特許第5823504号(P5823504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5823504少なくとも1種の脂肪族カルボン酸でエステル化されたグリセロールを可塑剤として含む、熱可塑性のポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823504
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】少なくとも1種の脂肪族カルボン酸でエステル化されたグリセロールを可塑剤として含む、熱可塑性のポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20151105BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20151105BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20151105BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20151105BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08K5/103
   B29C45/00
   B29K75:00
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-509526(P2013-509526)
(86)(22)【出願日】2011年5月9日
(65)【公表番号】特表2013-526629(P2013-526629A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】EP2011057389
(87)【国際公開番号】WO2011141408
(87)【国際公開日】20111117
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】10162406.2
(32)【優先日】2010年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】プリソク,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴェンホルスト,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】カム,アンドレ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−047411(JP,A)
【文献】 特開2003−055548(JP,A)
【文献】 特表2005−513239(JP,A)
【文献】 特開2001−002750(JP,A)
【文献】 特開2001−329134(JP,A)
【文献】 特開2001−152009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00−75/16
B29C 45/00−45/84
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の可塑剤を含む熱可塑性のポリウレタン組成物であって、第1の可塑剤(i)がグリセロールに基づき、及びグリセロールの3つのヒドロキシル基の全てが、1、2、3、4、5個、又は6個の炭素原子を含む同一のモノカルボン酸(ii)でエステル化されていることを特徴とする熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項2】
食品と接触すること、又は消費材として使用すること、又は医療用途に使用することが許容されることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項3】
可塑剤(i)の固有色を表すHazen数が100未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項4】
可塑剤(i)のアルカリ含有量が40ppm未満であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項5】
可塑剤(i)の水含有量が、0.2質量%未満であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項6】
熱可塑性の合成物質内に含まれる少なくとも1種の可塑剤の量が、可塑剤を含む熱可塑性の合成物質の合計量に対して、1〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項7】
熱可塑性の合成物質内に含まれる少なくとも1種の可塑剤の量が、可塑剤を含む熱可塑性の合成物質の合計量に対して、10〜40質量%であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項8】
熱可塑性の合成物質のためのShore硬さが、15ShoreAを超え、及び同時に、60ShoreA未満であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項9】
熱可塑性の合成物質のためのShore硬さが、15ShoreAを超え、及び同時に、35ShoreA未満であることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項10】
トリカルボン酸のエステルである可塑剤をも少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項11】
トリカルボン酸のエステルと可塑剤(i)の間の質量割合が、2:1〜1:10であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項12】
トリカルボン酸のエステルと可塑剤(i)の間の質量割合が、1:1.5〜1:3であることを特徴とする請求項11に記載の熱可塑性のポリウレタン組成物
【請求項13】
熱可塑性の合成物質を製造する間、及び/又は後に、少なくとも可塑剤(i)を、請求項1〜12の何れかに記載の熱可塑性の合成物質に加えることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するための方法。
【請求項14】
射出成形、押出し、発泡、及び/又は圧縮法を使用して生成物を製造することを含む、請求項1〜12の何れかに記載の熱可塑性ポリウレタン組成物から生成物を製造する方法。
【請求項15】
射出成形、押出し、発泡、及び/又は圧縮法を使用して生成物を製造するために、請求項1〜12の何れかに記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を使用する方法。
【請求項16】
請求項1〜12の何れかに記載の熱可塑性ポリウレタン組成物から最終製品を製造するための方法、及び/又は物品をこのタイプの熱可塑性のポリウレタン組成物で被覆する方法であって、処理の前、又は処置中に、熱可塑性の合成物質を溶媒中に溶解させることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1〜12の何れかに記載の熱可塑性のポリウレタン組成物を使用して、最終製品を製造、又は被覆するための方法であって、処理の前、又は処置中に、熱可塑性のポリウレタン組成物を溶媒中に溶解させることを含む方法。
【請求項18】
グリセロールと1、2、3、4、5個、又は6個の炭素原子を含む少なくとも1種のモノカルボン酸(ii)のエステルを、グリセロールの3つのヒドロキシル基の全てが、同一のモノカルボン酸(ii)でエステル化されている、熱可塑性のポリウレタン組成物のための可塑剤(i)として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールに基づく可塑剤(i)を少なくとも1種含む、熱可塑性のポリウレタン組成物(以降、TPUsとも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性のポリウレタン組成物(ポリウレタンは、種々の広い用途を有している。例えば、熱可塑性のポリウレタンは、自動車工業、例えば機器の表皮、ホイル、ケーブル被覆に、レジャー工業に見出され、及びスポーツシューズの機能的、及びデザイン的要素に見出され、及びハード−ソフトコンビネーションのソフト成分の状態で見出される。
【0003】
熱可塑性のポリウレタン組成物の硬さのレベルは通常、80ShoreA〜74ShoreDである。しかしながら、上述した用途の多くは、80ShoreA未満の硬さレベルを必要とする。従って従来技術では、Shore硬さを下げることが可能な可塑剤が熱可塑性の合成物質に加えられている。良く知られている可塑剤の例は、ベンゾエート、フタレート、及びリン酸エステル(ホスホリック・エスター)である。
【0004】
可塑剤が選択される場合、生成物が熱可塑性のポリウレタンとの良好な相性を確保することが好ましい。ここで、「良好な相性」は、熱可塑性のポリウレタンを製造するための通常の工程の間、可塑剤が熱可塑性のポリウレタンと混合可能であり、及び次に、可塑剤が可能な最大の範囲で、生成物中に残り、そして押出し又は蒸発で失われないことを意味する。更に、熱可塑性の機械的特性、例えば摩耗及び弾性特性が低下するべきではない。可塑化された熱可塑性のポリウレタンの多くは、日光にも曝される用途、例えば靴工業の設計要素に使用される。ここで、UV劣化による生成物の黄色化についての可塑剤の作用は、不利なものである。
【0005】
特許文献1(US2007/0049685)には、少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸、及び/又は少なくとも7個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸でエステル化されたトリメチロールアルカンの使用が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2007/0049685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの化合物の不利な点は、長い脂肪族炭化水素鎖、又は芳香族炭化水素の高い割合のために、これらは、極性のポリウレタンとの相性が低いものでしかないことで、この結果、可塑剤吸収性能が厳しく制限される。更に、トリメチロールアルカンに基づくこの種の化合物は、食品との接触が許可(許容)されておらず、又は人の体に接触するための、消費者の物品の形式が許可されていない。更に、TPUの製造は通常、約200℃の非常に高い温度で行われ、そして(最終製品を製造するまでの)製造工程において、長期間にわたり、度重なり、使用される可塑剤に特に問題(挑戦)が示される。上述した温度では、可塑剤は、分解を回避する必要がり、及び大気湿分又はTPU(これは、加熱手順の間通常、モル質量が低減し、これは冷却である程度戻される)の他の成分との反応を回避する必要もある。TPUは通常、白色又は透明なパレットの状態で供給され、そして退変色も望ましくない。
【0008】
従って、本発明の目的は、可塑化された熱可塑性のポリウレタン組成物を発展させることにあり、ここで、使用する可塑剤は良好な導入性能を有する必要があり、そしてにじみ出ではならず、蒸発によって失われてはならず、及び同時に、プラスチック(樹脂)の特性、例えば、処理性、耐熱性、透明性、及び/又は白さ、及び耐UV性を改良するか、又は少なくとも悪影響を与えてはならい。更に可塑剤は、毒性が低くあるべきで、これにより例えば、食品中に、又は食品又は人の皮膚と接触する材料に使用可能になるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、少なくとも1種の可塑剤を含む熱可塑性のポリウレタン組成物であって、第1の可塑剤(i)がグリセロールに基づき、及びグリセロールの少なくとも1つのヒドロキシ基が、1、2、3、4、5個、又は6個の炭素原子、好ましくは2、3個、又は4個の炭素原子、及びより好ましくは2個の炭素原子を含むモノカルボン酸(ii)でエステル化されていることを特徴とする熱可塑性のポリウレタン組成物によって達成される。この物質の群のために使用される用語は以降、グリセロールカルボキシレートと称される。更に好ましいものは、グリセロールトリカルボキシレートであり、及び材料は特に好ましくは、グリセロールトリアセテートである。
【0010】
本発明は更に、製造工程の間、及び/又は後に、少なくとも(本発明の)可塑剤(i)を、熱可塑性の合成物質に加えることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するための方法を提供し、及び本発明のポリウレタン組成物から生成物を製造するための方法をも提供する。本発明は更に、少なくとも1種の可塑剤(i)を、特に他のプラスチック(樹脂)との混合物中に含むポリウレタン組成物に基づく生成物を提供する。熱可塑性ポリウレタン組成物という用語は、1種のみの熱可塑性ポリウレタン組成物を含む熱可塑性ポリウレタ組成物ン(すなわち、実質的(本質的)に1種のイソシアネート、ポリオール、任意に鎖延長剤、及び更なる添加剤、及び助剤からなるもの)を意味するために使用されるが、しかし、このような熱可塑性のポリウレタン組成物の種々の混合物を意味するのにも使用される。
【0011】
本発明は更に、少なくとも1種の脂肪族カルボン酸でエステル化されたグリセロールを、熱可塑性のポリウレタン組成物中の可塑剤として使用する方法を提供する。本発明は、生成物を製造、又は被覆するための方法であって、本発明の可塑剤(i)を少なくとも1種含む熱可塑性のポリウレタン組成物が、工程の前、又は間に溶媒中に溶解される方法をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した可塑剤は、本発明の可塑剤で可塑化されたプラスチック(樹脂)の卓越した機械的安定性を提供するだけでなく、浸出の傾向が(非常に)少なく、及び更に有毒でなく、又は他の可塑剤と比較して、毒性が(非常に)少ない。これらは、TPU処理の間に上昇する温度に対して高い抵抗性をも有し、及び同時に、処理の間、TPUの機械的特性に悪影響を及ぼさない。更に、これらの製造のために必要とされる原料は、再生可能資源から得ることができる。他の極性の可塑剤、特にトリカルボン酸のエステルとの良好な相性(compatibility)は、材料の変性を達成すること、又は特定の特性、例えば特に低いShore硬さ値を達成することを目的とした可塑剤の組合せの可能性をもたらす。好ましい実施の形態では、DIN53505に従うShoreA硬さは、15ShoreAを超え、及び同時に60ShoreA未満、より好ましくは50ShoreA未満、更により好ましくは40ShoreA未満、及び特に35ShoreA未満である。本発明の可塑剤の更なる有利な点は、これらが(特に極性ポリウレタンとの)良好な混和性を有し、及び従って、より低いShoreA硬さ値を与える、非常に高い割合の可塑剤を導入することが可能なことである。上述した有利な点は、好ましい実施の形態で、明確に証明される。
【0013】
好ましい一実施の形態では、本発明の可塑剤(i)と一緒に、少なくとも1種の更なる可塑剤が使用され、そしてこれはトリカルボン酸のエステルであることが好ましい。上述したトリカルボン酸は、好ましくは、脂肪族構造を有し、ここで脂肪族構造は、枝分かれを有し、及び4〜30個の炭素原子、より好ましくは4〜20個の炭素原子、特に好ましくは5〜10個の炭素原子、及び極めて好ましくは6個の炭素原子を有するものである。ここで、枝分かれした脂肪族構造中の炭素原子は、単結合又は二重結合によって、相互に直接結合を有している。脂肪族構造が炭素原子間で、単結合のみを有することが好ましい。
【0014】
更に好ましい一実施の形態では、トリカルボン酸は、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する。この少なくとも1種のヒドロキシ基は、(トリカルボン酸について)上述した脂肪族構造の炭素原子への直接結合を有しており、これにより、3つの酸性基に加え、少なくとも1種のヒドロキシ基が、脂肪族構造への結合を有するものである。極めて好ましくは、トリカルボン酸の脂肪族構造上に正確に1個のヒドロキシ基が存在する。特に好ましいトリカルボン酸は、クエン酸である。
【0015】
好ましい一実施の形態では、トリカルボン酸の3つの全ての酸性基が、アルコールでエステル化される。アルコールは、芳香族及び/又は脂肪族構造を含むことができる。1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、及び特に好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルコールが更に好ましい。脂肪族構造を有するアルコールを使用することが好ましく、及びアルコールが直鎖状の脂肪族構造を有することがより好ましく、及び脂肪族構造が、二重結合を有していないことが特に好ましい。
【0016】
更に好ましい一実施の形態では、アルコールは、2の倍数個の炭素原子、すなわち、2、4、6、8、10、12、14、16、18又は20個の炭素原子を含む。アルコールが直鎖状の脂肪族化合物であることが更に好ましい。特に好ましい一実施の形態では、アルコールはエタノールである。極めて好ましい第2の実施の形態では、アルコールはブタノールである。替りの実施の形態では、アルコールはプロパノールである。トリカルボン酸の3つの基の全てが同じアルコールでエステル化されていることが更に好ましい。
【0017】
他の好ましい実施の形態では、トリカルボン酸のヒドロキシ基の少なくとも1つが、カルボン酸によって追加的にエステル化されている。このカルボン酸は、1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは2〜22個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族カルボン酸から選ばれ、これはより好ましくは、直線状の配置構成であり、及び更に好ましい実施の形態では、これらの中に存在する炭素原子の数は、2の倍数である。ヒドロキシ基が酢酸でエステル化されていることが極めて好ましい。
【0018】
他の実施の形態では、トリカルボン酸の少なくとも1つのヒドロキシ基は、基ROHによってエステル化されている。基ROHは、1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは2〜22個の炭素原子を含み、及びここで特に好ましい実施の形態では、炭素原子の数は2の倍数であり、及び上記アルコールは、より好ましくは、直鎖状の脂肪族構造を有している。更に好ましい実施の形態では、材料は、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールである。ポリエチレングリコールが更に好ましい。
【0019】
上述した実施の形態では、トリカルボン酸の3つのカルボキシ基、及びそのヒドロキシ基と一緒に、エステル内に、更なるヘテロ原子が存在しないことが好ましい。
【0020】
替りの実施の形態では、トリカルボン酸は、少なくとも1種のアミン基を含む。好ましい実施の形態では、カルボン酸は、上述したアミン基とアミドを形成する。上述したカルボン酸は、1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは1〜22個の炭素原子を有する芳香族、又は脂肪族カルボン酸から選ばれ、ここで特に好ましい実施の形態では、カルボン酸中の炭素原子の数は2の倍数である。
【0021】
他の好ましい実施の形態では、トリカルボン酸の少なくとも1つのアミン基が、少なくとも1つの基R’と第2級アミンを形成するか、又は第2の基R”と第3級アミンを形成する。基R’及びR”は、相互に独立して、1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜30個の炭素原子、特に好ましくは1〜22個の炭素原子を有し、ここで特に好ましい実施の形態では、炭素原子の数は2の倍数である。更に好ましい実施の形態では、この基は、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールであり、好ましくはポリエチレングリコールである。
【0022】
極めて好ましい一実施の形態では、二次可塑剤(第2可塑剤)として使用されるトリカルボン酸エステルは、トリブチル2−アセトキシ−1,2,3−トリカルボキシレートである。
【0023】
グリセロールの3つのヒドロキシ基を少なくとも1種のモノカルボン酸でエステル化して本発明の可塑剤を得るための方法は、好ましくは、反応器への最初の装入としてグリセロールを使用し、そしてモノカルボン酸、好ましくは酢酸を反応させることにより行われる。この混合物は、攪拌させながら加熱することが好ましい。カルボン酸の酸性基のモル量は、反応の過程の間、グリセロールのアルコール基について等モル量以下であることが好ましい。反応の間に生成された水は、蒸留によって連続的に除去される。残っているアルコール基の量は、OH価を測定(モニター)することによって測定することがで、そしてまだ未反応の酸性基の量は、酸価を測定することによって測定することができる。エステル形成反応は、触媒、例えばチタニウムテトラブトキシドを加えることによって促進することができる。ポリウレタン組成物中に可塑剤として使用するために、グリセロールカルボキシレート、好ましくはグリセロールトリカルボキシレートの酸価を最少限にすることが有利である。この理由は、遊離酸性基が、使用しても良いポリエステルポリウレタンの劣化に寄与し得るからで、及びこれらの安定性に悪影響を及ぼすからである。
【0024】
ある好ましい実施の形態では、グリセロールの1個、2個、又は3個のヒドロキシ基が、モノカルボン酸でエステル化され、そして2個又は3個のヒドロキシ基が少なくとも1種のカルボン酸でエステル化されていることが好ましく、及びグリセロールの3個のヒドロキシル基の全てがモノカルボン酸でエステル化されていることが特に好ましい。
【0025】
ある好ましい実施の形態では、グリセロールエステル中に、種々のモノカルボン酸が存在する。他の好ましい実施の形態では、グリセロールのエステル化されたヒドロキシ基をエステル化するために、同じモノカルボン酸が使用される。
【0026】
本発明の可塑剤の固有色(intrinsic color)を表すHazen数は、好ましくは100未満であり、特に好ましくは50未満であり、特に30未満である。このことは、TPUの固有色が(非常に)小さいことを保証する。
【0027】
可塑剤(i)のアルカリ含有量は、40ppm未満であることが好ましく、15ppm未満であることが特に好ましく、特に5ppm未満である。
【0028】
本発明の可塑剤の水含有量は通常、0.2質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.02質量%未満である。過剰な水分含有量は、イソシアネートの付加において、生成物の発泡をもたらし、及びウレア(尿素)の望ましくない形成をもたらし、及び機械的特性の損傷をもたらす。
【0029】
可塑剤(i)に併せて使用しても良い熱可塑性物質は、好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリアクリレート(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンフタレート(PBT)、ポリエーテルケトン(PEEK)、及びポリビニルクロリド(PVC)、又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)であり;特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0030】
熱可塑性物質、好ましくは熱可塑性ポリウレタン(熱可塑性ポリウレタン組成物)内に含まれる本発明の可塑剤(i)の量は、任意にトリカルボン酸のエステルである可塑剤と一緒に、(各場合において、可塑剤(i)を含む熱可塑性物質の合計質量に対して)1〜80質量%、好ましくは1〜70質量%、特に好ましくは5〜50質量%、特に10〜40質量%である。トリカルボン酸のエステルの使用量と、本発明の可塑剤の使用量の質量割合は、好ましくは2:1〜1:10、特に好ましくは1:1〜1:5、及び極めて好ましくは1:1.5〜1:3である。
【0031】
熱可塑性のポリウレタン組成物の製造は公知である。本発明の可塑剤(i)を含む熱可塑性のポリウレタン組成物は、好ましくは、(a)イソシネートと、(b)モル質量が0.5kg/モル〜1kg/モルで、及びイソシアネートに対して反応性の化合物、及び任意に(c)モル質量が0.05kg/モル〜0.499kg/モルの鎖延長剤との、任意に(d)触媒、及び/又は(e)通常の助剤の存在下での反応を介して得ることができる。好ましい一実地の形態では、可塑剤は、TPUsの製造の間、少なくとも1種の出発材料中に計量導入され、及び他の好ましい実施の形態では、可塑剤は、予め製造されたTPUと(好ましくは押出器内で)混合される。熱可塑性ポリウレタン組成物は、更に熱可塑性物質のために使用される方法によって(本発明の可塑剤の作用を損なうことなく)処理することができる。
【0032】
好ましい熱可塑性ポリウレタン組成物(TPU)を製造するのに通常使用される成分を以下に記載するが、これらは(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の化合物、(c)鎖延長剤、及び任意に(d)触媒、及び/又は(e)通常の助剤である。
【0033】
構造的成分という用語は、以下の成分:(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の化合物、及び(c)鎖延長剤のために(個々に、又は一緒に)使用される。
【0034】
使用される有機イソシアネート(a)は、好ましくは、脂肪族、脂環式、アラリファティック、及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン、1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−、及び2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2‘−、2,4‘−、及び/又は4,4‘−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3‘−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、及び/又はフェニレンジイソシアネートである。4,4‘−MDIを使用することが特に好ましい。
【0035】
イソシアネートに対して反応性で、及び使用される化合物(b)は、好ましくは、ポリエステルオール、ポリエーテルオール、及び/又はポリカーボネートジオール(これらのために、全体的な用語「ポリオール」が通常使用される)である。これらのポリオールの数平均モル質量は、0.5kg/モル〜8kg/モル、好ましくは0.6kg/モル〜5kg/モル、特に0.8kg/モル〜3kg/モルであり、及びこれらの平均官能性は、好ましくは1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2である。化合物(b)は好ましくは、1次ヒドロキシル基(primary hydroxy group)のみを有する。
【0036】
使用することが好ましい鎖延長剤(c)は、脂肪族、アラリファティック、芳香族、及び/又は脂環式の化合物で、モル質量が0.05kg/モル〜0.499kg/モルであり、好ましくは2官能性の化合物、例えばジアミン、及び/又は(アルキレン基中に2〜10個の炭素原子を有する)アルカンジオール、特にエタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又はジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−、及び/又は2〜8個の炭素原子を有するデカアルキレングリコール、及び好ましくは対応するオリゴ−、及び/又はポリプロピレングリコールである。ここで、鎖延長剤の混合物も使用されて良い。化合物(c)は、好ましくは一次ヒドロキシ基のみを有する。
【0037】
好ましい一実施の形態では、ジイソシアネート(a)のNCO、及び化合物(b)と鎖延長剤(c)のヒドロキシ基の間の反応を特に促進する触媒は、第3アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びこれらに類似するものであり、及び他の好ましい実施の形態では、有機金属化合物、例えば、チタンエステル、鉄化合物、好ましくはフェリックアセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくはスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート、又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートである。触媒(d)の使用することが好ましい量は、イソシアネートと反応可能な化合物(b)を100質量部として、0.0001〜0.1質量部である。スズ触媒、特にスズジオクトエートを使用することが好ましい。
【0038】
触媒(d)に加え、本発明の可塑剤(i)と一緒に構造成分(a)〜(c)に加えても良い他の材料は、通常の助剤(e)である。例えば、記載されても良いものは、界面活性物質、充填材、難燃剤、核形成剤、酸化防止剤、滑剤、及び離型剤、染料、及び顔料、(任意に本発明の安定剤に加え)安定剤、例えば加水分解、光、熱、又は変退色に対する安定剤、無機及び/又は有機充填材補強材、及び可塑剤である。使用される加水分解安定剤は、好ましくは、オリゴマー性、及び/又はポリマー性の、又は芳香族のカルボジイミドである。安定剤は、老化(エイジング)に対して本発明のTPUsを安定化させるために、これらに加えられることが好ましい。本発明の目的のために、安定剤は、プラスティック(樹脂)又はプラスティック混合物を、環境の悪影響から保護する添加剤である。例は、一次、及び二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、クエンチャー、及び難燃剤である。市販されている安定剤は、Plastics Additive Handbook,5th Edition,H.Zwifel,ed.,Hanser Publishers,Munich,2001([1]),pp.98−136に記載されている。
【0039】
上述した助剤と添加剤についての更なる詳細は技術文献、例えばPlastics Additive Handbook,5th Edition,H.Zwifel,ed.,Hanser Publishers,Munich,2001に見出すことができる。
【0040】
構造成分(a)及び(c)のモル割合は、TPUsの硬さを調節するために、比較的広く変化させることができる。成分(b)の、使用される鎖延長剤(c)の全量に対する効果的なモル割合は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4であることがわかった(ここで、(c)の含有量が増加すると、TPUsの硬さも増す)。反応は通常のインデックス、好ましくは60〜130のインデックス、特に好ましくは80〜110のインデックスで行うことができる。インデックスは、反応の間、成分(a)中に使用されるイソシアネート基の合計数の、成分(b)及び(c)中の、イソシネートに対して反応性の基、すなわち活性水素の数に対する割合によって定義される。インデックスが100の場合、構造成分(a)中の各イソシアネート基のために、構造成分(b)と(c)中に1個の活性水素原子、すなわちイソシアネートに対して反応性の1個の官能基(function)が存在する。100を超えるインデックスでは、存在するOH基よりも多くのイソシアネート基が存在する。
【0041】
TPUsは、公知の方法によって、例えば、反応性押出基によって、又はベルト法によって、ワンショット法を使用して、又はプレポリマー法を使用して、連続的に製造することができ、又は公知のプレポリマー法を使用してバッチ式で製造することができる。
【0042】
これらの方法で、反応中に含まれる成分(a)、(b)及び任意に(c)、(d)、及び/又は(e)は、相次いで、又は相互に同時に混合することができ、これにより反応は即座に開始する。押出法では、構造成分(a)及び(b)、及び任意に(c)、(d)、及び/又は(e)は、押出機内に個々に、又は混合物の状態で導入され、そして好ましくは100〜280℃の温度、より好ましくは140℃〜250℃の温度で反応され、そして得られたTPUが押出しされ、冷却され、そして粒状にされる。
【0043】
好ましい一実施の形態では、熱可塑性ポリウレタン組成物を製造するために、少なくとも可塑剤(i)、及び好ましくいは任意に、少なくとも1種の第2の可塑剤、トリカルボン酸のエステルが、熱可塑性物質(熱可塑性プラスチック)の製造の間、及び/又は後に加えられる。TPUを製造する場合、更に好ましくは、以下の成分が平行して加えられる:(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の化合物、(c)鎖延長剤、及び任意に(d)触媒、及び/又は(e)通常の助剤。
【0044】
少なくとも可塑剤(i)を含む、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を処理するために、射出成形、押出し、発泡、及び/又は圧縮法を使用した通常の方法が使用され、ここで、これらは通常、(所望の最終製品を得るために)造粒された材料、又は粉の状態である。射出成形、押出し、スピンニング法、及びシンタリング(焼成)法、及び「パウダー−スラッシュ」法の形態が好ましく、及び他の好ましい実施の形態では、生成物は発泡もされる。このために、化学的、及び/又は物理的発泡剤、又はガスが熱可塑性のポリウレタン組成物に加えられる。この方法は、発泡した最終製品を生成する。
【0045】
少なくとも可塑剤(i)を含む本発明の熱可塑性のポリウレタン組成物は、最終製品、特に成形品を製造するために使用され、及び好ましい成形品は、ローラー、靴ソール、自動車のクラッディング、ホース、被覆物、ケーブル、プロフィール、積層体、建物及び輸送のフロア、プラグコネクター、ケーブルプラグ、フォールディングベロウ、ドラッグケーブル、ソーラーモジュール、ワイパーブレード、ケーブル被覆、ガスケット、駆動ベルト、不織テキスタイル、ダンピング要素、ホイル又はファイバーである。フォームが同様に好ましく、及び特に好ましいフォームは、サドル又はクッションで、好ましい一実施の形態ではこれは、フォームスラブから分離され、及び他の好ましい実施の形態では、型内で発泡される。
【0046】
本発明の熱可塑性プラスチックから最終製品を製造するための、ある好ましい方法では、処理前、又は処置中に熱可塑性のポリウレタン組成物が溶媒中に溶解される。他の好ましい方法では、製品が熱可塑性のポリウレタンで被覆され、そしてこの目的のために、本発明のポリウレタンが溶媒中に溶解される。
【0047】
熱可塑性のポリウレタン組成物のための好ましい溶媒は、イオン液体、ジメチルホルムアルデヒド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、及びエチルアセテートの群から選ばれるもので、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドが好ましい。
【0048】
全ての中間生成物、及び可塑剤(i)を使用して製造された最終製品は、上述した有利性を有している。
【0049】
本発明は、ここに列挙した全ての組合せを含み、これには、明確には記載されていないが、列挙した実施の形態の組合せによって、この技術分野の当業者が利用できる実施の形態も含まれる。
【0050】
本発明は更に、少なくとも1種の更なるプラスチック(樹脂)と、本発明の熱可塑性のポリウレタン組成物の混合物を提供する。熱可塑性のポリウレタン組成物が、少なくとも1種の更なるプラスチック(樹脂)との混合物中に使用されることが好ましく、該更なるプラスチックは、好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリラクトエート(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルケトン(PEEK)、及びポリビニルクロリド(PVC)の群から選ばれる。
【実施例】
【0051】
実施例で、ポリウレタン組成物の製造と特性を説明する。本発明の材料、又は混合物は、反応性押出機、又はベルトシステム内でのワンショット法で製造されたものである。可塑剤は、反応工程で直接的に加えることができ、又は予め製造されたポリウレタン造粒化材料を膨張させるために可塑剤を使用することによって加えることができる。この膨張法のために、加熱可能な混合物を使用することが好ましく、又は押出工程の間に可塑剤を加えることによってこのことを達成することが好ましい。
【0052】
実施例1(比較)
420部のジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、88.8部の1,4−ブタンジオール鎖延長剤、及び700部の(数平均モル質量が1kg/モルの)ポリテトラヒドロフランを、反応性押出機内でのTPUの合成のために使用した。ここで、押出機の領域温度は、140℃〜210℃であった。15.3部のフェノール性酸化防止剤、及びジオクチルアジペート中、スズジオクトエート(stannous dioctoate)の25%濃度(strength)溶液、25ppmも反応触媒として加えた。得られたTPU造粒化材料を射出成形による成形工程に処理し、試験試料を得、そしてこれからパンチ(穿孔)された(DIN53504に従う)S2試験試料を機械試験に受けさせた。
【0053】
実施例2(本発明)
反応の間、306.2部のグリセロールトリブチレート(20質量%に相当)を実施例1の処方物中に加えた。可塑剤はTPUによって均一に吸収された。
【0054】
実施例3(比較)
反応の間、306.2部のジエチルヘキシルアジペート(20質量%に相当)を実施例1の処方物中に加えた。可塑剤はTPUに吸収されず、そして造粒された材料は不均一でベタベタしたものであった。
【0055】
実施例4(比較)
312部のジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、82.1部の1,4−ブタンジオール鎖延長剤、及び800部の(1,4−ブタンジオール及びアジピン酸から誘導された)数平均モル質量が2400g/モルのポリブチルアジペートを、マニュアルキャスティング法でTPUを合成するために使用した。6.4部の加水分解安定剤(TMDXI=テトラメチルキシリルジイソシアネートから誘導したオリゴマー性カルボジイミド)、及び反応触媒として、スズジオクトエート(stannous dioctoate)の25%濃度(strength)溶液、50ppmもこの混合物に加えた。得られたスキンを通常の炉内で、15時間にわたり80℃で熱的に調整し、そして細かく砕いた。得られたTPU造粒化材料を射出成形工程で成形して試験試料を得、そしてこれからパンチ(穿孔)された(DIN53504に従う)SP2試験試料を機械試験に受けさせた。
【0056】
実施例5(本発明のもの)
反応の間、300.2部(20質量%に相当)のグリセロールトリアセテートを実施例4からの処方物に加えた。TPUは可塑剤を均一に吸収した。
【0057】
実施例6(比較)
反応の間、300.2部(20質量%に相当)のジエチルヘキシルアジペートを実施例4からの処方物に加えた。TPUは可塑剤を完全には吸収せず、造粒した材料(造粒化材料)は不均一でそしてベタベタしていた。
【0058】
実施例7(比較)
282部の4,4’−MDI、71.7部の1,4−ブタンジオール鎖延長剤、及びアジピン酸、1,2−エタンジオール、及び1,4−ブタンジオール(後者は1:1の質量割合)でできた641部のポリマージオール(数平均モル質量2000g/モル)を反応性押出機内でTPU合成するために使用した。ここで押出し領域温度は140℃〜210℃であった。5部の加水分解安定剤(TMDXI=テトラメチルキシリルジイソシアネートから誘導したオリゴマー性カルボジイミド)、及び0.5部の滑剤(部分的に鹸化したモンタンエステル)を反応の間に加えた。
【0059】
得られたTPU造粒化材料を射出成形による成形工程に処理し、試験試料を得、そしてこれからパンチ(穿孔)された(DIN53504に従う)S2試験試料を機械試験に受けさせた。
【0060】
実施例8(本発明のもの)
反応の間、実施例7の処方物に20質量%のグリセロールトリアセテートを加えた。TPUは可塑剤を均一に吸収した。
【0061】
実施例9(比較)
反応の間、実施例7の処方物に20質量%のジエチルヘキシルアジペートを加えた。TPUは可塑剤を完全には吸収せず、及び造粒された材料は不均一でベタベタしていた。
【0062】
得られた生成物の特性
機械的試験は、DN53505(Shore)、53504(引っ張り強さ、破断点での引っ張りひずみ)、及びDIN53516(摩耗)に従うものであった。
【0063】
【表1】
【0064】
n.d.=測定不可能(理由:適切な試験試料を製造することができなかった)
【0065】
本発明の可塑剤を有する熱可塑性のポリウレタン組成物のShore硬さは、元の材料のものよりも著しく低いことが、表からわかる。得られた生成物の機械的特性は、市販されているTPUsに匹敵する;ここで考慮されるべき点は、生成物のShore硬さが下がると、その全体的な柔軟性及び弾力性が増すことである。
【0066】
実施例10(比較)
260部の4,4’−MDI、32.2部の1,2−エタンジオール鎖延長剤、及びアジピン酸、1,2−エタンジオール、及び1,4−ブタンジオール(後者は1:1の質量割合)でできた1000部のポリマージオール(数平均モル質量2000g/モル)、及び231.2部のトリブチルアセチルシトレートを反応性押出機内でTPU合成するために使用した。ここで押出し領域温度は140℃〜210℃であった。10部の加水分解安定剤(TMDXI=テトラメチルキシリルジイソシアネートから誘導したオリゴマー性カルボジイミド)、3.08部のフェノール性酸化防止剤、及び4.62部の滑剤(部分的に鹸化したモンタンエステル)も反応の間に加えた。得られたTPU造粒化材料を押出物を製造するために使用し、そしてこれらの特性を試験した。
【0067】
実施例11(本発明のもの)
実施例10からの生成物を加熱可能なミキサー(DIOSNA)内で85℃に加熱し、そして25質量%のグリセロールトリアセテートを混合した。混合工程を90分継続した後、生成物を攪拌しながら室温にまで冷却した。得られた造粒(粒化)されたTPU材料を押出物を製造するために使用し、そしてこれらの特性を試験した。TPUは可塑剤を均一に吸収した。
【0068】
実施例12(本発明のもの)
実施例10からの生成物を加熱可能なミキサー(DIOSNA)内で85℃に加熱し、そして45質量%のグリセロールトリアセテートを混合した。混合工程を180分継続した後、生成物を攪拌しながら室温にまで冷却した。得られたTPUの造粒化材料を押出物を製造するために使用し、そしてこれらの特性を試験した。TPUは可塑剤を均一に吸収した。
【0069】
実施例13(比較)
実施例10からの生成物を加熱可能なミキサー(DIOSNA)内で85℃に加熱し、そして25質量%のトリブチルアセチルシトレートを混合した。混合工程を90分継続した後、生成物を攪拌しながら室温にまで冷却した。TPUの造粒化材料は可塑剤を吸収せず、そして押出物を製造することができなかった。TPUによる、追加的な可塑剤の非常に少量の吸収が発生した。
【0070】
実施例14(比較)
実施例10からの生成物を加熱可能なミキサー(DIOSNA)内で85℃に加熱し、そして25質量%のジエチルヘキシルアジペートを混合した。混合工程を90分継続した後、生成物を攪拌しながら室温にまで冷却した。TPUの造粒化材料は可塑剤を吸収せず、そして押出物を製造することができなかった。TPUは可塑剤を吸収しなかった。
【0071】
実施例15(比較)
実施例10からの生成物を加熱可能なミキサー(DIOSNA)内で85℃に加熱し、そして25質量%のジプロピレングリコールジベンゾエートを混合した。混合工程を90分継続した後、生成物を攪拌しながら室温にまで冷却した。TPUの造粒化材料は可塑剤を吸収せず、そして押出物を製造することができなかった。TPUによる極めて少量の可塑剤の吸収が発生した。
【0072】
得られた生成物の特性
DIN53505(Shore)に従い、試験を行った。
【0073】
【表2】
【0074】
n.d.=明確な測定不可能(理由:可塑剤の完全な吸収が発生しなかった)
【0075】
表から、本発明の可塑剤は、他の可塑剤タイプの化合物の存在下でも、熱可塑性のポリウレタン組成物中で効果的であることがわかる。実施例11及び12はトリブチルアセチルシトレートと組合せたグリセロールトリアセテートの相乗作用を表している。