【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明の手羽付き胸肉の分離方法は、 脚部及び内蔵が分離された食鳥屠体上半身を移動台に設けられたコーンに嵌挿固定するワーク固定工程と、該コーンを断続歩進させながら、肩関節を切断する肩関節切断工程と、胸肉側の骨から手羽付き胸肉を引き剥がす胸肉分離工程とを含む脱骨処理を行なう手羽付き胸肉の分離方法において、
前記肩関節切断工程の前段階で、食鳥屠体上半身の胸側前面と正対する側の斜め上方から食鳥屠体上半身を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した画像を画像処理し、処理した画像から胸肉の左右外郭線間の間隔を測定する胸肉幅測定工程と、
測定した該間隔から左右肩関節間の寸法を換算する肩関節幅換算工程
とを具え、
前記肩関節幅換算工程において、予め食鳥の種類毎に換算式を求めておき、該換算式によって左右肩関節間の寸法を換算した後、
前記肩関節切断工程で、
前記換算
した肩関節間寸法に基づいて、肩関節切断カッターを位置決めし肩関節を切断するものである。
【0014】
本発明方法では、肩関節切断工程の前段階で、コーンに嵌挿固定されたワークを撮像し、撮像した画像から胸肉幅を測定する。当初、本発明者等は、撮像した画像から、ワークwの左右肩関節の位置を、画像処理で認識する方法として、人手で切断作業をする場合と同じ認識ポイントを撮像しようと試みた。即ち、
図17中、肩部の斜線部gのラインを認識しようとした。しかし、ラインhで明暗の差を付け難く、かつ皮k、首nにじゃまされてうまく認識できなかった。
【0015】
そのため、肩関節幅を直接計測するのを断念し、肩の頂点を通る水平線jと胸肉外形の接線iとの交点Pの位置から肩関節幅を決定しようと、撮像する方向や照明の当て方等を種々検討した。
【0016】
まず、
図18に示すように、コーン204に嵌挿固定されたワークwの胸側正面にデジタルカカメラ150及びLED照明152を配置し、胸側正面から光を当て、ワークwの後に黒いゴム板154を配置し、部品などが映らないようにした。
直線jを求めるために、この状態で撮像した画像を
図19に示す。
図19に示すように、この撮像条件では、四角枠156で囲まれた胸bの左右外郭線を境にした明暗の差が少なく、左右外郭線が明瞭に撮像できなかった。照明152の当て方を変えてみたが、胸bの外郭線に明暗を付けられる照明の当て方はできなかった。そのため直線jを求めることは出来なかった。
【0017】
次に、
図20に示すように、デジタルカメラ150の位置はそのままにして、LED照明152を胸bの背面側に置き、LED照明152とワークwとの間に照明拡散板158を設置した。そして、照明拡散板158の後からワークwに照明を当て、照明拡散板158を発光させるようにした。こうして、胸側を逆光状態にして、照明拡散板158で発光された背景との明暗を明瞭にさせるようにした。この状態で撮像した画像を
図21に示す。この撮像条件では、外郭線としては明瞭になったが、四角枠156内で撮像された胸bの外郭線としては、手羽tや首皮にじゃまされてうまく認識できなかった。
【0018】
また、胸肉外形の接線iは、
図20のデジタルカメラ150の位置では手羽元が写り込んだり、ワークwの大きさの影響を受けるため、うまく認識できず、いずれの方法でも交点Pを正しく求めることは出来なかった。
【0019】
そこで、さらにデジタルカメラ150やLED照明152の位置を変えて、撮像した結果、後述するように、コーンに正立した状態で嵌挿固定されたワークを、胸側前面と正対する側の斜め上方から撮像した。撮像する胸bの部分は正面から視ると、胸bと手羽tが重なって見えるが、斜め上方からは胸bと手羽tが離れて見えるようになり、胸bの外郭線zを認識するときに手羽tの影響を受けなくなった。さらに、この角度からは皮、首等の影響も受けず、胸bの外形線z(
図7の計測線z)を正確に認識することができた。
【0020】
また、ななめ上方からの撮影では、比較的胸肉が平行な部分で外郭線zを求めることができる。即ち、接線iから胸肉幅を求めようとするとき、接線iは傾斜しているので、撮像結果により誤差が発生しやすいが、胸bを斜め上方から視て外郭線zから胸肉幅を求める方法では、かかる問題は発生せず、胸肉幅を正確に認識し計測しやすい。また、照明は、好ましくは、胸側正面から行なうことで、背景用のゴム板などを必要とせず、胸bの左右外郭線zを明瞭に撮像できることがわかった。
【0021】
本発明方法の画像処理は、フィルターリング処理や二値化処理又は濃淡処理など、従来公知の画像処理を行なう。この測定値から左右肩関節間の寸法を換算し、換算された肩関節間寸法に基づいて、肩関節切断カッターを位置決めし肩関節を切断する。かかる工程をワークの1羽毎に行なうことで、ワークの胸肉幅に固体差があっても正確に肩関節部分を切断できる。これによって、生鳥の大きさや重量が平均領域から外れているときでも、正確に肩関節部分を切断できる。
【0022】
本発明方法において、
前記したように肩関節幅換算工程において、予め食鳥の種類毎に換算式を求めておき、該換算式によって左右肩関節間の寸法を換算するようにす
る。これによって、食鳥の種類が変わっても、この換算式を用いて正確に肩関節幅を求めることができる。
【0023】
本発明方法において、胸肉分離工程で胸肉内側の骨から分離された手羽付き胸肉の左右肩関節を2組の上下ガイドレールで挟持しながら、上下ガイドレール間を搬送する搬送工程と、該2組の上下ガイドレールの内側に設けられた2本のインナーレールで左右肩関節の間隔を規制すると共に、肩関節幅換算工程で求めた肩関節幅に応じて該インナーレールの間隔を調整する間隔調整工程と、2組の上下ガイドレールの外側に形成され、搬送方向下流側に向かって先窄まりとなるガイド領域に手羽を導入して手羽の位置出しを行ないつつ、該ガイド領域の下流側終端に設けられた切断刃により手羽中関節を切断する手羽中切断工程と、を行なうようにするとよい。
【0024】
本発明方法の手羽中切断工程では、肩関節幅換算工程で求めた肩関節幅に応じて、インナーレールの間隔を調整することで、手羽付き胸肉幅に固体差があっても、ガイド領域の切断刃に手羽中関節部分を正確に合わせることができる。そのため、固体差に拘らず、常に手羽中関節部分を正確に切断できる。
【0025】
本発明方法において、手羽中切断工程の後で、肩関節幅換算工程で求めた肩関節幅に応じて、2組の上下ガイドレール間の間隔を調整すると共に、該2組の上下ガイドレールに近接配置された切断刃で、手羽元付き胸肉から手羽元を肩関節の位置で切断する手羽元切断工程をさらに行なうとよい。このように、手羽元付き胸肉の幅によって、上下ガイドレール間の間隔を調整することにより、手羽付き胸肉の幅に固体差があっても、上下ガイドレールで肩関節部分を正確に挟持できる。そのため、固体差に拘らず、常に肩関節部分を正確に切断できる。
【0026】
また、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の手羽付き胸肉の分離装置は、断続歩進する移動台と、該移動台に設けられた複数のコーンと、該コーンが停止した位置に、該移動台の移動方向上流側から順に、脚部及び内蔵が分離された食鳥屠体上半身を前記コーンに嵌挿固定するワーク固定ステーションと、肩関節を切断する肩関節切断ステーションと、胸肉内側の骨から手羽付き胸肉を引き剥がす胸肉分離ステーションと含む脱骨処理ステーションを備えた手羽付き胸肉の分離装置において、
前記肩関節切断ステーションの上流側に設けられ、食鳥屠体上半身の胸側前面と正対する方向の斜め上方から食鳥屠体上半身を撮像する撮像装置と、
撮像した画像を画像処理し、画像処理された画像から胸肉の左右外郭線間の間隔を測定する胸肉幅測定手段と、
測定した該間隔から左右肩関節間の寸法を換算する肩関節幅換算手段と
を有し、
更に前記肩関節幅換算手段は、予め食鳥の種類毎に求められた換算式を記憶する記憶手段を備えており、該記憶手段により記憶された換算式を用いて左右肩関節間の寸法を換算するように構成され、
前記肩関節幅換算手段により換算された肩関節間寸法に基づいて、前記肩関節切断ステーションに設けられた肩関節切断カッターを位置決めし、該肩関節切断カッターで肩関節を切断するように構成したものである。
【0027】
本発明装置では、肩関節切断工程の前段階で、食鳥屠体上半身の胸側前面と正対する方向の斜め上方からワークを撮像する。これによって、手羽や皮、首等の影響を受けず、誤認識せずに胸肉の外形を撮像できる。そして、撮像した画像を画像処理し、胸肉幅を測定する。この胸肉幅から肩関節幅を換算し、換算された肩関節幅に基づいて、肩関節切断カッターを位置決めし肩関節を切断する。かかる工程をワーク1羽毎に行なうことで、固体差があっても正確に肩関節部分を切断できる。これによって、生鳥の大きさや重量が平均領域から外れているときでも、正確に肩関節部分を切断できると共に、肩関節切断工程を自動化できる。
【0028】
本発明装置において、
前記したように肩関節幅換算手段は、予め食鳥の種類毎に求められた換算式を記憶する記憶手段を備えており、該換算式を用いて肩関節幅を換算するように構成され
る。これによって、食鳥の種類が変わっても、この換算式を用いて正確に肩関節幅を求めることができる。
【0029】
本発明装置において、肩関節切断ステーションに隣接して手羽中切断ステーションを設け、手羽中切断ステーションは、胸肉内側の骨から分離された手羽付き胸肉の左右肩関節を挟持する2組の上下ガイドレールと、手羽付き胸肉を肩関節切断ステーションから該2組の上下ガイドレール間に引き渡す運搬装置と、該上下ガイドレール間の手羽付き胸肉を該上下ガイドレール間に形成された搬送路に沿って送る送り手段と、該2組の上下ガイドレールの内側に互いの間隔を調整可能に設けられ、左右肩関節の間隔を規制する2本のインナーレールと、前記上下ガイドレールの外側に形成され、送り方向下流側に向かって先窄まりとなると共に、下流側終端に切断刃が設けられたガイド領域と、を備え、肩関節幅換算手段によって求められた肩関節間寸法に応じて前記2本のインナーレール間の間隔を調整すると共に、手羽付き胸肉を搬送路に沿って送りながら、ガイド領域に手羽を導入して手羽の位置出しを行ないつつ、該ガイド領域に設けられた切断刃により手羽中関節を切断するように構成するとよい。
【0030】
本発明装置の手羽中切断ステーションでは、肩関節幅換算手段によって換算された肩関節幅に応じて、インナーレールの間隔を調整することで、手羽付き胸肉幅に固体差があっても、正確に手羽中関節部分をガイド領域の切断刃に合わせることができる。そのため、固体差に拘らず、常に手羽中関節部分を正確に切断できる。
【0031】
さらに、手羽中切断ステーションの搬送方向下流側に、手羽元切断ステーションが設けられ、手羽元切断ステーションは、手羽中切断ステーションに形成された搬送路に連なる第2搬送路を形成すると共に、上下ガイドレール間の間隔を調整可能な2組の上下ガイドレールと、該第2搬送路にある手羽元付き胸肉を下流側に搬送する送り手段と、2組の上下ガイドレールに近接配置された切断刃と、を備え、肩関節幅換算手段によって求められた肩関節間寸法に応じて、上下ガイドレール間の間隔を調整すると共に、切断刃によって手羽元を胸肉から肩関節の位置で分離するように構成するとよい。
【0032】
このように、肩関節幅換算手段によって求められた肩関節幅に応じて、上下ガイドレール間の間隔を調整することにより、手羽付き胸肉の幅に固体差があっても、上下ガイドレールで肩関節部分を正確に挟持できる。そのため、固体差に拘らず、常に肩関節部分を正確に切断できる。
【0033】
さらに、前記構成に加えて、2組の上下ガイドレールのうち上側ガイドレールの送り方向始端部が、上側ガイドレールの送り方向終端部を中心として上下に移動可能に構成され、かつ送り方向に向かって互いの間隔が広くなるように傾斜壁を形成しているとよい。上側ガイドレールの送り方向始端部が傾斜壁を形成しているので、該始端部に進入する手羽元付き胸肉は傾斜壁に沿って外側へ引っ張る力を受ける。この引張力は上下ガイドレール間の間隔によって異なるので、上下ガイドレール間の間隔を調整することで、この引張力を調整できる。
【0034】
そのため、上下ガイドレール間の間隔を調整することで、上下ガイドレールで挟持する手羽元付き胸肉の肩関節部分の位置を調整できる。従って、切断箇所を胸肉側寄りとするか、あるいは手羽元側寄りとするかを決定できるので、顧客又は市場のニーズ等に応じて、胸肉又は手羽肉の分量を調整できる。