(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発振周波数と周波数が同一であり、かつ、前記マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号を前記マイクロ波発振器に注入する注入部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
前記検出部は、前記マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波が分岐されて得られる分岐マイクロ波の周波数に対する、前記分岐マイクロ波の強度の分布を検出するスペクトラムレベル検出器を含み、前記分布における最大値に対応する周波数を前記発振周波数として検出し、
前記判定部は、前記検出部によって検出された前記発振周波数を用いて、前記調整部における調整の結果、前記発振周波数と前記所定の周波数とが一致したか否かを判定し、さらに、前記検出部によって検出された前記分布における最大値と、前記分布における、前記最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値との差分を算出し、算出した差分の値を用いて、前記マイクロ波発振器の異常発振を判定する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、開示するプラズマ処理装置、異常判定方法及びマイクロ波発生器の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、処理容器と、マイクロ波発振器を含み、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波を用いて処理容器内にプラズマを発生させるプラズマ生成機構と、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波の周波数である発振周波数を所定の周波数に調整する調整部と、調整部によって所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部と、検出部によって検出された発振周波数を用いて、又は、該発振周波数と所定の周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、調整部による発振周波数の調整の成否を判定する判定部とを備えた。
【0013】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、可動自在な可動部材を含み、設定される可動部材の可動量に応じて、マイクロ波発振器に付与されるインピーダンスを発生させるインピーダンス発生器をさらに備え、調整部は、検出部によって検出された発振周波数と所定の周波数との差分を減少させる可動部材の可動量をインピーダンス発生器に設定することによって、発振周波数を所定の周波数に調整し、判定部は、検出部によって検出された発振周波数が、所定の周波数を中心とする所定の周波数帯域に存在する場合に、調整部による発振周波数の調整が成功したと判定し、検出部によって検出された発振周波数が、所定の周波数を中心とする所定の周波数帯域に存在しない場合に、調整部による発振周波数の調整が成功してないと判定する。
【0014】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、可動自在な可動部材を含み、設定される可動部材の可動量に応じて、マイクロ波発振器に付与されるインピーダンスを発生するインピーダンス発生器をさらに備え、調整部は、検出部によって検出された発振周波数と所定の周波数との差分を減少させる可動部材の可動量をインピーダンス発生器に設定することによって、発振周波数を所定の周波数に調整し、判定部は、パラメータとして、調整部によってインピーダンス発生器に設定される可動部材の可動量が、予め許容された範囲に存在する場合に、調整部による発振周波数の調整が成功したと判定し、パラメータとして、調整部によってインピーダンス発生器に設定される可動部材の可動量が、予め許容された範囲に存在しない場合に、調整部による発振周波数の調整が成功していないと判定する。
【0015】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号をマイクロ波発振器に注入する注入部をさらに備えた。
【0016】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、調整部は、周波数が所定の周波数であり、かつ、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号である基準信号を発生する基準信号発生器を含み、基準信号発生器によって発生される基準信号をマイクロ波発振器に注入することによって、発振周波数を所定の周波数に調整する。
【0017】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、検出部は、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波が分岐されて得られる分岐マイクロ波の周波数に対する、分岐マイクロ波の強度の分布を検出するスペクトラムレベル検出器を含み、分布における最大値に対応する周波数を発振周波数として検出し、判定部は、検出部によって検出された発振周波数を用いて、調整部による発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、検出部によって検出された分布における最大値と、分布における、最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値との差分を算出し、算出した差分の値を用いて、マイクロ波発振器の異常発振を判定する。
【0018】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、判定部による判定結果を報知する報知部をさらに備えた。
【0019】
また、開示する異常判定方法は、1つの実施形態において、処理容器と、マイクロ波発振器を含み、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波を用いて処理容器内にプラズマを発生させるプラズマ生成機構と、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波の周波数である発振周波数を所定の周波数に調整する調整部とを備えたプラズマ処理装置による異常判定方法であって、調整部によって所定の周波数に調整された発振周波数を検出し、検出された発振周波数を用いて、又は、該発振周波数と所定の周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、調整部による発振周波数の調整の成否を判定する。
【0020】
また、開示するマイクロ波発生器は、1つの実施形態において、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波の周波数である発振周波数を所定の周波数に調整する調整部と、調整部によって所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部と、検出部によって検出された発振周波数を用いて、又は、該発振周波数と所定の周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、調整部による発振周波数の調整の成否を判定する判定部とを備えた。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の要部を示す概略断面図である。
図2は、
図1に示すプラズマ処理装置に含まれるスロットアンテナ板を下方側、すなわち、
図1中の矢印IIの方向から見た図である。なお、
図1において、理解の容易の観点から、部材の一部のハッチングを省略している。また、この実施形態においては、
図1中の矢印IIで示す方向またはその逆の方向で示される
図1における紙面上下方向を、プラズマ処理装置における上下方向としている。
【0022】
図1および
図2を参照して、プラズマ処理装置11は、被処理対象物である被処理基板Wに対して、プラズマを用いて処理を行う。具体的には、エッチングやCVD、スパッタリング等の処理を行う。被処理基板Wとしては、例えば、半導体素子の製造に用いられるシリコン基板が挙げられる。
【0023】
プラズマ処理装置11は、その内部で被処理基板Wに対してプラズマにより処理を行う処理容器12と、処理容器12内にプラズマ励起用のガスやプラズマ処理用のガスを供給するガス供給部13と、処理容器12内に設けられ、その上で被処理基板Wを保持する円板状の保持台14と、マイクロ波を用い、処理容器12内にプラズマを発生させるプラズマ発生機構19と、プラズマ処理装置11全体の動作を制御する制御部15とを備える。制御部15は、ガス供給部13におけるガス流量、処理容器12内の圧力等、プラズマ処理装置11全体の制御を行う。
【0024】
処理容器12は、保持台14の下方側に位置する底部21と、底部21の外周から上方向に延びる側壁22とを含む。側壁22は、略円筒状である。処理容器12の底部21には、その一部を貫通するように排気用の排気孔23が設けられている。処理容器12の上部側は開口しており、処理容器12の上部側に配置される蓋部24、後述する誘電体窓16、および誘電体窓16と蓋部24との間に介在するシール部材としてのOリング25によって、処理容器12は密封可能に構成されている。
【0025】
ガス供給部13は、被処理基板Wの中央に向かってガスを第1の流路を介して供給する第一のガス供給部26と、被処理基板Wの外側からガスを第2の流路を介して供給する第二のガス供給部27とを含む。第一のガス供給部26において第1の流路に連通し、ガスを供給するガス供給孔30aは、誘電体窓16の径方向中央であって、保持台14と対向する対向面となる誘電体窓16の下面28よりも誘電体窓16の内方側に後退した位置に設けられている。第一のガス供給部26は、第一のガス供給部26に接続されたガス供給系29により流量等を調整しながらプラズマ励起用の不活性ガスやプラズマ処理用のガスを供給する。第二のガス供給部27は、側壁22の上部側の一部において、処理容器12内にプラズマ励起用の不活性ガスやプラズマ処理用のガスを供給する複数のガス供給孔30bを設けることにより形成されている。複数のガス供給孔30bは、周方向に等しい間隔を開けて設けられている。第一のガス供給部26および第二のガス供給部27には、同じガス供給源から同じ種類のプラズマ励起用の不活性ガスやプラズマ処理用のガスが供給される。なお、要求や制御内容等に応じて、第一のガス供給部26および第二のガス供給部27から別のガスを供給することもでき、それらの流量比等を調整することもできる。
【0026】
保持台14には、RF(radio frequency)バイアス用の高周波電源38がマッチングユニット39を介して保持台14内の電極に電気的に接続されている。この高周波電源38は、例えば、13.56MHzの高周波を所定の電力(バイアスパワー)で出力可能である。マッチングユニット39は、高周波電源38側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容しており、この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。なお、プラズマ処理時において、この保持台14へのバイアス電圧の供給は、必要に応じて行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0027】
保持台14は、静電チャック(図示せず)によりその上に被処理基板Wを保持可能である。また、保持台14は、内部に加熱のためのヒータ(図示せず)等の温度調整機構33を備え、温度調整機構33により所望の温度に設定可能である。保持台14は、底部21の下方側から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部31に支持されている。上記した排気孔23は、処理容器12の底部中央に形成され、筒状支持部31が排気孔23を貫通する。環状の排気孔23の下方側には排気管(図示せず)を介して排気装置(図示せず)が接続されている。排気装置は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。排気装置により、処理容器12内を所定の圧力まで減圧することができる。
【0028】
プラズマ発生機構19は、処理容器12外に設けられており、プラズマ励起用のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器41aを含む。また、プラズマ発生機構19は、処理容器12の上部に保持台14と対向する位置に配置され、マイクロ波発生器41aにより発生させたマイクロ波を処理容器12内に導入する誘電体窓16を含む。また、プラズマ発生機構19は、誘電体窓16の上に配置され、マイクロ波を誘電体窓16に放射する複数のスロット孔が形成されたスロットアンテナ板17を含む。また、プラズマ発生機構19は、スロットアンテナ板17の上方側に配置され、後述する同軸導波管36により導入されたマイクロ波を径方向に伝播し、マイクロ波を遅延する機能を有する誘電体部材18を含む。
【0029】
マイクロ波発生器41aは、4Eチューナ51、導波管35およびモード変換器34を介して、マイクロ波を導入する同軸導波管36の上部に接続されている。例えば、マイクロ波発生器41aで発生させたTEモードのマイクロ波は、4Eチューナ51を介して導波管35を通り、モード変換器34によりTEMモードへ変換され、同軸導波管36を伝播する。4Eチューナ51は、負荷50に対してインピーダンス整合をとり、マイクロ波発生器41aに反射波が投入されることを防ぐ。マイクロ波発生器41aの具体的な構成については、後述する。なお、マイクロ波発生器41aに対しての導波管35側が、後述する負荷側となる。
【0030】
誘電体窓16は、略円板状であって、誘電体で構成されている。誘電体窓16の下面28の一部には、導入されたマイクロ波による定在波の発生を容易にするためのテーパ状に凹んだ環状の凹部37または円形状に凹んだ凹部が設けられている。この凹部37により、誘電体窓16の下部側にマイクロ波によるプラズマを効率的に生成することができる。なお、誘電体窓16の具体的な材質としては、石英やアルミナ等が挙げられる。
【0031】
スロットアンテナ板17は、薄板状であって、円板状である。複数のスロット孔20については、
図2に示すように、それぞれ所定の間隔を開けて直交するように2つのスロット孔20が一対となるように設けられており、一対をなしたスロット孔20が周方向に所定の間隔を開けて設けられている。また、径方向においても、複数の一対のスロット孔20が所定の間隔を開けて設けられている。
【0032】
マイクロ波発生器41aにより発生させたマイクロ波は、同軸導波管36を通って、誘電体部材18に伝播される。内部に冷媒等を循環させる循環路40を有し、スロットアンテナ板17、誘電体窓16および誘電体部材18等を冷却して温度調整を行う冷却ジャケット32とスロットアンテナ板17との間に挟まれた誘電体部材18の内部を径方向外側に向かって、マイクロ波は放射状に広がり、スロットアンテナ板17に設けられた複数のスロット孔20から誘電体窓16に放射される。誘電体窓16を透過したマイクロ波は、誘電体窓16の直下に電界を生じさせ、処理容器12内にプラズマを生成させる。
【0033】
プラズマ処理装置11においてマイクロ波プラズマを発生させた場合、誘電体窓16の下面28の直下、具体的には、誘電体窓16の下面28の数cm程度下に位置する領域においては、プラズマの電子温度が比較的高いいわゆるプラズマ生成領域が形成される。そして、その下側に位置する領域には、プラズマ生成領域で生成されたプラズマが拡散するいわゆるプラズマ拡散領域が形成される。このプラズマ拡散領域は、プラズマの電子温度が比較的低い領域であり、この領域でプラズマ処理を行う。そうすると、プラズマ処理時における被処理基板Wに対するいわゆるプラズマダメージを与えず、かつ、プラズマの電子密度が高いので、効率的なプラズマ処理を行うことができる。
【0034】
次に、上記した構成のプラズマ処理装置11に備えられるプラズマ発生機構19に含まれるマイクロ波発生器41aの具体的な構成について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
【0035】
図3に示すように、マイクロ波発生器41aは、マグネトロン42と、マグネトロン電源43と、ランチャー44と、インピーダンス発生器45と、周波数結合器46と、周波数検出器47と、発振周波数調整器48と、サーキュレータ49とを有する。また、マイクロ波発生器41aは、メモリ101と、周波数比較器102と、報知器103とを有する。
【0036】
マグネトロン42は、マグネトロン電源43から供給される電圧に応じて、高周波としてのマイクロ波を発振する。マグネトロン42は、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器の一例である。ここで、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の周波数(以下「発振周波数」という)は、種々の要因によって、目標とされる所望の周波数(以下「目標周波数」という)から変動することがある。例えば、マグネトロン42は、機械加工品であるため、複数のマグネトロン42どうしの機械誤差によって、発振周波数が目標周波数から変動することがある。また、マグネトロン42は、出力電力に対する周波数依存性を持つため、出力電力の大きさによって、発振周波数が目標周波数から変動することがある。さらに、マグネトロン42の経年劣化によって、発振周波数が目標周波数から変動することもある。
【0037】
図4は、機械誤差及び出力電力による発振周波数の変動を説明するための図である。
図4において、横軸は、マグネトロン42の出力電力[W]を示し、縦軸は、新品のマグネトロン42の発振周波数である初期周波数Fi[MHz]を示している。また、
図4において、「Average」及び「±3Sigma」は、それぞれ、新品のマグネトロン42の100台(すなわち、n数が100)に対応する初期周波数Fiの平均値及び標準偏差を示している。また、
図4の例では、マグネトロン42に付与されるインピーダンスが、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio):1.5及び定在波の位相:0.4λgに対応する値に設定されたものとする。
図4に例示されるように、マグネトロン42の発振周波数は、複数のマグネトロン42どうしの機械誤差によって、±15MHzの範囲で変動する。つまり、複数のマグネトロン42どうしの機械誤差によって、マグネトロン42の発振周波数が目標周波数から変動する可能性がある。また、
図4に例示されるように、マグネトロン42の発振周波数は、マグネトロン42の出力電力によって、±3MHzの範囲で変動する。つまり、マグネトロン42の出力電力によって、マグネトロン42の発振周波数が目標周波数から変動する可能性がある。
【0038】
図5は、経年劣化による発振周波数の変動を説明するための図である。
図5において、横軸は、マグネトロン42の使用時間[hr]を示し、縦軸は、初期周波数Fiからの偏差[MHz]を示している。
図5に例示されるように、マグネトロン42の発振周波数は、マグネトロン42の使用時間が長くなるにつれて、低下する。つまり、マグネトロン42の経年劣化によって、発振周波数が目標周波数から変動する可能性がある。
【0039】
図3の説明に戻る。マグネトロン電源43は、マイクロ波の発振に用いられる電圧をマグネトロン42に供給する電源である。
【0040】
ランチャー44は、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波をマグネトロン42の後段側の導波管60に伝送する。
【0041】
インピーダンス発生器45は、マグネトロン42の後段側の導波管60に設けられ、マグネトロン42に付与されるインピーダンスを発生させる。具体的には、インピーダンス発生器45は、導波管と、導波管の管壁から管内へ突出自在な、少なくとも一つの金属棒(スタブ)とを含み、基準位置に対するスタブの突出位置を変更することによって、マグネトロン42に付与されるインピーダンスを発生させる。スタブは、可動自在な可動部材の一例であり、基準位置に対するスタブの突出位置は、可動部材の可動量の一例である。また、インピーダンス発生器45によって発生されるインピーダンスは、後述する発振周波数調整器48によって制御される。すなわち、インピーダンス発生器45は、発振周波数調整器48から設定されるスタブの突出位置に応じて、マグネトロン42に付与されるインピーダンスを発生させる。
【0042】
ここで、マグネトロン42に付与されるインピーダンスと、マグネトロン42の発振周波数との関係について説明する。
図6は、第1の実施形態におけるマグネトロンの動作特性を示すリーケ線図である。
図6に示されるリーケ線図は、極座標により表されるインピーダンス線図上に、マグネトロン42の出力電力及び発振周波数を等高線状に表示した線図である。
図6において、半径方向の座標は、VSWRを示し、円周方向の座標は、定在波の位相を示す。
図6に例示されるように、マグネトロン42に付与されるインピーダンス、すなわち、VSWR及び定在波の位相が変動すると、マグネトロン42の発振周波数も変動する。この現象は、プリング現象と呼ばれる。本実施形態のインピーダンス発生器45は、プリング現象を用いて、マグネトロン42の発振周波数を変動させる。
【0043】
図3の説明に戻る。周波数結合器46は、インピーダンス発生器45の出力端に接続され、インピーダンス発生器45から負荷50側へ向けて導波管60内を進行するマイクロ波を分岐し、分岐された一方のマイクロ波(以下「分岐マイクロ波」という)を周波数検出器47へ出力し、分岐された他方のマイクロ波をサーキュレータ49へ出力する。ここで、負荷50は、導波管35の下流側に位置するモード変換器34、同軸導波管36及び処理容器12等の部材である。
【0044】
周波数検出器47は、後述する発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数を検出する。具体的には、周波数検出器47は、周波数結合器46から入力される分岐マイクロ波を分析し、分析した分岐マイクロ波の周波数を、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数として検出する。発振周波数調整器48によって発振周波数の調整が行われた時点では、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置又は下限位置に達した可能性があり、マグネトロン42の発振周波数が目標周波数に正確に調整されていない可能性がある。そして、周波数検出器47は、検出された発振周波数を発振周波数調整器48及び周波数比較器102へ出力する。周波数検出器47は、所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部の一例である。
【0045】
発振周波数調整器48は、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。具体的には、発振周波数調整器48は、周波数検出器47から入力される発振周波数と目標周波数との差分を求め、求めた差分を減少させるスタブの突出位置をインピーダンス発生器45に設定することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。
【0046】
ここで、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置と、マグネトロン42の発振周波数の調整範囲との関係の一例を説明する。
図7は、第1の実施形態におけるインピーダンス発生器に設定されるスタブの突出位置と、マグネトロンの発振周波数の調整範囲との関係の一例を説明するための図(その1)である。
図7において、横軸は、マグネトロン42の出力電力[W]を示し、縦軸は、マグネトロン42の発振周波数[MHz]を示している。また、グラフ151は、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置(例えば0mm)である場合のマグネトロン42の発振周波数を示している。また、グラフ152は、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置(例えば20mm)である場合のマグネトロン42の発振周波数を示している。
図7に示すように、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置(例えば0mm)と上限位置(例えば20mm)との間で変更されると、各出力電力に対するマグネトロン42の発振周波数がグラフ151と152とに挟まれた範囲で調整される。
【0047】
図8は、第1の実施形態におけるインピーダンス発生器に設定されるスタブの突出位置と、マグネトロンの発振周波数の調整範囲との関係の一例を説明するための図(その2)である。
図8において、横軸は、マグネトロン42の出力電力[W]を示し、縦軸は、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置[mm]を示している。また、
図8の例では、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置の下限が0[mm]であり、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置の上限が20[mm]であるものとする。また、
図8では、マグネトロン42の発振周波数[MHz]を併せて示した。
図8に示すように、マグネトロン42の発振周波数が2463[MHz]に調整される場合、マグネトロン42の出力電力が変更された場合であっても、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限から上限までの範囲に収容された。
【0048】
これに対して、マグネトロン42の発振周波数が2460[MHz]に調整される場合、マグネトロン42の出力電力が4500[W]以上に変更されると、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置に達した。また、マグネトロン42の発振周波数が2455[MHz]に調整される場合、マグネトロン42の出力電力が2000[W]以上に変更されると、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置に達した。さらに、マグネトロン42の発振周波数が2465[MHz]に調整される場合、マグネトロン42の出力電力が500W以下又は4500[W]以上に変更されると、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置に達した。すなわち、
図8の例から分かるように、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置又は下限位置に達した場合には、マグネトロン42の発振周波数の調整が成功していない可能性がある。言い換えると、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置又は下限位置に達した場合には、マグネトロン42の発振周波数が目標周波数に調整されていない可能性がある。
【0049】
図3の説明に戻る。サーキュレータ49は、周波数結合器46から入力されるマイクロ波を導波管35を介して負荷50側へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0050】
メモリ101は、マグネトロン42の発振周波数の調整の成否を判定するために用いられる判定用周波数帯域を記憶する。判定用周波数帯域は、目標周波数を中心とする所定の周波数帯域である。本実施形態における判定用周波数帯域は、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置と上限位置との間で変更されることによって変動し得るマグネトロン42の発振周波数の変動範囲に含まれる。例えば、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置と、マグネトロン42の発振周波数の調整範囲との関係が
図7に示した関係である場合を想定する。この場合、判定用周波数帯域は、グラフ151と152とに挟まれた範囲に含まれる。
【0051】
周波数比較器102は、周波数検出器47によって検出された発振周波数と、メモリ101に記憶された判定用周波数帯域とを比較することで、発振周波数調整器48による発振周波数の調整の成否を判定する。具体的には、周波数比較器102は、周波数検出器47から入力される発振周波数が、メモリ101に記憶された判定用周波数帯域に存在するか否かを判定する。周波数検出器47から入力される発振周波数が判定用周波数帯域に存在する場合には、発振周波数調整器48からインピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置と上限位置との間に収容される。このため、周波数比較器102は、周波数検出器47から入力される発振周波数が判定用周波数帯域に存在する場合には、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功したと判定する。一方、周波数検出器47から入力される発振周波数が判定用周波数帯域に存在しない場合には、発振周波数調整器48からインピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置又は上限位置に達している。このため、周波数比較器102は、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功していないと判定する。続いて、周波数比較器102は、判定結果を報知器103へ出力する。周波数比較器102は、検出された発振周波数を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する判定部の一例である。
【0052】
報知器103は、周波数比較器102による判定結果を報知する。例えば、報知器103は、音、光及び振動等を用いて判定結果を報知する。
【0053】
次に、第1の実施形態に係る発振周波数調整成否判定処理について説明する。
図9は、第1の実施形態に係る発振周波数調整成否判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0054】
図9に示すように、周波数検出器47は、発振周波数調整器48によって発振周波数の調整が行われると(ステップS101;Yes)、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数を検出する(ステップS102)。発振周波数調整器48によって発振周波数の調整が行われた時点では、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が上限位置又は下限位置に達した可能性があり、マグネトロン42の発振周波数が目標周波数に正確に調整されていない可能性がある。
【0055】
周波数比較器102は、周波数検出器47によって検出された発振周波数が、メモリ101に記憶された判定用周波数帯域に存在するか否かを判定する(ステップS103)。周波数比較器102は、検出された発振周波数が判定用周波数帯域に存在する場合には(ステップS103;Yes)、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置と上限位置との間に収容されるため、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功したと判定する(ステップS104)。
【0056】
一方、周波数比較器102は、検出された発振周波数が判定用周波数帯域に存在しない場合には(ステップS103;No)、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置又は上限位置に達しているため、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功していないと判定する(ステップS105)。
【0057】
報知器103は、周波数比較器102による判定結果を報知する(ステップS106)。
【0058】
以上のように、第1の実施形態のプラズマ処理装置11は、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数を検出し、検出された発振周波数を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する。このため、プラズマ処理装置11は、目標周波数から変動した発振周波数を調整する場合に、発振周波数が目標周波数に正確に調整されたか否かを判定することができる。結果として、第1の実施形態によれば、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0059】
また、第1の実施形態のプラズマ処理装置11は、検出された発振周波数と目標周波数との差分を減少させるスタブの突出位置をインピーダンス発生器45に設定することによって、発振周波数の調整を行う。そして、プラズマ処理装置11は、検出された発振周波数が、目標周波数を中心とする所定の周波数帯域に存在する場合に、インピーダンス発生器45を用いた発振周波数の調整が成功したと判定する。一方、プラズマ処理装置11は、検出された発振周波数が、目標周波数を中心とする所定の周波数帯域に存在しない場合に、インピーダンス発生器45を用いた発振周波数の調整が成功していないと判定する。その結果、第1の実施形態によれば、インピーダンス発生器を用いたインピーダンスの変更によって発振周波数の調整が行われる場合に、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数の検出結果を用いて、発振周波数の調整の成否を判定した。しかしながら、調整後の発振周波数の検出結果と目標周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、発振周波数の成否を判定しても良い。そこで、第2の実施形態では、調整後の発振周波数の検出結果と目標周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、発振周波数の成否を判定する例を説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図10は、第2の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図10に示すマイクロ波発生器41bは、
図3に示すメモリ101、周波数比較器102及び報知器103に代えて、メモリ201、スタブ位置判定器202及び報知器203を有する。
【0062】
周波数検出器47は、
図3に示す周波数検出器47と同様に、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数を検出する。具体的には、周波数検出器47は、周波数結合器46から入力される分岐マイクロ波を分析し、分析した分岐マイクロ波の周波数を、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数として検出する。そして、周波数検出器47は、検出された発振周波数を発振周波数調整器48へ出力する。
【0063】
発振周波数調整器48は、
図3に示す発振周波数調整器48と同様に、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。具体的には、発振周波数調整器48は、周波数検出器47から入力される発振周波数と目標周波数との差分を求め、求めた差分を減少させるスタブの突出位置をインピーダンス発生器45に設定することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。そして、発振周波数調整器48は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置をスタブ位置判定器202へ出力する。発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置は、検出された発振周波数と所定の周波数との差分に応じて変動するパラメータの一例である。
【0064】
メモリ201は、マグネトロン42の発振周波数の調整の成否を判定するために用いられる判定用位置範囲を記憶する。判定用位置範囲は、インピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置に関して予め許容された範囲、すなわち、スタブの突出位置の上限位置から下限位置に至る範囲である。例えば、判定用位置範囲は、0[mm]〜20[mm]の範囲に設定される。
【0065】
スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置と、メモリ201に記憶された判定用位置範囲とを比較することで、発振周波数調整器48による発振周波数の調整の成否を判定する。具体的には、スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を発振周波数調整器48から取得する。スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が、メモリ201に記憶された判定用位置範囲に存在するか否かを判定する。スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が判定用位置範囲に存在する場合には、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功したと判定する。一方、スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によってインピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が判定用位置範囲に存在しない場合には、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功していないと判定する。続いて、スタブ位置判定器202は、判定結果を報知器203へ出力する。スタブ位置判定器202は、検出された発振周波数と所定の周波数との差分に応じて変動するパラメータを用いて、発振周波数の調整の成否を判定する判定部の一例である。
【0066】
報知器203は、スタブ位置判定器202による判定結果を報知する。例えば、報知器203は、音、光及び振動等を用いて判定結果を報知する。
【0067】
次に、第2の実施形態に係る発振周波数調整成否判定処理について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る発振周波数調整成否判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0068】
図11に示すように、スタブ位置判定器202は、発振周波数調整器48によって発振周波数の調整が行われると(ステップS201;Yes)、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を発振周波数調整器48から取得する(ステップS202)。
【0069】
スタブ位置判定器202は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が、メモリ201に記憶された判定用位置範囲に存在するか否かを判定する(ステップS203)。スタブ位置判定器202は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が判定用位置範囲に存在する場合には(ステップS203;Yes)、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功したと判定する(ステップS204)。
【0070】
一方、スタブ位置判定器202は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が判定用位置範囲に存在しない場合には(ステップS203;No)、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功していないと判定する(ステップS205)。
【0071】
報知器203は、スタブ位置判定器202による判定結果を報知する(ステップS206)。
【0072】
以上のように、第2の実施形態のプラズマ処理装置11は、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する。このため、プラズマ処理装置11は、目標周波数から変動した発振周波数を調整する場合に、発振周波数が目標周波数に正確に調整されたか否かを判定することができる。結果として、第2の実施形態によれば、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0073】
また、第2の実施形態のプラズマ処理装置11は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が予め許容された範囲に存在する場合に、インピーダンス発生器45を用いた発振周波数の調整が成功したと判定する。一方、プラズマ処理装置11は、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置が予め許容された範囲に存在しない場合に、インピーダンス発生器45を用いた発振周波数の調整が成功していないと判定する。その結果、第2の実施形態によれば、インピーダンス発生器を用いたインピーダンスの変更によって発振周波数の調整が行われる場合に、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0074】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数の検出結果を用いて、発振周波数の調整の成否を判定した。しかしながら、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数の検出結果を用いて、発振周波数の調整の成否を判定しても良い。そこで、第3の実施形態では、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数の検出結果を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する例を説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図12は、第3の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図12に示すマイクロ波発生器41cは、
図3に示す各部位に加えて、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)301及び増幅器302をさらに有する。また、マイクロ波発生器41cは、
図3に示すサーキュレータ49に代えて、サーキュレータ303及びサーキュレータ304を有する。
【0076】
周波数検出器47は、
図3に示した周波数検出器47と同様に、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数を検出する。そして、周波数検出器47は、検出された発振周波数を発振周波数調整器48、周波数比較器102及びVCO301へ出力する。
【0077】
VCO301は、周波数検出器47から入力される発振周波数と周波数が同一である信号を発振し、発振した信号を増幅器302へ出力する。
【0078】
増幅器302は、VCO301から入力される信号を増幅することによって、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号を生成し、生成した信号をサーキュレータ303へ出力する。
【0079】
サーキュレータ303は、増幅器302から入力される信号(以下「基準信号」という)をサーキュレータ304へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0080】
サーキュレータ304は、サーキュレータ303によって伝送される基準信号を導波管60を介してマグネトロン42に注入する。マグネトロン42から発振されるマイクロ波の波形は、マグネトロン42に注入される基準信号によって整えられる。VCO301、増幅器302、サーキュレータ303及びサーキュレータ304は、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号をマイクロ波発振器に注入する注入部の一例である。
【0081】
以上のように、第3の実施形態のプラズマ処理装置11は、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入しつつ、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、調整後の発振周波数の検出結果を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する。結果として、第3の実施形態によれば、マイクロ波の波形を整えつつ、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
第2の実施形態では、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を用いて、発振周波数の調整の成否を判定した。しかしながら、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を用いて、発振周波数の調整の成否を判定しても良い。そこで、第4の実施形態では、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する例を説明する。以下の説明では、第2の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図13は、第4の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図13に示すマイクロ波発生器41dは、
図10に示す各部位に加えて、VCO401及び増幅器402をさらに有する。また、マイクロ波発生器41dは、
図10に示すサーキュレータ49に代えて、サーキュレータ403及びサーキュレータ404を有する。
【0084】
周波数検出器47は、
図10に示す周波数検出器47と同様に、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数を検出する。具体的には、周波数検出器47は、周波数結合器46から入力される分岐マイクロ波を分析し、分析した分岐マイクロ波の周波数を、発振周波数調整器48によって目標周波数に調整された発振周波数として検出する。そして、周波数検出器47は、検出された発振周波数を発振周波数調整器48及びVCO401へ出力する。
【0085】
VCO401は、周波数検出器47から入力される発振周波数と周波数が同一である信号を発振し、発振した信号を増幅器402へ出力する。
【0086】
増幅器402は、VCO401から入力される信号を増幅することによって、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号を生成し、生成した信号をサーキュレータ403へ出力する。
【0087】
サーキュレータ403は、増幅器402から入力される信号(以下「基準信号」という)をサーキュレータ404へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0088】
サーキュレータ404は、サーキュレータ403によって伝送される基準信号を導波管60を介してマグネトロン42に注入する。マグネトロン42から発振されるマイクロ波の波形は、マグネトロン42に注入される基準信号によって整えられる。VCO401、増幅器402、サーキュレータ403及びサーキュレータ404は、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号をマイクロ波発振器に注入する注入部の一例である。
【0089】
以上のように、第4の実施形態のプラズマ処理装置11は、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する場合に、インピーダンス発生器45に設定されたスタブの突出位置を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する。結果として、第4の実施形態によれば、マイクロ波の波形を整えつつ、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0090】
(第5の実施形態)
第3の実施形態では、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入しつつ、インピーダンス発生器45を用いてマグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整した。しかしながら、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整しても良い。そこで、第5の実施形態では、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する例を説明する。以下の説明では、第3の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
図14は、第5の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図14に示すマイクロ波発生器41eは、
図12に示すVCO301、増幅器302、サーキュレータ303及びサーキュレータ304に代えて、基準信号発生器501、サーキュレータ502及びサーキュレータ503を有する。また、マイクロ波発生器41eは、
図12に示すインピーダンス発生器45を有さない。
【0092】
メモリ101は、マグネトロン42の発振周波数の調整の成否を判定するために用いられる判定用周波数帯域を記憶する。本実施形態における判定用周波数帯域は、後述する基準信号発生器501から発生される基準信号の周波数を中心とする所定の周波数帯域である。
【0093】
基準信号発生器501は、周波数が目標周波数であり、かつ、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号である基準信号を発生する。基準信号発生器501は、例えば、水晶発振器にて安定的に発振した信号を所定の電力まで増幅することで、基準信号を発生する。
【0094】
サーキュレータ502は、基準信号発生器501から発生した基準信号をサーキュレータ503へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0095】
サーキュレータ503は、サーキュレータ502によって伝送される基準信号を導波管60を介してマグネトロン42に注入する。マグネトロン42から発振されるマイクロ波の波形は、マグネトロン42に注入される基準信号によって整えられる。さらに、マグネトロン42から発振されるマイクロ波の周波数、すなわち、発振周波数は、マグネトロン42に注入される基準信号の周波数である目標周波数に引き寄せられ、調整される。基準信号発生器501、サーキュレータ502及びサーキュレータ503は、基準信号発生器501によって発生される基準信号をマグネトロン42に注入することによって、発振周波数を所定の周波数に調整する調整部の一例である。
【0096】
以上のように、第5の実施形態のプラズマ処理装置11は、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。結果として、第5の実施形態によれば、インピーダンス調整器を用いることなく発振周波数の調整を行うことができるとともに、マイクロ波の波形を整えつつ、発振周波数の調整の成否を適切に判断することができる。
【0097】
(第6の実施形態)
第1の実施形態では、発振周波数の調整の成否を判定した。しかしながら、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定しても良い。そこで、第6の実施形態では、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する例を説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
図15は、第6の実施形態に係るマイクロ波発振器の構成を示すブロック図である。
図15に示すマイクロ波発生器41fは、
図3に示す周波数比較器102及び報知器103に代えて、スペクトラムレベル検出器601、CPU(Central Processing Unit)602、D/A(Digital/Analog)変換器603及び報知器604を有する。
【0099】
周波数結合器46は、インピーダンス発生器45の出力端に接続され、インピーダンス発生器45から負荷50側へ向けて導波管60内を進行するマイクロ波を分岐し、分岐された一方のマイクロ波(以下「分岐マイクロ波」という)をスペクトラムレベル検出器601へ出力し、分岐された他方のマイクロ波をサーキュレータ49へ出力する。
【0100】
発振周波数調整器48は、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。具体的には、発振周波数調整器48は、D/A変換器603から入力される発振周波数と目標周波数との差分を求め、求めた差分を減少させるスタブの突出位置をインピーダンス発生器45に設定することによって、マグネトロン42の発振周波数を目標周波数に調整する。
【0101】
スペクトラムレベル検出器601は、周波数結合器46から入力される分岐マイクロ波の周波数に対する、分岐マイクロ波の強度の分布(以下「強度分布」という)を検出し、検出した強度分布を検出結果としてCPU602へ出力する。
【0102】
CPU602は、スペクトラムレベル検出器601から強度分布の入力を受け付ける。CPU602は、強度分布における最大値に対応する周波数をマグネトロン42の発振周波数として検出する。スペクトラムレベル検出器601及びCPU602は、所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部の一例である。CPU602は、検出した発振周波数をD/A変換器603へ出力する。
【0103】
また、CPU602は、検出した発振周波数に基づいて、発振周波数調整器48による発振周波数の調整の成否を判定する。具体的には、検出した発振周波数が、メモリ101に記憶された判定用周波数帯域に存在するか否かを判定する。発振周波数が判定用周波数帯域に存在する場合には、発振周波数調整器48からインピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置と上限位置との間に収容される。このため、CPU602は、検出した発振周波数が判定用周波数帯域に存在する場合には、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功したと判定する。一方、発振周波数が判定用周波数帯域に存在しない場合には、発振周波数調整器48からインピーダンス発生器45に設定されるスタブの突出位置が下限位置又は上限位置に達している。このため、CPU602は、発振周波数調整器48による発振周波数の調整が成功していないと判定する。続いて、CPU602は、判定結果を報知器604へ出力する。CPU602は、検出された発振周波数を用いて、発振周波数の調整の成否を判定する判定部の一例である。
【0104】
さらに、CPU602は、強度分布における最大値と、強度分布における、最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値との差分を算出し、算出した差分の値に基づいて、マグネトロン42の異常発振を判定する。マグネトロン42の異常発振とは、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の波形が乱れる現象を指す。
【0105】
ここで、CPU602がマグネトロン42の異常発振を判定する処理の詳細を説明する。CPU602は、強度分布における、最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値との差分(以下「強度差」という)の値が所定の閾値以下であるか否かを判定する。マグネトロン42の異常発振が発生すると、マグネトロン42からのマイクロ波の波形の乱れが発生するため、強度分布における最大値と、強度分布における、最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値とが接近する。強度分布における最大値と周辺値との接近の度合いは、マイクロ波の波形の乱れの度合いが大きいほど、大きくなる。強度分布における最大値と周辺値との接近の度合いを判定するために、CPU602は、強度差の値が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0106】
CPU602は、強度差の値が閾値を超える場合には、強度分布における最大値と周辺値との接近の度合いが相対的に小さいため、マグネトロン42の異常発振が発生していないと判定する。一方、CPU602は、強度差の値が閾値以下である場合には、強度分布における最大値と周辺値との接近の度合いが相対的に大きいため、マグネトロン42の異常発振が発生していると判定する。そして、CPU602は、判定結果を報知器604へ出力する。
【0107】
報知器604は、CPU602による判定結果を報知する。例えば、報知器604は、音、光及び振動等を用いて判定結果を報知する。
【0108】
ここで、CPU602がマグネトロン42の異常発振を判断する処理の一例を説明する。
図16は、マグネトロンの異常発振が発生していない場合の強度分布を示す図である。
図17は、マグネトロンの異常発振が発生している場合の強度分布を示す図である。
図16及び
図17において、横軸は、周波数[GHz]を示し、縦軸は、分岐マイクロ波の強度[dB]を示す。
【0109】
異常発振が発生していない場合には、強度分布における最大値と、最大値に対応する周波数「2.463(GHz)」を中心とする±2(MHz)の周波数帯域の両端に対応する周辺値との強度差の値は、
図16に示すように、43,40(dBc)である。これに対して、異常発振が発生している場合には、強度分布における最大値と、最大値に対応する周波数「2.463(GHz)」を中心とする±2(MHz)の周波数帯域の両端に対応する周辺値との強度差の値は、
図17に示すように、32,12(dBc)である。すなわち、異常発振が発生した場合、異常発振が発生していない場合と比較して、強度差の値が小さくなった。このため、
図16及び
図17に示した例では、強度差の値が例えば35(dBc)以下である場合に、マグネトロン42の異常発振が発生することが把握される。そこで、CPU602は、閾値の一例として、強度差が35(dBc)以下である場合に、マグネトロン42の異常発振が発生していると判定する。
【0110】
以上のように、第6の実施形態のプラズマ処理装置11は、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する。結果として、第6の実施形態によれば、発振周波数の調整の成否とマグネトロン42の異常発振とを複合的に判断することができる。
【0111】
(第7の実施形態)
第6の実施形態では、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定した。しかしながら、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定しても良い。そこで、第7の実施形態では、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する例を説明する。以下の説明では、第6の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0112】
図18は、第7の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図18に示すマイクロ波発生器41gは、
図15に示す各部位に加えて、D/A変換器701、VCO702及び増幅器703をさらに有する。また、マイクロ波発生器41gは、
図15に示すサーキュレータ49に代えて、サーキュレータ704及びサーキュレータ705を有する。
【0113】
CPU602は、
図15に示すCPU602と同様に、スペクトラムレベル検出器601から強度分布の入力を受け付ける。CPU602は、強度分布における最大値に対応する周波数をマグネトロン42の発振周波数として検出する。スペクトラムレベル検出器601及びCPU602は、所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部の一例である。CPU602は、検出した発振周波数をD/A変換器603及びD/A変換器701へ出力する。
【0114】
D/A変換器701は、CPU602から入力される発振周波数の値にディジタル/アナログ変換を施し、変換後の発振周波数の値をVCO702へ出力する。
【0115】
VCO702は、D/A変換器701から入力される発振周波数と周波数が同一である信号を発振し、発振した信号を増幅器703へ出力する。
【0116】
増幅器703は、VCO702から入力される信号を増幅することによって、発振周波数と周波数が同一であり、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号を生成し、生成した信号をサーキュレータ704へ出力する。
【0117】
サーキュレータ704は、増幅器703から入力される信号(以下「基準信号」という)をサーキュレータ705へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0118】
サーキュレータ705は、サーキュレータ704によって伝送される基準信号を導波管60を介してマグネトロン42に注入する。マグネトロン42から発振されるマイクロ波の波形は、マグネトロン42に注入される基準信号によって整えられる。D/A変換器701、VCO702、増幅器703、サーキュレータ704及びサーキュレータ705は、発振周波数と周波数が同一であり、かつ、マイクロ波発振器によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号をマイクロ波発振器に注入する注入部の一例である。
【0119】
以上のように、第7の実施形態のプラズマ処理装置11は、マイクロ波の波形を整える信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する。結果として、第7の実施形態によれば、マイクロ波の波形を整えつつ、発振周波数の調整の成否とマグネトロン42の異常発振とを複合的に判断することができる。
【0120】
(第8の実施形態)
第6の実施形態では、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定した。しかしながら、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定しても良い。そこで、第8の実施形態では、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する例を説明する。以下の説明では、第6の実施形態と同一の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
図19は、第8の実施形態に係るマイクロ波発生器の構成を示すブロック図である。
図19に示すマイクロ波発生器41hは、
図15に示すサーキュレータ49に代えて、基準信号発生器801、サーキュレータ802及びサーキュレータ803を有する。
【0122】
メモリ101は、マグネトロン42の発振周波数の調整の成否を判定するために用いられる判定用周波数帯域を記憶する。本実施形態における判定用周波数帯域は、後述する基準信号発生器801から発生される基準信号の周波数を中心とする所定の周波数帯域である。
【0123】
基準信号発生器801は、周波数が目標周波数であり、かつ、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波よりも電力が低い信号である基準信号を発生する。基準信号発生器801は、例えば、水晶発振器にて安定的に発振した信号を所定の電力まで増幅することで、基準信号を発生する。ここで、基準信号の電力は、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力の所定値分の1以下の電力に設定されることが好ましく、例えば、1/50以下の電力に設定されることが好ましい。これは、基準信号の電力がマグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力の1/50を超える場合には、マグネトロン42の異常発振が発生し易くなるからである。
【0124】
図20は、基準信号の電力とマグネトロンの異常発振との関係性を説明するための図である。
図20では、マグネトロン42の周波数特性を示している。
図20において、横軸は、周波数[GHz]を示し、縦軸は、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の強度[dB]を示す。また、
図20では、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力[kW]を併せて示している。また、この例では、基準信号の電力が40(W)であるものとする。
【0125】
図20に示すように、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力が3[kW]である場合、並びに、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力が4[kW]である場合は、基準信号の電力がマイクロ波の電力の1/50を超える。この場合、マグネトロン42の異常発振が発生した。
【0126】
これに対して、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力が1[kW]である場合、並びに、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力が2[kW]である場合は、基準信号の電力がマイクロ波の電力の1/50以下となる。この場合、マグネトロン42の異常発振が発生しなかった。
図20の例から分かるように、基準信号の電力は、マグネトロン42によって発振されるマイクロ波の電力の所定値分の1以下の電力に設定されることが好ましく、例えば、1/50以下の電力に設定されることが好ましい。
【0127】
図19の説明に戻る。CPU602は、
図15に示すCPU602と同様に、スペクトラムレベル検出器601から強度分布の入力を受け付ける。CPU602は、強度分布における最大値に対応する周波数をマグネトロン42の発振周波数として検出する。スペクトラムレベル検出器601及びCPU602は、所定の周波数に調整された発振周波数を検出する検出部の一例である。CPU602は、検出した発振周波数をD/A変換器603へ出力する。
【0128】
また、CPU602は、
図15に示すCPU602と同様に、検出した発振周波数に基づいて、発振周波数調整器48による発振周波数の調整の成否を判定する。
【0129】
さらに、CPU602は、
図15に示すCPU602と同様に、強度分布における最大値と、強度分布における、最大値に対応する周波数を中心とする所定の周波数帯域の両端に対応する周辺値との差分を算出し、算出した差分の値に基づいて、マグネトロン42の異常発振を判定する。
【0130】
サーキュレータ802は、基準信号発生器801から発生した基準信号をサーキュレータ803へ伝送するとともに、負荷50側で反射されたマイクロ波をダミー負荷に吸収させる。
【0131】
サーキュレータ803は、サーキュレータ802によって伝送される基準信号を導波管60を介してマグネトロン42に注入する。マグネトロン42から発振されるマイクロ波の波形は、マグネトロン42に注入される基準信号によって整えられる。さらに、マグネトロン42から発振されるマイクロ波の周波数、すなわち、発振周波数は、マグネトロン42に注入される基準信号の周波数である目標周波数に引き寄せられ、調整される。基準信号発生器801、サーキュレータ802及びサーキュレータ803は、基準信号発生器801によって発生される基準信号をマグネトロン42に注入することによって、発振周波数を所定の周波数に調整する調整部の一例である。
【0132】
以上のように、第8の実施形態のプラズマ処理装置11は、周波数が目標周波数であり、かつ、マイクロ波の波形を整える基準信号をマグネトロン42に注入しつつ、発振周波数の調整の成否を判定し、さらに、マグネトロン42の異常発振を判定する。結果として、第8の実施形態によれば、マイクロ波の波形を整えつつ、発振周波数の調整の成否とマグネトロン42の異常発振とを複合的に判断することができる。
【0133】
なお、上記第8の実施形態では、インピーダンス発生器45を搭載する例を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、インピーダンス発生器45が省略されても良い。この場合、マイクロ波発生器41hは、
図21に示した構成となる。なお、
図21は、第8の実施形態に係るマイクロ波発生器の変形例の構成を示すブロック図である。