(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
排水ポンプ車は、地震や豪雨などで発生した自然ダム等の排水を行う緊急設備である。作業員は、排水ポンプ車が現地に到着すると、排水ポンプ車の荷台から排水ポンプや排水ホース等を降ろして排水目的地に設置し、排水状態を管理しながら排水操作を行う。そして、排水が完了した後、作業員は、排水ポンプ類を排水目的地から撤去して排水ポンプ車の荷台に積み込み、その後、排水ポンプ車を待機車庫に戻す。
【0003】
災害地における排水作業においては、その災害規模により、照明設備や、通信、指示本部機能も必要となる。そのような場合、排水ポンプ車とは別に、対策本部車、照明車及び衛星通信車などの車両を現地に配備することが一般的である。
【0004】
排水ポンプ車は、家屋やインフラ設備の無い、自然(天然)ダム等の災害地区に設置される緊急用の仮設排水設備であり、搬入路や設置場所(駐車場所)等に制約が生じる場合が多い。このため、大型車の採用が困難となり、容量(吐出量)が大きいポンプではなく、小水量の可搬できるポンプを多数設置して排水作業を行うようにしている。そして、夜間や雨・雪などの悪天候においても排水運転を行う設備であり、一旦設置されると、24時間×数日の連続作業となる場合が多い。
【0005】
排水ポンプ車として、複数台の軽量水中ポンプ、車両用エンジンの動力で駆動される発電装置、及び排水ホース等を搭載したものが知られている(特許文献1参照)。また、車両用エンジンの他に第2エンジンを搭載して、排気量を増大し排水能力を高めるようにした排水ポンプ車(特許文献2参照)、発電機に設けられた冷却ファンにより発電機を効率的に冷却して発電機の加熱を防止するようにした排水ポンプ車(特許文献3参照)、及び車体に対して着脱自在なコネクタボックスを備えることで、使い勝手を良くし、迅速な災害対策を行えるようにした排水ポンプ車(特許文献4参照)等が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排水ポンプ車は、前述のように、過酷な条件で運転されるが、従来の排水ポンプ車は、排水する為の設備の運搬や設置のし易さのみが考慮されており、運転中の機能管理、作業員の安全管理はあまり配慮されていないのが現状であった。
【0008】
また、災害地は、その災害状況にもよるが、一般に狭い。このため、対策本部車、照明車及び衛星通信車等を、排水ポンプ車と共に現地に出動させて配備しようとしても、主要機器である排水ポンプ類を移送する必要機器(車両)である排水ポンプ車を対策現場直近に設置すると、対策本部車等が設置しにくい(スペースがない)場合がある。
【0009】
対策本部車は、排水作業の全体を指揮・管理するものであり、現地に入ったとしても、一般の作業員に対して良好な環境を提供するものではない。また、対策本部車には、機器(盤類含む)の故障時に機器を修理するための装備は一般に備えられていない。災害地においては、自然災害を拡大させないためにも、できるだけ早急に排水を完了させることが求められる。このため、故障機が復旧できずに排水能力が低下したり、停止したりしたままの状態になると、災害が拡大し、大きな被害をもたらす恐れがある。
【0010】
特許文献1〜4に記載の排水ポンプ車は、排水ポンプの設置(取り付け作業)の容易化や、機能向上のみを考慮しており、長時間にわたる過酷な作業を行う作業員に対する環境改善や、故障を復旧するための装備について何ら考慮されていない。
【0011】
実際の災害現場で長時間に亘る排水作業を行うと、作業員(運転員)の疲労はかなり大きいものとなり、作業員に対する相応の現場環境が必要となる。また、作業員の疲労が大きくなると、けが等が発生し易くなることから、作業員の救護等も考慮した設備が求められている。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、作業員にとってより安全で、信頼性の高い設備を構築することができるようにした排水ポンプ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一参考例は、災害地において排水作業を行う排水ポンプ車であって、荷台車両前方側に設けられた操作制御盤と、荷台の床面より下部に設置されて車両用エンジンの動力で駆動される発電機とを備え、前記操作制御盤より車両後方に位置して床面を略平坦とした荷台の側面及び上面は、車両の進行方向に伸縮可能なテントで開放自在に覆われ、荷台の前記テントで覆われる領域内に、排水ポンプ、排水ホース及びフロートを積載したことを特徴とする排水ポンプ車である。
【0014】
これにより、排水作業時に、排水ポンプ、排水ホース及びフロートを荷台から降ろすことで、操作制御盤より車両後方に位置する荷台を、床面が略平坦で、風雨を避けるテントで周囲を覆った、作業員の休憩場として利用可能な設備とする(排水機能及び作業員の休息機能の2重の目的を持たせる)ことができる。従って、災害地における狭小スペースの中で、安全な作業環境を提供して、2次災害(作業員の疲労等による事故)を防止できる設備(機器)を構築することができる。しかも、排水ポンプ等の積み卸し作業を行うときに、テントを縮めて荷台の側面を開放することで、この積み卸し作業がテントによって阻害されることはない。
【0015】
上記参考例の好ましい態様は、荷台の前記テントで覆われる領域内に、作業員休憩具を積載したことを特徴とす
る。
発電機を荷台の下部に搭載したことにより、荷台に余裕分となるスペースを確保し、このスペースを利用して、荷台に作業員休憩具を積載することで、作業員の作業環境を更に向上させることが可能となる。
【0016】
上記参考例の好ましい態様は、前記操作制御盤の内部または前記操作制御盤に隣設した位置に通信設備を設けたことを特徴とす
る。
このように、排水ポンプ車に通信設備を設けることで、狭地で、排水作業のメインとなる排水ポンプ車以外の災害対策車(基地車)や通信車が災害現場に乗り込めない場所においても、円滑な排水・災害復旧対応が可能となる。
【0017】
上記参考例の好ましい態様は、前記通信設備の操作面は、荷台の前記テントで覆われる領域に面していることを特徴とす
る。
これにより、通信機器の操作面に排水ポンプの運転状態(電流,故障等)を表示させ、しかも、テント内から排水状態を確認できるようにすることで、簡易基地としての機能を充実させることができる。
【0018】
上記参考例の好ましい態様は、荷台の前記テントで覆われる領域内に、機材補修用の加工機器及び補修工具棚を設けたことを特徴とす
る。
これにより、排水ポンプや排水ホース等の現地設置用の治具を現地で容易に製作できるようにして、排水ポンプ等の好ましい設置を可能として、排水運用の信頼性を向上させ、しかも、排水機能を維持するための応急補修を容易に行って、早急な災害復旧を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の他の参考例は、災害地において排水作業を行う排水ポンプ車であって、荷台の車両前方側に設けられた操作制御盤と、荷台の床面より下部に設置されて車両用エンジンの動力で駆動される発電機とを備え、前記操作制御盤より車両後方に位置して床面を略平坦とした荷台の側面及び上面は、開閉自在なウィングパネルで開放自在に覆われ、荷台の前記ウィングパネルで覆われる領域内に、排水ポンプ、排水ホース及びフロートを積載したことを特徴とする排水ポンプ車である。
【0020】
このように、荷台の側面及び上面を、アルミニウムや鋼板製等のウィングパネルで覆って該ウィングパネルの内部を風雨等から保護することで、テント等の構成に比べて風雨等に強くなり、荷台が有する基地機能や休憩機能をより高めることができる。
【0021】
本発明の一態様は、
災害地において排水作業を行う排水ポンプ車であって、荷台の車両前方側に設けられた操作制御盤と、荷台の床面より下部に設置されて車両用エンジンの動力で駆動される発電機とを備え、前記操作制御盤より車両後方に位置して床面を略平坦とした荷台の側面及び上面は、開閉自在なウィングパネルで開放自在に覆われ、荷台の前記ウィングパネルで覆われる領域内に、排水ポンプ、排水ホース及びフロートを積載し、前記ウィングパネルの該ウィングパネルを開いた時に外方に露出する内面に、照明器を設けたことを特徴とす
る。
【0022】
これにより、開いた時に高所に位置するウィングパネルに設けた照明器で、効率的に作業場所(外部)を灯光することができる。しかも、ウィングパネルは、閉じた時に照明器が手の届く低所に位置するため、照明器の維持管理(玉切れ等の対応他)が容易となり、移動時においても、照明器が運送上の邪魔になることはない。
【0023】
本発明の好ましい態様は、前記ウィングパネルの該ウィングパネルを開いた時に外方に露出する内面に、文字表示器及び警報機を設けたことを特徴とす
る。
【0024】
これにより、開いた時に高所に位置するウィングパネルに設けた文字表示器によって、緊急時の退避命令や地震速報等の情報を作業者に文字で伝え、更に警報機を併用して情報を周知させることによって、作業のより安全性を図りながら、効率的な復旧作業が可能となる。
【0025】
上記参考例の好ましい態様は、荷台の有効スペース内に燃料用補助タンクを設けたことを特徴とす
る。
これにより、一台の排水ポンプ車が保有できる燃料の保有量を増やして、燃料切れによる排水ポンプの機能停止を極力防止することができる。
【0026】
上記参考例の好ましい態様は、前記燃料用補助タンクに、該燃料用補助タンク内に保有されている燃料の低下を検知する検知器を設けたことを特徴とす
る。
これにより、燃料用補助タンク内に燃料を補充し忘れることを極力防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の排水ポンプ車によれば、荷台を、テントで覆われた作業員の休憩場として利用可能な設備とすることで、作業員にとってより安全で、信頼性の高い設備を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態の排水ポンプ車の手前の側あおりを省略したテントの縮めた状態の正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の排水ポンプ車のテントを省略した平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の排水ポンプ車の手前の側あおりを省略したテントを伸ばした状態の正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の排水ポンプ車の手前の側あおりを省略したテントを縮めた状態のポンプ類を荷台から降ろした時の正面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の排水ポンプ車のテント及び手前の側あおりを省略した正面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の排水ポンプ車のテントを省略した平面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態の排水ポンプ車の手前の側あおりを省略したテントの縮めた状態の正面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態の排水ポンプ車のテントを省略した平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態の排水ポンプ車のテント、手前の側あおり及びフロートを省略した正面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態の排水ポンプ車の手前の側あおりを省略したテントの縮めた状態の正面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態の排水ポンプ車のテントを省略した平面図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態の排水ポンプ車のテント、手前の側あおり、フロート及び補修工具棚を省略した正面図である。
【
図13】本発明の第5の実施形態の排水ポンプ車のウィングパネルを閉じた時の正面図である。
【
図15】本発明の第5の実施形態の排水ポンプ車のウィングパネルを開いた時の正面図である。
【
図16】荷台上の機器を省略した
図15のA−A線断面図である。
【
図17】本発明の第6の実施形態の排水ポンプ車のウィングパネルを閉じた時の平面図である。
【
図18】本発明の第7の実施形態の排水ポンプ車の
図16相当図である。
【
図19】本発明の第8の実施形態の排水ポンプ車のウィングパネルを開いた時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下の各例において、同一または相当部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下の各例では、6台の排水ポンプと、排水ホースを連結して延長することを考慮して、12本の排水ホースを荷台に積載した例を示しているが、排水ポンプと排水ホースの搭載数が任意であることは勿論である。
【0030】
図1乃至
図4は、本発明の第1の実施形態の排水ポンプ車を示す。
図1乃至
図4に示すように、この例の排水ポンプ車10は、床面12aを略平坦とした荷台12を備えており、この荷台12の車両前方に位置して、矩形ボックス状の操作制御盤14が床面12a上に搭載されている。荷台12の床面12aの下部には、車両用エンジン(図示せず)の動力で駆動される発電機16が搭載されている。つまり、車両用エンジンの動力は、動力取出装置(PTO)18で車両用エンジンから取出されて発電機16に伝達され、これによって、発電機16が駆動される。
【0031】
操作制御盤14より車両後方に位置し、一対の側あおり20及び後あおり22で周囲を包囲され床面12aを略平坦とした荷台12の側面及び上面は、車両の進行方向に伸縮可能な、この例では、いわゆるアコーディオン幌からなるテント24で開放自在に覆われている。つまり、テント(アコーディオン幌)24を縮めた状態では、
図1に示すように、テント24が荷台12の車両前方に位置して、テント24の車両後方に位置する荷台12の側面及び上面が開放し、テント24を伸ばした状態では、
図3に示すように、テント24が荷台12のほぼ全側面及び上面を覆って、荷台12上に、テント24で覆われて風雨を避けられる空間が形成されるようになっている。
【0032】
操作制御盤14より車両後方に位置してテント24で覆われる荷台12の床面12aには、6台の排水ポンプ26、12本の排水ホース28、及びかごからなる設置治具入れ30が積載されている。この設置治具入れ30には、係留ロープ、ハンマ及び係留杭等が積み込まれる。更に、操作制御盤14の後面上部には、左右3個づつ計6個のフロート32が備えられている。
【0033】
この例によれば、作業員(運転員)は、排水ポンプ車10を被災地等の現地に到着させた後、荷台12から排水ポンプ26、排水ホース28、設置治具入れ30及びフロート32を降ろして排水ポンプ類を現場に設置し、排水作業を開始する。このため、排水作業時においては、
図4に示すように、操作制御盤14より車両後方に位置する荷台12の床面12aは、何もない略平坦な状態となる。
【0034】
この例の排水ポンプ車10は、荷台12を、床面12aが略平坦で、周囲をテント24で覆った、作業員の休憩場として利用することで、つまり、排水ポンプ車10に排水機能及び作業員の休息機能の2重の目的を持たせたことで、災害地における狭小スペースの中で、作業員に安全な作業環境を構築し、2次災害(作業員の疲労等による事故)を防止できる設備(機器)となる。
【0035】
特に、災害地における排水作業は、24時間×数日の連続作業となる場合が多く、夜間や、雨・雪などの悪天候においても運転を行うことが要求されるが、
図4に示すように、操作制御盤14の車両後方に位置する荷台12の全側面及び上面をテント24で覆って風雨が避けられるようにすることで、作業員にとって、より快適な休憩場としての空間を提供することができる。
【0036】
しかも、排水ポンプ等の積み卸し作業を行うときには、
図1に示すように、テント24を縮めて、操作制御盤14の車両後方に位置する荷台12の側方を開放し、荷台12の側方からアクセス可能とすることで、この積み卸し作業がテント24の存在によって阻害されることを防止することができる。これによって、排水ポンプ類の迅速な設置作業が可能となり、早急な排水運転が行え、機動性、信頼性を高めることができる。
【0037】
図5及び
図6は、本発明の第2の実施形態の排水ポンプ車10aを示す。なお、
図5及び
図6において、テント24は省略されている。この例の排水ポンプ車10aの第1の実施形態の排水ポンプ車10と異なる点は、荷台12のテント24で覆われる領域、この例では、操作制御盤14の直後方に位置するフロート32の下方に、ベッドや椅子等の作業員休憩具34を積載している点にある。
【0038】
前述のように、発電機16を荷台12の床面12aの下部に搭載することで、荷台12に余裕分となるスペースを確保することが可能となる。この例では、このスペースを利用して、荷台12に作業員休憩具34を設置することにより、作業員の作業環境を更に向上させることが可能となる。
【0039】
なお、ベッドや椅子等の作業員休憩具34とあわせ、毛布等の防寒具や、非常食・救急用医薬品等の設備を付加するようにしても良い。
【0040】
図7乃至
図9は、本発明の第3の実施形態の排水ポンプ車10bを示す。この例の排水ポンプ車10bの第1の実施形態の排水ポンプ車10と異なる点は、操作制御盤14に隣接した位置、この例では、操作制御盤14の後面側の荷台12の幅方向に沿った一方に偏った位置に通信設備36を設け、更に、操作制御盤14の後面側の荷台12の幅方向に沿った他方に偏った位置に、上下3個づつ計6個のフロート32を縦方向に設けている点にある。
【0041】
この通信設備36は、衛星電話や無線等の官公庁の通信網を使用して、官公庁の対策本部と通信するための通信機能を備えている。このように、通信機能を備え、必要に応じて、椅子や机を備えることで、簡易基地としての使用が可能となる。
【0042】
この例の排水ポンプ車10bによれば、通信機能を有する通信設備36を備えることで、例えば狭地で、排水作業のメインとなる排水ポンプ車以外の災害対策車(基地車)や通信車が乗り込めない場所においても、通信設備36を利用した円滑な排水・災害対策が可能となる。更に、操作制御盤
14に隣設した位置に通信設備36を設けることにより、通信用の電源の確保が容易となる。また、通信設備36に照明を設け、夜間における基地機能・環境を向上させるようにしても良い。
【0043】
この例では、通信設備36の後面36aに操作面を設け、この操作面(後面36a)に排水ポンプの運転状態(電流,故障等)を表示させるようにしている。これにより、テント24内から排水状態が確認できるようになるので、簡易基地としての機能を更に充実させることができる。
【0044】
この例では、操作制御盤
14に隣設した位置に通信設備36を設置するようにしているが、操作制御盤14の内部に通信機器を組込み、操作制御盤14の後面に該操作制御盤14及び通信機器兼用の操作面を設けるようにしてもよい。
【0045】
これにより、操作制御盤14の内部の故障等に対する応急修理時においても、テント24内に位置する操作制御盤14の後面から操作制御盤14の内部へのアクセスが可能となり、例えば、雨天時における盤内機器の故障復旧に迅速に対応して、排水作業の信頼性を向上させることができる。
【0046】
図10乃至
図12は、本発明の第4の実施形態の排水ポンプ車10cを示す。この例の排水ポンプ車10cの第1の実施形態の排水ポンプ車10と異なる点は、荷台12のテント24で覆われる領域内、この例では、操作制御盤14の後面側の荷台12の幅方向に沿った中央に、ボール盤等の機材補修用の加工機器38を、該加工機器38を挟んだ一方に補修工具棚40をそれぞれ設け、更に加工機器38を挟んだ他方に、上下3個づつ計6個のフロート32を縦方向に設けている点にある。
【0047】
排水ポンプ車に搭載される設備は、災害地が対象となるため、場所を特定し、その場所に合わせた設備として設計することができない。このため、出動した時々に合わせて、現地調整(ポンプの設置、ホースの敷設等)を行うことが好ましく、現地調整を行わないと、最悪の場合は、排水ポンプ類を現場に設置できない場合もある。
【0048】
この例の排水ポンプ車10cによれば、排水ポンプや排水ホース等の現地設置用の治具を、ボール盤等の加工機器38によって、現地で容易に製作・改造できるようになり、排水ポンプ等の好ましい設置を可能として、排水運用の信頼性を向上させることができる。
【0049】
排水ポンプ車に搭載される設備は、一般に可搬式の仮設設備として設計されているため、定置式に比べ重厚な設計となっておらず、また、排水時の使用条件も非常に厳しいことから、故障等が発生する可能性が高い。現地で応急補修を行う設備がないと、故障機の復旧が困難となって、最悪の場合は、排水機能の停止に繋がる。
【0050】
この例の排水ポンプ車10cによれば、荷台12上の風雨を避けた作業環境の中で、つまり伸ばしたテント24の中で、ボール盤等の加工機器38を使用した応急補修を行うことが可能となるので、排水機能を維持して、早急な災害復旧を行うことが可能となる。
【0051】
なお、ボール盤のような加工機器38は、風雨に晒すと錆が発生し、使用できなくなる恐れがあるが、この例のように、縮めたテント24で覆われる位置に加工機器38を設けることで、輸送時においても、風雨を避けることが可能となり、加工機器の輸送時における錆の発生を防止することができる。
【0052】
図13乃至
図16は、本発明の第5の実施形態の排水ポンプ車10dを示す。この例の排水ポンプ車10dの第1の実施形態の排水ポンプ車10と異なる点は、テント24の代わりに、開閉自在な一対のウィングパネル50を備え、
床面12aに操作制御盤14、排水ポンプ26、排水ホース28及び設置治具入れ30を搭載した荷台12の側面及び上面を、一対のウィングパネル50で開放自在に覆っている点にある。
【0053】
ウィングパネル50は、例えば共にアルミニウムまたは鋼板製のサイドパネル52とループパネル54とを互いに直角に連接して構成されており、荷台12の上方に車両の進行方向に沿って配置したウィングビームに、ヒンジを介して、開閉自在に連結されている。これにより、ウィングパネル50を閉じると、
図13に示すように、荷台12の側面及び上面がウィングパネル50で覆われて、荷台12上に風雨を避けられる空間が形成され、ウィングパネル50を開くと、
図15に示すように、荷台12の側方及び上方が開放されるようになっている。
【0054】
このように、荷台12の側面及び上面を、アルミニウムや鋼板製等のウィングパネル50で覆って該ウィングパネル50の内部を風雨等から保護することで、テント等の構成に比べて風雨等に強くなり、荷台12が有する基地機能や休憩機能をより高めることができる。
【0055】
ウィングパネル50を開いた時に外方に露出するサイドパネル52の内面下部には、ウィングパネル50を開いた時に外部を灯光する照明器56が設けられている。これにより、ウィングパネル50を開いた時に高所に位置するサイドパネル52の内面下部に設けた照明器56で、効率的に作業場所(外部)を灯光することができる。しかも、サイドパネル52の内面下部は、ウィングパネル50を閉じた時に照明器56が手の届く低所に位置するため、照明器56の維持管理(玉切れ等の対応他)が容易となり、移動時においても、照明器56が運送上の邪魔になることはない。
【0056】
従来の一般的な排水ポンプ車においては、照明車がない場合を想定し、バルーン照明を搭載して現地に赴く場合があり、バルーン照明は、一般に不安定であり、運搬上、注意を要するが、この例によれば、照明器56の安定した運搬が可能になる。
【0057】
ウィングパネル50を開いた時に外方に露出するルーフパネル54の内面上部には、ウィングパネル50を開いた時に、外部に故障、作業、退避命令又は情報等を発信する文字表示器58及び警報機60が設けられている。これにより、ウィングパネル50を開いた時に高所に位置するウィングパネル50のルーフパネル54の内面上部に設けた文字表示器58によって、緊急時の退避命令や地震速報等の情報を作業者に文字で伝え、更に警報機60を併用して情報を周知させることによって、作業のより安全性を図りながら、効率的な復旧作業が可能となる。
【0058】
ウィングパネル50が閉じたときに該ウィングパネル50で囲まれる荷台12上の有効スペースには、燃料用補助タンク62が設けられており、この燃料用補助タンク62には、内部に保有されている燃料の低下を検知する検知器(図示せず)が設けられている。
【0059】
排水ポンプ車をはじめ緊急用設備においては、連続して使用する運用時間が想定しにくいという課題がある。このため、従来の排水ポンプ車にあっては、車載の燃料タンク内の燃料の残量を見ながら、燃料の補充を繰り返す運用が一般的であるが、車載の燃料タンクが小さい場合に、燃料補充回数が多いことや、残りの燃料の確認忘れ等で、燃料切れによる排水ポンプの機能停止に追い込まれる危険性がある。
【0060】
この例によれば、荷台12上の有効スペースを利用して、検知器を有する燃料用補助タンク62を設けることで、一台の排水ポンプ車が保有できる燃料の保有量を増やして、燃料切れによる排水ポンプの機能停止を極力防止し、しかも、燃料の補充忘れをなくすことが可能となり、作業性及び信頼性の高い設備となる。
【0061】
更に、この例では、荷台12に基地や休憩機能としての役割を果たさせる時の換気用として、ウィングパネル50のサイドパネル52に換気用窓64を設けている。この換気用窓64は、必要に応じて設けられる。
【0062】
図17は、本発明の第6の実施形態の排水ポンプ車10eを示す。この例の排水ポンプ車10eには、車両の外方に張り出して車両を安定させる、油圧式のアウトリガー66が付設されている。このように、アウトリガー66を付設して車両の揺れを防止することで、荷台12に基地や休憩機能としての役割を果たさせる時の安定性を高めることができる。
【0063】
図18は、本発明の第7の実施形態の排水ポンプ車10fを示す。この例の排水ポンプ車10fは、荷台12上に簡易な荷役機器68を設けている。この荷役機器68の代わりに、荷役機器を取り付けるためのレールを設けるようにしても良い。このように、簡易な荷役機器68を設けることにより、作業員の高年齢化に対しても、有効な設備となる。
【0064】
図
19は、本発明の第8の実施形態の排水ポンプ車10gを示す。この例の排水ポンプ車10gは、排水ポンプ運用時を考慮して、操作制御盤14のみをウィングパネル50の外部に設置するようにしている。
【0065】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。