(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823907
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】過電圧保護装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20151105BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20151105BHJP
H03K 19/003 20060101ALI20151105BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
H02H9/04 Z
H03K19/003 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-88978(P2012-88978)
(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公開番号】特開2013-219565(P2013-219565A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】本間 文洋
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳春
【審査官】
森谷 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−232145(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3067528(JP,U)
【文献】
特開2011−228154(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201041880(CN,Y)
【文献】
特開2010−142107(JP,A)
【文献】
枡田 俊久 Toshihisa Masuda,LANポート雷保護用多極避雷管の電流耐量の検討,電子情報通信学会2012年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2012 IEICE GENERAL CONFERENCE,2012年 3月20日,p.336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H02H 9/04
H03K 19/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイーサネットポートを有する通信装置のための過電圧保護装置であって、
前記各イーサネットポートには第1の型を有する第1型コネクタが用いられ、
前記過電圧保護装置は、
前記各第1型コネクタに噛み合う第2型コネクタ、前記各第2型コネクタに信号路を介して接続された第1型コネクタ、前記各信号路に挿入され且つ直列接続された複数のパルストランスを有する過電圧保護回路、並びに、前記第2型コネクタどうしと前記過電圧保護回路どうしと前記第1型コネクタどうしを絶縁する絶縁板を有するモジュールを備えることを特徴とする過電圧保護装置。
【請求項2】
複数のイーサネットポートを有する通信装置のための過電圧保護装置であって、
前記各イーサネットポートには第1の型を有する第1型コネクタが用いられ、
前記過電圧保護装置は、
前記各第1型コネクタに噛み合う第2型コネクタ、前記各第2型コネクタに信号路を介して接続された第1型コネクタ、前記各信号路に挿入され且つ直列接続された複数のパルストランスを有する過電圧保護回路、前記第2型コネクタどうしと前記過電圧保護回路どうしと前記第1型コネクタどうしを絶縁する絶縁板、並びに、前記各イーサネットポートに対し前記各第2型コネクタを一括で着脱するための治具を有するモジュールを備えることを特徴とする過電圧保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イーサネットポートを有する通信装置を過電圧から保護できる過電圧保護回路および過電圧保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、イーサネットポートを有する通信装置を過電圧から保護するには、例えば、
図5に示すように、制御用IC100からイーサネットポートPに至る信号路にパルストランスTが挿入される。イーサネットポートPと電話ポートLの間に過電圧が印加された場合、パルストランスTの絶縁耐圧により、制御用IC100、101が過電圧から保護される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「電子部品の広場」、[online]、ITMedia.Inc.、[平成24年4月2日検索]、インターネット<URL:http://ednjapan.com/content/EC/spotlight3_2.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的なパルストランスTの絶縁耐圧は、1.5kVまたは2.5kVであり、高耐圧のパルストランスでも絶縁耐圧は7kV程度である。ITU−Tの過電圧耐力要求(Special Requirement)では、電話ポートから侵入する雷(電話ポート−接地間)に対して13kV、電源から侵入する雷(電源−接地間)に対して10kVの過電圧耐力を要求している。
【0005】
つまり、
図5の回路では、これらの要求を満足できず、パルストランスTが絶縁破壊すると、制御用IC100、101を過電圧から保護できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イーサネットポートを有する通信装置を過電圧から保護できる過電圧保護回路および過電圧保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
過電圧保護装置は、複数のイーサネットポートを有する通信装置のための過電圧保護装置であって、前記各イーサネットポートには第1の型を有する第1型コネクタが用いられ、前記過電圧保護装置は、前記各第1型コネクタに噛み合う第2型コネクタ、前記各第2型コネクタに信号路を介して接続された第1型コネクタ、前記各信号路に挿入され且つ直列接続された複数のパルストランスを有する過電圧保護回路、並びに、前記第2型コネクタどうしと前記過電圧保護回路どうしと前記第1型コネクタどうしを絶縁する絶縁板を有するモジュールを備える。
【0011】
過電圧保護装置は、複数のイーサネットポートを有する通信装置のための過電圧保護装置であって、前記各イーサネットポートには第1の型を有する第1型コネクタが用いられ、前記過電圧保護装置は、前記各第1型コネクタに噛み合う第2型コネクタ、前記各第2型コネクタに信号路を介して接続された第1型コネクタ、前記各信号路に挿入され且つ直列接続された複数のパルストランスを有する過電圧保護回路、前記第2型コネクタどうしと前記過電圧保護回路どうしと前記第1型コネクタどうしを絶縁する絶縁板、並びに、前記各イーサネットポートに対し前記各第2型コネクタを一括で着脱するための治具を有するモジュールを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のパルストランスを直列接続したので、イーサネットポートを有する通信装置を過電圧から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係る過電圧保護回路を含む通信装置の部分的な回路図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る過電圧保護装置の利用形態を示す図である。
【
図3】第2の実施の形態で使用される治具14を示す斜視図である
【
図4】第2の実施の形態で使用される絶縁板12を使用しない場合の絶縁破壊の様子を示す図である。
【
図5】従来の過電圧保護を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る過電圧保護回路を含む通信装置の部分的な回路図である。
【0016】
過電圧保護回路10は、複数のイーサネットポートPを有する通信装置の各イーサネットポートPに至る信号路に挿入され且つ直列接続された複数(例えば、2つ)のパルストランスTを有する。例えば、各パルストランスTの絶縁耐圧は、7kVである。また、各パルストランスTの1次側の静電容量も同一となっている。また、各パルストランスTの2次側の静電容量も同一となっている。
【0017】
イーサネットポートPには、ジャック型のコネクタが用いられ、イーサネットケーブルの先端に設けられたプラグ型のコネクタPLに噛み合うようになっている。
【0018】
イーサネットポートPとパルストランスTを繋ぐ信号路、パルストランスT同士を繋ぐ信号路、パルストランスTと保護対象である制御用IC100を繋ぐ信号路は、それぞれ、複数のパターン配線で構成される。
【0019】
通信装置は、例えば、電話ポートLを有する。電話ポートLには、ジャック型のコネクタが用いられ、モジュラーケーブルの先端に設けられたプラグ型のコネクタLLに噛み合うようになっている。
【0020】
電話ポートLと保護対象である制御用IC101を繋ぐ信号路は、例えば、2本のパターン配線で構成される。
【0021】
また、例えば、制御用IC100、101は、電源線や制御線からなるバス200で接続される。
【0022】
例えば、ある1つのイーサネットポートPと電話ポートLの間に13kVの過電圧が印加される。各パルストランスTの絶縁耐圧は7kVであるから、直列接続された2つのパルストランスTでは、絶縁耐圧は14kVである。よって、絶縁破壊は生じず、制御用IC100、101を過電圧から保護することができる。また、直列接続されたパルストランスTの数を増やせば、さらに絶縁耐圧を高めることができる。
【0023】
なお、第1の実施の形態では、複数のイーサネットポートPを有する通信装置を例にし、各イーサネットポートPについて過電圧保護回路10を設けたが、単一のイーサネットポートPを有する通信装置のイーサネットポートPや、複数のイーサネットポートPを有する通信装置のいずれか1つのイーサネットポートPに過電圧保護回路10を設けてもよい。
【0024】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態に同一または類似の回路を用い、同一または類似のものについては第1の実施の形態で使用した符号を使用して重複説明を略し、第1の実施の形態とは異なる事項を中心に説明を行う。
【0025】
図2は、第2の実施の形態に係る過電圧保護装置の利用形態を示す図であり、
図3は、第2の実施の形態で使用される治具14を示す斜視図である。
【0026】
過電圧保護装置10Aは、複数のイーサネットポートPを有する通信装置1のための過電圧保護装置である。各イーサネットポートPにはジャック型のコネクタ(第1型コネクタ)が用いられている。
【0027】
過電圧保護装置10Aは、各イーサネットポートPつまりジャック型のコネクタに噛み合うプラグ型のコネクタPL1(第2型コネクタ)、各コネクタPL1に信号路を介して接続された、イーサネットポートPと同じジャック型のコネクタP1(第1型コネクタ)、各信号路に挿入され且つ直列接続された複数(例えば、2つ)のパルストランスTを有する過電圧保護回路10、コネクタPL1どうしと過電圧保護回路10どうしとコネクタP1どうしを絶縁する絶縁板12、これらの部品を搭載するための基板13、並びに、各イーサネットポートPに対しコネクタPL1を一括で着脱するための治具14を有するモジュール15を備える。
【0028】
コネクタPL1とパルストランスTを繋ぐ信号路、パルストランスT同士を繋ぐ信号路、パルストランスTとコネクタP1を繋ぐ信号路は、それぞれ、複数のパターン配線で構成される。
【0029】
コネクタP1には、イーサネットケーブルの先端に設けられた、コネクタPL1と同じプラグ型のコネクタPLに噛み合うようになっている。
【0030】
図3に示すように、治具14は、例えば、各コネクタPL1に設けられたレバーVに取り付けられた棒状の治具であり、治具14を矢印の方向に押すと、コネクタPL1とイーサネットポートPが噛み合ってない状態となり、治具14を放すと、コネクタPL1とイーサネットポートPが噛み合った状態となる。よって、治具14を押したままコネクタPL1をイーサネットポートPに挿入し、治具14を放すことで、各コネクタPL1を各イーサネットポートPに一括で取り付けることができる。また、治具14を押し、そのままコネクタPL1をイーサネットポートPから抜くことで、各コネクタPL1を各イーサネットポートPから一括で外すことができる。
【0031】
また、第2の実施の形態では、絶縁板12を設けたことで、パルストランスT以外の箇所での絶縁破壊を防止できる。
【0032】
図4に示すように、仮に絶縁板12を設けない場合には、例えば、隣合うコネクタP1のパターン配線間で絶縁破壊が生じる虞がある。
【0033】
しかし、第2の実施の形態では、絶縁板12を設けたことで、いわゆる沿面距離を長くできるので、このような絶縁破壊を防止でき、通信装置1を過電圧からより確実に保護することができる。
【0034】
なお、第2の実施の形態では、各絶縁板12と治具14を設けたが、一方のみを設けた場合であっても、上記の作用効果が得られるので、そのようにしてもよい。
【0035】
また、各絶縁板12と治具14を設けず、つまり、そのような外付けのモジュール15を設けることで、パルストランスTを通信装置1の内部に設ける必要がなく、利便性を向上できる。
【符号の説明】
【0036】
1 通信装置
10 過電圧保護回路
10A 過電圧保護装置
12 絶縁板
13 基板
14 治具
15 モジュール
P イーサネットポート
P1,PL,PL1,LL コネクタ
L 電話ポート
T パルストランス
V レバー