特許第5828488号(P5828488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5828488
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】セルロース/キチン系高分子発光材料
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20151119BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20151119BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20151119BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20151119BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K19/00
   C07K14/195
   C07K14/435
   C12N9/02
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-550187(P2013-550187)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2012080241
(87)【国際公開番号】WO2013094359
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-277363(P2011-277363)
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-14817(P2012-14817)
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 英人
(72)【発明者】
【氏名】上垣 浩一
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−507410(JP,A)
【文献】 特開2007−075046(JP,A)
【文献】 特開2008−283959(JP,A)
【文献】 特開2009−085831(JP,A)
【文献】 特開2010−004774(JP,A)
【文献】 特表2001−507569(JP,A)
【文献】 特表2003−526364(JP,A)
【文献】 KIM,S.Y. et al.,Extracellular ATP in plants. Visualization, localization, and analysis of physiological significance,Plant Physiol.,2006年,Vol.142,No.3,p.984-992
【文献】 ICHIOKA,F. et al.,Identification of Rab GTPase-activating protein-like protein (RabGAPLP) as a novel Alix/AIP1-interac,Biosci.Biotechnol.Biochem.,2005年,Vol.69,No.4,p.861-865
【文献】 YANO,S. et al.,N-terminal region of chitinase I of Bacillus circulans KA-304 contained new chitin-biding domain,Biosci.Biotechnol.Biochem.,2011年 2月,Vol.75,No.2,p.299-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 9/00−9/99
C07K 1/00−19/00
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の乾燥状態の発光材料:
発光ドメインとセルロース及び/又はキチン結合ドメインを含むキメラ蛋白質であって、
前記発光ドメインがルシフェラーゼ及び蛍光発光蛋白質からなる群から選ばれる少なくとも1種の発光蛋白質を含み、
前記セルロース及び/又はキチン結合ドメインが配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するキメラ蛋白質を、セルロース又はキチンを含む粒子、ビーズ、シート又はフィルムに結合させてなる、乾燥状態の発光材料
【請求項2】
発光ドメインとセルロース及び/又はキチン結合ドメインが直接又は第1リンカーを介して結合されてなる、請求項1に記載の発光材料
【請求項3】
前記発光ドメインがルシフェラーゼ及び蛍光発光蛋白質を含み、ルシフェラーゼから蛍光発光蛋白質へのエネルギー移動(BRET)が生じ得るものである、請求項1又は2に記載の発光材料
【請求項4】
ルシフェラーゼと蛍光発光蛋白質が第2リンカーを介して結合されてなる、請求項3に記載の発光材料
【請求項5】
ルシフェラーゼが、ウミシイタケルシフェラーゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光材料。
【請求項6】
蛍光発光蛋白質が、GFP、YFP、BFP、CFP、OFP、DsREDまたはRFPである請求項1〜のいずれか1項に記載の発光材料
【請求項7】
蛍光発光蛋白質がYFPまたはRFPである、請求項に記載の発光材料
【請求項8】
第1リンカー及び/又は第2リンカーがプロテアーゼ切断配列を含む、請求項2〜のいずれか1項に記載の発光材料
【請求項9】
ルシフェラーゼ若しくは蛍光発光蛋白質、又は、これらの融合蛋白質に、直接又は第1リンカーを介して配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するセルロース及び/又はキチン結合ドメインを結合させたキメラ蛋白質を製造する工程、及び
製造されたキメラ蛋白質を、セルロース又はキチンを含む粒子、ビーズ、シート又はフィルムに結合する工程
を含む、ルシフェラーゼ若しくは蛍光発光蛋白質、又は、これらの融合蛋白質において乾燥した状態で発光活性を保持する方法。
【請求項10】
ルシフェラーゼ若しくは蛍光発光蛋白質、又は、これらの融合蛋白質に、直接又は第1リンカーを介して配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するセルロース及び/又はキチン結合ドメインを結合させたキメラ蛋白質を製造する工程、及び
製造されたキメラ蛋白質を、セルロース又はキチンを含む粒子、ビーズ、シート又はフィルムに結合する工程
を含む、乾燥した状態で発光活性が保持されたルシフェラーゼ若しくは蛍光発光蛋白質、又は、これらの融合蛋白質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年12月19日に出願された日本国出願第2011-277363号明細書および2012年1月27日に出願された日本国出願第2012-014817号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、セルロース及び/又はキチンに結合可能なキメラ蛋白質及び該キメラタンパク質をコードするDNA又はその相補鎖、発光材料に関する。
【背景技術】
【0003】
高分子の加水分解酵素は、基質に対する結合ドメインを持つことが多く、例えばセルラーゼはセルロース結合ドメインを有し、キチナーゼはキチン結合ドメインを有することが知られている。特許文献1(特許第4604185号)は、耐熱性であって、キチンとセルロースの両方に結合するドメインを開示している。
【0004】
さらに、特許文献2は、BAF(BRET-based Auto-illuminated Fluorescent-protein)技術に基づき、生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonance Energy Transfer, BRET)の効率の高いルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合蛋白質を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4604185号
【特許文献2】特開2008-283959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発光ドメインを用いた新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のセルロース及び/又はキチンに結合可能なキメラ蛋白質及び該キメラタンパク質をコードするDNA又はその相補鎖、発光材料を提供するものである。
項1:発光ドメインとセルロース及び/又はキチン結合ドメインを含むキメラ蛋白質であって、前記発光ドメインがルシフェラーゼ及び蛍光発光蛋白質からなる群から選ばれる少なくとも1種の発光蛋白質を含む、キメラ蛋白質。
項2:発光ドメインとセルロース及び/又はキチン結合ドメインが直接又は第1リンカーを介して結合されてなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
項3:前記発光ドメインがルシフェラーゼ及び蛍光発光蛋白質を含み、ルシフェラーゼから蛍光発光蛋白質へのエネルギー移動(BRET)が生じ得るものである、項1又は2に記載のキメラ蛋白質。
項4:ルシフェラーゼと蛍光発光蛋白質が第2リンカーを介して結合されてなる、項3に記載のキメラ蛋白質。
項5:蛍光発光蛋白質が、GFP、YFP、BFP、CFP、OFP、DsREDまたはRFPである項1〜4のいずれか1項に記載のキメラ蛋白質。
項6:蛍光発光蛋白質がYFPまたはRFPである、項5に記載のキメラ蛋白質。
項7:第1リンカー及び/又は第2リンカーがプロテアーゼ切断配列を含む、項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ蛋白質。
項8:項1〜7のいずれかに記載のキメラ蛋白質をコードするDNAまたはその相補鎖。
項9:項1〜7のいずれかに記載のキメラ蛋白質をセルロース又はキチンを含む粒子、ビーズ、シート又はフィルムに結合させてなる、発光材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキメラ蛋白質は、セルロース、キチンなどの生体高分子材料の粒子、ビーズ、シート、フィルムなどの材料に結合させ、乾燥した状態で長期間活性を保持することができる。発光蛋白質は、一般に乾燥すると失活するので、本発明のキメラ蛋白質は、発光材料として優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】キメラ蛋白質塗布・結合紙片の風乾後の耐乾燥性能(室温保存)評価操作手順を示す。各工程は、以下の通りである。(A)キメラ蛋白質の水溶液を、パンチで切り抜いた円形濾紙片へ滴下し、キメラ蛋白質を濾紙へ結合させる。(a-1)濾紙片を乾燥させる。(a-2)濾紙片を、室温で保存する。(B)バッファーを添加する。(b)これにより、濾紙片を湿潤化する。(C)ルシフェリン水溶液を濾紙片を含むバッファーへ添加する。(c)得られた湿潤濾紙片について、ルシフェラーゼの活性測定をする。
図2】CBD-BAF結合紙片の室温乾燥保存性能を示す。(A)室温で乾燥保存したCBD-BAF-Ym3結合紙片(濾紙)を、バッファー及びルシフェリン水溶液で反応した例を示す。(a)明視野像、(b)マージ像、及び(c)化学発光像をそれぞれ示す。明視野像(a)において、濾紙片中心の円形領域は、CBD-BAF-Ym3の塗布領域を示す。マージ像(b)と化学発光像(c)において、CBD-BAFの塗布領域で緑色の発光が認められた。(B)保存期間を通じた、発光強度の測定結果を示す(N=5)。横軸は、濾紙片の室温乾燥状態での保存期間(週)を示す。縦軸は、測定した発光強度(x108 RLU)を示す。乾燥状態の濾紙は、室温27℃で保存した。
図3】hCBD-eBAF-Ym3結合紙片の長期間の室温乾燥保存性能を示す。(A)hCBD-eBAF-Ym3の構造の模式図を示す。N末端側から順に、セルロース及び/又はキチン結合ドメインであるhCBD及び発光ドメインであるeBAF-Ym3を有する。(B)保存期間を通じた、発光強度の測定結果を示す(N=5)。横軸は、濾紙片の室温乾燥状態での保存期間(週)を示す。縦軸は、測定した発光強度(RLU)を示す。乾燥状態の濾紙は、室温22〜27℃で保存した。なお、保存期間52週は、保存期間1年間を示す。
図4】プロテアーゼ認識配列を有するhCBD-eBAF-R3結合紙片の長期間の室温乾燥保存性能を示す。(A)hCBD-eBAF-R3の構造の模式図を示す。N末端側から順に、セルロース及び/又はキチン結合ドメインであるhCBD、プロテアーゼ認識配列であるHRV-3C切断配列を導入したリンカー、及び発光ドメインであるeBAF-R3を有する。(B)保存期間を通じた、発光強度の測定結果を示す(N=3)。横軸は、濾紙片の室温乾燥状態での保存期間(週)を示す。縦軸は、測定した発光強度(RLU)を示す。乾燥状態の濾紙は、室温22〜26℃で保存した。なお、保存期間52週は、保存期間1年間を示す。
図5】プロテアーゼ認識配列を有するhCBD-eBAF-R4結合紙片の長期間の室温乾燥保存性能を示す。(A)hCBD-eBAF-R4の構造の模式図を示す。N末端側から順に、セルロース及び/又はキチン結合ドメインであるhCBD、プロテアーゼ認識配列であるHRV-3C切断配列を導入したリンカー、及び発光ドメインであるeBAF-R4を有する。(B)保存期間を通じた、発光強度の測定結果を示す(N=3)。横軸は、濾紙片の室温乾燥状態での保存期間(週)を示す。縦軸は、測定した発光強度(RLU)を示す。乾燥状態の濾紙は、室温26℃で保存した。なお、保存期間52週は、保存期間1年間を示す。
図6】プロテアーゼ活性検出モデル系の実施例の手順を示す。(A)(a-1)キメラ蛋白質水溶液を濾紙片へ滴下し、濾紙へ結合させる。これを乾燥させ(i)キメラ蛋白質結合濾紙片(i)を作製した。(a-2)反応バッファー(ii)を加えてこれを十分湿潤させた後、バッファーを除去し、プロテアーゼを含むバッファー溶液(iii)を改めて添加した。(a-3)得られた試料を4℃にて64時間静置し、プロテアーゼ反応を行なった。(B)(b-1)反応前の状態を模式的に示す。バッファー中で、キメラ蛋白質結合濾紙(紙片)は微量遠心チューブの底に沈む。バッファー中には、プロテアーゼ(p)が存在する。(b-2)定温静置により、反応を進行させる。(b-3)反応後の状態を模式的に示す。プロテアーゼにより切断されたBAF部分は、水層中へ遊離する。(b-4)反応後の試料の上清を分取又は分離し、発光(又は蛍光)を測定する。
図7】プロテアーゼ活性検出モデル系の実施例の結果を示す。(A)モデル系の機構を模式的に示す。(a-1)キメラ蛋白質が濾紙に結合した状態を、模式的に示す。キメラ蛋白質は、N末端側から順に、セルロース及び/又はキチン結合ドメインであるhCBD、プロテアーゼ認識配列であるHRV-3C切断配列を導入したリンカー、及び発光ドメインであるBAFを有する。HRV-3C切断配列は、LEVLFQ/GP(/は、切断部位を示す。)である。(a-2)HRV-3Cプロテアーゼの作用によりキメラ蛋白質は切断され、BAF部分は水層へ遊離する。(B)回収した上清(水層)の化学発光測定結果を示す。縦軸は、測定した相対発光強度(RLU)を示す。切断酵素(HRV-3Cプロテアーゼ)を添加した試料(+)の水層は、切断酵素を添加しない試料(-)の水層に対して、3000倍の発光が測定された。(C)SDS-PAGE電気泳動の結果を示す。試料は、左から切断酵素(プロテアーゼ)を添加しない試料(-)の水層、切断酵素を添加した試料(+)の水層、及びhCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3精製標品(hCBD-BAF、コントロール)である。検出されたバンドは、(i)hCBD-BAF、(ii)切断され濾紙から水層中へ遊離したBAF部分、及び(iii)HRV-3C酵素をそれぞれ示す。(D)水層のBAFのGFP蛍光を示す。左は切断酵素(プロテアーゼ)を添加しない試料の水層、右は切断酵素を添加した試料の水層である。
図8】キチン結合ドメインの配列の例を示す。(A)Pyrococcus furiosus由来のキチン結合ドメイン2(chBD2)のアミノ酸配列およびこれをコードする塩基配列の例を示す。(B)chBD2のアミノ酸配列において、Glu(E279)がThr(T)に及びAsp(D281)がAsn(N)に置換されたChBD2(TN)のアミノ酸配列およびこれをコードする塩基配列の例を示す。
図9】プロテアーゼ認識配列を有するキメラ蛋白質結合キチン素材の長期間の室温乾燥保存性能を示す。(A)カニ甲羅に由来するキチン素材に、hCBD-eBAF-Ym3、hCBD-eBAF-R3及びhCBD-eBAF-R4の各々のキメラ蛋白質を塗布した。図9Aは、各種キメラ蛋白質を塗布した領域を各々示す。(B)(b-1)3日間保存した発光蛋白質−キチンハイブリッド素材の蛍光灯下での明視野像を示す。(b-2)3日間保存した該ハイブリッド素材の、励起光照射による蛍光像を示す。(b-3)10か月保存した後の蛍光像を示す。
図10】プロテアーゼ認識配列を有するhCBD-RLuc結合紙片の長期間の室温乾燥保存性能を示す。(A)hCBD-RLucの構造の模式図を示す。N末端側から順に、セルロース及び/又はキチン結合ドメインであるhCBD、プロテアーゼ認識配列であるHRV-3C切断配列を導入したリンカー、及び発光ドメインであるRLucを有する。(B)保存期間を通じた、発光強度の測定結果を示す(N=3)。横軸は、濾紙片の室温乾燥状態での保存期間(週)を示す。縦軸は、測定した発光強度(RLU)を示す。乾燥状態の濾紙は、室温26℃で保存した。
図11】eBAF-Ym3の発光スペクトル及びhCBD-eBAF-Ym3結合キチン素材の、ルシフェリン(発光基質)添加時の化学発光活性を示す(緑色)。キチンには、カニ甲羅に由来するキチン素材を用いた。(A)eBAF-Ym3の発光スペクトルを示す。横軸は、発光波長(Wavelength(nm))を示す。縦軸は、測定した相対発光強度(Relative Intensity)を示す。(B)hCBD-eBAF-Ym3結合キチンハイブリッド素材の一例について、(b-1)明視野像、(b-2)化学発光像、及び(b-3)重ね合わせ像(解説図)を示す。(b-3)において、矢印でhCBD-eBAF-Ym3を塗布した領域を指し示す。
図12】eBAF-Rの発光スペクトル及びhCBD-eBAF-R3結合キチン素材の、ルシフェリン(発光基質)添加時の化学発光活性を示す。(オレンジ色)キチンには、カニ甲羅に由来するキチン素材を用いた。(A)eBAF-Rの発光スペクトルを示す。横軸は、発光波長(Wavelength(nm))を示す。縦軸は、測定した相対発光強度(Relative Intensity)を示す。(B)hCBD-eBAF-R3結合キチンハイブリッド素材の一例について、(b-1)明視野像、(b-2)化学発光像及び(b-3)重ね合わせ像を示す。
図13】eBAF-R4の発光スペクトル及びhCBD-eBAF-R4結合キチン素材の、ルシフェリン(発光基質)添加時の化学発光活性を示す(白色)。キチンには、カニ甲羅に由来するキチン素材を用いた。(A)eBAF-R4の発光スペクトルを示す。横軸は、発光波長(Wavelength(nm))を示す。縦軸は、測定した相対発光強度(Relative Intensity)を示す。(B)hCBD-eBAF-R4結合キチンハイブリッド素材の一例について、(b-1)明視野像、(b-2)化学発光像、及び(b-3)重ね合わせ像を示す。
図14】hCBD-eBAF-Ym3結合キチンハイブリッド素材の発光。キチン素材として、セミの抜け殻を用いた。(A)hCBD-eBAF-Ym3結合素材とコントロールとの対比を示す。(a-1)明視野像及び(a-2)化学発光像を示す。左がhCBD-eBAF-Ym3結合キチン素材、右がバッファーのみを含む容器(コントロール)を示す。(B)hCBD-eBAF-Ym3を結合したセミの抜け殻の全体像を示す。(b-1)明視野像及び(b-2)化学発光像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のキメラ蛋白質は、セルロースおよび/またはキチンに結合するドメイン(セルロース/キチン結合ドメイン)と発光ドメインを有する蛋白質である。
【0011】
(1)セルロース/キチン結合ドメイン
セルロース/キチン結合ドメインは、セルロースに結合できるドメイン(セルロース結合ドメイン)、キチンに結合できるドメイン(キチン結合ドメイン)、セルロール及びキチンの両方に結合できるドメインのいずれであってもよい。
【0012】
セルロース結合ドメインとしては、セルラーゼが有するドメインが挙げられる。微生物、植物、動物などの各種生物由来のセルロース結合ドメインが多数知られており、これらの公知のセルロース結合ドメインを広く使用することができる。
【0013】
キチン結合ドメインとしては、キチナーゼが有するドメインが挙げられる。微生物、植物、動物などの各種生物由来のキチン結合ドメインが多数知られており、これらの公知のキチン結合ドメインを広く使用することができる。
【0014】
キチン結合ドメインの具体例として、耐熱性菌由来のキチナーゼが有するキチン結合ドメインが挙げられる。耐熱性菌としては、Thermococcus属またはPyrococcus属に属する菌が挙げられ、具体的な耐熱性菌としては、Pyrococcus furiosus、Thermococcus litoralis、Pyrococcus sp.KOD1、Thermotoga maritimaが挙げられる。配列番号10に示すアミノ酸配列は、好ましい態様の1つであるPyrococcus furiosus由来のキチン結合ドメイン2(ChBD2)である。当該領域は、Pyrococcus furiosus由来のキチナーゼの、258番目のアミノ酸〜352番目のアミノ酸の領域に相当する。
【0015】
また、セルロース/キチン結合ドメイン(キチンとセルロースの両方に結合できるドメイン)としては、特開2007-075046に開示されるような耐熱性菌由来のセルロース/キチン結合ドメインが挙げられる。具体的には、上記の耐熱性菌由来の耐熱性キチン結合ドメインに変異を導入して得られる耐熱性セルロース/キチン結合ドメインが挙げられる。
【0016】
セルロース/キチン結合ドメインの具体例として、Pyrococcus furiosus由来のキチン結合ドメイン2(ChBD2)のアミノ酸配列(配列番号10)において、二つの酸性アミノ酸(E279とD281)を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列であって、セルロース結合活性を有するポリペプチドをコードするアミノ酸配列が例示される。酸性アミノ酸が置換される他のアミノ酸としては、Gln、Asn、Ala、Ser、Thr、Cys、Met、などに代表される疎水性の低い中性アミノ酸が挙げられ、好ましくはGln、Asn、Ala、Ser、Thr、Cys、より好ましくはGln、Asn、Ala、Ser、Thrが挙げられる。なお、Glu(E279)の置換にはThr(T)がより好ましく、Asp(D281)の置換にはAsn(N)がより好ましい。具体例として、ChBD2のアミノ酸配列において、Glu(E279)がThr(T)に及びAsp(D281)がAsn(N)に置換されたChBD2(TN)配列が挙げられる(図8、配列番号11)。
【0017】
(2)発光ドメイン
発光ドメインは、各種ルシフェラーゼ、蛍光発光蛋白質、あるいはこれらの融合蛋白質(例えばBAF)が挙げられる。ルシフェラーゼとしては、ホタル、イリオモテボタル、ウミボタル、鉄道虫、ヒカリコメツキムシ、渦鞭毛藻、ウミシイタケなどに由来する各種ルシフェラーゼが挙げられ、蛍光発光蛋白質としては、GFP、YFP、BFP、CFP、OFP、DsRED、RFPなどが挙げられる。
【0018】
ルシフェラーゼ又は蛍光発光蛋白質は、単独で発光ドメインとして用いてもよいが、好ましくはルシフェラーゼと蛍光発光蛋白質を直接又は適当な長さのスペーサーを介して結合し、ルシフェラーゼと蛍光発光蛋白質の間にエネルギー移動(BRET)が生じる蛋白質、即ちBAF蛋白質(もしくは単にBAF)が発光ドメインとして好ましい。BAFをコードするDNAの製造法は、例えば特許文献2に例示されており、ルシフェラーゼ遺伝子と蛍光発光蛋白質遺伝子を適当な第2リンカーに対応するDNA配列を介して結合させて得ることができる。本明細書において、発光ドメインがBAFであるキメラ蛋白質を、「CBD-BAF」と呼ぶ場合がある。
【0019】
(3)キメラ蛋白質
本発明のキメラ蛋白質は、セルロース/キチン結合ドメインをコードするDNAと発光ドメインをコードするDNAを直接又は第1リンカーに対応するDNA配列を介して連結したキメラ蛋白質をコードするDNAを含む遺伝子構築物またはベクターを宿主細胞(例えば大腸菌)に導入して形質転換体とし、この形質転換体を培養することにより得ることができる。
【0020】
(4)リンカー
第1リンカーは、アミノ酸からなり、セルロース/キチン結合ドメインと発光ドメインの各々の機能を損なわない限り特に限定されない。第1リンカーのアミノ酸の数は、1個以上であればよく、2〜100個、例えば4〜80個、好ましくは5〜60個、より好ましくは6〜40個程度、さらに好ましくは7〜30個、特に8〜16個程度が挙げられる。
【0021】
第2リンカーは、アミノ酸からなり、ルシフェラーゼから蛍光発光蛋白質へのエネルギー移動を妨げないものであれば特に限定されない。第2リンカーのアミノ酸の数は、通常8〜26個、好ましくは8〜16個、より好ましくは10〜14個、特に12個である。リンカーのアミノ酸数が7個以下或いは27個以上になるとエネルギー移動効率は大きく低下する。
【0022】
リンカー(第1リンカー又は第2リンカー)にプロテアーゼ認識配列を導入しておけば、サンプル中のプロテアーゼの有無を本発明のキメラ蛋白質を用いて検出することができる。あるいは、リンカーにサンプル中の物質が結合し、それにより発光活性が変化するようなアミノ酸配列を導入することにより、そのようなリンカー結合物質を含むサンプルを検出ないし定量することができる。このようなプロテアーゼ認識配列、リンカー結合物質などは公知であり、当業者であれば適宜選択することができる。プロテアーゼとプロテアーゼ認識配列との組み合わせの具体例としては、HRV-3Cプロテアーゼ及びアミノ酸配列LEVLFQ/GP(/:切断部位)が挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
(5)その他
本明細書において、ルシフェラーゼは、天然のルシフェラーゼを使用してもよく、安定性や発光特性などの性質が改善されたルシフェラーゼを使用してもよい。
【0024】
本明細書において、蛍光発光蛋白質は、天然の蛍光発光蛋白質を使用してもよく、安定性や発光特性などの性質が改善された蛍光発光蛋白質を使用してもよい。
【0025】
例えば発光ドメインとしてウミシイタケルシフェラーゼを使用する場合、ウミシイタケルシフェラーゼとしては天然のウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc)を使用してもよく、安定性や発光特性などの性質が改善されたウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc8、Rluc8/A123S/D162E/I163L)を使用してもよい。本明細書において、「ルシフェラーゼ」は、天然型のルシフェラーゼとルシフェラーゼの特性を変化させた任意の改変型ルシフェラーゼの両者を含むものである。同様に、本明細書において、「蛍光発光蛋白質」は、天然型の蛍光発光蛋白質と、蛍光発光蛋白質の特性を変化させた任意の改変型蛍光発光蛋白質との両者を含むものである。
【0026】
蛍光発光蛋白質としては、グリーン蛍光発光蛋白質(GFP)、黄色蛍光発光蛋白質(YFP)、青色蛍光発光蛋白質(BFP)、シアン蛍光発光蛋白質(CFP)、オレンジ蛍光発光蛋白質(OFP)、DsRED、赤色蛍光発光蛋白質(RFP)などが例示される。なお、GFPには、Aequorea属のクラゲ(例えば、Aequorea victoria、Aequorea coerulescensなど。)などに由来する天然型のグリーン蛍光発光蛋白質(例えば、AvGFP、AcGFPなど。)及びEGFPなどの種々のGFP誘導体が含まれる。YFPについても、EYFP、Topaz、Venus、Citrineなどのアミノ酸置換した変異体が広く含まれる。DsREDには、Discosoma属の珊瑚に由来する天然型の蛍光発光蛋白質及びそのアミノ酸配列を改変(置換、付加、欠失、挿入など)した変異体、さらには多量体型である天然型のDsREDを改変した単量体型(例えば、mCherryなど。)が広く含まれる。DsREDとしては、単量体型のDsREDが好ましい。RFPには、イソギンチャク(例えば、Entacmaea quadricolor。)などに由来する天然型の赤色蛍光発光蛋白質(ただし、赤色を発するDsREDは含まれないと理解される。)及びそのアミノ酸配列を改変した変異体が広く含まれる(例えば、TurboRFPなど)。他の蛍光発光蛋白質についても同様に、天然型の蛍光発光蛋白質や、アミノ酸配列を改変(置換、付加、欠失、挿入など)した変異体が広く含まれる。
【0027】
蛍光発光蛋白質として、pHに依存してRLU(Relative light unit、相対発光強度)ないし蛍光波長が変化するもの(例えばYFPなど)を使用すれば、これら蛍光発光蛋白質の存在する場所のpHを測定することができ、本発明のキメラ蛋白質はpHインジケータとして使用することができる。また、GFPなどのpHによりRLUないし波長があまり変化しないものは、pHに依存することなく、本発明のキメラ蛋白質あるいはそれにより標識された蛋白質等の物質を定量等することができる。
【0028】
本発明のDNAは、本発明のキメラ蛋白質をコードするDNAである。
【0029】
本発明のキメラ蛋白質は,後述する本発明の遺伝子を発現ベクターに組み込み,適当な宿主細胞内で発現させることにより得ることができる。宿主細胞としては哺乳動物細胞を含む動物細胞、植物細胞、酵母などの真核生物細胞、大腸菌、枯草菌、藻類、真菌類などの原核生物細胞、植物細胞が挙げられ、そのいずれを用いてもよい。好ましい宿主細胞としては、大腸菌などを用いることができる。
【0030】
本発明キメラ蛋白質の特徴の一つは、セルロース又はキチンから構成されるシート、フィルム、粒子、ビーズなどの任意の材料に付着ないし結合させ、乾燥させたときに、その発光活性が長期間保持されることにある。従って、本発明のキメラ蛋白質は、発光材料として有用である。また、本発明のキメラ蛋白質は、長期保存中にも発光活性が低下しないため、標準物質としても有用である。
【0031】
本明細書において、セルロースとしては、天然セルロース、再生セルロースのいずれも使用できる。天然セルロースとしては、針葉樹や広葉樹から得られる精製パルプ、コットンリンターやコットンリントより得られるセルロース、バロニアやシオグサなどの海草より得られるセルロース、ホヤより得られるセルロース、バクテリアの生産するセルロース等が挙げられる。再生セルロースとしては、天然セルロース繊維をいったん溶解した後、セルロースの組成のままで繊維状に再生したものが挙げられる。
【0032】
キチンは、例えばカニの甲羅から製造することができる。好ましい実施形態では、本発明で使用するキチンは、水洗したカニ殻を、塩酸などの酸で処理して無機質(カルシウムなど)を除き、次いで苛性ソーダで処理して有機質(例えば蛋白質)を除去し、さらにアルコール処理して脂質を除去し、不溶の残分として得られたキチンを使用することができる。カニ甲羅素材を粉砕して粒子状としてもよい。
また、キチンとして、セミ類の抜け殻を用いることもできる。セミ類の抜け殻は、キチンが内表面に露出しているため、無処理で使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。本実施例において、「CBD-BAF」及び「hCBD-BAF」は、「キメラ蛋白質」に含まれるものと理解される。
【0034】
実施例1
プラスミドの作製
(1)pCII-CBD-eBAF-Ym3及びpCII-CBD(TN)-eBAF-Ym3
CBD-eBAF-Y発現ベクターを作製するために、CBD(wt)又はCBD(TN)をコードする遺伝子をPCRにより増幅した。PCRに用いられたプライマーは次の通りである:
chBD2-F-NdeI,5’-GGAATTCCATATGACTACCCCTGTCCCAGTCTC-3’;
chBD2-R-NdeI, 5’-CGATATCCATATGAATTACTTGTCCGTTTATTTCTAG-3’。
PCR断片をNdeIで消化し、pCII-eBAF-Ym3のNdeI部位へ組み込み、pCII-CBD-eBAF-Ym3及びpCII-CBD(TN)-eBAF-Ym3を構築した。
【0035】
なお、eBAF-Ym3は、特許文献1に記載されている。eBAF-YのRLuc8部分に、A123S、D162E、I163Lの変異を導入したBAF蛋白質のことである。ここでのCBDとCBD(TN)をコードする遺伝子は、超高熱菌のゲノムに由来する配列である。
【0036】
(2)pCII-hCBD-eBAF-Y
大腸菌での効率的な蛋白質発現のために、大腸菌でのコドン最適化を目的としたCBD遺伝子の人工合成を行った(CBD(TN)のみ)。当該人工合成CBD(TN)遺伝子(以下hCBDと呼称して区別するが、アミノ酸配列はCBD(TN)と同一である)を、上記pCII-CBD(TN)-eBAF-Ym3のCBD(TN)部分と置換したpCII-hCBD-eBAF-Ym3を構築した。またこの時、後々の組換えに備え、人工遺伝子設計に際し、hCBD配列の3’側にAsp718-BamHI-NdeI部位を付加した。その結果、連結部分の塩基配列は、5’-GGTACCGGGGGATCCCATATG-3’となり、G-T-G-G-S-Hのアミノ酸配列でhCBDとeBAF-Ym3をインフレームに連結することになる(NdeI部位のATGはeBAF-Ym3の開始Metに相当)。
【0037】
(3)pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3
pCII-hCBD-eBAF-Ym3のAsp718-BamHI部位に、AspHRV3CsBam-Sens:5’-GTACCGGTGGTTCCGCGGGTCTGGAAGTTCTGTTCCAGGGGCCCTCCGCGGGTtccggtg-3’とAspHRV3CsBam-Anti:GATCCACCGGAACCCGCGGAGGGCCCCTGGAACAGAACTTCCAGACCCGCGGAACCACCGからなる合成2重鎖DNAを挿入し、HRV-3Cプロテアーゼの切断配列を挿入した。Asp718部位からBamHI部位までに対応するアミノ酸配列は、G-T-G-G-S-A-G-L-E-V-L-F-Q-G-P-S-A-G-S-G-G-Sであり、中央のLEVLFQ/GPが当該プロテアーゼの切断配列である(/:切断部位)。
【0038】
(4)pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeI
pCII-eBAF-Yで代表される各種BAFの大腸菌発現ベクターにおいて、2008年に開発済の400種類を超える各種BAFは全てNdeI-XbaI部位でクローニングされている。一方でpCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3は、hCBD部分がNdeI部位で挿入されており、BAFの置換体を作製するためにhCBD部分の5’側のNdeI部位が新たなBAF置換体作製の障害になる。そのため、hCBDdelNdeIoligo-Sens: 5’-TCATCATCATCATCAcATGACCACTCCGGTG-3’、hCBDdelNdeIoligo-Anti: 5’-CACCGGAGTGGTCATgTGATGATGATGATGA-3’を用いて、1塩基の塩基置換変異導入により、NdeI部位を破壊した、pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeIを作製した。なお、この一塩基変異導入にはストラタジーン社のQuickExchenge systemを用いた。
pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeIを用いて発現させたキメラ蛋白質濾紙に吸着/結合させて乾燥した後の発光活性の試験結果を図3に示す。
【0039】
(5)pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3及びpCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R4
pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeIをNdeI及びXbaIを用いて消化し、、eBAF-Ym3部分を除去して、その代わりにBAF-R3又はBAF-R4を挿入した。かくして、pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3及びpCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R4を作製した。なお、BAF-R3及びBAF-R4は、それぞれ赤色蛍光発光蛋白質として、TurboRFP及びmCherryを含んでいる。BAF-R3及びBAF-R4は、特許文献1に記載の方法に準じて作製した。
【0040】
pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3及びpCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-R4を用いて発現させたキメラ蛋白質濾紙に吸着/結合させて乾燥した後の発光活性の試験結果を図4図5に示す。
【0041】
(6)pCII-hCBD-RLuc
上記(5)と同様にして、pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeIからeBAF-Ym3部分を除去して、その代わりにRLuc(ウミシイタケルシフェラーゼ)を挿入した。得られたpCII-hCBD-HRV3Cs-RLucを用いて発現させたキメラ蛋白質濾紙に吸着/結合させて乾燥させ、室温保存した後の発光活性の試験結果を図10に示す。
【0042】
リコンビナント蛋白質の調製
各キメラ蛋白質について、リコンビナント蛋白質をHisタグ融合蛋白質として、大腸菌BL21株において低温ショック誘導性プロモーターシステム(TAKARA)により発現させた。リコンビナント蛋白質は、Ni-NTAアフィニティーカラムを用いて精製した。
【0043】
各種キメラ蛋白質結合濾紙の作製
穴あけパンチで作製した直径6mmの丸形濾紙(ADVANTEC)片をパラフィルム上に置き、当該濾紙片にHisタグ精製した各種キメラ蛋白質の高濃度水溶液を数μlずつ滴下、次いで乾燥の工程を繰り返した。十分量のキメラ蛋白質を結合後、大量の精製水にて、当該濾紙片を洗浄し、未結合のCBD-BAFを除去した。洗浄後の濾紙片をパラフィルム上で風乾することで、各種キメラ蛋白質結合濾紙を作製した。図1に、方法の概要を模式的に示す。キメラ蛋白質としては、CBD-eBAF-Ym3、hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeI(以下、「hCBD-eBAF-Ym3」と記載する場合がある。)、hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3(以下、「hCBD-eBAF-R3」と記載する場合がある。)、hCBD-HRV3Cs-eBAF-R4(以下、「hCBD-eBAF-R4」と記載する場合がある。)及びhCBD-HRV3Cs-RLuc(以下、「hCBD-RLuc」と記載する場合がある。)を用いた。
【0044】
キメラ蛋白質結合濾紙の発光像観察
リンゴ型パンチで切り抜き、中央部にCBD-eBAF-Ym3を結合させた。その後、洗浄した濾紙片に対し、ルシフェリン溶液を添加して、黄緑色発光を視認観察した。塗布部からの拡散が見られないことを確認後、LAS-4000にて、High Resolution mode(感度最低)で4秒間露光により、発光画像を取得した。結果を、図2Aに示す。
なお、本実施例のみ、セルロース/キチン結合ドメインとしてCBD(chBD2(TN)型で、変異導入部分以外は天然型の超好熱性細菌由来の遺伝子(塩基)配列)を有する、CBD-eBAF-Ym3を使用した。本実施例以外は、全てchBD2(TN)のアミノ酸配列をコードするが、大腸菌でのコドン使用に最適化した人工合成遺伝子を使用した(「hCBD」と呼ぶ場合がある。)。
【0045】
キメラ蛋白質結合濾紙の室温乾燥保存後の発光量測定
CBD-eBAF-Ym3蛋白質結合濾紙をプラスチックペトリディッシュに入れ、フタをした後、室温(26℃〜27℃)暗所にて保存した。測定直前に、当該乾燥濾紙片をルミノメータ用測定チューブ(Nunc)に入れ、発光反応バッファー(60 mM NaCl, 50 mM Tris-HCl, pH8.0)200 μlを加えて、十分湿潤させた。当該チューブに、1 μMルシフェリン溶液200 μlを添加し、発光測定を行った。発光量はLuminescencer-PSN (アトー)を用いて、10秒間の積算により測定した。結果を図2Bに示す。
hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3ΔNdeI、hCBD-eBAF-R3、hCBD-HRV3Cs-eBAF-R4及びhCBD-HRV3Cs-RLucについても、同様に保存後の発光量を測定した。結果を、図3〜5及び図10にそれぞれ示す。
【0046】
プロテアーゼ活性検出系の実施
系の概要を、図6及び図7Aに模式的に示す。
【0047】
hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3を、pCII-hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3含有大腸菌を用いて、発現誘導し、次いでこれを精製した。得られたhCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3を用いて、当該蛋白質結合乾燥濾紙片を調製した。
【0048】
濾紙片を2.0 ml 微量遠心チューブに入れ、1xHRV-3C バッファー(150 mM NaCl, 50 mM Tris-HCl,pH7.5)100 μlを加えて、十分湿潤させた後、一旦バッファーを完全に除去した。バッファー湿潤濾紙片を含む当該チューブに、1xHRV-3C バッファー溶液もしくは4UのHRV-3Cプロテアーゼ(Novagen)を含む1xHRV-3C バッファー溶液120 μlを改めて添加し、4℃にて64時間静置した。反応後、当該微量遠心チューブを遠心し、上清40 μlを別チューブに分取した。回収上清4 μlずつをSDS-PAGEに供し、電気泳動による分離後、CBB染色を行った。尚、コントロールとして、未反応のhCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3精製標品を用いた。結果を図7Cに示す。
【0049】
また、回収上清2 μlを発光反応バッファー(60 mM NaCl, 50 mM Tris-HCl, pH8.0)200 μlに希釈し、等量の0.5 μMルシフェリン溶液を加えて発光測定を3回行った。発光量はLuminescencer-PSN (アトー)を用いて、10秒間の積算により測定した。結果を、図7Bに示す。
【0050】
また、回収上清を青色LEDトランスイルミネーターとオレンジ色アクリル板を用いて、蛍光観察を行った。画像取得は、デジタルカメラ(Nikon D-70)を用いた写真撮影により行った。結果を図7Dに示す。
【0051】
各種hCBD-BAF蛋白質結合キチン素材の作製
カニ甲羅を塩酸処理(脱カルシウム)、NaOH処理(除タンパク)、次いでアルコール処理(除脂質)を順次施し、キチン素材(カニ甲羅キチン素材)を得た。得られたキチン素材に、3種のhCBD-BAF蛋白質(hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3、hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3及びhCBD-HRV3Cs-eBAF-R4)を、領域を分けて塗布(図9A)して、これを乾燥した。室温にて3日間保存した後、505nmの緑色LEDイルミネータを照射し、オレンジ色フィルターを透過する光をデジカメで撮影した。図9Bの(b-1)は蛍光灯下での明視野像、(b-2)は蛍光像をそれぞれ示す。図9Bの(b-1)及び(b-2)は、同一アングルから撮影した写真である。陰性対照と未塗布部分が緑色なのは、照射緑色光が反射しているためである。さらに、同一試料を室温にて10か月乾燥保存した後の蛍光像を、図9Bの(b-3)に示す。
hCBD-BAFに用いた各種BAFのスペクトル測定
3種のhCBD-BAF蛋白質(hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3、hCBD-HRV3Cs-eBAF-R3及びhCBD-HRV3Cs-eBAF-R4)に用いた各種BAF蛋白質単体(eBAF-Ym3、eBAF-R3及びeBAF-R4)について、特許文献2に記載の方法に準じてスペクトル測定を行なった。結果を、図11〜13に示す。
セミ抜け殻へのCBD-BAF蛋白質の結合及び発光観察
キチン素材として、セミ抜け殻を用いた。セミ抜け殻に直接hCBD-HRV3Cs-eBAF-Ym3を塗布した。当該ハイブリッド材料を前述の反応バッファーに浸し、ルシフェリン溶液を添加した後、発光の様子をデジタルカメラで記録した。結果を図14に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]