(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5826306
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】半導体ウエハの同時両面研磨用の研磨パッドを調節する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20151112BHJP
B24B 7/17 20060101ALI20151112BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20151112BHJP
B24B 37/07 20120101ALI20151112BHJP
B24B 37/11 20120101ALI20151112BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
B24B53/00 J
B24B7/17 Z
B24B37/04 U
B24B37/04 D
B24B37/00 C
H01L21/304 621A
H01L21/304 622M
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-20179(P2014-20179)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-156006(P2014-156006A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】10 2013 202 488.6
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・シュタウトハマー
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0028547(US,A1)
【文献】
特開2011−224699(JP,A)
【文献】
特開平06−226628(JP,A)
【文献】
特開平09−193002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 7/17
B24B 37/00 −37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方研磨板(2)と、上方研磨板(1)と、キャリアディスク(8)のための回転装置(6、7)とを有し、前記下方研磨板(2)、前記上方研磨板(1)、および前記回転装置(6、7)が共線状に配置された軸(5)を中心に回転可能に搭載され、前記下方研磨板(2)が第1の研磨パッド(4)によって覆われ、前記上方研磨板(1)が第2の研磨パッド(3)によって覆われる両面研磨装置において、半導体ウエハの同時両面研磨用の研磨パッド(3、4)を調節する方法であって、外側歯(12)を有する少なくとも1つの調節ツール(11)および外側歯(15)を有する少なくとも1つのスペーサ(14)が、前記第1の研磨パッドと第2の研磨パッド(3、4)との間に形成された加工間隙において、前記回転装置(6、7)によって前記回転装置(6、7)の前記軸(5)を中心に旋回動作すると同時にそれら自体が回転し、前記少なくとも1つの調節ツール(11)がその相対動作によって前記2つの研磨パッド(3、4)のうちの少なくとも一方の材料を研削し、前記少なくとも1つの調節ツール(11)の厚さ(dD)が前記少なくとも1つのスペーサ(14)の厚さ(dS)と異なることで前記上方研磨板(1)が傾き、その傾きの方向と程度は、前記調節ツール(11)と前記少なくとも1つのスペーサ(14)間の厚さの差によって決定される、方法。
【請求項2】
前記調節される研磨パッドで覆われた前記研磨板は、前記調節時に回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの調節ツールの前記厚さ(dD)は、前記少なくとも1つのスペーサの前記厚さ(dS)に対して少なくとも0.1mm異なる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの調節ツール(11)の前記厚さ(dD)は、前記少なくとも1つのスペーサ(14)の前記厚さ(dS)よりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
互いに隣接して配置される少なくとも2つの調節ツール(11)が使用される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
互いに隣接して配置される少なくとも2つのスペーサ(14)が使用される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記調節の後、前記研磨パッド(3、4)の前記内側縁部における前記加工間隙の前記幅が前記研磨パッド(3、4)の前記外側縁部における前記加工間隙の前記幅と異なる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記研磨パッド(3、4)の前記内側縁部における前記加工間隙の前記幅は、前記研磨パッド(3、4)の輪幅1メートルごとに少なくとも70μmだけ前記研磨パッド(3、4)の前記外側縁部における前記加工間隙の前記幅と異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記研磨パッド(3、4)の前記内側縁部における前記加工間隙の前記幅は、前記研磨パッド(3、4)の輪幅1メートルごとに少なくとも140μmだけ前記研磨パッド(3、4)の前記外側縁部における前記加工間隙の前記幅と異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記研磨パッド(3、4)の前記内側縁部における前記加工間隙の前記幅は、前記研磨パッド(3、4)の輪幅1メートルごとに最大で300μmだけ前記研磨パッド(3、4)の前記外側縁部における前記加工間隙の前記幅と異なる、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記研磨パッド(3、4)の前記内側縁部における前記加工間隙の前記幅は、前記研磨パッド(3、4)の前記外側縁部における前記加工間隙の前記幅より大きい、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の研磨パッドと前記第2の研磨パッド(3、4)との間に形成された前記加工間隙において前記下方研磨板および前記上方研磨板(2、1)の回転による少なくとも3つの半導体ウエハの同時両面研磨のための前記少なくとも1つの研磨パッドの前記調整の後に前記両面研磨装置が使用され、前記半導体ウエハの各々は、外側歯(9)が設けられた少なくとも3つのキャリアディスク(8)の1つの凹部(10)内において自由に移動可能であり、前記キャリアディスク(8)は、前記半導体ウエハが前記加工間隙においてサイクロイド軌道を描くように前記回転装置(6、7)によって回転させられる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドで覆われた2つの環状の研磨板とキャリアディスクのための回転装置とを有し、研磨板および回転装置が共線状に配置された軸を中心に回転可能に搭載された両面研磨装置において、半導体ウエハの同時両面研磨用の研磨パッドを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に単結晶シリコンからなる半導体ウエハは、電子部品を製造するための基本材として必要とされる。このような部品の製造者は、半導体ウエハが可能な限り平坦かつ平行平面である表面を有することを求めている。この要件を満たすために、面の平坦性および平行平面性を向上させて粗度を減少させる一連の処理工程が半導体ウエハに施される。この処理の範囲において、通常は1つ以上の研磨工程が行われる。
【0003】
サスペンション(またはスラリーとも呼ばれる)の形態の研磨剤を用いて半導体ウエハの両方の表面(前面および後面)が同時に研磨される両面研磨(DSP)が特に適している。両面研磨時において、半導体ウエハは、さらなる半導体ウエハとともに下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の間隙に置かれる。この間隙は、加工間隙と呼ばれる。研磨パッドの各々は、対応する下方研磨板または上方研磨板を覆う。両面研磨時において、半導体ウエハは、半導体ウエハをガイドおよび保護するキャリアディスクの凹部に位置する。キャリアディスクは、外側が歯状のディスクであり、研磨装置の内側および外側の歯車もしくはピンギアの間に配置される。歯車もしくはピンギアは、以下では駆動ギアという。研磨処理時において、内側駆動ギアの回転または内側および外側駆動ギアの回転により、キャリアディスクはそれらの軸を中心に回転すると同時に、研磨装置の軸回りを旋回動作する。さらに、通常は研磨板もそれらの軸を中心に回転する。両面研磨に関しては、半導体ウエハの面の一点が対応する研磨パッド上でサイクロイド軌道を描くいわゆる遊星運動の特徴がこれによってもたらされる。
【0004】
半導体ウエハの両面研磨の1つの主な目的は、全体的および局所的な形状を向上させることにある。この場合、可能な限り平坦な半導体ウエハは、経済的な処理においてエッジロールオフのない状態で製造されることが意図される。これは、研磨処理における様々な処理パラメータの相互作用によって実現することができる。1つの重要なパラメータは、上方研磨パッドと下方研磨パッドとの間の研磨間隙である。これに関連し、研磨パッド表面の調節は、研磨処理のための重要な役割を果たす。調節時において、一方では研磨パッドの表面が手入れ(目直し)され、他方では研磨パッド表面を所望の形状(一般的には、可能な限り平坦な形状)とするために材料がわずかに研削される(形直し)。
【0005】
通常、この場合において研磨パッドは、研磨パッドに向けられた表面がたとえばダイヤモンドなどの研削粒子でコーティングされた調節ディスクを用いて処理が施される。調節ディスクは外側歯を有し、これによってキャリアディスクのように下方研磨パッド上に調節ディスクを置くことができ、外側歯は内側および外側駆動ギアと係合する。上方研磨板は調節ディスク上に置かれ、これによって調節ディスクが上方研磨パッドと下方研磨パッドとの間の加工間隙に位置することとなる。調節時において、研磨時と同様の運動が使用される。このため、調節ディスクは、調節処理時において、加工間隙内で遊星運動を伴って動き、上方研磨パッドもしくは下方研磨パッドまたは両方の研磨パッドが、一面もしくは両面を研削材でコーティングされた調節ディスクが使用されているか否かに応じて処理される。
【0006】
この標準的な方法を用いて、平行平面の加工間隙を実現することができる。さらに、研磨パッド表面上の凹凸を除去することができる。研磨された半導体ウエハの最適な形状は、可能な限り平行平面である加工間隙によって実現することができると推定されてきた。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0028547号A1は、凸面または凹面を有する調節ツールを使用することによって対応する凸面形状または凹面形状が得られる可能性について開示している。調節ツールは、研磨される半導体ウエハと同様に、キャリアディスクの凹部に置かれる。この方法により、研磨パッド表面の形状は、研磨された半導体ウエハの形状が向上するように調節することができる。たとえば、研磨された半導体ウエハにおける目立った両凹構成が凹面の研磨パッド表面(すなわち、研磨板の内側縁部および外側縁部において研磨間隙の幅が小さく、研磨板の径方向中心において間隙が大きい)によって防ぐことができると示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0028547号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、研磨された半導体ウエハの形状に関して増加する要求を満たすにはこの方法でさえ十分でないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、目的は研磨された半導体ウエハの形状をさらに向上させることにある。
目的は、環状の下方研磨板と、環状の上方研磨板と、キャリアディスクのための回転装置とを有し、下方研磨板、上方研磨板、および回転装置が共線状に配置された軸を中心に回転可能に搭載され、下方研磨板が第1の研磨パッドによって覆われ、上方研磨板が第2の研磨パッドによって覆われる両面研磨装置において、半導体ウエハの同時両面研磨用のの研磨パッドを調整する方法によって実現され、外側歯を有する少なくとも1つの調節ツールおよび外側歯を有する少なくとも1つのスペーサが、第1の研磨パッドと第2の研磨パッドとの間に形成された加工間隙において、回転装置によって回転装置の軸を中心に旋回動作すると同時にそれら自体が回転し、少なくとも1つの調節ツールがその相対動作によって2つの研磨パッドのうちの少なくとも一方の材料を研削し、少なくとも1つの調整ツールの厚さは、少なくとも1つのスペーサの厚さと異なる。
【0011】
本発明につながった研究では、外側縁部から内側縁部まで研磨間隙の幅を異ならせることによって、研磨された半導体ウエハの形状がさらに向上し得ることが示された。研磨された半導体ウエハの形状に対するこのサイズの影響は、以前は知られておらず、予測されていなかった。本発明に係る方法は、簡単な調節方法により、大きな費用をかけずに、径方向において異なる間隙幅を有する加工間隙を作り出すことを可能とする。
【0012】
本発明は、図面を参照して以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によって作り出された研磨間隙を有する両面研磨装置の縦断面を示す図である。
【
図2】本発明に係る調節処理時における両面研磨装置の縦断面を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る2つの調節ツールおよび1つのスペーサの可能な配置を伴う両面研磨装置の下方研磨板を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る2つの調節ツールおよび2つのスペーサの可能な配置を伴う両面研磨装置の下方研磨板を示す図である。
【
図5】本発明の他のさらなる実施形態に係る1つの調節ツールおよび2つのスペーサの可能な配置を伴う両面研磨装置の下方研磨板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る方法は、上記のように先行技術に係る両面研磨装置を準備するために使用される。方法が行われた後、半導体ウエハの両面研磨が先行技術に従って行われ得るが、径方向において異なる間隙幅を有する加工間隙内で行われ得る。
【0015】
半導体ウエハを研磨するための両面研磨装置およびその使用がまず以下に記載される。
上方研磨パッド3(
図1参照)は上方研磨板1に固定され、下方研磨パッド4は下方研磨板2に固定される。互いに向かい合う研磨パッドの表面の間には、加工間隙がある。加工間隙には、内側駆動ギア6および外側駆動ギア7と係合する歯9を有するキャリアディスク8がある。駆動ギア6、7は、歯車またはピンギアであり得る。2つの駆動ギア6、7は、ともにキャリアディスク8のための回転装置を形成する。すなわち、少なくとも1つの駆動ギアの回転、好ましくは両方の駆動ギアの回転により、キャリアディスク8がそれらの軸を中心に回転すると同時に回転装置の回転軸を中心に旋回動作する。研磨板の回転軸5および回転装置を形成する駆動ギアの回転軸5は、共線状に配置される。キャリアディスク8は凹部10を有する。研磨される半導体ウエハは、自由に動くことができる状態でこの凹部10内に置くことができる。研磨装置は同時に少なくとも3つのキャリアディスクを収容する。通常は同時に5つのキャリアディスクを嵌めることもある。研磨装置および半導体ウエハの寸法に応じて、キャリアディスクは、半導体ウエハを置くための少なくとも1つの凹部10を有する。しかしながら、一般にキャリアディスクは半導体ウエハのための凹部10を3つ以上有する。
【0016】
本発明に係る調節方法の効果は、
図1に示されるように、研磨パッド3、4の内側縁部における加工間隙の幅w
iが研磨パッド3、4の外側縁部における加工間隙の幅w
oと異なる点にある。好ましい差の量は、主に研磨板のサイズに依存する。この場合においては、研磨パッドの輪幅、すなわち研磨パッドの内側縁部と外側縁部との間の距離が重要である。2つの間隙幅w
iおよびw
oの差は、研磨パッドの輪幅1メートルに対し、少なくとも70μmが好ましく、特に少なくとも140μmが好ましい。差は、最大で300μmが好ましい。(したがって、輪幅が半メートルの場合、2つの間隙幅w
iおよびw
oの差は、少なくとも35μmが好ましく、特に少なくとも70μmが好ましい。この場合の最大値は、150μmが好ましい)。
【0017】
特に良好な全体的および局所的な半導体ウエハの形状は、内側縁部における研磨間隙の幅が外側縁部よりも大きい場合、特に上記の好ましい範囲に従った場合に得られる事が分かった。研磨された半導体ウエハは、全体的により平坦となり(全体的な形状)、エッジロールオフが減少する(局所的な形状)。
【0018】
研磨間隙幅の単調性、特に径方向の位置に応じた線形性が好ましい。
内側縁部と外側縁部との間に上記の間隙幅の差を有する加工間隙は、研磨処理が行われる前に調節によって成形される2つの研磨パッドのうちの少なくとも一方により、本発明に係る調整が行われる。この場合において、異なる量の材料が径方向の位置に応じて2つの研磨パッドのうちの少なくとも一方から研削される。より多くの材料が外側縁部よりも内側縁部において研削された場合、外側縁部と比して内側縁部の方が加工間隙の幅が大きくなり、その逆も同様である。2つの研磨パッドのうち一方のみを相応に調節することが可能であり、径方向における研磨間隙幅の状態が径方向における材料研削の状態に対応し、さらに径方向における調整された研磨パッドの厚さの状態に対応する。しかしながら、径方向の位置に応じて両方の研磨パッドを調節することもでき、これにより径方向における間隙幅の状態に対する2つの研磨パッド表面の寄与が併せて加えられる。
【0019】
柔らかく圧縮可能な研磨パッドに対しては径方向の位置に応じた所望の厚さを調節処理によって容易に加えることができないことから、本発明に係る調節方法は、圧縮率が低く硬い研磨パッドに適用されるのが好ましい。最大で3%の圧縮率が好ましく、特に最大で2.5%が好ましい。圧縮率の判定は、JIS規格L−1096と同様の方法で行われる。研磨パッドの硬さについては、ショアAが80から100であるのが好ましい。
【0020】
本発明に係る調節処理は、
図2から
図5に示される。この場合において、研磨パッド3、4のうち少なくとも一方は、外側歯12を有する少なくとも1つの調節ツール11および外側歯15を有する少なくとも1つのスペーサ14を回転装置6、7によって加工間隙内で回転させることによって調節される。
【0021】
研磨パッド3、4を調節するために、キャリアディスク8の代わりに調節ツール11およびスペーサ14が両面研磨装置内に置かれる。調節ツール11およびスペーサ14は、いずれもキャリアディスク8と同様の外側歯を有する。調節ツール11およびスペーサ14は、それらの外側歯12、15が回転装置の内側および外側駆動ギア6、7と係合できるように寸法が設定される。調節ツールは、円形または環状に構成され得る。
【0022】
調節ツール11は、たとえばダイヤモンドなどの研削粒子でコーティングされた表面領域13を有する。好ましくは、研削粒子でコーティングされた表面領域13は、外側歯12に沿って調節ツール上に輪の形態で配置されるのが好ましい。
【0023】
駆動ギア6、7のうち少なくとも一方の回転により、調節ツール11およびスペーサ14は、それらの軸を中心に回転すると同時に、両面研磨装置の中心まわり、すなわち研磨板の回転軸5と共線状に延在する回転装置の回転軸を中心に旋回動作する。同時に、調整される研磨パッドで覆われる研磨板が少なくとも回転する。2つの研磨パッドが同時に調節される場合、両方の研磨板が回転するのが好ましい。調節ツールと少なくとも1つの研磨パッドとの相対動作により、研削粒子でコーティングされた調節ツール11の表面領域13が対象となる研磨パッド3、4の材料を研削する。
【0024】
一方の面のみまたは代替的に両面に研削粒子がコーティングされた表面領域13を有する調節ツール11を使用することが可能である。2つの研磨パッドの一方のみを調節することを意図している場合、一面の調節ツールが使用される。両方の研磨パッドを調節する場合、一面の調節ツールが同様に使用され得る。この場合、上方研磨パッドおよび下方研磨パッドの調節が順に行われる。しかしながら、この場合、両面に研削粒子がコーティングされた表面領域13を有する両面調節ツール(
図2に示される)を使用し、2つの研磨パッドを同時に調節するのが好ましい。
【0025】
スペーサ14は、調節時に研磨パッドの材料を径方向において不均一に研削するために必要である。それらの機能を果たすために、スペーサ14の厚さd
Sは、調節ツール11の厚さd
Dと異なっていなければならない。半メートル以上の研磨パッド輪幅を有する従来のDSP装置において上記の範囲の間隙幅の差を生み出すためには、調節ツールとスペーサとの間に少なくとも0.1mmの厚さの差が必要である。
【0026】
本発明に係る方法の機能性は、
図2に示される。この場合においては、上方研磨板の振り子式取り付けが使用される。上方研磨板が下方研磨板の高さ方向の偏位またはぐらつきを補い、この動きに適合しなければならないため、この振り子式取り付けが必要である。このような理由から、全ての従来の両面研磨装置は、上方研磨板の振り子式取り付けを伴う。スペーサは研削剤でコーティングされた表面を有さないことから、研磨パッドの材料を研削することはない。これらは、単に上方研磨板を傾かせるために使用される。必要な厚さを有する従来のキャリアディスクは、スペーサとしても使用され得る。
【0027】
図2に示される場合において、調節ツール11の厚さd
Dは、スペーサ14の厚さd
Sよりも大きい。これにより、振り子状に吊られた上方研磨板1が僅かに傾き、厚い調節ツール11の領域よりも薄いスペーサ14の領域においてさらに低くなる。そして、調節ツールの径方向で見た内側部分(すなわち、
図2において調節ツール11の左手側の領域に示される)において負荷が高まり、内側駆動ギア6の隣に位置する研磨パッド3、4の内側縁部の領域において研削される材料が多くなる。
【0028】
研磨パッドの内側縁部における材料研削の増加(および
図1に示されるような内側縁部における大きな加工間隙幅、すなわち、w
i>w
o)は、調節ツールと比較してスペーサの厚さが小さいことによって得られる(
図2に示される)。逆に、研磨パッドの外側縁部における材料研削の増加(および外側縁部における大きな加工間隙幅、すなわちw
o>w
i)は、調節ツールと比較してスペーサの厚さが大きい事によって得られる。
【0029】
上方研磨板の傾きの方向および程度、ならびに径方向の間隙幅の差については、調節ツールとスペーサとの間の厚さの差によって決まる。研磨パッド輪幅が700mmの場合、たとえば、外側縁部よりも内側縁部の方が間隙幅が300μm大きい(すなわち、w
i−w
o=300μm)加工間隙は、調節ツールの厚さd
Dよりも約1mm小さく選択されるスペーサの厚さd
S(d
D−d
S=1mm)によって作り出すことができる。逆に、外側縁部において300μm大きい(w
i−w
o=−300μm)加工間隙は、d
D−d
S=−1mmを選択することによって作り出すことができる。同じDSPシステムの寸法において、より小さい間隙幅の差は、調節ツールとスペーサとの間の厚さの差を相応に小さくすることによって実現される。より大きいDSPシステムに関しては、特定の間隙幅の差を作り出すためには厚さの差を相応に大きくする必要があり、より小さいDSPシステムにおいては、厚さの差を相応に小さくする必要がある。
【0030】
調節ツールおよびスペーサが所与の厚さを有する場合、調節ツールとスペーサとの間の相互の距離を選択することによって傾きを微調整することができる。
【0031】
上述のように、調節時には、径方向の位置に応じた研磨パッドの材料研削を実現するために、調節ツールおよびスペーサの厚さを異ならせることによって上方研磨板を僅かに傾かせる必要がある。原理的には1つの調節ツール11および対向して設置されたスペーサ14を用いてこの効果を実現することができる。しかしながら、これによって上方研磨板の位置が不安定となり得る。このため、
図3から
図5に示されるように、少なくとも2つの隣接して配置される調節ツール11または少なくとも2つの隣接して配置されるスペーサ14を使用するのが好ましい。図は、調節ツール11およびスペーサ14が適用された下方研磨板(より正確には、下方研磨パッド4)の平面図である。1つの調節ツール11および2つのスペーサ14(
図5)、または2つの調節ツール11および1つのスペーサ14(
図3)を使用するのが特に好ましい。これらの場合において、上方研磨板1は、3つの点で安定して支えられる。また、2つの調節ツール11および2つのスペーサ14(
図4)を使用することも可能である。この場合、2つの調節ツール11およびスペーサ14は、調節ツール11とスペーサ14との間の厚さの差によって上方研磨板1を傾かせるために、それぞれ互いの隣に置く必要がある。
【0032】
研磨パッドの材料研削が径方向の位置に応じて異なる厚さの調節ツールおよびスペーサによって実現される本発明に係る調節方法は、調節ツールの回転によって行われるという利点を有する。調節された研磨パッドにおける溝または凹みの形成がこれによって回避される。このため、調節方法の実質的な利点が保持される。同時に、研磨間隙は、内側縁部と外側縁部との間の間隙幅の差を自由に選択することができる簡易な手段によって作り出すことができる。同様に、使用されて異なる状態にすり減った研磨パッドを記載の方法によって所望の形に戻すことができる。
【0033】
2つの研磨板の少なくとも一方を変形させることによって研磨板の内側縁部と外側縁部との間に異なる研磨間隙の幅を実現することも考えられる。上方研磨板の液圧変形を可能とする両面研磨マシンが知られている。しかしながら、研磨パッドの内側縁部と外側縁部における異なる研磨パッドの厚さによる間隙幅の差は、対応する研磨板の変形によって実現される等しく大きい間隙幅の差よりも実質的に効果が大きいことがわかった。調節時における径方向の位置に応じた材料研削による間隙幅の差の調整は、変形可能な研磨板を有さない研磨マシンにもこの方法が使用できるというさらなる利点を有する。
【0034】
本発明に係る方法は、任意の半導体ウエハの両面研磨のための研磨パッドを準備するために使用することができる。シリコンウエハ、特に単結晶シリコンウエハの研磨での使用は、その経済的な重要性の大きさ、および非常に需要のある形状要件により、特に好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 上方研磨板、2 下方研磨板、3 上方研磨パッド、4 下方研磨パッド、5 研磨板の回転軸、6 内側駆動ギア、7 外側駆動ギア、8 キャリアディスク、9 キャリアディスクの歯、10 半導体ウエハを置くためのキャリアディスクの凹部、11 調節ツール、12 調節ツールの歯、13 研削粒子でコーティングされた調節ツール表面、 14 スペーサ、15 スペーサの歯、d
S スペーサの厚さ、d
D 調節ツールの厚さ、w
i 内側縁部における加工間隙の幅、w
o 外側縁部における加工間隙の幅。