特許第5822252号(P5822252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822252
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】免疫性を有するペプチド
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20151104BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20151104BHJP
   C07K 16/20 20060101ALN20151104BHJP
【FI】
   G01N33/53 D
   G01N33/53 P
   !C07K14/435ZNA
   !C07K16/20
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-227268(P2010-227268)
(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公開番号】特開2012-82141(P2012-82141A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年10月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構委託研究「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業/病原性原虫によるTh1免疫回避機構の解明と糖鎖被覆リポソームワクチン評価技術の確立」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】池原 譲
(72)【発明者】
【氏名】山中 将敬
(72)【発明者】
【氏名】山口 高志
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−075121(JP,A)
【文献】 Y.Sako, et al., International Journal for Parasitology, 1999, 29, pp593-599
【文献】 T.Kakuda, et al., J. Vet. Med. Sci., 2001, 63(8), pp895-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8、12、及び、15に示されるいずれか1種のアミノ酸配列からなるペプチドを含む、ウシのT.orientalis感染症診断剤。
【請求項2】
配列番号8、12、及び、15に示されるいずれか1種のアミノ酸配列からなるペプチド及びIFN-γに対する抗体及び/又はIL-10に対する抗体を少なくとも含むことを特徴とする、ウシのT.orientalis感染症診断キット。
【請求項3】
配列番号24、25、及び、26に示されるいずれか1種のアミノ酸配列からなるペプチドを含む、ウシのT.orientalis感染症診断剤。
【請求項4】
配列番号24、25、及び、26に示されるいずれか1種のアミノ酸配列からなるペプチド及びIFN-γに対する抗体及び/又はIL-10に対する抗体を少なくとも含むことを特徴とする、ウシのT.orientalis感染症診断キット。
【請求項5】
配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む、ウシのT.orientalis感染症診断剤。
【請求項6】
配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるペプチド及びIFN-γに対する抗体及び/又はIL-10に対する抗体を少なくとも含むことを特徴とする、ウシのT.orientalis感染症診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイレリア・オリエンターリス(Theileria orientalis)抗原ペプチド、及び該抗原ペプチドを用いたタイレリア感染症の診断手段に関する。
【背景技術】
【0002】
タイレリア症はダニ媒介性の寄生虫感染症で、肥育効率を損ない畜産業における生産性が損なわれる原因となる。タイレリア感染症は、その病態病理像の違いからlymphoproliferative groupとnonlymphoproliferative groupに分けて研究されて来た。
Theileria parva(T.parva)やTheileria annulata(T.annulata)は、アフリカを中心とした熱帯地域を中心に感染が確認されるlymphoproliferative groupに属する。
一方、nonlymphoproliferative groupとなるTheileria orientalis(T.orientalis)(=selgenti) は、我が国を始め、東アジアからヨーロッパまで広範囲にその感染が確認されている。
タイレリア感染は、ダニによる吸血によってウシ体内へ送り込まれたスポロゾイトが、細網内皮系細胞に侵入してシゾントとなって増殖し、その後、血中へ出たメロゾイトが赤血球へ寄生することによる。
【0003】
lymphoproliferative groupのT.parvaやT.annulataでは、寄生するシゾントがJNK1/2等の恒常的活性化をもたらしてTやBリンパ球をtransformするため、リンパ系細胞の異常増殖とそれに関連すると考えられる症状lymphoproliferative disease(リンパ球増殖症)が出現する。一方、nonlymphoproliferative groupのT.orientalisには、リンパ球に対するtransform活性は確認されていない。一方で、免疫応答として発生する活性酸素で赤血球の膜変性(degeneration)が生じ、脾臓の細網内皮系による変性赤血球除去が亢進することで生じると考えられる、貧血とそれに関連した慢性消耗疾患(Chronic Wasting Disease)が出現する事が知られている。但し、T.orientalisの感染動向を調査した結果、抗ダニ剤が普及した現在では、原虫が感染した赤血球が末梢血中に観察されるものの、貧血等の明らかな臨床所見を呈する事は稀で、大部分は不顕性感染となる。(以上、非特許文献1〜5参照)
【0004】
感染原因に対する免疫応答を解明する事で、それぞれに特有の病態を克服する為の手がかりを得られる。例えば、lymphoproliferative groupのタイレリア感染について、T.parvaやT.annulataでは、その感染によってCD4+T細胞とCD8+T細胞による免疫応答が惹起され、特に、CD8+T細胞が主たる排除エフェクターとして作用する事、そしてその誘導維持にはCD4+T細胞が必要であることが明らかにされている。またγδT細胞は、MHC非拘束性に感染細胞によって活性化される事、そしてそれによって感染細胞を障害する事が知られている。したがって、原虫抗原特異的なCD8+T細胞の増加を検出する事は、感染状態である事を意味する。(以上、非特許文献6〜9参照)
【0005】
上記のように、lymphoproliferative groupの感染におけるT細胞の重要性が明らかになりつつある一方で、nonlymphoproliferative groupに属するT.orientalis感染では、T細胞の特異的免疫応答は殆ど明らかにされていない。実際、1)T.orientalis感染では末梢血中のリンパ球やマクロファージと言った単核球細胞が活性化するがその特異性は明らかでない。2)マラリア症、バベシア症やアナプラズマ症と言った赤血球寄生性原虫と同様、感染赤血球は脾臓で除去される。3)血中のIFN-γ値が高い程、全身症状は穏やかである。4)T.orientalis感染の末梢血をPHAで刺激すると、IFN-γ産生が検出される事などが明らかにされている。いずれにおいても、タイレリア抗原特異的にT細胞が存在して活性化しているのかどうかは、明らかにされていない。(以上、特許文献10〜14参照)
【0006】
抗原特異的なT細胞を検出する方法が幾つか開発されている。なかでもELISpot(Enzyme-linked immunospot)technologyは、刺激よって産生される特定のサイトカインを分泌する細胞の数を評価する方法として広く活用されている。ELISPOTアッセイは最初、抗体を産生する細胞を検出する方法として報告されており、IFN-γの検出に関しては、同じグループから1988年の「Reverse ELISPOT assay for clonal analysis of cytokine production I.Enumeration of gamma-interferon-secreting cells」に報告されている(非特許文献14参照)。
【0007】
一方、本発明者は、T.orientalis感染ウシにおいて免疫応答の進展(サイトカイン産生変化)を詳細に解析したところ、感染後、速やかにMPSP(major piroplasm surface
protein)ペプチド特異的にIFN-γを産生する細胞が増加し、時間経過と伴に減少して消失したが、このIFN-γ産生する細胞の減少に従い、MPSPペプチド特異的に反応してIL-10を産生する細胞が増加するという知見を得ている。
このように、IFN-γ産生は、T.orientalis感染後経時的に減少、消失するから、IFN-γ産生のみ測定する手段では、診断的意義は乏しい。そのため、本発明者はT.orientalis抗原を用いてIL-10及びIFN-γを産生するT細胞を同時に検出する診断システムを開発し、病態診断を可能にした(特許文献1参照)。実際、このシステムによって、タイレリア感染特異的に応答してIFN-γ及びIL-10産生T細胞を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-75121号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A.D.Irvin. Parasitology Today Vol.1 No.5 p124-128,1985
【非特許文献2】Yves Galley et al,Proc.Natl,Acad,Sci.USA Vol94,p5119-5124,1997
【非特許文献3】Regina Lizundia et al,Cancer Res:66(12)p6105-6110,2006
【非特許文献4】Wendy C.Brown Veterinary Parasitology,1001 p233-248,2001
【非特許文献5】Misao Onuma,et al Comparative Immunology,Micrology & Infectious Disease 21,p165-177,1998)
【非特許文献6】Declan McKeever,Proc.Natl,Acad,Sci.USA Vol91,p1959-1963,1994
【非特許文献7】Evans Taracha,Journal of Immunology,Vol 159,p4539-4545
【非特許文献8】Simon Graham,Proc.Natl,Acad,Sci.USA,Vol.103,p3286-3291,2006
【非特許文献9】Claudia Daubenberger et al Infection and Immunity,p2241-2249,1999
【非特許文献10】Yasutomi,Y.et al,Vet Parasitology,Vol39,p33-41,1991
【非特許文献11】Asaoka H.,et al,Res vet Sci,Vol50,p23-28,1991
【非特許文献12】Hagiwara K.et al,Vet Parasitology,Vol127,p105-110,2005
【非特許文献13】Kakuda T.,et al.,J.Vet.Med.Sci.,vol63,p895-901,2001
【非特許文献14】Czerkinsky CC et.al.,J Immunol Methods.1983 Dec 16;65(1-2):109-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、本発明者は、牛タイレリア感染症の診断手段として、T.orientalis抗原に応答してIFN-γ及びIL-10を産生する各T細胞数の増減を評価する新たな診断システムの構築しており、本願発明の課題は、このような診断システム使用の利便性をより向上させるために、使用しうるタイレリア抗原の多様化を図るとともに、T細胞免疫応答を誘導する能力が高く、より使い勝手のよいタイレリア抗原を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、タイレリア抗原の一種であるp23抗原にT細胞免疫応答能があるとの知見を得て、これをさらに一歩進め、p23抗原の各種部分ペプチドを合成し、T細胞免疫応答能を調べた結果、p23抗原の部分ペプチドにおいてT細胞免疫応答を誘導する能力を有するものがあることを見いだした。さらに、これらペプチドの中には、T.orientalisの株(サブタイプ)によらずT細胞免疫応答を誘導できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
(1)配列番号8、9、12、14、15、20及び21に示されるいずれか1種のアミノ酸配列を有するペプチド。
(2)配列番号30〜33に示されるいずれか1種のアミノ酸配列を有するペプチド。
(3)配列番号24〜26に示されるいずれか1種のアミノ酸配列を有するペプチド。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチドからなる、ウシのT.orientalis感染症診断剤。
(4)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド及びIFN-γに対する抗体及び/又はIL-10に対する抗体を少なくとも含むことを特徴とする、ウシのT.orientalis感染症診断キット。
【発明の効果】
【0013】
Theileriosisの原因の一つであるT.parvaについては、すでに、T細胞免疫応の全容がほぼ解明されている。これに対してT.orientalis感染症に関しては、免疫システムで極めて重要な役割を果たす病原体由来抗原特異的T細胞がジェネレーションされるかどうか詳しくはわかっていなかった。このような状況下、本発明のペプチドにより、T.orientalis感染ウシ個体中に同病原体由来p23抗原に特異的に応答してIFN-γ及びIL-10を産生するT細胞が存在することを初めて検出することに成功したものである。
本発明のペプチドは、上記p23抗原特異的なT細胞免疫応答の誘導能が高く、T.orientalisに感染したウシが産生するp23抗原特異的なIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞を刺激し、IFN-γ及びIL-10Tを分泌させ、このIFN-γ及びIL-10を感度よく検出、測定することが可能となる。このIFN-γ及びIL-10はT.orientalis感染に基づくp23抗原特異的に産生されたT細胞の量を反映するから、これにより、T.orientalisの感染の有無、該感染に基づく病態の程度を診断ができる。
【0014】
一方、本発明のペプチドのうち、T.orientalis感染ウシ個体中に同病原体由来p23抗原に特異的に応答してIFN-γ及びIL-10特定ペプチドは、p23抗原特異的なT細胞免疫応答に属する株(サブクラス)によらず、p23抗原特異的なT細胞免疫応答を誘導する。したがって、このようなペプチドはユニバーサルな刺激剤であり、予め感染型の分かっていないT.orientalisの感染症の診断にも適用でき、この点で利便性が高い。
以上のとおり、本発明のペプチド抗原はT.orientalis感染症の診断剤として、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】T orientalis p23抗原のサブタイプ3種のアミ酸配列、及び該p23抗原における上記合成した各ペプチドの対応する領域を示す図である。
図2】自然感染及び人工感染ウシのPBMCを用いて、本発明のペプチドの刺激により、INF-γが検出し得るか否かをELISpotアッセイにより試験した結果を示す図である。
図3】Ikeda型のみに感染している自然感染ウシとChitose型とIkeda型の両方に感染している人工感染ウシのPBMCに対して、本発明のペプチドを用いてそれぞれ刺激してELISpotアッセイを行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のペプチドは、T.orientalisのp23抗原の部分ペプチドであって、そのアミノ酸配列は、配列番号8、9、12、14、15、20、21、配列番号30〜33及び配列番号24〜26に示される。
本発明のペプチドは、ウシのT.orientalis原虫感染の有無あるいはさらにその病態を診断するための診断剤として用いられる。
上記配列番号8、9、12、14、15、20、21及び配列番号30〜33で示されるペプチドは、人工感染・自然感染の両者に対して共通してT細胞免疫応答を示す。
さらに、配列番号24〜26に示されるペプチドは、T.orientalisのikeda型、及びikeda型とchitose型の両方に感染しているウシに対して、T細胞免疫応答能を有し、T.orientalis原虫のサブタイプにとらわれることなく、より幅広いタイレリア感染症の診断に適用できる。
【0017】
以下に、本発明のペプチドを用いたT.orientalisの感染症の診断手法について説明する。
ウシがT.orientalis原虫に人工的に感染した場合のT細胞免疫応答は、最初に該原虫抗原特異的なIFN-γ分泌T細胞が増加し、その後徐々に該IFN-γ分泌T細胞が減少し始めるとともに、これに変わって該原虫抗原特異的なIL-10分泌T細胞が増加するようになり、その後安定して該IL-10分泌細胞が検出されるようになる。すなわち、T.orientalis抗原特異的なT細胞は、IFN-γの分泌により特徴づけられるTh1からIL-10の分泌により特徴づけられるTh2またはTregに推移する。
これらT.orientalis原虫抗原特異的なIFN-γ分泌T細胞とIL-10分泌T細胞の数は、T.orientalis感染の進行を反映し、IFN-γ分泌T細胞とIL-10分泌T細胞の数がともに一定値を超えるウシは、T.orientalis感染症が発症していることが、明らかになっている(特許文献1)。
【0018】
一方、自然感染ウシの解析では、大部分の個体は、IFN-γもしくはIL-10の片方が高い値を示した。一部の個体で、同時に高い値を示す個体が観察されたが、これらには貧血等の症状が観察された。これはタイレリア原虫感染によって誘導されたIL-10によって、Th1細胞から分泌されるIFN-γのマクロファージに対する活性化効果が抑制される状態にあり、慢性化状態から急激に病態が悪化する際に見られる病理像と類似性が認められる。
ウシがT.orientalis原虫に感染している場合、ウシの末梢血から調整された細胞懸濁液中には、T.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞が含有されるが、このほかにもB細胞、単球、マクロファージや樹状細胞等様々な細胞が含有している。
【0019】
本発明のペプチドは、この懸濁液中に含まれる、T.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞を刺激し、活性化する。
この活性化によって、T.orientalis感染によってジェネレートとしたT.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞は、それぞれIFN-γおよびIL-10を分泌するようになる。本発明においては、この分泌されたIFN-γ及びIL-10をそれぞれターゲットとする解析法によって、T.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数を求める。
この刺激は、上記細胞懸濁液に刺激物質である本発明のペプチド抗原を混和すればよい。
本発明のペプチドを使用するウシT.orientalis感染症の診断においては、被験試料の細胞懸濁液は、ウシから採取された末梢血をそのまま用いてもよいし、また、凍結保存したものを用いてもよい。
【0020】
より具体的には、ウシより抗凝固処理した末梢血液より、HISTOPAQE(登録商標)-1077(SIGMA-ALDRICH社)などを用いた密度遠心分離法によって単離したPeripheral Blood Mononuclear Cells(PBMCs)を使用する。単離後すぐに使用しない場合は細胞凍結保護液CP-1(極東製薬工業株式会社)などを用いて凍結保存してもよい。また、細胞懸濁液の調製は特に限定されるものではなく、通常使用される培地等により行うが、可能な限りRPMI1640培地へ最終濃度10%非働済FCS、50μM2-メルカプトエタノール、100units/ml penicillin、100μg/ml streptomycinを添加したRPMIコンプリートメディウムが望ましい。また、使用するPBMCはRPMIコンプリートメディウムへ懸濁した際に細胞数検出キットNucleoCassette(chemometec社)もしくは血球計算盤を用いて細胞数を算出した後に測定に用いる。
【0021】
上記T.orientalis抗原の混和によって活性化し、IFN-γおよびIL-10を分泌するようになった細胞懸濁液中のT細胞数の計測には、例えばIFN-γおよびIL-10 ELISpotアッセイに代表されるサイトカイン検出システムを用いることが可能である。具体的にはPBMCs懸濁液をT細胞刺激用ペプチドとともに96ウェルプレート(PVDFボトム)にて培養することで、この培養ウェル底面に事前コーティングされた抗IFN-γ抗体および抗体IL-10抗体と接触させ、最終的に底面のこれらの抗体に捕獲されたIFN-γおよびIL-10を特異的抗体で検出する。この様なやり方で検出されたIFN-γおよびIL-10を分泌するようになったT細胞の数は、求めるT.orientalis感染によってジェネレートとしたT.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数に対応する。
【0022】
上記使用する抗IFN-γ抗体数および抗体IL-10抗体は、ウシ由来のIFN-γ及びIL-10を結合できるものであればよい。又、抗体の種類は、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体のどちらでも使用可能である。
サイトカイン分泌T細胞の数を測定する方法は、抗体による細胞内染色を行ないフローサイトメーターで検出する等いくつか知られているが、本願発明においては、上記ELISpot(Enzyme-linked immunospot)法が好ましく用いられる。
このように求められたT.orientalis抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数は、T.orientalis感染の状態を反映し、診断対象のウシにおいてIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数がともに検出されない場合には、診断対象のウシはT.orientalisに感染しておらず、また、IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数が単独または両方で一定基準値を超える場合には、診断対象のウシにおいて、T.orientalis感染症を発症しているか、あるいは発症する恐れが高いものと判定することができる。この基準値は、IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数とT.orientalis感染症の発症との関係を調べることにより、求めることが可能である。
【0023】
例えば、ELISpot法を使用した場合、T.orientalis感染症の発症は、細胞懸濁液中の各T.orientalis抗原特異的IFN-γ分泌T細胞およびIL-10分泌T細胞に由来する各スポット数が、それぞれともに(IFN-γは1×10E6cellsあたり、IL-10は1×10E5cellsあたり)10個以上検出された場合に生じている。なお、ウシPBMCは末梢血液100mlより約2×10E9cells程度が回収できるため、末梢血液1ml当たり約2×10E7cellsが含まれる。IFN-γ検出ウエルでは1×10E6cells、IL-10検出ウエルでは1×10E5cellsのPBMCを播種して測定する場合、それぞれの検出されたサイトカインスポット数が「10」とすると、1mlあたりIFN-γ分泌T細胞が200個、IL-10分泌T細胞が2000個含まれている。よって、本発明のペプチドを使用して診断する場合、この値をT.orientalis感染症が発症しているか否かの基準値とすることができる。また、ELISpot法以外の方法を使用した場合においても、この基準値に対応する解析データに基づき、T.orientalis感染症が発症しているか否かの診断を行うことができる。ただし、これらの基準値は、求められる解析の精度に依存するため、実験の目的に応じて最適化することも可能である。
【0024】
上記ELISpot法に対して、既存のPCR法、血液スメア解析、既存の一般血液解析を組み合わせる事で、免疫応答のバランスと病態の診断をより確実に行うことも可能である。すなわち、PCR法および血液スメア解析によって、血液内に存在するT.orientalisを検出することでELISpot結果を補強することが可能であるし、一般血液解析によって貧血等の病態の発症の有無を直接示すことでELISpot結果との相関性を示すことが可能である。
以下に、本発明を実施例として説明するが、本発明は該実施例に何ら限定・制約されるものではない。
【実施例】
【0025】
本実施例において用いた手法、及び抗原ペプチドは以下に示される。
【0026】
1)ELISpotアッセイの準備
下記の免疫活性化反応の培養が終了するまでの操作は安全キャビネットもしくはクリーンベンチ内で無菌的に行った。
底面がPolyVinylidine DiFluoride(PVDF)メンブランで構成されている96ウエルフィルタープレート(Millipore社)を準備し、各ウエルへ70%EtOHを50ulずつ加え30秒−2分間処理することにより疎水性PVDFメンブランの親水処理を行った。ウエル内のEtOHをアスピレーターにより吸引除去後、Phosphate Buffered Saline(Ca2+ Mg2+ 無添加)(PBS)を各ウエルあたり150ul加えた後にアスピレーターで取り除く洗浄作業を5回繰り返す。洗浄操作が終了した後、抗bovine IFN-γキャプチャー抗体(MABTECH code 3115-3)または、抗IL-10キャプチャー抗体(AbD serotec, code MCA2110, clone CC318)をPBSにより7.5μg/mlに希釈し、80μlずつ加え4℃、一晩処理することにより底面のPVDFメンブランへキャプチャー抗体をコーティングさせた。翌日に余剰なキャプチャー抗体はアスピレーターにより吸引除去後、各ウエルを150μlのPBSで洗浄作業を行った。洗浄終了後のウエルにはRPMIコンプリートメディウム(RPMIメディウムへ最終濃度10%FCS(本実験系では非働化処理したFCSを使用)、50μM2-メルカプトエタノール、100units/ml penicillin、100μg/ml streptomycinになるように添加したもの)を100μlずつ加えて室温30分間もしくは4℃、1時間以上のブロッキング処理を行った。また、処理温度が4℃でのブロッキング処理を行った場合はELISpot assayを行う前にプレートを室温へ戻した。
【0027】
2)ELISpotアッセイに使用する細胞の準備
実験に用いる細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cells(PBMCs))は目的の個体から抗凝固処理した末梢血液よりHISTOPAQE(登録商標)-1077(SIGMA-ALDRICH社)による密度遠心分離法をもちいて単離した。また、単離後すぐに使用しない場合は細胞凍結保護液CP-1(極東製薬工業株式会社)などを用いて必要になるまで凍結保存した。PBMCs(脾臓細胞も使用可)はRPMIコンプリートメディウムで洗浄後、RPMIコンプリートメディウムへ再懸濁させ細胞数検出キットNucleoCassetteTM(chemometec)もしくは血球計算盤を用いて細胞数を算出しておく。
【0028】
3)抗原ペプチド
今回使用した刺激抗原ペプチドを下記に示す。
a)タイレリア原虫表面タンパク質であるmajor piroplasm surface protein(ピロプラズマ主要表面タンパク質, MPSP)において抗原性が報告されている7C、7I、15C、15Iの4種類をペプチド合成した(J.Vet.Med.Sci 63:895-901,2001 Kakuda T et al)。
b)タイレリア原虫表面タンパク質であるIkeda型p23抗原に対して10アミノ酸をオーバーラップさせた20アミノ酸残基からなる19種類をペプチド合成した(Int.J.Parasitol.,29:593-599,1999 Sako Y et al)
c)タイレリア原虫表面タンパク質であるchitose型p23抗原の部分ペプチド3種を合成した。
これら合成された各ペプチドのアミノ酸配列を以下に示す。
【0029】
MPSP由来ペプチド
7C(MPSP Chitose型アミノ酸配列の第61位から80位からなるペプチド配列);DTSKFTPTVAHRLKHAEDLF(配列番号1)

7I(MPSP Ikeda型アミノ酸配列の第61位から80位からなるペプチド配列);DTSKFTPTVAHRLKHAEDLF(配列番号2)

15C(MPSP Chitose型アミノ酸配列の第141位から160位からなるペプチド配列);GTGKVYDFVGNFKVTKVKFE(配列番号3)

15I(MPSP Ikeda型アミノ酸配列の第141位から160位からなるペプチド配列);GTGKLYNFIGNFKVKKVMFE(配列番号4)

Ikeda型p23抗原由来ペプチド
p23 Ikeda No.1(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第29位から48位からなるペプチド配列);TAIYIDKDGKFPDRITINHF(配列番号5)

p23 Ikeda No.2(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第39位から58位からなるペプチド配列);FPDRITINHFQSDMEGYKAY(配列番号6)

p23 Ikeda No.3(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第49位から68位からなるペプチド配列);QSDMEGYKAYTYQKDGDKYV(配列番号7)

p23 Ikeda No.4(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第59位から78位からなるペプチド配列);TYQKDGDKYVNISKVFYGER(配列番号8)

p23 Ikeda No.5(p23Ikeda 型アミノ酸配列の第69位から88位からなるペプチド配列);NISKVFYGERLLKVAGYNMK(配列番号9)

p23 Ikeda No.6(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第79位から98位からなるペプチド配列);LLKVAGYNMKCDYVFYIKVF(配列番号10)

p23 Ikeda No.7(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第89位から108位からなるペプチド配列);CDYVFYIKVFWKADIAPFLI(配列番号11)

p23 Ikeda No.8(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第99位から118位からなるペプチド配列);WKADIAPFLIKLKYYSWSWA(配列番号12)

p23 Ikeda No.9(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第109位から128位からなるペプチド配列);KLKYYSWSWAPYRKHFKLNP(配列番号13)

p23 Ikeda No.10(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第119位から138位からなるペプチド配列);PYRKHFKLNPQLEWEEVFIP(配列番号14)

p23 Ikeda No.11(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第129位から148位からなるペプチド配列);QLEWEEVFIPTIDETSETGY(配列番号15)

p23 Ikeda No.12(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第139位から158位からなるペプチド配列);TIDETSETGYRKLFKQRMDN(配列番号16)

p23 Ikeda No.13(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第149位から168位からなるペプチド配列);RKLFKQRMDNLVSLIGDDLL(配列番号17)

p23 Ikeda No.14(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第159位から178位からなるペプチド配列);LVSLIGDDLLSTYKPFKATK(配列番号18)

p23 Ikeda No.15(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第169位から188位からなるペプチド配列);STYKPFKATKAEQVVAGATE(配列番号19)

p23 Ikeda No.16(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第179位から198位からなるペプチド配列);AEQVVAGATEEEKSDKKKYV(配列番号20)

p23 Ikeda No.17(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第189位から208位からなるペプチド配列);EEKSDKKKYVLMVVVVVVFV(配列番号21)

p23 Ikeda No.18(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第199位から218位からなるペプチド配列);LMVVVVVVFVVVASLVVFLV(配列番号22)

p23 Ikeda No.19(p23 Ikeda型アミノ酸配列の第209位から223位からなるペプチド配列);VVASLVVFLVKFCLK(配列番号23)
【0030】
Chitose型p23抗原由来ペプチド
p23 Chitose No.4(p23 Chitose型アミノ酸配列の第59位から78位からなるペプチド配列);TYQKEGDKYVNITKVFFGER(配列番号24)

p23 Chitose No.8(p23 Chitose型アミノ酸配列の第99位から118位からなるペプチド配列);WKGELAPFLIKLKYYSWSWA(配列番号25)

p23 Chitose No.16(p23 Chiotse型アミノ酸配列の第179位から198位からなるペプチド配列);AEQTVAVATEEEKSDKKKYV(配列番号26)
【0031】
T.orientalisp23抗原のサブタイプ3種のアミ酸配列(Buffeli型;配列番号27、Chitose型;配列番号28、Ikeda型;配列番号29)、及び該p23抗原における上記合成した各ペプチドの対応する領域は図1に示される。
上記p23 Chitose No.4、No.8及びNo.16は、それぞれp23ikedaNo.4、No.8及びNo.16に対応している。
【0032】
4)免疫活性化反応
上記1)のキャプチャー抗体をブロッキングした96ウエルフィルタープレートにおいて、ブロッキング処理に用いたRPMIコンプリートメディウムを除去した後に、抗bovine IFN-γキャプチャー抗体をコーティングしたウエルには3×10E5cellsまたは抗IL-10キャプチャー抗体をコーティングしたウェルには1×10E5cellsの細胞を含むRPMIコンプリートメディウム100μlずつウェルへ播種する。刺激用抗原ペプチドを合成し、RPMIコンプリートメディウムで最終濃度の2倍濃度に調製し用いた。調製した刺激用抗原ペプチドを100ulずつ加えて目的の最終濃度の刺激用抗原ペプチドを含む細胞懸濁液200ulとする。ELISPOTアッセイのコントロールとしては最終濃度1μg/ml phytohemagglutin (PHA)で刺激するためのウエルを用意し、数回ピペティングした後に37℃のCO2インキュベーター内で18−42時間、振動を与えないように培養した。
【0033】
5)ELISpotアッセイの検出
細胞懸濁液を除去した後に200μl PBSで5回洗浄作業をし、0.5%FCSを含むPBS(0.5% FCS/PBS)で希釈した抗bovine IFN-γビオチン化抗体(最終濃度0.25ug/ml MABTECH code 3115-6)または抗bovine IL-10ビオチン化抗体(最終濃度0.25μg/ml AbD serotec code MCA211B clone CC320)をそれぞれのサイトカインに対応するウエルへ80μlずつ加えて室温2時間反応させた。ビオチン化抗体溶液を除去し、200μlPBSで5回洗浄作業をした後に0.5%FCS/PBSで1000倍希釈したHorseradish Peroxidase(HRP)をコンジュゲートしたstreptavidin(MABTECH code 3310-9)を室温1時間反応させた。HRP溶液を除去し、200μlPBSで5回洗浄作業をした後に3-Amino-9-ethylcarbazole(AEC)substrate kit(BD Biosciences code 551951)を用いて室温30分間、発色させた。
流水により反応液を洗い流し発色反応を停止させる。プレートは風乾によって十分に乾燥させた。
【0034】
6)タイレリア病の顕微鏡検査(ギムザ染色による原虫の直接観察)
検体ウシより採取した血液をスライドガラスへ塗布し、乾燥させた。メタノールによって固定した後に、MUTO化学薬品より購入したギムザ液により添付プロトコールにしたがって染色を行った。染色が終了した後に軽く水洗し、再び乾燥させ封入した。
その後に下記基準に従って顕微鏡を用いて検鏡し下記の基準に従って原虫の感染を判定した。
+ 10視野を観察して、1個の原虫を検出したもの
++ 10視野を観察して、2−9個の原虫を検出したもの
+++ 1視野で1−9個の原虫を検出したもの
++++ 1視野で10個以上の原虫を検出したもの
【0035】
7)タイレリア病の遺伝子診断
タイレリア病の遺伝子診断(Polymerase Chain Reaction(PCR)法)は、J Vet Med Sci 66:251-256,2004とJ Clin.Micro.31:2565-2569に従って実施した。その概略を示す。検体から採取した血液サンプルは0.1%NaCl溶液処理により赤血球を溶血させた。遠心操作後に得られたピロプラズマと赤血球デブリをDNA extraction buffer(10mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、10mM EDTA)へ溶解させ、この溶液中へsodium dodecyl sulfate(最終濃度0.1%)とprotease K(最終濃度100ug/ml)になるように加えて、55℃2時間処理する。抽出されたDNAはフェーノール・クロロフォルム法、エタノール沈殿により精製し、PCR法のテンプレートとして使用した。PCR法の反応行程は、熱変性:95℃で2分(最初の熱変性は3分)、アニーリング:63℃で2分、伸長反応:73℃で3分(最終サイクルが終了した後に73℃で3分を行う)を1サイクルとし、これを30サイクル行った。次に、このPCR法によって得られた産物を常法に従い電気泳動分析する。その結果分離できたバンドパターンを分析することによりタイレリア感染を判定した。
【0036】
実施例1
免疫応答機構の基礎研究において広く使用されている植物レクチン(PHA)刺激と我々が以前に明らかにしたMPSP抗原ペプチドを陽性コントロールとして、本ELISPOTアッセイ系を用いた際にp23抗原ペプチド刺激よってIFN-γが検出できるか検討した。
標的細胞として既存のタイレリア病診断法である6)顕微鏡検査と7)PCR法で確認したIkeda型T.orientalis原虫に自然に感染したウシ(自然感染ウシ)と該タイレリア原虫を含む血液を接種し感染させたウシ(人工感染ウシ)から回収したPBMCを用いた。上記4)に記載の手法(免疫活性化反応)に従い、上記1)に記載の抗bovine IFN-γキャプチャー抗体をコーティングしたプレート(IFN-γ検出プレート)に、上記2)の手法に従い調整した標的細胞と各MPSP抗原ペプチド(最終濃度:1μM)及び各Ikeda型p23抗原ペプチド(最終濃度:1μM)およびPHA(最終濃度:1μg/ml)を混合し18時間インキュベーションした。その後、上記3)ELISpotアッセイの操作を行ってスポットを検出した。その結果、Ikeda型p23抗原ペプチドNo.4(配列番号8)、No.5(配列番号9)、No.8(配列番号12)、No.10(配列番号14)、No.11(配列番号15)、No.16(配列番号20)及びNo.17(配列番号21)が自然感染ウシ・人工感染ウシの両方のPBMCに対して陽性コントロールとして用いたMPSP抗原ペプチドと同等以上のIFN-γのスポットを得ることができた(図2)。このことからp23抗原ペプチドにも免疫刺激能がありIFN-γを検出することが可能であるとの結論を得た。
【0037】
上記実験結果から、T.orientalisのP23抗原(ikeda型)における自然感染ウシ・人工感染ウシに共通して免疫刺激を与える領域は、両感染ウシに対しIFN-γのスポットを検出できた上記抗原ペプチドNo.4、5、8、10、11、16、17に対応する下記1)〜4)の領域であると考えられ、下記1)〜4)のアミノ酸配列を有するペプチドも同様に両感染ウシに対して免疫刺激能を有する。
1)AA59−88(No.4、5に対応):TYQKDGDKYVNISKVFYGERNISKVFYGERLLKVAGYNMK(配列番号30)
2)AA99−108(No.8に対応):WKADIAPFLI(配列番号31)
3)AA129−138(No.10、11に対応):QLEWEEVFIP(配列番号32)
4)AA179−208(No.16、17に対応):AEQVVAGATEEEKSDKKKYVLMVVVVVFV(配列番号33)
【0038】
実施例2
自然感染・人工感染に共通してT細胞を活性化できた6種類(No.4、5、8、10、11、16、17)のペプチドのうち、ikeda型p23No.4、8、16及びこれらに対応するchitose型p23No.4、8、16(それぞれ配列番号24、25、26)がChitose型やIkeda型アミノ酸配列に特異的であるかどうかを検討するために実施例1の手順と同様にしてIkeda型のみに感染している自然感染ウシとChitose型とIkeda型の両方に感染している人工感染ウシのPBMCに対して上記Chitose型、Ikeda型ペプチドを用いてそれぞれ刺激してELISpotアッセイを行った。結果を図3に示す。これによれば、陽性コントロールとしてMPSP抗原ペプチドによる刺激実験の結果と比較しても、合成した6種類のp23抗原ペプチドは、同程度の陽性細胞数であった。しかしながら、MPSPペプチドによる刺激の場合は感染型に一致する優位な応答性が観察されたのに対し、p23抗原ペプチドの場合にはそれが観察されなかった。つまり、Ikeda型にのみ感染しているウシであっても、Chitose型のp23抗原ペプチド配列刺激で明らかな反応が検出されたのである。つまり、p23抗原ペプチド刺激は、タイレリア原虫の株(subtype)にとらわれること無く、タイレリア感染に対する免疫応答を検出できるユニバーサルな刺激剤となる可能性を有する。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]