特許第5817679号(P5817679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5817679差動信号伝送用ケーブル及び多芯差動信号伝送用ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5817679
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】差動信号伝送用ケーブル及び多芯差動信号伝送用ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/06 20060101AFI20151029BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20151029BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   H01B11/06
   H01B7/18 D
   H01B11/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-181661(P2012-181661)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-38802(P2014-38802A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】西村 慶
(72)【発明者】
【氏名】杉山 剛博
(72)【発明者】
【氏名】南畝 秀樹
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0054334(US,A1)
【文献】 実開平03−131027(JP,U)
【文献】 特開昭50−139982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/06
H01B 7/17
H01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を伝送する一対の導線を絶縁体で被覆してなる絶縁電線と、
導電性の金属層を有する帯状部材からなり、前記絶縁電線の外周側に巻かれたシールドテープ導体と、
前記シールドテープ導体の外周側に巻かれた第1及び第2の樹脂テープとを備え、
前記シールドテープ導体は、その幅方向の両端部が重なり合うように前記絶縁電線の長手方向に沿って縦添え巻きされ、
前記第1の樹脂テープは、その幅方向の両端部が重なり合うように前記シールドテープ導体の外周面に接して前記シールドテープ導体の長手方向に沿って縦添え巻きされ、
前記第2の樹脂テープは、前記第1の樹脂テープの外周面に接して螺旋巻きされ
前記シールドテープ導体の前記両端部が重なり合った重なり部分と、前記第1の樹脂テープの前記両端部が重なり合った重なり部分とが、前記絶縁電線の周方向にずれて配置されている
差動信号伝送用ケーブル。
【請求項2】
前記第1の樹脂テープの外周側及び前記第2の樹脂テープの内周側には、それぞれ接着層が形成され、
前記第1の樹脂テープと前記第2の樹脂テープとが前記接着層によって互いに接合されている、
請求項1に記載の差動信号伝送用ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の差動信号伝送用ケーブルを複数本備え、
前記複数本の前記差動信号伝送用ケーブルを一括してシールドしてなる
多芯差動信号伝送用ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する一対の導線を有する差動信号伝送用ケーブル、及びこの差動信号伝送用ケーブルを複数本備えた多芯差動信号伝送用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差動信号を伝送する一対の導線を絶縁体で被覆した差動信号伝送ケーブルが知られている。この種の差動信号伝送ケーブルには、特に高周波帯域における信号の減衰を抑制するために、絶縁体の外周側に導電性のシールドテープを巻き付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の差動信号伝送ケーブルは、絶縁体で被覆された一対の導線を有し、この絶縁体の外周側にシールドテープが縦添え巻きされている。シールドテープの外周側には、シールドテープを押え付けるためのポリマーからなる二重のテープが螺旋巻きされている。この二重のテープは、シールドテープの中心軸に対する周方向における螺旋巻きの方向が互いに逆向きとなるように巻き回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7790981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成された差動信号伝送用ケーブルでは、絶縁体とシールドテープとの間に意図しない隙間が発生すると、一対の導線における信号の伝搬遅延時間の差であるスキューや、高周波帯域(例えば10Gbps以上)での急激な信号減衰であるサックアウトが発生し、受信側において信号を正常に受信できないことがある。また、シールドテープの幅方向の両端部が重なるようにシールドテープを重ね巻きする場合には、この重なり部分における両端部の間に隙間が発生することによっても特性が変化し、スキューやサックアウトが発生する場合がある。
【0006】
本発明者らは、二重のテープをシールドテープの外周側に螺旋巻きする際に、絶縁体とシールドテープとの間及び/又はシールドテープの重なり部分に隙間が発生する場合があることを見出し、これらのテープの巻き付け構造を変更することで、これらの隙間の発生を抑制できるとの知見を得た。
【0007】
本願発明は、この知見に基づいてなされたものであり、差動信号を伝送する一対の導線を被覆する絶縁体とシールドテープ導体との間、及び重ね巻きされたシールドテープ導体の重なり部分における隙間の発生を抑制することができる差動信号伝送用ケーブル及び多芯差動信号伝送用ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、差動信号を伝送する一対の導線を絶縁体で被覆してなる絶縁電線と、導電性の金属層を有する帯状部材からなり、前記絶縁電線の外周側に巻かれたシールドテープ導体と、前記シールドテープ導体の外周側に巻かれた第1及び第2の樹脂テープとを備え、前記シールドテープ導体は、その幅方向の両端部が重なり合うように前記絶縁電線の長手方向に沿って縦添え巻きされ、前記第1の樹脂テープは、その幅方向の両端部が重なり合うように前記シールドテープ導体の外周面に接して前記シールドテープ導体の長手方向に沿って縦添え巻きされ、前記第2の樹脂テープは、前記第1の樹脂テープの外周面に接して螺旋巻きされ、前記シールドテープ導体の前記両端部が重なり合った重なり部分と、前記第1の樹脂テープの前記両端部が重なり合った重なり部分とが、前記絶縁電線の周方向にずれて配置されている差動信号伝送用ケーブルを提供する。
【0009】
また、前記第1の樹脂テープの外周側及び前記第2の樹脂テープの内周側には、それぞれ接着層が形成され、前記第1の樹脂テープと前記第2の樹脂テープとが前記接着層によって互いに接合されているとよい。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の差動信号伝送用ケーブルを複数本備え、前記複数本の前記差動信号伝送用ケーブルを一括してシールドしてなる多芯差動信号伝送用ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、差動信号を伝送する一対の導線を被覆する絶縁体とシールドテープ導体との間、及び重ね巻きされたシールドテープ導体の重なり部分における隙間の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル、及びこの差動信号伝送用ケーブルを複数本含む多芯差動信号伝送用ケーブルの断面構造を示す断面図である。
図2】本実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルの構成を示し、(a)は差動信号伝送用ケーブル10の一方の側面を、(b)は(a)と反対側の側面を、それぞれ示す。
図3図2のA−A線断面を示し、(a)は全体図、(b)及び(c)は(a)の一部部拡大図である。
図4】差動信号伝送用ケーブルの製造工程を示す概略図であり、(a)はシールドテープ導体を縦添え巻きする工程を、(b)は第1の樹脂テープを縦添え巻きする工程を、(c)は第2の樹脂テープを螺旋巻きする工程を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル、及びこの差動信号伝送用ケーブルを複数本含む多芯差動信号伝送用ケーブルの断面構造を示す断面図である。
【0015】
この多芯差動信号伝送用ケーブル100は、差動信号伝送用ケーブル10を複数本(図1に示す例では8本)束ね、この束ねられた複数の差動信号伝送用ケーブル10を一括してシールド導体12によってシールドし、シールド導体12の外周囲をさらに編組線13によって覆い、これら複数の差動信号伝送用ケーブル10、シールド導体12、及び編組線13を絶縁体からなる可撓性のジャケット14に収容して構成されている。
【0016】
また、図1に示す例では、多芯差動信号伝送用ケーブル100の中心部に2本の差動信号伝送用ケーブル10が配置され、この2本の差動信号伝送用ケーブル10が撚糸や発泡ポリオレフィン等からなる筒状の介在11に収容されている。また、他の6本の差動信号伝送用ケーブル10は、介在11の外側に略等間隔に配置されている。
【0017】
(差動信号伝送用ケーブル10の構成)
図2は、本実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル10の構成を示し、(a)は差動信号伝送用ケーブル10の側面を、(b)は(a)に示す側面とは反対側の側面を、それぞれ示す。
【0018】
差動信号伝送用ケーブル10は、差動信号を伝送する第1及び第2の導線21,22を絶縁体20で被覆してなる絶縁電線2と、導電性の金属層を有する帯状部材からなり、絶縁電線2の外周側に巻かれたシールドテープ導体3と、シールドテープ導体3の外周側に巻かれた第1及び第2の樹脂テープ4,5とを備えている。なお、図2では、説明のため、シールドテープ導体3ならびに第1及び第2の樹脂テープ4,5の一部を除去してその内部を露出させた状態を示している。
【0019】
絶縁電線2は、銅等の導電性の金属からなる第1の導線21及び第2の導線22を互いに平行に配置し、この第1の導線21及び第2の導線22を一括して絶縁体20によって被覆している。絶縁電線2の中心軸Cに直交する断面における絶縁体20の外縁は楕円状を呈している。絶縁体20の材料としては、例えば発泡ポリエチレンや発泡テフロン、あるいはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のテフロン系材料(テフロンは登録商標)を使用することができる。
【0020】
シールドテープ導体3は、その幅方向の両端部が重なり部3aにおいて互いに重なり合うように、絶縁電線2の長手方向に沿って縦添え巻きされている。ここで縦添え巻きとは、シールドテープ導体3の長手方向と絶縁電線2の長手方向とが平行となるようにシールドテープ導体3を配置し、このシールドテープ導体3を絶縁電線2の周方向に沿って屈曲させて巻くことをいう。重なり部3aは、絶縁電線2の中心軸Cと平行に延びるように形成されている。
【0021】
第1の樹脂テープ4は、シールドテープ導体3の外周面に接して、シールドテープ導体3の長手方向に沿って縦添え巻きされている。すなわち、第1の樹脂テープ4は、その長手方向とシールドテープ導体3の長手方向とが平行となるように配置され、シールドテープ導体3の周方向に沿って屈曲して巻かれている。また、第1の樹脂テープ4は、その幅方向の両端部が重なり部4aにおいて互いに重なり合うように縦添え巻きされている。重なり部4aは、絶縁電線2の中心軸Cと平行に延びるように形成されている。
【0022】
シールドテープ導体3の重なり部分3aと第1の樹脂テープ4の重なり部分4aとは、絶縁電線2の周方向にずれて配置されている。本実施の形態では、重なり部分4aが、重なり部分3aとの間に絶縁電線2の中心軸Cを挟む位置に形成されている。つまり、重なり部分3aと重なり部分4aとは、中心軸Cに直交する断面において中心軸Cの点対称となる位置に配置されている。
【0023】
第2の樹脂テープ5は、第1の樹脂テープ4の外周面に接して螺旋巻きされている。すなわち、第2の樹脂テープ5は、その長手方向がシールドテープ導体3及び第1の樹脂テープ4の長手方向に対して傾斜し、第1の樹脂テープ4の外周面に沿って旋回しながら絶縁電線2の中心軸Cに平行な方向に巻き進むように巻かれている。
【0024】
第2の樹脂テープ5は、その幅方向の両端部が重なり部5aにおいて互いに重なり合うように螺旋巻きされている。この螺旋巻きの方向は、第1の樹脂テープ4の重なり部4aにおける第1の樹脂テープ4の巻き方向に沿った方向である。つまり、第2の樹脂テープ5は、図2(b)に破線で示す第1の樹脂テープ4の重なり部4aにおける下側(シールドテープ導体3側)の一端面から、実線で示す上側の他端面に向かって巻き回されている。
【0025】
図3は、図2のA−A線断面を示し、(a)は全体図、(b)は(a)のB部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図である。なお、図3では、説明のため、シールドテープ導体3、第1の樹脂テープ4、及び第2の樹脂テープ5の厚みを誇張して表している。
【0026】
シールドテープ導体3は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性を有する絶縁性の樹脂からなる樹脂層30と、樹脂層30の一方の表面に設けられた銅やアルミニウム等の導電性の金属からなる金属層31とを積層して構成されている。樹脂層30は、金属層31よりも絶縁電線2側に配置され、樹脂層30の表面30a(シールドテープ導体3の内周面)は絶縁体20の外周面20aに接触している。樹脂層30の厚みは例えば6μm以下、金属層31の厚みは例えば9μm以下である。
【0027】
第1の樹脂テープ4は、例えばPET等の可撓性を有する絶縁性の樹脂からなる樹脂層40と、樹脂層40に積層して形成された接着剤を含む接着層41とを有して構成されている。接着層41は、樹脂層40よりも差動信号伝送用ケーブル10の外周側に配置されている。樹脂層40の厚みは例えば4〜12μmである。樹脂層40の厚みは、重なり部3aにおけるシールドテープ導体3の幅方向の一端部と他端部との間に隙間が発生しないように確実にシールドテープ導体3を押え付けるべく、4〜12μmから適宜選択されることが望ましい。
【0028】
樹脂層40の表面40a(第1の樹脂テープ4の内周面)は、シールドテープ導体3の金属層31の表面31a(シールドテープ導体3の外周面)に接触している。第1の樹脂テープ4の重なり部分4aでは、下側(シールドテープ導体3側)における第1の樹脂テープ4の一端部の接着層41によって、この一端部における樹脂層40と、上側(第2の樹脂テープ5側)における第1の樹脂テープ4の他端部の樹脂層40とが接合されている。
【0029】
第2の樹脂テープ5は、例えばPET等の可撓性を有する絶縁性の樹脂からなる樹脂層50と、樹脂層50に積層して形成された接着剤を含む接着層51とを有して構成されている。接着層51は、樹脂層50よりも差動信号伝送用ケーブル10の内周側に配置されている。樹脂層50の厚みは例えば4〜12μmである。
【0030】
接着層51の表面51a(第2の樹脂テープ5の内周面)は、第1の樹脂テープ4の接着層41の表面41a(第1の樹脂テープ4の外周面)に接触し、互いに接合されている。つまり、第1の樹脂テープ4と第2の樹脂テープ5とは、第1の樹脂テープ4の外周側及び第2の樹脂テープ5の内周側に設けられた接着層41,51によって互いに接合されている。
【0031】
第2の樹脂テープ5の重なり部分5aでは、上側(差動信号伝送用ケーブル10の外周側)における第2の樹脂テープ5の一端部の接着層51によって、この一端部における樹脂層50と、下側(第1の樹脂テープ4側)における第2の樹脂テープ5の他端部の樹脂層50とが接合されている。
【0032】
以上のように構成された差動信号伝送用ケーブル10は、第1及び第2の導線21,22によって差動信号を伝送する。つまり、この差動信号伝送用ケーブル10を用いた通信では、送信側において第1の導線21及び第2の導線22に互いに逆位相となる信号を出力し、受信側において第1の導線21と第2の導線22との電位差に基づいて送信された信号を受信(復号)する。シールドテープ導体3は、第1及び第2の導線21,22を伝送媒体とする信号のスキューやサックアウトの発生を抑制するように機能する。
【0033】
(差動信号伝送用ケーブル10の製造方法)
次に、差動信号伝送用ケーブル10の製造方法について説明する。
【0034】
図4は、差動信号伝送用ケーブル10の製造工程を示す概略図であり、(a)はシールドテープ導体3を絶縁電線2の外周側に縦添え巻きする工程を、(b)は第1の樹脂テープ4をシールドテープ導体3の外周側に縦添え巻きする工程を、(c)は第2の樹脂テープ5を第1の樹脂テープ4の外周側に螺旋巻きする工程を、それぞれ示す。
【0035】
シールドテープ導体3を絶縁電線2の外周側に縦添え巻きする際には、図4(a)に示すように、シールドテープ導体3を絶縁電線2と平行に配置し、絶縁電線2の絶縁体20における外周面20aを覆うようにシールドテープ導体3を縦添え巻きする。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、シールドテープ導体3の外周側に第1の樹脂テープ4を縦添え巻きする。この工程では、少なくともシールドテープ導体3の重なり部分3aを覆うように第1の樹脂テープ4をかぶせ、シールドテープ導体3の外周面に第1の樹脂テープ4を沿わせるようにして縦添え巻きする。
【0037】
次に、図4(c)に示すように、第1の樹脂テープ4の外周側に第2の樹脂テープ5を螺旋巻きする。第2の樹脂テープ5は、その長手方向に所定の張力が付与された状態で螺旋巻きされる。これにより、第1の樹脂テープ4と第2の樹脂テープ5とが強固に接合される。
【0038】
絶縁電線2の中心軸Cに直交する断面におけるシールドテープ導体3の重なり部3aにおける縦添え巻きの巻き方向、第1の樹脂テープ4の重なり部4aにおける縦添え巻きの巻き方向、及び第2の樹脂テープ5の螺旋巻きの巻き方向は、共に同一方向(図4(c)における矢印D方向)である。
【0039】
(実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果がある。
【0040】
(1)第1の樹脂テープ4をシールドテープ導体3に縦添え巻きし、その外周側に第2の樹脂テープ5を螺旋巻きするため、絶縁電線2の絶縁体20とシールドテープ導体3との間、及びシールドテープ導体3の重なり部分3aにおける隙間の発生を抑制することができる。つまり、例えば特許文献1に記載された差動信号伝送ケーブルのように、シールドテープの外周側に二重のテープを互いに逆向きに螺旋巻きする場合には、この螺旋巻きの際のテープの張力によって巻き付け対象である絶縁電線が揺動し、シールドテープの内周側において隙間が発生する場合があるが、本実施の形態では、第1の樹脂テープ4をシールドテープ導体3に縦添え巻きするので、第2の樹脂テープ5を螺旋巻きする際の張力がシールドテープ導体3に直接的には作用しない。すなわち、シールドテープ導体3の全体が第1の樹脂テープ4に覆われた状態で第2の樹脂テープ5が螺旋巻きされるので、第2の樹脂テープ5を螺旋巻きする際の張力の影響が緩和され、絶縁電線2の揺動に起因するシールドテープ導体3の内周側における隙間の発生が抑制される。
【0041】
(2)第1の樹脂テープ4及び第2の樹脂テープ5は、それぞれの接着層41,51が互いに向き合うように巻き回されるので、第1の樹脂テープ4と第2の樹脂テープ5とが強固に接合される。これにより、シールドテープ導体3の緩みが抑えられ、信号のスキューを抑制することができる。
【0042】
(3)シールドテープ導体3の重なり部分3aと第1の樹脂テープ4の重なり部分4aとは、絶縁電線2の中心軸Cに対して周方向にずれて配置されるので、差動信号伝送用ケーブル10の外周面における凹凸が抑制される。これにより、意匠性が向上すると共に、例えば多芯差動信号伝送用ケーブル100として複数本の差動信号伝送用ケーブル10を束ねた場合に、多芯差動信号伝送用ケーブル100の内部における差動信号伝送用ケーブル10相互の動きが円滑化される。また、シールドテープ導体3の重なり部分3aが、第1の樹脂テープ4の連続した内面によって覆われるので、この重なり部分3aにおける隙間の発生を確実に抑制することができる。
【0043】
(4)第1の樹脂テープ4の重なり部4aにおける縦添え巻きの巻き方向と第2の樹脂テープ5の螺旋巻きの巻き方向とが、絶縁電線2の中心軸Cに対する周方向において同じであるので、この方向が逆である場合に比較して、第2の樹脂テープ5を螺旋巻きする際に第1の樹脂テープ4の重なり部4aにおける第1の樹脂テープ4の両端部がずれてしまうことを抑制できる。つまり、重なり部分4aにおいて下側(内側)となる一方の端部から上側(外側)となる他方の端部に向かって第2の樹脂テープ5が巻き回されるため、この他方の端部が一方の端部に押し付けられ、重なり部分4aにおいて空隙が発生することが抑制される。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0045】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1の導線21及び第2の導線22が一括して絶縁体20に被覆された場合について説明したが、これに限らず、第1の導線21を被覆する絶縁体と第2の導線22を被覆する絶縁体とが別体であってもよい。また、多芯差動信号伝送用ケーブル100に含まれる差動信号伝送用ケーブルの本数にも特に制限はない。
【符号の説明】
【0046】
2…絶縁電線、3…シールドテープ導体、3a…重なり部分、4…第1の樹脂テープ、4a…重なり部分、5…第2の樹脂テープ、10…差動信号伝送用ケーブル、11…介在、12…シールド導体、13…編組線、14…ジャケット、20…絶縁体、20a…外周面、21…第1の導線、22…第2の導線、30…樹脂層、30a…表面、31…金属層、31a…表面、40,50…樹脂層、41,51…接着層、40a,41a,51a…表面、100…多芯差動信号伝送用ケーブル、C…中心軸
図1
図2
図3
図4