【発明が解決しようとする課題】
【0009】
良好な熱安定性を示し、かつ良好な効率と高い色純度とを有するOLEDを作製するのに適した、OLED用の発光材料を提供することは、本発明の目的である。
【0010】
本目的は、一般式(I)
M[L
1]
q[L
2]
r[L
3]
s (I)
[式中、
Mは、金属原子であり、
L
1は、非荷電の一価または二価アニオン性の単座または二座であってよい配位子であり、これは好ましくは、式(II)
【化2】
[式中、
R
1は、N含有基であり、
【化3】
は、少なくとも22000cm
-1の三重項エネルギーを有する単位である]
の化合物に基づく一価アニオン性の二座配位子であり、
L
2は、単座または二座であってよい一価または二価アニオン性配位子であり、
L
3は、非荷電の単座または二座配位子であり、
qは、配位子L
1の数であって、qは1、2、または3であり、配位子L
1はq>1の場合に同一または異なってもよく、
rは、配位子L
2の数であって、rは0〜4であり、配位子L
2はr>1の場合に同一または異なってもよく、
sは、配位子L
3の数であって、sは0〜4であり、配位子L
3はs>1の場合に同一または異なってもよく、
q+r+sの和は、使用する金属Mの酸化段階と配位数、および配位子L
1、L
2、およびL
3の配座数、ならびに配位子L
1およびL
2の電荷に依存する]
の有機金属錯体の提供によって達成される。
【0011】
本発明による式(I)の有機金属錯体は、OLEDに使用したときの傑出した効率を特徴とするが、これは特にこれらがOLEDの発光層中に高濃度で存在しうるためであり、また二量体の形成、ひいては励起状態の消滅の抑制が可能であるためである。
【0012】
さらに、本発明の有機金属錯体を使用した場合、高い色純度を有する発光を得ることができ、本発明による有機金属錯体は、高い熱安定性を有する。
【0013】
本発明の有機金属錯体は、少なくとも22000cm
-1の三重項エネルギーを有し(低温光ルミネセンス測定によって判定)、好ましくは22000cm
-1〜28230cm
-1、より好ましくは22000〜25000cm
-1の三重項エネルギーを有する少なくとも1つの単位を備える。本出願に関して、三重項エネルギーは、第1三重項準位のエネルギーを意味すると理解される。
【0014】
式(I)の本発明の有機金属錯体中の配位子L
1は、好ましくは、少なくとも16000cm
-1、好ましくは16000cm
-1〜19500cm
-1、より好ましくは16000〜18500cm
-1の三重項エネルギーを有する。
【0015】
本発明の有機金属錯体は、一般に電磁スペクトルの可視領域、好ましくは400nm〜800nm、より好ましくは450nm〜800nm、最も好ましくは490nm〜750nmにおいて、エレクトロルミネセンスを示す。
【0016】
式(II)の化合物に基づく配位子L
1中のR
1基は、本発明によると、N含有基である。この基は、好ましくは置換または非置換であってもよい複素環基であり、より好ましくは少なくとも1つの窒素原子を含むN−複素環基である。最も好ましくは、R
1基は、置換または非置換であってもよい単環式、二環式、または三環式の複素環式芳香族基である。R
1基は、非常に好ましくは、ピリジルもしくはベンゾチアジル基、またはトリアゾリル基、イソオキサゾリル基、もしくはピラゾリル基であり、これらは置換または非置換であってもよい。R
1基の適切な置換基は、以下に言及する適切な置換基である。極めて好適な実施形態において、R
1基は非置換である、すなわちR
1基の全ての置換可能な位置は水素原子で置換されている。
【0017】
式(II)の化合物に基づく配位子L
1中の少なくとも22000cm
-1の三重項エネルギーを有する単位は、当業者に既知のいかなる単位でもよく、言及した三重項エネルギーを有し、有機金属錯体を形成するのに適している。この単位は、配位子L
1が基づいている式(II)の化合物が好ましくは一般式(IIa)
【化4】
[式中、R
1基は上記にすでに定義されているとおりであり、さらなる基および添え字はそれぞれ以下のように定義される:
R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、C
1〜C
20−アルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
3〜C
18−シクロアルキル、3〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロシクロアルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールオキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、5〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロアリール(前述の基は、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、−C(O)R’、−C(O)OR’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアミノである)で置換または非置換でもよい)、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、ホスホン酸、リン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホリル、スルホニル、スルホン酸、硫酸、アミノ、ポリエーテル、シリル−C
1〜C
20−アルキル、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、−C(O)R’、−C(O)R’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアミノである)であり、
R
2、R
3、およびR
4は、好ましくはそれぞれ独立して、C
1〜C
20−アルキル、好ましくはC
1〜C
8−アルキル;C
0〜C
20−アルキレン−C
3〜C
18−シクロアルキル、好ましくはC
0〜C
6−アルキレン−C
5〜C
6−シクロアルキル;3〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロシクロアルキル、好ましくは5もしくは6個の環原子を有するC
0〜C
6−アルキレンヘテロシクロアルキル;C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、好ましくはC
0〜C
6−アルキレン−C
1〜C
8−アルコキシ;C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールオキシ、好ましくはC
0−C
8−アルキレン−C
6−アリールオキシ;C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、好ましくはC
0〜C
6−アルキレン−C
6−アリール;5〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロアリール、好ましくは5もしくは6個の環原子を有するC
0〜C
6−アルキレンヘテロアリールであり、前述の基は非置換または置換されていてもよく、好適な置換基は、アルキル、好ましくはC
1〜C
8−アルキル;アルコキシ、好ましくはC
1〜C
8−アルコキシ;ハロゲン、好ましくはF、Cl、Br、I、より好ましくはF、Cl;あるいは擬ハロゲン、好ましくはCN、SCN、OCN、N
3、CNO、SeCN、より好ましくはCN、SCNであり、
oは、0〜3であり、R
3基は、o>1の場合に同一または異なってもよく、
n、pは、それぞれ独立して0〜2であり、R
2もしくはR
4基は、nもしくはp>1の場合に同一または異なってもよく、
X
2は、N、CH、またはCR
2であり、
X
3は、N、CH、またはCR
3であり、
X
4は、それぞれ独立して、N、CH、またはCR
4である]
を有するように、好ましくはトリフェニレンまたはその誘導体に基づく単位である。
【0018】
本出願に関して、アルキル、アルキレン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、擬ハロゲン、アミノ、ホスホン酸、リン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホリル、スルホニル、スルホン酸、硫酸、ポリエーテル、シリルアルキル、シリルアルキレンアリール、およびシリルアルキレンアルコキシという用語は、一般的にそれぞれ以下のように定義され、特に好適な定義は、個別の基の個々の定義において明記されている。
【0019】
アルキルは、最長アルキル鎖中に1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する基を意味すると理解される。このアルキル基は、分岐または非分岐であってよく、また場合によっては、1つ以上のヘテロ原子、例えばSi、N、もしくはS、好ましくはN、O、もしくはSが介在していてもよい。さらに、アルキル基は、以下にアリール置換基について明記されている1つ以上の置換基で置換されていてもよい。アルキル基は、より好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、およびCF
3からなる群から選択される。
【0020】
シクロアルキル基は、3〜18個の炭素原子、好ましくは5〜8個の炭素原子、より好ましくは5もしくは6個の炭素原子の基本骨格を有する環状アルキル基を意味すると理解される。適切な基本骨格は、例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。シクロアルキル基の基本骨格は、非置換でも(すなわち、全ての置換可能な炭素原子が水素原子を有する)、あるいは基本骨格の1つの、1つを超える、または全ての置換可能な位置において置換されていてもよい。適切な置換基は、アリール基について以下に明記されている置換基である。特に好適なシクロアルキル基は、シクロヘキシルおよびシクロペンチルである。
【0021】
ヘテロシクロアルキル基は、基本骨格中に3〜18個の環原子、好ましくは5もしくは6個の環原子を有する基を意味すると理解される。さらに、ヘテロシクロアルキル基は、N、O、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む。ヘテロシクロアルキル基は、基本骨格の1つの、1つを超える、または全ての置換可能な位置において置換されていてもよい。適切な置換基は、アリール基について明記されている置換基である。
【0022】
アリールは、芳香環または複数の縮合芳香環から形成された、6〜18個、好ましくは6〜10個、より好ましくは6個の炭素原子の基本骨格を有する基を意味すると理解される。適切な基本骨格は、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニルである。この基本骨格は、非置換でも(すなわち、全ての置換可能な炭素原子が水素原子を有する)、あるいは基本骨格の1つの、1つを超える、または全ての置換可能な位置において置換されていてもよい。適切な置換基は、例えば、前述のアルキル基、アリール基、好ましくはC
6−アリール基(さらに置換または非置換であってもよい)、ヘテロアリール基、好ましくは少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロアリール基、より好ましくはピリジル基、またはドナー作用またはアクセプタ作用を有する基である。ドナー作用またはアクセプタ作用を有する適切な基は、以下に明記する。最も好ましくは、アリール基は、メチル、F、Cl、CN、アリールオキシ、およびアルコキシからなる群から選択される置換基を有する。アリール基は、好ましくはC
6〜C
18−アリール基、より好ましくはC
6〜C
10−アリール基、最も好ましくはC
6−アリール基であり、これは前述の置換基のうちの0、1、もしくは2個で置換されていて、C
6−アリール基の場合、1つの置換基がアリール基のさらなる結合部位のオルト位、メタ位、もしくはパラ位に配置され、2つの置換基の場合には、これらはそれぞれアリール基のさらなる結合部位のメタ位もしくはオルト位に配置されてもよく、あるいは1つの基がオルト位に、1つの基がメタ位に、または1つの基がオルト位もしくはメタ位に、さらなる基がパラ位に配置される。
【0023】
ヘテロアリール基は、5〜18個の環原子、好ましくは5もしくは6個の環原子を有する基を意味すると理解される。環原子のうちの少なくとも1つはヘテロ原子であり、好適なヘテロ原子は、N、O、およびSからなる群から選択されるものである。ヘテロアリール基は、好ましくは1個または2個のヘテロ原子を有する。基本骨格は、より好ましくはカルバゾール、ピリジン、ピロール、フラン、ピラゾール、イミダゾール、およびチオフェンから選択される。基本骨格は、基本骨格の1つの、1つを超える、または全ての置換可能な位置において置換されていてよい。適切な置換基は、アリール基についてすでに明記したものと同様である。
【0024】
アルコキシ基は、アルキル基が上記で明記されているように定義できるO−アルキル基を意味すると理解される。好適なアルコキシ基の一例は、OMeである。
【0025】
アリールオキシ基は、O−アリール基を意味すると理解され、適切なアリール基は上記に明記されている。適切なアリールオキシ基の一例は、フェノキシ基である。
【0026】
「C
0〜C
20−アルキレン」という表現は、相当する基または基が基本骨格に直接結合していてもよく(C
0−アルキレン)、あるいは1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個、最も好ましくは1もしくは2個の炭素原子を有するアルキレン基を介して結合していてもよい(C
1〜C
20−アルキレン、好ましくはC
1〜C
10−アルキレン、より好ましくはC
1〜C
6−アルキレン、最も好ましくはC
1〜C
2−アルキレン)ことを意味すると理解される。アルキレン基は前述のアルキル基に相当するが、アルキレン基がさらなる基との2つの結合部位を有する点が異なる。例えば、好適なC
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール基は、ベンジル基である。
【0027】
本出願に関して、ドナー作用またはアクセプタ作用を有する基は、以下の基を意味すると理解される。
【0028】
ドナー作用を有する基は、+I効果および/または+M効果を有する基を意味すると理解され、アクセプタ作用を有する基は、−I効果および/または−M効果を有する基を意味すると理解される。ドナー作用またはアクセプタ作用を有する適切な基は、ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、I、より好ましくはF、Cl、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニルおよびカルボニルオキシ、アミン基、アミド基、CH
2F基、CHF
2基、CF
3基、CN基、チオ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィド基、ニトロ基、OCN、ボラン基、シリル基、スズ酸基、イミノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾール基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ホスフィンオキシド基、ヒドロキシル基、またはSCN基である。F、Cl、CN、アリールオキシ、およびアルコキシは極めて好ましい。
【0029】
擬ハロゲンは、CN、SCN、OCN、N
3、CNO、およびSeCN、好ましくはCNまたはSCNから選択される基を意味すると理解される。
【0030】
ハロゲンは、F、Cl、Br、およびI、好ましくはFまたはClから選択される基を意味すると理解される。
【0031】
「アミノ」という表現は、各R基が、独立して、水素、C
1〜C
6−アルキル、C
1〜C
6−アルキレン−C
6H
5、およびC
6〜C
18−アリールから選択される−NR
2基であって、2つのR基は、さらに窒素原子と一緒に4〜6員、好ましくは5〜6員の複素環を形成してもよく、これは場合によってはC
1〜C
6−アルキル基、好ましくはC
1〜C
6−アルキル、ベンジル、もしくはフェニルで置換されていてもよい。
【0032】
ホスホン酸は、R基が、それぞれ独立して、水素、アルキル、およびアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、およびベンジルから選択される、−P(O)(OR)
2基を意味すると理解される。さらにR基は、カチオン、例えばNa
+、K
+、Mg
2+、およびCa
2+でもよい。
【0033】
リン酸は、R基が、それぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、またはベンジルである、−OP(O)(OR)
2を意味すると理解される。さらにR基は、例えばNa
+、K
+、Mg
2+、およびCa
2+から選択されるカチオンでもよい。
【0034】
ホスフィンは、R基が、それぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、またはベンジルである、−P(R
2)を意味すると理解される。
【0035】
ホスフィンオキシドは、R基が、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、またはアミノ、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、ベンジル、または−NR’
2(R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、またはベンジルである)である、−P(O)R
2を意味すると理解される。
【0036】
スルホニルは、Rが、水素、アルキル、アリール、またはアミノ、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、ベンジル、または−NR’
2(R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、またはベンジルである)である、−S(O)
2Rを意味すると理解される。
【0037】
スルホン酸は、Rが、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、またはベンジルである、−S(O)
2ORを意味すると理解される。さらにRは、Na
+、K
+、Mg
2+、またはCa
2+から選択されるカチオンでもよい。
【0038】
硫酸は、Rが、水素、アルキル、またはアリール、好ましくは、水素、C
1〜C
6−アルキル、フェニル、またはベンジルである、−OS(O)
2ORを意味すると理解される。さらにRは、Na
+、K
+、Mg
2+、またはCa
2+から選択されるカチオンでもよい。
【0039】
ポリエーテル基は、−(O−CHR)
n−OH基および−(O−CH
2−CHR)
n−H基(Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲンから選択され、nは1〜250である)から選択される基を意味すると理解される。
【0040】
シリル−C
1〜C
20−アルキルは、R基がそれぞれ水素またはアルキル、好ましくはC
1〜C
6−アルキルまたは水素であるSiR
3基を意味すると理解される。
【0041】
シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールは、Rが、独立して、アリール、好ましくはC
6〜C
18−アリール、より好ましくはフェニル(アリール基がSi(C
0−アルキレン)に直接結合している)、およびC
1〜C
20−アルキレンアリール基、好ましくはC
1〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、より好ましくはC
1〜C
6−アルキレンフェニルから選択される、−SiR
3基を意味すると理解される。
【0042】
シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ基は、C
0−アルキレン基が存在し、R基がC
1〜C
20−アルキル基、好ましくはC
1〜C
6−アルキル基である、−Si(OR)
3基を意味すると理解される。さらに前述の基は、−Si−C
1〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ基、好ましくは−Si−C
1〜C
6−アルキレン−C
1〜C
6−アルコキシ基を意味すると理解される。
【0043】
−C(O)R’、−C(O)R’’、−OC(O)R’’’、−C(O)OR’’’’基において、R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアミノ、好ましくは水素、C
1〜C
6−アルキル、C
3〜C
8−シクロアルキル、3〜8個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、C
6〜C
18−アリール、好ましくはフェニル、5〜18個の環原子を有するヘテロアリール、または上記に定義されたとおりのアミノと定義される。
【0044】
二座配位子は、2箇所で金属原子Mに配位した配位子を意味すると理解される。
【0045】
単座配位子は、配位子上の1箇所で金属原子Mに配位した配位子を意味すると理解される。
【0046】
使用する金属Mの配位数によって、また使用する配位子L
1、L
2、およびL
3の性質および数によって、同じ遷移金属Mおよび同じ性質および数の配位子を用いて、相当する金属錯体の様々な異性体が存在しうる。本発明は、それぞれの場合に、式(I)の遷移金属錯体の個々の異性体、およびあらゆる所望の混合比での異なる異性体の混合物に関する。一般的に、式(I)の遷移金属錯体の様々な異性体は、当業者に既知の方法によって、例えばクロマトグラフィー、昇華、または結晶化によって分離することができる。
【0047】
式(IIa)の化合物において、添え字n、o、およびpは、それぞれ0、1、2、もしくは3(添え字o)、または0、1、もしくは2(添え字nおよびp)でよい。添え字n、o、およびpが0の場合、トリフェニレン骨格またはその誘導体の相当する置換可能な位置は、水素原子で置換される。
【0048】
R
2、R
3、およびR
4基の好適な実施形態は、上記に明記した。R
2、R
3、およびR
4は、より好ましくは、それぞれC
1〜C
4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、i−ブチル、もしくはtert−ブチル、ハロゲン置換C
1〜C
4−アルキル、好ましくはF置換アルキル、例えばCF
3、C
1〜C
4−アルコキシ、例えばOMe、OEt、OnPr、OiPr、OnBu、OsecBu、OiBu、OtertBu、ハロゲン、好ましくはF、または擬ハロゲン、好ましくはCNである。
【0049】
X
2、X
3、およびX
4基中のR
2、R
3、およびR
4基は、それぞれ独立して、R
2、R
3、およびR
4基について上記に明記した定義を有する。
【0050】
本発明の好適な実施形態において、式(II)のトリフェニレン誘導体中の基および添え字は、それぞれ以下:
R
1は、N含有基、好ましくは置換または非置換であってもよい複素環基、より好ましくは少なくとも1つの窒素原子を含むN−複素環基、最も好ましくは置換または非置換であってもよい単環式、二環式、または三環式の複素環式芳香族基、非常に好ましくはピリジルもしくはベンゾチアジル基、またはトリアゾリル基、イソオキサゾリル基、もしくはピラゾリル基であり、これらは置換または非置換であってもよく、
R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、C
1〜C
20−アルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
3〜C
18−シクロアルキル、3〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロシクロアルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールオキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、5〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロアリール(前述の基は、ヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアミノで置換または非置換でもよい)、擬ハロゲン、またはハロゲンであり、さらなる好適なR
2、R
3、およびR
4基は、上記に明記されており、
oは、0〜3であり、R
3基は、o>1の場合に同一または異なってもよく、
n、pは、それぞれ独立して0〜2であり、R
2もしくはR
4基は、nもしくはp>1の場合に同一または異なってもよく、
X
2は、CHまたはCR
2であり、
X
3は、CHまたはCR
3であり、
X
4は、それぞれ独立して、CHまたはCR
4であると定義される。
【0051】
式(II)の化合物において、X
2、X
3、およびX
4は、最も好ましくは、それぞれCHである。さらなる極めて好適な実施形態において、添え字n、o、およびpはそれぞれ0である。
【0052】
一般式(I)の有機金属錯体中の金属原子Mは、好ましくは、相当する金属原子に可能なあらゆる酸化状態の、Fe、Cu、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、Re、Ag、Cu、Au、Hg、Cd、Nb、Zr、Ca、Cr、Mo、W、Mn、Tc、B、Al、Si、アルカリ金属類、およびアルカリ土類金属類、好ましくは、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、およびAuからなる群から選択される金属原子である。金属原子Mは、より好ましくはIr、Rh、Ru、Pd、およびPtからなる群から選択され、最も好ましくはIr、Pd、およびPtの群から選択される。金属原子Mは、非常に好ましくはIr(III)である。
【0053】
R
1基は、より好ましくは、式
【化5】
[式中、Qは、それぞれの場合に独立してCR
aまたはNであり、結合部位のオルト位にある少なくとも1つのQ基はNである。一般的に、前述のR
1基は、合計1、2、3、もしくは4個の窒素原子、好ましくは1、2、もしくは3個の窒素原子、より好ましくは1もしくは2個の窒素原子を含む。前述のR
1基のさらなる環員は、炭素原子である。R
aは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、またはドナー作用またはアクセプタ作用を有する基である]の基であるか、
または、式
【化6】
[式中、Qは、それぞれの場合に独立してCR
aまたはNであり、結合部位のオルト位にある少なくとも1つのQ基はNであり、Q’はCR
a2、O、S、またはNR
cである。一般的に、前述のR
1基(a)は、合計1、2、3、もしくは4個の窒素原子、好ましくは1、2、もしくは3個の窒素原子、より好ましくは1もしくは2個の窒素原子を含む。前述のR
1基(b)は、一般に合計1、2、3、もしくは4個の窒素原子、好ましくは1、2、もしくは3個の窒素原子、より好ましくは1もしくは2個の窒素原子を含む。R
1基(b)が、合計1、2、もしくは3個の窒素原子および1個の酸素原子もしくは1個の硫黄原子、好ましくは1もしくは2個の窒素原子および1個の酸素原子もしくは1個の硫黄原子、より好ましくは1個の窒素原子および1個の酸素原子もしくは1個の硫黄原子を含むことも同様に可能である。前述のR
1基(d)は、一般に合計1、2、3、もしくは4個の窒素原子、好ましくは1、2、もしくは3個の窒素原子、より好ましくは1もしくは2個の窒素原子を含む。前述のR
1基のさらなる環員は、炭素原子である。R
a、R
b、およびR
cは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、CF
3、CN、アルコキシ、またはFである]の基である。
適切なR
1基の例は、
【化7】
[式中、R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれR
aについて定義したとおりでよい]である。
【0054】
さらに、前述のR
1基は縮合基をさらに有してもよく、これはベンゾ縮合が好ましい。適切なベンゾ縮合R
1基の一例は、
【化8】
である。
【0055】
特に好適な式IIのトリフェニレン誘導体の例を以下に明記するが、トリフェニレン骨格は、場合によってはさらなる置換基を有していてもよく、および/またはトリフェニレン基本骨格の1つ以上のCH基は、Nで置換されていてもよい。
【0056】
【化9】
【0057】
一般式(II)の化合物に基づく配位子L
1は、非荷電の一価アニオン性または二価アニオン性の単座または二座であってよい。一般式(I)の有機金属錯体中の配位子L
1は、好ましくは一価アニオン性の二座配位子である。
【0058】
一般式(I)の有機金属錯体は、1、2、もしくは3個の配位子L
1を含み、式(I)の有機金属錯体中に1つを超える配位子L
1が存在する場合、配位子L
1は同一または異なってもよい。本発明の一実施形態において、一般式(I)の有機金属錯体は、2つの配位子L
1を含む。これは、一般式(I)の有機金属錯体におけるqが1、2、もしくは3、好ましくは1もしくは2、より好ましくは2であることを意味し、配位子L
1は、q>1の場合に同一または異なってもよい。
【0059】
一般式(I)の有機金属錯体中の配位子L
2は、単座または二座であってよい一価アニオン性または二価アニオン性の配位子である。
【0060】
適切な単座または二座であってよい一価アニオン性または二価アニオン性の配位子L
2は、単座または二座の一価アニオン性または二価アニオン性配位子として通常使用されている配位子である。
【0061】
適切な一価アニオン性単座配位子は、例えば、ハロゲン化物、特にCl
-およびBr
-、擬ハロゲン化物、特にCN
-、シクロペンタジエニル(Cp
-)、水素化物、シグマ結合によって金属Mに結合したアルキル基、例えばCH
3、シグマ結合によって金属Mに結合したアルキルアリール基、例えばベンジルである。
【0062】
適切な一価アニオン性二座配位子は、例えば、アセチルアセトネートおよびその誘導体、ピコリネート、シッフ塩基、アミノ酸、アリールアシル、例えばフェニルピリジン、ならびにWO02/15645号に明記されているさらなる二座一価アニオン性配位子であり、好ましくはアセチルアセトネートおよびピコリネートである。
【0063】
適切な二価アニオン性二座配位子は、例えば、ジアルコキシド、二炭酸、ジカルボン酸、ジアミド、ジイミド、ジチオレート、ビスシクロペンタジエニル、ビスホスホン酸、ビススルホン酸、および3−フェニルピラゾールである。
【0064】
特に好適な適切な配位子L
2は、以下の配位子(a)〜(f)である。
【0065】
【化10】
[式中、
配位子(a)〜(f)のそれぞれにおけるR
5は、独立して、水素、C
1〜C
20−アルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
3〜C
18−シクロアルキル、3〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロシクロアルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールオキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、5〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロアリール(前述の基は、それぞれ、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、−C(O)R’、−C(O)OR’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアミノである)で置換または非置換であってもよい)、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、ホスホン酸、リン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホリル、スルホニル、スルホン酸、硫酸、スルホン、アミノ、ポリエーテル、シリル−C
1〜C
20−アルキル、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、−C(O)R’、−C(O)OR’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアミノである)であり;R
5は、好ましくは水素、C
1〜C
6−アルキル、C
0−C
4−アルキレン−C
3〜C
8−シクロアルキル、C
0−C
4−アルキレン−C
6〜C
18−アリールであり、
X’は、それぞれ独立して、CR
5またはNであり、
Y’は、C(R
5)
2、NR
5、O、またはSであり、
Y’’は、N
-であり、
n’は、1,2、3、もしくは4であり、
o’は、1、2、3、4、もしくは5であり、
p’は、1もしくは2である。]
配位子L
2は、最も好ましくは、β−ジケトナート、例えばアセチルアセトネートおよびその誘導体、ピコリネート、アミノ酸アニオン、および一般式(b)の一価アニオン性二座配位子(式(b)中の全てのX’基は、より好ましくはNである)からなる群から選択される。
【0066】
一般式(f)の配位子中の波線は、全ての可能なシス/トランス異性体が一般式(f)に包含されることを意味する。
【0067】
式(I)の本発明の有機金属錯体は、0、1、2、3、もしくは4個の配位子L
2を有してもよい。式(I)の有機金属錯体中に1つを超える配位子L
2が存在する際、配位子L
2は同一または異なってもよい。一般式(I)の有機金属錯体は、好ましくは1または2個の配位子L
2を有する。これは、式(I)の有機金属錯体におけるrが0〜4、好ましくは1もしくは2であることを意味する。
【0068】
式(I)の有機金属錯体は、さらに場合によっては、1つ以上の非荷電の単座または二座配位子L
3を有してもよい。
【0069】
適切な非荷電の単座または二座配位子L
3は、好ましくは、ホスフィン(モノホスフィンおよびビスホスフィン);ホスホン酸(モノホスホン酸およびビスホスホン酸、ならびにそれらの誘導体);砒酸(モノ砒酸およびビス砒酸、ならびにそれらの誘導体);亜リン酸(モノ亜リン酸およびビス亜リン酸);CO;ピリジン(モノピリジンおよびビスピリジン);金属Mとπ錯体を形成する、ニトリル、ジニトリル、アリル、ジイミン、非共役ジエンおよび共役ジエンからなる群から選択される。特に好適な非荷電の単座または二座配位子L
3は、ホスフィン(モノホスフィンおよびビスホスフィンの両方)、好ましくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、もしくはアルキルアリールホスフィン、より好ましくはPAr
3(Arは置換または非置換のアリール基であり、PAr
3中の3つのアリール基は同一または異なってもよい)、より好ましくはPPh
3、PEt
3、PnBu
3、PEt
2Ph、PMe
2Ph、PnBu
2Ph;ホスホン酸およびその誘導体、砒酸およびその誘導体、亜リン酸、CO;ピリジン(モノピリジンおよびビスピリジン)であって、アルキル基もしくはアリール基で置換されていてもよいピリジン;金属Mとπ錯体を形成するニトリルおよびジエン、好ましくはη
4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、η
4−2,4−ヘキサジエン、η
4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、η
4−1,4−ジブチル−1,3−ブタジエン、η
4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン、およびη
2もしくはη
4−シクロオクタジエン(それぞれの場合に1,3および1,5)、より好ましくは1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、ブタジエン、η
2−シクロオクテン、η
4−1,3−シクロオクタジエン、およびη
4−1,5−シクロオクタジエンからなる群から選択される。極めて好適な非荷電単座配位子は、PPh
3、P(OPh)
3、CO;ピリジン、ニトリル、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。適切な非荷電の単座または二座配位子は、好ましくは、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、η
4−シクロオクタジエン、およびη
2−シクロオクタジエン(それぞれの場合に1,3および1,5)である。
【0070】
式(I)の有機金属錯体は、0、1、2、3、もしくは4個の非荷電の単座または二座配位L
3を有してもよい。式(I)の遷移金属錯体中に1つを超える配位子L
3が存在する場合、配位子L
3は同一または異なってもよい。好適な実施形態において、一般式(I)の有機金属錯体は、0個の配位子L
3を含む。これは一般式(I)の有機金属錯体におけるsが、0〜4、好ましくは0であることを意味する。
【0071】
特に好適な実施形態において、本発明は、式(I)
[式中、
Mは、Ir(III)であり、
L
2は、一価アニオン性二座配位子であり(好適な一価アニオン性二座配位子は、すでに上記に明記した)、
qは、1もしくは2、好ましくは2であり、
rは、1もしくは2であり、
sは、0であり、
L
1は、式(IIa)のトリフェニレン誘導体に由来する一価アニオン性二座配位子であり(好適なトリフェニレン誘導体は、すでに上記に明記した)、
q+r=3である]
の有機金属錯体に関する。
【0072】
特に好適な式(I)の有機金属錯体は、以下の式(Ia)、(Ib)、および(Ic)、ならびに(Id)、(Ie)、および(If)
【化11】
【0073】
【化12】
【0074】
【化13】
の有機金属錯体である。
【0075】
本発明の有機金属錯体(I)は、当業者に既知の全ての方法によって製造することができる。
【0076】
好適な実施形態において、製造は、
(a)所望の金属Mを備え、また場合によっては1つ以上の配位子L
3を備える金属塩または金属錯体を第1の配位子L
1もしくはL
2と反応させて、1つ以上の配位子L
1あるいは1つ以上の配位子L
2のいずれかを場合により1つ以上の配位子L
3に加えて有する金属錯体を生じさせるステップと、
(b)ステップ(a)で得た金属錯体を、ステップ(a)で得た金属錯体が1つ以上の配位子L
2を含む場合には第2の配位子L
1と反応させ、あるいはステップ(a)で得た金属錯体が1つ以上の配位子L
1を含む場合には1つの配位子L
2と反応させて、式(I)の有機金属錯体を得るステップであって、式(I)の有機金属錯体がいかなる配位子L
2も含まない場合、すなわち式(I)の有機金属錯体中のrが0である場合には省略されるステップ(b)と
によって実行される。
【0077】
適切な配位子から開始する有機金属錯体の製造のための反応条件は、当業者に既知である。
【0078】
式(I)の本発明の有機金属錯体は、特にOLEDに使用するための発光材料として適している。一般的に、発光材料は、1つ以上の適切な母体材料と一緒に使用される。本発明の遷移金属錯体の1つの利点は、その構造により、二量体の形成、ひいてはルミネセンス発生の消滅を伴わずに、OLED、特に発光層に高濃度で使用できることである。結果として、発光層の高いルミネセンス効率と長い寿命とを備えるOLEDを提供することが可能である。
【0079】
典型的には、1つ以上の式(I)の有機金属錯体は、OLEDの発光層中に、好ましくは1つ以上の母体材料と一緒に存在する。母体材料中の式(I)の有機金属錯体の濃度は、発光層に基づき、一般に>0〜≦100質量%、好ましくは≧5〜≦50質量%、より好ましくは≧10〜≦30質量%、また最も好ましくは≧11〜≦25質量%である。1つ以上の母体材料は、それに対応して、好ましくは濃度0〜<100質量%、好ましくは≧50〜≦95質量%、より好ましくは≧70〜≦90質量%、最も好ましくは75〜≦89質量%で存在する。
適切な母体材料は、当業者に既知である。適切な母体材料の例は、例えば、Organic Light−Emitting Materials and Devices(Optical Science and Engineering Series), Ed.: Z. Li, H. Meng, CRC Press Inc., 2006に公開されている。
【0080】
本出願は、式(I)の本発明の有機金属錯体、または少なくとも1つの式(I)の有機金属錯体を含む本発明の混合物の有機発光ダイオードにおける使用をさらに提供する。式(I)の有機金属錯体を有機発光ダイオードの発光層に使用することが好ましい。
【0081】
本発明は、式(I)の本発明の有機金属錯体の発光材料としての使用をさらに提供する。
【0082】
OLEDおよび適切なOLEDの構造は、当業者に既知である。
【0083】
本発明は、一般式(IIa)
【化14】
[式中、
R
1は、N含有基、好ましくは置換または非置換であってもよい複素環基、より好ましくは少なくとも1つの窒素原子を含むN−複素環基、最も好ましくは少なくとも1つの窒素原子を有し、置換または非置換であってもよい単環式、二環式、または三環式の複素環式芳香族基、非常に好ましくはピリジルもしくはベンゾチアジル基、またはトリアゾリル基、イソオキサゾリル基、もしくはピラゾリル基であり、これらは置換または非置換であってもよく、
R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、C
1〜C
20−アルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
3〜C
18−シクロアルキル、3〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロシクロアルキル、C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリールオキシ、C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、5〜18個の環原子を有するC
0〜C
20−アルキレンヘテロアリール(前述の基は、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、−C(O)R’、−C(O)OR’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアミノである)で置換または非置換でもよい)、ヒドロキシル、ハロゲン、擬ハロゲン、ホスホン酸、リン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホリル、スルホニル、スルホン酸、硫酸、アミノ、ポリエーテル、シリル−C
1〜C
20−アルキル、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
6〜C
18−アリール、シリル−C
0〜C
20−アルキレン−C
1〜C
20−アルコキシ、−C(O)R’、−C(O)OR’’、−OC(O)R’’’、−OC(O)OR’’’’(R’、R’’、R’’’、およびR’’’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアミノである)であり、
oは、0〜3であり、R
3基はo>1の場合に同一または異なってもよく、
n、pは、それぞれ独立して0〜2であり、R
2もしくはR
4基はnもしくはp>1の場合に同一または異なってもよく、
X
2は、N、CH、またはCR
2であり、
X
3はN、CH、またはCR
3であり、
X
4は、それぞれ独立してN、CH、またはCR
4である]
のトリフェニレン誘導体をさらに提供する。
【0084】
基ならびに添え字、R
1、R
2、R
3、R
4、n、o、p、X
2、X
3、およびX
4の定義の好適な実施形態は、上記に明記した。
【0085】
本発明のトリフェニレン誘導体は、
(i)Y基で官能化された式IVの芳香族化合物の相当するホウ素化合物との反応、例えば触媒反応(例えばPd含有触媒を使用してもよい)によって、アリールボロン酸またはアリールボロン酸誘導体(V)を製造するステップと:
【化15】
[式中、
Yは、ハロゲンであり、
R
5は、HまたはC
1〜C
6−アルキルであるか、あるいは2つのR
5基が酸素原子間に二原子架橋を形成し、架橋の原子は置換または非置換であってもよい]、
(ii)1当量のアリールボロン酸または式Vのアリールボロン酸誘導体と、2つのz基で官能化された式VIのビフェニル誘導体とのパラジウム触媒反応により、式VIIの化合物を得るステップと:
【化16】
[式中、zは、ハロゲンまたはOTfである]、
(iii)式VIIの化合物のパラジウム触媒分子内環化反応により、所望の式IIbのトリフェニレン誘導体を得るステップと、
を含む方法によって製造することができる。
【0086】
R
1が2−ピリジル基である、本発明のトリフェニレン誘導体を製造するための好適な方法を以下に例として示す。
【0087】
スキーム1
【化17】
【0088】
X、Y、Z、およびSは、それぞれ1つ以上の置換基を表わし、適切な置換基Y、Z、およびSは置換基(R
2)
n、(R
3)
o、および(R
4)
pに相当するが、これらはそれぞれ上記に定義されている。X基は、R
1基の置換基に相当し、好適な置換基は、上記に定義されているR
aおよびR
bである。適切な置換基X、Y、Z、およびSは、例えばMe、tBu、CF
3、F、およびOMeである。
【0089】
スキーム1のステップA、B、およびCにおいて、適切なアリールボロン酸または適切なアリールボロン酸誘導体(V)を製造する。まず、Y基(この場合Br)で官能化された式(IV)の芳香族化合物を製造する。R
1がピリジンである本スキームでは、ハロゲン(この場合Br)で官能化された相当するアリール基のピリジンとのアゾカップリングによって、式(IV)の化合物を製造する。得られた式(IV)の化合物(本スキームでは、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン)を、好ましくはパラジウム触媒反応によって、相当するアリールボロン酸または相当するアリールボロン酸誘導体(V)に変換する。適切な反応は、当業者に既知である。本スキームでは、塩基であるKOAcの存在下、触媒量のPd(dba)
3およびトリシクロヘキシルホスフィンの存在下で、2−(4−ブロモフェニル)ピリジンをビス(ピナコラト)ジボロンと反応させる。
【0090】
得られたアリールボロン酸または得られた式(V)のアリールボロン酸誘導体は、ステップD(本発明による方法のステップ(ii))において、2つのz基で官能化された式(VI)のビフェニル誘導体と反応させる。z基は、ハロゲンまたはOTfであり、スキーム1のこの例ではBrである。反応は、パラジウム触媒下で生じる。本スキーム1のステップDで使用するパラジウム触媒は、好ましくは、塩基であるNa
2CO
3存在下のPd(PPh)
4である。
【0091】
所望の式(IIa)のトリフェニレン誘導体を製造するために、スキーム1のステップE(本発明による方法のステップ(iii))において、パラジウム触媒分子内環化反応を実施する。本スキーム1で使用するパラジウム触媒は、塩基であるK
2CO
3存在下の触媒量のPd(OAc)
2である。
【0092】
ステップ(iii)で実施した所望の式(IIa)トリフェニレン誘導体を製造するためのパラジウム触媒分子内環化反応は、従来技術ではこれまで知られていなかった。縮合芳香族系(トリフェニレン誘導体)の直接合成がこのような方法で可能であることが発見された。
【0093】
一般スキーム2に示すように、2−トリフェニレンカルボン酸から開始して、本発明の式(IIa)のトリフェニレン誘導体を製造するさらなる経路が可能である。
【0094】
スキーム2
【化18】
【0095】
ステップ(i)において、当業者に既知の方法によって、2−トリフェニレンカルボン酸を相当する酸塩化物に変換する。反応は、当業者に既知のいかなる塩素化剤を用いて実施してもよく、例えば塩化チオニルを使用する。
【0096】
続いて、ステップ(ii)において、得られた酸塩化物を例えばo−アミノチオフェノールと反応させて、本発明の式(IIa)のトリフェニレン誘導体を得る。
【0097】
スキーム2は、単なる例に過ぎない。トリフェニレン骨格は、さらなる置換基を有してもよく、あるいはトリフェニレン骨格中に存在する炭素原子のうちのいくつかは、窒素原子で置換されていてもよい。
【0098】
使用するトリフェニレンカルボン酸は、当業者に既知の方法によって製造することができる。
【0099】
2−トリフェニレンカルボン酸を介した本発明のトリフェニレン誘導体の製造のさらなる経路をスキーム3に示す。スキーム3は、一例として、式(Id)および(Ie)の本発明のトリフェニレン誘導体を製造するための方法を示している。2−トリフェニレンカルボン酸の製造の経路は、同様にスキーム3に示す。
【0100】
スキーム3
【化19】
【0101】
適切な反応条件は、参考文献における類似する反応から選ぶことができる。スキーム3に明記する個々のステップに関して、適切な参考文献を以下に記載する。特に好適な反応条件は、そのあとの実施例の部分に明記する。
a)およびb) ジヒドロピレンに関する出版物と類似:D.M. Connor, S.D. Scott, D.M. Collard, Chr. L. Liotta, D.A. Schiraldi, J. Org. Chem. 1999, 64, 6888−6890
c)3−メチル−4−ニトロ安息香酸による出版物と類似:D.J. Sall, A.E. Arfesten, J.A. Bastian, M.L. Denney, C.S. Harms, J. Med. Chem., 1997, 40, 2843−2857
d)3−(1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル)アザビシクロ[2.2.2]オクタンによる出版物と類似:H.J. Wadsworth, S.M. Jenkins, B.S. Orlek, F. Cassidy, M.S.G. Clark, F. Brown, G.J. Riley, D. Graves, J. Hawkins, Chr. B. Naylor, J. Med. Chem. 1992, 35, 1280−1290
e)およびf)ヨード安息香酸に関する出版物に類似:S.E. Gibson et al. Chem. Eur. J. 2005, 11, 69−80
g)ベンズアルデヒドオキシムに関する出版物に類似:P. Aschwanden et al. Org. Lett. 2005, 7, 5741−5742
h)3−置換イソオキサゾールに関する出版物に類似:A. Baranski, Pol. J. Chem. 1982, 56, 1585−1589、およびR.G. Micetich, Can. J. Chem. 1970, 48, 467−476、およびS.−R. Sheng, X.−L. Liu, Q. Xu, C.−S. Song, Synthesis 2006, 14, 2293−2296
スキーム3は、一例に過ぎない。トリフェニレン骨格は、さらなら置換基を有してもよく、あるいはトリフェニレン骨格中に存在する炭素原子のうちのいくつかは、窒素原子で置換されていてもよい。
【0102】
トリフェニレン骨格から開始する本発明のトリフェニレン誘導体の製造のさらなる経路は、当業者に既知の方法と同じように、トリフェニレンの臭素化によって行なうことができる。スキーム4は、式(If)のトリフェニレン誘導体の製造の例としてこの経路を示す。
【0103】
スキーム4
【化20】
【0104】
適切な反応条件は、参考文献における類似する反応から選ぶことができる。スキーム4に明記する個々のステップに関して、適切な参考文献を以下に記載する。特に好適な反応条件は、そのあとの実施例の部分に明記する。
a) R. Breslow, Ronald B. Juan, Bernhard R.Q. Kluttz, C.−z. Xia, Tetrahedron 1982, 38, 863−867の出版物と類似
b) フェニルピラゾールに関する出版物と類似:J.C. Antilla, J.M. Baskin, T.E. Barder, S.L. Buchwald, J. Org. Chem, 2004, 69, 5578−5587
c
1) ジブロモクロロベンゼンに関する出版物と類似:K. Menzel, L. Dimichele, P. Mills, D.E. Frantz, T.D. Nelson, M.H. Kress, Syn. Lett. 2006, 12, 1948−1952
c
2) テトラブロモ芳香族化合物に関する出版物と類似:G. Dorman, J.D. Olszewski, G.D. Prestwich, Y. Hong, D.G. Ahem, David G. J. Org. Chem. 1995, 60, 2292−2297
c
3) 芳香族化合物の脱臭素化に関する出版物と類似:S. Arai, M. Oku, T. Ishida, T. Shioiri; Tetrahedron Lett. 1999, 40, 6785−6790
スキーム4は、一例に過ぎない。トリフェニレン骨格は、さらなる置換基を有してもよく、あるいはトリフェニレン骨格中に存在する炭素原子のうちのいくつかは、窒素原子で置換されていてもよい。具体的には、スキーム4による式(Id)および(Ie)の相当する本発明のトリフェニレン誘導体を製造することも可能である。
【0105】
さらに、本発明のトリフェニレン誘導体は、アリーンカップリングによっても得ることができる。一般スキーム5を以下に明記する。スキーム5aは、式(Id)、(Ie)、および(If)の化合物の製造の例を用いて、アリーンカップリングによる製造を示している。
【0106】
スキーム5
【化21】
【0107】
スキーム5a
【化22】
【0108】
反応条件は、例えば、Z. Liu, R. Larock, J. Org. Chem. 2007, 72, 223−232に開示されているような、メチルトリフェニレンの製造と類似している。特に好適な反応条件は、そのあとの実施例の部分に明記する。