(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)及び(B)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(C)成分のSiH基が0.1〜4.0モルとなる量を含有するものであることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
前述のように、従来のシリコーン樹脂を用いて成形した硬化物は高透明性、高屈折率、優れた機械特性、耐熱・耐光性の何れも満足するものはなかった。
【0015】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記(A)〜(D)を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、高透明性、優れた耐熱性を維持したまま、高屈折率で、優れた機械特性を有し、過酷な熱サイクル試験でも破損しない特性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、粘度が25℃で10〜1,000,000mPa・sである芳香族基含有オルガノポリシロキサン、
(B)SiO
4/2単位10〜80mol%、(R
1)
2SiO
2/2単位1〜80mol%、及び(R
2)
3SiO
1/2単位1〜60mol%からなり、1分子中にSiOH基を0.1〜5.0mol%の範囲で含有するレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(式中、R
1は独立に炭素数2〜8のアルケニル基、又は脂肪族不飽和基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基であり、R
2は独立に炭素数2〜8のアルケニル基、又は脂肪族不飽和基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基であり、全R
2のうち少なくとも1個はアルケニル基である。)
(C)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有し、ケイ素原子に結合する全置換基のうち20〜80mol%がフェニル基であり、SiO
4/2単位は5mol%未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒
を含有し、前記(B)成分が、前記(A)成分と(B)成分との合計に対して、20〜80質量%の量を含有するものであることを特徴とする。
以下、各成分を詳細に説明する。
【0017】
<(A)成分:芳香族基含有オルガノポリシロキサン>
本発明のベース成分である芳香族基含有オルガノポリシロキサンは一分子中に2個以上の、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基で表される脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で10〜1,000,000mPa・s、特に100〜500,000mPa・sのオルガノポリシロキサンである。中でも下記一般式(1)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ少なくとも1個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sであり、作業性、硬化性等から好ましいものである。粘度がこの範囲よりも低いと成型が困難となるため好ましくなく、この範囲よりも高いと取り扱いが困難で、ボイド発生の要因となるため好ましくない。尚、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
尚、本組成物及び各成分の粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。
【0018】
【化1】
(式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基、R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換一価炭化水素基であり少なくとも1個の芳香族基を含有する。k,mは0又は正の整数である。)
【0019】
ここで、上記R
3の一価炭化水素基として、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等を例示できる。
【0020】
また、上記R
4の一価炭化水素基としても、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
3の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。
【0021】
上記k,mは、0又は正の整数であり、好ましくは0<k+m≦10,000を満たす0又は正の整数であり、より好ましくは5≦k+m≦2,000で、0<k/(k+m)≦0.2を満たす整数である。
【0022】
また、前記(A)成分中の全シロキサン単位の数に対する、アリール基がケイ素原子に結合しているシロキサン単位の数の割合は、好ましくは10%以上80%以下であり、より好ましくは30%以上75%以下であり、更に好ましくは40%以上70%以下である。この範囲内であれば高屈折率で、取り扱いやすい粘度になるため好ましい。尚、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が好ましく、特に好ましくはフェニル基である。
【0023】
(A)成分として具体的には、以下のものを例示できる。
【化2】
(式中、s、tは8〜2,000の整数である。)
【0025】
【化4】
(式中、k,mは前述した通りである。)
【0026】
<(B)成分:レジン構造のオルガノポリシロキサン>
本発明のベース成分であるレジン構造(すなわち三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、SiO
4/2単位10〜80mol%、(R
1)
2SiO
2/2単位1〜80mol%及び(R
2)
3SiO
1/2単位1〜60mol%からなり、1分子中にSiOH基を0.1〜5.0mol%の範囲で含有する。
(式中、R
1は独立に炭素数2〜8のアルケニル基、又は脂肪族不飽和基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基であり、R
2は独立に炭素数2〜8のアルケニル基、又は脂肪族不飽和基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基であり、全R
2のうち少なくとも1個はアルケニル基である。)
【0027】
前記R
1、R
2で表されるアルケニル基は炭素数2〜8であり、その好ましい例としては、ビニル基、アリル基が例示される。また、全R
1、R
2の1〜50モル%、好ましくは2〜30モル%、より好ましくは3〜20モル%をアルケニル基とすることができる。
【0028】
前記R
1、R
2で表される脂肪族不飽和基を含まない置換または非置換の一価炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、例えば、クロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示できる。これらの中でも、炭素原子数が1〜10、特に1〜6の範囲にあるものが好適である。また、全R
1、R
2うち好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜90mol%、更に好ましくは10〜80mol%、特に好ましくは20〜70mol%をフェニル基とすることができる。
【0029】
前記(B)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができ、前記(A)成分と(B)成分との合計に対して、20〜80質量%の量で含有される。前記(B)成分の重量平均分子量(以下Mwと省略する)は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,200〜9,500、更に好ましくは1,500〜9,000である。Mw=1,000以上であれば保存安定性が良く、硬化物の機械特性も良好であり、Mw=10,000以下であれば粘度が高くなりすぎないので取扱いが容易であるため好ましい。
【0030】
尚、本明細書中で言及するMwとは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質としたMwを指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:THF
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcol
umn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0031】
前記(B)成分において、
1H−NMRにより測定したケイ素原子に結合する水酸基(SiOH基)の含有量は、1分子中に0.1mol%〜5.0mol%の範囲であり、0.2mol%〜3.0mol%が特に好ましい。水酸基量が、0.1mol%未満の場合、接着性が悪くなり、5.0mol%を超えると、経時で縮合が進み保存安定性が低下する。また、ケイ素原子に結合するアルコキシ基量(好ましくはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素鎖が1〜6までのアルコキシ基)は、好ましくは0.01mol%〜10mol%、より好ましくは0.05mol%〜8mol%、更に好ましくは0.1mol%〜5mol%の範囲である。アルコキシ基量の下限値に関して、アルコキシ基量は低い方が望ましいが、完全に0にするのは難しく、少なくとも上記下限値程度のアルコキシ基は残存する。アルコキシ基量が10mol%以下であれば保存安定性の低下を起こさないため好ましい。
【0032】
前記(B)成分は、各単位源となる化合物を前記範囲内のモル比で混合し、例えば、酸存在下で共加水分解を行うことによって容易に合成することができる。ここで、前記SiO
4/2単位源としては、例えば、ケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート、四塩化ケイ素等が例示できる。また、前記(R
1)
2SiO
2/2単位源としては、例えば、下記構造式で表されるジオルガノクロロシラン、ジオルガノアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できる(R
1)
2SiO
2/2単位源はこれに限定されない。
【0034】
前記(R
2)
3SiO
1/2単位源としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できる(R
2)
3SiO
1/2単位源はこれに限定されない。
【0038】
<(C)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明のベース成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)を有し、ケイ素原子に結合する全置換基のうち20〜80mol%がフェニル基であり、SiO
4/2単位は5mol%未満である。前記(C)成分は架橋剤として作用するものであり、前記(C)成分中のSiH基と前記(A)成分ならびに前記(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基(好ましくはビニル基及び/またはアリル基)とが付加反応することにより、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物から硬化物が形成される。前記(C)成分中の分子構造は、直線状、分岐鎖状、環状、分岐を有する環状、網状のいずれであってもよい。SiH基の位置には特に制限はなく、前記(C)成分が分子鎖末端部分を有する場合、SiH基は分子鎖末端部分及び分子鎖非末端部分のどちらか一方に存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。前記(C)成分は1種類単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0039】
前記(C)成分の構成単位のうちSiO
4/2単位が5mol%以上(C)成分中に含まれる場合、混合後の組成物の粘度が増加し、取り扱いが困難となる。更に加熱硬化後、硬く、もろいため好ましくない。5mol%未満であれば優れた強度、ゴム的特性を維持することができるので好ましく、全く含まないことが更に好ましい。
【0040】
前記(C)成分はケイ素原子に結合する全置換基うちフェニル基を20〜80mol%含有し、好ましくは30〜60mol%である。
フェニル基含有率がこの範囲内である場合、硬化特性に優れ、高屈折率で発光効率の向上に寄与することができる。
【0041】
前記(C)成分としては、例えば、下記平均組成式(2)で表すことができ、1分子中にSiH基を少なくとも2個、好ましくは3個以上(例えば、3〜200個、4〜100個程度)有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。SiH基の位置は特に制限はなく、分子の末端でも途中でもよい。
H
d(R
5)
eSiO
(4−d−e)/2 (2)
(式中、R
5は脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、d及びeは、0.001≦d<2、0.7≦e≦2、かつ0.8≦d+e≦3を満たす数である。)
【0042】
ここで、前記平均組成式(2)中のR
5は、脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜7の一価炭化水素基が挙げられ、その例としては、前記一般式(1)の置換基R
3で例示された官能基のうち、アルケニル基以外の基、例えば、メチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0043】
また、前記平均組成式(2)中のd及びeは0.001≦d<2、0.7≦e≦2、かつ0.8≦d+e≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦d<1、0.8≦e≦2、かつ1≦d+e≦2.7を満たす数である。前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子数は、通常、2〜300個、好ましくは3〜200個、更に好ましくは4〜100個程度のものが好適に使用される。
【0044】
前記(C)成分としては、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、1−フェニル−3,5,7−トリメチル−シクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(C
6H
5)
2SiO
2/2単位とCH
3SiO
3/2単位とから成る共重合体、SiO
4/2単位と(C
6H
5)
2SiO
2/2単位と(C
6H
5)(CH
3)
2SiO
1/2単位と(CH
3)
2HSiO
1/2単位とから、もしくはそのいずれかから成る共重合体等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記(C)成分は、通常、R
5SiHCl
2、(R
5)
3SiCl、(R
5)
2SiCl
2、(R
5)
2SiHCl(R
5は、前記の通りである)等を加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0046】
前記(C)成分の配合量は、前記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基で表される脂肪族不飽和結合ならびに前記(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基(好ましくはビニル基及び/またはアリル基)の合計1モル当たり、(C)成分中のSiH基の量が好ましくは0.1〜4.0モル、より好ましくは0.3〜3.0モルとなる量である。該配合量がこの範囲内にあると、硬化反応が十分に進行するため、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物からシリコーンゴム硬化物を容易に得ることができ、また、硬化物中に残存する未反応SiH基を少量に抑えられ、ゴム物性の経時変化が生じにくいため、好適である。
【0047】
<(D)成分:白金族金属系触媒>
(D)成分は、本発明の組成物の付加硬化反応を生じさせるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがあるが、コスト等の見地から白金、白金黒、塩化白金酸等の白金系のもの、例えば、H
2PtCl
6・mH
2O,K
2PtCl
6,KHPtCl
6・mH
2O,K
2PtCl
4,K
2PtCl
4・mH
2O,PtO
2・mH
2O(mは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができ、これらは単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。これらの触媒成分の配合量は、所謂触媒量でよく、通常、前記(A)〜(C)成分の合計量に対して白金族金属換算(質量)で0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜200ppmの範囲で使用される。触媒量が上記下限値以上の場合、ヒドロシリル化反応が進行しやすく、硬化不良が生じにくくなり、上限値以下の場合、着色を生じにくい。
【0048】
<その他の成分>
また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物には、(A)〜(D)成分以外にも、必要に応じてそれ自体公知の各種の接着付与剤や添加剤を配合することができる。例えば、接着付与剤においては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等や、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン及び、そのオリゴマー等が挙げられる。これらの接着付与剤は、単独でも2種類以上混合して使用してもよい。該接着付与剤は、(A)〜(D)成分の合計質量に対し、0〜10質量%、特に0〜5質量%となる量で配合するのが好ましい。
【0049】
添加剤においては、例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填材、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填材を、(A)〜(D)成分の合計100質量部当たり600質量部以下(例えば0〜600質量部、通常、1〜600質量部、更に好ましくは10〜400質量部程度)の範囲で適宜配合することができる。
【0050】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述した各成分を均一に混合することによって調製されるが、通常は、硬化が進行しないように2液に分けて保存され、使用時に2液を混合して硬化を行う。この場合、(C)成分と(D)成分を別々にする必要がある。勿論、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0051】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱して硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60〜200℃とすることができる。
【0052】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、必要により加熱することでただちに硬化して、高い硬度を有し、強度の優れた弾性硬化物を形成する。該硬化物は、シリコーン硬化物の温度変化によるクラックが問題となる用途において広く使用することができる。具体的には、該硬化物は、例えば、電気電子部品及び光電子部品の保護コート剤、モールド剤、レンズ材料として、ならびにこれらの部品のポッティング及びキャスティングに、更にシリコーンゴムキーボードの表面コートに使用することができる。
【0053】
尚、本発明の組成物の硬化により得られる硬化物の屈折率は1.50〜1.60の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、前記硬化物はレンズ材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、下記例で部は質量部を示す。更に、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を示す。
尚、実施例中の粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。
【0055】
[実施例1]
【化9】
(式中、l=68、n=30である)
で示される(A)オルガノポリシロキサン(粘度:4,000mPa・s)50部に、(B)SiO
4/2単位46mol%、Ph
2SiO
2/2単位20mol%、MePhViSiO
1/2単位10mol%及びMe
2PhSiO
1/2単位24mol%から成るレジン構造のビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部(Mw=2500、水酸基量:0.4mol%、アルコキシ基量:MeO基=0.9mol%、PrO基=0.2mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1molあたり1.1molとなる量(以下、該SiH基の該ビニル基に対する比を「SiH/SiVi」と表す場合がある。)の、下記式:
【化10】
(式中、p=38、q=17である)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物を形成した。
【0056】
[実施例2]
実施例1で用いた(A)オルガノポリシロキサン(粘度:4,000mPa・s)50部に、(B)SiO
4/2単位40mol%、Ph
2SiO
2/2単位40mol%、MePhViSiO
1/2単位10mol%及びMe
2PhSiO
1/2単位10mol%から成るレジン構造のビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部(Mw=2,800、水酸基量:0.5mol%、アルコキシ基量:MeO基=0.6mol%、PrO基=0.2mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0057】
[実施例3]
【化11】
(式中、l=13、n=15である)
で示される(A)オルガノポリシロキサン(粘度:9,000mPa・s)50部に、(B)実施例1で用いたビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0058】
[実施例4]
実施例3で用いた(A)オルガノポリシロキサン(粘度:9,000mPa・s)50部に、(B)実施例2で用いたビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0059】
[比較例1]
実施例1で用いた(A)オルガノポリシロキサン50部に、(B’)SiO
4/2単位50mol%、MePhViSiO
1/2単位15mol%及びMe
3SiO
1/2単位35mol%から成るレジン構造のビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部(Mw=3,000、水酸基量:0.05mol%、アルコキシ基量:MeO基=0.05mol%、PrO基=0.01mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B’)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0060】
[比較例2]
実施例1で用いた(A)オルガノポリシロキサン50部と、(B’)SiO
4/2単位46mol%、Ph
2SiO
2/2単位20mol%、MePhViSiO
1/2単位10mol%及びMe
2PhSiO
1/2単位24mol%から成るレジン構造のPVMQ50部(Mw=2,400、水酸基量:0.05mol%、アルコキシ基量:MeO基=0.1mol%、PrO基=0.01mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B’)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0061】
[比較例3]
実施例1で用いた(A)オルガノポリシロキサン50部に、(B’)PhSiO
3/2単位70mol%、MePhViSiO
1/2単位10mol%及びMe
2PhSiO
1/2単位20mol%から成るレジン構造のビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部(Mw=3,000、水酸基量:0.1mol%、アルコキシ基量:MeO基=0.3mol%、PrO基=0.03mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B’)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0062】
[比較例4]
実施例1で用いた(A)オルガノポリシロキサン50部に、(B’)SiO
4/2単位46mol%、Ph
2SiO
2/2単位20mol%、MePhViSiO
1/2単位10mol%及びMe
2PhSiO
1/2単位24mol%から成るレジン構造のビニルフェニルメチルポリシロキサン(PVMQ)50部(Mw=800、水酸基量:8mol%、アルコキシ基量:MeO基=4mol%、PrO基=0.5mol%)、(C)SiH基量が、前記(A)及び(B’)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計1モルあたり1.1モルとなる量の実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ならびに、(D)塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:2質量%)0.05部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。実施例1と同様にして、この組成物から硬化物を形成し、その物性を測定した。
【0063】
実施例及び比較例の物性は下記の方法で測定した。
・屈折率測定:アッベ型屈折率計により、25℃における該組成物の屈折率を測定
・引張試験:JIS K 6249に準拠して、厚さ1mm、幅1cmの該硬化物の引張強さ、及び切断時伸びを測定。
・硬さ:タイプA硬度計を用いて測定。
・表面タック性:指触にて確認。
・熱衝撃試験:アルミニウム皿(直径6cm、深さ0.6mm)にシリコーンゴム組成物を封入し硬化させて得たサンプルを、−50℃〜150℃の冷熱サイクル(−50℃で30分間放置後150℃の恒温槽に30分間放置する操作を1サイクルとして繰り返す。)に投入しクラック発生の有無を確認。
・光透過率:厚さ1mmの硬化物を作製し、日立分光光度計U−4100を用いて光透過率(450nm)を初期透過率として測定し、その後、硬化物を150℃、1000時間処理した後、同様に光透過率を測定。
・接着試験:ミクロスパチュラを用いて硬化物を破壊し、基板からはぎ取る際に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を観測し、その接着性を判定した。
判定基準
○:よく接着する(凝集破壊の割合80%以上)
△:一部接着する(凝集破壊の割合80〜20%以上)
×:接着しない(凝集破壊の割合20%以下)
各測定結果について、実施例は表1に、比較例は表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1に示すように、実施例1〜4は、硬化物の硬さも十分であり、硬化物の屈折率及び光透過率も良好で、優れた機械特性を有し、熱衝撃試験によるクラックの発生も見られなかった。
【0067】
一方、表2に示すように、比較例1は、硬化物の屈折率、機械特性に劣るものであり、また熱衝撃試験によりクラックが発生した。比較例2は、硬化物の屈折率は良好だが、機械特性に劣るものであり、また熱衝撃試験によりクラックが発生した。比較例3は、硬化物の光透過率、機械特性に劣るものであった。比較例4は硬化物の硬さ、機械特性に劣るものであった。
尚、比較例1は本発明の(B)成分に対応するものとして(R
1)
2SiO
2/2単位を含まないものを、比較例2は(B)成分に対応するものとして水酸基量が0.1mol%より低い値のものを、比較例3は本発明の(B)成分に対応するものとしてSiO
4/2単位、(R
1)
2SiO
2/2単位を含まず、R
1SiO
3/2単位を含むものを、そして比較例4は本発明の(B)成分に対応するものとして水酸基量が5.0mol%より高い値のものを含有するものである。
【0068】
本試験の結果、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、MQレジンの高透明性、優れた耐熱性を維持したまま、高屈折率で、優れた機械特性を有し、過酷な熱サイクル試験でも破損しない特性を有する硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物として極めて有用であることが確認された。
【0069】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。