歪み性改善の観点から、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0027】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜45重量%、さらに好ましくは0〜40重量%である。
【0028】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体および共役ジエン単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体などが例示される。
【0029】
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0030】
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0031】
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0032】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0033】
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価は、120以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価が高すぎると、得られる架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0034】
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100、特に好ましくは30〜70である。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、架橋性ゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0035】
また、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のカルボキシル基含有量が少なすぎると得られる架橋物の機械的強度が低下するおそれがあり、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0036】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して共重合体ゴムのラテックスを調製し、これを水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0037】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0038】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0039】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部である。
【0040】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部である。
【0041】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0042】
そして、得られた共重合体に対して、共役ジエン単量体単位の二重結合を選択的に水素化することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)を製造することができる。なお、水素化に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。
【0043】
ポリアミン架橋剤(B)
本発明の架橋性ゴム組成物は、ポリアミン架橋剤(B)を含有してなるものである。架橋剤として、ポリアミン架橋剤(B)を用いることにより、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が改善される。
【0044】
本発明で使用されるポリアミン架橋剤(B)は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0045】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、ポリアミン架橋剤(B)の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。ポリアミン架橋剤(B)の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の機械特性および耐圧縮永久歪み性が悪化するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性が悪化する可能性がある。
【0046】
また、本発明の架橋性ゴム組成物は、塩基性架橋促進剤をさらに含有していることが好ましい。塩基性架橋促進剤をさらに含有させることにより、本発明の効果がより一層顕著になる。
【0047】
塩基性架橋促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどの環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤;テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどのグアニジン系塩基性架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5がさらに好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7が特に好ましい。なお、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していても良い。
【0048】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、塩基性架橋促進剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。塩基性架橋促進剤の配合量が少なすぎると、架橋性ゴム組成物の架橋速度が遅過ぎて架橋密度が低下する場合がある。一方、配合量が多すぎると、架橋性ゴム組成物の架橋速度が速すぎてスコーチを起こしたり、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0049】
水酸化アルミニウムゲル(C)
本発明で用いる水酸化アルミニウムゲル(C)は、構造中にAlを有する無定型の化合物であり、好ましくは下記一般式(1)で表されるものである。
[M]x・Al・(CO)y・zHO 式(1)
(ただし、式中の[M]は周期律表第1族の金属酸化物、周期律表第2族の金属酸化物および/または有機酸を表し、xは0または正数、yは0または正数、zは正数を表す。)
【0050】
[M]で表される周期律表第1族の金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどが、周期律表第2族の金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどが例示される。有機酸としては酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの2価の脂肪族飽和ジカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸などの2価の脂肪族不飽和カルボン酸類、フタル酸などの2価芳香族カルボン酸類、クエン酸などの3価有機酸が例示される。これらは数種が混在していてもよい。
【0051】
xは、好ましくは0≦x<2、より好ましくは0≦x<1.5、さらに好ましくは0≦x<1.0である。yは、好ましくは0≦y≦1であり、より好ましくは0.1<y≦1、さらに好ましくは0.3<y≦1である。zは、好ましくは2≦z<10、より好ましくは2≦z<8、さらに好ましくは2≦z≦6である。
【0052】
本発明で用いられる水酸化アルミニウムゲル(C)の製法は、特に限定されず、公知の方法で製造すればよい。例えば、構造中にAlとCOを有する水酸化アルミニウムゲル(C)の場合、可溶性アルミニウム化合物の溶液に、炭酸イオンの供給源となる可溶性化合物を、pHを調節しながら添加して反応させ、得られた反応物を水洗後、乾燥することにより水酸化アルミニウムゲル化合物を製造することができる。
【0053】
可溶性アルミニウム化合物は、水および/または低級アルコールに可溶性のアルミニウム化合物であり、好ましくは、塩化アルミニウム、硝酸アルミウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜硫酸アルミウムナトリウムなどが挙げられる。また、炭酸イオンの供給源となる可溶性化合物としては、水および/または低級アルコールに可溶性の炭酸イオン供給性化合物であり、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムの如きアルカリ金属の炭酸塩類および重炭酸塩類、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0054】
pHの調節は、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を用いて行えばよく、反応温度は特に限定されないが、好ましくは20〜60℃である。乾燥は、好ましくは50〜100℃で、1〜24時間行う。乾燥温度が低すぎたり、乾燥時間が短すぎると乾燥が不十分となる場合があり、逆に乾燥温度が高すぎたり、乾燥時間が長すぎると化合物の構造が不安定となる場合がある。
なお、水酸化アルミニウムゲル(C)は、市販のものを用いても良い。
【0055】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、水酸化アルミニウムゲル(C)の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。水酸化アルミニウムゲル(C)の配合量が上記範囲にある場合に、本発明の効果がより一層顕著になる。
【0056】
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填材、炭酸カルシウムやクレイなどの非補強性充填材、塩基性架橋促進剤以外の架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、顔料などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0057】
本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)以外のその他の重合体を配合してもよい。その他の重合体としては、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムなどを挙げることができる。その他の重合体を配合する場合における、架橋性ゴム組成物中の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0058】
架橋性ゴム組成物の調整
本発明の架橋性ゴム組成物の調整方法は、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、ポリアミン架橋剤(B)および水酸化アルミニウムゲル(C)を混合する。
混合方法は、特に限定されないが、非水系で混合(ドライブレンド)することが好ましい。
【0059】
具体的には、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)と水酸化アルミニウムゲル(C)を混合する際に、ポリアミン架橋剤(B)および熱に不安定な架橋助剤などを除いた各成分を添加し、好ましくは、10〜200℃、より好ましくは20〜170℃で、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で混練し、ロールなどに移してポリアミン架橋剤(B)や熱に不安定な架橋助剤などを加えて、好ましくは10〜80℃の条件で、二次混練することにより調製できる。
なお、混合機で混練する際に、カーボンブラック、シリカ、老化防止剤などの各種配合剤や、その他のゴムを同時に混合してもよい。
【0060】
このようにして得られる本発明の架橋性ゴム組成物は、コンパウンドムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜180、さらに好ましくは20〜150であり、加工性に優れるものである。
【0061】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜6時間である。
【0062】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0063】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0064】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、耐油性、機械的特性等が良好なニトリルゴム本来の特性に加え、耐圧縮永久歪み性にも優れるものである。
【0065】
このため、本発明のゴム架橋物は、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置及びボールねじ等)用のシール、バルブ及びバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、油中ベルトなどの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、及び医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。
これらのなかでも、本発明のゴム架橋物は、シール材、ガスケット、ベルトまたはホースとして好適に用いることができ、シール材として特に好適である。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0067】
ヨウ素価
ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0068】
カルボキシル基含有量
2mm角のニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mlを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mlおよび水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数として求めた(単位はephr)。
【0069】
ニトリルゴムの組成
水素化後のカルボキシル基含有ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、上記「カルボキシル基含有量」の測定方法により、水素化後のカルボキシル基含有ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)の含有割合は、水素添加反応前のカルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価を上記方法で測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6383に従い、ケルダール法により、水素化後のカルボキシル含有ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n−ブチル単位の含有割合は、上記で求めたマレイン酸モノn−ブチル単位、1,3−ブタジエン単位、および、アクリロニトリル単位の含有割合から、計算により求めた。
【0070】
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)
ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300に従って測定した(単位は〔ML1+4、100℃〕)。
【0071】
常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)
架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。次いで、得られたゴム架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ、20%引張応力、50%引張応力、100%引張応力、200%引張応力、および伸びを、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。
【0072】
圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み)
架橋性ニトリルゴム組成物を、金型を用いて、温度170℃で25分間プレスすることにより架橋し、直径29mm、高さ12.7mmの円柱型のゴム架橋物を得た。次いで、得られたゴム架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、円柱型の試験片を得た。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6262に従い、試験片を25%圧縮させた状態で、150℃の環境下に168時間置いた後、圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み)を測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0073】
圧縮永久歪み(O−リング圧縮永久歪み)
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行うことにより、O−リング状の試験片を得た。そして、得られたO−リング状の試験片を用いて、O−リング状の試験片を挟んだ二つの平面間の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って、圧縮永久歪み(O−リング圧縮永久歪み)を測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0074】
製造例1(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル20部、アクリル酸n−ブチル34部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン40部を仕込んだ。そして、反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、反応器内を攪拌しながら16時間重合反応した。そして、重合反応後、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去することにより、重合体ラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
【0075】
次いで、上記にて得られた重合体ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000ppmになるように、オートクレーブ中に、上記にて製造した重合体ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行った。
【0076】
得られた水素添加反応後の重合体ラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)は、カルボキシル基含有量が2.6×10−2ephr、ヨウ素価が7、ポリマー・ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕は45であった。また、得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)は、アクリロニトリル単位20重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)40重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%であった。
【0077】
製造例2(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.75部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン57部を仕込んだ。そして、反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、反応器内を攪拌しながら16時間重合反応した。そして、重合反応後、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去することにより、重合体ラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
【0078】
次いで、上記にて得られた重合体ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000ppmになるように、オートクレーブ中に、上記にて製造した重合体ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行った。
【0079】
得られた水素添加反応後の重合体ラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)は、カルボキシル基含有量が3.2×10−2ephr、ヨウ素価が7、ポリマー・ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕は45であった。また、得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)は、アクリロニトリル単位36重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)58.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.5重量%であった。
【0080】
実施例1
バンバリーミキサを用いて、製造例2で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)100部に、FEFカーボンブラック(商品名:シーストSO、東海カーボン社製)40部、トリメリット酸エステル(商品名:アデカサイザーC−8、ADEKA社製、可塑剤)5部、4,4’−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ナウガード445、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、ステアリン酸(滑剤)1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名:フォスファノールRL210、東邦化学工業社製、加工助剤)1部、水酸化アルミニウムゲル(商品名:AD200P、富田製薬社製)2.5部を添加して、50℃で5分間混練した。次いで、得られた混合物を、温度40℃にしたロールに移して、DBU(商品名:RHENOGRAN XLA−60(GE2014)、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分を含む)並びにアクリル酸ポリマーと分散剤40%からなるもの、塩基性架橋促進剤)4部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名:Diak#1、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン架橋剤)2.4部を添加して混練し、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
実施例2
水酸化アルミニウムゲル2.5部を、水酸化アルミニウムゲル5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例3
水酸化アルミニウムゲル2.5部を、水酸化アルミニウムゲル10部に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例4
カルボキシル基含有ニトリルゴム(a2)100部に代えてカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)100部を用い、FEFカーボンブラック、水酸化アルミニウムゲルおよびヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を表1に記載した量に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
比較例1
水酸化アルミニウムゲル(商品名:AD200P、富田製薬社製)を使用しなかった以外は、実施例4と同様にして、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
水酸化アルミニウムゲル(商品名:AD200P、富田製薬社製)5部に代えて、ハイドロタルサイト(商品名:RUP−110、ADEKA社製)5部を使用した以外は実施例4と同様にして、架橋性ゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、常態物性(引張強さ、引張応力、伸び、硬さ)および圧縮永久歪み(Disk圧縮永久歪み、O−リング圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1より、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)または(a2)に、ポリアミン架橋剤および水酸化アルミニウムゲルを配合してなる架橋性ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、機械的特性および耐圧縮永久歪み性に優れる結果となった(実施例1〜4)。
【0088】
一方、水酸化アルミニウムゲルを配合しない場合には、得られるゴム架橋物は耐圧縮永久歪み性に劣る結果となった(比較例1)。
さらに、水酸化アルミニウムゲルに代えて、ハイドロタルサイトを配合した場合にも、得られるゴム架橋物は耐圧縮永久歪み性に劣る結果となった(比較例2)。