(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記露光する段階は、マスクに形成された前記パターンを投影方式、又はプロキシミティ方式で露光する露光装置、DMDを使ったマスクレス露光装置、或いはレーザスポットを走査してパターン描画を行うプリンタのいずれかによって実施される、
請求項2に記載のパターン露光方法。
前記露光する段階において、前記露光領域を前記シート基板の長尺方向の幅が狭いスリット状の露光領域に設定し、前記シート基板の前記2ヶ所の位置の間で前記スリット状の露光領域を前記シート基板の短尺方向の収縮の変化率が大きい部分に設定すること、
を含む請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のパターン露光方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本実施形態の説明をする。
図1は、本実施形態に係る基板処理装置100の構成を示す模式図である。
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部(パターン形成装置)3と、基板Sを回収する基板回収部4と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行する。
この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。
【0012】
なお、本実施形態では、
図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−X軸側)からプラス側(+X軸側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0013】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0014】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくできる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。また、基板Sはフロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単体、或いはその極薄ガラスに上記樹脂フィルムやアルミ箔を貼り合わせた積層体であっても良い。
【0015】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば、基板SのY軸方向の寸法が1m以下又は50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX軸方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0016】
基板Sは、可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、前記基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、前記基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0017】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3へ送り出して供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部や前記軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。
なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構(例えばニップ式の駆動ローラ等)を含むものであればよい。
【0018】
基板回収部4は、基板処理装置100を通過した基板Sを、例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や前記軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには、例えば基板Sを重ねた状態で回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0019】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して処理を行う。基板処理部3は、基板Sの被処理面Saに対して加工処理を行なう加工処理装置(パターン形成部)10と、加工処理の形態に対応した条件で基板Sを送る駆動ローラーR等を含む搬送装置(基板搬送部)20とを有している。
【0020】
加工処理装置10は、基板Sの被処理面Saに対して、例えば有機EL素子を形成するための各種装置を有している。このような装置としては、例えば被処理面Sa上に隔壁を形成するためのインプリント方式等の隔壁形成装置、電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。
【0021】
より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置など)、成膜装置(例えば鍍金装置、蒸着装置、スパッタリング装置など)、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられ、フレキシブル・ディスプレイのパネル等が、所謂ロール・ツー・ロール方式で生産可能となっている。本実施形態では、加工処理装置10として、露光装置が設けられるものとし、その前後の工程(感光層形成工程、感光層現像工程等)を担う装置も必要に応じてインライン化して設けられる。
【0022】
基板処理部3には、露光装置としての加工処理装置10と協働するアライメントカメラ5が設けられている。アライメントカメラ5は、例えば基板Sの−Y軸側端辺及び+Y軸側端辺のそれぞれに沿って形成されたアライメントマークALM(
図3参照)を個別に検出する。アライメントカメラ5による検出結果は、制御部CONTに送信される。
【0023】
図2及び
図3は、本実施形態の第1の構成による基板処理部3の一部の構成を示す図である。
図2は、第1の構成による基板処理部3の構成の正面図である。
図3は、第1の構成による基板処理部3の構成の平面図である。
図2及び
図3に示すように、基板処理部3は、第1ローラー11(回転ローラー)、ニップローラー11a(回転ローラー)、第2ローラー12(回転ローラー)、ニップローラー12a(回転ローラー)、筐体13及び加工処理装置10としての露光装置EXを有している。
【0024】
第1ローラー11は、筐体13側へ向けて+X軸方向に基板Sを案内する第1案内部材(基板案内部材)である。第1ローラー11は、筐体13に対して基板Sの搬送方向の上流側(−X軸側)においてY軸に平行に設けられており、Y軸と平行な回転軸を中心としてモータ等によって回転可能に設けられている。基板Sは、第1ローラー11とニップローラー11aとによって挟持され、+X軸方向に向かって矢印Dxのように搬送されるように支持される。
【0025】
第2ローラー12は、筐体13からの基板Sを+X軸側に案内する第2案内部材(基板案内部材)である。
第2ローラー12は、筐体13に対して基板Sの搬送方向の下流側(+X軸側)においてY軸に平行に配置され、Y軸と平行な回転軸を中心としてモータ等によって回転可能に設けられている。基板Sは、第2ローラー12とニップローラー12aとによって挟持され、+X軸方向に向かって矢印Dxのように搬送されるように支持される。
【0026】
筐体13は、第1ローラー11と第2ローラー12との間に配置されている。筐体13は、例えば直方体状に形成されている。筐体13は、底部13B、壁部13Wを有している。底部13Bは、筐体13の−Z軸側の端面を構成する。壁部13Wは、−X軸側の端面13Wa、+X軸側の端面13Wb、+Y軸側の端面13Wc及び−Y軸側の端面13Wdによって構成される。
なお、筐体13の+Z軸側には、投影露光方式の場合には投影光学系PLが配置され、プロキシミティ露光方式の場合には、マスクステージ部MSTが配置される。
【0027】
壁部13Wa〜13Wd及び底部13Bに囲まれた収容室13Rの内部には、基板Sに対する加工処理(ここでは露光)が施される基板ステージ機構(基板支持部)14が設けられる。その為、筐体13の−X軸側の端面13Waには、第1ローラー11から搬入される基板Sを通す開口部13mが形成される。また、筐体13の+X軸側の端面13Wbには、収容室13R(基板ステージ機構14)から第2ローラー12へ基板Sを搬出する開口部13nが形成されている。
【0028】
底部13Bの−Z軸側には、移動ローラー17が形成されている。移動ローラー17は、ガイドレール16に載置されている。ガイドレール16は、基板処理部3の不図示の支持部、例えば工場の床等、に支持されている。ガイドレール16は、X軸方向(又はY軸方向)に沿って形成されている。筐体13は、不図示の駆動機構によりガイドレール16に沿ってX軸方向(又はY軸方向)に移動可能に設けられている。この移動ローラー17とガイドレール16による筐体13の移動は必ずしも必要ではない。
【0029】
収容部13R内には、基板ステージ機構14、アライメントカメラ18(
図1中のアライメントカメラ5に相当)が設けられる。基板ステージ機構14は、基板Sのうち、第1ローラー11と第2ローラー12との間(以下、「ローラー間部分Sr」と表記する)の一部分を非接触支持する為に、例えば円筒面状に形成された外周面14aを有し、その外周面14aは、基板Sとの間に流体ベアリング層を形成する為のパッド部材(多孔質エア・パッド等)で構成される。
【0030】
基板ステージ機構14には、外周面14aを構成するパッド部材から流体(空気、窒素等)を噴出させつつ、その噴出した流体を吸引するための流体制御部115が設けられている。
【0031】
複数のモータ等の駆動源を含む駆動部15は、基板ステージ機構14(外周面14a)の位置や姿勢を微少量変化させるものであり、主にZ軸、X軸、Y軸の各方向への微動と、θZ方向(Z軸回り)とθX(X軸回り)の各回転微動を行なう。駆動部15は、
図1中の制御部CONTの制御によって、第1ローラー11、第2ローラー12による基板Sの搬送制御とも同期して、駆動量やタイミングなどを調整される。
【0032】
2つのアライメントカメラ18は、
図3に示すように基板SのY軸方向(幅方向)の両端部に形成されたアライメントマークALMを各々検出する。アライメントマークALMは、基板Sのうち+Y軸側の端辺及び−Y軸側の端辺に沿うように複数形成されている。複数のアライメントマークALMは、X軸方向に等ピッチで配置されている。アライメントカメラ18は、基板Sのうち基板ステージ機構14に支持された部分に向けられており、露光装置EXによるスリット状の投影領域EA(
図3参照)の手前(−X軸方向)の位置でアライメントマークALMを個別に検出する。すなわち、アライメントカメラ18は、基板Sの搬送方向に関して投影領域EAの位置よりも上流位置で、アライメントマークALMを個別に検出する。アライメントカメラ18による検出結果は、制御部CONTに送信される。
【0033】
アライメントカメラ18は、顕微鏡で拡大されたアライメントマークALMの像をCCDやCMOS等の固体撮像素子で受光する顕微鏡撮像システムである。その顕微鏡撮像システムの基板S上での観察領域は、縦横で数十μm〜数百μm程度の範囲になる。従ってアライメントマークALMは、そのような狭い観察領域内で確実に観察されるように、例えば、線幅が数μm〜20μm程度の線状パターン、又はそのような線状パターンを平行に何本か並べた格子状パターンとして基板S上に形成されている。
【0034】
ところで、
図2に示すように、露光装置EXは、照明部IL及びマスクステージMSTを有している。照明部ILは、基板Sへ向けて−Z軸方向にスリット状の照明光を照射する。マスクステージMSTは、所定のパターンPが形成されたマスクMを保持する。マスクステージMSTには、異なる寸法のマスクMを保持可能なマスク保持部MHが設けられている。マスクステージMSTは、不図示の駆動装置によってX軸方向に移動可能に設けられ、基板SのX軸方向の送り速度と同期した速度で移動する。
【0035】
マスクステージMSTの移動は、制御部CONTによって制御可能である。上記露光装置EXは、照明部ILから照射されマスクMを介した露光光の像(投影露光方式の場合は投影光学系PLによる空間像、プロキシミティ露光方式の場合は影像)を投影領域EA(
図3参照)に投影する。なお、本実施形態では、投影領域EAの形状が、基板ステージ機構14の円筒状外周面14aの稜線と平行に細長く延びたスリット形状となっている。
【0036】
図2に示すように、基板Sは第1ローラー11でニップされた後に、基板ステージ機構14の外周面14aの所定角度分に非接触で巻付いた後、第2ローラー12にニップされて、矢印Dxのように搬送される。本実施形態では、
図3に示すように、第1ローラー11と第2ローラー12との間で、基板Sに搬送方向のテンションFを与えるような搬送を行なう。
【0037】
具体的には、制御部CONTにより第1ローラー11の回転速度(周速度)に対して第2ローラー12の回転速度(周速度)が僅かに速くなるように、各モータを制御する。この構成では、第1ローラー11と第2ローラー12、それらローラーの周速度(又はトルク)を精密に制御する為の駆動モータ、及びそのモータの電気的な制御系(プログラム含む)が張力付与機構に相当する。
【0038】
このように、基板SにX軸方向のテンション(張力)Fを与えると、
図3に示すように、第1ローラー11に進入する前の基板SのY軸方向寸法(幅)をTD0とすると、第1ローラー11と第2ローラー12との間では、そのY軸方向寸法(幅)が収縮してTD1になる。即ち、X軸方向に距離L(基板Sの実長)だけ離した第1ローラー11と第2ローラー12の間で、基板SをテンションFで引っ張ると、基板SはX軸方向に伸び、Y軸方向に縮む傾向がある。
【0039】
基板Sの初期の幅TD0に対して距離Lが充分に大きい場合、
図3に示すように、第1ローラー11から+X軸方向へ距離Asまでの範囲と、第2ローラー12の手前(−X軸方向)の距離Aeまでの範囲とでは、収縮変化率(X軸方向の単位長当りのY軸方向収縮量(収縮の度合い))が大きいが、第1ローラー11から+X軸方向へ距離Asまでの範囲と第2ローラー12から−X軸方向へ距離Aeまでの範囲との間の範囲には、収縮変化率(収縮の度合い)がほとんど変わらず安定している範囲が得られることがシミュレーションにより判った。そこで本実施形態では、基板SのY軸方向の収縮変化率がほぼ一定(ほぼゼロ)になる安定領域を作り出し、その安定領域に投影領域EAを設定して露光を行なうようにした。
【0040】
図4は、そのシミュレーションの為に、基板の伸縮の状態を誇張して説明する図であり、ニップされる第1ローラー11と第2ローラー12の間の基板Sの距離Lが、基板Sの初期幅TD0に対して大きい場合の様子を示す。基板SをX軸方向にテンションFで引っ張ると、第1ローラー11から+X軸方向へ距離Asの範囲では、基板SのエッジEs1、Es2が基板Sの初期幅TD0から内側にすぼむように変形し、第2ローラー12から−X軸方向へ距離Aeまでの範囲では、基板SのエッジEe1、Ee2は基板Sの初期幅TD0に戻るように変形する。
【0041】
そして、第1ローラー11から+X軸方向へ距離Asの範囲と第2ローラー12から−X軸方向へ距離Aeの範囲の間の距離Wxの範囲では、基板Sがほぼ一定の幅TD1に収縮した安定領域が得られる。
【0042】
安定領域とは、投影領域EAにおけるパターン転写精度(相対的な倍率誤差や重ね合わせ誤差の許容範囲)に応じて決められるものである。本実施形態ではシミュレーションの一例として、投影領域EAのY軸方向寸法が基板Sの初期幅TD0の80〜90%程度で、数μm以下の寸法の微細パターンを転写する精密露光を前提にするものとして説明する。
【0043】
例えば、初期幅TD0が300mm、投影領域EAの設計上のY軸方向寸法が260mmの場合、前工程のウェット処理や乾燥処理によって基板Sが全体的に50ppm程度伸びると、基板S上の投影領域EAに対応したY軸方向寸法は、13.0μmだけ伸びたものとなる。この値は、数μmサイズのパターンを高精度に位置決めして重ね合わせ露光する際に、最大で13.0μmの位置誤差(合わせ誤差)を招くことを意味し、そのままでは精密な露光処理が困難なものとなる。
【0044】
典型的なウェブ基板であるPETフィルムの場合、プロセスによっては100ppm程度も伸びることがある。大型ディスプレイ製造の為に基板Sの初期幅TD0と投影領域EAとを大きくして、投影領域EAの設計上のY軸方向寸法を520mm(TD0=600mm)とし、基板Sが全体的に100ppm延びたとすると、Y軸方向の最大の延び量は50μmを越える。
【0045】
また、一般に、露光装置としての重ね誤差や位置誤差の許容範囲は、転写すべきパターンサイズ(或いは線幅)の数分の一程度と言われる。よって、一例として転写すべきパターンの最少寸法(線幅)が3μmだとすると、その重ね誤差や位置誤差の許容範囲は0.6μmとなる。即ち、実際の露光時に、投影領域EA内のY軸方向のどの点においても、重ね誤差や位置誤差を0.6μm以下にする必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態においては、2つのローラー11、12間の基板Sの距離L、基板Sの初期幅TD0、基板の厚みt、テンションF、ポアソン比、ヤング率、を変えた各種シミュレーションを行い、以下の2つの条件を満たす範囲を安定領域とした。
(1)2つのローラー(11、12)から基板Sの中央に向けて、X軸方向に30mmピッチ毎にY軸方向収縮量を求め、その変化分が0.3μm以下〔収縮変化率がほぼゼロ〕。
(2)変化分が0.3μm以下になっている範囲全体のうち、収縮した基板Sの幅TD1の絶対値の変化幅が1.5μm以内。
【0047】
これらの数値条件は、シミュレーション上の一例であり、実際の数値はプロセスによる基板Sの延び、転写すべきパターンの最少寸法、重ね誤差や位置誤差の許容範囲等によって適宜決定される。
【0048】
図5は、2つのローラー11、12間の基板Sの距離Lを100cm、初期幅TD0を30cm、基板Sの厚みtが100μmのPETフィルム(ポアソン比0.35、ヤング率4GPaと設定)を対象にして、テンションFを20N、50N、100N、150Nと変えた場合の収縮変形の様子(収縮量、収縮の度合い)をシミュレーションしたグラフである。横軸の位置0cmと100cmが、各々第1ローラー11と第2ローラー12によるニップ位置である。
【0049】
図5のように、テンションFの大きさにほぼ比例して最大の収縮量が変化する。また、収縮量がほぼ一定になっている範囲、即ち安定領域の幅は、テンションFが大きくなるに従って狭くなっている。テンションFが20N程度では、両端から10cm程度までが非線形な収縮となっており、安定領域の幅は80cm程度が得られる。テンションFが150Nの場合は、両端から20cm程度までが非線形な収縮となっており、安定領域の幅は60cm程度になっている。
【0050】
図6は、
図5の場合と比べて、2つのローラー11、12間の基板Sの距離Lを40cmに狭めた点のみが異なり、その他の条件を同じにしてシミュレーションした結果を示すグラフである。
図5の場合と比べて距離Lが40%に減少した分、テンションF毎に得られる安定領域の幅も相応に狭くなる。また、シミュレーション上では、距離Lの減少に伴って両側の非線形な収縮の範囲が大きくなる傾向があった。
【0051】
例えば、テンションFが20Nの場合、
図5の条件では両端から10cm程度までが非線形であったが、
図6の場合は両端から14〜15cm程度までが非線形であった。
【0052】
図7は、2つのローラー11、12間の基板Sの距離Lを100cm、基板Sの厚みtが100μmのPETフィルム(ポアソン比0.35、ヤング率4GPaと設定)を対象とし、テンションFを100Nにして、初期幅TD0を40cm、60cm、100cmに変えた場合の収縮変形の様子(収縮量、収縮の度合い)をシミュレーションしたグラフである。
【0053】
初期幅100cmの場合(即ち、L=TD0)、条件に合う安定領域は得られず、距離Lの全体に渡って非線形な収縮を呈した。そして初期幅TD0が60cm、40cmと減少していくに従って安定領域が現れた。TD0=60cmでの安定領域の幅Wx1は30cm弱、TD0=40cmでの安定領域の幅Wx2は約60cmとなった。
【0054】
また、基板Sのポアソン比、ヤング率、厚みtの各違いによるシミュレーションも行なったが、安定領域の出現傾向に大きな差は無く、
図5〜7に示したシミュレーション結果から考察して、安定領域の出現に寄与する主な要因が距離Lと初期幅TD0の比であることが分かった。
【0055】
図8は、基板SとしてPETフィルムを対象として、ニップ間の距離Lに対する初期幅TD0の比率(TD0/L)を縦軸に、その距離Lに対する安定領域の幅Wxの比率(Wx/L)を横軸にとって、シミュレーション結果の幾つかをプロットしたグラフである。
【0056】
プロットしたシミュレーション結果は、全てテンションFを100Nとした場合であり、縦軸の1.0と横軸の1.0を結ぶ線BSは理論上の境界を表し、PETフィルム等の樹脂性ウェブの場合、その傾向は線BSよりも左下に出現し、右上には出現しない。
【0057】
図8中の線Sim1は、厚みtが200μm、ポアソン比が0.3、ヤング率が6GPaの場合に得られたシミュレーション結果の平均を表し、線Sim2は、厚みtが100μm、ポアソン比が0.4、ヤング率が4GPaの場合に得られたシミュレーション結果の平均を表したものである。代表的なPETフィルムの場合、シミュレーション上では概ね線Sim1と線Sim2の間に結果が分布する。
しかしながら、厚みtが極端に薄かったり、表面に何らかの薄膜を積層したりしている場合は、線Sim2よりも左下に結果が出現することもあり得るが、境界線BSの右上に出現することはない。
【0058】
以上のようなシミュレーション結果による傾向から、上述の
図2、
図3で示した装置構成上の諸元、例えば、投影領域EAにおいて必要とされる基板SのY軸方向の収縮量(収縮率、収縮の度合い)と、その為に必要なテンションFの大きさが判ると、そのテンションFによっても確保されるべき最低限の安定領域の幅、距離L、初期幅TD0の三者の関係が予め求まるので、第1ローラー11から第2ローラー12までの基板搬送路長さ(距離L)を最適化できる。
【0059】
次に、上記のように構成された基板処理装置100を用いて有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する工程を説明する。基板処理装置100は、制御部CONTに設定されるレシピ(加工条件、タイミング、駆動パラメータ等)の制御に従って、前記表示素子を製造する。
【0060】
まず、不図示のローラーに巻き付けられた基板Sを基板供給部2に取り付ける。制御部CONTは、この状態から基板供給部2から前記基板Sが送り出されるように、不図示のローラーを回転させる。そして、基板処理部3を通過した前記基板Sを基板回収部4に設けられた不図示のローラーで巻き取らせる。
【0061】
制御部CONTは、基板Sが基板供給部2から送り出されてから基板回収部4で巻き取られるまでの間に、基板処理部3の搬送装置20によって基板Sを前記基板処理部3内で適宜搬送させる。
【0062】
基板処理部3内を搬送される基板Sに対して、露光装置EXを用いて露光処理を行う場合、まず、制御部CONTは、第1ローラー11とニップローラー11aとで基板Sを挟持した状態で、基板Sのうち第1ローラー11よりも−X軸側の部分を弛ませる。また、制御部CONTは、第2ローラー12とニップローラー12aとで基板Sを挟持した状態で、基板Sのうち第2ローラー12よりも+X軸側の部分を弛ませる。この動作により、ローラー間部分Srの張力(テンションF)を基板Sの他の部分に対して独立して調整可能となる。
【0063】
その後、制御部CONTは、第1ローラー11、ニップローラー11a、第2ローラー12及びニップローラー12aにより、ローラー間部分Srに所定の張力を付加させつつ、基板Sを所定の搬送速度で+X軸方向に搬送させる。
【0064】
制御部CONTは、基板Sを搬送させた状態で、照明部ILから露光光を照射すると共に、マスクステージMSTを+X軸方向に移動させる。このとき、制御部CONTは、マスクステージMSTの移動速度と基板Sの搬送速度とを同期させる。
【0065】
この動作により、+X軸方向に移動する基板Sの被処理面Saに対して、マスクMを介した露光光が投影領域EA(
図3参照)に投影され、前記被処理面SaにマスクMのパターンPの像が走査露光方式にて形成される。
【0066】
このような露光動作を行うにあたり、制御部CONTは、第1ローラー11と第2ローラー12とに僅かな回転速度差を与えることで、基板Sに必要なX軸方向のテンションFを与えて基板Sの初期幅TD0を収縮させ、マスクM上のパターン領域のY軸方向の寸法と、基板Sの被処理面Sa上に転写すべきパターン領域(基板の部分領域)のY軸方向の寸法との相対誤差(相対倍率誤差)を調整する。
【0067】
尚、本実施形態では、投影領域EAをY軸方向に延びた細長いスリット状にして、X軸方向に走査露光する方式を用いるため、その投影領域EAが基板S上の実質的な被露光領域となる。その為、基板SのY軸方向の寸法調整(収縮補正)は、少なくともその被露光領域(基板の部分領域)に対して実施されれば良く、必ずしも、基板S上の1つのパターン領域全体に渡って、基板SのY軸方向の寸法調整(収縮補正)を施す必要はない。
【0068】
本実施形態では、
図3に示すように、ローラー間部分Srの下側は基板ステージ機構14の外周面14aの流体ベアリング層によって支持される為、そこでの実質的な摩擦は殆ど無い。従って基板Sのローラー間部分Srは、加重方向であるX軸方向について伸長し、加重方向と交差するY軸方向については初期幅TD0がTD1に収縮する。
【0069】
図3では、基板Sのローラー間部分SrのY軸方向の収縮を誇張して示したものであるが、基板ステージ機構14の外周面14aは、収縮した幅TD1が一様に得られる安定領域の幅内に収まるように設定される。
【0070】
なお、第2ローラー12を通過した後では、基板Sに作用していたテンションFが解消されることから、基板Sは弾性によって張力付与前の形状に戻る。すなわち、基板Sは、
図3の状態からY軸方向に伸長すると共にX軸方向に収縮する。このため、
図3に示すようなY軸方向に収縮された状態の基板SにマスクMのパターンPを転写した後、テンションFを解消すると、被処理面Saに転写されたパターン領域(基板の部分領域)は基板Sと同一の比率でY軸方向に伸長し、X軸方向には収縮することになる。
【0071】
本実施形態では、投影領域EAをY軸方向に延びた細長いスリット状にして、X軸方向に走査露光する方式を用いる。そのため、X軸方向の相対倍率誤差(スケーリング誤差)については、投影領域EAにおける基板Sの送り速度SvとマスクMの移動速度Mvとの本来の同期関係、Sv=k・Mv(kは近接露光方式なら1、投影露光方式なら投影系の倍率)に対して僅かな速度差(基板SのX軸方向の伸張率に対応)を与えることで調整できる。
【0072】
また、基板Sの被処理面Saに下地層となるパターン領域(基板の部分領域)が湿式プロセス(メッキ工程やエッチング工程等)等で形成され、それに対してマスクMのパターン領域を重ね合わせ露光する場合、湿式プロセスにて基板Sが比較的に大きく延びることもあり得る。
【0073】
このような場合、特に従来の近接露光方式では、マスクM上のパターン領域と基板Sに既に形成されたパターン領域(基板の部分領域)とを、少なくともY軸方向(走査露光の方向と直交した方向)に関して良好に重ね合わせること、即ちY軸方向のスケーリング誤差の補正が難しかった。
【0074】
本実施形態では、第1ローラー11と第2ローラー12により基板Sに送り方向(X軸方向)のテンションを与えることで、基板Sのローラー間部分SrのY軸方向寸法を弾性変形の範囲で収縮させることが可能となり、難しいとされてきたY軸方向のスケーリング誤差の補正を簡単な構成で実現できる。
【0075】
従って、制御部CONTは、安定領域を確保しつつ、基板Sに与えるテンションFの大きさを変えて、基板SのY軸方向の収縮量を調整させることにより、露光パターンのY軸方向の寸法と、基板Sの被処理面SaのY軸方向の寸法との相対比率を調整できる。このため、基板Sに転写されるマスクパターン像のY軸方向の相対倍率を実質的に調整できる。
【0076】
基板SのY軸方向への収縮量は、基板Sに対するX軸方向のテンションFに応じた値となる。このため、基板SのY軸方向への収縮量を制御する場合には、上述の
図5〜
図8のようなシミュレーションや実験等によって基板Sに対するX軸方向のテンションFとY軸方向の収縮量との関係をデータとして求めておき、必要な収縮量に対応するテンションFが基板Sに加えられるように、第1ローラー11、第2ローラー12の動作を制御する。
【0077】
上記の動作を行うに当たり、制御部CONTは、以下のように基板Sの収縮量(又は収縮率、収縮の度合い)を求める。まず、制御部CONTは、アライメントカメラ18を用いて、基板Sの−Y軸側端辺に形成されたアライメントマークALMと、+Y軸側端辺に形成されたアライメントマークALMとを検出させる。制御部CONTは、アライメントカメラ18の検出結果に基づいて、アライメントマークALMのY軸方向の距離を算出し、前記距離に基づいてローラー間部分SrのY軸方向の寸法(収縮後の幅TD1)を算出する。その後、制御部CONTは、算出結果と、予め記録されていたアライメントマークALMのY軸方向の間隔寸法とを用いて、基板Sの収縮量(又は収縮率、収縮の度合い)を算出する。
【0078】
また、上記の実験やシミュレーションなどにおいて、基板SのY軸方向の収縮量に対応するX軸方向の伸長量をデータとして求めておき、X軸方向の伸長量に応じてマスクステージMSTの移動速度及び基板Sの搬送速度を調整することで、マスクパターン像のX軸方向の相対倍率(スケーリング誤差)も実質的に調整できる。
【0079】
制御部CONTは、マスクステージMSTの移動速度及び基板Sの搬送速度を調整する場合には、前記マスクステージMSTの+X軸方向への移動速度をMvとし、前記基板Sの搬送速度(基板ステージ14の外周面14aの周方向の速度)をSvとし、X軸方向のスケーリング誤差(伸張率)をA(ppm)とすると、以下の数式(1)を満たすようにする。
Sv=k・Mv・(1+A)、或いは、Sv・(1−A)=k・Mv…(1)
但し、kは、近接露光方式なら1、投影露光方式なら投影系の倍率である。
【0080】
なお、制御部CONTは、プロキシミティ露光方式であれば、基板S上の投影領域EAとマスクMとのギャップや平行度が一定の範囲内に設定されるように、
図2中の駆動部15により、基板ステージ機構14(外周面14a)の姿勢や位置を適宜調整する。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、基板Sの被処理面Saを処理する基板処理部3において、基板SをX軸方向に搬送する第1ローラー11と第2ローラー12との間で、基板SのY軸方向の寸法を安定的に収縮させた状態で露光処理が可能なので、相対倍率(スケーリング誤差)を簡単に調整でき、高精度なパターニングが可能となる。
【0082】
また、処理装置10として露光装置EXとは異なる他の装置を用いた場合においても、基板Sを搬送する搬送側において基板Sのローラー間部分Srと、処理装置10によって処理される範囲との間の相対的な寸法を調整できる。
【0083】
マスクを使った露光装置EX以外の処理装置10としては、例えばインクジェットプリンタ、DMD等を使ったマスクレス露光機、レーザスポットを走査してパターン描画するレーザビームプリンタ等であっても同様に本実施態様を適用可能である。
【0084】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上述の
図2、
図3の構成では、アライメントカメラ18は投影領域EAの−X軸方向の位置に一組しか設けられていなかった。しかし、
図9に示すように、投影領域EAの−X軸方向の位置に配置した一組のアライメントカメラ18a,18d、投影領域EAとほぼ同じX軸方向位置に配置した一組のアライメントカメラ18b,18e、そして投影領域EAの後方の位置(+X軸方向の位置、又は、基板Sの搬送方向に関して投影領域EAの下流位置)に配置した一組のアライメントカメラ18c,18f、の計6個のアライメントカメラ(顕微鏡撮像システム)を設けても良い。
【0085】
この
図9のように複数のアライメントカメラ18a〜18fを配置すると、投影領域EAを含む基板Sの局所的な面形状歪み(XY面内での微少変形)を、アライメントマークALMのX軸方向のピッチ毎にリアルタイムに継続的に計測可能となる。そのため、投影領域EA内での基板Sの僅かな歪み誤差や倍率誤差を高精度に特定して、その誤差を緩和するように、基板Sに与えるテンションFの大きさや、基板ステージ機構14の位置や姿勢をリアルタイムに微調整することも可能である。
【0086】
このように、複数のアライメントカメラ18a〜18fを配置する場合も、各カメラによるマーク検出位置は、基板Sの安定領域Wx内に含まれていることが望ましい。
【0087】
また、露光装置EXのマスクステージMSTを駆動する駆動機構としては、
図10、
図11に示すようなリニアモータ機構LMを用いても構わない。
図10、
図11は、プロキシミティ方式による走査露光装置の構成を示し、マスクステージMSTは、固定子LMaと可動子LMbを有するリニアモータ機構LMによって精密に駆動される。
【0088】
固定子LMaは、X軸方向に沿って延在している。固定子LMaには、X軸方向に沿って不図示の複数のコイルが並んで配置されている。固定子LMaは、Y軸方向にマスクステージMSTを挟んで一対設けられている。一対の固定子LMaは、マスクステージMST側に溝部を有している。この溝部は、X軸方向に沿って形成されている。
【0089】
可動子LMbは、マスクステージMSTの+Y軸側の側面及び−Y軸側の側面にそれぞれ設けられている。各可動子LMbは、それぞれ磁石を有している。可動子LMbは、それぞれ対応する固定子LMaの溝部に挿入されている。可動子LMbは、前記溝部に沿ってX軸方向に移動可能である。可動子LMbがX軸方向に移動することにより、マスクステージMSTがX軸方向に移動するように、筐体13の上部にはマスクステージMSTを支持する一対のガイド面13gが設けられている。
【0090】
本実施形態の構成では、基板Sが第1ローラー11から第2ローラー12の間をほぼ水平に搬送されるように設定され、回転ドラムとして構成された基板ステージ機構14の外周面14aは、基板Sの裏面と極めて僅かな領域で接触している。即ち、投影領域EAのX軸方向の幅を極力小さくし、外周面14aと基板Sとの接触領域のX軸方向の幅をスリット状の投影領域EAのX軸方向の幅と同程度に小さくする。
【0091】
さらに本実施形態では、基板ステージ機構14(回転円筒体)の外周面の周速度が、第1ローラー11と第2ローラー12による基板SのX軸方向搬送速度と同期するように、駆動部15により制御される。
【0092】
この場合、基板ステージ機構14の外周面14aと基板Sとの接触領域が、Y軸方向に細長く延びたスリット状で、X軸方向の幅が充分に狭いものであり、同時に基板ステージ機構14(回転円筒体)が基板Sの搬送速度と同期して回転していることから、第1ローラー11と第2ローラー12の間で基板SにX軸方向のテンションFを与えると、上述の
図4のように、基板SはY軸方向に収縮する。
【0093】
勿論、基板Sと基板ステージ機構14の外周面14aとが接触しているスリット状の領域では摩擦が発生する。しかし、その領域のX軸方向の幅が充分に小さければ、その摩擦による影響を余り受けることなく、基板Sは概ね
図4のように収縮する。
【0094】
この
図10、
図11のような構成でも、基板Sの搬送時のテンションF(X軸方向)を制御することで、基板Sの幅(Y軸方向)を収縮させることが可能であり、パターニング時の相対的な寸法誤差(特にY軸方向の相対的なスケーリング誤差)を調整できる。
また、本構成では、投影領域EAのX軸方向の幅を充分に小さくすることになるので、
図4、
図5〜
図8で説明した安定領域Wxの幅を狭くでき、第1ローラー11と第2ローラー12の間隔(距離L)も短くできることから、装置全体を小型にできる。
【0095】
また、
図12に示すように、X軸方向に複数の処理装置を設けられた構成であっても構わない。
図12では、上記の実施形態に記載の露光装置EX(
図2、3の装置、或いは
図10、11の装置)と同一の構成を有する処理装置10A及び10BがX軸方向に2つ配置されている。マスクM1を備えた処理装置10Aと、マスクM2を備えた処理装置10Bとの間には、基板Sの張力を遮断する張力遮断機構(縁切り部)60が設けられている。
【0096】
2つの処理装置10A及び10Bを用いて基板Sに対して露光処理を行う場合、例えば
図13に示すように、処理装置10AのマスクM1によって露光されるパターン領域(基板の部分領域)PAと、処理装置10BのマスクM2によって露光されるパターン領域(基板の部分領域)PBとがX軸方向に交互に並ぶように、各処理装置10A及び10Bにおいて一定の間隔をあけて露光処理を行うようにできる。
【0097】
この場合、例えばX軸方向に往復移動するマスクステージMSTが露光処理時に+X軸方向に移動した後、−X軸方向に戻るまでの時間を確保できる。
【0098】
さらに、このような構成では、処理装置10A、10Bの各々に装着されるマスクM1、M2の各パターンPは、必ずしも同一である必要は無い。例えば処理装置10Aでは36インチの表示パネル用パターンの露光を行い、処理装置10Bでは40インチの表示パネル用パターンの露光を行うようにしても良い。
【0099】
また、上記実施形態では、投影領域EAが1本のスリット形状である場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えばスリット状の露光領域がY軸方向に複数並んで形成されると共に、それらの露光領域が交互にX軸方向にずれた状態で配置される、いわゆる千鳥状に配置された構成であっても構わない。
【0100】
この場合、千鳥状に配置される複数の露光領域の全体(基板の部分領域に相当)が、想定される最大のテンションFに応じて決まる安定領域Wx内に入るように設定される。
【0101】
ところで、先に説明したように、上記の各実施態様に示した基板SのY軸方向収縮の為の基板搬送の構成は、光露光、インクジェット印刷、レーザ描画、静電転写等の精密なパターニングを必要とする各種の処理装置の搬送機構として適用可能である。しかし、量産性の観点からは、円筒マスクを使った光露光が有望視されている。
【0102】
図14は、透過型の円筒マスクMDを上述の
図2、
図3の実施形態による基板搬送機構と組み合わせたプロキシミティ露光装置の一例である。
【0103】
図14において、円筒マスクMDは肉厚が数ミリ以上の石英製の中空円筒であり、その円筒表面にパターンPが形成される。円筒マスクMDはエアベアリング支持のパッドCR等により装置内に保持され、Y軸方向に延びた軸CCを中心にしてXZ面内で回転する。その回転速度は、基板Sの搬送速度と円筒マスクMDの外周面(パターンPの形成面)の周速度とが同期するように設定される。円筒マスクMDの内部には、パターンPにY軸方向に細長く延びたスリット状照明光を投射する照明系ILが配置される。
【0104】
基板Sは、
図2と同様の基板ステージ機構14により、気体層(エアベアリング)116を介して支持面14a(凸シリンドリカル面)にならって支持され、円筒マスクMDの外周面の一番下の部分と支持面14a上の基板Sの被処理面Saとが、所定のプロキシミティ・ギャップ(数十μm〜数百μm)に保たれるように、基板ステージ機構(支持パッド部)14、或いは円筒マスクMDのZ軸方向位置が微調される。
本実施形態において、基板ステージ機構14は、気体層形成部として、気体供給装置、気体供給路、及び複数の供給口等を含む。
【0105】
基板Sの搬送機構は、非接触式のエア・ターンバーATB、第1ローラー11、ニップローラー11a、第2ローラー12、ニップローラー12aで構成され、本実施形態でも第1ローラー11から第2ローラー12の間で基板SにX軸方向のテンションを与えることで、基板SをY軸方向に収縮させる。その為に、第1ローラー11の周速度(トルク)よりも第2ローラー12の周速度(トルク)の方が所定量だけ大きくなるように、各ローラーの駆動モータを制御する。
【0106】
なお、
図14のような構成において、円筒マスクMDの外周面の曲率(半径)と、基板ステージ機構14のシリンドリカル状の支持面14aの曲率とは必ずしも一致させておく必要はなく、支持面14aの曲率は基板Sの安定な支持と搬送が達成されるように決められ、円筒マスクMDの径は露光すべきディスプレイ用パネルのサイズに応じて決められる。
【0107】
これまで説明してきた各実施形態では、処理装置10として、平面マスクM、又は円筒マスクMDを使った走査型露光装置を例にした。しかし、ディスプレイ用パネルが形成される基板S上の全体領域を平面ホルダに一時的に吸着して露光するような装置においても、本実施形態による搬送機構を適用できる。
【0108】
図15、
図16は、基板Sを平面ホルダに吸着して露光処理を行なう装置の一例を示し、
図15の平面図に示すように、基板S上にはX軸方向に複数のパネル領域(基板の部分領域)PDが一定間隔で形成される。本実施形態では、1つのパネル領域PDのX軸方向の幅が基板SのY軸方向収縮の安定領域Wx内に収まるように、第1ローラー11と第2ローラー12とのX軸方向の間隔(距離L)が設定されている。
【0109】
また、基板Sの第1ローラー11から後方(+X軸方向)の距離Asまでの非線形領域と、第2ローラー12から−X軸方向へ距離Aeまでの非線形領域には、パネル領域PDが配置されないように、パネル領域PDはX軸方向に間隙Np(Np>As,Ae)をもって配列される。
【0110】
本実施形態では、基板SをX軸方向に送って
図15のような状態、即ち、露光または描画処理すべき1つのパネル領域PDが安定領域Wx内に基板Sが位置したら、第1ローラー11と第2ローラー12による駆動を停止し、基板Sの搬送を一時的に止める。
【0111】
図16に示すように、第1ローラー11と第2ローラー12の間で、基板Sは平面ホルダ120の上面の平坦な吸着面とほぼ平行にX軸方向に搬送される。
【0112】
その状態で、
図16に示すように、平面ホルダ120(吸着面)のX軸方向の幅は安定領域Wxに含まれるように設定されると共に、パネル領域PDの全体が吸着されるように設定されている。
【0113】
パネル領域PDが平面ホルダ120の上方に位置決めされると、平面ホルダ120を支持しているベース部材113が、Z軸方向の駆動機構122によって上方(+Z軸方向)に移動し、基板Sの裏面が平面ホルダ120の吸着面に一様に接触したところで、Z軸方向の駆動が停止される。
【0114】
そして、基板Sのパネル領域PDに対応する裏面部分が、平面ホルダ120に真空吸着または静電吸着により一時的に保持される。この吸着保持の直前まで、基板SにはX軸方向のテンションFが与えられ、基板Sの安定領域Wxが予め決められた量だけY軸方向に収縮した状態が維持される。
【0115】
基板Sのパネル領域PDの全体が平面ホルダ120に一様に吸着されると、ベース部材113のY軸方向の両端部に設けられたガイドレール113gに支持されてX軸方向(又はY軸方向)に移動可能な加工ヘッドHDが、パネル領域PD上を1次元又は2次元に移動して、必要な露光処理や描画印刷処理を行なう。
【0116】
加工ヘッドHDとしては、DMDによるマスクレスの光パターンジェネレータ、インクジェットプリンタ用のヘッド、マイクロレンズアレイによる小マスクパターン投影器、レーザスポットによる走査描画器等が利用できる。
【0117】
また加工ヘッドHDをベース部材113から支持する脚部126には、ヘッド面と基板Sの表面とのZ軸方向の間隔や相対傾斜を最適に設定する為に、ミクロンオーダーでZ軸方向に上下動するアクチュエータ(ピエゾモータやボイスコイルモータ等)が組み込まれ、加工ヘッドHDのX軸,Y軸方向の位置は測長用レーザ干渉計IFM、或いはリニアエンコーダによって精密に計測される。
【0118】
この加工ヘッドHD内には、基板S上のアライメントマークALMやパネル領域PD内の特定のパターン形状を光学的に検出するアライメントカメラ18や、他のアライメントセンサーを設けることができる。
【0119】
本実施形態の場合、
図15に示すように、基板S上のパネル領域PDはX軸方向に間隙(余白)Npを伴って配列されるが、第1ローラー11によるニップ位置と第2ローラー12によるニップ位置との距離をL、パネル領域PDのX軸方向幅をXpdとすると、以下の式(2)の関係に設定しておくと、加工処理の為に基板Sの搬送を一時的に停止したときに、第1ローラー11、第2ローラー12の各々が、隣のパネル領域PD上にかかって静止しないので、パネル領域PDに不要な傷等を付ける可能性が低減できる。
Xpd<L<(Xpd+2Np)…(2)
【0120】
なお、
図15、
図16のように、基板S上のパネル領域PDの全体を精度良く平面に吸着できる場合は、パネル領域PD全体を覆う大型マスクを用意し、プロキシミティ方式による一括静止露光を行なっても良い。
【0121】
以上、各実施形態では、
図4(又は
図9、
図15)に示した安定領域Wxにおいて、露光処理を行なうことを想定したが、Y軸方向に延びるスリット状の露光領域(投影領域EA)のX軸方向の幅を充分に狭くできるのであれば、
図4中の距離Asや距離Aeの非線形な領域で露光を行なうことも可能である。
【0122】
また、
図2、
図10、
図12、
図14、
図15の各々に示した処理装置(露光装置)では、第一案内部材(基板案内部材)としての第1ローラー11(及びニップローラー11a)と第二案内部材(基板案内部材)としての第2ローラー12(及びニップローラー12a)との各周速度に僅かな差を与える方法で張力付与機構を構成した。しかし、
図15に示した静止型の基板処理装置(露光装置)の場合は、第1ローラー11と第2ローラー12の周速度の差を利用しない張力付与機構も適用できる。
【0123】
具体的には、
図15、
図16において、基板Sを搬送する際は、第1ローラー11と第2ローラー12により、基板Sが緩いテンション(例えば10〜20N程度)で送られるように制御し、基板Sのパネル領域PDが平面ホルダ120の上方空間に位置決めして静止したら、ニップ状態は保ったまま、第1ローラー11とニップローラー11aの組と、第2ローラー12とニップローラー12aの組とのX軸方向の間隔が広がるように、何れかの組を移動させる駆動系を設けても良い。
【0124】
或いは、
図15において、基板Sの搬送方向(+X軸方向)に関して、第1ローラー11の直後の位置と第2ローラー12の直前の位置の各々に、基板SのY軸方向の幅全体に渡って基板Sを強固に挟持する棒状のニップ部材を設け、基板Sが位置決めされて静止したら、その2ヶ所のニップ部材で基板Sの間隙(余白)Np部分を挟持し、その後、両ニップ部材のX軸方向の間隔が広がるように、何れかのニップ部材をX軸方向に微動させる構成にしても良い。
【0125】
この場合、2ヶ所のニップ部材と、両ニップ部材間のX軸方向の間隔を変える駆動機構とが張力付与機構を構成する。
【0126】
上記の各実施形態では、マーク検出システムとして、顕微鏡撮像システム(アライメントカメラ5,18等)を用いて、基板S上のアライメントマークALM(例えば、クロスバー形状)を画像計測した。その為、基板Sが一定の速度で搬送されている状態で、マークALMの画像を検出する場合は、撮像したマークALMの像のブレが問題になる。そこで、CCDやCMOS等の撮像素子(カメラ)を用いないマーク検出システムを利用しても良い。
【0127】
そのひとつの例は、基板Sの光感応層が感度を持たない波長域のレーザビームを、細長いスリット状、又は干渉縞状に整形して基板S上に投射し、基板S上に形成された回折格子状のアライメントマークが、そのスリット状、又は干渉縞状のビームを横切ったときに発生する回折光を光電検出する方式である。その回折光が発生した位置は、基板Sを搬送するローラ11、12、又は
図10中のローラ14に設けられたロータリーエンコーダによって求められる。
図16のような実施形態の場合は、ヘッドHDに、回折光を光電検出するマーク検出システムを組み込み、測長用の干渉計IFMによって回折光が発生した位置を求めることができる。