特許第5817616号(P5817616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817616
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】水系導電性塗料
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20060101AFI20151029BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20151029BHJP
   C09D 123/26 20060101ALI20151029BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20151029BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20151029BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
   H01B1/20 Z
   C09D123/26
   C09D5/24
   !H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-71185(P2012-71185)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206573(P2013-206573A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】前田 耕一郎
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−078143(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0211943(US,A1)
【文献】 特開平11−297332(JP,A)
【文献】 特開2009−093940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
H01B 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セパレーターを形成するために用いる水系導電性塗料であって、
前記水系導電性塗料は、導電性材料、バインダー及び水を含み、
前記導電性材料は炭素系材料であって、前記導電性材料の含有量は前記水系導電性塗料中、55〜73wt%であり、
前記バインダーは、酸変性ポリオレフィンを含み、前記酸変性ポリオレフィンの含有量は前記水系導電性塗料中、3〜5wt%であることを特徴とする水系導電性塗料。
【請求項2】
前記バインダーと前記炭素系材料との重量比が固形分として:100〜:100であることを特徴とする請求項1記載の水系導電性塗料。
【請求項3】
前記バインダーは、ガラス転移温度が100℃以上のポリマーラテックスをさらに含み、
前記ポリマーラテックスの含有量は前記水系導電性塗料中、0.5〜2wt%であることを特徴とする請求項1または2記載の水系導電性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セパレーターを形成するために用いる水系導電性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、環境負荷低減等を目的として検討が行われているエネルギーの供給方法の一つである。特に固体高分子型燃料電池は、他の燃料電池と比べ比較的低温で動作するため、家庭用コジェネシステムや、自動車用電源として期待されている。水素と酸素(空気)を用いる固体高分子型燃料電池は、水素極、固体高分子電解質膜、酸素(空気)極等からなる発電部材を、水素や酸素を供給するセパレーターで挟んだ構造になっている。 上記の様な固体高分子型燃料電池のセパレーターとしては、導電性カーボンとエポキシ等の樹脂との複合材を凹凸のある板状にした成形品や、耐食性金属板をプレス成型したものが知られている。しかし、導電性カーボンを用いた複合材は、成形時間が長く、また、薄くすることができない、割れ欠けし易いという問題があり、さらに実用化のためには非常に高価であるという問題があった。一方、耐食性金属板のプレス成型品は、複合材と比べて薄膜化は容易であり、割れ欠けなどの問題には対応できているが、耐食性金属板は厚さが薄くなりすぎるとプレス成形した凹凸の角部に亀裂が入り易く、また、亀裂発生を防止するために厚くすると重いという問題が有る。
【0003】
そこで、特許文献1においては、加工しやすい金属板からなるセパレーター基材の表面に耐食性を持たせるために導電性塗膜を形成する方法を採用し、その際に、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体またはアクリル−シリコーン共重合体を含む導電性塗料を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/044888号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導電性塗料により形成される導電性塗膜をセパレーター基材表面に形成して燃料電池内部で使用する場合は、導電性塗膜に耐酸性及び耐熱性が求められるが、特許文献1記載の導電性塗料を用いて形成される導電性塗膜の耐酸性及び耐熱性は、十分なものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、耐酸性及び耐熱性に優れた燃料電池セパレーターを形成するために好適な水系導電性塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、バインダーとして所定量の酸変性ポリオレフィンを含む水系導電性塗料を用いることにより耐酸性及び耐熱性に優れた燃料電池セパレーターが形成されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の水系導電性塗料によれば、
(1) 燃料電池セパレーターを形成するために用いる水系導電性塗料であって、前記水系導電性塗料は、導電性材料、バインダー及び水を含み、前記導電性材料は炭素系材料であって、前記導電性材料の含有量は前記水系導電性塗料中、50〜75wt%であり、前記バインダーは、酸変性ポリオレフィンであって、前記酸変性ポリオレフィンの含有量は前記水系導電性塗料中、1〜6wt%であることを特徴とする水系導電性塗料、
(2) 前記バインダーと前記炭素系材料との重量比が固形分として1.5:100〜8:100であることを特徴とする(1)記載の水系導電性塗料、
(3) 前記バインダーは、ガラス転移温度が100℃以上のポリマーラテックスをさらに含み、前記ポリマーラテックスの含有量は前記水系導電性塗料中、0.1〜3wt%であることを特徴とする(1)または(2)記載の水系導電性塗料、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐酸性及び耐熱性に優れた燃料電池セパレーターを形成するために好適な水系導電性塗料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の水系導電性塗料について説明する。本発明の水系導電性塗料は、燃料電池セパレーターを形成するために用いる水系導電性塗料であって、前記水系導電性塗料は、導電性材料、バインダー及び水を含み、前記導電性材料は炭素系材料であって、前記導電性材料の含有量は前記水系導電性塗料中、50〜75wt%であり、前記バインダーは、酸変性ポリオレフィンであって、前記酸変性ポリオレフィンの含有量は前記水系導電性塗料中、1〜6wt%であることを特徴とする。
【0011】
(導電性材料)
本発明の水系導電性塗料において導電性材料としては、カーボン等を用いる。カーボンとしては、黒鉛、カーボンブラック等を用いることができ、黒鉛とカーボンブラックとを併用することが好ましい。黒鉛とカーボンブラックとを併用する場合には、黒鉛/カーボンブラックの重量比が95/5〜60/40であることが好ましい。黒鉛の比率が大きすぎると水系導電性塗料の安定性が低下する。また、カーボンブラックの比率が大きすぎると導電性塗料の粘度が高くなり、基材上における水系導電性塗料の流動性が失われるため、塗布に適さない。
【0012】
また、水系導電性塗料中のカーボン量、即ちカーボンの固形分濃度は、導電性塗料100重量部中、通常50〜75重量部、好ましくは55〜73重量部である。カーボンの固形分濃度が低すぎると、水系導電性塗料を乾燥させるための時間やエネルギーが増加し、導電性塗膜を得るためのコストが増加する。さらに、得られる導電性塗膜の厚さ、特に端部の厚さを制御することが困難となる。
【0013】
また、カーボンの固形分濃度が高すぎると、水系導電性塗料の粘度が増加し、流動性が失われるため、塗布に適さない。また、この場合に導電性塗膜を形成したとしても、導電性塗膜にクラックが生じる。
【0014】
(バインダー)
本発明の水系導電性塗料においてバインダーは、酸変性ポリオレフィンを含んでなる。酸変性ポリオレフィンは、重合性不飽和有機酸とポリオレフィンとの部分共重合体であり、酸変性ポリオレフィンは分子中にカルボキシル基を有する。重合性不飽和有機酸としては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらのエステル類等を挙げることができ、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリブタジエン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体水素化物(SEB)等が挙げることができ、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
酸変性ポリオレフィンは、重合性不飽和有機酸とポリオレフィンとをランダム共重合、ブロック共重合、グラフト法等の重合法等を用いて重合することにより得ることができる。
【0016】
また、酸変性ポリオレフィンは市販されている。市販品の具体例は、ユニチカ(株)製アローベース、三井化学(株)製ユニストール、中央理化工業(株)製アクアテックス、住友精化(株)製セポルジョン、ザイクセン、CSMラテックス等である。
【0017】
本発明の水系導電性塗料において用いられる酸変性ポリオレフィンの量は、水系導電性塗料100重量部に対して1〜6重量部、好ましくは3〜5重量部である。酸変性ポリオレフィンの量が多すぎると、水系導電性塗料を用いて形成される導電性塗膜の抵抗値が大きくなる。また、酸変性ポリオレフィンの量が少なすぎると、導電性塗膜が基材から剥離しやすくなる。
【0018】
本発明の水系導電性塗料においてバインダーは、さらにガラス転移温度(Tg)が高いポリマーラテックス(以下、「高Tgポリマー」という。)を含有することが好ましい。ここで、高TgポリマーのTgは70℃以上、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜250℃である。高Tgポリマーとしては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の水系導電性塗料において用いられる高Tgポリマーの量は、水系導電性塗料100重量部に対して0.1〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。高Tgポリマーの量が多すぎると、導電性塗膜の基材からの剥離強度が低下するなど水系導電性塗料により形成される導電性塗膜が脆くなる。また、高Tgポリマーの量が少なすぎると、水系導電性塗料により形成される導電性塗膜の耐熱性が低下する。
【0020】
本発明に用いるバインダーは、分散媒にバインダーが分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される。分散媒としては、環境の観点に優れ、乾燥速度が速いという観点から水を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の水系導電性塗料において用いられるバインダーの量は固形分として、導電性材料100重量部に対して好ましくは3〜10重量部、より好ましくは4〜7重量部である。
【0022】
(水系導電性塗料)
本発明の水系導電性塗料は、上述の導電性材料及びバインダーを混合することにより得られる。導電性材料及びバインダーの混合方法としては、特に限定されないが、例えば、バッチ式混練機でバインダーの分散液及び導電性材料を混練することにより得られる。また、混合する際に、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマー等を添加して混合してもよい。
【0023】
(添加剤)
本発明の水系導電性塗料には、必要に応じてさらに添加剤を加えてもよい。添加剤としては、シリコン系やフッ素系の消泡剤、ポリアクリル酸や添加剤としてのポリビニルアルコールなどの粘度調整剤等が挙げられる。水系導電性ペーストの製造方法としては、各材料をディスパーやロール、バンバリーミキサー、押し出し機、などの混錬機を用いて混錬する方法が挙げられる。好ましく用いられる混練機は、バンバリーミキサーなどの密閉式混錬機である。
【0024】
(導電性塗膜)
本発明の水系導電性塗料を、燃料電池のセパレーターの基材として用いられる金属材料または炭素材料等の上に塗布して乾燥することにより導電性塗膜を形成することができる。塗布方法としては、例えば、ダイコート法、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどが挙げられる。基材上に導電性塗膜を形成することにより、燃料電池のセパレーター、電磁波吸収体、導電回路、導電コネクタ等として用いることができる。
【0025】
本発明によれば、耐酸性及び耐熱性に優れた導電性塗膜を有する燃料電池セパレーターを形成するために好適な導電性塗料を提供することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り質量基準である。実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
【0027】
(流動性:水系導電性塗料を塗布乾燥したシートの外観)
PETフィルム上に、ギャップ500μmのドクターブレードで形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性塗料シート表面の外観を目視し、亀裂等の有無を判断した。なお、表1においては亀裂等の欠陥がない場合には○、亀裂等の欠陥がある場合には×として示した。
【0028】
(塗料性:シート平滑度)
レーザー式深度計で、導電性塗料シート表面の粗さを測定した。JIS B0633:’01に準拠してRaを求めた。Raは、10μm以下であると平滑であることを示している。
【0029】
(膜強度:剥離強度)
SUS板に導電性ペーストを、ギャップ500μmのドクターブレードで塗布形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性ペーストシートに、幅10mmの粘着テープを張り付け、180°剥離強度を測定した。剥離強度は10N以上であると良好であることを示している。
【0030】
(抵抗値)
PETフィルム上に、ギャップ500μmのドクターブレードで形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性塗料シートを所定の大きさに切り出し、金属端子を表面に接触させて体積抵抗率を測定した。体積抵抗率は、500mΩcm以下であると良好であることを示している。
【0031】
(耐酸性:抵抗値)
また、導電性塗料シートを塗布したSUS板を、硫酸でpH3に調整した酸性水に浸漬し、60℃に加温し、100時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄、乾燥したシートについて同様に抵抗値(体積抵抗率)を測定した。体積抵抗率は、500mΩcm以下であると良好であることを示している。
【0032】
(耐熱性:抵抗値)
抵抗値を測定した、RETフィルムを用いた前記試験片を、80℃のオーブンに1000時間入れて、熱処理を行い、同様に熱処理後の抵抗値を測定した。
【0033】
(実施例1)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(スチレン30部、水70部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.1部の混合撹拌液に、BPO0.2部を添加して得られた粒径0.09μmのポリスチレンラテックス Tg=100℃)、イオン交換水、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを1部、カーボンを60部それぞれ用いた。このとき、イオン交換水はカーボンが下記表1記載の固形分濃度になるように添加した(実施例2以降においても同趣旨)。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0034】
(実施例2)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(ポリスチレンラテックス Tg=100℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを0.5部、カーボンを65部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0035】
(実施例3)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(ポリスチレンラテックス Tg=100℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを3部、高Tgポリマーを1部、カーボンを55部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛70部に対してカーボンブラックを30部用いた。
【0036】
(実施例4)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(メタクリル酸メチル30部、水70部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.1部の混合撹拌液に、BPO0.2部を添加して得られた粒径0.1μmのポリメタクリル酸メチルラテックス Tg=70℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを3部、高Tgポリマーを2部、カーボンを65部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛70部に対してカーボンブラックを30部用いた。
【0037】
(比較例1)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及びイオン交換水、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを1部、カーボンを60部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0038】
(比較例2)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマーをイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを10部、高Tgポリマーを5部、カーボンを80部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0039】
(比較例3)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマーをイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを7部、カーボンを40部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛40部に対してカーボンブラックを60部用いた。
【0040】
実施例1〜4及び比較例1〜3において製造した水系導電性塗料の流動性、塗料性、膜強度、抵抗値、耐酸性及び耐熱性について評価を行った結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
表1に示すように、本願発明の水系導電性塗料100部に対してカーボンの固形分濃度が55〜73部であり、さらに水系導電性塗料100部に対して酸変性ポリオレフィンを3〜5部含むバインダーを用いると、流動性、塗料性、膜強度、抵抗値、耐酸性及び耐熱性がいずれも良好なものとなる。