特許第5822003号(P5822003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822003
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】セクタアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/10 20060101AFI20151104BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20151104BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   H01Q19/10
   H01Q21/30
   H01Q21/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-145655(P2014-145655)
(22)【出願日】2014年7月16日
(62)【分割の表示】特願2011-1975(P2011-1975)の分割
【原出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-197908(P2014-197908A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 智之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹浩
(72)【発明者】
【氏名】村野 慎介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼太
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−060062(JP,A)
【文献】 特開2005−033261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00− 5/55
H01Q 15/18
H01Q 19/10
H01Q 21/30− 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯で水平偏波を送受信する周波数共用ダイポール素子と、
前記周波数共用ダイポール素子に沿って、かつ周波数共用ダイポール素子と離間して配置され、前記周波数共用ダイポール素子からの水平偏波を反射する第1反射板と、
前記周波数共用ダイポール素子と前記第1反射板との間に前記第1反射板と非導通状態で配置されると共に、前記周波数共用ダイポール素子の両先端の外側に起立して配置された1対の第2反射板と、
を備え、
前記1対の第2反射板は、前記複数の周波数帯の水平偏波のビーム幅を調整するものであり、前記複数の周波数帯で水平偏波のビーム幅を概等しくするか、又は前記複数の周波数帯のうち高い方の周波数帯で前記複数の周波数帯のうち低い方の周波数帯よりも水平偏波のビーム幅を広くすることを特徴とするセクタアンテナ。
【請求項2】
前記1対の第2反射板は、互いの間隔が前記周波数共用ダイポール素子に向けて大きくなるように、外側方向へ傾斜して配置される請求項1記載のセクタアンテナ。
【請求項3】
前記第1反射板は、外側方向の両端部に側面反射板を備える請求項1又は2記載のセクタアンテナ。
【請求項4】
前記側面反射板は、前記1対の第2反射板よりも外側に配置される請求項3記載のセクタアンテナ。
【請求項5】
前記第1反射板と水平平面とに垂直な中心平面に対して面対称形状である請求項1〜4いずれか記載のセクタアンテナ。
【請求項6】
前記周波数共用ダイポール素子は、複数あり、その長手方向がそれぞれ水平方向となるように配置されると共に垂直方向にそれぞれ平行に配置される請求項1〜4いずれか記載のセクタアンテナ。
【請求項7】
前記第1反射板は、複数の前記周波数共用ダイポール素子とそれぞれ平行となるように配置される請求項6記載のセクタアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯で水平偏波を送受信するための周波数共用ダイポール素子を備えるセクタアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの移動通信端末が急速に普及しており、例えば800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の周波数を共用して高速のデータ通信が行われている。
【0003】
このような移動通信端末と複数の周波数帯(例えば、1.5GHz帯および2GHz帯)で水平偏波の送受信を行うアンテナ装置として、図7(a)に示すようなセクタアンテナがある。セクタアンテナは、アンテナを中心(頂点)とする所定角度の扇形セクタに対して送受信を行うためのアンテナ装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7(a)に示す従来構造のセクタアンテナ70は、1.5GHz帯および2GHz帯の水平偏波を送受信する周波数共用ダイポール素子11と、周波数共用ダイポール素子11に沿って配置される第1反射板12と、周波数共用ダイポール素子11の両先端14,14より外側の第1反射板12上に配置される1対の第2反射板13c,13cと、第1反射板12の両端部に配置される側面反射板15と、を備える。
【0005】
セクタアンテナ70から放射される水平偏波は、第1反射板12により主放射方向16(扇形セクタの中心方向)へ反射されると共に、1対の第2反射板13c,13cの間隔によりビーム幅が扇形セクタの角度と同一になるように調整され、さらに側面反射板15により水平偏波のアンテナ背面への回り込みが抑制される。
【0006】
このセクタアンテナ70は、図7(b)に示すような放射特性で1.5GHz帯および2GHz帯の水平偏波を放射する。
【0007】
このようなセクタアンテナを複数(例えば、120度の扇形セクタでは3基)組合わせることで、360度全方位の通信エリアがカバーされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−60062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エリア設計の都合上、複数の周波数帯においてビーム幅を概等しくする、また、高い方の周波数帯において、よりビーム幅を広くすることが求められる場合がある。
【0010】
しかしながら従来のセクタアンテナの構造においては、一般に高い方の周波数帯においてビーム幅が狭くなるという問題がある。
【0011】
水平偏波のビーム幅は、第2反射板の間隔を変えることにより調整されるが、従来構造のセクタアンテナでは第2反射板の間隔を変えても、高い方の周波数帯のビーム幅は第2反射板の間隔によらず常に低い方の周波数帯より狭くなる。
【0012】
例えば、図7に示した従来構造のセクタアンテナ70では、2GHz帯の水平偏波の規格化放射利得(ビーム幅)が1.5GHz帯よりも狭くなっており、異なる周波数帯の水平偏波で同一のビーム幅を得ることができない。
【0013】
このため、2GHz帯の水平偏波のビーム幅が扇形セクタの角度と同一となるように第2反射板13cの間隔を調整すると、1.5GHz帯のビーム幅は扇形セクタの角度より広くなり、複数のセクタアンテナ70を組合わせて使用する際に、隣接する扇形セクタとの境界近傍で1.5GHz帯が干渉してしまう。
【0014】
他方、1.5GHz帯の水平偏波のビーム幅が扇形セクタの角度と同一となるように第2反射板13cの間隔を調整すると、2GHz帯のビーム幅は扇形セクタの角度より狭くなり、扇形セクタの境界近傍で2GHz帯の不感地帯が形成される。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、複数の周波数帯で水平偏波を送受信する際に、異なる周波数帯のビーム幅を概等しくする、また、高い方の周波数帯において、よりビーム幅を広くすることが可能なセクタアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、複数の周波数帯で水平偏波を送受信する周波数共用ダイポール素子と、前記周波数共用ダイポール素子に沿って、かつ周波数共用ダイポール素子と離間して配置され、前記周波数共用ダイポール素子からの水平偏波を反射する第1反射板と、前記周波数共用ダイポール素子と前記第1反射板との間に前記第1反射板と非導通状態で配置されると共に、前記周波数共用ダイポール素子の両先端の外側に起立して配置された1対の第2反射板と、を備え、前記1対の第2反射板は、前記複数の周波数帯の水平偏波のビーム幅を調整するものであり、前記複数の周波数帯で水平偏波のビーム幅を概等しくするか、又は前記複数の周波数帯のうち高い方の周波数帯で前記複数の周波数帯のうち低い方の周波数帯よりも水平偏波のビーム幅を広くするセクタアンテナである。
【0017】
前記1対の第2反射板は、互いの間隔が前記周波数共用ダイポール素子に向けて大きくなるように、外側方向へ傾斜して配置されると良い。
【0018】
前記第1反射板は、外側方向の両端部に側面反射板を備えると良い。
【0019】
前記側面反射板は、前記1対の第2反射板よりも外側に配置されると良い。
【0020】
前記第1反射板と水平平面とに垂直な中心平面に対して面対称形状であると良い。
【0021】
前記周波数共用ダイポール素子は、複数あり、その長手方向がそれぞれ水平方向となるように配置されると共に垂直方向にそれぞれ平行に配置されると良い。
【0022】
前記第1反射板は、複数の前記周波数共用ダイポール素子とそれぞれ平行となるように配置されると良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の周波数帯で水平偏波を送受信する際に、異なる周波数帯のビーム幅を概等しくする、また、高い方の周波数帯において、よりビーム幅を広くすることが可能なセクタアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は第一の実施の形態に係るセクタアンテナの構造を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A線断面図であり、(c)はそのセクタアンテナの水平偏波の放射特性を規格化放射利得で表す図である。
図2】(a)は第二の実施の形態に係るセクタアンテナの構造を示す概略断面図であり、(b)はそのセクタアンテナの水平偏波の放射特性を規格化放射利得で表す図である。
図3】(a)は実施例のセクタアンテナの概略断面図であり、(b)はその寸法図である。
図4】実施例のセクタアンテナの第2反射板の間隔とビーム幅との関係を示す図である。
図5】(a)は比較例のセクタアンテナの概略断面図であり、(b)はその寸法図である。
図6】比較例のセクタアンテナの第2反射板の間隔とビーム幅との関係を示す図である。
図7】(a)は従来構造のセクタアンテナの構造を示す概略断面図であり、(b)はそのセクタアンテナの水平偏波の放射特性を規格化放射利得で表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき説明する。
【0027】
図1(a)は第一の実施の形態に係るセクタアンテナの構造を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A線断面図であり、(c)はそのセクタアンテナの水平偏波の放射特性を規格化放射利得で表す図である。ここで規格化放射利得とは、セクタアンテナの主放射方向を0度とし、主放射方向における放射利得を0dBとして規格化したものである。
【0028】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るセクタアンテナ10は、複数の周波数共用ダイポール素子11と、第1反射板12と、1対の第2反射板13n,13nと、を主に備える。
【0029】
複数の周波数共用ダイポール素子11は、垂直方向(図1(a)ではZ方向)に平行に配置されている。また、周波数共用ダイポール素子11は、その長手方向が水平方向(図1(a)ではX方向)となるように配置され、水平偏波の送受信を行うことができる。なお、本実施の形態では、周波数共用ダイポール素子11は、1.5GHz帯および2GHz帯を共用して水平偏波の送受信を行うように構成される。
【0030】
第1反射板12は周波数共用ダイポール素子11に沿って、かつ周波数共用ダイポール素子11と離間されて配置され、図示しないグラウンドと電気的に接続される。第1反射板12は、周波数共用ダイポール素子11から放射された複数の周波数帯の水平偏波を主放射方向16へ反射するためのものである。なお、本実施の形態では、第1反射板12は、複数の周波数共用ダイポール素子11とそれぞれ平行となるように配置されている。
【0031】
1対の第2反射板13n,13nは、周波数共用ダイポール素子11と第1反射板12との間の空間に、周波数共用ダイポール素子11の両先端14,14の外側に起立して配置されると共に、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態で配置される。第2反射板13nは、水平偏波のビーム幅を周波数帯毎に個別に調整するためのものである。
【0032】
また、第1反射板12は、外側方向(図1(b)では左右方向)の両端部に側面反射板15,15を備える。側面反射板15は、第1反射板12の裏面側への水平偏波の回り込みを抑制するためのものである。
【0033】
またセクタアンテナ10は、第1反射板12と水平平面(図1(b)ではXY平面)とに垂直な中心平面に対して面対称形状となるように、周波数共用ダイポール素子11、第1反射板12、第2反射板13n、側面反射板15の形状および配置位置が決定される。これにより、扇形セクタ内での水平偏波のビームを均質なものとすることができる。
【0034】
なお、本発明は第2反射板13nを非導通状態で配置するための手段を特に限定するものではなく、例えば樹脂スペーサ17などを用いることができる。
【0035】
このようにされることで、本実施の形態に係るセクタアンテナ10は、図1(c)に示すように、1.5GHz帯のビーム幅(規格化放射利得)を広げることなく、2GHz帯のビーム幅を広げ、両周波数帯のビーム幅を概等しくすることができる。
【0036】
この第2反射板13nの作用について本発明者らは、2GHz帯の水平偏波により第2反射板13nで励起される電流分布の強度が1.5GHz帯より大きいため、ビーム幅が広がったものと推察している。
【0037】
次に本発明の第二の実施の形態について説明する。
【0038】
図2(a)に示すように、本実施の形態に係るセクタアンテナ20は、その基本構造を第一の実施の形態のセクタアンテナ10と同じくすると共に、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態で、周波数共用ダイポール素子11と第1反射板12との間の空間に配置される1対の第2反射板13t,13tを備える。1対の第2反射板13t,13tは、周波数共用ダイポール素子11の両先端14,14の外側に起立して、かつ互いの間隔が周波数共用ダイポール素子11に向けて大きくなるように外側方向へ傾斜して配置される。
【0039】
このようにされることで、本実施の形態に係るセクタアンテナ20は、図2(b)に示すように、1.5GHz帯のビーム幅(規格化放射利得)を広げることなく、2GHz帯のビーム幅を1.5GHz帯より広くすることができる。
【0040】
ここで表1に、本発明のセクタアンテナ10,20および従来構造のセクタアンテナ70の、1.5GHz帯および2GHz帯の水平偏波の3dBビーム幅(規格化放射利得−3dBの角度)を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、第1反射板12およびグラウンドに対して導通状態で第2反射板13cが配置される従来構造のセクタアンテナ70(従来)では、1.5GHz帯の3dBビーム幅が73度であるのに対し、2GHz帯は68度であり、高い方の周波数帯で、ビーム幅が狭くなっていることがわかる。
【0043】
一方、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態で第2反射板13nが配置されるセクタアンテナ10(発明1)は、従来構造で得られた1.5GHz帯の3dBビーム幅73度を変化させることなく、2GHz帯の3dBビーム幅を広げ、1.5GHz帯と同じ73度としていることがわかる。
【0044】
また、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態かつ外側に傾斜して第2反射板13tが配置されるセクタアンテナ20(発明2)は、従来構造で得られた1.5GHz帯の3dBビーム幅73度を変化させることなく、2GHz帯の3dBビーム幅をさらに広げ、1.5GHz帯よりも大きい76度としていることがわかる。
【0045】
以上要するに、本発明のセクタアンテナでは、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態で第2反射板13nを配置することにより、低周波数帯の水平偏波のビーム幅を変化させることなく、両周波数帯のビーム幅を概ね同じくすることが可能である。
【0046】
また第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態で、かつ外側方向へ傾斜させて第2反射板13tを配置することにより、低周波数帯の水平偏波のビーム幅を変化させることなく、高周波数帯のビーム幅を低周波数帯より広げることが可能である。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば800MHz帯などの他の周波数帯を共用するセクタアンテナに対しても適用可能である。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0049】
[実施例]
図3(a)に示すように、1.5GHz帯および2GHz帯の水平偏波を共用する周波数共用ダイポール素子11から、平行に40mm離間させて第1反射板12(幅:184mm)を配置すると共に、その第1反射板12と周波数共用ダイポール素子11との間に1対の第2反射板13t(幅:約31.6mm)を第1反射板12との間隔が5mmとなるように非導通状態で配置し、第二の実施の形態に係るセクタアンテナ20を構成した。第1反射板12は両端部に高さ5mmの側面反射板15を有し、グラウンドと電気的に接続した。また、1対の第2反射板13t,13tは内幅116mmで離間すると共に、外幅が136mmとなるように外側へ約18.4度傾斜して配置した。ここでは、樹脂スペーサを用いて第2反射板13tを第1反射板12上に固定し、第1反射板12およびグラウンドに対して非導通状態となるようにした。このセクタアンテナ20の寸法を図3(b)に示す。
【0050】
このように構成したセクタアンテナの放射特性を評価したところ、図2(b)に示したような規格化放射利得が得られ、1.5GHz帯の3dBビーム幅が73度であったことに対して、2GHz帯の3dBビーム幅は76度となり、低周波数帯のビーム幅よりも高周波数帯のビーム幅を広くすることができた。
【0051】
さらに、外側に傾斜して配置した1対の第2反射板13tの間隔を変化させてセクタアンテナの放射特性を測定し、第2反射板の間隔と3dBビーム幅の関係について評価した結果を図4に示す。
【0052】
図4に示すように、2GHz帯の3dBビーム幅は第2反射板の外幅Wの変化に関わらず、1.5GHz帯よりも広くなっており、非導通状態で外側に傾斜させて第2反射板を配置することにより、より高い方の周波数帯においてビーム幅を広くできることがわかる。
【0053】
また、第2反射板の外幅Wを126mmとしたときには、1.5GHz帯の3dBビーム幅が74度であることに対して2GHz帯の3dBビーム幅は82度とさらに広くなっており、非導通状態の第2反射板の配置を調整することにより、水平偏波のビーム幅を周波数帯毎に個別に調整できることがわかる。
【0054】
次に、比較例について説明する。
【0055】
[比較例]
図5(a)に示すように、1.5GHz帯および2GHz帯の水平偏波を共用する周波数共用ダイポール素子11から、平行に40mm離間させて第1反射板12(幅:184mm)を配置すると共に、その第1反射板12上に1対の第2反射板13c(幅:25mm)を第1反射板12と導通状態で配置し、従来構造のセクタアンテナ70を構成した。第1反射板12は両端部に高さ5mmの側面反射板15を有し、グラウンドと電気的に接続した。また、1対の第2反射板13cは間隔140mmで離間して第1反射板12に対して垂直に配置した。ここでは、第2反射板13cが第1反射板12およびグラウンドに対して導通状態となるようにした。このセクタアンテナ70の寸法を図5(b)に示す。
【0056】
このように構成したセクタアンテナの放射特性を評価したところ、図7(b)に示したような規格化放射利得が得られ、1.5GHz帯の3dBビーム幅が73度であることに対して2GHz帯の3dBビーム幅は68度であった。
【0057】
さらに、1対の第2反射板13cの間隔を変化させたセクタアンテナの放射特性を測定し、第2反射板の間隔と3dBビーム幅の関係について評価した結果を図6に示す。
【0058】
図6に示すように、2GHz帯の3dBビーム幅は第2反射板の間隔Wの変化に関わらず、1.5GHz帯よりも常に狭くなる傾向を示しており、第1反射板と導通状態で配置される第2反射板では、異なる周波数帯のビーム幅を同じくする、また、より高い方の周波数帯のビーム幅を広くできないことがわかる。
【0059】
以上説明した実施例および比較例により、本発明のセクタアンテナは第2反射板を非導通状態とし、その寸法および配置を調整することで、水平偏波のビーム幅を周波数帯毎に個別に調整できることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
10 セクタアンテナ
11 周波数共用ダイポール素子
12 第1反射板
13n 第2反射板
14 周波数共用ダイポール素子の先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7