特許第5825455号(P5825455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5825455表面処理された酸化物粒子の製造方法とその製造方法で得られる酸化物粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825455
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】表面処理された酸化物粒子の製造方法とその製造方法で得られる酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20151112BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20151112BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20151112BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20151112BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20151112BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   C01G53/00 A
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
   H01M4/36 E
   H01M4/36 C
【請求項の数】12
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-518110(P2015-518110)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2014079147
(87)【国際公開番号】WO2015072359
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2015年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-236887(P2013-236887)
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-108044(P2014-108044)
(32)【優先日】2014年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】行延 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 良広
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084547(JP,A)
【文献】 特開2014−075177(JP,A)
【文献】 特開2012−089406(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/160707(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/125729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00−47/00
C01G 49/10−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子で構成された2次粒子であって、2次粒子の表面、および、2次粒子内部における1次粒子表面であって該1次粒子同士の間の開空孔(オープンポア)側に露出する面に中和生成物が形成されている、表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、
粒子表面アルカリ性化合物を有する酸化物粒子を、揮発性の酸性化合物を含む気体と接触させ、前記アルカリ性化合物と前記酸性化合物との気相を介した反応による前記中和生成物を形成し
前記アルカリ性化合物が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)を含有する化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であり、
前記揮発性の酸性化合物が、ホウ素(B)、リン(P)、ケイ素(Si)を含有する化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であり、
前記酸化物粒子が、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、チタンの群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属を含み、かつ、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の群から選ばれるいずれか一種以上のアルカリ元素を含む、アルカリ複合酸化物であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記揮発性の酸性化合物が、ホウ素(B)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するホウ素(B)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下である請求項1に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記揮発性の酸性化合物が、リン(P)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するリン(P)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下である請求項1又は2に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記揮発性の酸性化合物が、ケイ素(Si)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するケイ素(Si)の含有量が0.05質量%以上0.30質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記粒子表面アルカリ性化合物を有する酸化物粒子が、粒子表面の一部または全部がアルカリ成分で被覆された酸化物粒子であり、かつ該アルカリ成分がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の水酸化物、炭酸塩、酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ成分が、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、酸化リチウム(LiO)の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項5に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ性化合物が、前記アルカリ複合酸化物において、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上のアルカリ酸化物が化学量論組成よりも過剰に含有されたアルカリ複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項8】
前記揮発性の酸性化合物が、沸点が300℃以下のホウ酸化合物、リン酸化合物、亜リン酸化合物、ケイ酸化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項9】
前記揮発性の酸性化合物が、沸点が250℃以下のアルキルホウ酸、アルキルリン酸、アルキル亜リン酸、アルキルケイ酸の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項8に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項10】
前記中和生成物を形成した後、100℃以上の加熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項11】
前記中和生成物が、リチウムホウ素酸化物、リチウムリン酸化物、リチウムケイ素酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【請求項12】
前記アルカリ複合酸化物が、LiMO、LiMPO、LiMSiO(M:マンガン、コバルト、ニッケル、鉄の群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属)、LiYaMn2−a(Y:コバルト、ニッケル;0≦a≦1)、LiMnO−LiMO(M:マンガン、コバルト、ニッケルの群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属)、LiTi12の群から選ばれるいずれか一種以上を主成分としていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の表面処理された酸化物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された酸化物粒子の製造方法に関する。より詳しくは、集電体(正極、負極)、及び正極活物質層、(固体、または液体)電解質、負極活物質層を有する蓄電池(二次電池)において、(正極、または負極)活物質層に好適に用いられ、かつ、蓄電池の各種特性向上を可能とする酸化物粒子を製造するに当たり、気相法という極めて簡便な方法で行える表面処理された酸化物粒子の製造方法(表面処理方法)、及びその製法で得られる低コストかつ高性能な酸化物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池としてのリチウムイオン二次電池(以下、リチウムイオン電池)は、エネルギー密度が大きく、充放電のサイクル特性に優れるため、携帯機器等の電子機器を中心に広く使用されている。ここで、リチウムイオン電池は、用いる電解液の種類により、(1)電解液系リチウムイオン電池と、(2)全固体リチウムイオン電池、に大別される。
【0003】
(1)電解液系リチウムイオン電池
電解液系リチウムイオン電池は、現在広く用いられている最も一般的なリチウムイオン電池であり、図1に示すように、正極(正極集電体1、正極活物質層2)、負極(負極集電体6、負極活物質層5)、電解液4、セパレータ3の基本要素で構成されている。電極リード7(取出し電極)が取付けられた正極、及び負極は、これら電極間に電解質を保持できるセパレータ3を介在させた状態で電解液4に浸漬され、容器8(金属、プラスチックラミネート等)で覆われたセル構造を有している。
【0004】
上記正極、及び負極は、それぞれの活物質(正極活物質、負極活物質)の結晶性粒子、導電助剤、結合材(バインダー)等を主成分とするそれぞれの活物質層(正極活物質層2、負極活物質層5)が、それぞれの集電体(正極集電体1:アルミニウム箔等、負極集電体6:銅箔等)上に形成された構造を有している。
【0005】
上記正極活物質には、通常、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が用いられており、具体的には、層状系材料としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li(Ni−Co−Al)O)、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、スピネル系材料としてのリチウム−マンガン酸化物(LiMn)、オリビン系材料としてのリン酸鉄リチウム(LiFePO)等が一般的である。さらに、高エネルギー化を目指して、高電圧(5V領域)で充放電を行うスピネル系材料としてのリチウム−マンガン−ニッケル酸化物(Li(Mn3/2Ni1/2)O等)や、高容量を有する層状系材料としての固溶体系(「過剰系」とも呼ばれる)マンガン含有リチウム複合酸化物(例えば、LiMnO−LiMO[M:Ni、Mn、Co等])等の開発も進められている。また、上記負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、チタン酸リチウム(LiTi12)等が一般的に用いられている。
【0006】
ところで、それぞれの活物質層(正極活物質層2、負極活物質層5)の形成は、それぞれの活物質層形成用ペースト(正極活物質層形成用ペースト、負極活物質層形成用ペースト)を、集電体上に、塗布・乾燥(必要に応じてプレス加工による緻密化)して行われる。
【0007】
ここで、正極活物質層形成用ペーストは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結合材(バインダー)を溶解させたN−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶剤中に、上記正極活物質の粒子、アセチレンブラック(AB)や気相成長炭素ファイバー(VGCF)等の導電助剤の粒子を分散させた非水系ペーストが一般的であり、また、負極活物質層形成用ペーストには、例えば、水系の結合材(バインダー)としてのスチレンブタジエンラバー(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)等を含む水中に、上記負極活物質の粒子、必要に応じてアセチレンブラック(AB)や気相成長炭素ファイバー(VGCF)等の導電助剤の粒子、を分散させた水系ペーストが一般的に用いられている。
【0008】
上記電解液系リチウムイオン電池では、その性能向上や低コスト化に向けて、活物質(正極活物質、負極活物質)、電解液、セパレータ等において種々の改良が絶え間なく行われてきている。しかしながら、液体である電解液を電解質として用いる電解液系リチウムイオン電池では、電解液主成分の有機溶剤の可燃性のため発火の危険性があり、また、電解液の液漏れの心配もあるため、十分な安全性を有しているとは言えず、さらに通常電池電圧4.5V程度以上では電解液の分解が生ずるため高電圧化による高容量化が困難で、かつ、容器(パッケージ)内のセル同士が電解液で電気的に繋がっているためバイポーラ型の積層セル構造によるセルの高電圧化・小型化が困難等、今後の低コスト化や小型化・高性能化におのずと限界があった。そこで、近年では、電解液に代えて固体電解質を用いる全固体リチウムイオン電池の開発が積極的に進められている。
【0009】
(2)全固体リチウムイオン電池
全固体リチウムイオン電池では、可燃性の電解液に代えて不燃性・難燃性の固体電解質を用いている点に特徴があり、電池からの電解液漏れや発火等が防止でき大幅に安全性が向上すると共に、上記バイポーラ型積層セル構造により、パッケージの薄型化・小型化、及び、一つのセル内での直列化(積層)でのセルの高電圧化等による低コスト化が可能という利点がある。さらに、固体電解質の電位窓を広くできるためLiに対して高電位の正極活物質(5V系)の適用による高容量化をより一層図ることも可能となる。
【0010】
全固体リチウムイオン電池の基本セル構造は、図2に示すように、集電体(正極集電体1、負極集電体6)と機能性層(正極活物質層2、固体電解質層9、負極活物質層5)が積層された積層セル構造であり、この積層セル構造を複数積み重ねることでバイポーラ型積層セル構造(n回積層:集電体/正極活物質層(1層目)/固体電解質層(1層目)/負極活物質層(1層目)/集電体/正極活物質層(2層目)/固体電解質層(2層目)/負極活物質層(2層目)/集電体/・・・/正極活物質層(n層目)/固体電解質層(n層目)/負極活物質層(n層目)/集電体)が容易に実現できる。積層セル構造の、最外面の集電体(正極集電体1、負極集電体6)には電極リード7(取出し電極)が取付けられ、容器8(金属、プラスチックラミネート等)で覆われている。上記集電体は、正極集電体1ではステンレス箔、アルミニウム箔等、負極集電体6ではステンレス箔、銅箔等を用いることができる。
【0011】
また、上記機能性層(正極活物質層2、固体電解質層9、負極活物質層5)は、例えば活物質層(正極活物質層2、負極活物質層5)では、それぞれの活物質(正極活物質、負極活物質)の結晶性粒子が固体電解質マトリックス中に分散しており、必要に応じて、活物質層内の集電性(電子導電性)の向上のための導電助剤、密着性や柔軟性付与のための結合剤(バインダー)が微量含有されていてもよい。また、固体電解質層9は、固体電解質粒子が緻密に充填した多結晶層、あるいは、固体電解質からなる緻密な非晶質層であって、必要に応じて、密着性や柔軟性付与のための結合剤(バインダー)が微量含有されていてもよい。
【0012】
上記活物質(正極活物質、負極活物質)には、前述の電解液系リチウムイオン電池で用いられ活物質と同様な材料が適用できる。さらに、金属リチウムや各種リチウム合金等のように、電解液系リチウムイオン電池では金属リチウムが負極にデンドライト析出して短絡を生じるため用いることができない高容量の負極活物質材料が、全固体リチウムイオン電池では適用できるという利点もある。
【0013】
ところで、全固体リチウムイオン電池に用いる固体電解質は、酸化物系固体電解質と硫化物系固体電解質に大別され、例えば、酸化物系固体電解質では、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムに窒素を添加したLiPO(LiPONと呼ばれる。)、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)(LATPまたはLTAPと呼ばれる。)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1;具体的には、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)(LAGPと呼ばれる。)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3;具体的には、Li0.33La0.56TiO、Li0.5La0.5TiO等)(LLTまたはLLTOと呼ばれる。)、LiLaTa12、LiLaZr12(LLZまたはLLZOと呼ばれる。)、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等、硫化物系固体電解質では、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P等が挙げられるが、酸化物系固体電解質に比べてリチウムイオン伝導度が高い硫化物系固体電解質が好適であり、中でもLiS−P系固体電解質は優れた特性を有し、かつ、低コスト化(高価な金属元素を含まない)が可能なため好ましい。
【0014】
上記硫化物系固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池において、活物質として電子伝導性に優れる酸化物粒子(例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li(Ni−Co−Al)O)、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)や、電子伝導性がそれ程悪くない酸化物粒子(リチウム−マンガン−ニッケル酸化物(Li(Mn3/2Ni1/2)O等)、固溶体系(過剰系)マンガン含有リチウム複合酸化物(LiMnO−LiMO[M:Ni、Mn、Co]等)))を適用すると、活物質層内の活物質粒子(酸化物粒子)/硫化物系固体電解質の界面において、硫化物系固体電解質側にリチウムイオン欠乏した空間電荷層が形成されて上記界面抵抗が大幅に増加して電池の出力特性(レート特性)が大幅に悪化することが知られている。そして、その界面抵抗を有効に低減する方法として、電子導電性の低い酸化物固体電解質(例えば、LiSiO、LiNbO、LiTi12、LiTi等のアルカリ複合酸化物)による活物質粒子(酸化物粒子)のコーティングが提案され、広く試みられている(特許文献1〜3等参照)。
【0015】
以上、蓄電池としてのリチウムイオン電池について説明したが、近年、蓄電池の高容量化・低コスト化を目指した次世代電池(次世代二次電池)として、例えば、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池等の開発も盛んに行われている。これらの電池においても、その基本構造は上述のリチウムイオン電池と同様であり、リチウムに代えて、ナトリウムやマグネシウムが適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−266728号公報
【特許文献2】WO2013/011871国際公開パンフレット
【特許文献3】WO2013/046443国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述の電解液系リチウムイオン電池においては、用いる正極活物質粒子の高容量を確保するために、リチウム過剰組成が必要とされる場合が多く、その場合には、正極活物質層形成用ペーストのゲル化(プリン化)が生じ易いという問題があった。このゲル化(プリン化)を抑制する方法として、例えば、リチウムを過剰に含有する正極活物質粒子を純水中で洗浄し、正極活物質粒子表面の過剰リチウムを除去する方法が提案されている。また、上記のような正極活物質粒子への各種コーティングが有効であることが知られている。
【0018】
一方で、全固体リチウムイオン電池においても、前述のような正極活物質粒子と硫化物系固体電解質間の界面抵抗が増大する問題が顕在化している。この界面抵抗低減にも、正極活物質粒子への酸化物固体電解質(アルカリ複合酸化物)によるコーティングが有効であることが知られている。
【0019】
このように、活物質粒子への表面コーティングは有効であるが、例えば、転動流動装置を用いる方法等、従来の湿式のコーティング方法では、コーティング膜厚や膜質の制御が困難で、高価な装置、複雑なプロセスが必要とされるため高コストである。このため、活物質(正極活物質、負極活物質)としての酸化物粒子の酸化物固体電解質(アルカリ複合酸化物)によるコーティングをより簡便でかつ低コストな工程で行う製造方法が望まれていた。
【0020】
本発明は、蓄電池の各種特性向上を可能とする蓄電池活物質用等の酸化物粒子を製造するに当たり、気相法という極めて簡便な方法で行える表面処理された酸化物粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子を、揮発性の酸性化合物を含む気体と接触させ、上記アルカリ性化合物と上記酸性化合物の気相を介した反応による中和生成物を形成し、表面の一部または全部に上記中和生成物を有する酸化物粒子を得ることにより、高性能な表面処理された酸化物粒子を安価に製造することができることを見出したものである。
【0022】
すなわち、本発明の第1の発明は、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子を、揮発性の酸性化合物を含む気体と接触させ、前記アルカリ性化合物と前記酸性化合物との気相を介した反応による中和生成物を形成し、前記粒子表面の一部または全部に上記中和生成物を有する酸化物粒子を得る、表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、
前記アルカリ性化合物が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)を含有する化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であり、
前記揮発性の酸性化合物が、ホウ素(B)、リン(P)、ケイ素(Si)を含有する化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であり、
前記酸化物粒子が、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、チタンの群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属を含み、かつ、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の群から選ばれるいずれか一種以上のアルカリ元素を含む、アルカリ複合酸化物であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0023】
本発明の第2の発明は、第1の発明における揮発性の酸性化合物が、ホウ素(B)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するホウ素(B)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下である表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0024】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明における揮発性の酸性化合物が、リン(P)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するリン(P)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下である表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0025】
本発明の第4の発明は、第1〜第3の発明における揮発性の酸性化合物が、ケイ素(Si)を含有し、前記表面処理された酸化物粒子に対するケイ素(Si)の含有量が0.05質量%以上0.30質量%以下である表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0026】
本発明の第5の発明は、第1〜第4の発明における粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子が、粒子表面の一部または全部がアルカリ成分で被覆された酸化物粒子であり、かつ該アルカリ成分がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の水酸化物、炭酸塩、酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0027】
本発明の第6の発明は、第5の発明におけるアルカリ成分が、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、酸化リチウム(LiO)の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0028】
本発明の第7の発明は、第1の発明におけるアルカリ性化合物が、前記アルカリ複合酸化物において、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上のアルカリ酸化物が化学量論組成よりも過剰に含有されたアルカリ複合酸化物であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0029】
本発明の第8の発明は、第1〜第7の発明における揮発性の酸性化合物が、沸点が300℃以下のホウ酸化合物、リン酸化合物、亜リン酸化合物、ケイ酸化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0030】
本発明の第9の発明は、第8の発明における揮発性の酸性化合物が、沸点が250℃以下のアルキルホウ酸、アルキルリン酸、アルキル亜リン酸、アルキルケイ酸の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0031】
本発明の第10の発明は、第1〜第9の発明における中和生成物を形成した後、100℃以上の加熱処理を行うことを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0032】
本発明の第11の発明は、第1〜第10の発明における中和生成物が、リチウムホウ素酸化物、リチウムリン酸化物、リチウムケイ素酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0033】
本発明の第12の発明は、第1〜第11の発明における前記アルカリ複合酸化物が、LiMO、LiMPO、LiMSiO(M:マンガン、コバルト、ニッケル、鉄の群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属)、LiYaMn2−a(Y:コバルト、ニッケル;0≦a≦1)、LiMnO−LiMO(M:マンガン、コバルト、ニッケルの群から選ばれるいずれか一種以上の遷移金属)、LiTi12の群から選ばれるいずれか一種以上を主成分としていることを特徴とする表面処理された酸化物粒子の製造方法である。
【0034】
本発明の第13の発明は、第1〜第12の発明における酸化物粒子の製造方法で得られる酸化物粒子であって、1次粒子で構成された2次粒子からなる酸化物粒子において、2次粒子の表面、及び、2次粒子内部における1次粒子表面であって該1次粒子同士の間の開空孔(オープンポア)側に露出する面に上記中和生成物が形成されていることを特徴とする酸化物粒子である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の表面処理された酸化物粒子の製造方法によれば、揮発性の酸性化合物を含む気体を、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子に接触させる気相法を用いているため、酸化物粒子の表面に中和生成物を簡便に形成でき、高性能な表面処理された酸化物粒子を安価に製造できる。
【0036】
本発明に係る表面処理された酸化物粒子は、気相法という製造方法により、極めて簡便に緻密な表面処理層が形成されており、例えば、酸化物粒子表面のアルカリ中和による電解液系二次電池の活物質層形成用ペースト(活物質ペースト)のゲル化抑制や、硫化物系全固体二次電池の活物質粒子/硫化物系固体電解質の界面抵抗低減が可能となるため、電解液系二次電池や全固体二次電池の(正極、負極)活物質層に好適であり、二次電池の低コスト化や特性向上に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】電解液系リチウムイオン電池の構造の一例を示す模式図である。
図2】全固体リチウムイオン電池の構造の一例を示す模式図である。
図3】酸化物粒子であって、(a)1次粒子が塊状に集合して構成された2次粒子を示す模式図であり、(b)液相法(湿式法)によりコーティング層が形成された、1次粒子が塊状に集合して構成された酸化物粒子(2次粒子)を示す模式図であり、(c)本発明に係る、気相法により表面処理層が形成された、1次粒子が塊状に集合して構成された表面処理された酸化物粒子(2次粒子)を示す模式図である。
図4】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法の一例を示す模式図である。
図5】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法の別の一例を示す模式図である。
図6】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、雰囲気ガスを反応容器内に供給しながら行う一例を示す模式図である。
図7】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、雰囲気ガスを反応容器内で循環しながら行う一例を示す模式図である。
図8】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、酸化物粒子を撹拌・流動させながら行う一例を示す模式図である。
図9】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、酸化物粒子を撹拌・流動させながら行う別の一例を示す模式図である。
図10】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、酸化物粒子を撹拌・流動させ、雰囲気ガスを反応容器内で循環しながら行う一例を示す模式図である。
図11】本発明に係る揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理された酸化物粒子の製造方法であって、酸化物粒子を撹拌・流動させ、雰囲気ガスを反応容器内で循環しながら行う別の一例を示す模式図である。
図12】本発明の実施例3に係る、気相法により表面処理層が形成された、1次粒子が塊状に集合して構成された表面処理された酸化物粒子(2次粒子)の走査電子顕微鏡像(SEM像)(上図)、及び、同視野においてエネルギー分散型X線分析(EDS分析)による表面処理層中のリン(P)の分布(下図)を示す図である。
図13】本発明の実施例5に係る、気相法により表面処理層が形成された、1次粒子が塊状に集合して構成された表面処理された酸化物粒子(2次粒子)の走査電子顕微鏡像(SEM像)(上図)、及び、同視野においてエネルギー分散型X線分析(EDS分析)による表面処理層中のシリコン(Si)の分布(下図)を示す図である。
図14】実施例8、実施例11、実施例13及び比較例2の耐湿性評価(表面処理された酸化物粒子(リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)を温度30℃/湿度70%の恒湿恒温槽内に保持した場合の質量変化率)を示す図である。
図15】実施例8、実施例11、実施例13及び比較例2の放電容量維持率(%)を示す図である。
図16】実施例14、実施例15及び比較例3の交流インピーダンス法によるCole−Coleプロットである。
図17】実施例16〜19及び比較例3の交流インピーダンス法によるCole−Coleプロットである。
図18】実施例20、実施例21及び比較例3の交流インピーダンス法によるCole−Coleプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の表面処理された酸化物粒子の製造方法では、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子を揮発性の酸性化合物を含む気体に接触させる気相法により表面処理することで、酸化物粒子の表面に緻密な中和生成物を簡便に形成しており、高性能な表面処理された酸化物粒子を安価に製造することができる。
【0039】
そして、この表面処理された酸化物粒子は、例えば、酸化物粒子表面のアルカリ中和による電解液系二次電池の活物質ペーストのゲル化抑制や、硫化物系全固体二次電池の活物質粒子/硫化物系固体電解質の界面抵抗低減を可能とするため、電解液系二次電池や全固体二次電池の(正極、負極)活物質層に好適である。
【0040】
[粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子]
先ず、本発明で用いる、表面処理される前の酸化物粒子について説明する。本発明で用いる酸化物粒子は、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子である。酸化物粒子としては、大別すると正極活物質用の酸化物粒子、負極活物質用の酸化物粒子が挙げられ、それらについて以下具体的に説明する。
【0041】
(a)正極活物質用の酸化物粒子
正極活物質は、例えば、リチウムイオン電池用途では、リチウムイオンを離脱、吸着させ易く、多くのリチウムイオンを離脱、吸蔵させることが可能な物質であればよく、リチウム−コバルト酸化物(LiCoO[コバルト酸リチウム]、LiCo等)(LCOと呼ばれる。)、リチウム−ニッケル酸化物(LiNiO[ニッケル酸リチウム]、LiNi等)(LNOと呼ばれる。)、リチウム−マンガン酸化物(LiMnO[マンガン酸リチウム]、LiMn、LiMn等)(LMOと呼ばれる。)、リチウム−マンガン−コバルト酸化物(LiMnCoO、LiMnCoO等)、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト酸化物(Li(Ni−Mn−Co)O、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)(NMCまたはNCMと呼ばれる。)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li(Ni−Co−Al)O、LiNi0.8Co0.15Al0.05等)(NCAと呼ばれる。)、リチウム−マンガン−ニッケル酸化物(Li(Mn3/2Ni1/2)O等)、固溶体系(過剰系)マンガン含有リチウム複合酸化物(例えば、LiMnO−LiMO[M:Ni、Mn、Co等])、リチウム−チタン酸化物(LiTi12、LiTi等)(LTOと呼ばれる。)、その他遷移金属を含むリチウム酸化物(LiCuO、LiCuO、LiVO、LiV、LiCrO、LiFeO、LiTiO、LiScO、LiYO、LiMnCrO、LiNiVO、LiCoVO等)、各種遷移金属を含むリチウムリン酸塩(LiFePO[リン酸鉄リチウム](LFPと呼ばれる。)、LiCuPO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiNiPOF、LiCoPOF、LiMnPOF、LiFePOF、LiVOPO、Li(PO等)、各種遷移金属を含むリチウムケイ酸塩(LiMnSiO、LiFeSiO、LiCoSiO、LiNiSiO等)、各種遷移金属の硫化物(TiS、MoS、FeS、FeS、CuS、Ni)、各種遷移金属の酸化物(Bi、BiPb、CuO、V、V13、Nb等)等を使用することができる。また、これらを混合して用いてもよい。
【0042】
また、例えば、ナトリウムイオン電池用途では、ナトリウムイオンを離脱、吸着させ易く、多くのナトリウムイオンを離脱、吸蔵させることが可能な物質であればよく、ナトリウム−鉄酸化物(NaxFeO;2/3≦X≦1)、ナトリウム−ニッケル−マンガン酸化物(Nax(Ni−Mn)O;2/3≦X≦1、Na0.67Ni0.5Mn0.5、NaNi0.5Mn0.5等)、ナトリウム−鉄−マンガン−ニッケル酸化物(Na(Fe−Mn−Ni)O、NaFe0.4Mn0.3Ni0.3等)、各種遷移金属を含むナトリウムリン酸塩(NaFePO、NaFeP、Na(PO[M:Mn、Co、Ni]等)等を使用することができる。また、これらを混合して用いてもよい。
【0043】
ここで、正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の化合物の充放電電位を比較して貴な電位のものを正極活物質に、卑な電位のものを負極活物質に用いればよい。
【0044】
上記多くの正極活物質の中では、リチウムイオン電池用途では、層状系材料としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li(Ni−Co−Al)O等)、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、スピネル系材料としてのリチウム−マンガン酸化物(LiMn)、オリビン系材料としてのリン酸鉄リチウム(LiFePO)等が好適であり、一般的に用いられている。さらに、高エネルギー化を目指して開発が進められている、高電圧(5V領域)で充放電を行うスピネル系材料としてのリチウム−マンガン−ニッケル酸化物(Li(Mn3/2Ni1/2)O等)や、高容量を有する層状系材料としての固溶体系(「過剰系」とも呼ばれる)マンガン含有リチウム複合酸化物(例えば、LiMnO−LiMO[M:Ni、Mn、Co等])等も好適に用いることができる。
【0045】
(b)負極活物質用の酸化物粒子
上述のように、負極活物と正極活物には明確な区別はなく、負極活物質を形成する物質は、例えばリチウムイオン電池用途では、リチウムイオンを吸着、離脱させ易く、多くのリチウムイオンを吸蔵、離脱させることが可能な物質であればよく、例えば、リチウム−チタン酸化物(LiTi12、LiTi等)、リチウム−チタン−ニオブ酸化物(Li(Ti2Nb)O12等)、各種金属酸化物(Nb、V、NiO、In、SnO、ZnO、TiO等)等を使用することができる。また、これらを混合して用いてもよい。上記多くの負極活物質の酸化物粒子中で、チタン酸リチウム(LiTi12)等が広く用いられている。
【0046】
また、例えば、ナトリウムイオン電池用途では、ナトリウムイオンを吸着、離脱させ易く、多くのナトリウムイオンを吸蔵、離脱させることが可能な物質であればよく、例えば、ナトリウム−チタン酸化物(NaTi等)、金属酸化物(SnO等)等を使用することができる。
【0047】
本発明においては、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子として、(1)粒子表面の一部または全部がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の水酸化物、炭酸塩、酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上(例えば、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、酸化リチウム(LiO)等)で被覆された酸化物粒子、を用いてもよいし、また、(2)リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)の酸化物の群から選ばれるいずれか一種以上のアルカリ酸化物が化学量論組成よりも過剰に含有されたアルカリ複合酸化物(例えば、前述のLNO、NCA、NMC等の正極活物質でリチウムを過剰に含む酸化物や固溶体系(過剰系)のマンガン含有リチウム複合酸化物等)の酸化物粒子、を用いることができる。後者(2)であれば、前者(1)のようにアルカリ性被覆等が施こされてなくても、酸化物粒子表面におけるアルカリ性化合物の存在量が自然と高まり、酸化物粒子表面における中和反応が促進されて、より均一な表面処理が可能となるため、好ましい。
【0048】
なお、上記アルカリ酸化物が化学量論組成よりも過剰に含有されたアルカリ複合酸化物として、例えばリチウム複合酸化物を用いた場合には、酸化物粒子表面の過剰のリチウム酸化物(アルカリ性化合物)は、粒子の取扱いの過程で、大気中の水分と(極僅かではあっても)触れることが予想され、その一部または全部が水酸化リチウム(アルカリ性化合物)になっている可能性(LiO0.5+0.5HO→LiOH)が十分考えられる。本発明におけるアルカリ性化合物とは、もちろん上記のような水酸化物も含まれる。
【0049】
[揮発性の酸性化合物]
次に揮発性の酸化物について説明する。本発明で用いる揮発性の酸性化合物は、その蒸気が気相を介して、上記酸化物粒子表面に存在するアルカリ性化合物と反応する化合物であって、ホウ素(B)、リン(P)、ケイ素(Si)を含有する化合物の群から選ばれるいずれか一種以上である必要がある。好ましくは、沸点が300℃以下のホウ酸化合物、リン酸化合物、亜リン酸化合物、ケイ酸化合物の群から選ばれるいずれか一種以上であり、さらに好ましくは、沸点が250℃以下のアルキルホウ酸、アルキルリン酸、アルキル亜リン酸、アルキルケイ酸の群から選ばれるいずれか一種以上である。
【0050】
より具体的には、ホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃、引火点:−8℃、第4類第1石油類、非水溶性)、ホウ酸トリエチル(トリエトキシボラン)[B(OC](沸点:120℃、融点:−84.8℃、引火点:11.1℃、第4類第2石油類、非水溶性)、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃、引火点:28℃、第4類第2石油類、非水溶性)、リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィンオキシド)[P(O)(OCH](沸点:197℃、融点:−46℃、引火点:94℃、第4類第3石油類、水溶性)、リン酸トリエチル(トリエトキシフォスフィンオキシド)[P(O)(OC](沸点:215℃、融点:−56℃、引火点:116℃、第4類第3石油類、水溶性)、リン酸ジメチル(ジメチルフォスフェイト)[P(O)(OH)(OCH](沸点:174℃、引火点:50℃、第4類第3石油類、水溶性)、オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシラン)[Si(OCH](沸点:122℃、融点:−4℃、引火点:29℃、毒物)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃、引火点:54℃、第4類第2石油類、危険等級III、非水溶性)、トリメトキシメチルシラン[Si(CH)(OCH](沸点:103℃、融点:−70℃、引火点:13℃、第4類第1石油類、危険等級II、非水溶性)、ジメトキシジメチルシラン[Si(CH(OCH](沸点:81℃、融点:−80℃、引火点:−5℃、第4類第1石油類、危険等級II、非水溶性)、等が挙げられ、中でも、揮発性が比較的高く(沸点が比較的低く)、かつ危険性・毒性の低い、ホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)、ホウ酸トリエチル(トリエトキシボラン)、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)等が好ましい。
【0051】
また、揮発性の酸性化合物が、ホウ素(B)を含有し、表面処理された酸化物粒子に対するホウ素(B)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下であることにより、例えば、電解液系二次電池の活物質層形成用ペーストに適用した場合に、電池特性を損なうことなく正極活物質層形成用ペーストの安定性向上(ゲル化抑制)が可能となるため、好ましい。
【0052】
また、揮発性の酸性化合物が、リン(P)を含有し、表面処理された酸化物粒子に対するリン(P)の含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下であることにより、例えば、電解液系二次電池の活物質層形成用ペーストに適用した場合に、電池特性を損なうことなく正極活物質層形成用ペーストの安定性向上(ゲル化抑制)が可能となるため、好ましい。
【0053】
また、揮発性の酸性化合物が、ケイ素(Si)を含有し、表面処理された酸化物粒子に対するケイ素(Si)の含有量が0.05質量%以上0.30質量%以下であることにより、例えば、電解液系二次電池の活物質層形成用ペーストに適用した場合に、電池特性を損なうことなく正極活物質層形成用ペーストの安定性向上(ゲル化抑制)が可能となるため、好ましい。
【0054】
なお、本発明で用いる揮発性の酸性化合物は、その蒸気が気相を介して、上記酸化物粒子表面に存在するアルカリ性化合物と反応する化合物であれば、特に上記化合物に限定されず、さらに言えば、ホウ素(B)、リン(P)、ケイ素(Si)以外の元素を含有する酸性化合物であってもかまわない。
【0055】
[表面処理された酸化物粒子の製造方法]
本発明の表面処理された酸化物粒子の製造方法について詳細に説明する。本発明の表面処理された酸化物粒子の製造方法では、前述の粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子を、上記揮発性の酸性化合物の蒸気に接触させ、該揮発性の酸性化合物の蒸気を粒子表面のアルカリ性化合物の部分と選択的あるいは優先的に反応させる気相法により緻密な中和生成物を形成させている。
【0056】
上記のように、本発明の製造方法は気相法を用いており、液中で粒子表面にコーティング層を形成する液相法(湿式法)と異なり、酸化物粒子表面に、例えば、厚さ3nmから100nm程度のナノレベルの均一な表面処理層を形成できる。
【0057】
これによって、酸化物粒子が、図3(a)のように、1次粒子10(例えば、平均粒径:0.1〜1μm)が塊状に集合して構成された2次粒子11(例えば、平均粒径:数〜数十μm)からなり、1次粒子10同士の間に開空孔(オープンポア)12がある場合には、図3(c)のように、その開空孔(オープンポア)12を介して1次粒子10表面にもナノ(nm)レベルの均一な表面処理層13bを形成できるという特徴もある。
【0058】
一方、液相法(湿式法)による表面処理では、通常、図3(b)のように、主に2次粒子11表面にコーティング層13aを形成できるだけであり、特に1次粒子10が小さい(例えば、粒径:ナノ(nm)〜サブミクロンオーダー)場合には、開空孔(オープンポア)12内の1次粒子10表面には表面処理層13bはほとんど形成できない。
【0059】
なお、前述した乾式コーティングの一つである転動流動層コーティングを用いた場合は、液相法(湿式法)による表面処理と異なり、ナノ(nm)レベルの均一な表面処理層(コーティング層)は形成できるものの、主に2次粒子11表面近傍で析出反応(コーティング層形成)が起きるため、本発明の気相法の表面処理のように、開空孔(オープンポア)12内の1次粒子10表面の隅々まで表面処理層13bを形成できない。
【0060】
上述した、酸化物粒子の2次粒子11の表面だけでなく、1次粒子10同士の間の開空孔(オープンポア)12の表面、より具体的には、2次粒子11内部における1次粒子10の表面であって、1次粒子10同士の間の開空孔(オープンポア)12側に露出する面にもナノ(nm)レベルの均一な表面処理層13bを形成できるという本発明の特徴は、電解液系リチウムイオン電池において、電解液と正極活物質材料の全て接触面(2次粒子11表面、及び開空孔(オープンポア)12表面)が表面処理層で保護されるため、充放電による正極活物質材料の劣化をより抑制できるという利点に繋がる。一方、液相法(湿式法)による表面処理等では開空孔(オープンポア)12の表面は表面処理層で保護されず、その部分の正極活物質は電解液と接触して充放電により劣化が進むため、正極活物質材料の劣化抑制が不十分となる。上記本発明の特徴は、正極活物質材料成分の電解液への溶出抑制という観点からも同様に有効であり、例えば、電解液に溶出し易いマンガン(Mn)含有の正極活物質粒子を用いた電解液系リチウムイオン電池の場合、本発明の気相法による表面処理は、液相法(湿式法)による表面処理等に比べて、電解液へのマンガン溶出を大幅に抑制することができる。
【0061】
本発明の表面処理された酸化物粒子の製造方法は、粒子表面の一部または全部にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子を、揮発性の酸性化合物を含む気体と接触させて、酸化物粒子の表面に中和生成物を形成させる(a)表面処理工程、必要に応じ、上記中和生成物を表面に有する酸化物粒子を加熱する(b)加熱処理工程を経て行われる。
【0062】
(a)表面処理工程
表面処理工程は、例えば、図4に示すように、反応容器14内に、酸化物粒子の収納容器15、揮発性の酸性化合物の収納容器17を設置し、それぞれの収納容器内に、酸化物粒子16、揮発性の酸性化合物18を所定量入れて、雰囲気ガス中で放置して行う。
【0063】
反応容器14は、雰囲気ガスや揮発性の酸性化合物蒸気が外部に漏れないように密閉性の高い容器が必要であり、その材質にはポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック、アルミナ、石英、ガラス等のセラミック、ステンレス(SUS304、SUS316等)、チタン等の金属等が挙げられるが、揮発性の酸性化合物蒸気と反応しなければよく特にこれらに制約されるものではない。
【0064】
酸化物粒子の収納容器15、揮発性の酸性化合物の収納容器17は、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子や揮発性の酸性化合物18と反応せず、耐久性を有する必要があり、その材質にはポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン等のプラスチック、アルミナ、石英、ガラス等のセラミック、ステンレス、チタン等の金属等が挙げられるが、用いるアルカリ性化合物を有する酸化物粒子や揮発性の酸性化合物18の種類に応じて適宜選定することができる。
【0065】
雰囲気ガスは、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子や揮発性の酸性化合物18と反応しないことが必要であり、例えば、空気、窒素、アルゴン等が挙げられる。なお、炭酸ガス(CO)や水分(HO)は、一般的にアルカリ性化合物を有する酸化物粒子や揮発性の酸性化合物18と反応し易いため、雰囲気ガスから十分に除去しておくことが望ましく、例えば、乾燥空気(露点温度:−30℃以下、好ましくは−50℃以下)、さらに脱炭酸ガス処理した乾燥空気、高純度窒素、高純度アルゴン等が好ましい。揮発性の酸性化合物18の種類によっては、空気等との蒸気の混合割合によっては爆発の危険性が生じたり、あるいは、酸素により酸化劣化する場合があり、このような場合は、空気でなく、窒素、アルゴンを用いる必要があるが、いずれにせよ、用いるアルカリ性化合物を有する酸化物粒子や揮発性の酸性化合物18の種類に応じて適宜選定すればよい。
【0066】
反応容器14内では、揮発性の酸性化合物の収納容器17から揮発性の酸性化合物18の蒸気が雰囲気ガス中に拡散し、一方で、雰囲気ガス中に拡散した揮発性の酸性化合物18の蒸気は、酸化物粒子の収納容器15内の酸化物粒子16の表面でアルカリ性化合物と反応して消費されるため、反応時間の経過と共に揮発性の酸性化合物の収納容器17内から酸化物粒子の収納容器15内に、揮発性の酸性化合物18が物質移動する。
【0067】
上記揮発性の酸性化合物18の蒸気とアルカリ性化合物を有する酸化物粒子との反応は、例えば、アルカリ性化合物が水酸化リチウム(LiOH)の場合は、揮発性の酸性化合物18に、ホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)を用いたとして、それぞれ下記化1〜3に示す反応式(1)〜(3)が考えられる。
【0068】
【化1】
【0069】
【化2】
【0070】
【化3】
【0071】
なお、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は、雰囲気中に酸素が含まれていると容易に酸化されて、揮発性の低いリン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィンオキシド)になってしまうため、揮発性の酸性化合物18として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)を用いる場合の表面処理工程では、雰囲気ガスは酸素を含有しない窒素やアルゴンにする必要がある。そして、化2の表面処理反応(反応式(2−1))が終了した後、例えば、空気等の酸素を含有する雰囲気ガスを導入し、中和生成物としての亜リン酸リチウム(LiPO)を酸化すれば、リン酸リチウム(LiPO)(反応式(2−2))とすることができる。
【0072】
【化4】
【0073】
なお、上記揮発性の酸性化合物18の蒸気とアルカリ性化合物を有する酸化物粒子との反応は、例えば、アルカリ性化合物が水酸化リチウム(LiOH)に炭酸リチウム(LiCO)が混合している場合は、揮発性の酸性化合物18に、水酸基(−OH)を有する化合物を用いることが望ましい。例えば、リン酸ジメチル(ジメチルフォスフェイト)を用いた場合には、記化4に示す反応式(4)が考えられる。
【0074】
【化5】
【0075】
反応式(5)において、反応系の中に、反応で生じる二酸化炭素(CO)だけを吸収する二酸化炭素吸収剤を設置して、上記反応式(5)を促進させることもできる。
【0076】
ここで、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子の揮発性の酸性化合物18による表面処理量(または表面処理層の厚み)の制御は、例えば次のようにして行うことができる。まず、所定量のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子16を酸化物粒子の収納容器15内に入れ、上記アルカリ性化合物を有する酸化物粒子に対し表面処理したいだけの量の揮発性の酸性化合物18を揮発性の酸性化合物の収納容器17に入れた後、雰囲気ガスを反応容器14内に充填し、そのまま放置し、揮発性の酸性化合物の収納容器17内の揮発性の酸性化合物18が完全に消失したところで反応を終了させる。
【0077】
この方法により、反応容器14内に投入した揮発性の酸性化合物18は、基本的に全てアルカリ性化合物を有する酸化物粒子の表面処理に消費されるため、用いたアルカリ性化合物を有する酸化物粒子と揮発性の酸性化合物18の配合割合(アルカリ性化合物を有する酸化物粒子:揮発性の酸性化合物18[質量比])がそのまま表面処理後の酸化物粒子のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子と揮発性の酸性化合物18の配合割合となる。
【0078】
上記とは別の表面処理量(または表面処理層の厚み)の制御方法として、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子に対し表面処理したい量よりも過剰の揮発性の酸性化合物18を揮発性の酸性化合物の収納容器17に入れた後、雰囲気ガスを反応容器14内に充填し、そのまま放置し、所定時間経過したところで、揮発性の酸性化合物が一部残留したまま、揮発性の酸性化合物の収納容器17を反応容器14内から取り出して、反応を終了させてもよい。揮発性の酸性化合物の収納容器17内の残量から、揮発性の酸性化合物18の揮発量を求めることが可能である。
【0079】
この方法でも、反応容器14内から揮発した揮発性の酸性化合物18は、基本的に全てアルカリ性化合物を有する酸化物粒子の表面処理に消費されるため、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子と反応容器14内から揮発した揮発性の酸性化合物18の割合(アルカリ性化合物を有する酸化物粒子:揮発性の酸性化合物18[質量比])がそのまま表面処理後の酸化物粒子のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子と揮発性の酸性化合物18の配合割合となる。
【0080】
本発明の気相法での表面処理では、前述の通り、開空孔(オープンポア)12内の1次粒子10の表面にも表面処理層(コーティング層)が形成されるため、所定の表面処理層(コーティング層)を得るための、上記アルカリ性化合物を有する酸化物粒子と揮発性の酸性化合物18の配合割合は、用いる酸化物粒子の比表面積(BET値[単位:m/g])に基づいて算出することが望ましい。
【0081】
なお、表面処理工程の実施においては、図5に示すように、反応容器14内の揮発性の酸性化合物18蒸気を含有する雰囲気ガスをファン19等を用いて強制的に対流させるとよい。雰囲気ガスの対流により、揮発性の酸性化合物18蒸気が、揮発性の酸性化合物の収納容器17内からアルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子16)までより短時間で物質移動するため、表面処理時間を大幅に短縮できるからである。
【0082】
また、図6に示すように、反応容器14内に、揮発性の酸性化合物18蒸気を含有する雰囲気ガスを所定の流量で供給して、酸化物粒子の収納容器15内のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子16)の表面処理を行うことも可能である。
【0083】
また、図7に示すように、図6において反応容器14内に供給する揮発性の酸性化合物18の蒸気を含有する雰囲気ガスをファン19等を用いて循環させて、酸化物粒子の収納容器15内のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子16の表面処理を行うこともできる。
【0084】
また、図8〜11に示すように、酸化物粒子の収納容器15内のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子16)は、撹拌・流動されていることが好ましい。アルカリ性化合物を有する酸化物粒子の流動により、揮発性の酸性化合物18の蒸気と接触して反応できる酸化物粒子表面の実質的な面積が著しく増加すると同時に、接触機会が均一化されるため、反応速度を大幅に高めることが可能となると同時に、反応で生じる中和生成物を酸化物粒子に対して均一に形成できるからである。すなわち、上記酸化物粒子の流動は、揮発性の酸性化合物18による酸化物粒子の表面処理速度を高めると同時に、酸化物粒子内、及び酸化物粒子間での表面処理のバラツキを抑制できる効果を有している。
【0085】
なお、図11では、図10に示した雰囲気ガスを循環させて表面処理を行う方法において、揮発性の酸性化合物18を揮発させる揮発容器21を、表面処理を行う反応容器14と独立して雰囲気ガスの循環経路内に設置している。また、酸化物粒子の収納容器15を反応容器14と兼用しており、反応容器14をゆっくり回転させて、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子16)の撹拌・流動を行っている。この方式だと、例えば、揮発性の酸性化合物の収納容器17や揮発容器21にガラス等の透明部材を用いたり、視認のための透明窓等を設置することで、揮発性の酸性化合物18の揮発量(すなわち表面処理量)を容易に把握できる利点がある。
【0086】
さらに、雰囲気ガスの循環経路内の任意の場所に加熱ヒーター等を設置して、雰囲気ガスを加熱・昇温すると、揮発容器21、揮発性の酸性化合物18、反応容器14、アルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子16)を昇温できるため、加熱した状態での表面処理を容易に行なうことが可能となる。加熱した状態での表面処理では、それ程揮発性が高くない揮発性の酸性化合物18も表面処理に適用できるため、活用できる揮発性の酸性化合物18の自由度が広がる利点がある(例えば、ホウ酸化合物、リン酸化合物、亜リン酸化合物、ケイ酸化合物の主要元素である、ホウ素、リン、ケイ素以外のチタン、タングステン、ジルコニウム、アルミニウム等の元素を含む化合物を揮発性の酸性化合物として適用できるようになる。)。
【0087】
(b)加熱処理工程
次の加熱処理工程は、必要に応じ、100〜500℃、好ましくは、150〜300℃で行えばよい。加熱処理工程を施すことで、酸化物粒子の表面に形成した中和生成物の結晶性を高めたり、有機成分や微量水分等の不純物を中和生成物から除去できる場合がある。
【0088】
以上の方法で得られた表面処理された酸化物粒子は、従来公知の(正極、負極)活物質層形成用ペーストや固体電解質層形成用塗布液として調整される。ペーストや塗布液の塗布は、クリーンルーム等のように清浄でかつ温度や湿度が管理された雰囲気下で行うことが好ましい。その温度は室温(25℃程度)、湿度は40〜60%RHが一般的である。
【0089】
以上のように、本発明に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法は、気相法を用いた簡便な方法で酸化物粒子の表面(2次粒子の表面、及び1次粒子同士の間の開空孔(オープンポア)の表面)に緻密で均一なナノオーダーの表面処理層を形成可能なため、高性能な酸化物粒子を安価に製造できる。また、この方法で得られる酸化物粒子は、電解液系二次電池の活物質層形成用ペースト(活物質ペースト)のゲル化抑制や、硫化物系全固体二次電池の活物質粒子/硫化物系固体電解質の界面抵抗低減に有効であり、電解液系二次電池や全固体二次電池の(正極、負極)活物質層に適用されて、二次電池の低コスト化や特性向上に大きく貢献することができるものである。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
[予備試験]
本発明のアルカリ性化合物を有する酸化物粒子(酸化物粒子)の揮発性の酸性化合物を用いた気相法による表面処理に先駆けて、まず、アルカリ性化合物単体粒子と揮発性の酸性化合物との気相法での反応性を調査した。
【0092】
(1)予備試験1
前述の図5において、酸化物粒子16に代えて、アルカリ性化合物単体粒子として水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子1.224gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃)1.01gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして乾燥空気(露点温度:−60℃)を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で12時間放置し、水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と、ホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)の蒸気を気相を介して反応させて、中和生成物の粒子を得た。なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記12時間の放置で完全に消失しており、全て水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し中和生成物の粒子の合成に消費されたものと考えられる。
【0093】
さらに上記中和生成物の粒子を、乾燥空気(露点温度:−60℃)中で500℃で30分間の加熱処理したところ、白色のリチウムほう素複合酸化物粒子が得られ、これをX線回折測定で分析したところ、主成分がホウ酸三リチウム(LiBO)であることが確認された。
【0094】
以上から、揮発性の酸性化合物14としてのホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は、気相法により、アルカリ性化合物単体粒子としての水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し、中和生成物の粒子を合成することが確認できた。
【0095】
(2)予備試験2
前述の図5において、酸化物粒子16に代えて、アルカリ性化合物単体粒子として水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子0.707gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)0.566gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして高純度窒素ガス(露点温度:−80℃)を充填して亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)の酸化を防止しながら、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で12時間放置し、水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)の蒸気を気相を介して反応させて、中和生成物の粒子を得た。なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記12時間の放置で完全に消失しており、全て水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し中和生成物の粒子の合成に消費されたものと考えられる。
【0096】
さらに上記中和生成物の粒子を、乾燥空気(露点温度:−60℃)中で500℃で30分間の加熱処理(亜リン酸塩は酸化されてリン酸塩に変化)したところ、白色のリチウムリン複合酸化物粒子が得られ、これをX線回折測定で分析したところ、主成分がLiPOであることが確認された。
【0097】
以上から、揮発性の酸性化合物14としての亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は、気相法により、アルカリ性化合物単体粒子としての水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し、中和生成物の粒子を合成することが確認できた。
【0098】
(3)予備試験3
前述の図5において、酸化物粒子16に代えて、アルカリ性化合物単体粒子として水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子1.513gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)[Si(OC]1.05gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして乾燥空気(露点温度:−60℃)を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で12時間放置し、水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)の蒸気を気相を介して反応させて、中和生成物の粒子を得た。なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記12時間の放置で完全に消失しており、全て水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し中和生成物の粒子の合成に消費されたものと考えられる。
【0099】
さらに上記中和生成物の粒子を、乾燥空気(露点温度:−60℃)中で500℃で30分間の加熱処理したところ、白色のリチウムケイ素複合酸化物粒子が得られ、これをX線回折測定で分析したところ、主成分がLiSiOであることが確認された。
【0100】
以上から、揮発性の酸性化合物14としてのオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は、気相法により、アルカリ性化合物単体粒子としての水酸化リチウム(LiOH・HO)粒子と反応し、中和生成物の粒子を合成することが確認できた。
【0101】
<実施例1>
[酸化物粒子]
酸化物粒子として、リチウムイオン電池の正極活物質に用いられるリチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li1+xNi0.82Co0.15Al0.03;x=0.05)からなる酸化物粒子を用いた。上記組成は、化学量論組成(LiNi0.82Co0.15Al0.03)に対し0.05倍(モル比)のリチウム酸化物(LiO0.5)を過剰に含有しているため、上記酸化物粒子を、以下、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子と呼ぶこととする。過剰に含有されたリチウム酸化物はNCA粒子に固溶していると思われ、したがって、上記リチウム酸化物過剰含有NCA粒子の表面には過剰のリチウム酸化物(アルカリ性化合物)が均一に分布して存在していると推測される。なお、上記酸化物粒子は、粒径0.3〜1μmの1次粒子で構成された粒径5〜15μmの2次粒子であり、1次粒子同士の間に10nm〜数100nmの開空孔(オープンポア)を有している。
【0102】
[酸化物粒子の表面処理]
図5に示すように、酸化物粒子16として上記リチウム酸化物過剰含有NCA粒子134.9gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃)2.28gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして乾燥空気(露点温度:−60℃)を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で12時間放置し、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子の表面に存在するリチウム酸化物(または、水酸化リチウム)(アルカリ性化合物)と、ホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)の蒸気を気相を介して反応させて、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面に中和生成物を形成させた後、さらに乾燥空気(露点温度:−60℃)中で150℃で30分間の加熱処理を施すという、実施例1に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例1に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0103】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記12時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0104】
上記表面が上記中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を走査顕微鏡(SEM)の像観察したところ、粒子表面(2次粒子表面、及び、開空孔(オープンポア)表面)に均一な被覆層が形成されていることが確認され、被覆層の厚みは約17nmと見積もられた。
【0105】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で4日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0106】
なお、上記正極活物質層形成用ペーストは、正極活物質としての表面処理された酸化物粒子、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)、結合材(バインダー)としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)を、酸化物粒子:AB:PVDF:NMP=45:2.5:2.5:50(質量比)となるように混合し、分散処理して作製している(PVDFが溶解したNMPに、酸化物粒子とABが分散した状態)。
【0107】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ196mAh/g(レート:0.05C)であった。
【0108】
<実施例2>
実施例1で、150℃で30分間に代えて、300℃で30分間の加熱処理を施す以外は、実施例1と同様に行う、実施例2に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例2に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0109】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で7日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0110】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ194mAh/gであった。
【0111】
<実施例3>
[酸化物粒子の表面処理]
図5に示すように、酸化物粒子16として実施例1のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子49.3gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)0.96gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして窒素(露点温度:−60℃以下)を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で24時間放置し、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子の表面に存在するリチウム酸化物(または、水酸化リチウム・アルカリ性化合物)と、亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)の蒸気を気相を介して反応させて、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面に中和生成物を形成させた後、雰囲気を窒素から乾燥空気(露点温度:−60℃)に替え、150℃で30分間の加熱処理を施すという、実施例3に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例3に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0112】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0113】
上記表面が上記中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を走査顕微鏡(SEM)の像観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS分析)したところ、粒子表面(2次粒子表面、及び開空孔(オープンポア)表面)に均一な被覆層が形成されていることが確認され、被覆層の平均厚みは約23nmと見積もられた。(図12において、図12下図からはEDS分析によって表面処理層のリン(P)の均一な分布が確認された。図中、濃淡の濃部がリンの分布である。)
【0114】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で4日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0115】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ195mAh/gであった。
【0116】
<実施例4>
実施例3で、150℃で30分間に代えて、300℃で30分間の加熱処理を施す以外は、実施例3と同様に行う、実施例4に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例4に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0117】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で7日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0118】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ196mAh/gであった。
【0119】
<実施例5>
[酸化物粒子の表面処理]
図4に示すように、酸化物粒子16として実施例1のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子119.6gを酸化物粒子の収納容器11(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃)2.56gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして乾燥空気(露点温度:−60℃)を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で48時間放置し、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子の表面に存在するリチウム酸化物(または、水酸化リチウム)(アルカリ性化合物)と、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)の蒸気を気相を介して反応させて、リチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面に中和生成物を形成させた後、さらに乾燥空気(露点温度:−60℃)中で150℃で30分間の加熱処理を施すという、実施例5に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例5に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0120】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記48時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0121】
上記表面が上記中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を走査顕微鏡(SEM)の像観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS分析)したところ、粒子表面(2次粒子表面、及び開空孔(オープンポア)表面)に均一な被覆層が形成されていることが確認され、被覆層の平均厚みは約15nmと見積もられた。(図13において、図13下図からはEDS分析によって表面処理層のシリコン(Si)の均一な分布が確認された。図中、濃淡の濃部がシリコンの分布である。)
【0122】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で4日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0123】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ194mAh/gであった。
【0124】
<実施例6>
実施例5で、150℃で30分間に代えて、300℃で30分間の加熱処理を施す以外は、実施例5と同様に行う、実施例6に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例6に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0125】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で7日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0126】
また、上記正極活物質層形成用ペーストを塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ195mAh/gであった。
【0127】
<実施例7>
[酸化物粒子]
酸化物粒子として、リチウムイオン電池の正極活物質に用いられるリチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物(Li1+xNi0.82Co0.15Al0.03;x=0.03)からなる酸化物粒子を用いた。上記組成は、化学量論組成(LiNi0.82Co0.15Al0.03)に対し0.03倍(モル比)のリチウム酸化物(LiO0.5)を過剰に含有している。
【0128】
[酸化物粒子の表面処理]
図5に示すように、酸化物粒子16としてLi1.03Ni0.82Co0.15Al0.03(平均粒径11.7μm、BET比表面積0.3m/g)207.15gを入れた収納容器(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃))0.40gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして窒素を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で24時間放置し、実施例7に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例7に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.33質量%、B:0.02質量%、Ni:49質量%)を得た。
【0129】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0130】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で9日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0131】
なお、上記正極活物質層形成用ペーストは、正極活物質としての表面処理された酸化物粒子、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)、結合材(バインダー)としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶剤としてのN−メチルピロリドン(NMP)、ペーストのゲル化促進剤としての純水(HO)を、酸化物粒子:AB:PVDF:NMP:HO=44.1:2.3:19.4:32.2:2.0(質量比)となるように混合し、分散処理して作製している(PVDFが溶解したNMPに、酸化物粒子とアセチレンブラック(AB)が分散した状態)。
【0132】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)、結合材(バインダー)としてのポリテトラフッ化エチレン(PTFE)を、酸化物粒子:AB:PTFE=70:20:10(質量比)となるように混合・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ193mAh/g(充電カットオフ電圧:4.3V、放電カットオフ電圧:3.0V、レート:0.05C)であった。
【0133】
<実施例8>
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を200.43gとし、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃))を0.58gとした以外は実施例7と同様に行う、実施例8に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例8に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.33質量%、B:0.03質量%、Ni:49.0質量%)を得た。
【0134】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0135】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で13日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0136】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))作製し、正極容量を測定したところ189mAh/gであった。
【0137】
<実施例9>
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を200.62gとし、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃))を1.36gとした以外は実施例7と同様に行う、実施例9に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例9に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.29質量%、B:0.07質量%、Ni:48.8質量%)を得た。
【0138】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0139】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で6日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0140】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、正極容量を測定したところ188mAh/gであった。
【0141】
<実施例10>
[酸化物粒子の表面処理]
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を202.02gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃))を0.41gとし、窒素中で室温(25℃)で24時間放置した後、次いで、雰囲気を窒素から乾燥空気(露点温度:−60℃)に替え、室温で1時間の放置した以外は実施例7と同様に行う、実施例10に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例10に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.3質量%、P:0.05質量%、Ni:48.9質量%)を得た。
【0142】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0143】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で12日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0144】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))作製し、正極容量を測定したところ190mAh/gであった。
【0145】
<実施例11>
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を201.84gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃))を0.65gとした以外は実施例10と同様に行う、実施例11に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例11に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.3質量%、P:0.08質量%、Ni:48.8質量%)を得た。
【0146】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0147】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で7日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0148】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、正極容量を測定したところ197mAh/gであった。
【0149】
<実施例12>
[酸化物粒子の表面処理]
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を200.26gとし、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃))を2.09gとした以外は実施例7と同様に行う、実施例12に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例12に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.26質量%、Si:0.14質量%、Ni:48.7質量%)を得た。
【0150】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0151】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で8日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0152】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、正極容量を測定したところ195mAh/gであった。
【0153】
<実施例13>
実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を200.39gとし、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃))を3.63gとした以外は実施例7と同様に行う、実施例13に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例13に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.25質量%、Si:0.24質量%、Ni:48.6質量%)を得た。
【0154】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0155】
[特性評価]
次に作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で12日間放置してもゲル化(プリン化)せず、流動性を保っていることが確認された。
【0156】
また、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、正極容量を測定したところ192mAh/gであった。
【0157】
<実施例14>
[酸化物粒子]
酸化物粒子として、リチウムイオン電池の正極活物質に用いられるリチウム−ニッケル−マンガン−コバルト酸化物(Li1+xNi0.378Mn0.298Co0.319Zr0.005;x=0.07)からなる酸化物粒子を用いた。上記組成は、化学量論組成(LiNi0.378Mn0.298Co0.319Zr0.005)に対し0.07倍(モル比)のリチウム酸化物(LiO0.5)を過剰に含有しているため、上記酸化物粒子を、以下、リチウム酸化物過剰含有NMC粒子と呼ぶこととする。過剰に含有されたリチウム酸化物はNMC粒子に固溶していると思われ、したがって、上記リチウム酸化物過剰含有NMC粒子の表面には過剰のリチウム酸化物(アルカリ性化合物)が均一に分布して存在していると推測される。なお、上記酸化物粒子は、粒径0.3〜1μmの1次粒子で構成された粒径5〜15μmの2次粒子であり、1次粒子同士の間に10〜数100nmの開空孔(オープンポア)を有している。
【0158】
[酸化物粒子の表面処理]
図5に示すように、酸化物粒子16として(Li1+xNi0.378Mn0.298Co0.319Zr0.005;x=0.07)(平均粒径6.5μm、BET比表面積0.9m/g)201.37gを入れた収納容器(ガラスシャーレ)内に入れ、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃))0.78gを揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内に入れ、それらを反応容器10(ガラス製デシケータ)内に設置し、雰囲気ガスとして窒素を充填した後、ファン15により雰囲気ガスを反応容器10内で循環させて室温(25℃)で24時間放置し、実施例14に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例14に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.55質量%、B:0.04質量%、Ni:22.3質量%)を得た。
【0159】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0160】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図16に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.5Ωであった。さらに、正極容量を測定したところ165mAh/g(充電カットオフ電圧:4.3V、放電カットオフ電圧:3.0V、レート:0.05C)であった。
【0161】
<実施例15>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を202.94gとし、揮発性の酸性化合物14としてホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン[B(OCH](沸点:68℃、融点:−34℃))を1.18gとした以外は実施例14と同様に行う、実施例15に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例15に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.56質量%、B:0.06質量%、Ni:22.4質量%)を得た。
【0162】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0163】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図16に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.8Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ162mAh/gであった。
【0164】
<実施例16>
[酸化物粒子の表面処理]
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.15gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)0.32gとし、窒素中で室温(25℃)で24時間放置した後、次いで、雰囲気を窒素から乾燥空気(露点温度:−60℃)に替え、室温で1時間の放置した以外は実施例14と同様に行う、実施例16に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例16に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.55質量%、P:0.04質量%、Ni:22.3質量%)を得た。
【0165】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0166】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図17に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.1Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ160mAh/gであった。
【0167】
<実施例17>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.86gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)を0.41gとした以外は実施例16と同様に行う、実施例17に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例17に係る表面処理された酸化物粒子(Li:7.54質量%、P:0.05質量%、Ni:22.3質量%)を得た。
【0168】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0169】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図17に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.1Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ159mAh/gであった。
【0170】
<実施例18>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.21gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)を0.48gとした以外は実施例16と同様に行う、実施例18に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例18に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.54質量%、P:0.06質量%、Ni:22.3質量%)を得た。
【0171】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0172】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図17に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.1Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ160mAh/gであった。
【0173】
<実施例19>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.08gとし、揮発性の酸性化合物14として亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)[P(OCH](沸点:111℃、融点:−75℃)を0.57gとした以外は実施例16と同様に行う、実施例19に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例19に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.57質量%、P:0.07質量%、Ni:22.6質量%)を得た。
【0174】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内の亜リン酸トリメチル(トリメトキシフォスフィン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0175】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図17に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は3.1Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ161mAh/gであった。
【0176】
<実施例20>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.70gとし、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃))を1.20gとした以外は実施例14と同様に行う、実施例20に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例20に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.56質量%、Si:0.08質量%、Ni:22.4質量%)を得た。
【0177】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0178】
[特性評価]
次に、作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図18に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は4.2Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ160mAh/gであった。
【0179】
<実施例21>
実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を201.63gとし、揮発性の酸性化合物14としてオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)[Si(OC](沸点:165℃、融点:−82℃)を1.50gとした以外は実施例20と同様に行う、実施例21に係る表面処理された酸化物粒子の製造方法により、表面が上記中和生成物で被覆された実施例21に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.56質量%、Si:0.10質量%、Ni:22.4質量%)を得た。
【0180】
なお、揮発性の酸性化合物の収納容器13(ガラスシャーレ)内のオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)は上記24時間の放置で完全に消失しており、全てリチウム酸化物過剰含有NCA粒子表面の中和生成物の形成に消費されたものと考えられる。
【0181】
[特性評価]
次に、上作製した中和生成物で被覆された表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図18に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は4.5Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ160mAh/gであった。
【0182】
<比較例1>
実施例1で、酸化物粒子の表面処理を行わず、酸化物粒子16として実施例1のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子に、乾燥空気(露点温度:−60℃)中で150℃で30分間の加熱処理を施して、表面が中和生成物で被覆されていない比較例1に係る酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を得た。
【0183】
[特性評価]
次に作製した表面処理していない酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例1と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で8時間の放置後で既にゲル化(プリン化)して、流動性を失っていることが確認された。
【0184】
なお、上記正極活物質層形成用ペーストをゲル化(プリン化)する前に塗布・乾燥・プレス加圧して得られた正極活物質層を用いたコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))で、正極容量を測定したところ194mAh/g(レート:0.05C)であった。
【0185】
<比較例2>
実施例7で、酸化物粒子の表面処理を行わず、酸化物粒子16として実施例7のリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を、表面が中和生成物で被覆されていない比較例2に係る酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)(Li:7.40質量%、B:0.01質量%未満、Ni:49.0質量%)とした。
【0186】
[特性評価]
次に作製した表面処理していない酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様に正極活物質層形成用ペーストを作製したところ、室温で2日間の放置後で既にゲル化(プリン化)して、流動性を失っていることが確認された。
【0187】
なお、表面処理していない酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNCA粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、正極容量を測定したところ195mAh/gであった。
【0188】
<比較例3>
実施例14で、酸化物粒子の表面処理を行わず、酸化物粒子16として実施例14のリチウム酸化物過剰含有NMC粒子を、表面が中和生成物で被覆されていない比較例3に係る酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)(Li:7.58質量%、B:0.01質量%未満、P:0.01質量%未満、Si:0.02質量%未満、Ni:22.4質量%)とした。
【0189】
[特性評価]
次に、表面処理していない酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としてのNMC粒子)を用いて、実施例7と同様にコインセル(正極活物質/電解液(セパレーター)/負極活物質(Li箔))を作製し、交流インピーダンス法により正極抵抗を測定したところ、図16〜18に示すCole−Coleプロットが得られた。また、Cole−Coleプロットにおいて正極抵抗を示す高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値は4.8Ωであった。さらに、作製したコインセルの正極容量を測定したところ163mAh/gであった。
【0190】
実施例1〜13と比較例1、2を比較すると、いずれも酸化物粒子としてリチウム酸化物過剰含有NCA粒子を用いており、同様の正極容量(194〜197mAh/g(レート:0.05C))を有しているが、各実施例の気相法で表面処理を行った場合に、作製した正極活物質層形成用ペーストが室温で4日間以上放置してもゲル化(プリン化)せず流動性を保っているのに対し、比較例1の気相法で表面処理を行わなかった場合は、室温で8時間の放置後で既にゲル化(プリン化)して流動性を失っていることが、比較例2については、2日の放置後で既にゲル化(プリン化)して流動性を失っていることが確認された。この理由としては、本発明の表面処理された酸化物粒子では、酸化物粒子から正極活物質層形成用ペースト中へのアルカリ成分の溶出が表面処理によって抑制され、ペースト中の結合材(バインダー)としてのPVDFがアルカリ成分により重合化しにくくなって、ゲル化を抑制できていると推定される。
【0191】
[実施例8、実施例11、実施例13及び比較例2の耐湿性評価]
実施例8、実施例11、実施例13に係る表面処理された酸化物粒子(被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)、及び比較例2に係る表面処理されていない酸化物粒子(未被覆のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子)について、耐湿性を評価した。図14に、酸化物粒子(リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)2gをガラス瓶に入れ、温度30℃/湿度70%の恒湿恒温槽に保持した場合の質量変化率を示す。
【0192】
各実施例(実施例8、実施例11、実施例13)に係る表面処理された酸化物粒子(被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)は、いずれも比較例2に係る表面処理されていない酸化物粒子(未被覆のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子)よりも質量変化率が小さくなっており、表面処理(被覆処理)により耐湿性が向上することがわかる。
【0193】
[実施例8、実施例11、実施例13及び比較例2の電池のサイクル特性評価]
実施例8、実施例11、実施例13に係る表面処理された酸化物粒子(被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)、及び比較例2に係る表面処理されていない酸化物粒子(未被覆のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子)を用いて、コインセルを作製し、サイクル特性を評価した。正極はリチウム−ニッケル複合酸化物粒子、アセチレンブラック、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)を70:20:10の質量比で混合、プレス、120℃加熱真空乾燥して作製し、負極にグラファイト、電解液には1MのLiPFを支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液を用いた。充放電のCレートを1Cとして、カットオフ電圧4.3Vまで充電した後、カットオフ電圧3.0Vまで放電させる充放電を200サイクル行った時の放電容量維持率を測定した。サイクル回数における放電容量維持率の変化を図15に示す。本測定結果によると、実施例8では92.0%、実施例11では91.4%、実施例13では91.2%、比較例2では91.3%であった。
【0194】
各実施例(実施例8、実施例11、実施例13)に係る表面処理された酸化物粒子(被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子)を正極に用いたコインセルは、比較例2に係る表面処理されていない酸化物粒子(未被覆のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子)を正極に用いたコインセルと同等の放電容量維持率が得られており、表面処理(被覆処理)してもサイクル特性に影響がないことがわかる。
【0195】
また、図15〜18に示す各実施例(実施例14〜21)に係る表面処理された酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としての三元系粒子)を正極としたときのCole−Coleプロットは、比較例3に係る表面処理されていない酸化物粒子(リチウムイオン電池の正極活物質としての三元系粒子)を正極としたときのCole−Coleプロットよりも正極抵抗に相当する高抵抗側の半円が小さくなっており、界面抵抗の低下を示している。また、正極抵抗に相当する高抵抗側の半円のボトム位置から読み取った正極抵抗値(Ω)も低くなっている。このことから、表面処理された酸化物粒子は界面抵抗低減が可能となるため、電解液系二次電池や全固体二次電池の活物質層に好適であり、特性向上に大きく寄与するものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明による表面処理された酸化物粒子の製造方法は、気相法を用いた簡便な方法で緻密かつ均一なナノオーダーの表面処理層が得られるため、高性能な酸化物粒子を安価に製造できる。さらに、この方法で得られた酸化物粒子は、電解液系二次電池の活物質層形成用ペースト(活物質ペースト)のゲル化抑制や、硫化物系全固体二次電池の活物質粒子/硫化物系固体電解質の界面抵抗低減に有効なため、電解液系二次電池や全固体二次電池の(正極、負極)活物質層に適用された場合に、二次電池の低コスト化や特性向上が期待できる。
【符号の説明】
【0197】
1 正極集電体
2 正極活物質層
3 セパレータ
4 電解液
5 負極活物質層
6 負極集電体
7 電極リード(取出し電極)
8 容器
9 固体電解質層
10 酸化物粒子の1次粒子
11 1次粒子が塊状に集合して構成された酸化物粒子(2次粒子)
12 酸化物粒子の1次粒子間の開空孔(オープンポア)
13a コーティング層
13b 表面処理層
14 反応容器
15 酸化物粒子の収納容器
16 酸化物粒子
17 揮発性の酸性化合物の収納容器
18 揮発性の酸性化合物
19 ファン(雰囲気ガス循環用または、雰囲気ガス送風用)
20 撹拌羽根(酸化物粒子の撹拌用)
21 揮発容器
図1
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