特許第5828464号(P5828464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5828464プラズマ照射処理装置の作動方法及び物質にプラズマ照射する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828464
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】プラズマ照射処理装置の作動方法及び物質にプラズマ照射する方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20151119BHJP
   A61B 18/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H05H1/24
   A61B17/36
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-86028(P2014-86028)
(22)【出願日】2014年4月18日
(62)【分割の表示】特願2012-523819(P2012-523819)の分割
【原出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-179329(P2014-179329A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-154948(P2010-154948)
(32)【優先日】2010年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】榊田 創
(72)【発明者】
【氏名】池原 譲
(72)【発明者】
【氏名】木山 学
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−007095(JP,A)
【文献】 特開2003−300029(JP,A)
【文献】 特開2010−048936(JP,A)
【文献】 特開平09−330909(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005132(WO,A1)
【文献】 特開2002−008894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00 − 1/54
A61B 13/00 −17/02
A61B 17/04 −17/06
A61B 17/064 −17/072
A61B 17/08 −17/12
A61B 17/132
A61B 17/14
A61B 17/16
A61B 17/20 −17/221
A61B 17/24 −17/28
A61B 17/30 −17/3201
A61B 17/3211
A61B 17/322 −17/42
A61B 17/44 −17/60
A61B 17/68
A61B 17/72
A61B 18/00 −18/04
A61B 18/12 −18/18
A61F 2/01
C23C 16/00 −16/56
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ噴出口につながる一つ以上の長穴を有した円柱状誘電体からなる絶縁物と、トリガー兼安定用電極と、強電界用電極が取り付けられた(A)プラズマ始動・安定部、及び前記長穴を有する絶縁物と、運転時の主たるプラズマ生成を行うプラズマ生成用電極が取り付けられた(B)プラズマ生成部から構成され、前記全ての電極が前記一つ以上の長穴内の全ての空間に対して一切露出せず誘電体により覆われており、かつ、
前記(A)プラズマ始動・安定部の強電界用電極と前記(B)プラズマ生成部のプラズマ生成用電極は、一体、又は連結されて前記円柱状誘電体からなる絶縁物の外側に密着して取り付けられ、前記プラズマ生成用電極が前記強電界用電極より前記プラズマ噴出口側に配置され、さらに、前記トリガー兼安定用電極は線状であって、前記長穴を挟んで前記強電界用電極と対向する位置の前記絶縁物の内部に埋設されており、前記強電界用電極は前記円柱状誘電体の断面において半円より小さく、前記プラズマ生成用電極は前記円柱状誘電体の断面において半円より大きくして、前記プラズマ生成用電極を前記強電界用電極よりも大面積にしたプラズマ照射処理装置の作動方法であって、
前記トリガー兼安定用電極と強電界用電極が、当該両電極で挟んだガスの通る前記一つ以上の長穴の空間内で、電界強度を高め、前記一つ以上の長穴に上流から供給されるガスにプラズマを始動させる工程と、
前記トリガー兼安定用電極とプラズマ生成用電極が、前記始動したプラズマを安定的に持続して生成する工程を含むことを特徴とするプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項2】
前記プラズマ噴出口を構成する円柱状誘電体の外表面に、絶縁物で完全に被覆された金属材料からなる高周波電界シールド部材が設けられていることを特徴とし、当該金属材料はインピーダンスを介して接地されている、もしくは直接接地されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項3】
ガスを供給するための1つ以上の前記長穴の内表面に凹凸をつけたことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項4】
前記プラズマ照射処理装置の外部に絶縁物としての誘電体カバーを覆って設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項5】
前記誘電体カバーにさらに金属カバーを覆って設け、かつ当該誘電体カバーと当該金属カバーの間に空気層を設けていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項6】
プラズマ噴出口である先端部に取り付けられた高周波電界シールド部材を噴出口先端部付近で前記金属カバーに取り付けて設け、当該金属カバーを電源出力のゼロ電位側につなぐか、または接地して設けたことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項7】
前記金属カバーを絶縁物のシートで覆ったことを特徴とする請求項5又は6に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項8】
高電圧供給源として圧電素子を用いた高周波電源であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項9】
発生させるプラズマが間欠的なプラズマであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項10】
供給するガスをパルス的に供給するパルスガス供給装置を設けたことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項11】
血液凝固補助剤の噴射器を設けたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項12】
物質にプラズマを照射することで機能を発現させることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のプラズマ照射処理装置の作動方法を用いて物質にプラズマ照射する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ照射処理装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種材料への照射、医療用途等を目的として、大気圧環境下において種々の放電原理に基づいた装置により生成されたプラズマの利用研究がなされるようになっている。
【0003】
非特許文献1には、従来の医療用に開発されたRF電源を用いたアーク放電型の内視鏡搭載プラズマ装置が開示されている。しかしながら当該装置は、人体へ電流を流し抵抗加熱による熱凝固を誘発するためエネルギーは高く、使用方法によっては組織障害をきたす場合があった。しかも、電気抵抗が少ない箇所へ放電路が移動するため操作性に難点があった。そのため確実な止血を目的として持続照射を意図しても、熱凝固による電気抵抗の上昇が原因となるため、継続照射が難しかった。したがって、人体組織への安全性と照射作業の操作性の両面において問題があった。
【0004】
一方、非特許文献2に開示されている従来の誘電体バリア放電を用いた装置は、低温度(常温程度)のプラズマであるため熱負荷が少なく、熱以外の新たな凝固作用原理による止血方法となり、生体への負荷低減等の利点がある。しかしながら当該装置は、照射面が比較的大きいため、操作性に難点があった。しかも、人体あるいは被照射体を接地電極として扱い大気中で放電を行い、人体あるいは被照射体に電流が流れ易く、ストリーマー放電を生じ易いという問題があった。ストリーマー放電を生じた場合、部分的に人体あるいは被照射体にダメージをもたらすことになってしまう。
【0005】
また、特許文献1には、誘電体バリア放電を用いたジェット吹き出し型のプラズマ装置が開示されている。当該装置は、主に材料生成や材料の表面処理に用いることを主眼とした装置であるが、金属電極がプラズマに対してむき出しになっているとともに、対材料に対しても対向している構造となっているため、条件によっては材料に直接放電が生じることがあった。
【0006】
更に別のタイプとして、特許文献2には、電子部品等の被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、表面改質などに使用するプラズマ処理装置が開示されている。当該装置は、グロー放電を安定かつ均一に生成するという利点を備えている。しかし、当該装置は、内部電極は被処理物に対向しているため、被処理物に対して電界強度が高まり電流が大きくなってしまい、デリケートな被処理物の損傷してしまうという難点があった。
【0007】
特許文献3には、比較的均質なグロー放電を生成してストリーマー放電の生成を抑えることができ、被処理物の損傷を少なくすることができるプラズマ照射装置が開示されている。しかしながら、当該装置は、誘電体に覆われた内部電極が被処理物に対向しているため、被処理物に対して電界強度が高まり電流が大きくなってしまい、デリケートな被処理物を損傷してしまう場合があった。更に、ガス拡散板が取り付けられており、装置のサイズが大きくなってしまうという難点があった。
【0008】
特許文献4には、重度の出血の停止を目的に使用される、出血を停止させる装置が開示されている。しかし、4,500K−10,500K程度の高温のプラズマを発生させ、熱による凝固を生じさせる。そのため、表面組織は炭化し壊死層が形成されるという問題点があった。
【0009】
特許文献5には、特許文献4に開示されている装置に対して、対生体に対して更に電界強度を高めて止血特性を高めた形態を有するプラズマナイフが開示されている。しかし、電界強度を高めた構成のため、組織損傷がより著しく酷くなるという問題点があった。
【0010】
特許文献6には、止血を目的としてマイクロ波を利用した低温プラズマを用いた止血装置が開示されている。しかし、当該装置は、生体近傍において電極がむき出しであること、放電が外部で生じていることから、生体組織へ接触してしまう危険性があった。また、材料へ照射した場合にも損傷を与える可能性があった。更に、5ワットのパワーで、流量が2slmの時、ジェット長が4mm程度と極めて短く、操作性に難点があった。
【0011】
特許文献7には、一対の電極間でのアーク放電によりプラズマ生成し、電気的外科処置を行うために使用されるプラズマ化したガスを噴射する外科装置が開示されている。しかし、当該装置は、電極部が高温となり、耐久性などの取り扱いに難点があった。
【0012】
以上のように、放電エネルギーが高い場合、医療用などのデリケートな被照射体または被処理物は、プラズマ照射処理により損傷してしまうという問題があった。そこで、単にエネルギーを弱めていくと、大気圧環境下でのプラズマは発生開始が困難となるため、従来技術では、プラズマ発生のための電極を噴出口付近に、あるいはむき出しに設けてプラズマを発生させていた。また、従来技術では、大気圧環境下で、そのようなエネルギーを弱めたプラズマを一旦発生できても、プラズマが不安定なため処理条件が変化したり、あるいはストリーマー放電等により被照射体にダメージをもたらす危険な現象が起こりやすく、医療用等の照射処理はほとんど不可能であった。このように、医療分野のプラズマ処理や工業分野のプラズマ処理が可能な大気圧環境下での低エネルギーのプラズマ照射処理装置が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2005/125286号公報
【特許文献2】特開2000−282243号公報
【特許文献3】特願2009−144262
【特許文献4】国際公開WO96/06572号公報
【特許文献5】国際公開WO99/66852号公報
【特許文献6】特願2009−154819
【特許文献7】特開平10−234744号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】K.E.Grund,et al.,Endoscope Surgery 2 (1994) 42.
【非特許文献2】SameerU.Kalghatgi,et al.,IEEE Transactions on Plasma Science 35,No.5(2007) 1559−1565.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、必要以上の温度上昇を引き起こさないマイルドなプラズマ照射処理を開始しようとする時に、プラズマ発生のための電極から被照射体に放電が起こる危険性がなく、プラズマ発生開始を容易にかつ確実に行うことができ、一旦発生するとマイルドなプラズマジェットの状態は変動することなく安定に維持され、その長さを約10mm以上、径を約1mm以下の形状に形成でき、マイルドなプラズマジェットによるプラズマ照射処理では、小型・軽量で制御しやすく、操作性に優れ、対象物の細かなスポット処理が可能な医療用、及び工業分野、農業分野、畜産業分野、林業分野、漁業分野等の非医療用のプラズマ照射処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ照射処理装置は、プラズマ噴出部につながる長穴を有した誘電体などの絶縁物と、トリガー兼安定用電極と、強電界用電極が取り付けられた(A)プラズマ始動・安定部、及び前記長穴を有する絶縁物と、運転時の主たるプラズマ生成を行うプラズマ生成用電極が取り付けられた(B)プラズマ生成部から構成されるプラズマ照射処理装置であって、トリガー兼安定用電極、強電界用電極、及びプラズマ生成用電極が、上流からガスが通過し、プラズマを始動し、プラズマを生成し、かつプラズマジェットを噴出する一つ以上の長穴内の全ての空間に対して、全ての電極が一切露出せず誘電体により覆われて設けられていることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、放電を始動しやすくするために、(A)プラズマ始動・安定部のトリガー兼放電安定用電極と強電界用電極が、ガスの通る空間内で、電界強度を高める位置に設けられ、放電を始動することを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、放電始動後に引き続いて効率よくプラズマを十分に生成させるために、(A)プラズマ始動・安定部の強電界用電極と(B)プラズマ生成部のプラズマ生成用電極は、一体、又は連結された構造であることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、被照射体の安全のために、噴射口先端部から高周波電界が漏れにくくする目的で、プラズマ噴出口を構成する誘電体の外表面に、ビニール等の絶縁物で完全に被覆された金属材料からなる高周波電界シールド部材が設けられていることを特徴とし、当該金属材料はインピーダンスを介して接地されている、もしくは直接接地されていることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、長穴内の電界の空間分布に強弱をつけることにより放電が始動しやすくするために、ガスを供給するための1つ以上の長穴の内表面に凹凸をつけたことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、プラズマ照射処理装置を操作するオペレーターの安全のために、絶縁性を高める目的で、プラズマ照射処理装置の最外部に絶縁物としての誘電体カバーを覆って設けたことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、プラズマ照射処理装置を操作するオペレーターの安全性を更に高めるために、プラズマ照射処理装置の最外部である誘電体カバーに金属カバーを覆って設け、かつ当該誘電体カバーと当該金属カバーの間に空気層を設けていることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、被照射体の安全のために、プラズマ噴出口である先端部に取り付けられた高周波電界シールド部材を噴出口先端部付近で前記金属カバーに取り付けて設け、当該金属を電源出力のゼロ電位側につなぐか、または接地して設けたことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、プラズマ照射処理装置を操作するオペレーターの安全性を更に高めるために、前記金属カバーを絶縁物のシートで覆ったことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、コンパクトで静電容量を小さくするために、高電圧供給源として圧電素子を用いた高周波電源であることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、マイルドなプラズマ照射処理のエネルギーの時間平均値の制御と、一方でプラズマジェットの意図的な変動を利用できるように、発生させるプラズマが間欠的なプラズマであることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、プラズマの間欠的なジェット発生のために、供給するガスをパルス的に供給するパルスガス供給装置を設けたことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理装置は、医療分野の止血作業性を高めるために、血液凝固補助剤などの噴射器を設けたことを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理方法は、上記プラズマ照射処理装置を用いて、プラズマジェットを被照射体に照射することを特徴とする。
また、本発明のプラズマ照射処理方法は、上記プラズマ照射処理装置を用いて、血液凝固補助剤あるいは材料表面処理剤が塗布された被照射体にプラズマ照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプラズマ照射処理装置は上記構成であるから、必要以上の温度上昇を引き起こさないマイルドなプラズマ照射処理を開始しようとする時に、プラズマ発生のための電極から被照射体に放電が起こる危険性がなく、プラズマ発生開始を容易にかつ確実に行うことができ、一旦発生するとマイルドなプラズマジェットの状態は変動することなく安定に維持され、その長さを約10mm以上、径を約1mm以下の形状に形成でき、マイルドなプラズマジェットによるプラズマ照射処理では、小型・軽量で制御しやすく、操作性に優れ、対象物の細かなスポット処理が可能な医療用、及び工業分野、農業分野、畜産業分野、林業分野、漁業分野等の非医療用のプラズマ照射処理装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施例1を示した説明図である。
図2】(a)、(b)、(c)は本発明の実施例1のAA’、BB’、CC’の各断面を示した説明図である。
図3図3は本発明の実施例2を示した説明図である。
図4図4は本発明の実施例3を示した説明図である。
図5図5は本発明の実施例4を示した説明図である。
図6図6は本発明の電力供給例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
課題を解決するために、本発明のプラズマ照射処理装置の中心的な構成は、(A)プラズマ始動・安定部、及び(B)プラズマ生成部である。
(A)プラズマ始動・安定部は、プラズマ発生を容易にかつ確実に行える装置部分である。その手段の一例として、トリガー兼放電安定用電極と強電界電極との間で電界強度を高める構成となっている。つまり、ガスを供給するための1本以上の長穴、及びトリガー兼放電安定用電極を導入するための1本以上の穴を有した誘電体などの絶縁物に、ガス供給用の長穴をはさんでトリガー兼放電安定用電極の反対側に、前記絶縁物の外側に電力を供給する強電界電極が密着して取り付けられた形態であり、トリガー兼放電安定用電極と強電界用電極は近づけて設けており、ガス供給用の長穴の空間内で導入ガスの放電を始動させる。当該トリガー兼放電安定用電極は、放電開始のためのみに用いられるのではなく、(B)のプラズマ生成部におけるプラズマ生成後、他の箇所における異常放電を回避し、安定して放電を維持する役割も有している。
一方、(B)プラズマ生成部は、(A)のプラズマ始動・安定部において一旦発生したプラズマから、引き続いて、プラズマを持続して生成する装置部分である。その手段の一例として、前記長穴を有する絶縁物の外側に密着して取り付けられたプラズマ生成用電極により、前記長穴を有する絶縁物の穴の空間内においてプラズマを生成する構成となっている。
(A)と(B)の組み合わせにより、プラズマは安定して持続し、プラズマジェットも形・長さを変えず安定して発生し、照射条件変動もなく安定して、細かなスポット照射処理が可能となる。そして、ガス導入口と反対側にある噴出部を通してプラズマジェットを噴出させるプラズマ照射処理装置である。
【0020】
使用する電圧の周波数としては、1kHzから100kHz程度であり、後述する実施例では、約60kHzを用いた。昇圧トランスの種類は限定しないが、主に圧電素子を利用して昇圧する方式を採用していることを特徴とする。ガスは、不活性ガスを主に用いるが、種類の違う不活性ガスとの混合ガス、活性ガスとの混合ガスを用いても良い。絶縁物としての誘電体は、誘電率100程度以下が好ましく、通常は、石英、シリコン、アルミナ、ジルコニア、医療用カテーテル等を用いる。ノズル先端部の口径は直径約1mm前後程度である。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
図1は本発明の一例を示す実施例1の図であり、図1に示すように、石英等の誘電体にトリガー兼放電安定用電極としての銅線等が挿入されている。当該電極には、インピーダンス(対地容量等)を介して空間に放出されているか、もしくは接地されている。電圧が印加される高圧電極は、上記誘電体に当該高圧電極の厚さ以上の凹みを設けた凹み部に、外部から密着して設けている。電源から給電線を通して印加される交流電圧の周波数例としては、60kHz、印加電圧はピーク間電圧で7.5kV程度である。図では、商用電源、絶縁トランス、DC電源、発振器、昇圧トランスの順番で電源系が構成されている。電力は、商用電源から絶縁トランスを介してDC電源に供給されているが、DC電源を充電池に置き換えても良い。DC電源出力のゼロ電位側は接地しても良い。ガス供給用の管から、ガス、ここではヘリウムガスを流量2L/min程度でガス供給用の長穴に導入し、高圧電極部の誘電体内表面部で導入ガスを放電させてプラズマを生成し、噴出口からプラズマジェットを噴出させた。図で示すように、噴出口である先端部の内径はガスを供給する長穴の内径と同じでも良いし、先端部に誘電体のノズルを取り付けて内径を細くしてプラズマを噴出させても良い。高圧電極とガス管の距離は短い方が好ましく、例えば0.6mm程度である。
【0022】
図2(a)、(b)、(c)は、図1に記載の本発明のプラズマ照射処理装置の各断面(AA’面、BB’面、CC’面)の図をそれぞれ示す。上記のとおり、AA’面は(A)プラズマ始動・安定部の断面であり、BB’面は(B)プラズマ生成部の断面である。プラズの始動は(A)プラズマ始動・安定部で行う。トリガー兼放電安定用電極と強電界用電極間に位置するAA’面の中央の空間に強い電界で放電を始動させる。図では、トリガー兼放電安定用電極と強電界用電極はガスが通過する長穴に対して対向して設けられているが、電界強度を高めるような配置であれば特に対向していなくても良い。
(A)プラズマ始動・安定部は、プラズマジェットの形・長さを変えず安定して発生させ、照射条件変動もなく安定して、細かなスポット照射を可能とさせる。引き続き、(B)マイルドなプラズマ生成部において、効率よくプラズマがBB’面の中央の空間で発生し続ける。そして、プラズマが、BB’面の中央の空間から、CC’面の空間に進み、噴出口からプラズマジェットが安定して出るように作用する構成となっている。
図2(a)の中央の穴がガス供給用の長穴であり、図面下側の穴にはトリガー兼放電安定用電極が導入されている。強電界用電極とプラズマ生成用電極は四角形でもよいが、本実施例では、強電界用電極を半円より小さくして電界強度を高めて電界がより強い場所をガスが通過することを特徴としており(図2(a))、かつプラズマ生成用電極を図2(a)の強電界用電極よりも大きくしてプラズマが生成される面積を広くしていることを特徴としている(図2(b))。強電界用電極とプラズマ生成用電極は一体又はケーブルで連結された構造でも良く、別々に設けても良い。
また、図2(c)に示すように、高圧電極が誘電体によって上下方向から見て隠れており外部と放電が生じにくい構造となっていることを特徴としている。高圧電極が大きい方がプラズマの生成量は多くなる。また、ガス供給用の長穴の内壁は、AA’面、BB’面、CC’面の各断面から見て、局所的電界の強弱を付けてプラズマを発生しやすくする目的で、内面に凹凸を設けてもよい。
【0023】
実施例1は、上記構成であるため、従来技術に比較して、マイルドなプラズマを容易に且つ直ちに発生でき、プラズマジェットの形・長さを変えずに安定して生成・維持させることが可能である。ヘリウムガスの流量が2L/minで2ワット程度のパワーの時、径が約1mmで長さが20mm程度以上のプラズマジェットを生成することが可能であり、小型・軽量で制御し易く、操作性に優れた装置である。
【0024】
実施例1の医療用の効果を見るために、被照射体として、イソフルラン麻酔昏睡下のマウスを絶縁された台の上に置き、実施例1のプラズマジェットを、大腿部大動脈を破断させて出血させた領域に照射処置した。大腿動脈から流れ出る血液は、照射直後から凝固が生じて出血部を塞ぎ、これによって出血は停止した。更に、病理組織学的には、熱による組織挫滅が観察されず、患部の細かなスポット処置の効果が確認できた。
以下に、本発明の他の実施例を説明する。
【0025】
(実施例2)
図3は、図1または図2に記載の本発明のプラズマ照射処理装置において、プラズマ噴出口である誘電体の外表面に高周波電界漏洩防御用としてシールド部材を設けているプラズマ照射処理装置である。シールド部材は、インピーダンス(対地容量等)を介して空間に放出されているか、もしくは接地されている。図3では、シールド部材はビニール等の絶縁物で被覆された銅線であるが、被覆されていない銅線でも良い。電源出力のゼロ電位側は接地しても良い。医療用では被照射体である人間の安全が第一であるので、実施例2は、高周波電界にさらされることを防ぎ、過度のプラズマ照射をより一層高度に制御することに対して効果が大きい構成である。
【0026】
(実施例3)
図4は、図1図2、又は図3に記載の本発明のプラズマ照射処理装置において、照射装置の外部を絶縁物である誘電体カバーで覆ったことを特徴とするプラズマ照射処理装置である。本実施例は医療分野、工業分野いずれであっても、照射行為をするオペレーター側の安全性を高めた構成である。
【0027】
(実施例4)
実施例4は、被照射物、照射行為をするオペレーター側のいずれに対しても、高度な安全性を実現した構成である。すなわち、図5は、図1図2、又は図4に記載の本発明のプラズマ照射処理装置において、照射処理装置の外側である誘電体をシールド(金属カバー)で覆い、かつ照射処理装置の外側である誘電体カバーと前記金属カバーとの間に空気層を設けており、プラズマ噴出口である誘電体の外表面に設けた高周波電界シールド部材を先端部付近で前記金属カバーに取り付けられた形態であり、高周波電界が漏れにくくしていること、安全性を高めていることを特徴とするプラズマ照射処理装置である。前記金属カバーは、電源出力のゼロ電位側につながれており、接地してもよい。また、上記プラズマ照射処理装置において、安全性を更に高めるために、前記金属カバーを絶縁物のシートで覆っても良い。
【0028】
実施例2〜4は、それぞれ上記構成であるため、実施例1と略同様にプラズマジェットを生成可能である。
【0029】
(電力供給例)
図6は、本発明のプラズマ照射処理装置において、周波数が約1〜1000kHzで100ボルト程度の電圧を数m程度の給電線を通して昇圧電源としての圧電素子に電力を供給する形態であり、電源のオン・オフ及びガス弁のオン・オフをフットスイッチ等を利用して制御することを特徴とするプラズマ照射処理装置である。昇圧電源は圧電素子ではなく、巻線型の昇圧トランスでも良い。また、発振器、増幅器、ガス弁を、圧電素子とプラズマ照射処理装置近傍に設置し、5〜30ボルト程度のDC電圧を数m程度の給電線を通して電力を供給しても良い。図では電力は、商用電源から絶縁トランスを介してDC電源に供給されているが、DC電源を充電池に置き換えても良い。図6中において、ガス供給用の管は特に示していない。この形態は、手持ち用としてのみではなく、腹腔鏡及び内視鏡等への機器へ搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、医療用としては、ハンド操作型の血液凝固・止血装置に好適であり、腹腔鏡手術時又は内視鏡手術時などにおける止血装置としても適用できる。また、プラズマジェットを各種材料へ照射処理して機能発現を行う工業用途など、非医療用としても使用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6