特許第5826105号(P5826105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

特許5826105表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品
<>
  • 特許5826105-表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品 図000004
  • 特許5826105-表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品 図000005
  • 特許5826105-表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826105
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20151112BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20151112BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20151112BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20151112BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20151112BHJP
   B32B 7/06 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
   C09J133/00
   C09J11/04
   B32B7/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-105232(P2012-105232)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-235024(P2013-235024A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】春日 充
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佳子
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
【審査官】 渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195666(JP,A)
【文献】 特開2003−292874(JP,A)
【文献】 特開2009−172792(JP,A)
【文献】 特開2010−229377(JP,A)
【文献】 特開2004−287199(JP,A)
【文献】 特開2004−299344(JP,A)
【文献】 特開2009−275128(JP,A)
【文献】 特開昭55−003460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/10 〜 1/18
B32B 7/06
C09J 7/02
C09J 11/04
C09J 133/00
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材フィルムの片面に粘着剤層が形成され、該粘着剤層の上に剥離フィルムが貼合された表面保護フィルムにおいて、前記粘着剤層が、ポリエーテル変性シリコーンを前記粘着剤層の内部に含まず、前記剥離フィルムが、ポリエステル樹脂フィルムの片面にジメチルポリシロキサンを含む剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物であるポリエーテル変性シリコーンとを含む剥離剤層が積層され、前記剥離剤層の前記ポリエーテル変性シリコーンが前記粘着剤層の表面に付与されてなり、前記粘着剤層は、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が共重合又は混合された(メタ)アクリル系ポリマーからなり、且つ、帯電防止剤を含むことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマー又はポリマーであり、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートからなる群から選ばれた(メタ)アクリル系モノマー、又はその重合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記剥離フィルムを剥離した後の、前記粘着剤層の表面抵抗率が、1×1013〔Ω/□〕未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の、表面保護フィルムが貼合されてなる光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルムなどの光学部品(以下、光学用フィルムと称する場合もある。)の表面に貼合される、表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、被着体への汚染が少ない表面保護フィルム、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルムを用いたディスプレイなどの光学製品を製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層が、微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0003】
近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶表示画面を制御するためのドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV〜−0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
このため、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献5,6には、表面保護フィルムの粘着剤層の中に、ポリエーテル変性シリコーンを混合することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131957号公報
【特許文献2】特開2005−330464号公報
【特許文献3】特開2005−314476号公報
【特許文献4】特開2006−152235号公報
【特許文献5】特開2009−275128号公報
【特許文献6】特許第4537450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜4では、粘着剤層の内部に帯電防止剤が添加されているが、粘着剤層の厚みが厚くなる程、また、経過時間が経つにつれて、表面保護フィルムの貼合された被着体に対して、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなる。また、LR(Low Reflective)偏光板やAG(Anti Glare)−LR偏光板などの光学用フィルムに使用する表面保護フィルムでは、光学用フィルムの表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理されているため、このような光学用フィルムに使用する表面保護フィルムを、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が高くなる。
【0007】
また、特許文献5,6に記載の、粘着剤層の中にポリエーテル変性シリコーンを混合した場合には、表面保護フィルムの粘着力を微調整することが難しい。また、粘着剤層内に、ポリエーテル変性シリコーンを混ぜているため、粘着剤組成物を基材フィルムの上に塗工・乾燥する条件が変化すると、表面保護フィルムの形成された粘着剤層の表面の特性が、微妙に変化する。さらに、光学用フィルムの表面を保護するという観点から、粘着剤層の厚さを極端に薄くすることができない。そのため、粘着剤層の厚みに応じて、粘着剤層内に混ぜるポリエーテル変性シリコーンの添加量を増やす必要があり、結果的に、被着体表面を汚染し易くなり、経時での粘着力や被着体の汚染性が変化する。
【0008】
このため、LR偏光板やAG−LR偏光板などの光学用フィルムに使用する表面保護フィルムであって、光学用フィルムの表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある場合でも、表面保護フィルムを光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑え、且つ、被着体の汚染が少ない方法が求められている。
【0009】
本発明者らは、この課題について鋭意検討を行なった。発生する剥離帯電圧は、重ね合った物質の帯電列が離れているほど大きくなると考えられることから、光学用フィルムの表面の材質と帯電列が近い物質を粘着剤層の表面に形成することを試みた。
その結果、ポリエーテル変性シリコーンを粘着剤組成物に混ぜた粘着剤層を形成するのではなく、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に、適量のポリエーテル変性シリコーンを付与することにより、表面保護フィルムを光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、被着体への汚染が少ない表面保護フィルム、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することを課題とする。
また、LR偏光板やAG−LR偏光板などの、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学用フィルムに対しても、剥離帯電圧を低く抑えられる表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の表面保護フィルムは、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に適量の20℃において液体のシリコーン系化合物を付与することにより、表面保護フィルムを光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は、透明な基材フィルムの片面に粘着剤層が形成され、該粘着剤層の上に剥離フィルムが貼合された表面保護フィルムにおいて、前記粘着剤層が、ポリエーテル変性シリコーンを前記粘着剤層の内部に含まず、前記剥離フィルムが、ポリエステル樹脂フィルムの片面にジメチルポリシロキサンを含む剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物であるポリエーテル変性シリコーンとを含む剥離剤層が積層され、前記剥離剤層の前記ポリエーテル変性シリコーンが前記粘着剤層の表面に付与されてなり、前記粘着剤層は、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が共重合又は混合された(メタ)アクリル系ポリマーからなり、且つ、帯電防止剤を含むことを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
【0015】
また、前記帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0016】
また、前記ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマー又はポリマーであり、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートからなる群から選ばれた(メタ)アクリル系モノマー、又はその重合物であることが好ましい。
【0017】
また、前記剥離フィルムを剥離した後の、前記粘着剤層の表面抵抗率が、1×1013〔Ω/□〕未満であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記の表面保護フィルムが貼合されてなる光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表面保護フィルムは、LR偏光板やAG−LR偏光板などの表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学フィルムであっても、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、且つ、被着体への汚染が少ない表面保護フィルム、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供できる。
このことにより、光学用フィルムの表面を確実に保護して、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
図2】本発明の表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す概念的な断面図である。
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に剥離剤層4が形成された剥離フィルム5が、貼合されている。
【0022】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有するプラスチックフィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いるプラスチックフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0023】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が共重合又は混合された(メタ)アクリル系ポリマーからなり、必要に応じて硬化剤や粘着付与剤を添加した粘着剤である。共重合と混合を併用することもできる。
【0024】
(メタ)アクリル系ポリマーとしては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーを共重合したポリマーを挙げることができる。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーに共重合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどが挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有するモノマーを、前記(メタ)アクリル系ポリマーの主モノマーや官能性モノマーと共重合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する共重合体からなる粘着剤を得ることができる。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマーに混合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマーの重合物がより好ましく、例えば、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどの重合物が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有する化合物を、前記(メタ)アクリル系ポリマーと混合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が添加された粘着剤を得ることができる。
【0027】
粘着剤層2に添加する硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
【0028】
粘着剤層2には、必要に応じて、帯電防止剤を混合しても良い。帯電防止剤としては、(メタ)アクリル系ポリマーに対して分散または相溶性の良いものが好ましい。使用可能な帯電防止剤の具体例としては、界面活性剤系、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、透明性や(メタ)アクリル系ポリマーに対する親和性などから、アルカリ金属塩が好ましい。
【0029】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩があげられ、具体的には、たとえば、Li、Na、Kよりなるカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSOよりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーなどのベースポリマーに対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類やベースポリマーとの相溶性の度合いにより異なるが、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0031】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5〜40μm程度の厚みが好ましく、10〜30μm程度の厚みがより好ましい。表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度が、0.03〜0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、表面保護フィルム10から剥離フィルム5を剥がす時、及び被着体から表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。
【0032】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される剥離フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物との混合物を用いた剥離剤層4が形成されている。樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0033】
また、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS−776A、KS−847T、KS−779H、KS−837、KS−778、KS−830(信越化学工業(株)製)、SRX−211、SRX−345、SRX−357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC−300B、LTC−350G、LTC−310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX−290、SYLOFF−23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR−6501、TPR−6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62−7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62−7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0034】
また、樹脂フィルム3の片面には、ジメチルポリシロキサンを主成分とした剥離剤層4が形成されている。その剥離剤層4には、20℃において液体のシリコーン系化合物7が含有されている。20℃において液体のシリコーン系化合物としては、変性シリコーン化合物が好ましく、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーンなどが挙げられる。本発明では、粘着剤層の表面における帯電防止性能を向上させるために、ジメチルポリシロキサンを主成分とした剥離剤層4の中に相溶している状態の、20℃において液体のシリコーン系化合物7が用いられる。本発明の用途には、変性シリコーン化合物の中でも、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリエーテル鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどで構成され、例えば、側鎖に用いるポリエチレンオキサイドの分子量やポリシロキサン鎖との重量比などを選択することにより、必要とする疎水性などの物性が調整される。
また、ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとして市販されている製品には、例えば、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−642(信越化学工業(株)製)、SH8400、SH8700、SF8410(東レダウコーニング(株)製)、TSF−4440、TSF−4441、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4450(モメンティブパーフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK−300、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330(ビックケミー社製)などが挙げられる。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、ポリエーテル変性シリコーン等の20℃において液体のシリコーン系化合物との混合方法には、特に限定はない。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に、20℃において液体のシリコーン系化合物を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに20℃において液体のシリコーン系化合物と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、シロキサンを主成分とする剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後20℃において液体のシリコーン系化合物を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤を添加しても良い。
【0035】
本発明に係わる表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、剥離フィルム5を貼合する方法、剥離フィルム5の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0036】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0037】
また、同様に、樹脂フィルム3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0038】
上記の構成を有する本発明に係わる表面保護フィルム10は、被着体である光学用フィルムから剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることが好ましい。さらに、表面電位が、+0.5kV〜−0.5kVであることがより好ましく、表面電位が、+0.1kV〜−0.1kVであることが特に好ましい。この表面電位は、粘着剤層に含有される、帯電防止剤の種類や含有量、及び剥離フィルムの剥離剤層に含有されるポリエーテル変性シリコーンの種類、添加量等を加減することによって調整できる。
【0039】
図2は、本発明の表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す概念的な断面図である。
図1に示した表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がすことにより、剥離フィルム5に形成されている剥離剤層4に含まれる、20℃において液体のシリコーン系化合物7の一部が、表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に、付着する。そのため、図2においては、表面保護フィルムの粘着剤層2の表面に付着した、20℃において液体のシリコーン系化合物7を、斑点で模式的に示している。
本発明に係わる表面保護フィルムでは、図2に示した剥離フィルムを剥がした状態の表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に付着した、20℃において液体のシリコーン系化合物7が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の剥離帯電圧を低く抑えることができる。
【0040】
図3は、本発明の光学部品の実施例を示した断面図である。
本発明の表面保護フィルム10から、剥離フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、図3には、本発明の表面保護フィルム10が貼合された光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなども挙げられる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある低反射処理偏光板(LR偏光板)やアンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)などの光学フィルムの、防汚染処理した面に貼合される表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
本発明の光学部品によれば、表面保護フィルム10を、被着体である光学部品(光学フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
(粘着剤組成物の作製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却機を備えた4つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート90重量部、メトキシポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル10重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3重量部、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチルニトリル0.2重量部、酢酸エチル154重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら内容物を撹拌しながら65℃に昇温した。さらに、65℃前後の温度で6時間重合反応を行い、ポリオキシアルキレン基を含有するアクリルポリマーからなる、実施例1の粘着剤組成物(固形分40%)を作製した。
【0042】
(表面保護フィルムの作製)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)3重量部、ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SH8400)0.1重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒97重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.03重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層用の塗料を、乾燥後の厚さが0.1μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離フィルムを得た。一方、実施例1の粘着剤組成物の100重量部に対して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製。品名:コロネートHX)1.2重量部を添加、混合した塗付液を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合して、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0043】
(実施例2)
実施例1の粘着剤組成物の100重量部と、帯電防止剤として過塩素酸リチウムの0.1重量部とを撹拌混合して、帯電防止剤を含有する、実施例2の粘着剤組成物を作製した。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、実施例2の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0044】
(実施例3)
実施例1の粘着剤組成物の100重量部と、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドの1.5重量部とを撹拌混合して、帯電防止剤を有する、実施例3の粘着剤組成物を作製した。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、実施例3の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0045】
(実施例4)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−211)3重量部、ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業(株)製、品名:KF352A)0.1重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒97重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.03重量部を撹拌・混合し、実施例4の剥離剤層を形成するための塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例4の剥離剤層用の塗料を、乾燥後の厚さが0.1μmになるようにメイヤバーにて塗布した後、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例4の剥離フィルムを得た。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、実施例2の粘着剤組成物を用いたこと、及び、実施例1の剥離フィルムの代わりに、実施例4の剥離フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1の粘着剤組成物のメトキシポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステルの代わりに、ブチルアクリレートを用いたこと以外は、実施例1の粘着剤組成物と同様にして、比較例1の粘着剤組成物(固形分40%)を作製した。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、比較例1の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0047】
(比較例2)
比較例1の粘着剤組成物の100重量部と、帯電防止剤として過塩素酸リチウムの0.1重量部とを撹拌混合して、帯電防止剤を含有する、比較例2の粘着剤組成物を作製した。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、比較例2の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0048】
(比較例3)
実施例1の剥離フィルムの作製時に、ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製SH8400)を添加しないこと以外は、実施例1の剥離フィルムと同様にして、比較例3の剥離フィルムを得た。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、実施例2の粘着剤組成物を用いたこと、及び、実施例1の剥離フィルムの代わりに、比較例3の剥離フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0049】
(比較例4)
実施例1の粘着剤組成物の100重量部と、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドの1.5重量部と、ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SH8400)の0.1重量部とを撹拌混合して、比較例4の粘着剤組成物を得た。
実施例1の粘着剤組成物の代わりに、比較例4の粘着剤組成物を用いたこと、及び、実施例1の剥離フィルムの代わりに、比較例3の剥離フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の表面保護フィルムを得た。
【0050】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
〈表面保護フィルムの粘着力の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
【0051】
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0052】
〈表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を(×)とした。
【0053】
〈粘着剤の表面抵抗率の測定方法〉
表面保護フィルムから剥離フィルムを剥離した後、粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を、抵抗率計(三菱化学(株)製、品名:ハイレスターUP)を用いて、印加電圧100V×測定時間30秒の条件にて測定した。
【0054】
得られた実施例1〜4及び比較例1〜4の表面保護フィルムについて、測定した測定結果を表1及び表2に示した。表1及び表2には、各表面保護フィルムに用いた粘着剤組成物及び剥離剤の概要も示した。「2EHA」は、2−エチルヘキシルアクリレートを、「#400G」は、メトキシポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステルを、「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを、「BA」は、ブチルアクリレートを、「LiClO4」は、過塩素酸リチウムを、「Li(CFSON」は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを、それぞれ意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び表2に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1〜4の表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、被着体の表面汚染がなく、かつ、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低い。
一方、比較例1および比較例2の表面保護フィルムは、粘着剤層にポリオキシアルキレン基を含有する化合物が含まれないため、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高く、剥離した後の、被着体汚染が多くなった。
また、比較例3の表面保護フィルムでは、剥離フィルムの剥離剤層にポリエーテル変性シリコーンを添加しないで、剥離フィルムとしてジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤のみを使用している。しかし、比較例3では、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高いため、ドライバーICの破損や液晶分子の配向が損失するなどの不具合を起こす恐れがある。
また、比較例4の表面保護フィルムでは、剥離フィルムの剥離剤層にポリエーテル変性シリコーンを添加しないで、粘着剤層にポリエーテル変性シリコーンを添加している。しかし、比較例4では、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧は低いものの、被着体汚染が多くなった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の表面保護フィルムは、例えば、偏光板や位相差板、レンズフィルムなどの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等の表面に貼合して表面を保護するために用いることができる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してあるLR偏光板やAG−LR偏光板などの光学フィルムの表面保護フィルムとして使用する場合には、被着体から剥離する時に発生する静電気の量を低くでき、かつ、剥離帯電防止性能の経時変化および被着体汚染が少なく、光学部品の表面を確実に保護し、生産工程の歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…樹脂フィルム、4…剥離剤層、5…剥離フィルム、7…20℃において液体のシリコーン系化合物、8…被着体(光学部品)、10…表面保護フィルム、11…剥離フィルムを剥がした表面保護フィルム、20…表面保護フィルムを貼合した光学部品。
図1
図2
図3