(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1種の触媒活性金属(B)の合金が、PtNi、PtFe、PtV、PtCr、PtTi、PtCu、PtPd、PtRu、PdNi、PdFe、PdCr、PdTi、PdCu及びPdRuから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の触媒。
工程段階(a)の後に、前記少なくとも1種の触媒活性金属が析出されている前記担体を、少なくとも1種の更なる触媒活性金属及び/又は少なくとも1種の遷移金属と混ぜ、引き続き工程段階(b)及び(c)を任意の順序で実施する、請求項4記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体、白金族からの少なくとも1種の触媒活性金属又は白金族の少なくとも1種の金属を含有する合金、並びにTi、Sn、Si、W、Mo、Zn、Ta、Nb、V、Cr及びZrから選択された少なくとも1種の金属の少なくとも1種の酸化物を含有する燃料電池用触媒に関する。さらに本発明は、このような触媒の製造法並びに該触媒の使用に関する。
【0002】
燃料電池は、可動体用のみならず、電力の定常的な生成用にも開発されている電気化学セルである。その際、燃料電池中では、電気分解の原理は逆になっている。今日、一般的に運転温度の点で互いに異なる各種の燃料電池が知られている。しかし、電池の構造は、原則的に全てのタイプにおいて同一である。それらは一般的に2つの電極層、アノード及びカソード(そこで反応が進行する)、並びに膜の形態における両電極間の電解質とから構成されている。この膜は3つの機能を有し、それはイオン的な接触を生じさせ、電気化学的な接触を防止し、そのうえ電極層に供給される媒体を別個に保つことを担う。一般に電極層には、レドックス反応の範囲で反応されるガス又は液体が供給される。例えば、アノードには水素又はメタノールが供給され、且つカソードには酸素が供給される。これを保証するために、電極層は導電性のガス拡散層と通常は接触されている。これらは、例えば微細なチャネルの系から成る格子状の表面構造を有するプレートである。
【0003】
燃料電池を運転させるために、プロトンを供与することができるガス状及び液状の燃料が使用される。例に含まれるのは、水素及びメタノールであり、その際、水素が有利である。水素は燃料電池のアノードに送られる。酸素(空気酸素の形態における)はセル酸化剤であり、且つセルのカソードに送られる。通常、電極は、燃料供給電極に向いている膜の表面にわたって燃料が分布されることを可能にするために、多孔質伝導性材料、例えば黒鉛織物、黒鉛化層又はカーボン紙から形成されている。その際、各電極は、アノードでの水素のイオン化及びカソードでの酸素の還元を促進するために、炭素粒子に通常は施与されている微細な触媒粒子(例えば担体上の白金粒子)を包含する。プロトンはアノードから内部伝導性ポリマー膜を通ってカソード(そこでプロトンは、セルから運ばれる水を形成するために酸素と結び付く)に流れる。導体板が、アノードで形成された電子を追い出す。
【0004】
公知技術の燃料電池における顕著な問題は、例えば、延長運転の間の若しくは通常の自動車運転に際してのサイクル負荷の間の導電性の損失である。その際、この導電性損失のかなりの部分が、酸素還元電極触媒の損傷と関係している。この損傷は、元々製造されていた触媒及びその担体の特性を変えるメカニズムの組合せによって引き起こされる可能性が高い。
【0005】
超過時の触媒の性能損失を減らすために、US2006/0257719A1は、触媒として、白金がその上に析出される酸化チタン担持触媒及び炭素担持触媒を使用することを提案する。その際、白金化酸化チタン粒子は、電極触媒を形成するために炭素粒子と混合される。
【0006】
更なる挑戦は、燃料電池の触媒の比活性を高めて、より高い効率を達成することにある。そのために、例えばUS2005/011245A1では、金属酸化物/炭素の混合物を担体材料として使用することが提案される。その際、炭素担体の割合は1〜80質量%の範囲にあり、金属酸化物の割合は20質量%より大きい。
【0007】
本発明の課題は、殊に燃料電池中のカソードの酸素還元用に適しており、且つ改善された比活性、並びに高い長期安定性を示す触媒を提供することである。本発明の更なる課題は、このような触媒の製造法を提供することである。
【0008】
該課題は、
(A)担体、
(B)白金族からの少なくとも1種の触媒活性金属又は白金族の少なくとも1種の金属を含有する合金、並びに
(C)Ti、Sn、Si、W、Mo、Zn、Ta、Nb、V、Cr及びZrから選択された少なくとも1種の金属の少なくとも1種の酸化物
を含有する触媒において、少なくとも1種の酸化物(C)の少なくとも1種の金属の割合が、成分(A)、(B)及び(C)の質量%の合計を基準として0.01〜0.9質量%の範囲にあることを特徴とする触媒によって解決される。
【0009】
すなわち意想外にも、少なくとも1種の金属酸化物(C)を非常に少ない割合で導入することによって、酸素還元反応に関する触媒の比活性を100%にまで上昇させることができることが明らかになった。好ましくは、それによって、少なくとも1種の触媒活性金属若しくは少なくとも1種の触媒活性合金の量を下げることが可能となり、このことは相当の費用節約につながり、その際、性能は損なわれない。燃料電池中の電極触媒の技術的且つ経済的な使用にとって重要なことは、少なくとも同じ性能を維持しながらの系全体の費用削減に鑑みた、殊に白金の場合の、貴金属の担持量(Beladung)の低下である。少なくとも1種の酸化物(C)の少なくとも1種の金属の割合は、一般的に0.01〜0.9質量%の範囲に、有利には0.1〜0.65質量%の範囲に、特に有利には0.2〜0.6質量%の範囲にある。少なくとも1種の金属は、上述の金属の1つの金属又は2つ、3つ、4つ、5つ若しくはそれより多い金属からの混合物である。
【0010】
本発明による触媒にドープされている少なくとも1種の金属酸化物は、Ti、Sn、Si、W、Mo、Zn、Ta、Nb、V、Cr及びZrから選択された少なくとも1種の金属の少なくとも1種の酸化物、若しくは前述の金属の混合酸化物である。有利には、少なくとも1種の酸化物は、ZrO
2、SnO
2及びTiO
2から選択された酸化物である。特に有利なのは、酸化物TiO
2及びZrO
2である。
【0011】
十分に良好な触媒活性を取得するために、本発明による触媒は大きい比表面積を有している必要がある。これは、少なくとも1種の触媒活性金属若しくは相応する合金、並びに少なくとも1種の金属酸化物がその上に析出されている担体を触媒が含有することによって達成される。大きい表面積を取得するために、担体が多孔質であると有利である。担体として使用されることができる適した材料は、例えば炭素又はセラミックである。更なる適した担体材料は、例えば、場合により炭素被覆されているγ−酸化アルミニウムである。
【0012】
担体材料として特に有利なのは、炭素又はW、Mo、Ti及びTaの金属の窒化物及び/若しくは炭化物で改質された炭素又は含浸炭素である。担体材料としての炭素の利点は、これが導電性であることである。触媒が電極触媒として燃料電池中で、例えば燃料電池のカソードとして使用される場合、これは燃料電池の機能を保証するために導電性である必要がある。担体として使用される炭素は、本発明の有利な実施形態によれば、活性炭、カーボンブラック、グラファイトとして又はナノ構造炭素として存在する。例えばカーボンブラックとして、高表面積カーボンブラック、例えばVulcan
(R)XC72及びKetjen Black
(R)EC300、又は低表面積を有するカーボンブラック、例えばDenka Black
(R)が適している。炭素がナノ構造炭素として存在する場合、有利には炭素ナノチューブが使用される。さらに有利なのは、グラフェン製の担体である。
【0013】
少なくとも1種の担体、成分(A)の割合は、幅広い範囲にわたり変化してよく、且つ成分(A)、(B)及び(C)の質量%の合計を基準として、一般的に49.1〜89.99質量の範囲に、有利には69.1〜79.99質量%の範囲にある。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1種の触媒活性金属は、白金族から選択されているか又は白金族の金属の1種以上を含有する合金である。
【0015】
白金族の金属とは、本発明によれば、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、鉄及び金である。本発明の有利な実施形態によれば、白金族の金属は、白金又はパラジウムである。
【0016】
本発明の更なる実施形態によれば、本発明による触媒は、白金族の少なくとも1種の金属、並びに場合により遷移金属を含有する触媒活性合金を包含する。遷移金属は、本発明の有利な実施形態によれば、ニッケル、バナジウム、クロム及びコバルトの群から選択されている。
【0017】
本発明の有利な実施形態によれば、触媒が成分(B)として含有する合金は、PtNi、PtFe、PtV、PtCr、PtTi、PtCu、PtPd、PtRu、PdNi、PdFe、PdCr、PdTi、PdCu及びPdRuから成る群から選択されている。
【0018】
本発明に従った合金は、少なくとも2種の異なる金属の均質な固溶体であり、その際、1つの元素はベース元素と呼び、他の元素は合金元素と呼ぶ。ベース元素は、合金内部で最も大きい質量割合を有する元素である。同じベース元素と同じ合金元素とを含有する合金の場合、異なる組成によって異なる組成が作り出される。そのため、個々の相中でベース元素中の合金元素の割合は異なる。場合によっては、それどころか、相中でベース元素の割合が少なくとも1種の合金元素の割合より小さいことも可能である。
【0019】
少なくとも1種の触媒活性金属又は少なくとも1種の触媒活性合金、成分(B)の割合は、成分(A)、(B)及び(C)の質量%の合計を基準として、一般的に10〜50質量%の範囲に、有利には20〜30質量%の範囲にある。
【0020】
成分(A)、(B)及び(C)の質量パーセントのデータは、成分(A)、(B)及び(C)の質量%の合計を基準としており、その際、残留湿分(触媒が、殊に減圧下で、完全には乾燥されていない場合)、若しくは不純物は考慮されない。
【0021】
本発明による触媒の製造に際しては、少なくとも1種の触媒活性金属又は少なくとも1種の触媒活性合金、並びに少なくとも1種の金属酸化物が担体上に析出される。これは有利には溶解して行われる。そのために、例えば金属化合物が溶媒中に溶解されていてよい。その際、相応する金属又は合金の金属は、共有結合的に、イオン結合的に又は錯体を形成して結合されていてよい。さらに、金属が還元により前駆体として析出されるか、又はアルカリ条件下で相応する水酸化物の沈殿によって析出されることも可能である。触媒活性金属を析出するための更なる可能性は、金属を含有する溶液の含浸、化学蒸着(CVD)法又は物理蒸着(PVD)法、並びに金属を析出することができる当業者に公知の他の全ての方法でもある。有利には、まず少なくとも1種の触媒活性金属の塩が沈殿され、その後に若しくは同時に少なくとも1種の金属酸化物が担体上に析出される。それに続けて、乾燥及び場合により熱処理が、少なくとも1種の触媒活性金属又は少なくとも1種の触媒活性合金、並びに少なくとも1種の酸化物を含有する触媒の製造のために行われる。
【0022】
それにより、本発明に従って、前で定義した通り、以下の工程:
(a)白金族からの少なくとも1種の触媒活性金属を担体上に析出する工程、及び
(b)少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物を担体上に析出する工程、及び
(c)場合により熱処理を実施する工程
を包含する触媒の製造法が提供される。
【0023】
工程段階(a)及び(b)は、続けて又は平行して行ってよく、その際、工程段階(b)が、工程段階(a)の前に実施されることもできる。一般的に、まず触媒活性金属は担体上に析出され、その後、酸化物ドーパントを施与してよい。同様に、本発明の有利な実施形態によれば、酸化物の沈殿及び触媒活性金属の施与を同時に実施してもよい。本発明の更なる実施形態によれば、まず少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物が担体上に析出され、その後、白金族からの少なくとも1種の触媒活性金属が担体上に析出される。
【0024】
本発明の有利な実施形態によれば、工程段階(a)の後に、少なくとも1種の触媒活性金属を含有する担体が、少なくとも1種の遷移金属及び/又は更なる触媒活性金属と混ぜられ、引き続く工程段階(b)において、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物が、工程(c)での熱処理の実施前に析出される。
【0025】
本発明の更なる有利な実施形態によれば、工程段階(a)の後に、少なくとも1種の触媒活性金属を含有する担体が、少なくとも1種の遷移金属及び/又は更なる触媒活性金属と混ぜられる。引き続き、熱処理、工程段階(c)が実施され、次いで工程段階(b)において、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物が析出される。
【0026】
本発明のもう一つの更なる有利な実施形態によれば、工程段階(b)において、少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物が担体上に析出され、引き続き工程段階(a)において、少なくとも1種の触媒活性金属が析出され、且つ担体が少なくとも1種の遷移金属及び/又は更なる触媒活性金属と混ぜられる。引き続き、熱処理、方法工程(c)が実施される。
【0027】
少なくとも1種の触媒活性金属若しくは遷移金属を含有する化合物は、好ましくは錯体化合物、殊に白金族若しくは遷移金属の金属が錯化されている有機金属錯体化合物である。有利には金属は、白金、チタン、鉄、クロム、ルテニウム、コバルト、ニッケル及びバラジウムから成る群から選択されている。
【0028】
有機金属錯体化合物を形成する有利な配位子は、オレフィン、好ましくはジメチルオクタジエン、芳香族化合物、好ましくはピリジン、2,4−ペンタンジオンである。さらに、少なくとも1種の金属が、シクロペンタジエニル−カルボニル混合錯体の形態で存在するか、又は純粋な若しくは混合されたカルボニル錯体、ホスファン錯体、シアノ錯体又はイソシアノ錯体として存在することも有利である。
【0029】
特に有利なのは、遷移金属が配位子としてのアセチルアセトナート又は2,4−ペンタンジオンとの有機金属錯体化合物として存在する場合である。その際、遷移金属は、好ましくはイオン形態で存在する。
【0030】
本発明の更なる実施形態によれば、白金族の少なくとも1種の触媒活性金属を含有する少なくとも1種の化合物及び/又は少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の化合物は、熱分解性の化合物として乾燥状態で存在する。しかしながら、選択的に、熱分解性の化合物は溶媒中で溶解されていることも可能である。この場合、溶媒は、水、エタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン及びエーテル化合物から成る群から好ましくは選択されている。有利なエーテル化合物は、開鎖エーテル、例えばジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル又は2−メトキシプロパン、並びに環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンである。
【0031】
工程段階(a)における、担体と、白金族からの少なくとも1種の触媒活性金属を含有する少なくとも1種の化合物、及び場合により少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の化合物との混合は、固体を混合するための当業者に公知の任意の方法によって行われる。適した固体ミキサーは、通常、混合されるべき材料が動かされる容器を包含する。適した固体ミキサーは、例えばパドルミキサー、スクリューミキサー、サイロミキサー又は空気式ミキサーである。
【0032】
化合物が溶媒中に存在する場合、混合は、慣例の分散プロセスによって行われる。そのために、例えば、高速回転するナイフ若しくはブレードが含まれている容器が使用される。このような装置は、例えばUltra−Turrax
(R)である。
【0033】
工程段階(b)においては、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の加水分解可能な前駆体化合物が担体上に析出される。析出は、有利には少なくとも1種の金属酸化物の加水分解可能な前駆体化合物の加水分解によって行われる。このような加水分解可能な前駆体化合物は、当業者に公知である。その際、少なくとも1種の金属酸化物の加水分解可能な前駆体化合物は、例えば、水の添加後に若しくは水の存在下で担体上に沈殿する、水と結合して難溶性の酸化物又は水酸化物を形成するアルコキシド若しくはアルコールに可溶性の金属塩若しくはアルコールに可溶性の錯体である。
【0034】
少なくとも1種の金属酸化物は、通常、白金と合金化していない。本発明による触媒上の金属酸化物粒子の大きさは、幅広い範囲にわたり変化してよい。粒子は、一般的に8nmより小さく、有利には5nmより小さい。
【0035】
白金族の金属と、白金族の金属又は遷移金属から選択された、場合により第二の金属との合金を製造するために、工程段階(a)における混合によって得られた混合物が加熱される。そのために、工程段階(a)及び(b)において得られた混合物は、炉内で90〜900℃の範囲の温度に、有利には350〜900℃の範囲の温度に、さらに有利には400〜800℃の範囲の温度に、殊に400〜700℃の範囲の温度にされる。加熱によって、少なくとも1種の錯体化合物が分解され、且つ該化合物中に結合されていた金属が遊離される。金属は、合金形成の場合、白金族の更なる金属若しくは遷移金属と結合する。そのつど金属結晶子が無秩序に並存している合金が生じる。その際、個々の金属結晶子は、一般的に2〜7nmの範囲の大きさを有する。
【0036】
有利な実施形態において、熱処理は2つの温度段階で行われ、その際、第一の温度段階の温度は、第二の温度段階の温度より低い。加熱を3つ以上の温度段階で行うことも可能である。その際、通常、そのつど後続の温度段階の温度は、先行する温度段階の温度より高い。しかしながら、加熱を2つの温度段階で行うことが有利である。
【0037】
工程(c)での熱処理は、例えば回転管中で、不連続的にも連続的にも行われることができる。
【0038】
有利な実施態様において、工程(c)での熱処理は不連続的に行われ、その際、工程(a)及び(b)で製造された混合物はまず、不活性ガス下で、例えば窒素雰囲気若しくはアルゴン雰囲気下で、100〜350℃の範囲の温度に、有利には200〜300℃の範囲の温度に1〜10hの期間にわたり、有利には2〜5hの期間にわたり、通常は3〜4hの期間にわたり加熱される。その後、ガス混合物は、還元性雰囲気に移され、且つ第二の温度段階にセットされる。この第二の温度段階の温度は、一般的に350〜800℃であり、且つ有利には550〜650℃である;滞留時間は、一般的に1〜10hの範囲に、通常は2〜6hの範囲にあり、有利には約3hである。その後、炉は、不活性ガス雰囲気下でゆっくりと室温に冷却され、且つ触媒は不動態化される。
【0039】
更なる有利な実施態様において、工程(c)での熱処理は連続的に行われ、その際、工程(a)及び(b)で製造された混合物はまず、炉の上流の貯蔵容器中に入れられ、且つ不活性ガス下、例えば窒素若しくはアルゴン下で洗浄される。連続炉は、様々な加熱ゾーンを有していてよく、その際、該炉は少なくとも2つの加熱ゾーンを含んでいることが有利である。
【0040】
工程(c)での加熱が、2つの温度段階において連続運転で行われる場合、第一の温度段階(加熱ゾーン)の温度が、300〜500℃の範囲に、有利には350〜450℃の範囲に、殊に400〜450℃の範囲にあり、且つ第二の温度段階(加熱ゾーン)の温度が、500〜700℃の範囲に、さらに有利には550〜650℃の範囲に、殊に600〜650℃の範囲にある場合に有利である。その際、第二の温度段階の温度は、第一の温度段階の温度より、好ましくは少なくとも100℃高く、有利には少なくとも150℃高い。
【0041】
工程(c)における連続炉内での滞留時間は、好ましくは30分〜10時間の範囲に、さらに有利には45分〜5時間の範囲に、殊に1時間〜2時間の範囲にある。
【0042】
工程(c)における合金前駆体の加熱は、好ましくは還元性雰囲気下で行われる。還元性雰囲気は、好ましくは水素を含有する。その際、水素の割合は、製造されるべき触媒の組成に依存する。還元性雰囲気中での水素の割合は、その際、2〜100体積%であってよい。有利には、フォーミングガス雰囲気が使用され、その際、水素の濃度は、通常30体積%より小さく、一般的に20体積%より小さい。特に有利には、還元性雰囲気中での水素の割合は、2〜15体積%の範囲にあり、殊におよそ5体積%である。殊に、Pt−Ni触媒、又はPtNi又はPtCoを含有する三成分触媒の製造に際して、還元性雰囲気中での水素の割合は、好ましくは4〜10体積%の範囲にあり、殊におよそ5体積%である。
【0043】
水素に加えて、還元性雰囲気は、好ましくは少なくとも1種の不活性ガスを含有する。好ましくは、還元性雰囲気は窒素を含有する。しかしながら、選択的に、窒素の代わりに、例えばアルゴンを使用することも可能である。また、窒素とアルゴンの混合物を使用することも可能である。しかしながら、有利なのは窒素である。
【0044】
殊に、還元性雰囲気が、水素と不活性ガスに加えて更なる成分を含有しない場合に有利である。この場合、しかしながら、例えばガス製造に基づきなお微量の更なるガスが含まれていることは排除されるべきでない。
【0045】
工程(c)での合金形成のための加熱後に、好ましくは不動態化が実施される。そのために、製造された合金は、例えば不活性雰囲気下で周囲温度に冷却される。その際、不活性雰囲気は、好ましくは窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気である。また、窒素とアルゴンの混合物を使用することも可能である。また、工程(c)で製造された合金は、不動態化のために、例えば連続的に実施される場合、貯水槽に導入されることができる。
【0046】
有利な実施形態によれば、本発明による触媒は製造後もなお易流動性である。このために、触媒は完全に乾燥されている必要は必ずしもない。触媒は、それが水50質量%までの残留湿分を有する場合には、一般的になお易流動性である。特に有利には、本発明による触媒の残留湿分含有率は10〜30質量%の範囲にある。残留湿分を有する触媒は、例えは製造に際しての空気乾燥によって得られる。
【0047】
本発明により製造された触媒は、例えば燃料電池中での電極材料としての使用のために適している。その際、適した使用領域は、酸素の電気酸化である。他の電気化学法、例えば塩素アルカリ電解にも、本発明による触媒を用いることができる。特に有利な実施形態において、本発明による触媒は、プロトン交換膜燃料電池とも呼ばれる固体高分子形燃料電池(PEFC)中での電極用に使用される。触媒が使用される電極は、殊に固体高分子形燃料電池のカソードである。固体高分子形燃料電池のカソードとして使用される場合、本発明による触媒は、酸素還元反応に関して意想外にも高い活性を示す。
【0048】
更なる有利な実施態様において、本発明による触媒は、高温型リン酸形燃料電池中のカソード触媒として使用される。
【0049】
実施例
製造例
比較例V1:白金触媒(Pt 〜50質量%)の製造
Vulcan XC72 5gを500mlの水に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により8000rpmで15分間均質化した。Pt(NO
3)
28.55gを100mlの水に溶解し、カーボンブラック懸濁液に加えた。引き続き、H
2O200ml及びエタノール800mlを加えた。この混合物を窒素下で6時間還流下で加熱した。触媒を濾過分離し、そして2.5lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0050】
47質量%の白金含有率及び3.1nmの結晶子サイズ(XRD)を有する触媒が得られた。電気化学的表面積(COストリッピングによって測定)は、白金1g当たり71.4m
2であった。
【0051】
比較例V2:白金触媒(Pt 〜30質量%)の製造
Vulcan XC72 5gを500mlの水に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により8000rpmで15分間均質化した。Pt(NO
3)
2 3.66gを100mlの水に溶解し、カーボンブラック懸濁液に加えた。引き続き、H
2O200ml及びエタノール800mlを加えた。この混合物を窒素下で6時間還流下で加熱した。触媒を濾過分離し、そして3lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0052】
28.4質量%の白金含有率及び1.9nmの結晶子サイズ(XRD)を有する触媒が得られた。電気化学的表面積(COストリッピングによって測定)は、白金1g当たり136m
2であった。
【0053】
比較例V3:TiO2でドープされた(5質量%)白金触媒の製造
Vulcan XC72 5gを500mlのエタノール(絶対)に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により8000rpmで15分間均質化した。Ti[OCH(CH
3)
2]
43.56gを50mlのエタノールに溶解し、そしてカーボンブラック懸濁液に加え、更なる200mlのエタノールを加えた。計800mlの白金水溶液(Pt(NO
3)
28.55g)をカーボンブラック懸濁液に加え、そしてこの混合物を窒素下で6時間還流下で加熱した。触媒を濾過分離し、そして2.5lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0054】
41質量%の白金含有率及び5.0質量%のチタン含有率(TiO
28.3質量%に相当する)を有する触媒が得られた。XRDによって測定したPtナノ粒子の結晶子サイズは2.6nmであった。電気化学的表面積(COストリッピングによって測定)は、白金1g当たり62.9m
2であった。
【0055】
比較例V4:33.5質量%のTiO2割合を有する白金触媒の製造
Vulcan XC72 2.5gを500mlの水に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により8000rpmで15分間均質化した。Pt(NO
3)
28.55gを100mlの水に溶解し、カーボンブラック懸濁液に加えた。引き続き200mlの水で洗浄した。Ti[OCH(CH
3)
2]
417.86gを計700mlのエタノールに溶解し、そして直接的に反応溶液に(還流下で)ゆっくりと計量供給した。この混合物を窒素下で6時間にわたり還流下で加熱した。触媒を濾過分離し、そして2.5lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0056】
38質量%の白金含有率及び20.1質量%のチタン含有率(TiO
233.5質量%に相当する)を有する触媒が得られた。XRDによって測定したPtナノ粒子の結晶子サイズは2.9nmであり、TiO
2粒子(アナターゼ)のそれは5.0nmであった。電気化学的表面積は、白金1g当たり23m
2であった。
【0057】
比較例V5:白金ニッケル触媒の製造
比較例1と2のそれぞれに従って製造された23gのPt触媒(Pt19.5質量%、H
2O22質量%;すなわち乾燥した触媒について計算すると:Pt25質量%)をニッケルアセチルアセトナート8.9gとドライブレンドし、回転管炉(HTM Reetz 700−110−500)に入れ、そして窒素下で1時間洗浄した。その後、この触媒混合物をまず110℃で乾燥した(窒素下、2時間)。合金化処理のために、炉を210℃に加熱し(加熱時間:30分間)、そしてH
20.8l/h、N
215l/hを用いて還元性雰囲気に切り替えた。210℃にて4時間保持した後、温度を600℃に高め(3時間の加熱時間)、そして更に3時間保持した(H
20.8l/h、N
215l/hを用いた還元性条件下で)。引き続き、炉を再び窒素で洗浄し、そしてゆっくりと室温に冷却した。
【0058】
触媒を不動態化し、そして合金化されなかったニッケルを取り除くために0.5MのH
2SO
42lと90℃にて1時間加熱した。最後に触媒を濾過し、3lの温水で洗浄し、そして乾燥した。
【0059】
この触媒は、24.4質量%の白金含有率及び3.1質量%のニッケル割合を有していた。これはPt
2.8Niの化学量論的な合金組成に相当する。XRDによって測定したPtNiナノ粒子の結晶子サイズは2.7nmであった。
【0060】
実施例1:TiO2でドープされた(0.5質量%)白金触媒の製造
Vulcan XC72 5gを500mlの水に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により10,000rpmで15分間均質化した。引き続き、Pt(NO
3)
28.55gを100mlの水に溶解し、そして均質化したカーボンブラック懸濁液に加え、更なる200mlの水を加えた。それに続けて、Ti[OCH(CH
3)
2]
40.36gを800mlのエタノールに溶解し、そして立下り管によりカーボンブラック懸濁液に加えた。この混合物を、引き続き6時間還流下で煮沸した。その際に生じた触媒を濾過分離し、そして2.5lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0061】
46質量%の白金含有率及び0.58質量%のチタン含有率(TiO
20.97質量%に相当する)を有する触媒が得られた。XRDによって測定した白金ナノ粒子の結晶子サイズは3.1nmであった。電気化学的表面積(COストリッピングによって測定)は、白金1g当たり68.3m
2であった。
【0062】
実施例2:TiO2でドープされた(0.5質量%)白金触媒の製造
Vulcan XC72 5gを500mlのエタノール(絶対)に懸濁し、そしてUltra Turrax
(R)T25により10,000rpmで15分間均質化した。50mlのエタノール中に溶解したTi[OCH(CH
3)
2]
40.36gをこのカーボンブラック懸濁液に加え、更なる200mlのエタノールを加えた。計800mlの白金溶液(Pt(NO
3)
28.55g)をカーボンブラック懸濁液に加え、そしてこの混合物を窒素下で6時間還流下で加熱した。得られた触媒を濾過分離し、そして2.5lの温水で硝酸塩不含に洗浄した。
【0063】
44質量%の白金含有率及び0.59質量%のチタン含有率(TiO
20.98質量%に相当する)を有する触媒が得られた。XRDによって測定した白金ナノ粒子の結晶子サイズは2.9nmであった。電気化学的表面積(COストリッピングによって測定)は、白金1g当たり70.9m
2であった。
【0064】
実施例1と比較して読み取れるのは、白金の電気化学的表面積が、金属酸化物ドーピングと白金を同時に析出させた場合(実施例2)に、より高いことである。殊に酸化物の担持量が上昇するにつれて、表面積は大幅に減少し(比較例V3及びV4を参照されたい)、すなわち触媒反応のために利用される白金面は明らかに小さく、且つ相応して触媒の活性はより低い。
【0065】
実施例3:ZrO2でドープされた(0.2質量%)PtNi触媒の製造
Zr[OC
4H
9]
4(1−ブタノール中で80%、Aldrich)0.34gを450mlのエタノールに溶解した。Vulcan XC72 7gをZr溶液に加え、そしてUltra Turrax
(R)T25により8000rpmで10分間均質化した。100mlの白金水溶液(Pt(NO
3)
25.18g、Heraeus)をカーボンブラック懸濁液に加え、そしてUltraturraxにより再度分散した。次いで、この混合物を1.4lの水を有する反応器に移し、そして窒素下で6時間還流下で加熱した。室温に冷却した後、触媒を濾過分離し、そして3lの温水で硝酸塩不含に洗浄し、並びに乾燥した。
【0066】
この触媒は、28.4質量%の白金含有率及び0.64質量%のジルコニウム含有率を有していた。XRDによって測定したPtナノ粒子の結晶子サイズは2.0nmであった。
【0067】
ZrO
2でドープされたPtNi触媒の製造のために、上述のZrO
2でドープされたPt触媒をニッケルアセチルアセトナート2.53gとドライブレンドし、回転管炉(HTM Reetz 700−110−500)に入れ、そして窒素下で1時間洗浄した。その後、この触媒混合物をまず110℃で乾燥した(窒素下、2時間)。合金化処理のために、炉を210℃に加熱し(加熱時間:30分間)、そしてH
20.8l/h、N
215l/hを用いて還元性雰囲気に切り替えた。210℃にて4時間保持した後、温度を600℃に高め(3時間の加熱時間)、そして更に3時間保持した(H
20.8l/h、N
215l/hを用いた還元性条件下で)。引き続き、炉を再び窒素で洗浄し、そしてゆっくりと室温に冷却した。
【0068】
触媒を窒素下で取り出し、約150mlの水で湿らせ、引き続き、合金化されなかったニッケルを取り除くために0.5MのH
2SO
4550mlと90℃にて1時間加熱した。最後に触媒を濾過し、2.5lの温水で洗浄し、乾燥した。
【0069】
触媒は、26.9質量%の白金含有率、2.7質量%のニッケル割合及び0.2質量%のジルコニウム含有率を有していた。これはPt
3Niの化学量論的な合金組成に相当する。XRDによって測定したPtNiナノ粒子の結晶子サイズは2.7nmであった。
【0070】
特性決定
実施例4:酸素還元反応に関する触媒活性の測定及び白金担持量の減少の可能性
酸素還元反応(英語:oxygen reduction reaction、ORR)を、回転ディスク電極(英語:rotating disk electrode、RDE)を用いて酸素飽和電解液(1MのHClO
4)中で測定する(電位範囲:50〜950mV;走査速度:20mV/s)。
【0071】
その際、回転電極を、酸素還元反応測定のために約40μg/cm
2の触媒量で被覆した。それぞれの試験体のPt含有率に従って、Ptの担持量は1cm
2当たりPt8〜20μgの間で変化する。性能の直接比較として、例えば定電流密度(−1mA/cm
2)での電位を比較することが可能であり(表1を参照されたい)、その際、以下のことが当てはまる:電圧が高ければ高いほど、それだけ触媒は活性であり、それというのも、酸素還元反応の過電圧は相応して低いからである。
【0072】
選択的に、ある特定の電圧における電流密度を比較することもできる。殊に約800〜1000mVの間の電位範囲における反応電流により、触媒活性に関しての証明が得られるので(電流−電位曲線が急勾配になればなるほど、それだけ反応の動的阻害は低く、触媒はより良好である)、ORR活性は、通常0.9Vにて、次の式:
【数1】
[式中、i
dは限界拡散電流であり、且つi
0.9vは0.9Vでの電流である]に従って評価される。異なる担持量を補正するために、存在するPt量m
ptについて標準化を行うか、又は存在するPt表面積について標準化を行う。
【0073】
比較例V1に従った白金触媒は、919mVの電圧時に−1mA/cm
2の電流密度に達する。TiO
20.5%の添加によって(実施例2)、9mVのシフトが観察される。これは、Pt1mg当たり129mAからPt1mg当たり186mAへの0.9Vでの単位質量当たりの上昇に相当する(すなわち40%より高い上昇率)。酸化物濃度の増加はほとんど効果を示さないか(TiO
25%、比較例V3)又は触媒若しくは活性はそれどころか明らかに悪化する(TiO
220%、比較例V4)。後者の場合、より低い電位への34mVのシフト若しくはPt1mg当たり58mAへの、すなわち50%を上回る単位質量当たりの活性の低下を観察することができる。
【0074】
酸化物担持量が高い場合の触媒活性の顕著な低下は、減少した電気化学的白金表面積と直接関連付けられることができる。そのため、V3に従って製造された触媒(TiO
2としてのTi5質量%)の場合のCOストリッピングによって測定された白金表面積は、すでにPt1g当たり60m
2/gでしかなく、すなわち純粋な白金触媒より10%を上回る形で小さい。酸化物担持量が上昇するにつれて(例えばV4に従って、TiO
2としてのTi20質量%を有する)、白金表面積は3分の1未満に下がる(V1に従った非ドープ触媒の場合のPt1g当たり71m
2と比較してPt1g当たり23m
2)。
【0075】
酸化物担持量が0.9質量%より多い場合(表2を参照されたい、TiO
2としてのTi0.95質量%を有する実施例)にはすでに、酸化物添加の活性増大作用はもはや認められない(電気化学的表面積は数パーセントしか、すなわち測定誤差の範囲内でしか減少していないにも関わらず)。観察されたORR曲線の1mVのシフト(Pt1mg当たり−1mAの電流密度において)は、測定誤差の範囲内にある(表2を参照されたい)。金属酸化物でドープされた触媒の単位質量当たりの活性は、非ドープ触媒のものより10%未満高く、これはORR測定の測定誤差に鑑みて有意なものと見なされることはできない。
【0076】
一般的に、0.9質量%より高い〜約5質量%の範囲の金属酸化物を有するPt触媒及びPtNi触媒は、非ドープ触媒と比較して実質的に変わらない単位質量当たりの活性を示すことが確認された。
【0077】
加えて従来技術においては、例えば不活性雰囲気下での触媒の熱的後処理が記載される。このために、例示的にV4に従って製造された触媒を窒素下(2時間、450℃)で熱処理した。その際、酸素還元に関する触媒活性は、それどころか一層(Pt1mg当たり35mAの単位質量当たりの活性に)悪化した。同じような結果が、他の熱的後処理された触媒についても得られ、その際、不活性条件(窒素)における熱的後処理と、還元条件下(例えば窒素中で水素5%、すなわちフォーミングガス)の両方の試験を行った。
【0078】
これらの結果は、従来技術で挙げられていた製造工程が時に、非ドープ触媒にひどく悪影響を及ぼすことを示している。そのため、高い酸化物担持量は、系の全体の活性がひどく低下するほど強力に触媒活性表面積を減少させる。すでに450℃での熱的後処理が活性をさらに下げる。文献に記載されるような1000℃までの熱処理の場合、触媒は実質的に完全に不活性状態にあるものと推測することができる。
【0079】
比較例V2に従って製造されたPt28.4質量%を有する触媒は、同じ触媒担持量(すなわち、より少ない白金担持量)で、V1と比較してより低い電位にシフトしたORR曲線を示す。白金量を基準として、Pt1mg当たり134mAを有する質量単位当たりの活性は、V1に従って製造された触媒に非常に類似している。
【0080】
Ti0.5(TiO
2としての)質量%の添加は、Pt1mg当たり256mAへの(すなわち90%を超える)質量単位当たりの活性の上昇につながる。V1と比較して活性材料(Pt)の60%しか電極上に存在していないにも関わらず、活性は類似しているのみならず、それどころかより高い(表1を参照されたい、919mVと比較して927mV)。類似する結果が、Pt20質量%及びTi0.5質量%のみを含有する同じように製造された触媒(単位質量当たりの活性:Pt1mg当たり244mA)について得られ、これは活性材料40%でV1と比較してほんの僅かにしか、より低い電位へとシフトしていなかった(919mVと比較して914mV)。
【0081】
金属酸化物ドーピングによる酸素還元反応のためのより高い電流密度に基づき、燃料電池のカソード側での白金含有率を、性能の損失なしに減少させることができる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
実施例5:酸素還元反応に関するPtNi触媒の触媒活性の測定
実施例6での仕方と同じように、PtNi及び酸化物ドープしたPtNi触媒のORR活性を測定した。従来技術から公知なのは、合金が通常、酸化還元反応のための高い電流密度を有することである。比較例V4に従って製造されたPtNi触媒は、純粋な白金触媒(例えばV1又はV2)と比較して約2.2倍の単位質量当たりの活性を有する。金属酸化物ドーピング(例えば実施例4に従ってZrO
2によるドーピング)によって、これを改めて75%を超えて上昇させることができる。
【0085】
2つの製造されたPtNi触媒は、Pt75原子%:Ni25原子%(化学量論組成Pt
3Ni)の比較可能なPt:Ni比を有することから、活性の違いは金属酸化物ドーピングに唯一起因するものと見なされることができる。
【0086】
【表3】
【0087】
実施例6:Ex−situでの腐食テスト:電位サイクル試験による担持テスト後の触媒活性の測定
触媒系の安定性を、ORR活性の比較によって及び電位サイクル試験(200×0.5〜1.3V)後に評価した。高速サイクリングによって、Pt結晶子の安定性(低い電位領域)と担体の安定性(1V未満の電位)を模擬実験した。
【0088】
純粋なPt触媒(47質量%)のORR活性は、これらの電位サイクル試験後に少なくとも半分減少する(−50%)。TiO
2含有率が上昇するにつれて耐食性は減少する;TiO
2約20質量%時には、本来の活性のほぼ75%が失われる。これは、TiO
2はふつう腐食性ではなく、そのためPt粒子が不安定になっていることが推測されるという点で意外である。加えて、従来技術では腐食安定性を高めるための酸化物の使用が記載されている。殊に窒素下での、或いはまた還元性条件下での熱的後処理によって、触媒の腐食安定性は高められることができるが、それでも未処理のTiO
2不含触媒の安定性は達成されない。加えて、安定性のこのほんの僅かな増大にはしかし、上述した通り、活性の顕著な低下を伴う。
【0089】
約1質量%までの本発明による金属酸化物ドーピングにおいて、腐食安定性は酸化物不含の触媒と比較可能であるが、しかし位質量当たりの活性の増大は非常に大きく、このことは全体として触媒の改善につながる。
【0090】
TiO
21質量%を上回る、殊に5質量%を上回る酸化物を添加した場合、触媒は、酸化物不含触媒若しくは0.9質量%未満の金属酸化物ドーピングを有する触媒と比較して減少した触媒活性のみならず、明らかに減少した耐食性も有する。これらの認識は、従来技術の教示とは矛盾する。
【0091】
実施例7:In−situでの特定決定
最終的に、触媒活性の上昇を、燃料電池配置における測定によっても評価した。特別に、我々は本発明による触媒(実施例1、Pt30質量%、TiO
2としてのTi0.5質量%)を高温型リン酸形燃料電池のカソード側で使用した。アノードとして、基準用としてカソードでも使用した、通常用いられるPt30質量%の触媒を用いた(例えば比較例V2に従った触媒)。測定条件は160℃であり、アノードには水素を、そしてカソードには空気を供給した。次の表から読み取ることができるように、活性の上昇はin−situでも証明されている。
【0092】
高温での使用以外に、本発明による触媒は、当然のことながら、他の燃料電池タイプ、例えば低温型のナフィオンベースのPEMFC、DMFC等においても使用することができる。
【0093】
【表4】