特許第5822347号(P5822347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5822347一次電池用ファイバー状電極およびそれを用いた一次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822347
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】一次電池用ファイバー状電極およびそれを用いた一次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/06 20060101AFI20151104BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20151104BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 4/12 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 6/06 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20151104BHJP
   H01M 4/75 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   H01M4/06 Z
   H01M4/06 P
   H01M4/06 A
   H01M4/52
   H01M4/08 B
   H01M4/12 A
   H01M4/62 A
   H01M4/62 C
   H01M4/62 Z
   H01M6/06 Z
   H01M6/06 C
   H01M6/16 Z
   H01M6/18 Z
   H01M4/75 Z
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-229161(P2011-229161)
(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公開番号】特開2013-89465(P2013-89465A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】高▲崎▼ 智昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
(72)【発明者】
【氏名】境 哲男
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】岩城 勉
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−317794(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/007549(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/058574(WO,A1)
【文献】 特開昭53−104826(JP,A)
【文献】 特公昭40−006646(JP,B1)
【文献】 特開昭52−010520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/06
H01M 4/08
H01M 4/12
H01M 4/52
H01M 4/62
H01M 4/75
H01M 6/06
H01M 6/16
H01M 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電池に用いられる電極であって、
導電性のファイバー状素材からなる集電体と、
開繊した前記ファイバー状素材の束に電解析出または電解メッキを施すことによって前記集電体表面上に被膜層として形成された活物質層と、
を備える一次電池用ファイバー状電極。
【請求項2】
請求項1において、当該電極がファイバー状正極であり、前記活物質層が、正極活物質であって、NiOOH、MnO、AgO、AgO、TiOで表される化合物からなる群から選ばれた一種類以上の物質からなる一次電池用ファイバー状電極。
【請求項3】
請求項2において、前記正極活物質が、β型NiOOH、γ型NiOOHまたはこれらの混合相からなる一次電池用ファイバー状電極。
【請求項4】
請求項3において、前記正極活物質が、γ型NiOOHを含み、このγ型NiOOHにおけるニッケル元素の一部が、アルミニウムおよびマンガンからなる群から選ばれた一種類以上の元素によって置換されている一次電池用ファイバー状電極。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、当該電極がファイバー状負極であり、前記活物質層が、負極活物質であって、亜鉛、リチウム、マグネシウム、およびこれらのうちの少なくとも1種類を含む合金からなる群から選ばれた一種類以上の物質からなる一次電池用ファイバー状電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記集電体と前記活物質層との間に、金属メッキ被膜が設けられている一次電池用ファイバー状電極。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記電解析出または電解メッキによる被膜層の形成が、前記ファイバー状素材からなる集電体を作用極として金属塩水溶液中で電解析出する工程、苛性アルカリ水溶液に浸漬処理する工程、および活物質層を酸化処理する工程の少なくともいずれか一つを含む一次電池用ファイバー状電極。
【請求項8】
請求項7において、前記金属塩水溶液中で陰分極によって得られた前記正極の活物質層に、導電剤として金属粉または炭素が添加されている一次電池用ファイバー状電極。
【請求項9】
請求項7または8において、前記金属塩水溶液中で陰分極によって得られた前記正極の活物質層に、バインダが添加されている一次電池用ファイバー状電極。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項において、前記金属塩水溶液として、ニッケル、クロム、マンガン、コバルト、鉄、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、チタン、銅、銀、金、錫、鉛、ロジウム、白金またはパラジウムの塩の少なくとも一種類以上の金属塩を含む水溶液を用いる一次電池用ファイバー状電極。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の一次電池用ファイバー状電極を、正極および負極の少なくとも一方として備える一次電池。
【請求項12】
請求項11において、前記ファイバー状正極および前記ファイバー状負極の少なくともいずれか一方の表面にセパレータとなる被膜が形成されている一次電池。
【請求項13】
請求項11において、前記ファイバー状電極の表面に固体電解質膜が形成されている一次電池。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項において、複数の前記ファイバー状正極を圧縮成形した正極群および複数の前記ファイバー状負極を圧縮成形した負極群を備えており、前記正極群の端部に正極端子が設けられ、かつ前記負極群の端部に負極端子が設けられている一次電池。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項において、複数の前記ファイバー状正極を接着剤で固定することにより形成された正極群および複数の前記ファイバー状負極を接着剤で固定することにより形成された負極群を備える一次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池として普及しているルクランシェ型乾電池、アルカリマンガン乾電池、オキシ水酸化ニッケル乾電池、それに非水電解質リチウム一次電池などの一次電池の分野に属し、その改良に関する。
【背景技術】
【0002】
正極に炭素棒に担持された二酸化マンガンを、負極に亜鉛缶、電解液として塩化亜鉛が主である水溶液を用いるいわゆる乾電池は、価格が安く、電極材料、製造工程の改善、電池構造の最適化などにより放電特性や保存特性が向上し広く使われている。その後、負極活物質である亜鉛を粉末状とし、電解液を苛性アルカリ水溶液(主として塩化亜鉛を溶解した苛性カリ水溶液)にしたアルカリマンガン乾電池が、とくに高出力用として普及が進んだ。
【0003】
この電池では亜鉛を粉末にし、電解液に苛性アルカリを用いたことで、亜鉛の利用率が向上し、特に高率放電特性が改善された。なお、オキシ水酸化ニッケル系乾電池は、アルカリマンガン乾電池よりも一層高出力性能が望まれる用途に対応するために開発された電池であり、通常、二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルが混合して正極としているのが特徴である(例えば、特許文献1、2)。また、空気−亜鉛電池は古くには大容量の電池が実用化されたが、現在は小型電池が主に補聴器用に使われている。正極として燃料電池と基本的に同じ原理の空気極を採用し、負極活物質は亜鉛、電解液は苛性アルカリを用い、高容量密度を特徴としている。外国を中心に空気−金属電池開発の一環として、大型化による大容量化の動きもある。
【0004】
これら水溶液電解液系一次電池に対して、非水系電解質とくに有機電解液リチウム一次電池が普及している。有機電解液系の他に固体電解質を用いたリチウム一次電池も開発されている。非水系電解質電池は高価ではあるが、高容量、高電圧で、優れた低温特性を持ち、保存性が優れている。とくに有機溶媒にリチウム塩を溶解した有機電解液リチウム一次電池が普及してきた。この電池の正極には二酸化マンガンやフッ化カーボン、負極にはリチウム(金属)が用いられている。リチウム一次電池は、まずコイン型や棒状型が開発され普及した。コイン型は高容量、高電圧で、優れた保存性を特徴とするとともに電池の厚さが薄いので、正極、負極とも薄い電極が採用され出力特性にも問題が少なかった。ところがリチウム一次電池も用途拡大が必要となり、高容量化が図られた。そのためには電池は大きくする必要があり、これに対応して厚さの厚い電極を用いることになる。つまり集電体と活物質の距離が大きくなると高出力は期待できなくなった。
【0005】
そこで形状は乾電池同様の円筒型を採用して、円筒型リチウム一次電池とし、電極を薄型にして、アルカリ電解液を用いたニッケル−カドミウム二次電池で採用されていた正極とセパレータと負極を電極群として一体化してから捲回する方式を採用した。その結果、カメラなど高出力を要する用途へ利用が可能となった。このようにリチウム一次電池においても集電体と活物質からなる電極の形状は、電池の特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。なお、このような捲回方式の電極構成は、その後に開発されたリチウムイオン電池に採用されている。
【0006】
以上、一次電池に用いられる正極及び負極は、アルカリマンガン乾電池の負極の亜鉛が粉末状、リチウム一次電池の負極のリチウム箔、活物質が空気中の酸素である空気−亜鉛電池の空気極を除けば、各活物質と必要に応じて添加剤と集電体などで構成された塊(ブロック)状、または板状である。既述のようにリチウム一次電池ではブロック状のほかに高出力を目的に薄い電極を捲回して構成されているが、それでも集電体と活物質との距離が大きく、さらなる高出力には適していないのが現状である。
【0007】
このような塊状、板状の電極よりもさらに集電体と活物質層の距離を小さくし、剥離も防止できる電極として、二次電池用にファイバー電池が提案された。このファイバー電極の採用により二次電池の高出力性、急速充放電特性、活物質利用率の向上などが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−15106号公報
【特許文献2】特開2008−53222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ルクランシェ型乾電池、アルカリマンガン乾電池、オキシ水酸化ニッケル系乾電池、酸化銀亜鉛電池、空気−亜鉛電池、非水系電解質リチウム電池などの一次電池に用いられる正極及び負極は、アルカリマンガン乾電池の負極の亜鉛が粉末状、リチウム一次電池の負極のリチウム箔、空気−亜鉛電池の空気極を除けば、ほとんどが活物質と添加剤で構成された塊状、板状である。
【0010】
リチウム一次電池では電解液の抵抗が水溶液系電解析出よりも1桁高いので、一次電池でも高出力を目的に水系電解液電池よりも薄い電極を捲回して構成されているが、それでも集電体と活物質との距離が大きく、さらなる高出力には適していないのが現状である。電池の特性、とくに高出力特性、活物質利用率については電極の形状、つまり集電体と活物質とをできるだけ接近させることが好ましいが、一次電池に対しては、これら目的を大幅に達成させる電極の形状変化による手段は提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電池を構成する正極及び負極の電極の形状が、一次電池の特性に大きく影響を及ぼすことに着目してなされたものである。すなわち、基本的には、活物質層と集電体とを如何に接近させた構造を採るかを考慮してなされたものである。具体的にはカーボンファイバーなどの導電性ファイバーに活物質層を形成して得られたファイバー電極をルクランシェ型乾電池、アルカリマンガン乾電池、オキシ水酸化ニッケル系乾電池(ニッケル系乾電池ともいわれる)、酸化銀亜鉛電池の正極、負極、それに空気−亜鉛電池の負極、非水系電解質リチウム一次電池の正極などに適用することを第一の特徴とする。
【0012】
この電極を製造する工程で、ファイバー電極の芯材として最適な炭素繊維(以下カーボンファイバーと記載)については、ポリアクリロニトリル(PAN)などの原料繊維を炭化して製造する際に、繊維を束ねた状態で製造するのが量産上好ましく、電極にする際には、これを開繊する工程も重要であることがわかり、開繊の最適な手法を見出した。
【0013】
つぎの特徴は乾電池、アルカリマンガン乾電池、オキシ水酸化ニッケル系乾電池などは正極、負極ともに、それに空気−亜鉛電池の負極、非水系電解質リチウム一次電池の正極に導電性ファイバーに特に無電解めっきあるいは電解めっき法、電解析出法を採用して活物質層を形成して用いることである。
【0014】
この無電解めっきあるいは電解めっき法、電解析出法は、水系一次電池や非水系電解質リチウム一次電池のほとんどの正極に使われる二酸化マンガン、それにオキシ水酸化ニッケル極の活物質材料になる水酸化ニッケル、負極のとくに水系電解液一次電池のほとんどに使われる亜鉛極に最適で、ファイバーの表面に強固に形成可能である。つまり、水系、非水系を問わずほとんどの正極、負極に適用可能である。当然、他の活物質層形成の手段として、活物質粉末とバインダからなるスラリーの塗着、蒸着なども採用可能である。
【0015】
さらに正極、負極間のセパレータの材料や構成法もファイバー電極を用いた一次電池に適した工程を確立した。つまり電池を構成する上で不可欠なセパレータもセパレータを正極、負極間に介在させる方式のほかに、本発明のファイバー電極には、セパレータ層として正極、負極のいずれか一方、あるいは両極の電極周囲に被覆して形成する方式が有効であることを見出した。また、用途に応じて要望される高電圧、高容量を達成するためのファイバー電池の直列あるいは並列に集合(積層)する方式についても確立した。これらにより、ファイバー電池のとくに出力特性を大きく向上させ、また、放電時の活物質の利用率を高めることが可能になった。
【0016】
本発明に係る一次電池用ファイバー状電極は、導電性のファイバー状素材からなる集電体と、開繊した前記ファイバー状素材の束に電解析出または電解メッキを施すことによって前記集電体表面上に被膜層として形成された活物質層とを備えている。このファイバー状電極は、正極および負極のいずれにも適用することが可能であり、正極に適用する場合には、前記活物質層を形成する正極活物質として、NiOOH、MnO、AgO、AgO、TiOで表される化合物からなる群から選ばれた一種類以上の物質とすることができ、負極に適用する場合には、前記活物質層を形成する負極活物質を、亜鉛、リチウム、マグネシウムなどの単体金属元素及びこれらの単体金属元素に一種類以上の他元素を添加してなる合金、金属間化合物からなる群から選ばれた一種類以上の物質とすることができる。
【0017】
この構成によれば、電極を塊状や板状ではなくファイバー状とし、その表面上に電解析出または電解メッキによって活物質層を形成することにより、従来の一次電池用電極に比べると、きわめて薄い活物質層が形成される。特に、開繊により、ファイバー状素材からなる各集電体に、ほぼ均一に薄い活物質被膜層を形成することが可能になる。したがって、活物質層の表面積が大きくなり、その結果、電池の内部抵抗が低減されることにより、電極の化学反応性が大きく向上する。電池の高出力化が可能となり、また、活物質の利用率が向上することにより、電池の高容量化が可能となる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る一次電池用ファイバー電極において、前記正極活物質が、β型NiOOH、γ型NiOOHまたはこれらの混合相からなることが好ましく、前記正極活物質が、γ型NiOOHを含み、このγ型NiOOHにおけるニッケル元素の一部が、アルミニウムおよびマンガンからなる群から選ばれた一種類以上の元素によって置換されていることがさらに好ましい。この構成によれば、γ型はβ型と比べて1.2〜1.5倍の電気容量を保持できるので、電池の高容量化が期待できる。ただし、Ni(OH)が酸化処理によってγ型NiOOHに変化する際の体積変化が大きく、従来の発泡状金属や平板を基材として用いた場合、活物質層の脱落が生じやすかった。複数のファイバーを束ねて形成されるファイバー電極では、酸化処理に伴って生じる活物質膨潤の際に、周りの繊維も膨潤することで活物質が互いに押し付け合い、活物質層の剥離脱落を防止する効果が期待できる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る一次電池用ファイバー状電極において、前記集電体と前記活物質層との間に、金属メッキ被膜が設けられていることが好ましい。当該電極が正極である場合、上記金属メッキ被膜は、例えばアルカリ系一次電池ではニッケルメッキ被膜が好ましく、有機電解液系ではAlメッキ被膜が好ましい。当該電極が負極である場合、上記金属メッキ被膜は、例えば銅メッキ被膜またはニッケルメッキ被膜である。この構成によれば、集電体である集電体の導電性が向上し、一次電池として優れた高出力特性が得られる。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る一次電池用ファイバー状電極は、具体的には、前記電解析出または電解メッキによる被膜層の形成が、例えば、前記ファイバー状素材からなる集電体を作用極として金属塩水溶液中で活物質を電解析出する工程、苛性アルカリ水溶液に浸漬処理して完全に活物質化する工程、および必要に応じて活物質層を酸化処理する工程の少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。前記金属塩水溶液としては、例えば、ニッケル、クロム、マンガン、コバルト、鉄、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、チタン、銅、銀、金、錫、鉛、ロジウム、白金またはパラジウムの塩の少なくとも一種類以上の金属塩を含む水溶液を用いることができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る一次電池用ファイバー状電極において、前記金属塩水溶液中で陰分極によって得られた前記正極の活物質層に、導電剤として金属粉または炭素が添加されていることが好ましく、また、バインダが添加されていることが好ましい。
【0022】
本発明に係る一次電池は、上記一次電池用ファイバー状電極を、正極および負極の少なくとも一方として備えている。この一次電池は、例えば、複数の前記ファイバー状正極を圧縮成形した正極群および複数の前記ファイバー状負極を圧縮成形した負極群を備えており、前記正極群の端部に正極端子が設けられ、かつ前記負極群の端部に負極端子が設けられている構造を有している。このようにリード端子を備えることで、表面積が大きい活物質層を有するファイバー状電極を備えた高出力性能および高容量を有する一次電池が構成される。
【0023】
本発明の一実施形態に係る一次電池において、前記ファイバー状正極および前記ファイバー状負極の少なくともいずれか一方の表面にセパレータとなる被膜が形成されていてもよい。この構成により、きわめて薄いセパレータを設けることが可能となり、電極間距離が短縮されて、内部抵抗が低減するので、一次電池の高出力性能がより向上する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る一次電池において、前記ファイバー状負極の表面に固体電解質膜が形成されていてもよい。この構成を採用すれば、電解液漏れを考慮する必要がなくなり、信頼性は一層向上する。さらに、セパレータを必要としない構成を採用することもできる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る一次電池において、複数の前記ファイバー状正極を接着剤で固定することにより形成された正極群および複数の前記ファイバー状負極を接着剤で固定することにより形成された負極群を備えていることが好ましい。複数のファイバーを束ねて固定することによって、取り扱いが容易な薄いシート状のファイバー正極およびファイバー負極を得ることができる。この構成を採用することで、セパレータと組み合わせて電槽への挿入する際のハンドリングが容易になる。また、シート状の電極の間にセパレータを挟んで圧縮しても形状が崩れにくいため、圧縮度をあげて多くの電極を詰め込むことも可能であり、電池の高容量化が可能である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る一次電池用ファイバー状電極およびその製造方法によれば、電極をファイバー状に形成することにより、極めて薄い活物質層が形成され、適用される一次電池の高出力化および高容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るファイバー状電極が適用される一次電池の概略構成を示す断面図である。
図2図1に用いられるファイバー状電極の構造を模式的に示す断面図である。
図3図1に用いられるファイバー状電極の製造に使用する製造設備の一例を示す概略構成図である。
図4図1に用いられるファイバー状電極の製造に使用する製造設備の他の例を示す概略構成図である。
図5図1に用いられるファイバー状電極の表面にセパレータ被膜を形成するための装置の一例を表す概略構成図である。
図6図5のセパレータ被膜形成装置を構成するスクレーパを示す正面図である。
図7図1に用いられるファイバー状電極の表面にセパレータ被膜を形成するための装置の他の例を表す概略構成図である。
図8】表面にセパレータ被膜が形成されたファイバー状電極を示す概略構造図である。
図9】ファイバー状正極とファイバー状負極とを積層して圧縮成形しつつ切断するための加圧切断装置の概略構成図である。
図10】ファイバー状電極積層体の構造を説明する模式図である。
図11】ファイバー状正極及びファイバー状負極の配置例を示す模式図である。
図12図1の一次電池の製造方法を示す断面図である。
図13図1の一次電池を複数組み合わせて構成される電池モジュールを示す概略構造図である。
図14】ファイバー状正極、セパレータおよびファイバー状負極の積層体で構成される一次電池の一例を示す平面図である
図15図14の一次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る一次電池用ファイバー状電極を用いた一次電池Cの構造を模式的に示す断面図である。一次電池Cは、電極としてファイバー状正極1およびファイバー状負極2を備えている。これらファイバー状正極1,負極2は、同様の基本構造を有している。すなわち、図2に示すように、ファイバー状正極1は、導電性のファイバー状素材からなる正極集電体3と、正極集電体3の表面に形成した正極活物質層4を有しており、ファイバー状負極2は、導電性のファイバー状素材からなる負極集電体5と、負極集電体5の表面に形成した負極活物質層6を有している。
【0030】
<集電体>
導電性のファイバー状素材からなる集電体3,5としては、例えば、カーボンファイバーが最も好ましく、他にニッケル線、銅線、アルミニウム線、鋼線、金属被覆したポリオレフィンを使用することができる。あるいは、集電体3,5として、木綿糸、絹糸又はポリエステル樹脂製糸のような耐酸化性又は耐アルカリ性が良好でない繊維状材料を、耐電解液性及び耐酸化性に優れたポリオレフィン系樹脂で被覆し、さらに金属で被覆した材料も使用可能である。さらには、金属被覆した繊維を電解法又は加熱処理により酸化させて、内側の炭素又はポリオレフィンを酸化分解することにより得られる細い中空糸状で多孔質の金属繊維を使用してもよい。
【0031】
また、金属線を集電体3,5として使用した場合、例えば、苛性アルカリ水溶液を電解液に用いる電池では、ニッケル線又は鋼線が使用可能である。リチウム電池の場合には、正極のファイバー状集電体3としてアルミニウム線、負極のファイバー状集電体5として銅線又はニッケル線を使用する。
【0032】
<活物質層>
正極活物質層4を形成する活物質としては、例えば二酸化マンガン(MnO)を使用することによって、マンガン一次電池またはアルカリマンガン電池用のファイバー状正極1を得ることができる。他の例として、水酸化ニッケル(Ni(OH))を得て、これを酸化処理することによって一次電池用オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)ファイバー状正極1を得ることができる。マンガン塩およびニッケル塩の混合水溶液中で陰分極することによって、MnOとNi(OH)を共析する方法も採用可能である。さらに、MnOまたはNi(OH)のいずれか一方を電解析出しておき、他方をその上からコーティングする方法も可能である。その際、例えば、Ni(OH)を電解析出した後でこれを次亜塩素酸ナトリウム水溶液で酸化処理し、NiOOHを形成したものをマンガン塩に浸漬し、次いで苛性アルカリ水溶液に浸漬することによって、MnO層を形成することもできる。こうして得たMnO−NiOOH(および/またはNi(OH))の複合化材料も一次電池用ファイバー状正極1の活物質として使用可能である。その他に、活物質の特性向上を目的に添加剤が利用されるが、本願でも正極活物質への添加物として、炭素、コバルト、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、イットリウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、リチウムからなる水酸化物または酸化物のいずれか一種類以上を含有していてもよい。
【0033】
ニッケル塩にマンガン塩またはアルミニウム塩を5〜40mol%添加して共析する場合、α型の結晶構造を持つNi(OH)が得られる。添加量に応じて、析出したNi(OH)はα型のみから構成される場合、α型とβ型の両方が混在する場合、またはβ型のみからなる場合が考えられる。α型はβ型と比べて1.2〜1.5倍の電気容量を保持できるので、電池の高容量化が期待できる。ただし、Ni(OH)が酸化処理によってγ型NiOOHに変化する際の体積変化が大きく、従来の発泡状金属や平板を基材として用いた場合、活物質層の脱落が生じやすかった。複数のファイバーを束ねて形成されるファイバー電極では、酸化処理に伴って生じる活物質膨潤の際に、周りの繊維も膨潤することで活物質が互いに押し付け合い、活物質層の剥離脱落を防止する効果が期待できる。
【0034】
純粋なNi(OH)からNiOOHを生成する場合、得られるNiOOHはβ型結晶とγ型結晶の混合相になり易いが、Ni(OH)を、例えばアルミニウム塩やマンガン塩と共析することにより、ニッケル元素の一部をアルミニウムやマンガンなどの異種元素で置換した場合、γ型結晶構造が安定化し、γ型NiOOHの単相を得ることが容易になる。
【0035】
炭素やコバルトは導電助剤としての働きが期待できる。充電の必要がない一次電池の場合、充電時の炭素材の酸化劣化の懸念が少ないので、ケッチェンブラックやアセチレンブラックのようなものからグラファイトまで様々な材料から選択可能である。NiOOHと炭素材が反応して酸化される可能性がある場合でも、使用直前に電解液を注入する電池では使用可能である。コバルトは、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)の状態で導電性を発揮し、導電助剤として機能する。ファイバー状水酸化ニッケル正極を硝酸コバルトや硫酸コバルトなどのコバルト塩水溶液と苛性アルカリ水溶液に交互に浸漬するディップコーティングによって、Ni(OH)表面にCo(OH)層を形成する。次いで、これらを酸化処理することによって、NiOOHとCoOOHの両方を一度に得ることができる。炭素材やコバルト酸化物を水酸化ニッケルに対して0.5〜20重量%添加することによって、導電助剤としての効果が得られる。
【0036】
亜鉛、マグネシウム、カルシウムなどを水酸化ニッケルと共に共析すると、これらの元素はニッケルサイトの一部に置き換わり、酸化処理時の活物質層の膨潤を防止する効果がある。水酸化ニッケルの結晶構造としては、一般的に、α型やγ型が形成されにくく、β型が安定的に得られやすい。
【0037】
イットリウム、ジルコニウムなどの酸化物を添加すると、NiOOHの自己放電を抑制する効果が期待できる。
【0038】
MnOやNiOOHの他、AgO、AgO、TiOを正極活物質として使用することもできる。
【0039】
負極活物質層6を形成する負極活物質は一次電池Cの種類によって適宜選択可能である。例えば、苛性アルカリ水溶液を電解液に用いるマンガン電池、アルカリマンガン電池、オキシ水酸化ニッケル電池、酸化銀電池、水銀電池などには金属亜鉛を用い、リチウム電池には金属リチウムを用い、海水電池には金属マグネシウムを用いる。空気−金属電池の負極活物質としては、金属の亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等を用いる。また、これら金属を含む合金も使用可能である。例えば、亜鉛にカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ビスマスを添加した合金、リチウムにインジウム、ガリウム、アルミニウムを添加した合金を用いることも可能である。
【0040】
活物質層4,6を断面がほぼ円形のファイバー状集電体3,5の外周面に付着させる方法としては、電解析出法、金属アルコキシドの加水分解処理、ゾル−ゲル法又は電気メッキ法がある。これにより、各々のファイバー状の集電体3,5表面に、薄く均一な酸化物、水酸化物又は金属からなる活物質の被膜層を円環状に形成し得る。
【0041】
電解析出法としては、例えば、硝酸塩を初めとする金属塩の水溶液中で陰分極させた場合、ファイバー集電体上に断面が円環状になる金属酸化物または金属水酸化物の被膜が形成される。ニッケル、銅、コバルト、マンガン、鉄、バナジウム、タングステン、モリブデン、レニウム、希土類、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、リチウムの水酸化物又は酸化物は、この方法によってファイバー表面に析出させることができる。このうち、ニッケル水酸化物を酸化処理して得られるオキシ水酸化ニッケル又はマンガン酸化物層を形成したファイバーは、端子を取り付けることによって、アルカリ水溶液を電解液とする一次電池用のファイバー状正極1として用いることができる。また、亜鉛の水酸化物や酸化物を還元処理して金属亜鉛を得ることによって、一次電池用のファイバー状負極2として用いることができる。
【0042】
アルコール分子の水酸基の水素を金属原子で置換した化合物である金属アルコキシドを用いて薄い酸化物又は水酸化物の被膜を形成する方法もある。一般式:M(OR)(M:金属、R:アルキル基、n:金属元素の酸化数)で表すことができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素、第13〜16族に属する多くの元素がアルコキシドを形成し得る。これらの金属アルコキシドを水と反応させて加水分解することにより、金属酸化物層をファイバー状集電体表面に形成させることができる。酸化物や水酸化物を電解析出するよりも、この方法が有効である場合もある。
【0043】
電気メッキで得られる金属には、上述した銅、ニッケル、アルミニウムの他に、クロム、鉄、コバルト、銀、金、亜鉛、カドミウム、スズ又は鉛が挙げられる。例えば、金属ニッケルや金属銀の被膜などは酸素中で熱処理するなどして酸化させることによってファイバー状集電体上に酸化物皮膜を形成し、ファイバー正極として使用可能である。
【0044】
亜鉛層を形成したファイバーまたは亜鉛とマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ガリウム、インジウムとの合金層を形成したファイバーは、一次電池用ファイバー状負極2の活物質として用いることができる。
【0045】
亜鉛は、アルカリ水溶液を電解液として用いる一次電池のファイバー状負極2に用いることができる。銀メッキしたファイバー状集電体3を酸化雰囲気で加熱処理することにより、酸化銀一次電池用ファイバー状正極1を得ることができる。
【0046】
共析メッキ法又は分散メッキ法も適用できる。すなわち、電解析出浴、電気メッキ浴又は無電解メッキ浴に、難溶性の微粒子を分散させておいて電解析出またはメッキを行うと、酸化物、水酸化物又は金属と共に微粒子も共析し、活物質となる酸化物、水酸化物または金属中に微粒子が分散した状態の複合メッキ層を得ることも可能である。例えば、導電性に劣る酸化物活物質を析出させる際に、導電助剤となる金属又は炭素の粉末を分散させて共析することにより、導電助剤が活物質中に分散したファイバー状電極を得ることができる。活物質の密着強度を向上させるため、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のようなバインダ剤を分散させてもよい。PVA(ポリビニルアルコール)又はCMC(カルボキシメチルセルロース)のような水溶性ポリマーは、疎水性の炭素粉末を水中へ分散させる界面活性剤として利用できるが、それ自身が活物質又は炭素と共に析出するため、バインダとしての働きも期待できる。さらに、直接メッキすることが困難な電池用活物質の粒子を共析させることができる。
【0047】
活物質の析出量は、電解析出法により形成される活物質被膜層の厚さが、0.5〜30μmの範囲にあることが好ましく、1〜10μmの範囲にあることがより好ましい。高出力化に重点を置く場合には、活物質被膜層を5μm以下に形成するのが好ましく、高容量化に重点を置く場合には、5μmよりも厚くてもよい。活物質被膜層の厚さが0.5μmを下回ると、当然、単位体積当たりの電池容量が小さくなり、容量を確保するために電池容器のサイズを大きくする必要を生じる。逆に、活物質被膜層の厚さが30μmを超えると、活物質被膜層が隣のファイバーの活物質被膜層と接触して、結果として、不均一に厚く堆積することになり、集電性が十分でない活物質被膜層の塊を生じてしまう。活物質被膜層が酸化物や水酸化物であり電気伝導性がそれほど高くない場合には、活物質の利用率の低下をもたらす。
【0048】
<ファイバーの開繊>
また、いずれの場合においても、ファイバー状集電体3,5表面に活物質層4,6を形成する前に、ファイバー状集電体3,5の束を開繊する工程を設けることが必要である。ファイバー束を開繊して薄いシート状に加工することによって、ファイバー状集電体一本一本の間に隙間を設けることができ、ファイバーの一本一本に薄く均一な活物質被膜層の形成が容易になる。ファイバー束を開繊する方法としては、ファイバー束に空気を吹き付けるエアフロー方式又は真空ポンプを利用してファイバー束周辺の空気を吸引する方式を一例として挙げることができる。
【0049】
<集電体のメッキ処理>
一次電池用集電体3,5として最適なカーボンファイバー状素材を用いる場合には、集電体3,5をメッキして表面を金属被覆することによって集電体である集電体3,5の導電性が向上し、大電流放電のような電池特性が向上し得る。ファイバー状集電体表面に導電性を付与するか、又はファイバー状集電体表面の導電性を向上させるため、必要に応じて開繊したファイバー状集電体をメッキして、金属被膜を形成させてもよい。メッキする金属は、電池の動作電圧の範囲において化学的に安定な金属でなければならない。このような観点から、リチウム電池の正極集電体3としては、ファイバー状素材をアルミニウムメッキすることが好ましく、負極集電体5としては、ファイバー状素材を銅メッキまたはニッケルメッキすることが好ましい。
【0050】
一方、アルカリ電解液を用いる一次電池の負極集電体としては、やはり最適なカーボンファイバーを用いる場合には、負極集電体5をニッケルメッキまたは銅メッキすることが好ましい。一次電池用負極としては、電池の種類にもよるが、マンガン電池、アルカリマンガン電池、酸化銀鉛電池、水銀電池空気−亜鉛電池など、亜鉛を負極として用いることが多い。この場合、集電体にニッケルが含まれると、ニッケルと亜鉛が接触した部分において局部電池反応が生じて亜鉛が電解液中に溶け出してしまう。したがって、ファイバー状負極2にカーボンファイバーを用いる場合、活物質が導電性であるので、そのまま用いることができるが、銅メッキを施してから負極活物質被膜層により被覆することが好ましい。苛性アルカリ水溶液を電解液とする電池の正極集電体3としてカーボンファイバーを用いる場合には、正極集電体3をニッケルメッキすることが好ましい。
【0051】
リチウム一次電池の正極用集電体として用いるアルミニウムの電解メッキは、アルミニウムの酸素に対する親和力が大きく、アルミニウムの酸化還元電位が水素より卑であるため、水溶液系のメッキ浴で行うことが困難であり、非水溶液又は溶融塩のメッキ浴で行うことが知られている。例えば、AlCl−LiAlHを主成分とし、溶媒としてエチルエーテルを用いるHydride型と呼ばれるメッキ浴を利用し得る。塩化アルミニウムにテトラヒドリドアルミン酸リチウムを添加し、テトラヒドロフラン、ベンゼン又はトルエンを溶媒とするメッキ浴も利用し得る。さらに、塩化アルミニウム−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl−EMIC)系室温溶融塩、塩化アルミニウム−1−ブチルピリジニウムクロライド(AlCl−BPC)系室温溶融塩、塩化アルミニウムと一般式[(RN+R]X−(ただし、Rは炭素数1〜12のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、Xはハロゲン原子である)で表される第四級アンモニウム塩からなる室温溶融塩を用いるメッキ浴を利用することも可能である。
【0052】
次に、リチウム一次電池やアルカリ一次電池の負極に用いる銅の電解メッキには、硫酸を加えた硫酸銅水溶液がメッキ浴となる。メッキ層の均一化をはかるために、界面活性剤、不飽和有機化合物、染料又は塩素イオンが電解液に添加される。メッキ被膜の均一性を向上させるために、硫酸濃度を増すことも効果がある。なお、硫酸銅浴の他に、シアン化銅浴又はピロリン酸銅浴が採用できる。
【0053】
電解ニッケルメッキには、よく知られている硫酸ニッケルをベースにしたワット浴が利用可能であり、均一性の良いメッキ被膜を得ることができる。このほか、塩化ニッケルをベースとしたウッドストライク浴又はスルファミン酸浴も使用可能である。
【0054】
メッキ法としては、その他に、通電の必要がない無電解法も利用し得る。無電解法は、化学的還元作用により金属を析出させる方法であり、導電性が不十分で複雑な面を持つ絶縁性ファイバーであっても、均一な膜厚のメッキ被膜を形成し得る。例えば、ポリオレフィンのような絶縁性の繊維であっても、公知のPdを含む活性化液で処理することによって、銅又はニッケルの無電解メッキが可能である。一方、導電性を有するカーボンファイバー又は鋼線に適用する場合では、無電解メッキで繊維束に薄い金属被膜を形成しておけば、より均一な厚さの電解メッキ被膜を形成するための下地として利用できる。無電解メッキによるファイバー表面の導電性の改善は、電解ニッケルメッキを適用した際のメッキ効率の向上をもたらし、高い量産性が実現可能である。
【0055】
無電解ニッケルメッキは、よく知られている硫酸ニッケルをベースとして次亜りん酸塩を還元剤としたニッケル−りん合金メッキ(りん含有率5〜12%)析出法、又はジメチルアミンボランの還元作用を利用したニッケル−ボロン合金メッキ(ボロン含有率0.2〜3%)析出法を利用し得る。
【0056】
一方、無電解銅メッキは、硫酸銅をベースとし、ホルムアルデヒドを還元剤としたアルカリ性のメッキ浴を用いて行うことができる。アルカリ溶液中での水酸化銅の沈殿が生成するのを防止するために、錯化剤としてロッシェル塩、キレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩)、クエン酸又は酒石酸がメッキ浴に添加される。銅又はニッケル以外にも、コバルト、金、銀、パラジウム又はスズのような金属を無電解メッキ法によって析出させることも、本願の導電性の向上に効果的である。
【0057】
その他、公知の溶融メッキ、金属溶射法、CVD(化学気相成長)、PVD(真空メッキ)が採用できる。比較的融点の低い亜鉛、スズ、鉛又はアルミニウムを溶かし、溶融メッキ法ではファイバーを溶融した金属に浸漬させ、金属溶射法ではファイバーに高圧空気によって金属を吹き付けることによって、ファイバー表面に金属被膜を形成させることができる。なお、PVDは、真空蒸着法及びスパッタリング法の総称であり、真空中に金属を蒸発させて、素材表面に金属被膜を形成させる方法である。PVDのうち、CVDは、気相メッキ法及び化学蒸着法の総称である。これらメッキ方法は、均一で薄い膜を繊維一本一本に形成するという点では、電解メッキ法の次の候補として挙げられる。つまり、有機溶剤又は溶融塩を用いないで、シート状に開繊されファイバー束にアルミニウムのような被膜(メッキ層)を形成させる方法の一つとして利用し得る。
【0058】
ファイバー表面にメッキ被膜を形成させる替わりに、金属ファイバー又は金属ファイバーの不織布をファイバー状電極の集電体として使用することも可能である。
【0059】
導電性向上のためのメッキ量については、メッキにより形成されるメッキ被膜(メッキ層)の厚さは、0.1〜15μmの範囲であることが好ましく、0.3〜10μmの範囲であることがより好ましい。高出力を期待する場合には、ファイバー状正極1及びファイバー状負極2のメッキ被膜は厚い方が好ましいが、経済性を考慮して0.3〜3μm程度とすれば実用上は十分である。
【0060】
焼結式ニッケル基板を作製する方法で、多孔質の金属被膜層を持つファイバー状集電体を作製することもできる。つまり、開繊したファイバー状集電体に金属粉末とCMCのような増粘剤を含有する水溶液を混練したスラリーを塗布し、乾燥させた後に、高温の還元雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で焼結することによって、ファイバー表面に多孔質の金属層を形成してもよい。
【0061】
<活物質層の形成>
正極活物質又は負極活物質の微粉末を、バインダ、増粘剤又は導電助剤と共に水のような溶媒に混合してスラリーを作製し、これを平らなガラス基板上又は片面離型したポリエチレンシート上でファイバーに塗布した後、ドクターブレードのようなスリット又はダイスのような細孔を通して均一な厚さの塗膜を成形する。次いで、ガラス基板の加熱又はスラリーを塗布したファイバーに温風を当てることにより、短時間でスラリーを乾燥させ、ファイバー上に薄い正極活物質被膜層又は負極活物質被膜層を形成することが可能である。このままの状態でも、ファイバー状電極として機能し得るが、さらにプレス成型することによって集電体であるファイバーと活物質との密着性を向上させることができる。この方法は、均一で薄い活物質膜を繊維一本一本に形成するという点では、電解析出法の次の候補として挙げられる。
【0062】
<セパレータの形成>
正極集電体3の表面に正極活物質層4を形成する工程(A)及び負極集電体5の表面に負極活物質層6を形成する工程(B)の後に、ファイバー状正極1及び/又はファイバー状負極2の表面にセパレータ被膜を形成する工程(C1)を行うことが好ましい。この工程(C1)では、ファイバーが束状で製造された場合に、その束を開繊することによって得たシート状に加工されたファイバー状正極1及び/又はファイバー状負極2の表面に、従来の板状電極に用いている薄いシート状セパレータ、すなわちアルカリ系一次電池の場合には、ポリアミド製不織布又は親水処理したポリオレフィン系不織布、リチウム電池の場合には、ポリプロピレン又はポリエチレン製の微多孔膜を形成させる。一方、ファイバー状正極1及びファイバー状負極2の間にセパレータを挟む構造とすることによって、電池を構成することも可能である。
【0063】
セパレータとして用いられる素材の条件としては、電気絶縁性および電解液の保液性を有し、耐電解液性、耐酸化性、耐還元性にすぐれているものが好ましい。本実施形態では、後述のように、ファイバー状の電極1,2自体が保液性を有するので、少なくとも電気絶縁性とイオン透過性を有している材料であれば、セパレータとして使用することが可能である。
【0064】
電極を板状ではなくファイバー状としたことにより、表面積が大きくなり、電極の化学反応性が大きく向上する。水系電解液を用いる電池では、電解液抵抗が比較的小さいため、電極表面積の大きいファイバー状電極を正極1または負極2のいずれか一方に用いるだけでも反応性が向上し、従来のセパレータと併用しても、ある程度の高出力化および高容量化が可能である。
【0065】
一方、非水系電解液を用いるリチウム電池の高出力化を目的とした場合、電解液抵抗が水系電解液と比べて一桁大きいため、ファイバー状電極に従来のセパレータや板状対極を併用するだけでは、水系電解液を用いる一次電池の場合ほど大幅な高出力特性改善は見込めない。薄いセパレータ被膜を形成したファイバー状正極1及び/又はファイバー状負極2の積層体を形成し、電極表面積とともにセパレータ表面積を増大させ、電極間距離を縮めることによってリチウムイオンの移動距離を短くすることが有効である。
【0066】
セパレータとしては、イオン透過性及び電気絶縁性を有するポリマーのスラリーを平らな基板上で薄く均一に伸ばし、シート状に配列した多数のファイバー状電極(ファイバー状正極1及び/又はファイバー状負極2)の表面にポリマーの被膜を形成させる方法を適用し得る。例えば、セパレータ用のポリマー材料を溶媒で溶かしてスラリーとし、このスラリーを平らなガラス基板上又は離型処理したポリエチレンシート上でファイバー状電極に塗布し、スクレーパ(ドクターブレードのようなスリット)を通して均一な厚さのフィルムに成形する。次いで、加熱により、短時間で溶媒を除去し、ファイバー状電極上に薄いイオン透過性フィルムを形成させることができる。この方法を用いることによって、ファイバー状電極と同程度の極めて薄いセパレータ被膜を形成することが可能であり、電極間距離を大幅に短縮し得る。このような溶液の他に、エマルジョンやディスパージョンをスラリーとして用いることができる。
【0067】
シート状ファイバー状電極上に塗布したセパレータ用のポリマー材料から溶媒をある程度除去し、スラリーが完全に乾燥する前にシート状のファイバー状電極を圧着することによっても、ファイバー状電極の表面にセパレータ被膜を強固に付着することができる。ポリマーの濃度は、ポリマー及び溶媒の種類にもよるが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)の場合、5〜10重量%程度の濃度に調整して、スクレーパを用いて均一な厚さのスラリー被膜をシート状のファイバー状電極上に形成させる。その後、ファイバーをシート状にした電極を圧着する段階では、水が50〜80重量%程度蒸発した状態であることが好ましい。このような半乾燥状態にすることで、ファイバー状電極を圧着した際に、ファイバー状電極がポリマーのセパレータ被膜を突き抜けて露出しにくく、かつ、ポリマーのセパレータ被膜とシート状のファイバー状電極との密着性を良好に保つことができることがわかった。
【0068】
水の蒸発量が少なく、スラリー中の残存する水が50重量%を下回る場合には、残留する水が多く、圧着によりポリマーのセパレータ被膜が破損しやすい。逆に水の蒸発量が80重量%を超える(水の残量が20%以下)場合には、セパレータ被膜の強度は十分であるが、ファイバー状電極とセパレータ被膜(ポリマーの被膜)の、密着性は不十分であることがわかった。
【0069】
セパレータ材料として用いるポリマーの種類は、イオン透過性及び電気絶縁性を有する材料であり、使用される電池に要求される耐酸化性及び耐電解液性を有していれば、特に限定されない。例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PS(ポリスルホン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、セロハン、EVA(エチレン-ビニルアセテート共重合体)、PP(ポリプロピレン)又はPE(ポリエチレン)が使用可能である。これらのポリマー膜のイオン透過性でないポリマーの場合には、多孔性にするか、又は親電解液性を向上させるためのフィラーを添加して用いる。
【0070】
なお、これらのセパレータは一次電池に使用されるものであり、繰り返し充放電される二次電池に使用される場合に要求されるほどの高い耐酸化性を有している必要はない。したがって、上述のPVA、EVOH(エチレンビニルアルコール)の、成膜性には優れていながら、二次電池用途には耐電解液性や耐酸化性が不十分である材料も、本実施形態に係る一次電池Cのセパレータに使用することができる。
【0071】
PVAとしては、部分けん化物と完全けん化物を用いることができる。公知のように、部分けん化物では、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)してPVAを合成する際に、酢酸基をすべて水酸基に変えてしまわず、5〜20%の酢酸基を残しておく。一方、完全けん化物では酢酸基をほぼ100%水酸基に変えている。
【0072】
部分けん化物は酢酸基が部分的に残留しているため、完全けん化物と比べて分子の配列に乱れが起きやすく、結晶性は比較的低い。PVAの部分けん化物と完全けん化物は共に水酸基を含むので、水溶性である。両者の水溶性を比較すると、前者の方が溶解しやすく、常温で攪拌するだけでも良く溶けて、均一なスラリーを形成しやすい。結晶性が比較的高い完全けん化物は水に触れても結晶が崩れにくく、常温の水にはほとんど不溶である。均一な溶液を形成するためには70〜95℃程度まで加熱して、攪拌する必要がある。部分けん化物の膜は電解液を含んで膨潤し易いが、完全けん化物はこれと比べて電解液を含みにくいので、内部抵抗は高めであるが、膨潤し難いので膜強度を維持し易い。用途に応じて、けん化度を調整すればよい。例えば、電解液を入れてすぐに放電する場合には、部分けん化物をセパレータに用い、すぐに放電せずに一定期間保持する場合には、膜の強度に優れた完全けん化物を用いるなどの使い分けが可能である。
【0073】
また、セパレータ膜の膨潤を防いで、膜強度や耐酸化性を向上させるため、ポリアミド繊維などをPVA水溶液などに含浸したものを用いてもよい。セロハンは耐アルカリ性に劣るので、電解液を注入してすぐに放電する電池に適用することが好ましい。長期間保管する一次電池に適用する場合、例えば、電解液を注入せずに保管しておき、使用する直前に電解液を注入する方法がある。電解液を注入しないことによって、膜強度の保持のみならず、電極の自己放電も防止できる。
【0074】
使用する直前に電解液を注液する電池としては、注水電池または海水電池と呼ばれるものもある。この種の一次電池には、正極活物質としてβ−NiOOH、γ−NiOOH、MnO、AgO、AgO、TiO、AgCl、PbCl、CuCl、CuSO、K、PbO、HgO、CFおよびCuOなどを使用可能である。負極はMgやMgを含む合金を使用し、電解液としては海水を用いる。
【0075】
従来の水系電解液の一次電池は、正極と負極の間になるべく多くの電解質を含ませておく必要性から、紙などの多孔性不織布に電解液を浸み込ませた構造を採用している。一方、ファイバー状電極にセパレータを形成し、対極と交互に積み重ねた構造の場合、ファイバー同士の隙間が狭く、毛細管現象によって電解液がファイバーの間に吸い上げられて、保持されやすい。したがって、従来の一次電池のように電解液保持を目的とした厚手のセパレータは必要なく、保液性をある程度持てばイオン透過性を保持した薄手のセパレータをファイバー電極の表面に形成しておけばよい。セパレータ被膜の膜厚は、1〜100μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。
【0076】
また、本実施形態に係る電池Cのセパレータ被膜には、上述のように必要以上の保液性は必ずしも要求されず、ファイバー状正極とファイバー状負極が接触して短絡が発生することを防止できればよい。したがって、セパレータ被膜に形成される孔径は、ファイバー状正極およびファイバー状負極の孔径より小さい範囲であればよく、例えば、10〜100μmとすることができる。なお、亜鉛負極のように放電で苛性アルカリと反応する場合には、それに相当する電解液を注入することが必要になる。
【0077】
セパレータ被膜である多孔質膜を形成する具体的な方法としては、セパレータ用のポリマー材料のスラリーを塗布したファイバー状電極を、スラリーの溶媒と親和性の高い溶媒中に浸漬して限外濾過膜を作製する方法が適用可能である。例えば、SEBSのトルエン溶解液をファイバー状電極に塗布した後、アセトン中に浸漬すると、SEBSはアセトンには溶解しないが、トルエンとアセトンは相溶性がある。このため、トルエンが抜け出た跡が多数の孔として存在するSEBS膜が形成される。同様にして、PVA水溶液をファイバー状電極に塗布した後、エタノール中に浸漬すると、水とエタノールが相溶性であるため、水が抜けて多孔質のPVA膜を形成することも可能である。
【0078】
別の方法としては、ポリマー材料のスラリーにさらにケイ素、マグネシウム、カルシウム又はビスマス等のアルカリ溶解性酸化物の粉末を添加した後、ファイバー状電極を浸漬するか、又はファイバー状電極に塗布するなどの手法により、適宜セパレータ前駆体を電極上に形成する。このセパレータ前駆体を乾燥後、80〜120℃の苛性アルカリ水溶液中に浸漬すると、アルカリ溶解性酸化物が苛性アルカリ水溶液中に溶解する。その結果、多孔性のポリマー膜が形成されて、イオン透過性を示すようになる。苛性アルカリ水溶液を水洗し、乾燥させた後で多孔質セパレータを得ることができる。これらの方法も本実施形態において適用可能であることがわかった。
【0079】
これらアルカリ溶解性酸化物の50%平均粒径は、2μm以下であることが好ましい。これら酸化物の添加量は、ポリマーの重量に対して1〜60重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。添加量が1重量%未満の場合、膜の多孔性及び親電解液性が不十分になりやすく、セパレータのイオン透過性が低下する。逆に、60重量%を超えると、膜強度が低下しやすくなり、対極と重ねて圧縮した際に短絡を生じやすくなる。
【0080】
PP又はPEの場合、耐薬品性に優れているので、溶媒は限られる。PP又はPEの溶液を用いてセパレータ膜を形成することも可能であるが、これらの樹脂のエマルジョンを用いることもできる。さらに、これらの樹脂自体を融点以上の温度(PPでは140〜170℃以上、PEでは100〜115℃以上)で融解させておき、SiO2などのアルカリ溶解性酸化物を添加した後、基板上でスクレーパを通して膜形成する。冷却することで固化する前にファイバー状電極を密着させて、ファイバー状電極とセパレータとの積層体を形成しておき、苛性アルカリ中でSiO2を溶出することによって、微多孔膜を形成し得る。微多孔膜を形成するための添加物としては、マグネシウムの酸化物やアルミニウムの酸化物を添加することも可能である。
【0081】
セパレータの形成法として、電着法を用いることも可能であることが明らかになった。これは粉末状の酸化物及びポリマーを溶媒中に分散させておき、ファイバー状電極と対極とを溶媒中に浸漬し、直流電圧を印加してファイバー状電極上に酸化物及びポリマーを付着させる。溶媒としてはアセトン又はエタノールなどの有機溶媒が用いられる。酸化物及びポリマーの添加量は、0.1〜100g/Lであることが好ましく、1〜50g/Lであることがより好ましい。酸化物の粒径は、0.01〜20μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましい。粒子が小さいと緻密な膜を形成できるが、0.01μm未満では、粒子と粒子の間に隙間が少なくなり、イオン透過性が低下しやすい。一方、粒径が20μmを超えると、逆に隙間が大きくなりやすく、対極のファイバーが接触して短絡を起こしやすいことがわかった。
【0082】
好ましい印可直流電圧値は10〜350Vであり、印加時間は30秒〜10時間である。均一で薄いセパレータ膜を形成する条件は、添加剤である酸化物粉末の種類及び添加量に依存するため、添加量、直流電圧及び印加時間を適宜調整する。
【0083】
<電解質>
本発明の一次電池Cで使用する電解質は、一次電池用として一般に使用し得る電解質であれば特に限定されない。電気絶縁性でイオン伝導性を兼ね備えた固体電解質をファイバー状電極上に析出させ、固体電解質膜を形成することにより、電解液漏れがなく、一次電池の安全性を向上させることができる。
【0084】
ファイバー状負極2の一本一本の周りには均一な固体電解質被膜を形成し得ることがわかった(固体電解質は電気絶縁性とイオン透過性を保持しているので、それだけでセパレータの役割も果たす)。しかも、ファイバー上に固体電解質被膜を析出させることによって、ファイバー状正極および/またはファイバー状負極、電解質層を一挙に形成することができるので、作業工程を短縮することも可能であり、一次電池の小型化も図れる。
【0085】
セパレータの表面積が増大すると、放電でリチウムを挿入または挿出する電池において、イオン拡散速度が高まるため、ファイバー状正極1及びファイバー状負極2の両方の表面にセパレータを形成することが好ましい。セパレータをファイバー状電極表面に形成する以外に、シート状に開繊したファイバー状正極1とファイバー状負極2の間に、シート状のセパレータを挟持させる構造としてもよい。
【0086】
<その他のセパレータ作製法>
前述の金属アルコキシドを塗布して加水分解する方法、ゾル−ゲル法がファイバー状電極表面にセパレータ層を作製する方法にも適用可能である。例えば、ZrOのような親水性を向上させることができる酸化物をゾル−ゲル法やアルコキシドを塗布する方法によってファイバー上に形成することによって、セパレータ層とすることができる。酸化物だけでは、脆くて曲げに弱い場合には、さらに親水性のポリマー被膜を形成することが好ましい。
【0087】
<ファイバー状正極、セパレータ及びファイバー状負極の積層>
ファイバー状正極1、セパレータ及びファイバー状負極2を、端部が水平方向にずれた状態で交互に積層することにより、ファイバー状電極群を形成し得る。ファイバー状正極1及び/又はファイバー状負極2にセパレータ被膜を形成している場合、一方のファイバー状電極と対極となるファイバー状電極を交互に積層し、そのまま圧縮すれば、ファイバー状正極−セパレータ−ファイバー状負極からなる電極群を得ることができる。このとき、ファイバー状正極1とファイバー状負極2の端部は、それぞれ1〜5mm程度ずらして積層することによって、端子形成が容易になる。
【0088】
ファイバー束を開繊して得られたシート状のファイバー状正極1及びシート状のファイバー状負極2の積層体を圧縮成型することによって、ブロック状のファイバー状電極群が得られるが、ファイバー状正極1およびファイバー状負極2のそれぞれをより強固に接着したい場合には、積層する前に正極1及び/又は負極2を接着剤によって固定することが好ましい。接着剤としては、電極、セパレータ又は電解液の性能を低下させるものでなければ特に限定されない。ファイバー状電極群が電槽に固定された後であれば、電解液中に接着剤が溶出しても問題がない。一例として、リチウム電池を構成する場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をファイバー状電極に薄く塗布してもよい。
【0089】
圧縮成型されたファイバー状電極群から端子を取り出す場合、正極側及び負極側にそれぞれ金属板を溶接するか、又はファイバー状電極と金属板を接触させて両側から圧縮することによって、端子を取り出すことができる。ただし、シート状のファイバー状正極シート及びシート状のファイバーを積層しただけの状態では、端子として金属板を接触させた場合に、金属板と対極が接触して短絡する可能性がある。短絡を防ぐためには、正極端子及び負極端子をそれぞれ樹脂埋処理し、その後、正極端子および負極端子を露出させ、正極端子及び負極端子がそれぞれ露出している部分に金属板を押し当て、両側から圧縮する方法が好ましい。樹脂としては、耐電解液性及び絶縁性に優れたものであれば特に限定されないが、上述した絶縁性に優れたポリマー材料又は耐電解液性や絶縁性に優れた市販の合成接着剤であってもよい。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る一次電池用電極である正極1、負極2によれば、電極を板状ではなくファイバー状としたことにより、活物質層4,6の表面積が大きくなり、電極の化学反応性が大きく向上する。その結果、これら電極1,2を備える一次電池Cの内部抵抗が低減されることにより、一次電池Cの高出力化が可能となり、また、活物質の利用率が向上することにより、一次電池Cの高容量化が可能となる。
【0091】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
(1)ファイバー状電極製造方法の実施例1:正極用二酸化マンガン電極の製造
図3に示すファイバー状電極製造設備を用いて、二酸化マンガンを活物質とするファイバー状正極を作製した。図3において、PAN系の炭素繊維(以下、カーボンファイバーと称する。)の10000本の束12を巻付けローラ11にロール状に巻き付ける。巻付けローラ11から巻き戻されたカーボンファイバー12の束は上下一対のガイドローラ13a、13bを経て、コンプレッサー(図示せず)によって圧縮された加圧空気14を吹き付けられて、初めの1cm幅から5cm幅に開繊する。加圧空気14は、一組の散気板15a,15bによってカーボンファイバーの束の幅方向に分散させる。散気板15a,15bには、それぞれ、加圧空気14が炭素繊維の束の幅方向にほぼ均一に吹き付けられるように複数本の櫛目状の間隙を設けている。
【0093】
開繊したPAN系カーボンファイバー12はローラ16を経て電解槽17に達する。電解槽17には、0.5mol/Lの濃度の硫酸マンガン水溶液18を満たしている。電解槽17の底部には厚さ2mmの銅板19を載置する。銅板19は直流電源20の正極端子に接続し、直流電源20の負極端子はローラ21を介してカーボンファイバー12に接触している。電解槽17内のカーボンファイバー12は、ローラ22,23を経て槽外に排出され、さらに、上下一対のガイドローラ24a、24bを経て、スプレー25から霧状の水を噴霧されることにより水洗する。さらに、カーボンファイバー12はファン(図示せず)から吹き付けられる空気26によって乾燥した後、巻取りローラ27に巻き取る。
【0094】
上記のように構成されるファイバー状電極製造設備において、巻取りローラ27の回転を停止した状態で、直流電源20に通電し、電解槽17の浴温を70℃、電流密度を50mA/cmとして10分間電解析出を行った。電解析出後のカーボンファイバー12を走査電子顕微鏡で観察したところ、6〜10μm程度の厚さの二酸化マンガン被膜層がカーボンファイバー12上に形成していることが認められた。
【0095】
次に、巻取りローラ27を10cm/min.の速度で回転してカーボンファイバー12を巻き取りながら、電解槽17の浴温を70℃、電流密度を50mA/cmとして10分間電解析出を行った。電解析出後のカーボンファイバー12を走査電子顕微鏡で観察したところ、3〜5μm程度の厚さの二酸化マンガン被膜層がカーボンファイバー12上に形成していることが認められた。巻取りローラ27を回転させることによって、電解槽17内のカーボンファイバー12の近傍の硫酸マンガン水溶液が適度に撹拌され、陰分極によってカーボンファイバー12の近傍のアルカリ濃度が減少したために、薄く均一な二酸化マンガン被膜が形成されたものと考えられる。これにより、一次電池用ファイバー状二酸化マンガン正極を得ることができた。
【0096】
(2)ファイバー状電極製造方法の実施例2:オキシ水酸化ニッケル正極の製造(1)
実施例1と同様の装置を用い、図3の電解槽17中の水溶液を0.5mol/Lの硝酸ニッケル水溶液に変更し、浴温を25℃、対極を厚さ2mmのニッケル板とした。電流密度を50mA/cmとして、回転ローラ27を10cm/min.の速度で回転しながら、10分間電解析出を行った。電解析出後のカーボンファイバー12を走査電子顕微鏡で観察したところ、活物質層として3〜5μm程度の厚さの水酸化ニッケル被膜層がカーボンファイバー12上に形成していることを認めた。
【0097】
巻取りローラ27に巻き取られたシート状カーボンファイバーを巻取りローラ27から取り外して、0.2mol/Lの次亜鉛素酸ナトリウム水溶液中に、上記シート状カーボンファイバーを浸漬し、10分間放置した。その後、そのシート状炭素繊維を水洗し、次亜塩素酸ナトリウムを十分に除去し、乾燥させることによって、一次電池用ファイバー状オキシ水酸化ニッケル正極を得た。
【0098】
(3)ファイバー状電極製造方法の実施例3:オキシ水酸化ニッケル正極の製造(2)
図4は、ファイバー状電極製造設備の他の実施例を示す概略構成図である。図4に示すファイバー状電極製造設備を用いて、一次電池用ファイバー状オキシ水酸化ニッケル正極を作製した。図3において、PAN系のカーボンファイバー32の10000本の束が巻付けローラ31にロール状に巻き付けられている。巻付けローラ31から巻き戻されたPAN系カーボンファイバー32の束は上下一対のガイドローラ33a、33bを経て、コンプレッサー(図示せず)によって圧縮された加圧空気34を吹き付けられて、元の1cmの幅から5cmの幅に開繊される。加圧空気34は、一組の散気板35a,35bによって炭素繊維の束の幅方向に分散される。この散気板35a、35bは、散気板15a、15bと同じ働きをする。
【0099】
開繊したカーボンファイバー32はローラ36を経てメッキ槽37に達する。メッキ槽37の浴組成は、硫酸ニッケル六水和物が300g/L、塩化ニッケル六水和物が45g/L、ホウ酸が35g/Lとし、浴温が35℃、pHが4のワット浴である。メッキ槽37の底部には厚さ2mmのニッケル板38を載置した。ニッケル板38は直流電源39の正極端子に接続し、直流電源39の負極端子はローラ40を介してカーボンファイバー32に接触している。メッキ槽37内のカーボンファイバー32はローラ41,42を経て槽外に排出され、ローラ43とローラ44の間において、スプレー45から霧状の水蒸気を噴霧させることにより水洗する。その後、カーボンファイバー32はファン(図示せず)から吹き付けられる空気46によって乾燥された後、電解槽47に達する。
【0100】
電解槽47には、0.5モル/Lの濃度の硝酸ニッケル水溶液が満たされている。電解槽47の底部には厚さ2mmのニッケル板48が載置されている。ニッケル板48は直流電源49の正極端子に接続され、直流電源49の負極端子はローラ50を介してPAN系カーボンファイバー32に接触している。電解47内のPAN系カーボンファイバー32は、ローラ51,52を経て槽外に排出され、ローラ53とローラ54の間において、スプレー55から霧状の水蒸気を噴霧されることにより水洗される。その後、カーボンファイバー32はアルカリ槽56に達する。アルカリ槽56には電気ヒータによる加熱装置57が付設されており、また、アルカリ槽56には6モル/Lの濃度の水酸化カリウム水溶液が満たし、浴温は70℃とした。
【0101】
アルカリ槽56内のカーボンファイバー32は、ローラ58,59を経て槽外に排出され、さらに、ローラ60を経て、スプレー61から霧状の水蒸気を噴霧することにより水洗した。その後、カーボンファイバー32はファン(図示せず)から吹き付けられる空気62によって乾燥された後、巻取りローラ63に巻き取られる。
【0102】
上記のように構成されるファイバー状電極製造設備において、直流電源39,49に通電し、巻取りローラ63を10cm/min.の速度で回転させてカーボンファイバー32を巻き取りつつ、巻付けローラ31からPAN系カーボンファイバー32の束を巻き戻しながら、加圧空気34をカーボンファイバー32に吹き付けて、元の1cmの幅から5cmの幅に開繊してから、メッキ槽37においてニッケルメッキを施した。次いで、スプレー45から霧状の水蒸気を噴霧することによりカーボンファイバー32は水洗し、ファン(図示せず)から吹き付けられる空気46によって乾燥した後、カーボンファイバー32は電解槽47に達する。霧状の水蒸気を噴霧することにより炭素繊維の損傷を防止し、また、乾燥させたカーボンファイバーを電解槽47に供給することで、電解槽47の溶液濃度が変化するのを防止することができる。さらに、電解槽47の浴温を25℃、電流密度を50mA/cmとして10分間電解析出を行った後、カーボンファイバー32をアルカリ槽56でアルカリ浸漬処理することで、電解槽47における水酸化ニッケルの電解析出過程後にカーボンファイバー上に残留した硝酸痕を中和することができるので、より結晶性の高い水酸化ニッケル被膜層を得た。また、付設した加熱装置57でアルカリ槽56の浴を加熱することにより、アルカリ浸漬処理を短時間で行うことができる。
【0103】
その結果巻取りローラ63に巻き取ったシート状カーボンファイバー32を走査電子顕微鏡で観察したところ、3〜5μm程度の厚さの水酸化ニッケル被膜層がカーボンファイバー32上に形成されていることを認めた。
【0104】
巻取りローラ63に巻き取ったシート状カーボンファイバーを巻取りローラ63から取り外して、0.2mol/Lの次亜鉛素酸ナトリウム水溶液中に、上記シート状カーボンファイバーを浸漬し、10分間放置した。その後、そのシート状炭素繊維を水洗し、次亜塩素酸ナトリウムを十分に除去し、乾燥させることによって、ファイバー状オキシ水酸化ニッケル正極を得た。
【0105】
(4)ファイバー状電極製造方法の実施例4:亜鉛負極の製造(1)
実施例1と同様の装置を用い、図3の電解槽17を亜鉛メッキ浴にした。電解槽(メッキ槽)17の浴組成は、硫酸亜鉛が200g/L、金属亜鉛が30g/L、硫酸アンモニウムが30g/L、浴温が40℃、pHが4である(金属亜鉛は浴中に懸濁している)。対極としては厚さ2mmの亜鉛板を用いた。電流密度を10mA/cmとして、回転ローラ27を10cm/min.の速度で回転しながら、10分間電解析出を行った。電解析出後のカーボンファイバーを走査電子顕微鏡で観察したところ、活物質層として3〜5μm程度の厚さの亜鉛被膜層がカーボンファイバー12上に形成されていることが認められた。その後、カーボンファイバーシートに亜鉛メッキしたものを水洗し、乾燥させることによって、ファイバー状亜鉛負極を得た。
【0106】
(5)ファイバー状電極製造方法の実施例5:亜鉛負極の製造(2)
図4のメッキ槽37を銅メッキ浴にすることで、電解析出槽47を亜鉛メッキ浴に変更した。さらに第3槽となるアルカリ水洗槽を取り外した以外は、実施例3と同様の装置を用いて、ファイバー状亜鉛負極を得た。メッキ槽37の浴組成は、硫酸銅五水和物が300g/Lで、金属銅が30g/Lで、硫酸が60g/Lで、浴温が30℃とした。メッキ槽37の底部には厚さ2mmの銅板38を載置して、対極とした。また、浴中には撹拌子を設置し、撹拌しながら銅メッキ処理を行った。
【0107】
続く亜鉛メッキの工程は、実施例4と同様の浴組成、温度、pHとして、電解槽47の浴温を25℃、電流密度を10mA/cmとして10分間電解析出を行った。巻取りローラ63に巻き取ったシート状カーボンファイバー32に亜鉛メッキしたものを走査電子顕微鏡で観察したところ、3〜5μm程度の厚さの金属亜鉛被膜層がカーボンファイバー32上に形成されていることが認められた。
【0108】
(6)ファイバー状正極またはファイバー状負極とセパレータの積層体の製造法の実施例
ファイバー状電極製造方法の実施例3で得たファイバー状正極にセパレータの被膜を形成するために、図5に示す装置を用いた。この実施例では、それぞれ実施例4で得られたファイバー状正極またはファイバー状負極を用いた。図5の装置において、ローラ118を経て供給される厚さ約50μmの活物質被膜層が形成されたシート状カーボンファイバー101に対して、スプレー102から霧状の水蒸気を噴霧して洗浄し、空気103を吹き付けて乾燥し、滴下装置104からイオン透過性ポリマーである、濃度10重量%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体のトルエン溶解液のスラリーを滴下する。このSEBSには20重量%のZrOを添加してある。SEBSは疎水性であるが、ZrOを添加することで親水性を付与でき、アルカリ電解液系一次電池のセパレータとして使用できる。このSEBSのスラリーはスクレーパ105の入口付近に液溜まり119を形成して、スクレーパ通過後のシート状カーボンファイバー101に均一なスラリーの膜が形成されるようにした。
【0109】
図6に示すように、スクレーパ105は、ナット115に螺合するボルト116の上下位置を調整することにより、掻取り板117とポリエステルシート112との間隙Dを調整した。すなわち、滴下装置104から滴下されるスラリーはポリエステルシート112上に落下するので、間隙Dを調整することにより、シート状カーボンファイバー101の上下に塗布されるスラリーの厚みを調整することができる。なお、ポリエステルシート112は、外側(シート状に加工したカーボンファイバー101に面する側)に離型処理を施したポリエステルシートであり、図5のローラ113とローラ114を経て、図示しない複数のローラを経由して循環しているエンドレスシートである。
【0110】
上記のように構成された設備において、この実施例では、間隙D(図6参照)を80μmに調整し、カーボンファイバー101とポリエステルシート112との間隙を15μmに調整したので、スクレーパ105を通過した厚さ50μmのシート状カーボンファイバー101の上面と下面には、それぞれ15μm厚のSEBSのスラリー膜が形成される。ガラス基板110を加熱装置111によって加熱することによって、ポリエステルシート112とSEBSのスラリー膜とが接触する部位の温度は約60℃に設定していて、さらに、約45℃の温風106を吹き付けることによって、スクレーパ105を出てから巻取りローラ109に達するまでの数分〜10分程度の間にSEBSのカーボンファイバー溶媒は除去され、圧下ローラ108aと108bによる圧下効果も付加されて、図8に示すように、活物質被膜層が形成されたシート状カーボンファイバー101の上面と下面には、SEBS被膜120aと120bが形成される。この実施例では、SEBS被膜120aと120bの厚さは7〜10μmであった。SEBS被膜の電気抵抗を測定したところ、カーボンファイバー両端を測定の全長において100MΩ以上を示し、電気絶縁性を備えていることが分かった。また、ポリエステルシート112には離型処理が施しているので、SEBS被膜が形成されたシート状カーボンファイバー101を巻取りローラ109で巻き取る操作を支障なく行うことができた。
【0111】
実施例3の製造方法により得たファイバー状正極にセパレータ被膜を形成する方法としては、図7に示す装置を用いることもできる。この方法では、上記のZrOを添加したSEBSのスラリーに、さらにSiOを10重量%添加した。図7に示すように、スクレーパ105を通過させてSEBSのスラリーをカーボンファイバー101に塗布した後、トルエンが揮発する前にアセトン131を吹き付けることによって、アセトン中にトルエンだけを溶解させて、多孔性のSEBS膜を形成できる。アセトン131を吹き付ける代わりに、アセトン浴(図示せず)にカーボンファイバー101を浸漬させてもよい。アセトン吹き付け工程の後に、SEBS膜を熱アルカリ浴133に浸漬することで、SiOがアルカリ中に溶け出して、その部分が空孔になり、膜全体の多孔性が向上し、電池を構成した際に電解液がセパレータを通過しやすくなる。熱アルカリ浴135の温度は、加熱器137によって、例えば80℃に設定されている。SEBSは優れた伸縮性を持つ素材であるが、疎水性であるため、そのままではイオン透過性を有さず、アルカリ電解液中でセパレータとして利用しにくい。そこで、親水性を向上させるZrOのようなフィラーを添加し、さらにトルエンの抽出やSiOの溶解などにより多孔性を向上させることによって、セパレータとして利用可能となる。
【0112】
また、ここでは、実施例4のファイバー状電極を作製した後、図5または図7に示す設備を用いてセパレータを形成する例を示したが、他の実施例1、2、3、5で得られたファイバー状正極およびファイバー状負極についても同様の処理を適用することによって、ファイバー状正極−セパレータ一体化またはファイバー状負極−セパレータ一体化が可能になった。また、図3図5あるいは図7の設備、または図4図5あるいは図7の設備を連続するように配置することもできる。特に、脆くて曲げに弱い材料を活物質として用いる場合、カーボンファイバーに活物質の被膜を形成した後に巻き取ることで活物質被膜層が脱落することがあるが、図3図5あるいは図7の設備または図4図5あるいは図7の設備を連続して配置すれば、水洗・乾燥して得られる活物質被膜層の外側にセパレータの被膜が形成されるので、このセパレータの被膜が活物質の脱落を防止するという効果がある。
【0113】
(7)少なくともいずれか一方にセパレータ被膜を形成してなるファイバー状正極とファイバー状負極との加圧切断装置
図9は、正極、負極少なくともいずれか一方にセパレータ被膜を形成してなるファイバー状正極1とファイバー状負極2とを一体化して圧縮成形しつつ切断するための加圧切断装置の概略構成図である。図9において、左側のダイス141と右側のダイス142には上下方向に一定間隔で間隙を設けており、左側のダイス141に設けられた間隙と右側のダイス142に設けた間隙は上下で段違いとなるように形成している。この実施例では、左側のダイス141に設けた間隙には上記(5)の実施例で得られたファイバー状負極2を挿入し、右側のダイス142に設けられた間隙には上記(6)の実施例で得られたファイバー状正極1とセパレータの積層体144を挿入している。この場合、左側のダイス141と右側のダイス142の内壁間の距離Lに比べてファイバー状電極の挿入長さが短くなるように、ファイバー状電極端部と左側のダイス141または右側のダイス142の内壁との間には間隙Sが形成される。このように、正極1と負極2の端部が上下方向に重ならないようにすることで、後工程における端子形成が容易になる。
【0114】
その後、カッター145を下降させて、ファイバー状電極を切断しつつ、ファイバー状電極の積層体を固定台146に向けて押圧することによって、図10(a)に示すようなファイバー状電極積層体147を得ることができる。このファイバー状電極積層体147は、シート状に配列された多数のファイバー状正極1とシート状に配列された多数のファイバー状負極2とが3層ずつ積層されたものであるが、シート状ファイバー状正極1とシート状ファイバー状負極2の積層数は必要に応じて様々な数量を採用することができる。
【0115】
次に、図10(b)に示すように、ファイバー状電極積層体147の正極端子側と負極端子側にそれぞれエポキシ樹脂148を塗布し、樹脂が乾燥した後に研磨機を用いて点線で示すように切削して、図10(c)に示すように、樹脂から正極端子149と負極端子150が露出した。この露出部に、例えば、ニッケル金属板を接触させることで正極端子および負極端子を取り出す。
【0116】
(8)ファイバー状正極とファイバー状負極の配置
図11(a)〜(d)は上記(7)に記載した方法で製造されたファイバー状電極積層体のファイバー状正極1とファイバー状負極2の配置を具体的に示す模式図である。シート状ファイバー状正極1とシート状ファイバー状負極2とを上下方向に交互に配置して圧縮することにより、図11(a),(b)に示すように、外周にセパレータ被膜が形成された各ファイバー状正極1はその外側4箇所においてファイバー状負極2に接触し、外周にセパレータ被膜が形成された各ファイバー状負極2はその外側4箇所においてファイバー状正極1に接触し、ファイバー状正極1同士は接触せず、ファイバー状負極2同士は接触しないような配置であり、電極間距離を最短にすることができる配置である。図11(b)は図11(a)を45度右方向または左方向に回転させた状態を示すものであり、両者は等価である。
【0117】
従来の技術で図11(a),(b)に示すような配置を実現するには、1本のファイバー状正極と1本のファイバー状負極とを交互に敷き詰める必要があるが、数ミクロン〜数十ミクロン程度の直径のファイバー状電極数千本ないし数万本を敷き詰める作業は現実には困難である。本実施例では、数千本のファイバー状電極をシート状に加工したシート状ファイバー状正極1とシート状ファイバー状負極2とを上下方向に交互に積層して圧縮するという簡単な作業により、理想的な電極配置のファイバー状電極を得ることができる。ファイバー状正極の間にファイバー状負極が挟まれた状態で対極との距離が極限まで短くなり、充放電の際の内部抵抗を著しく低減することができる。本発明を電池に適用した場合、従来は高出力特性が劣ると考えられてきた一次電池であっても、放電スピードが大幅に向上し、公称容量の30〜100倍の大電流放電も可能になる。
【0118】
シート状ファイバー状正極1とシート状ファイバー状負極2とは、図11(c)に示されるように、ファイバー状正極1及びファイバー状負極2が最密充填される電極配置としてもよい。この場合、1つのファイバーの周りに、6つのファイバー状正極1又はファイバー状負極2が配置される。
【0119】
また、シート状ファイバー状正極1とシート状ファイバー状負極2とは、それぞれのシートの厚さを十分に薄くした場合には、図11(d)に示されるように、シート状ファイバー状正極1及びシート状ファイバー状負極2がそれぞれ複数層重なった状態である電極配置としてもよい。1本のファイバーの厚さを15μmと仮定すると、10層重なってもシート状ファイバー状正極1及びシート状ファイバー状負極2のシートの厚さは150μm程度である。従来の板状電極の場合、電極の厚さは通常300μm以上であるため、シートの厚さが半分程度になれば、充電及び放電速度の向上が可能になる。
【0120】
(9)ファイバー電池の製造と電池試験例1:アルカリマンガン電池
図12に示すように、実施例1のファイバー状二酸化マンガン正極と実施例5のファイバー状亜鉛負極を用いて図10(c)のように作製したファイバー状電極積層体161の両側面にポリプロピレン製のスペーサ162を介してステンレス製の角型断面の電槽163(負極端子)を配置し、角型断面の電槽163の他方の端面にもポリプロピレン製のスペーサ164、164を取り付け、6モル/LのKOH水溶液6gをファイバー状電極積層体161に注入し、ステンレス製の蓋165(正極端子)で密閉し、図1に示す一次電池Cを製造した。このファイバー一次電池Cに用いたファイバー状正極1中の活物質量からの計算容量は5Ahである。500mAの電流で放電を行ったところ、1.5Vの平坦な放電電圧を示し、放電容量4.7Ahを得た。次いで、同じ構成の別の電池を用いて、5Aで放電を行ったところ、500mAの電流値で放電した場合と同程度の放電容量や電圧を保持していた。さらに、同じ構成の別の電池を用いて50Aの電流で放電を行ったところ、放電電圧1.38Vで4Ahの放電が可能であった。
【0121】
(10)ファイバー電池の製造と電池試験例2:大型アルカリマンガン電池
図13(a)に示すように、上記(9)の製造例1で得た角型断面のファイバー電池Cを10個並列に接続したうえで、5個ずつ2段に積層し、この積層体171をポリプロピレン製のセル172内に収納し、正極端子側と負極端子側を、それぞれニッケルメッキ鋼板173、174で蓋をすることで、図13(b)に示す50Ah電池175を構成した。5Aの電流で放電を行ったところ、1.5V/セルの平坦な放電電圧を示し、放電容量47Ahを得た。次いで、50Aで放電を行ったところ、5Aの電流値で放電した場合と同程度の放電容量や1.45V/セルの平坦な電圧を保持していた。さらに、同じ構成の別の電池を用いて500Aの電流で放電を行ったところ、放電電圧1.38Vで4Ahの放電が可能であった。
【0122】
(11)ファイバー電池の製造例3:オキシ水酸化ニッケル電池
正極を実施例4のファイバーオキシ水酸化ニッケル正極に替えた以外は、(9)の製造例1と同様の方法を用い、このファイバー電池に用いたファイバー状正極中の活物質量からの計算容量は4.5Ahとした。450mAの電流で放電を行ったところ、放電初期は1.7Vであったが、徐々に低下し、1.5Vの平坦な放電電圧を示し、放電容量4.2Ahを得た。次いで、同じ構成の別の電池を用いて4.5Aで放電を行ったところ、450mAの電流値で放電した場合と同程度の放電容量と1.45Vの電圧を保持していた。さらに、同じ構成の別の電池を用いて50Aの電流で放電を行ったところ、放電電圧1.41Vで3.78Ahの放電が可能であった。
【0123】
(12)ファイバー状負極の製造法の実施例2
また、図3の装置において、電解槽17をメッキ槽として用い、実施例5の銅めっき浴の浴組成をメッキ槽17に満たして、開繊したカーボンファイバー12に銅メッキを施し、次いで、図5の装置を用いて、滴下装置104から滴下するスラリーとして亜鉛粉末:CMC:水= 100:0.2:20の割合で混合したスラリーを用い、図14に示すように、炭素繊維からなる負極集電体5に亜鉛の負極活物質被膜層6を形成し、シート状のファイバー状負極2を得た。負極集電体5と負極活物質層6との間には、銅のメッキ層182が設けられている。図15図14のXV−XV線に沿った断面図である。
【0124】
(13)ファイバー状正極とセパレータと負極層の積層体の製造方法の実施例
上記(6)の実施例で得たファイバー状正極とセパレータの積層体に亜鉛金属の被膜を形成した。前記(5)の実施例のように、電解メッキ法によって亜鉛被膜を形成したファイバー状負極を(6)の実施例で得たファイバー状正極とセパレータの積層体に積み重ねることも可能であるが、亜鉛粉末をセパレータ層の上から塗布しても良い。そこで、上記(6)に記載の実施例において、シート状カーボンファイバー101としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体の被膜が形成された活物質被膜層を有するカーボンファイバーを用い、滴下装置104から滴下するスラリーとして、亜鉛粉末:CMC:水= 100:0.2:20の割合で混合したスラリーを用い、上記(12)に記載の実施例と同じ方法で、ファイバー状正極とセパレータの積層体の上に、さらに亜鉛被膜層を形成し、ファイバー状正極とセパレータと負極層の積層体を製造した。
【0125】
この場合、SEBS被膜が形成された活物質被膜層を有する炭素繊維の厚さは約70μmであり、図6に示す間隙Dは130μmに調整し、シート状炭素繊維101とポリエステルシート112との間隙を30μmに調整したので、スクレーパ105を通過したシート状炭素繊維101の上面と下面には、それぞれ30μmの厚さの亜鉛のスラリー膜が形成される。
【0126】
(14)ファイバー二酸化マンガン正極−リチウム電池
ファイバー状正極として、実施例1のようなファイバー状二酸化マンガン電極を用い、セパレータにポリプロピレンエマルジョンを用いた被膜を形成し、リチウム粉末:PVdF:NMP=100:0.2:20の重量比で混合したスラリーを用いた以外は前記(12)と同様の方法で、ファイバー状正極−セパレータ−負極層の積層体を得た。電解液としてプロピレンカーボネートと1,2ジメトキシエタンの混合溶媒に過塩素酸リチウムを溶解したものを6g注入し、密閉化することによってファイバー二酸化マンガン−リチウム一次電池を得た。ファイバー状の正極−セパレータ積層体を用いることで、セパレータ表面積を従来と比べて大幅に増大させることができた。また、セパレータ自体も薄いので、リチウムの電極間移動距離も大幅に減少させることが可能であり、内部抵抗を減少させて、高出力放電させることが可能である。これの電池容量は1.5Ahであった。
【0127】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【0128】
なお、本発明の範囲には含まれないが、ファイバー状素材を開繊せずに電解析出または電解メッキを施して前記集電体表面上に被膜層構成しても、ファイバー状正極の正極活物質にγ−NiOOHを用いることにより、高容量の一次電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0129】
1 正極(電極)
2 負極(電極)
3 正極集電体
4 正極活物質層
5 負極集電体
6 負極活物質層
12,32 カーボンファイバー(ファイバー状素材)
101 シート状カーボンファイバー
161 ファイバー状電極積層体
163 負極端子
165 正極端子
C 一次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15