特許第5829327号(P5829327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5829327
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20151119BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20151119BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   A41B13/02 E
   A61F13/18 310Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-266744(P2014-266744)
(22)【出願日】2014年12月26日
【審査請求日】2015年8月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100141438
【弁理士】
【氏名又は名称】吉迫 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎一
(72)【発明者】
【氏名】河守 良太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−302555(JP,A)
【文献】 特開2011−120661(JP,A)
【文献】 特開平9−299402(JP,A)
【文献】 特開平5−317358(JP,A)
【文献】 特開平10−211232(JP,A)
【文献】 特開2007−130178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面側に突出する凸部と、前記第2面側に窪んだ溝部とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収性物品用の不織布であって、
前記凸部は、前記不織布の面の第1方向に向けて延設されていると共に、前記不織布の面において前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で複数列設けられ、
前記溝部は、前記第2方向に対して隣り合う前記凸部の間の空間に、前記第1方向に延設されていると共に、前記溝部の溝底部に、該溝部の溝底部よりも前記第2面側に位置する底部を有し、且つ前記第1方向に対して不連続に設けられた複数の凹部を備え、
前記凹部は、該凹部の周面の少なくとも一部が、前記第2面に通じる孔部を備えていて、前記凹部の底部は、前記凸部よりも繊維密度が高く、且つ少なくとも前記第2面側が面状に形成されている、吸収性物品用不織布。
【請求項2】
前記凹部は、前記第1方向に沿うように形成された一対の第1周面と、前記第2方向に沿うように形成された一対の第2周面とを有し、前記孔部は前記第1周面にのみ設けられていると共に、前記第2周面は前記溝部の溝底部と連続している、請求項1に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項3】
前記凹部の前記底部の厚さは、前記凸部における最も前記第1面側に突出した部分の厚さよりも小さい、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項4】
前記凹部の前記底部の繊維密度は、前記凸部の繊維密度の1.3〜15倍である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項5】
前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさは、前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凸部の頂部の高さまでの大きさの50〜80%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項6】
前記凸部は、隣接する他の凸部との間の間隔が0.25〜5mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に使用される不織布に関するものである。
【0002】
例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品において、トップシート等の構成部材として用いられる不織布は、使用者の肌に触れる部分であることから、柔軟で肌触りが良いことが大きな条件となる。
そのため、近年では、肌と接触する面に、複数列の畝状の凸部と、隣接する凸部の間の空間に設けられた溝部とが設けられた不織布が用いられることが多くなっているが、このような不織布は、比較的柔軟な凸部が肌に接触し、またその凸部が肌面にフィットし易いため、不織布の柔軟性を感じ易い傾向にある。
【0003】
この種の不織布の中には、柔軟性をより向上させるため、例えば特許文献1に記載されているように、凸部の間の溝部内に不織布の厚さ方向に貫通する貫通孔を設けた構成のものが存在する。この特許文献1に記載の不織布は、貫通孔により凸部の動きの自由度や、繊維の動きの自由度が向上するため、肌の動きに合わせて凸部や繊維が追従して該凸部の柔軟性をより感じ易くなることから、肌触りがより良く感じ易い傾向にある。
しかしながら、この特許文献1に記載の不織布は、溝部に貫通孔を形成する工程において、不織布中の熱可塑性樹脂繊維を溶融させながら、貫通孔形成用のピンロールに設けられたピンを不織布の厚さ方向に貫通させることにより貫通孔を形成するため、貫通孔の周縁が溶融によって硬化し易い。
そのため、肌が不織布に接触した際、特に、不織布を厚さ方向に押圧した場合や、不織布の平面方向に肌を滑らせた場合には、貫通孔の周縁の硬い部分が肌に当たって著しい違和感を感じさせる可能性があり、不織布の肌触りを大きく損ねることが考えられる。
【0004】
一方で、引用文献1の不織布を吸収性物品のトップシートとして用いた場合、不織布における凸部の突出側とは反対側の面が吸収性物品の吸収体に当接することになるが、このとき、引用文献1の不織布は、貫通孔の開口縁が凸部の突出側とは反対側の面に突出した態様となっていため、この貫通孔の開口縁が吸収体に当接する。
しかしながら、貫通孔の開口縁は非常に薄く、実質的に吸収体に線接触した態様となるため非常に脆く、わずかな力が作用しただけで貫通孔の開口縁が潰されたり、貫通孔全体が潰されたりする可能性がある。
そのため、トップシートである不織布が使用者の肌によって吸収体側に押圧された場合や、製品としての吸収性物品を包装用の袋に折り畳んで収容、搬送される際に吸収体全体が圧縮された場合には、貫通孔の開口縁に過度の圧縮力が作用して、貫通孔や開口縁が潰れて元の不織布の形状に戻らなくなることが考えられる。したがって、引用文献1の不織布は、吸収性物品に使用した場合には、この不織布が本来有している柔軟性を発揮できず、所望の使用感を得ることができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−302555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、肌に接触した際に柔軟な肌触りを得ることができ、しかもその柔軟な肌触りを安定的に確保することができる吸収性物品用の不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の吸収性物品用不織布の構成は次の通りである。
(1)第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面側に突出する凸部と、前記第2面側に窪んだ溝部とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収性物品用の不織布であって、前記凸部は、前記不織布の面の第1方向に向けて延設されていると共に、前記不織布の面において前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で複数列設けられ、前記溝部は、前記第2方向に対して隣り合う前記凸部の間の空間に、前記第1方向に延設されていると共に、前記溝部の溝底部に、該溝部の溝底部よりも前記第2面側に位置する底部を有し、且つ前記第1方向に対して不連続に設けられた複数の凹部を備え、前記凹部は、該凹部の周面の少なくとも一部が、前記第2面に通じる孔部を備えていて、該孔部は、前記熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく形成された周縁部を有していると共に、前記凹部の底部は、前記凸部よりも繊維密度が高く、且つ少なくとも前記第2面側が面状に形成されている、吸収性物品用不織布。
【0008】
(2)前記凹部は、前記第1方向に沿うように形成された一対の第1周面と、前記第2方向に沿うように形成された一対の第2周面とを有し、前記孔部は前記第1周面にのみ設けられていると共に、前記第2周面は前記溝部の溝底部と連続している、前記(1)に記載の吸収性物品用不織布。
(3)前記凹部の前記底部の厚さは、前記凸部における最も前記第1面側に突出した部分の厚さよりも小さい、前記(1)又は前記(2)に記載の吸収性物品用不織布。
【0009】
(4)前記凹部の前記底部の繊維密度は、前記凸部の繊維密度の1.3〜15倍である、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の吸収性物品用不織布。
(5)前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさは、前記溝部の前記溝底部の第1面側の高さから前記凸部の頂部の高さまでの大きさの50〜80%である、前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の吸収性物品用不織布。
(6)前記凸部は、隣接する他の凸部との間の間隔が0.25〜5mmである、前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の吸収性物品用不織布。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凸部間に設けられた溝部の溝底部に設けられた凹部により、凸部や凸部の繊維の移動の自由度が増す上、凹部の孔部によって凸部の引張力が緩和されて凸部全体が柔らかくなるため、肌に接触した際の柔軟性を確保することができる。
一方で、吸収性物品に使用された場合には、凹部の底部が不織布の変形を抑えると共に、吸収性物品の他の部材に安定的に面接触するため、凹部を通じて不織布全体を支えて保形し易くなり、柔軟な肌触りを安定的に維持、確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明に係る吸収性物品用不織布の一実施の形態を模式的に示す平面図である。
図2図2は本発明に係る吸収性物品用不織布の一実施の形態を模式的に示す一部破断斜視図である。
図3図3図1の要部拡大断面図である。
図4図4は本発明に係る吸収性物品用不織布における凹部の孔部周辺を示す写真である。
図5図4は本発明に係る吸収性物品用不織布を製造するための製造装置の一例を模式的に示す図である。
図6図5は賦形装置の一対の延伸ロールを模式的に示す要部拡大斜視図である。
図7図6は下方の延伸ロールのピンの配置を模式的に示す要部拡大図である。
図8図7は上方の延伸ロールと下方の延伸ロールの噛み合わせ状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図4は、本発明の吸収性物品用不織布の一実施の形態を示すもので、この実施の形態の不織布1は、図1図4において第1面である上面2と、その上面2とは反対側の第2面である下面3とを有し、上面2側に突出する凸部4と、下面3側に窪んだ溝部5とを備えた、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収性物品用のものである。
なお、本発明の不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、尿取りパット、パンティーライナー等の吸収性物品のトップシートや防漏壁等、即ち、吸収性物品の使用者の肌と接する側に配設されるシートとして好適に用いられる。あるいは、使い捨ておむつ等のバックシートの外方側の面に貼り付けられるシートとしても用いられる。
【0013】
不織布1は、材料となる加工前の不織布を、上面側及び下面側とに交互に折り返すことにより形成された略波型のシートで、この実施の形態においては、上面側において折り返された部分によって上方に凸となるように湾曲する凸部4が形成され、下面側において折り返された部分によって下方に凸となるように湾曲する溝部5が形成された構成となっている。
凸部4は、不織布1の面(シート面)の第1方向Xに向けて連続的に延設されていると共に、その不織布1の面における第1方向Xと直交する第2方向Yに予め定めた間隔で複数列設けられている。この実施の形態においては、各凸部4は、いずれも第1方向Xにむけて連続的に、且つ他の凸部4と相互にほぼ平行となるように延設されている。
一方、溝部5は、第2方向Yに対して隣り合う凸部4,4の間の空間に、第1方向Xに延びるように設けられていて、凸部4の頂部4aよりも下面側に窪んだ溝底部6を有している。
【0014】
凸部については、隣接する他の凸部との間の間隔は0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは、0.75〜2mmとすることである。なお、ここで、隣接する凸部の間の間隔とは、各凸部の第2方向の略中央位置(実質的に頂部)の間の距離を指す。
隣接する凸部の間の間隔の距離が0.25mm未満であると不織布が凹凸構造を形成しているとは言い難く、凸部による肌との接触面積をあまり減らすことができないため、肌触りが低下する可能性がる一方、逆に5mm超であると加工前における加工対象の不織布と大差がなくなるため、凹凸を生かした柔軟な肌触りを得ることができない。
また、凸部は、溝部の溝底部において最も深い位置(不織布の第2面側)から、その凸部における最も高い位置(通常凸部の頂部)までの高さは0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは、0.75〜2mmとすることである。高さが0.25mm未満であると、凸部の突出が小さすぎて凹凸構造を生かした柔軟な肌触りを得ることができない。逆に5mm超であると、凸部が突出しすぎて鋭利な構造となってしまうため、やはり柔軟な肌触りを得ることができない。
【0015】
溝部5の溝底部6内には、この溝部5の溝底部6よりも下面3側に位置する底部9を備え且つ第1方向Xに対して不連続に設けられた複数の凹部7が設けられている。
これらの凹部7は、それぞれ、溝底部6と連続した状態で下面3側に向けて延びる立壁状の周面8と、この周面8の下端側に設けられた前述の底部9とを備えている。
この実施の形態においては、凹部7は、平面視略矩形状の開口及び周面8並びに底部9を有する上方開口の略直方体状の空間を備えた構成となっていて、各凹部7は、不織布1の下面3側に突出し、且つ他の凹部7から相互に独立した状態で形成されている。
また、周面8は、第1方向Xに沿うように延びる一対の第1周面8a,8aと、第2方向Yに沿うように延びる一対の第2周面8b,8bとを備えていて、一対の第1周面8a,8a同士は相互に向かい合う位置に配設されていると共に、一対の第2周面8b,8b同士についても相互に向かい合う位置に配設されている。
【0016】
さらに、図2図4に示すように、凹部7は、周面8のうちの第1周面8aには、その第1周面8aを貫通して不織布1の下面3側に通じる孔部11が形成されていると共に、第2周面8b,8bは溝部5の溝底部6と途切れることなく、また継ぎ目なく連続している。
図2に示すように、この実施の形態においては、孔部11は、一対の第1周面8a,8aのそれぞれに1つずつ設けられていて、それらの孔部11は、第1周面8aにおける凹部7の底部9寄りの位置に形成されたものとなっている(したがって、1つの凹部7には2つの孔部11が存在している。)。
一方で、一対の第2周面8b,8bは、孔部11に相当するものは存在せず、各第2周面8bは、下端側の全部が底部9と、途切れることなく直接的に連結された状態となっている。
【0017】
ここで、凹部を設けたのは、溝部の溝底部が肌に触れた際の接触面積を極力減らすためである。即ち、この発明の不織布は、凸部、次いで溝部の溝底部の順に肌に触れ易いが、凸部が最も柔軟性が高いため、溝底部よりも凸部が肌に触れる機会が多いことが好ましく、且つ不織布としては肌に触れる接触面積が少ない方が柔軟性を感じ易い。そのため、凹部を設けることにより、溝部の溝底部においては肌に接する部分をより少なくして、肌に当たる機会及び接触面積が可及的に少なくなるようにしている。
また、凹部を溝部の溝底部に設けたのは、肌に触れにくい部分を形成すると共に、その肌に触れにくい部分である凹部において、後に詳述する底部で剛性を確保し、不織布が圧縮された際の強度を補填するためである。
【0018】
凹部については、溝部の溝底部の第1面(この場合は上面)側の高さから、この凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさが0.05〜2mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.075〜1.5mm、より好ましくは0.1〜1mmとすることである。
溝部の溝底部の第1面側の高さから凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさが0.05mm未満であると、後述の底部の剛性を確保しづらく、不織布の厚み方向の強度が不足し、逆に2mm超であると、吸収性物品の他の部材、例えば吸収体や不織布、フィルム等と貼り合わせる際、厚さ方向の強度が出ない一方で、圧縮した際に剛直感を感じてしまう可能性がある。
【0019】
また、凹部と凸部との関係について、溝部の溝底部の第1面側の高さから凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさは、溝部の溝底部の第1面側の高さから凸部の頂部の高さまでの大きさの10〜80%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜60%とすることである。
溝部の溝底部の第1面側の高さから凹部の底部の第1面側の高さまでの大きさが、溝部の溝底部の第1面側の高さから凸部の頂部の高さまでの大きさの10%未満であると、周面における孔部の形成スペースが十分に確保できず、孔部の形成が不十分となって凸部、延いては不織布としての柔軟性を得られない。逆に80%を超えると、凹部が深くなりすぎて凹部の周の強度が低下し毛羽立ち易くなるため、肌触りが低下する可能性がある。
【0020】
また、凹部の第1方向の長さは、溝部の溝幅、即ち隣り合う凸部の間の距離にもよるが、0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmとすることである。
凹部の第1方向の長さが0.25mm未満であると、凹部が小さくなりすぎて、凹部がほとんど機能しない可能性があり、逆に5mm超であると、凹部が第1方向に長くなりすぎて、平坦な不織布や凹部が存在しない不織布と柔軟性において大差がなく、柔軟な肌触りを得ることができない。
一方、凹部の第2方向の長さは、溝部の溝幅にもよるが、0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmとすることである。
凹部の第2方向の長さ0.25mm未満であると、やはり凹部が小さくなりすぎ、特に底部の形成が不十分になるため、凹部がほとんど機能しない可能性があり、逆に5mm超であると、凹部が大きくなりすぎて、後述する底部の剛性との関係で、不織布が硬くなる可能性がある。
【0021】
さらに、孔部の大きさについて、孔部の最大部分の長さ(この実施の形態の場合、第1方向Xの長さ)は、凹部の大きさにもよるが、形成する周面の大きさと同じが小さい範囲内において、0.25〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmとすることである。
孔部の最大部分の長さが0.25mm未満であると孔部の形成が不十分であり、凹部の柔軟性が確保できない上、凸部の繊維の引張力が低下せずに凸部の十分な柔軟性が確保できない。逆に、5mm超であると孔部が大き過ぎて周縁部が毛羽立ち易くなり、かえって孔部の違和感や異物感が生じ、不織布の肌触りを低下させるおそれがある。
また、孔部の高さ方向の最大長さは、凹部の深さにもよるが、0.1〜5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.25〜3mm、より好ましくは0.5〜2mmとすることである。
孔部の高さ方向の最大長さが0.1mm未満であると、孔部の形成が不十分であり、この場合であっても、凹部の柔軟性が確保できない上、凸部の繊維の引張力が低下せずに凸部の十分な柔軟性が確保できない。逆に、5mm超であると孔部の周縁部大き過ぎて周縁部が毛羽立ち易くなり、孔部が違和感や異物感が生じさせ易くなるため、不織布の肌触りを低下させる可能性がある。
【0022】
一方で、孔部を第1周面にのみ設けて、第2周面については溝部の溝底部と連続させているのは、孔部が設けられている溝部と隣り合う凸部の繊維の引張力を開放して、凸部全体あるいは凸部を形成する繊維が移動する自由度を向上させる一方、第1方向に肌を滑らせた際に、凹部あるいは凹部の孔部の存在を感じにくくするためである。
即ち、孔部を第1周面にのみに形成することによって凸部や凸部の繊維の自由度を向上させ、これにより、凸部の柔軟性、より具体的には凸部における不織布の厚さ方向への柔軟性、及び不織布の平面方向、特に第2方向に肌を滑らせた際の柔軟性を向上させて、滑らかな感触を確保することができる。
また、第2周面については溝部の溝底部と連続させたことにより、肌を第1方向、即ち凸部や溝部が延びている方向に肌を滑らせた場合に、孔部に対する肌の引っ掛かりが小さくなって孔部の存在をより感じにくくなるため、違和感や異物感を感じづらくなる。特に、第1方向に肌を滑らせたと際には、第2方向に肌を滑らせた場合と異なり、肌が凹部に接し易くなるが、その場合であっても孔部が感じられにくくなるため、主に凸部から得られる不織布の柔軟な感触が損なわれにくくなる。
これにより、凸部に、優れた硬軟感(不織布の厚さ方向への優れた柔らかさ)及び不織布の第2方向への優れた粗滑感(不織布の平面方向の優れた滑らかさ)の両方を付与して、不織布全体として優れた硬軟感及び粗滑感を確保することが可能となり、柔軟な肌触りを実現することができることとなる。
【0023】
さらに、孔部第1周面における凹部の底部寄りの位置に設けたのは、孔部を、肌が振れやすい凸部や溝部の溝底部からできるだけ遠ざけることにより、孔部が肌に触れる機会を極力減らし、違和感あるいは異物感を感じにくくするためである。
これにより、肌を不織布の平面方向に滑らせた際の滑らかさをより安定的に確保することができる。
【0024】
また、孔部11は、この不織布1に含まれている熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく、その熱可塑性樹脂繊維を破断することにより形成された周縁部12を備えている。
より具体的には、図3及び図4に示すように、孔部11の周縁部12には、不織布1中の熱可塑性樹脂繊維のうち、破断により形成された破断端部13aを備えた破断繊維13におけるその破断端部13aが含まれている。したがって、孔部11の周縁部12は、熱可塑性樹脂繊維が溶融によって硬化した部分は一切存在せず、柔軟な熱可塑性樹脂繊維の一部、あるいは、熱可塑性樹脂繊維のうち破断によって形成された破断端部13aを有する破断繊維13によって形成されたものとなっている。これにより、仮に人間の肌が孔部11の周縁部12に触れたとしても、硬化した熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、不織布の硬さや粗さを感じることが可及的に抑止される。
【0025】
ここで、破断繊維13は、第1周面8aを形成する熱可塑性樹脂繊維の一部の繊維であって、その熱可塑性樹脂繊維を、長さ方向に引っ張ったり物理的に切断して破断することにより形成された破断端部13aを備えたものである。
したがって、破断端部13aは、熱可塑性樹脂繊維を溶融した場合のように、繊維の端部が溶けて丸くなって繊維径が大きくなることはなく、ちぎれたことによって先細りになったり、あるいは繊維径の変化がほとんど生じない態様となっていたりする。これにより、人間の肌が孔部11の周縁部12に触れた場合であっても、ごわつきや繊維の引っ掛かりによる違和感を感じることが抑えられる。
【0026】
さらに、図3及び図4に示すように、孔部11の内部空間11aには、熱可塑性樹脂繊維のうちの一部の繊維14が架け渡されている。また、一部の破断繊維13については、その破断端部13aが孔部11の内部空間11aに延出した状態となっている。
したがって、孔部11の内部空間11a内には、その内部空間11aに架け渡された繊維14と、一部の延出した繊維とが混在した状態となっていて、完全に開放された空間とはなっていない。
このように、孔部の内部空間に熱可塑性樹脂繊維の一部が架け渡された構成としたのは、仮に肌が孔部に触れた場合であっても、内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維が凹部の周面や底部と孔部との感触の違いをできるだけ小さくし、触れた者の違和感を感じにくくさせるためである。即ち、孔部の内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維が、肌が孔部を完全に突き抜けて不織布の第2面側(下面側)に至らないようにするため、周面や底部と孔部との境目の段差が触感上において小さくなり、これにより、肌触りが比較的滑らかになり、孔部に触れた者が違和感を感じにくくなる。
また、一部の破断繊維の破断端部が孔部の内部空間に延出する場合も、凹部の周面や底部と孔部との間の段差から生じる感触の違いを小さくするため、やはり肌触りを滑らかにする。
【0027】
このとき、孔部の内部空間の開孔率は、好ましくは1〜50%であり、より好ましくは1.5〜35%、さらに好ましくは2.5〜20%とすることである。
孔部の内部空間の開孔率が1%未満であると、開孔率が低すぎて凸部や凸部の繊維に自由度を付与することができず、凸部柔軟性を十分に確保できない。逆に50%以上であると孔部が設けられた周面(この実施形態の場合は第1周面8a)の強度が低くなり易い上、孔部の周縁部の境目が触感上分かり易くなる可能性がある。
ただし、孔部の内部空間の開孔率については、不織布を使用する吸収性物品の種類や用途等によっては、前記範囲以外であってもよく、任意に設定することができる。
【0028】
そして、凹部7の底部9は、凸部4よりも繊維密度が高く、且つ第2面3側が面状に形成されている。
この実施の形態においては、底部9は、第1面2側及び第2面3側の両方がほぼ平坦な平面状に形成された構成となっている。
【0029】
ここで、底部9の繊維密度を凸部4の繊維密度よりも高くしたのは、底部9を凸部4よりも硬めに形成して変形をできるだけ抑えることにより、この不織布1を吸収性物品に使用した際に、吸収性物品の変形に伴う不織布の変形をできるだけ抑止すると共に、他の部材によって底部9を安定的に押圧させて、不織布全体として、不織布1の形状をできるだけ保持できるようにするためである。これにより、不織布1の柔軟な肌触りを維持することができる。
具体的に、不織布を生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品のトップシートや防漏壁に用いた場合や、バックシートの表面に貼り付けた場合には、使用者の動きによって、不織布が曲がったり、捩じれたり、あるいは肌によって押圧される。また、吸収性物品を販売あるいは搬送のために袋等のパッケージに収容した場合も、吸収性物品全体が折り曲げられ且つ圧縮されて不織布が変形しやすい。しかしながら、本発明においては、底部の繊維密度を凸部の繊維密度より高くして硬くしているため、この底部が不織布の変形を極力抑えて、元の形状に復元させ、不織布の保形性が高い。したがって、不織布の形状を安定的に保持して不織布の柔軟な肌触りを維持することができる。
また、不織布をトップシートとして使用した場合には吸液性を有する吸収体が底部の第2面側に当接してその底部を第1面側に向けて押圧し、さらに不織布を使い捨ておむつのバックシートの外表面に貼り付けた場合にはそのバックシートが底部の第2面側に当接してその底部を第1面側に向けて押圧するため、この底部が凹部の周面を通じて不織布全体を支え、その不織布の形状をより安定的に保持させる。
したがって、凹部の底部の繊維密度の高さに伴うこの底部の剛性によって、不織布の形状が安定的に保持されるため、凸部の柔軟な肌触りが維持されることとなる。
【0030】
また、底部9の第2面3側を面状に形成したのは、この不織布1を吸収性物品に使用した際に、吸収性物品の他の部材にこの底部9を面接触させることにより、より安定的にこの底部9を押圧させ、不織布1の形状の維持に寄与させるためである。
即ち、従来のように吸収性物品の他の部材に線接触している場合は接触している部分が潰れ易く、不織布の形状を維持できないが、この発明のように面接触させる場合は、他の部材からの押圧力が安定的に伝わり易く、凹部の周壁を通じて不織布を第1面側に押すため、仮に不織布が厚さ方向に潰れても不織布の形状を回復、維持させることができる。
これにより、不織布の柔軟な肌触りをより安定的に維持することが可能となる。
【0031】
本発明においては、凹部の底部の繊維密度は、使用される吸収性物品や用途(トップシートや防漏壁、バックシートの外表面への貼付け等)によるが、凸部の繊維密度よりも高い範囲内において、例えば0.005〜0.3g/cmであることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.25g/cm、より好ましくは0.015〜0.2g/cmとすることである。
底部の繊維密度が0.005g/cm未満であると繊維密度が低すぎて、底部が毛羽立ち易くなるため、底部の違和感や異物感を感じ易くなる。逆に0.3g/cm超えると繊維密度が高すぎて底部が必要以上に硬くなることから、やはり違和感や異物感を与え易くなる。
さらに、底部と凸部との関係において、底部の繊維密度は、凸部の繊維密度の1.3〜15倍であることが好ましい。
底部の繊維密度が凸部の繊維密度の1.3倍未満であると、底部の繊維密度と凸部の繊維密度の差が小さすぎることから、不織布の凹凸の成形が不十分である場合があり、凸部や凹部の強度が不良で不織布の凹凸形状を維持することができない可能性がある。逆に15倍を超えると、底部の繊維密度と凸部の繊維密度の差が大きすぎることから、凹部または底部のどちらか一方に過大な圧力が作用して必要以上に圧縮され、他方は圧力不足で圧縮が不十分となっている可能性があることから、凹部又は底部の成形が不良で、結果として不織布の凹凸形状を維持することが難しくなる。
【0032】
ここで、底部や凸部の繊維密度は、任意の方法で測定できる。
繊維密度の測定方法としては、例えば、不織布の厚さ方向の切断面を電子顕微鏡(例えば、日本電子(株)社製JCM−5100等の走査型電子顕微鏡)で測定し、坪量を厚みで割って算出することも可能である。
あるいは、次のような方法でも測定できる。即ち、不織布の厚さ方向の切断面を、前記電子顕微鏡を使用して拡大観察(拡大倍率は、繊維断面数が30〜60本計測できる倍率(例えば、150〜500倍)に調整する。)し、繊維断面数及び繊維断面数を測定した視野面積に基づいて、繊維密度(本/mm)を算出する。測定は数ヶ所(例えば3〜5ヶ所)で実施し、平均値を算出してもよい。
【0033】
また、この実施の形態においては、凹部7の底部9の厚さは、凸部4における第1面2側に突出した部分、即ち頂部4aの厚さよりも小さく形成されている。
このように、底部の厚さを、凸部における第1面側に突出した部分の厚さよりも小さくしたのは、底部9の繊維密度を高めて強度を担保する一方、凸部4については肌に触れる部分であるため繊維密度を高めずに柔軟にするためである。
底部の厚さについては、凸部の頂部の厚さの3〜60%程度とすることが好ましく、さらに好ましくは5〜50%程度とすることである。底部の厚さが凸部の頂部の厚さの3%未満であると、底部の繊維密度が過剰に高まるため硬くなりすぎ、不織布全体としての柔軟性が損なわれる可能性があり、逆に60%を超えると繊維密度が低くなりすぎることに起因して底部の形成が不十分となり、底部の強度を確保することができない。
【0034】
以下、前記構成を有する吸収性物品用不織布1の製造方法について説明する。
図5図8は、不織布1を製造する製造装置の一例を示すもので、この製造装置50は、不織布1とするための加工を行う加工対象の不織布51がロール状に巻かれ、その加工対象の不織布51を搬送方向MDに向けて巻き出す巻出装置52と、巻出装置52から巻き出された加工対象の不織布51に予熱を与える予熱装置61と、予熱を与えた加工対象の不織布51を延伸して凸部及び溝部(凹部含む)を形成するための賦形加工を行う賦形装置62とを備えている。
【0035】
加工対象の不織布としては、熱可塑性樹脂繊維に加えて、その他の構成繊維を含有してもよい。その他の構成繊維としては、例えば、天然繊維(例えば、羊毛,コットン等)、再生繊維(例えば、レーヨン,アセテート等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維,炭素繊維等)、合成樹脂繊維(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド等)等が挙げられる。不織には、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
不織布の製造方法としては、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法が挙げられ、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。このようにして製造された不織布の他、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースを使用してもよい。
【0036】
また、加工対象の不織布に用いる繊維は、吸収性物品に用いたときの排泄液の隠ぺい性の観点から、不透明性、特には白化性の高い繊維を用いることができ、例えば、不透明化させる光線透過抑制剤を用いてもよい。この光線透過抑制剤としては、無機フィラーを例示できる。この無機フィラーとして、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、アルミナ、マイカ、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライト、及び珪酸白土等を例示することができる。これらは2種類以上を組み合わせて含有させても良い。特に、一般に繊維製造段階の工程性等の面から、二酸化チタンが好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維については、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。熱可塑性樹脂繊維は、界面活性剤、親水剤等により親水化処理されていることが好ましい。
【0037】
さらに、加工対象の不織布の坪量は、通常は10〜100g/m2であり、好ましくは15〜75g/m2であり、更に好ましくは20〜50g/m2である。不織の厚みは、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.5〜3mmであり、更に好ましくは0.8〜2mmである。
【0038】
予熱装置61は、この実施の形態においては、上下一対の加熱ロール61a,61bを備えていて、搬送されてきた加工対象の不織布51を、回転している下方の加熱ロール61bに巻き付けて加熱した後、回転している上方の加熱ロール61aに受け渡し、その加熱ロール61aによって加工対象の不織布51を再度加熱することが可能となっている。
また、賦形装置62は、上下一対の延伸ロール63,64を備えていて、図6に示すように、上方の延伸ロール63は、ロール幅方向に一定の間隔で配設された、この上方の延伸ロール63の外周面に沿って相互に平行に複数列設けられた突稜63aと、隣り合う突稜6a,6aの間に設けられた複数列の凹溝63bとを備えている。
一方、下方の延伸ロール64は、外周面に、上方の延伸ロール63の凹溝63bと噛み合うように設けられた複数のピン64aを備えている。図8に示すように、これらのピン64aは、ロール幅方向に対しては、上方の延伸ロール63の突稜63aと接触しないように一定の間隔で配設されていると共に、ロールの周方向に対しては、外周面に沿って一定の間隔でほぼ直線的に配設されている。この実施の形態における下方の延伸ロール6は、図7に示すように、複数のピン64aが、下方の延伸ロール64の外周面に千鳥状に配設された構成となっている。
【0039】
前記構成を有する製造装置50を用いて、吸収性物品用不織布1の製造方法を実施する場合には、巻出装置52から巻き出された加工対象の不織布51に対して予熱を加える予熱工程と、予熱工程を経た加工対象の不織布51を延伸して賦形加工する賦形工程とを順次行う。
【0040】
予熱工程は、巻出装置から巻き出され、搬送方向MDに沿って搬送されてきた加工対象の不織布51を、予熱装置61の回転している上下一対の加熱ロール61a,61bの外周面に順次接触させることにより、加工対象の不織布51を加熱して予熱を加える。
予熱温度は、加工対象の不織布を構成する熱可塑性樹脂繊維の種類にもよるが、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)と高密度ポリエチレン(HDPE)との芯鞘型の複合繊維の場合、加熱ロールの外周面の温度60〜120℃程度とすることが好ましい。
【0041】
賦形工程は、予熱工程を経て搬送されてきた加工対象の不織布51を、賦形装置62において、噛み合いながら回転している上下一対の延伸ロール63,64の間に装入し、その加工対象の不織布51を、噛み合っている上方の延伸ロール63の突稜63a及び凹溝63bと、下方の延伸ロール64のピン64aとの間で延伸して賦形する。なお、賦形工程を実施するに際しては、賦形を行い易いように、延伸ロール63,64を60〜120℃に加熱しながら賦形することが好ましい。
このとき、上方の延伸ロール63は、突稜63aが加工対象の不織布51と接触している部分を下方の延伸ロール64の方向に押し込み、これにより凸部4が賦形される。
【0042】
一方で、下方の延伸ロール64は、周方向に一列に並んでいる複数のピン64aが、そのピン64aの先端部分に接触している加工対象の不織布51を、上方の延伸ロール63の同一の凹溝63b内に押し込む。
このとき、加工対象の不織布51のうち、ピン64aと非接触状態で凹溝63b内に引っ張られた部分は溝部5となる。また、ピン64aの先端部分と接触していた部分は、凹溝63b内に強く押し込まれて賦形されるため、これにより、凸部4及び溝部5が延設される方向に延びる第1周面8a、及びロール幅方向に延びる第2周面8、並びに底部9を有する凹部7が形成されることとなる。
【0043】
また、底部9の形成について具体的に説明すると、ピン64aが加工対象の不織布51を押圧した際に、そのピン64aの先端部分が押圧した加工対象の不織布51の部分がこの底部9となる。このとき、この底部9が形成される際には、ピン64aの先端部分が加工対象の不織布51を圧縮するため、底部9は繊維密度が上昇し、最終的には、凸部4よりも繊維密度が高くなる。したがって、底部9は、繊維密度が凸部4よりも高くなったことにともなって、凸部4よりも剛性が大きくなる。また、底部9は、ピン64aの先端部分が加工対象の不織布51を圧縮することにより形成されるため、その加工対象の不織布51の加工前の厚さよりも厚さが小さくなる。
さらに、この工程においては、凹部7の形成に際して、加工対象の不織布51に対しては下方の延伸ロール64のピン64aによって大きな圧力が加えられる一方、凸部4の形成に際しては、加工対象の不織布51は、上方の延伸ロール63の突稜63aの外周面によって、ピン64aに比べると弱い圧力が加えられる。そのため、凹部7と凸部4との形成に際しては、加えられる圧力の違いから、これらの凹部7の底部は凸部4の頂部に比べて薄く形成されることとなる。
【0044】
そして、加工対象の不織布51において、ピン64aの先端部分の幅方向(ロール幅方向)の両端部に接触していた部分は、突稜63aが加工対象の不織布51を下方の延伸ロール64の方向に押し込む際に発生する張力も手伝って、ピン64aが第1周面8aを形成する熱可塑性樹脂繊維を掻き分けたり、あるいは、繊維を破断して、破断端部13aを有する破断繊維13を形成したりする。
これにより、凹部7に、破断繊維13の破断端部13aが含まれた孔部11形成されることとなる。なお、一部の熱可塑性樹脂繊維は、孔部11の内部空間11aに架け渡された状態で残り、また、一部の破断繊維13の破断端部13aは内部空間11a内に延出した状態となる。
ここで、孔部11が形成されるのは、加工対象の不織布51の搬送方向MDに沿う方向、即ち、延伸ロール63,64の回転方向であって、凸部4及び溝部5が延設される方向であることから、孔部11も凸部4及び溝部5が延設される方向に沿う周面である第1周面8aに形成される。
【0045】
賦形工程が終了した不織布は、凸部4、及び凹部7を含む溝部5が形成されて吸収性物品用の不織布1として完成することとなる。この不織布1は、その後、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド、パンティーライナー等の吸収性物品のトップシートとして、あるいは防漏壁として使用されたり、または使い捨ておむつのバックシートの外表面に貼り付けられたりすることとなる。
【0046】
前記構成を有する吸収性物品用の不織布1は、凸部4,4間に設けられた溝部5の溝底部6に、その溝底部6よりも下面側に位置する底部9を有し、且つ不織布1の第1方向Xに対して不連続に設けられた複数の凹部7を備えていて、凹部7の第1周面8aに、熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく形成された周縁部12を備えた孔部11が設けられている。
そのため、凸部4や凸部4の繊維の移動の自由度が増す上、孔部11によって凸部4の引張力が緩和されて凸部4全体が柔らかくなるため、肌で不織布1を厚さ方向に押した際には柔らかく感じ、また肌を不織布の平面方向に滑らせた際には滑らかさを感じることができることができる。
さらに、凹部7の底部9の繊維密度が凸部4よりも高く、凸部4に比べて底部9の剛性が大きく変形しにくいため、不織布1が吸収性物品に使用された場合には、底部9の剛性によって不織布1、延いては吸収性物品の大きな変形を抑えることができる。その上、底部9は第2面3側が面状に形成されているため、吸収性物品の他の部材に安定的に面接触して、不織布1を安定的に支えることができる。この結果、底部9自体が不織布1を保形すると共に、吸収性物品に使用した場合には、吸収性物品の他の部材に面接触した底部9が周面8を通じて不織布1全体を支えるため、不織布1全体を安定的に保形し、不織布1の柔軟な肌触りを安定的に維持、確保することができる。
また、凹部7の孔部11は、繊維を溶融することなく形成された周縁部12を有し、この周縁部12は、破断により形成された破断繊維13の破断端部13aが含まれているため、従来のように溶融によって硬化した部分が存在しない。これにより、不織布1に優れた硬軟感(厚さ方向の柔軟性)及び優れた粗滑感(平面方向の滑らかさ)をさらに向上(柔らかく、滑らか)させることができ、肌に対してきわめて柔軟な感触を与えることが可能となる。
【0047】
前記実施の形態においては、凹部7の孔部11が、第1方向Xに沿うように形成された一対の第1周面8aに設けられているが、孔部は第2方向に沿うように形成された一対の第2周面に設けられていてもよく、また、いずれか1つの周面に設けられている構成であってもよい。
さらに、前記実施の形態では、孔部11が凹部7の周面における底部9寄りの位置に配設されているが、周面における孔部の位置については、必ずしも底部寄りである必要はなく、不織布の柔軟性を損なわない範囲で任意に設定することができる。
【0048】
また、前記実施の形態においては、孔部11の周縁部12に、不織布1中の熱可塑性樹脂繊維のうち、破断により形成された破断端部13aを備えた破断繊維13におけるその破断端部13aが含まれている。しかしながら、孔部の周縁部は、その周縁部を形成する熱可塑性樹脂繊維が溶融により硬化していなければ、破断繊維の破断端部が必ずしも含まれている必要はない。
さらに、前記実施の形態では、孔部11の内部空間11a内に、熱可塑性樹脂繊維中の一部の繊維14が架け渡されているが、このように孔部の内部空間に架け渡された繊維が存在していなくてもよい。また、前記実施の形態のように、破断繊維の破断端部が孔部の内部空間内に延出していなくてもよい。
【0049】
前記実施の形態においては、凹部7は略直方体状に形成されているが、凹部の形状については、円柱状や角柱状等、任意の形状とすることができる。
【0050】
さらに、前記実施の形態においては、凸部4が不織布1の第1方向Xに連続的に延びている。しかしながら、凸部については、必ずしも不織布の第1方向に連続的に延びていなくてもよく、間欠的であってもよい。ただし、このとき、凹部については、凸部が連続している部分は挟まれた溝部の溝底部に設けることが好ましく、これにより、凸部が先に肌に触れた易く、逆に凹部には接触しづらくなるため、凹部により異物感や違和感をより感じにくくなる。
【符号の説明】
【0051】
1 吸収性物品用不織布
2 不織布の上面(第1面)
3 不織布の下面(第2面)
4 凸部
5 溝部
6 溝底部
7 凹部
8 周面
8a 第1周面
8b 第2周面
9 底部
11 孔部
11 孔部の内部空間
12 周縁部
13 破断繊維
13a 破断端部
【要約】
【課題】肌に接触した際に柔軟な肌触りを得ることができ、しかもその柔軟な肌触りを安定的に確保することができる吸収性物品用の不織布を得る。
【解決手段】隣り合う凸部4,4の間の空間に設けられた溝部5の溝底部6に、溝底部6よりも深い底部9を有し、且つ第1方向Xに対して不連続に設けられた複数の凹部7を備えていて、凹部7は、周面の少なくとも一部が、第2面3側に通じる孔部11を備えていて、孔部11は、熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく形成された周縁部12を有していると共に、凹部7の底部9は、凸部4よりも繊維密度が高く、且つ少なくとも第2面3側が面状に形成されている構成とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図4