特許第5819076号(P5819076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5819076
(24)【登録日】2015年10月9日
(45)【発行日】2015年11月18日
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20151029BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20151029BHJP
【FI】
   H01L21/304 622B
   B24B37/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-46673(P2011-46673)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2011-211178(P2011-211178A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2012年9月18日
【審判番号】不服2014-12513(P2014-12513/J1)
【審判請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2010-53528(P2010-53528)
(32)【優先日】2010年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成21年9月10日 社団法人 精密工学会主催の「2009年度精密工学会秋季大会 学術講演会」において文書をもって発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森永 均
(72)【発明者】
【氏名】玉井 一誠
(72)【発明者】
【氏名】浅野 宏
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 渡邊 真
【審判官】 栗田 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−181954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する用途で使用される少なくとも砥粒及び水を含有した研磨用組成物であって、界面活性剤を含有しない研磨用組成物中において、砥粒のゼータ電位をX[mV]、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位をY[mV]としたときにX×Y≦0の関係が成り立つようなゼータ電位を前記砥粒が有しており、
前記砥粒は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ダイヤモンド又は炭化ケイ素からなり、前記研磨対象物の表面のゼータ電位と前記砥粒の表面のゼータ電位が同一符号の組み合わせは選択されないことを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記研磨対象物は、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム又はリン化インジウムからなる、請求項1に記載の研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイス用基板材料及びパワーデバイス用基板材料とは、例えば、サファイアなどの酸化物、窒化ガリウムなどの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物をはじめとするセラミックをいう。また、化合物半導体材料とは、例えば、ヒ化ガリウムやヒ化インジウム、リン化インジウムをいう。
【0003】
これらの材料から形成される基板又は膜は一般に、酸化や錯化、エッチングといった化学的作用に対して安定であるため、研磨による加工が容易ではない。そのため、硬質材料を用いた研削や切削による加工が一般的である。しかしながら、研削や切削による加工では、高い平滑性を有する表面を得ることはできない。
【0004】
その一方、より高平滑な表面を得る目的で、比較的高濃度のコロイダルシリカを含んだ研磨用組成物を用いてサファイア基板を研磨すること(例えば特許文献1参照)や、コロイダルシリカを含んだ特定のpHを有する研磨用組成物を用いて炭化ケイ素基板を研磨すること(例えば特許文献2参照)も知られている。しかしながらこれらの場合、十分な研磨速度(除去速度)が得られず、高平滑な表面を得るのに時間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−44078号公報
【特許文献2】特開2005−117027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる研磨用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する用途で使用される少なくとも砥粒及び水を含有した研磨用組成物を提供する。界面活性剤を含有しない研磨用組成物中において、砥粒のゼータ電位をX[mV]、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位をY[mV]としたときにX×Y≦0の関係が成り立つようなゼータ電位を砥粒は有しており、前記砥粒は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ダイヤモンド又は炭化ケイ素からなり、前記研磨対象物の表面のゼータ電位と前記砥粒の表面のゼータ電位が同一符号の組み合わせは選択されない。
【0008】
た、研磨用組成物を用いて研磨される研磨対象物は、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム又はリン化インジウムからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、少なくとも砥粒及び水を含有する。この研磨用組成物は、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する用途、より具体的には、サファイアなどの酸化物、窒化ガリウムなどの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物をはじめとするセラミック、あるいはヒ化ガリウムやヒ化インジウム、リン化インジウムなどの化合物半導体からなる基板又は膜を研磨する用途で使用される。中でも、酸化や錯化、エッチングといった化学的作用に対して安定な材料からなる研磨対象物を研磨する用途、特にサファイア、窒化ガリウム又は炭化ケイ素からなる基板を研磨する用途で研磨用組成物は使用されることが好ましい。
【0011】
研磨用組成物中に含まれる砥粒は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ダイヤモンド又は炭化ケイ素からなるものであってもよいが、特に限定はされない。ただし、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素は、入手が比較的容易であることに加え、研磨用組成物を用いた研磨により高平滑で低欠陥の表面を得ることが容易である点で有利である。
【0012】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。
【0013】
研磨用組成物中の砥粒の含有量はまた、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の製造コストが低減するのに加えて、研磨用組成物を用いた研磨によりスクラッチの少ない表面を得ることが容易である。
【0014】
研磨用組成物中に含まれる砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上である。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。
【0015】
研磨用組成物中に含まれる砥粒の平均一次粒子径は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いた研磨により低欠陥で粗度の小さい表面を得ることが容易である。なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、BET法により測定される比表面積から算出される。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて行うことができる。
【0016】
研磨用組成物を用いて光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨するためには、研磨用組成物中に含まれる砥粒が研磨中の研磨対象物に対して静電気的に反発しないことが重要である。そのため、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位をX[mV]、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位をY[mV]としたときにX×Y≦0の関係が成り立つようなゼータ電位を有する砥粒が使用される。X×Y≦0の関係が成り立たない場合、すなわちX×Y>0の場合には、研磨用組成物中の砥粒が研磨中に研磨対象物に対して静電気的に反発し、その結果、砥粒によって研磨対象物が機械的研磨されにくくなるために、研磨用組成物を用いて高い研磨速度で研磨対象物を研磨することは難しい。研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させるためには、X×Yの値は−20以下であることが好ましい。
【0017】
X×Yの値はまた、−5000以上であることが好ましく、より好ましくは−2000以上である。X×Yの値が大きくなるにつれて、研磨後の研磨対象物の表面に付着した砥粒を洗浄により除去することが容易である。
【0018】
研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位の値及び研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位の値は、例えば、研磨用組成物のpHの影響を受ける。従って、一種類又は二種類以上のpH調整剤を研磨用組成物に添加することにより、X×Y≦0、好ましくはX×Y≦−20の関係が成り立つようにしてもよい。使用されるpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよい。
【0019】
あるいは、吸着性の物質を研磨用組成物に添加した場合には、研磨対象物の表面にその物質が吸着することによって研磨対象物のゼータ電位の値が変化する。従って、このような吸着性の物質を研磨用組成物に添加することにより、X×Y≦0、好ましくはX×Y≦−20の関係が成り立つようにしてもよい。使用される吸着性の物質は、研磨対象物の種類に応じて適宜に選択されることが望ましいが、例えば、アニオン性、カチオン性、ノニオン性又は両性の界面活性剤、あるいは各種の有機物や金属イオンであってもよい。
【0020】
また、砥粒の表面をドープや有機官能基修飾などの方法で改質して砥粒のゼータ電位を調整することを通じて、X×Y≦0、好ましくはX×Y≦−20の関係が成り立つようにしてもよい。
【0021】
砥粒のゼータ電位の値及び研磨対象物のゼータ電位の値は、例えば電気泳動光散乱法又は電気音響分光法により測定され、例えば大塚電子株式会社製の“ELS−Z”又はディスパージョンテクノロジー社(Dispersion Technology Inc.)製の“DT−1200”を用いて測定することができる。なお、研磨対象物のゼータ電位の測定は、研磨対象物の材料と同じ材料からなる微粒子のゼータ電位の測定によって代替することができる。あるいは、ゼータ電位が既知の微粒子を含んだ液中に研磨対象物を浸漬し、液中から取り出してから流水で10秒間前後洗浄した後の研磨対象物の表面を例えば走査型電子顕微鏡を使って観察してもよい。この場合、洗浄後の研磨対象物の表面に付着している微粒子の量から同液中での研磨対象物のゼータ電位の値の符号、すなわち正か負かを知ることができる。
【0022】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
本実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位をX[mV]、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位をY[mV]としたときにX×Y≦0の関係が成り立つようなゼータ電位を有する砥粒が使用されている。すなわち、研磨用組成物中の砥粒は、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物に対して静電気的に反発しないようなゼータ電位を有している。そのため、研磨用組成物による研磨対象物の研磨中に研磨用組成物中の砥粒が研磨対象物に対して静電気的に反発することはなく、砥粒による研磨対象物の機械的研磨が効率よく進行する。従って、本実施形態の研磨用組成物によれば、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる。
【0023】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の砥粒を含有してもよい。この場合、一部の砥粒については必ずしも研磨中の研磨対象物に対して静電気的に反発しないようなゼータ電位を有する必要はない。ただし、より高い研磨速度を得るためには、いずれの砥粒も研磨中の研磨対象物に対して静電気的に反発しないようなゼータ電位を有することが好ましい。
【0024】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、防腐剤のような公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
【0025】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
(実施例1,2及び比較例1)
平均一次粒子径が80nmのコロイダルシリカを含んだコロイダルシリカゾルを水で希釈し、さらに必要に応じてpH調整剤を加えることにより、実施例1,2及び比較例1の研磨用組成物を調製した。実施例1,2及び比較例1の研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量はいずれも20質量%である。pH調整剤としては塩酸及び水酸化カリウムを適宜に使用した。そして、各例の研磨用組成物を用いて表1に示す条件でサファイア基板の表面(C面(<0001>)を研磨した。使用したサファイア基板はいずれも、直径52mm(約2インチ)の同種のものである。
【0026】
各研磨用組成物のpH、各研磨用組成物中のコロイダルシリカのゼータ電位、及び各研磨用組成物を用いて研磨中のサファイア基板のゼータ電位は表2に示すとおりである。また、各研磨用組成物を用いた研磨の前後にサファイア基板の重量を測定し、研磨前後の重量の差から計算して求めた研磨速度を表2の“研磨速度”欄に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
表2に示すように、実施例1,2の研磨用組成物を用いてサファイア基板を研磨した場合にはコロイダルシリカのゼータ電位とサファイア基板のゼータ電位の積がゼロ以下の値である一方、比較例1の研磨用組成物を用いてサファイア基板を研磨した場合にはその積はゼロを上回る値であった。そして、実施例1,2の研磨用組成物の場合、比較例1の研磨用組成物の場合に比べて高い研磨速度が得られた。
【0029】
(実施例3及び比較例2)
平均一次粒子径が80nmのコロイダルシリカを含んだコロイダルシリカゾルを水で希釈し、さらに必要に応じてpH調整剤を加えることにより、実施例3及び比較例2の研磨用組成物を調製した。実施例3及び比較例2の研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量はいずれも20質量%である。pH調整剤としては塩酸及び水酸化カリウムを適宜に使用した。そして、各例の研磨用組成物を用いて表3に示す条件で窒化ガリウム基板の表面(Ga面)を研磨した。使用した窒化ガリウム基板はいずれも、10mm四方の同種のものである。
【0030】
各研磨用組成物のpH、各研磨用組成物中のコロイダルシリカのゼータ電位の符号、及び各研磨用組成物を用いて研磨中の窒化ガリウム基板のゼータ電位の符号は表4に示すとおりである。また、各研磨用組成物を用いた研磨の前後に窒化ガリウム基板の重量を測定し、研磨前後の重量の差から計算して求めた研磨速度を表4の“研磨速度”欄に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
表4に示すように、実施例3の研磨用組成物を用いて窒化ガリウム基板を研磨した場合にはコロイダルシリカのゼータ電位と窒化ガリウム基板のゼータ電位の積の符号が負である一方、比較例2の研磨用組成物を用いて窒化ガリウム基板を研磨した場合にはその積の符号は正であった。そして、実施例3の研磨用組成物の場合、比較例2の研磨用組成物の場合に比べて高い研磨速度が得られた。
【0033】
(実施例4,5及び比較例3,4)
平均一次粒子径が35nmのコロイダルシリカを含んだコロイダルシリカゾルを水で希釈し、さらに必要に応じてpH調整剤を加えることにより、実施例4,5及び比較例3,4の研磨用組成物を調製した。実施例4,5及び比較例3,4の研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量はいずれも5質量%である。pH調整剤としては酢酸及び水酸化カリウムを適宜に使用した。そして、各例の研磨用組成物を用いて表5に示す条件でヒ化インジウム基板の表面(100面)を研磨した。使用したヒ化インジウム基板はいずれも、直径52mm(約2インチ)の同種のものである。
【0034】
各研磨用組成物のpH、各研磨用組成物中のコロイダルシリカのゼータ電位の符号、及び各研磨用組成物を用いて研磨中のヒ化インジウム基板のゼータ電位の符号は表6に示すとおりである。また、各研磨用組成物を用いた研磨の前後にヒ化インジウム基板の重量を測定し、研磨前後の重量の差から計算して求めた研磨速度を表6の“研磨速度”欄に示す。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
表6に示すように、実施例4,5の研磨用組成物を用いてヒ化インジウム基板を研磨した場合にはコロイダルシリカのゼータ電位とヒ化インジウム基板のゼータ電位の積の符号が負である一方、比較例3,4の研磨用組成物を用いてヒ化インジウム基板を研磨した場合にはその積の符号は正であった。そして、実施例4,5の研磨用組成物の場合、比較例3,4の研磨用組成物の場合に比べて高い研磨速度が得られた。
【0037】
次に、上記した実施形態、変形例及び実施例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する用途で使用される少なくとも砥粒及び水を含有した研磨用組成物であって、研磨用組成物中の砥粒は、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物に対して静電気的に反発しないようなゼータ電位を有していることを特徴とする研磨用組成物。この研磨用組成物によれば、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる。
【0038】
・ 少なくとも砥粒及び水を含有した研磨用組成物を用いて、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を研磨する方法であって、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位をX[mV]、研磨用組成物を用いて研磨中の研磨対象物のゼータ電位をY[mV]としたときにX×Y≦0の関係が成り立つことを特徴とする方法。この方法によれば、光学デバイス用基板材料、パワーデバイス用基板材料又は化合物半導体材料からなる研磨対象物を高い研磨速度で研磨することができる。