【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り質量基準である。実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
【0027】
(流動性:水系導電性塗料を塗布乾燥したシートの外観)
PETフィルム上に、ギャップ500μmのドクターブレードで形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性塗料シート表面の外観を目視し、亀裂等の有無を判断した。なお、表1においては亀裂等の欠陥がない場合には○、亀裂等の欠陥がある場合には×として示した。
【0028】
(塗料性:シート平滑度)
レーザー式深度計で、導電性塗料シート表面の粗さを測定した。JIS B0633:’01に準拠してRaを求めた。Raは、10μm以下であると平滑であることを示している。
【0029】
(膜強度:剥離強度)
SUS板に導電性ペーストを、ギャップ500μmのドクターブレードで塗布形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性ペーストシートに、幅10mmの粘着テープを張り付け、180°剥離強度を測定した。剥離強度は10N以上であると良好であることを示している。
【0030】
(抵抗値)
PETフィルム上に、ギャップ500μmのドクターブレードで形成した塗膜を90℃で1時間乾燥してなる導電性塗料シートを所定の大きさに切り出し、金属端子を表面に接触させて体積抵抗率を測定した。体積抵抗率は、500mΩcm以下であると良好であることを示している。
【0031】
(耐酸性:抵抗値)
また、導電性塗料シートを塗布したSUS板を、硫酸でpH3に調整した酸性水に浸漬し、60℃に加温し、100時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄、乾燥したシートについて同様に抵抗値(体積抵抗率)を測定した。体積抵抗率は、500mΩcm以下であると良好であることを示している。
【0032】
(耐熱性:抵抗値)
抵抗値を測定した、RETフィルムを用いた前記試験片を、80℃のオーブンに1000時間入れて、熱処理を行い、同様に熱処理後の抵抗値を測定した。
【0033】
(実施例1)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(スチレン30部、水70部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.1部の混合撹拌液に、BPO0.2部を添加して得られた粒径0.09μmのポリスチレンラテックス Tg=100℃)、イオン交換水、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを1部、カーボンを60部それぞれ用いた。このとき、イオン交換水はカーボンが下記表1記載の固形分濃度になるように添加した(実施例2以降においても同趣旨)。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0034】
(実施例2)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(ポリスチレンラテックス Tg=100℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを0.5部、カーボンを65部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0035】
(実施例3)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(ポリスチレンラテックス Tg=100℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを3部、高Tgポリマーを1部、カーボンを55部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛70部に対してカーボンブラックを30部用いた。
【0036】
(実施例4)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマー(メタクリル酸メチル30部、水70部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.1部の混合撹拌液に、BPO0.2部を添加して得られた粒径0.1μmのポリメタクリル酸メチルラテックス Tg=70℃)をイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを3部、高Tgポリマーを2部、カーボンを65部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛70部に対してカーボンブラックを30部用いた。
【0037】
(比較例1)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及びイオン交換水、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを1部、カーボンを60部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0038】
(比較例2)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマーをイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを10部、高Tgポリマーを5部、カーボンを80部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛80部に対してカーボンブラックを20部用いた。
【0039】
(比較例3)
(水系導電性塗料の製造)
アローベース(ユニチカ(株)製)及び高Tgポリマーをイオン交換水に分散させた分散液、カーボンをバッチ式混錬機で30分間混錬して水系導電性塗料を作製した。ここで、得られる水系導電性塗料100部に対してアローベースを4部、高Tgポリマーを7部、カーボンを40部それぞれ用いた。また、カーボンとしては黒鉛40部に対してカーボンブラックを60部用いた。
【0040】
実施例1〜4及び比較例1〜3において製造した水系導電性塗料の流動性、塗料性、膜強度、抵抗値、耐酸性及び耐熱性について評価を行った結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
表1に示すように、
本願発明の水系導電性塗料100部に対してカーボンの固形分濃度が
55〜73部であり、さらに水系導電性塗料100部に対して酸変性ポリオレフィンを
3〜5部含むバインダーを用いると、流動性、塗料性、膜強度、抵抗値、耐酸性及び耐熱性がいずれも良好なものとなる。